特許第6983855号(P6983855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983855再生アスファルト混合物の製造システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983855
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】再生アスファルト混合物の製造システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/10 20060101AFI20211206BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20211206BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20211206BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20211206BHJP
【FI】
   E01C19/10 A
   C08L95/00
   C08K3/00
   C08K3/013
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-209180(P2019-209180)
(22)【出願日】2019年11月19日
(65)【公開番号】特開2021-80743(P2021-80743A)
(43)【公開日】2021年5月27日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】五伝木 一
(72)【発明者】
【氏名】岩永 真和
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 誠文
(72)【発明者】
【氏名】三上 收
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄史
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196470(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/006693(WO,A1)
【文献】 特開2000−051746(JP,A)
【文献】 特開2019−044367(JP,A)
【文献】 特開2010−100996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
C08L 95/00
C08K 3/00
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生骨材、加熱アスファルト及び再生用添加剤を混合する再生アスファルト混合物の製造方法であって、
前記再生用添加剤を高速気流で粉砕して微発泡させた状態で前記再生骨材に拡散散布することを特徴とする再生アスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記再生用添加剤には、発泡補助剤が混合されていることを特徴とする請求項1記載の再生アスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
再生アスファルト混合物の製造システムであって、
再生骨材と、再生用添加剤と、加熱アスファルトとを混練するミキサと、
前記再生用添加剤を高速気流で粉砕して微発泡化させた状態で前記ミキサ内に拡散散布する2流体ノズルと、
を備えていることを特徴とする再生アスファルト混合物の製造システム。
【請求項4】
前記加熱アスファルトを発泡させる発泡装置をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の再生アスファルト混合物の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生アスファルト混合物の製造システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車道や歩道等の舗装において、再生骨材と、新規骨材と、加熱アスファルトと、再生用添加剤を混練した再生アスファルト混合物が用いられることが多くなっている。
【0003】
再生骨材は、既存のアスファルト舗装を解体して破砕し分級したものである。このような再生骨材には、劣化して硬くなったアスファルト(旧アスファルト)が付着している。この旧アスファルトの性状を改善させるために、再生アスファルト混合物の製造にあたっては、再生骨材に再生用添加剤を添加することが一般的に行われている。
【0004】
図8に、従来の再生アスファルト混合物の製造システム10の構成を示す。従来の再生アスファルト混合物の製造システム10は、ミキサ11を備えている。
【0005】
再生骨材は計量槽12に、新規骨材は計量槽13に、加熱アスファルトは計量槽14にそれぞれ収容されている。計量槽12内に収容された再生骨材及び計量槽13内に収容された新規骨材は、ミキサ11に投入され、計量槽14に収容された加熱アスファルトは、ポンプ15で圧送され、ノズル16からミキサ11に吐出される。
【0006】
タンク17に収容された再生用添加剤は、再生骨材、新規骨材及び加熱アスファルトを混練するタイミングでミキサ11に適量吐出される。具体的には、再生用添加剤は、タンク17に接続されてミキサ11の上方まで延伸された配管18を介してポンプ19で圧送され、配管18の先端からミキサ11に吐出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、再生骨材に含まれる旧アスファルトの改善を確実且つ効率良く行うために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る再生アスファルト混合物の製造方法は、再生骨材、加熱アスファルト及び再生用添加剤を混合する再生アスファルト混合物の製造方法であって、前記再生用添加剤を高速気流で粉砕して微発泡させた状態で前記再生骨材に拡散散布する。
【0010】
この構成によれば、微発泡化された再生用添加剤を再生骨材に拡散散布させることにより、再生骨材に含まれる旧アスファルトの改善が促進され、良質な再生アスファルト混合物を製造することができる。
【0011】
また、本発明に係る再生アスファルト混合物の製造方法は、前記再生用添加剤には、発泡補助剤が混合されているのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、再生用添加剤が微発泡化され易くなるため、再生骨材に含まれる旧アスファルトの改善がさらに促進され、良質な再生アスファルト混合物を製造することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る再生アスファルト混合物の製造システムは、再生アスファルト混合物の製造システムであって、再生骨材と、再生用添加剤と、加熱アスファルトとを混練するミキサと、前記再生用添加剤を高速気流で粉砕して微発泡化させた状態で前記ミキサ内に拡散散布する2流体ノズルと、を備えている。
【0014】
この構成によれば、微発泡化された再生用添加剤を再生骨材に拡散散布させることにより、再生骨材に含まれる旧アスファルトの改善が促進され、良質な再生アスファルト混合物を製造することができる。
【0015】
また、本発明に係る再生アスファルト混合物の製造システムは、前記微発泡化手段は、前記再生用添加剤を高速気流で粉砕して微発泡化する2流体ノズルであることが好ましい。
【0016】
また、2流体ノズルを用いることにより、再生用添加剤の微発泡化と再生用添加剤の拡散散布を簡便に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る再生アスファルト混合物の製造システムは、前記加熱アスファルトを発泡させる発泡装置をさらに備えていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、微発泡化された再生用添加剤と発泡化したアスファルト(フォームドアスファルト)とにより、再生アスファルト混合物の混合性が改善されて、良質な再生アスファルト混合物を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、微発泡化された再生用添加剤を再生骨材に拡散散布させることにより、再生骨材に含まれる旧アスファルトの改善が促進され、良質な再生アスファルト混合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る再生アスファルト混合物の製造システムの構造を示す模式図。
図2図1のシステムを用いて再生アスファルト混合物を製造する手順の一例を示すフローチャート。
図3】本発明に係る方法により得られた各種実施例と従来方法により得られた比較例のかさ密度を比較するグラフ。
図4】本発明に係る方法により得られた各種実施例と従来方法により得られた比較例の圧裂係数を比較するグラフ。
図5】発泡補助剤の有無がかさ密度及び圧裂係数に与える影響を示すグラフ。
図6】本発明に係る方法により得られた各種実施例と従来方法により得られた比較例のコア密度の測定条件及び測定結果並びに作業性評価の結果を示す表。
図7】本発明に係る方法により得られた各種実施例と従来方法により得られた比較例のコア密度を比較するグラフ。
図8】従来の再生アスファルト混合物の製造システムの構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0022】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0023】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る再生アスファルト混合物の製造システム1の構成を示す模式図である。
【0025】
再生アスファルト混合物の製造システム1は、ミキサ2を備えている。ミキサ2は、混練二軸パグミルミキサであり、再生骨材、新規骨材、加熱アスファルト及び再生用添加剤を混練して再生アスファルト混合物を製造する。なお、再生アスファルト混合物とは、アスファルト舗装の表層、基層に用いられるものに限定されず、路盤材に用いられるものを含む。また、ミキサ2は、混練二軸パグミルミキサに限定されるものではなく、例えば連続式のドラムミキサ等であっても構わない。
【0026】
第1の計量槽3には、再生骨材が収容されている。再生骨材は、既存のアスファルト舗装を解体した際に発生した骨材を分級したものであり、劣化した旧アスファルトが表面に付着している。再生骨材は、第1の計量槽3からミキサ2に投入される。
【0027】
第2の計量槽4には、新規骨材が収容されている。新規骨材は、砕石、砂等である。新規骨材は、第2の計量槽4からミキサ2に投入される。
【0028】
第3の計量槽5には、加熱アスファルトが収容されている。加熱アスファルトは、例えば所望性状に応じた規格のストレートアスファルト等である。加熱アスファルトは、第1のポンプ51によって配管52を圧送され、ノズル53からミキサ2に投入される。
【0029】
また、第1のポンプ51とノズル53との間に図示しない発泡装置を設けても構わない。発泡装置の構成は公知であり、例えば、水を加熱アスファルトに加えて、加熱アスファルトを発泡化させる。これにより、加熱アスファルト内に残存した微細泡がベアリング効果を奏し、骨材の動きを円滑化して再生アスファルト混合物の混合性と締固め性を向上させる。
【0030】
タンク6には、再生用添加剤が収容されている。再生用添加剤は、再生骨材に付着した旧アスファルトの性状を改善させるものである。再生用添加剤は、例えば、アスファルト系再生用添加剤、石油潤滑油系再生用添加剤、鉱物系再生用添加剤、動・植物油系再生用添加剤、アスファルト乳剤系再生用添加剤等が挙げられる。また、再生用添加剤は、上述した1種を単独で用いても構わないし、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。再生用添加剤の配合量は、再生骨材に含まれる旧アスファルトに対して質量比で1〜40%の範囲内で設定されるのが好ましい。再生用添加剤は、第3のタンク6から第2のポンプ61によって配管62を介して2流体ノズル63に圧送される。
【0031】
また、タンク6内の再生用添加剤には、発泡補助剤が混合されているのが好ましい。発泡補助剤は、再生用添加剤が微発泡化されることを促進するものであり、例えば、ポリエチレングリコールモノオレート又はソルビタントリオレエート等から成る非イオン系界面活性剤である。発泡補助剤の配合量は、再生用添加剤に対して質量比で1〜3%の範囲内で設定されるのが好ましい。
【0032】
2流体ノズル63は、液状の再生用添加剤をコンプレッサ64から供給される圧縮空気、窒素又は蒸気等の高速気流で粉砕して微発泡化させる。微発泡化された再生用添加剤は、ミキサ2に向けて吐出される。なお、2流体ノズル63の吐出口の形状を変更することにより、再生用添加剤が散布される範囲を調整することができる。
【0033】
なお、2流体ノズル63は、例えば、再生用添加剤を吐出するノズルに再生用添加剤を供給する配管と高速気流を供給する配管とが直接接続された構成であったり、再生用添加剤を高速気流で粉砕するチャンバと再生用添加剤を吐出するノズルとが配管等で離間して接続された構成等であっても構わない。特に、後者の構成であれば、ノズルと比べて比較的大容量のチャンバを用いるため、再生用添加剤に含まれる気体量を増大させることができる。
【0034】
再生アスファルト混合物の製造システム1を構成する各機器は、図示しない制御装置によって動作制御される。制御装置は、例えば、CPU、メモリ等により構成され、制御装置の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現される。
【0035】
次に、再生アスファルト混合物の製造システム1の作用について、図2に基づいて説明する。図2は、再生アスファルト混合物を製造する手順を示すフローチャートである。以下では、1バッチ当たりの混合量1000kg、混合時間60秒程度で再生アスファルト混合物を製造する場合を例に説明する。
【0036】
まず、第1の計量槽3に収容された再生骨材をミキサ2に投入する(工程S1)。なお、再生骨材は、ミキサ2への投入前に予め加熱されている。再生骨材の投入量は、約600kgである。
【0037】
また、工程S1と略同時または工程S1に続いて、再生用添加剤を2流体ノズル63からミキサ2に拡散散布する(工程S2)。再生用添加剤の散布量は、約1〜3kgであるが、再生骨材の分量や性状に応じて適宜調整される。再生用添加剤の散布時間は、例えば5〜10秒程度である。
【0038】
次に、ミキサ2内の再生骨材及び再生用添加剤の混練りを行う(工程S3)。混練りに要する時間は、例えば5〜10秒程度である。
【0039】
次に、ミキサ2に新規骨材を所定量だけ投入する(工程S4)。なお、新規骨材は、ミキサ2への投入前に予め加熱されている。新規骨材の投入量は、約380kgである。
【0040】
次に、約25kgの加熱アスファルトがノズル53からミキサ2に投入される(工程S5)。
【0041】
また、工程S5と並行してミキサ2による混練を行う(工程S6)。混練に要する時間は、例えば加熱アスファルトの投入開始から数えて40〜50秒程度である。
【0042】
そして、ミキサ2による混練で得られた再生アスファルト混合物を外部に排出する(工程S7)。ミキサ2から排出された再生アスファルト混合物は、運搬車等に練り落とされる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を詳細な実施例に基づいて説明するが、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。以下、本発明により得られた再生アスファルト混合物の供試体(以下、「実施例1〜3」と称す)と、図8に示す従来の再生アスファルト混合物の製造システム10により得られた供試体(以下、「比較例」と称す)との性能を比較する。
【0044】
[サンプル製造方法]
・実施例1:
ミキサ2内の再生骨材約600kgにチャンバ型2流体ノズル63で微発泡化させた再生用添加剤1〜3kgを拡散散布する(air量:3700NL/min,air圧:0.4MPa,オリフィス径:φ9mm,散布幅:W130mm×L800mm)。その後、新規骨材約380kgをミキサ2に投入し、さらに、加熱アスファルトを配管52からミキサ2に投入させた後に、ミキサ2で混練して再生アスファルト混合物を製造する。
【0045】
・実施例2:
ミキサ2内の再生骨材約600kgにチャンバ型2流体ノズル63で微発泡化させた再生用添加剤1〜3kgを拡散散布する(air量:3700NL/min,air圧:0.4MPa,オリフィス径:φ9mm,散布幅:W130mm×L800mm)。その後、新規骨材約380kgをミキサ2に投入し、さらに、発泡装置で発泡化させたアスファルト(フォームドアスファルト)をミキサ2に投入させた後に、ミキサ2で混練して再生アスファルト混合物を製造する。
【0046】
・実施例3:
ミキサ2内の再生骨材約600kgに2流体ノズル63で微発泡化させた再生用添加剤1〜3kgを拡散散布する(air量:400NL/min,air圧:0.4MPa,オリフィス径:φ3mm,散布幅:W200mm×L400mm)。その後、新規骨材約380kgをミキサ2に投入し、さらに、発泡装置で発泡化させたアスファルト(フォームドアスファルト)をミキサ2に投入した後に、ミキサ2で混練して再生アスファルト混合物を製造する。
【0047】
・比較例:
ミキサ11内の再生骨材約600kgに液状の再生用添加剤1〜3kgを吐出する。その後、新規骨材約380kgをミキサ11に投入し、さらに、アスファルトをミキサ2に吐出させた後に、ミキサ11で混練して再生アスファルト混合物を製造する。
[評価(供試体)]
【0048】
次に、実施例1〜3及び比較例について各種試験を行った結果を示す。試験内容は、以下の通りである。
・マーシャル安定度試験:
締固め温度145〜105℃で締固めた実施例1〜3及び比較例について「舗装調査・試験法便覧 平成31年版(著:公益社団法人 日本道路協会) 試験法番号B001、B008-1」に準拠してマーシャル安定度試験を行った。
【0049】
図3は、マーシャル安定度試験の供試体密度を示すグラフであり、図3(a)は、実施例1及び比較例の比較であり、図3(b)は、実施例2及び比較例の比較であり、図3(c)は、実施例3及び比較例の比較である。
【0050】
図3によれば、実施例1〜3は、比較例と比べて、広範な締固め温度(特に、約140℃以下)においてかさ密度が増大しており、締固め温度が低下するにつれて、かさ密度の改善は顕著となっている。
【0051】
特に、実施例1〜3では、比較例と比べて、かさ密度が増大しており、再生用添加剤の分散性に優れ、再生用添加剤が再生骨材に均一に散布・混合されていると推測される。
【0052】
特に、実施例1、2は、実施例3と比べて再生用添加剤の分散性は顕著であると考えられる。また、実施例2では、フォームドアスファルトを用いていることから、実施例1と比べてかさ密度の増大に寄与しているものと考えられる。さらに、実施例1〜3では、比較例と比べて、締固め温度が低下してもかさ密度の低下が少ない。これは、舗装時の温度を下げてもかさ密度を確保できることを意味し、施工時の作業性に優れる。
【0053】
・圧裂試験:
締固め温度145〜105℃で締固めた実施例1〜3及び比較例について「舗装調査・試験法便覧 平成31年版(著:公益社団法人 日本道路協会) 試験法番号B006」に準拠して圧裂試験を行った。
【0054】
図4は、圧裂試験の結果を示すグラフであり、図4(a)は、実施例1及び比較例の比較であり、図4(b)は、実施例2及び比較例の比較であり、図4(c)は、実施例3及び比較例の比較である。
【0055】
圧裂係数は、アスファルト混合物の性状(劣化指標)を表す指標であり、一般的に0.6〜0.9MPa/mmであることが求められる。再生アスファルト混合物の場合には、この範囲内で数値が少ない程に、旧アスファルトの性状が改善される傾向にある。図4によれば、実施例1〜3は、比較例と比べて、圧裂係数が低いことが分かる。
【0056】
特に、実施例1〜3では、圧裂係数が低下しており、再生用添加剤の分散性に優れ、再生用添加剤が再生骨材に均一に散布・混合されていると推測される。特に、実施例1、2は、実施例3と比べて再生用添加剤の分散性は顕著であると考えられる。また、実施例2では、フォームドアスファルトを用いていることから、実施例1と比べて圧裂係数の低減に寄与しているものと考えられる。
【0057】
ここで、発泡補助剤を再生用添加剤に混合した場合の効果について、実施例2と、再生用添加剤に対して重量比1%の発泡補助剤を再生用添加剤に混合した点を除いて実施例2と同様の条件で得られた再生アスファルト混合物の供試体(以下、「実施例4」と称す)とを比較して説明する。
【0058】
図5(a)は、マーシャル安定度試験の供試体密度を示すグラフであり、図5(b)は、圧裂試験の結果を示すグラフである。なお、図3〜4における実施例2と図5における実施例2とは数値が一致していないが、これは供試体作製に用いられた再生骨材及び新規骨材が相違することに起因するものである。
【0059】
図5(a)によれば、実施例4は、実施例2と比べて、広範な締固め温度(特に、約135℃以下)においてかさ密度が増大しており、締固め温度が低下するにつれて、かさ密度の改善は顕著となっている。また、図5(b)によれば、実施例4では、実施例2と比べて、圧裂係数が低下しており、再生用添加剤の分散性に優れ、再生用添加剤が再生骨材に均一に散布・混合されていると推測される。このように、発泡補助剤を再生用添加剤に混合することにより、実施例2と比べて、旧アスファルトの性状をさらに改善できることが分かる。
【0060】
[評価(簡易敷均し)]
・コア密度、作業性:
実施例1〜3及び比較例について「舗装調査・試験法便覧 平成31年版(著:公益社団法人 日本道路協会) 試験法番号B008」に準拠してコア密度を測定した。また、異なる温度条件(通常温度時、温度低減時)でのレーキワーク等について、作業性の評価を行った。なお、図6は、各種施工条件、コア密度及び作業性の評価結果を示すものである。図7は、実施例1〜3及び比較例のコア密度を比較したグラフである。
【0061】
図6中の「通常温度」とは、一般的に敷均しに最適とされている温度における試験を意味し、本試験では、「敷均し温度」を約160℃程度に設定し、転圧温度を150〜160℃に設定した。また、「温度低減」とは、「通常温度」よりも低温度で行った試験を意味し、本試験では、「敷均し温度」を約130℃程度に設定し、転圧温度を110℃程度に設定した。
【0062】
また、本試験は、W1m×L4mの施工ヤードを用意し、中央50cmの境界を挟んで、一方の領域(W1m×L1.75m)を通常温度、他方の領域を(W1m×L1.75m)を低温に設定して簡易的に敷均しを行った。なお、締固めは、1tハンドガイドローラを用いて無振で1回転圧した後に、有振で2回転圧により実施した。
【0063】
図6によれば、「通常温度」で行った敷均しでは、実施例1〜3及び比較例の何れであっても作業性については良好であった。また、図7によれば、「通常温度」で行った敷均しでは、コア密度を比較すると、実施例1〜3は比較例と比べても良好であり必要な密度を確保していることが分かり、特に、実施例2が顕著に優れていた。
【0064】
次に、「通常温度」よりも低温で行った敷均しでは、比較例は施工が出来なかった。一般的には、敷均し温度、転圧温度が低ければ、再生アスファルト混合物の粘性が高くなり、敷均しの作業性は悪化する傾向にある。一方、実施例1〜3では施工が可能であり、特に、実施例2、3では低温時であっても通常温度と同様に施工が可能であった。すなわち、実施例1〜3によれば、通常よりも低温での施工が可能であり、良好な品質・作業性を維持しつつ、例えば、夏場に混合物出荷時の温度を下げたり、遠方出荷が可能になる等、作業環境の改善を図ることもできる。
【0065】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0066】
例えば、本発明は、上述したような再生骨材、新規骨材、加熱アスファルト及び再生用添加剤を混合して得られる再生アスファルト混合物の製造システム及びその方法に適用されるものに限定されず、再生骨材、加熱アスファルト及び再生用添加剤を混合して得られる再生アスファルト混合物(いわゆる、再生骨材100%の再生アスファルト混合物)の製造システム及びその方法に適用することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 ・・・ 再生アスファルト混合物の製造システム
2 ・・・ ミキサ
3 ・・・ 第1の計量槽
4 ・・・ 第2の計量槽
5 ・・・ 第3の計量槽
51 ・・・ 第1のポンプ
52 ・・・ 配管
53 ・・・ ノズル
6 ・・・ タンク
61 ・・・ 第2のポンプ
62 ・・・ 配管
63 ・・・ 2流体ノズル
64 ・・・ コンプレッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8