(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の部分及び第2の部分を備える大表面を有する、基板であって、前記大表面の前記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、前記大表面の前記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、前記第1の方向と前記第2の方向との間の角度は10°〜180°である、基板;並びに
前記大表面の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、前記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
前記コーティング済み物品は、前記基板の前記第1の部分及び前記基板の前記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって前記反射防止表面上で測定した場合に、50nm以上の押し込み深さにおいて8GPa以上の硬度を示し;
前記コーティング済み物品は、前記反射防止表面において測定した場合に、前記基板の前記第1の部分において8%以下の単一側面平均光反射率を示し、前記第1の部分の前記単一側面平均光反射率は、前記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、前記第1の入射照明角度は、前記第1の方向から0°〜60°であり;
前記コーティング済み物品は、前記反射防止表面において測定した場合に、前記基板の前記第2の部分において8%以下の単一側面平均光反射率を示し、前記第2の部分の前記単一側面平均光反射率は、前記第2の方向に対する第2の入射照明角度で測定され、前記第2の入射照明角度は、前記第2の方向から0°〜60°であり;
前記第1の部分及び前記第2の部分における前記単一側面平均光反射率は、400nm〜800nmの光波長レジームにわたって測定される、コーティング済み物品。
大表面を有する基板であって、前記大表面は、第1の部分及び第2の部分を備える大表面を有し、前記大表面の前記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、前記大表面の前記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、前記第1の方向と前記第2の方向との間の角度は10°〜180°である、基板;並びに
前記大表面の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、前記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
前記コーティング済み物品は、前記基板の前記第1の部分及び前記基板の前記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって前記反射防止表面上で測定した場合に、50nm以上の押し込み深さにおいて8GPa以上の硬度を示し;
前記基板の前記第1の部分と前記基板の前記第2の部分との間の、前記コーティング済み物品の反射色の差異は、国際照明委員会規格の光源下において(L*,a*,b*)測色系の反射色座標によって測定した場合に10以下であり、前記反射色の前記差異は、√((a*第1の部分−a*第2の部分)2+(b*第1の部分−b*第2の部分)2)として定義され、前記第1の部分における前記反射色は、前記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、前記第1の入射照明角度は、前記第1の方向から0°〜60°であり、前記第2の部分における前記反射色は、前記第2の方向に対する第2の入射照明角度で測定され、前記第2の入射照明角度は、前記第2の方向から0°〜60°である、コーティング済み物品。
大表面を有する基板であって、前記大表面は第1の部分及び第2の部分を備え、前記大表面の前記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、前記大表面の前記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、前記第1の方向と前記第2の方向との間の角度は10°〜180°である、基板;並びに
前記大表面の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、前記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
前記コーティング済み物品は、前記基板の前記第1の部分及び前記基板の前記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって前記反射防止表面上で測定した場合に、50nm以上の押し込み深さにおいて8GPa以上の硬度を示し;
前記基板の前記第1の部分と前記基板の前記第2の部分との間の、前記コーティング済み物品の反射色の差異は、国際照明委員会規格の光源下において(L*,a*,b*)測色系の反射色座標によって測定した場合に10以下であり、前記反射色の前記差異は、√((a*第1の部分−a*第2の部分)2+(b*第1の部分−b*第2の部分)2)として定義され、前記第1の部分における前記反射色は、前記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、前記第1の入射照明角度は、前記第1の方向から0°〜60°であり、前記第2の部分における前記反射色は、第2の入射照明角度で測定され、前記第2の入射照明角度は、前記第1の部分及び前記第2の部分における前記反射色が同一の視認方向で測定されるよう、前記第1の入射照明角度の方向と同一の方向である、コーティング済み物品。
前記光学コーティングは、前記基板と接触する第1の勾配層、前記第1の勾配層を覆う耐擦傷性層、及び前記耐擦傷性層を覆う第2の勾配層を備え、前記第2の勾配層は前記反射防止表面を画定し;
前記基板における前記第1の勾配層の屈折率は、前記基板の屈折率の0.2以内であり;
前記耐擦傷性層における前記第1の勾配層の屈折率は、前記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
前記耐擦傷性層における前記第2の勾配層の屈折率は、前記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
前記反射防止表面における前記第2の勾配層の屈折率は、1.35〜1.7である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコーティング済み物品。
前記光学コーティングは、第1の反射防止コーティング、前記第1の反射防止コーティングを覆う耐擦傷性層、及び前記耐擦傷性層を覆う第2の反射防止コーティングを備え、前記第2の反射防止コーティングは前記反射防止表面を画定し、前記第1の反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備え、前記第2の反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコーティング済み物品。
前記光学コーティングは、前記基板と接触する勾配層、前記勾配層を覆う耐擦傷性層、及び前記耐擦傷性層を覆う反射防止コーティングを備え、前記反射防止コーティングは前記反射防止表面を画定し;
前記基板における前記勾配層の屈折率は、前記基板の屈折率の0.2以内であり;
前記耐擦傷性層における前記勾配層の屈折率は、前記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
前記反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコーティング済み物品。
前記光学コーティングは、前記基板と接触する反射防止コーティング、前記反射防止コーティングを覆う耐擦傷性層、及び前記耐擦傷性層を覆う勾配層を備え、前記勾配層は前記反射防止表面を画定し;
前記反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備え;
前記耐擦傷性層における前記反射防止コーティングの屈折率は、前記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
前記反射防止表面における前記勾配層の屈折率は、1.35〜1.7である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコーティング済み物品。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより、コーティング済み物品の様々な実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例は、添付の図面に図示されている。
図1を参照すると、本明細書で開示される1つ以上の実施形態によるコーティング済み物品100は、非平面基板110及びこの基板上に配置された光学コーティング120を含んでよい。非平面基板110は、対向する大表面112、114及び対向する小表面116、118を含んでよい。光学コーティング120は
図1において、第1の対向する大表面112上に配置されているものとして示されている;しかしながら、光学コーティング120は、第1の対向する大表面112上に配置するのに加えて、又はこれに代えて、第2の対向する大表面114、及び/又は上記対向する小表面のうちの一方若しくは両方の上に配置してよい。光学コーティング120は、反射防止表面122を形成する。反射防止表面122は空気境界面を形成し、また一般に、光学コーティング120の縁部及びコーティング済み物品100全体の縁部を画定する。本明細書に記載されるように、基板110は略透明であってよい。
【0020】
本明細書に記載の実施形態によると、基板110は非平面である。本明細書中で使用される場合、「非平面基板(non‐planar substrate)」は、基板110の大表面112、114のうちの少なくとも1つが幾何学的に平坦な形状ではない基板を指す。例えば
図1に示すように、大表面112の一部分が湾曲したジオメトリを備えてよい。大表面112の曲率の程度は様々であってよい。例えば複数の実施形態は、約1mm〜数メートル(即ち略平面)、例えば約3mm〜約30mm、又は約5mm〜約10mmの近似半径によって測定される曲率を有してよい。実施形態では、非平面基板は、
図1に示すように平面部分を備えてよい。例えば携帯用電子デバイスのためのタッチスクリーンは、その中央又は中央付近の略平面状の表面と、その縁部付近の湾曲した(即ち非平面)部分とを備えてよい。このような基板の例としては、Apple iPhone(登録商標)6スマートフォン又はSamsung Galaxy S6 Edgeスマートフォンのカバーガラスが挙げられる。非平面基板のいくつかの実施形態が図示されているが、非平面基板は、例えば湾曲したシート、又は管状のシートでさえある、多様な形状を取ることができることを理解されたい。
【0021】
非平面基板110は大表面112を備え、これは少なくとも2つの部分、即ち第1の部分113及び第2の部分115を備え、これらは互いに対して平坦ではない。方向n
1は、大表面112の第1の部分113に対して垂直であり、方向n
2は、大表面112の第2の部分115に対して垂直である。第1の部分113に対して垂直な方向n
1及び第2の部分115に対して垂直な方向n
2は、同一ではない。実施形態では、n
1とn
2との間の角度は、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約25°、少なくとも約30°、少なくとも約35°、少なくとも約40°、少なくとも約45°、少なくとも約50°、少なくとも約55°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約120°、少なくとも約150°、又は少なくとも約180°でさえあってよい(例えばn
1とn
2との間の角度は、管状基板に関しては180°であってよい)。例えばn
1とn
2との間の角度は、約10°〜約30°、約10°〜約45°、約10°〜約60°、約10°〜約75°、約10°〜約90°、約10°〜約120°、約10°〜約150°、又は約10°〜約180°であってよい。更なる実施形態では、n
1とn
2との間の角度は、約10°〜約80°、約20°〜約80°、約30°〜約80°、約40°〜約80°、約50°〜約80°、約60°〜約80°、約70°〜約80°、約20°〜約180°、約30°〜約180°、約40°〜約180°、約50°〜約180°、約60°〜約180°、約70°〜約150°、又は約80°〜約180°であってよい。
【0022】
コーティング済み物品100を透過する又はコーティング済み物品100によって反射される光は、
図1に示すような視認方向v(即ちn
1に関するv
1及びn
2に関するv
2)において測定してよく、これらは基板110の大表面112に対して垂直でなくてよい。上記視認方向は、角表面の法線から測定される場合、入射照明角度と呼ばれる場合もある。例えば本明細書中で説明されるように、反射色、透過色、平均光反射率、平均光透過率、明所視反射率及び明所視透過率。視認方向vは、基板表面nに対して垂直な方向と視認方向vとの間の角度である入射照明角度θを画定する(即ち、θ
1は法線方向n
1と視認方向v
1との間の入射照明角度であり、θ
2は法線方向n
2と視認方向v
2との間の入射照明角度である)。
図1は0°でない入射照明角度を図示しているが、いくつかの実施形態では、入射照明角度は約0°となってよく、これによりvはnと等しくなることを理解されたい。コーティング済み物品100の一部分の光学特性は、入射照明角度θが変化すると異なるものとなり得る。
【0023】
引き続き
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、基板の大表面112に対して垂直な方向において測定した光学コーティング120の厚さは、基板110の第1の部分113及び第2の部分115を覆うように配置された光学コーティング120の複数の部分間で異なり得る。例えば光学コーティング120は、例えば化学蒸着(例えばプラズマ強化化学蒸着(PECVD)、低圧化学蒸着、大気圧化学蒸着及びプラズマ強化大気圧化学蒸着)、物理蒸着(例えば反応性若しくは非反応性スパッタリング、若しくはレーザアブレーション)、熱若しくは電子ビーム蒸発、及び/又は原子層堆積といった真空堆積技法によって、非平面基板110上に堆積させてよい。噴霧、浸漬、スピンコート又は(例えばゾル‐ゲル材料を用いた)スロットコートといった、液体ベースの方法も使用してよい。一般に、蒸着技法としては、薄膜の生産に使用できる多様な真空堆積方法が挙げられる。例えば物理蒸着は、物理的プロセス(例えば加熱又はスパッタリング)を用いて材料の蒸気を生成し、次にこれを、コーティングされる対象物上に堆積させる。このような蒸着法は、「照準線(line‐of‐sight)」堆積スキームを利用してよく、ここでは、堆積された材料は、堆積方向と基板表面に対して垂直な角度との間の角度にかかわらず、基板への堆積中に均一な方向に移動する。
【0024】
図1を参照すると、矢印dは照準線堆積方向を示す。
図1の堆積方向dは、光学コーティング120の堆積中に基板が大表面114上に静置されるシステムにおいて一般的となり得るように、基板110の大表面114に対して垂直である。線dの矢印は、照準線堆積の方向を指す。線tは、基板110の大表面112に対して垂直な方向を示す。大表面112に対して垂直な方向において測定した場合の光学コーティング120の垂直厚さは、線tの長さによって表される。堆積角度φは、堆積方向dと大表面に対して垂直な方向dとの間の角度として定義される。光学コーティング120を、理論上の照準線堆積によって堆積させた場合、光学コーティング120の一部分の厚さは、φのコサインとして決定できる。従ってφが増大するに従って光学コーティング120の厚さは減少する。蒸着によって堆積した光学コーティング120の実際の厚さは、コサインφのスカラー量によって決定されるものとは異なる場合があるが、これは、非平面基板110に適用した場合に良好な性能を有し得る光学コーティングの設計をモデリングするために有用な推定値を提供する。更に、n
1及びdは
図1では同一方向であるが、これらは全ての実施形態において同一方向である必要はない。
【0025】
本開示全体を通して、特段の記載がない限り、光学コーティング120の厚さは法線方向nにおいて測定されることを理解されたい。
【0026】
実施形態によると、本明細書に記載されているように、コーティング済み物品100の様々な部分は、互いに同等と思われる、光反射率、光透過率、反射色及び/又は透過色といった光学特性を有してよい。例えば第1の部分113の光学特性と、第2の部分115の光学特性とは、各部分113、115において基板110に対して略垂直な方向でそれぞれを視認した場合(即ちθ
1が約0であり、θ
2が約0である場合)に、同様であってよい。他の実施形態では、第1の部分113の光学特性と、第2の部分115の光学特性とは、各部分113、115において法線に対して指定された範囲内の入射照明角度でそれぞれを視認した場合(例えばθ
1が約0°〜約60°であり、θ
2が約0°〜約60°である場合)に、同様であってよい。更なる実施形態では、第1の部分113の光学特性と、第2の部分115の光学特性とは、略同一の方向においてそれぞれを視認した場合(例えばv
1とv
2との間の角度が略0°である場合)に、同様であってよい。
【0027】
光学コーティング120は、少なくとも1つの材料の少なくとも1つの層を含む。用語「層(layer)」は、単一の層を含んでよく、又は1つ以上の副層を含んでよい。このような副層は、互いに直接接触していてよい。上記副層は、同一の材料、又は2つ以上の異なる材料から形成してよい。1つ以上の代替実施形態では、このような副層は、間に配置された異なる材料の介在層を有してよい。1つ以上の実施形態では、層は、1つ以上の連続する断絶していない層及び/又は1つ以上の不連続な断絶した層(即ち互いに隣接して形成された異なる複数の材料を有する層)を含んでよい。層又は副層は、個別堆積又は連続堆積プロセスを含む、当該技術分野において公知のいずれの方法で形成してよい。1つ以上の実施形態では、層は、連続堆積プロセスのみ、あるいは個別堆積プロセスのみを用いて形成してよい。
【0028】
光学コーティング120の厚さは、堆積の方向において約1μm以上であってよいが、それでも依然として、本明細書に記載の光学的特性を呈する物品を提供する。いくつかの例では、堆積の方向における光学コーティング厚さは、約1μm〜約20μm(例えば約1μm〜約10μm又は約1μm〜約5μm)であってよい。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「配置する(dispose)」は、当該技術分野において公知のいずれの方法を用いて、材料を表面上にコーティング、堆積及び/又は形成することを含む。配置された材料は、本明細書において定義されているような層を構成し得る。句「…上に配置された(disposed on)」は、材料を表面上に、上記材料が上記表面に直接接触するように形成する例を含み、また、上記材料が表面上に、堆積される上記材料と上記表面との間に1つ以上の介在材料を伴って形成される例も含む。上記1つ以上の介在材料は、本明細書において定義されているような層を構成し得る。更に、
図2〜8は平面基板を概略図で示しているが、
図2〜8は
図1に示されているような非平面基板を有するものと見做されるべきものであり、各図の教示の概念を簡略化するために平面として図示されていることを理解されたい。
【0030】
図2に示すように、光学コーティング120は反射防止コーティング130を含み、これは複数の層(130A、130B)を含んでよい。1つ以上の実施形態では、反射防止コーティング130は、2つ以上の層を含む区間132を含んでよい。1つ以上の実施形態では、上記2つ以上の層は、互いに異なる屈折率を有することを特徴としてよい。一実施形態では、区間132は、及び第1の低RI層130A及び第2の高RI層130Bを含む。上記第1の低RI層と上記第2の高RI層との屈折率の差は、約0.01以上、約0.05以上、約0.1以上、又は約0.2以上でさえあってよい。
【0031】
図2に示すように、反射防止コーティング130は、複数の区間132を含んでよい。単一の区間132は、複数の区間132が設けられる場合に第1の低RI層130A(例示として「L」で表す)及び第2の高RI層130B(例示として「H」で表す)が、以下のような層のシーケンス:L/H/L/H又はH/L/H/Lで交互になるように、1つの第1の低RI層130A及び1つの第2の高RI層130Bを含んでよく、これにより、第1の低RI層130A及び第2の高RI層130Bが、光学コーティング120の物理的厚さに沿って交互に現れる。
図2の例では、反射防止コーティング130は3つの区間132を含む。いくつかの実施形態では、反射防止コーティング130は最大25個の区間132を含んでよい。例えば反射防止コーティング130は、約2〜約20個の区間132、約2〜約15個の区間132、約2〜約10個の区間132、約2〜約12個の区間132、約3〜約8個の区間132、又は約3〜約6個の区間132を含んでよい。
【0032】
図3に示す例では、反射防止コーティング130は追加のキャッピング層131を含んでよく、これは、第2の高RI層130Bより低屈折率の材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、
図3に示すように、区間132は、1つ以上の第3の層130Cを含んでよい。1つ以上の第3の層130Cは、低いRI、高いRI又は中程度のRIを有してよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の層130Cは、第1の低RI層130A又は第2の高RI層130Bと同一のRIを有してよい。他の実施形態では、1つ以上の第3の層130Cは、第1の低RI層130AのRIと第2の高RI層130BのRIとの間の中程度のRIを有してよい。あるいは1つ以上の第3の層130Cは、第2の高RI層130Bを超える屈折率を有してよい。第3の層130Cは、光学コーティング120中に、以下の例示的構成:L
第3の層/H/L/H/L;H
第3の層/L/H/L/H;L/H/L/H/L
第3の層;H/L/H/L/H
第3の層;L
第3の層/H/L/H/L/H
第3の層;H
第3の層/L/H/L/H/L
第3の層;L
第3の層/L/H/L/H;H
第3の層/H/L/H/L;H/L/H/L/L
第3の層;L/H/L/H/H
第3の層;L
第3の層/L/H/L/H/H
第3の層;H
第3の層/H/L/H/L/L
第3の層;L/M
第3の層/H/L/M/H;H/M/L/H/M/L;M/L/H/L/M;及び他の組み合わせで設けてよい。これらの構成において、いずれの添字を有しない「L」は第1の低RI層を指し、いずれの添字を有しない「H」は第2の高RI層を指す。「L
第3の副層」という言及は、低いRIを有する第3の層を指し、「H
第3の副層」という言及は、高いRIを有する第3の層を指し、「M」は、中程度のRIを有する第3の層を指し、これらは全て上記第1の層及び上記第2の層に対してのものである。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「低RI、低いRI(low RI)」、「高RI、高いRI(high RI)」及び「中RI、中程度のRI(medium RI)」は、別の1項に対するRIの相対値を指す(例えば低RI<中RI<高RI)。1つ以上の実施形態では、第1の低RI層又は第3の層と共に使用される用語「低RI」は、約1.3〜約1.7又は1.75を含む。1つ以上の実施形態では、第2の高RI層又は第3の層と共に使用される用語「高RI」は、約1.7〜約2.5(例えば約1.85以上)を含む。いくつかの実施形態では、第3の層と共に使用される用語「中RI」は、約1.55〜約1.8を含む。いくつかの例では、低RI、高RI及び中RIに関する範囲は重なり合う場合がある;しかしながらほとんどの場合、反射防止コーティング130の層は、RIに関する一般的な関係:低RI<中RI<高RIを有する。
【0034】
1つ以上の第3の層130Cは、区間132とは別個の層として設けてよく、
図4に示すように、1つ以上の区間132とキャッピング層131との間に配置してよい。上記1つ以上の第3の層もまた、区間132とは別個の層として設けてよく、
図5に示すように、基板110と複数の区間132との間に配置してよい。1つ以上の第3の層130Cは、
図6に示すように、追加のコーティング140に加えて、キャッピング層131の代わりに、又はキャッピング層131に加えて、使用してよい。
【0035】
反射防止コーティング130中での使用に好適な材料としては:SiO
2、Al
2O
3、GeO
2、SiO、AlOxNy、AlN、SiNx、SiO
xN
y、Si
uAl
vO
xN
y、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、ZrO
2、TiN、MgO、MgF
2、BaF
2,CaF
2、SnO
2、HfO
2、Y
2O
3、MoO
3、DyF
3、YbF
3、YF
3、CeF
3、ポリマー、フルオロポリマー、プラズマ重合ポリマー、シロキサンポリマー、シルセスキオキサン、ポリイミド、フッ化ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、ポリメチルメタクリレート、耐擦傷性層中での使用に好適なものとして以下に挙げられている材料、及び当該技術分野において公知の他の材料が挙げられる。第1の低RI層中での使用に好適な材料のいくつかの例としては:SiO
2、Al
2O
3、GeO
2、SiO、AlO
xN
y、SiO
xN
y、Si
uAl
vO
xN
y、MgO、MgAl
2O
4、MgF
2、BaF
2、CaF
2、DyF
3、YbF
3、YF
3、及びCeF
3が挙げられる。第1の低RI層中での使用のための上記材料の窒素含有量は、(例えばAl
2O
3及びMgAl
2O
4等の材料において)最小化できる。第2の高RI層中での使用に好適な材料のいくつかの例としては:Si
uAl
vO
xN
y、Ta
2O
5、Nb
2O
5、AlN、Si
3N
4、AlO
xN
y、SiO
xN
y、SiN
x、SiN
x:H
y、HfO
2、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、MoO
3及びダイヤモンド様炭素が挙げられる。複数の例では、高RI層は、高硬度層又は耐擦傷性層であってもよく、また上に列挙した高RI材料は、高い硬度又は耐擦傷性を備えてもよい。第2の高RI層及び/又は耐擦傷性層のための材料の酸素含有量は、特にSiNx又はAlNx材料において最小化できる。AlO
xN
y材料は、酸素ドープAlNxであると見做すことができ、即ちこれらは、AlNx結晶構造を有してよく(例えばウルツ鉱)、AlON結晶構造を有する必要はない。例示的なAlO
xN
y高RI材料は、約0原子%〜約20原子%の酸素、又は約5原子%〜約15原子%の酸素を含んでよく、その一方で30原子%〜約50原子%の窒素を含む。例示的な好ましいSi
uAl
vO
xN
y高RI材料は、約10原子%〜約30原子%又は約15原子%〜約25原子%のケイ素、約20原子%〜約40原子%又は約25原子%〜約35原子%のアルミニウム、約0原子%〜約20原子%又は約1原子%〜約20原子%の酸素、及び約30原子%〜約50原子%の窒素を含んでよい。上述の材料は、最大約30重量%まで水素化され得る。中程度の屈折率を有する材料が望ましい場合、いくつかの実施形態はAlN及び/又はSiO
xN
yを利用してよい。第2の高RI層及び/又は耐擦傷性層の硬度は、具体的に特性決定できる。いくつかの実施形態では、バーコビッチ圧子硬度試験で測定した場合の、第2の高RI層及び/又は耐擦傷性層の最大硬度は、約8GPa以上、約10GPa以上、約12GPa以上、約15GPa以上、約18GPa以上、又は約20GPa以上であってよい。場合によっては、第2の高RI層材料は、単一の層として堆積させてよく、また耐擦傷性層であることを特徴としてよく、この単一の層は、反復可能な硬度決定のために、約500〜2000nmの厚さを有してよい。
【0036】
1つ以上の実施形態では、反射防止コーティング130の1つ以上の層のうちの少なくとも1つは、ある特定の光学的厚さ範囲を含んでよい。本明細書中で使用される場合、用語「光学的厚さ(optical thickness)」は、層の物理的厚さと屈折率との合計を指す。1つ以上の実施形態では、反射防止コーティング130の複数の層のうちの少なくとも1つは、約2nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約15nm〜約100nm、約15〜約500nm又は約15〜約5000nmの光学的厚さを含んでよい。いくつかの実施形態では、反射防止コーティング130の全ての層はそれぞれ、約2nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約15nm〜約100nm、約15〜約500nm又は約15〜約5000nmの光学的厚さを有してよい。場合によっては、反射防止コーティング130の少なくとも1つの層は、約50nm以上の光学的厚さを有する。場合によっては、第1の低RI層はそれぞれ約2nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約15nm〜約100nm、約15〜約500nm又は約15〜約5000nmの光学的厚さを有する。他の場合には、第2の高RI層はそれぞれ、約2nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約15nm〜約100nm、約15〜約500nm又は約15〜約5000nmの光学的厚さを有する。更に他の場合には、第3の層はそれぞれ、約2nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約15nm〜約100nm、約15〜約500nm又は約15〜約5000nmの光学的厚さを有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、最上部の空気側層は、これもまた高い硬度を呈する高RI層を備えてよい。いくつかの実施形態では、追加のコーティング140を、この最上部の空気側高RI層の上に配置してよい(例えばこの追加のコーティングは、低摩擦コーティング、疎油性コーティング、又は清掃が容易なコーティングを含んでよい)。厚さが極めて薄い(例えば約10nm以下、約5nm以下又は約2nm以下)の低RI層の追加は、高RI層を含む最上部の空気側層に追加される場合、光学的性能に対して最小の影響しか有しない。厚さが極めて薄いこの低RI層は、SiO
2、疎油性若しくは低摩擦層、又はSiO
2と疎油性材料との組み合わせを含んでよい。例示的な低摩擦層は、ダイヤモンド様炭素を含んでよく、このような材料(又は光学コーティングの1つ以上の層)は、0.4未満、0.3未満、0.2未満又は更には0.1未満の摩擦係数を呈してよい。
【0038】
1つ以上の実施形態では、反射防止コーティング130は、約800nm以下の物理的厚さを有してよい。反射防止コーティング130は、約10nm〜約800nm、約50nm〜約800nm、約100nm〜約800nm、約150nm〜約800nm、約200nm〜約800nm、約10nm〜約750nm、約10nm〜約700nm、約10nm〜約650nm、約10nm〜約600nm、約10nm〜約550nm、約10nm〜約500nm、約10nm〜約450nm、約10nm〜約400nm、約10nm〜約350nm、約10nm〜約300nm、約50〜約300、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲の、物理的厚さを有してよい。
【0039】
1つ以上の実施形態では、1つ以上の第2の高RI層の複合物理的厚さを特性決定できる。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の第2の高RI層の複合厚さは、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上、又は約500nm以上でさえあってよい。上記複合厚さは、1つ以上の低RI層又は1つ以上の他の層が存在する場合であっても、反射防止コーティング130中の複数の高RI層それぞれの厚さの、算出された合計である。いくつかの実施形態では、高硬度材料(例えば窒化物又は酸窒化物)も含んでよい1つ以上の第2の高RI層の複合物理的厚さは、上記反射防止コーティング全体の物理的厚さの30%超であってよい。例えば、1つ以上の第2の高RI層の複合物理的厚さは、上記反射防止コーティング全体の物理的厚さの約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上又は約80%以上でさえあってよい。更に、又はあるいは、光学コーティング中に含まれる、高硬度材料でもあり得る高屈折率材料の量は物品又は光学コーティング120の最上部(即ちユーザ側、又は光学コーティングの、基板と反対側)の物理的厚さ500nmの百分率として特性決定できる。物品又は光学コーティングの最上部500nmの百分率として表現した場合、1つ以上の第2の高RI層の複合物理的厚さ(又は高屈折率材料の厚さ)は、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、又は約90%以上でさえあってよい。いくつかの実施形態では、上記反射防止コーティング内の、比較的高い比率の硬質かつ高屈折率材料を同時に作製することによって、本明細書中の他の箇所で更に説明されるような低い反射率、弱い色及び高い耐摩耗性を呈することもできる。1つ以上の実施形態では、第2の高RI層は、約1.85超の屈折率を有する材料を含んでよく、第1の低RI層は、約1.75未満の屈折率を有する材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、第2の高RI層は、窒化物又は酸窒化物材料を含んでよい。いくつかの例では、光学コーティング中の(又は光学コーティングの最も厚い第2の高RI層上に配置された層中の)全ての第1の低RI層の複合厚さは、約200nm以下(例えば約150nm以下、約100nm以下、約75nm以下又は約50nm以下)であってよい。
【0040】
コーティング済み物品100は、上記反射防止コーティング上に配置された1つ以上の追加のコーティング140を含んでよい。1つ以上の実施形態では、この追加のコーティングは、清掃が容易なコーティングを含んでよい。好適な清掃が容易なコーティングの例は、2012年11月30日出願の米国特許出願第13/690,904号明細書「PROCESS FOR MAKING OF GLASS ARTICLES WITH OPTICAL 及び EASY‐TO‐CLEAN COATINGS」に記載されており、この特許出願は参照によりその全体が本出願に援用される。上記清掃が容易なコーティングは、厚さ約5nm〜約50nmであってよく、またフルオロシラン等の公知の材料を含んでよい。あるいは、又は更に、上記清掃が容易なコーティングは、低摩擦コーティング又は表面処理を含んでよい。例示的な低摩擦コーティング材料としては、ダイヤモンド様炭素、シラン(例えばフルオロシラン)、ホスホネート、アルケン及びアルキンが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記清掃が容易なコーティングは、約1nm〜約40nm、約1nm〜約30nm、約1nm〜約25nm、約1nm〜約20nm、約1nm〜約15nm、約1nm〜約10nm、約5nm〜約50nm、約10nm〜約50nm、約15nm〜約50nm、約7nm〜約20nm、約7nm〜約15nm、約7nm〜約12nm又は約7nm〜約10nm、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲の厚さを有する。
【0041】
追加のコーティング140は、1つ以上の耐擦傷性層を含んでよい。いくつかの実施形態では、追加のコーティング140は、清掃が容易な材料と耐擦傷性材料との組み合わせを含む。一例では、この組み合わせは、清掃が容易な材料、及びダイヤモンド様炭素を含む。このような追加のコーティング140は、厚さ約5nm〜約20nmであってよい。追加のコーティング140の成分は、別個の層において提供してよい。例えばダイヤモンド様炭素は第1の層として配置してよく、清掃が容易な層は、ダイヤモンド様炭素の第1の層の上に、第2の層として配置できる。第1の層及び第2の層の厚さは、上記追加のコーティングに関して上で提示した範囲であってよい。例えば、ダイヤモンド様炭素の第1の層は、厚さ約1nm〜約20nm又は約4nm〜約15nm(又はより具体的には約10nm)であってよく、また清掃が容易な層の第2の層は、厚さ約1nm〜約10nm(又はより具体的には約6nm)とすることができる。ダイヤモンド様コーティングは、四面体非晶質炭素(Ta‐C)、Ta‐C:H、及び/又はa‐C‐Hを含んでよい。
【0042】
本明細書に記載されているように、光学コーティング120は耐擦傷性層150を含んでよく、これは、反射防止コーティング130と基板110との間に配置してよい。いくつかの実施形態では、耐擦傷性層150は、(
図7に示されている150のように)反射防止コーティング130の層の間に配置される。反射防止コーティングの2つのセクション(即ち耐擦傷性層150と基板110との間に配置される第1のセクション、及び上記耐擦傷性層上に配置される第2のセクション)は、互いに異なる厚さを有してよく、又は互いに本質的に同一の厚さを有してよい。反射防止コーティング130の上記2つのセクションの層は、組成、順序、厚さ及び構成において互いに同一であってよく、又は互いに異なっていてよい。
【0043】
耐擦傷性層150(又は追加のコーティング140として使用される耐擦傷性層)に使用される例示的な材料は、無機カーバイド、窒化物、酸化物、ダイヤモンド様材料、又はこれらの組み合わせを含んでよい。耐擦傷性層150のために好適な材料の例としては、酸化金属、窒化金属、酸窒化金属、炭化金属、酸炭化金属及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。例示的な金属としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta及びWが挙げられる。耐擦傷性層150に利用できる材料の具体例としては、Al
2O
3、AlN、AlO
xN
y、Si
3N
4、SiO
xN
y、Si
uAl
vO
xN
y、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、Si
xC
y、Si
xO
yC
z、ZrO
2、TiO
xN
y及びこれらの組み合わせが挙げられる。耐擦傷性層150はまた、硬度、靭性又は耐摩耗/摩滅性を改善するために、ナノ複合材料、又は制御された微小構造を有する材料も含んでよい。例えば耐擦傷性層150は、約5nm〜約30nmのサイズのナノ微結晶を含んでよい。実施形態では、耐擦傷性層150は、変態強化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、又はジルコニア‐強化アルミナを含んでよい。実施形態では、耐擦傷性層150は、約1MPa√m超の破壊靭性を呈し、また同時に約8Ga超の硬度値を呈する。
【0044】
耐擦傷性層150は、(
図7に示すような)単一の層、又は屈折率勾配を呈する複数の副層若しくは単一の層を含んでよい。複数の層が使用される場合、このような層は耐擦傷性コーティングを形成する。例えば耐擦傷性層150は、Si
uAl
vO
xN
yの組成勾配を含んでよく、ここでは、Si、Al、O及びNのうちのいずれの1つ以上の濃度が変化することによって、屈折率が増大又は低下する。この屈折率勾配は、多孔性を用いて形成してもよい。このような勾配は、2014年4月28日出願の米国特許出願第14/262224号明細書「Scratch‐Resistant Articles with a Gradient Layer」に更に十分に記載されており、この特許出願は、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0045】
図8に示されている一実施形態では、光学コーティング120は、高RI層として組み込まれた耐擦傷性層150を含んでよく、1つ以上の低RI層130A及び高RI層130Bは、耐擦傷性層150を覆うように位置決めしてよく、任意のキャッピング層131が低RI層130A及び高RI層130Bを覆うように位置決めされ、ここでキャッピング層131は、低RI材料を含む。あるいは耐擦傷性層150は、光学コーティング120全体の中で、又はコーティング済み物品100全体の中で、最も厚い硬質層又は最も厚い高RI層として定義できる。理論によって束縛されるものではないが、比較的少量の材料が耐擦傷性層150を覆うように堆積される場合に、コーティング済み物品100は押込み深さとして増大した硬度を呈し得ると考えられる。しかしながら、耐擦傷性層150の上に低RI及び高RI層を含むことにより、コーティング済み物品100の光学的特性を増強できる。いくつかの実施形態では、比較的少数の層(例えば1、2、3、4又は5層のみ)を、耐擦傷性層150を覆うように位置決めしてよく、これらの各層は比較的薄くてよい(例えば100nm未満、75nm未満、50nm未満、又は25nm未満でさえある)。
【0046】
実施形態では、耐擦傷性層150を覆うように(即ち耐擦傷性層150の空気側の上に)堆積した層は、約1000nm以下、約500nm以下、約450nm以下、約400nm以下、約350nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約225nm以下、約200nm以下、約175nm以下、約150nm以下、約125nm以下、約100nm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、約60nm以下、又は約50nm以下でさえある合計厚さを有してよい。
【0047】
実施形態では、耐擦傷性層150を覆うように(即ち耐擦傷性層150の空気側の上に)位置決めされた1つ以上の低RI層の合計厚さ(低RI層が接していない場合であっても、全ての低RI層の厚さの合計)は、約500nm以下、約450nm以下、約400nm以下、約350nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約225nm以下、約200nm以下、約175nm以下、約150nm以下、約125nm以下、約100nm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、約60nm以下、約50nm以下、約40nm以下、約30nm以下、約20nm以下、又は約10nm以下でさえあってよい。
【0048】
1つ以上の実施形態では、光学コーティング120は1つ以上の勾配層を備えてよく、これはそれぞれ、
図25に示すように、それぞれの厚さに沿った組成勾配を備えてよい。一実施形態では、光学コーティング120は、下側勾配層170、(上述のような)耐擦傷性層150、及び上側勾配層160を備えてよい。下側勾配層170は、基板110と直接接触して位置決めしてよい。耐擦傷性層150は下側勾配層170を覆ってよく、上側勾配層は耐擦傷性層150に直接接触してこれを覆ってよい。耐擦傷性層150は、SiN
x、SiAlON、SiON等の、高い屈折率を有する1つ以上の比較的硬質の材料を含んでよい。実施形態では、耐擦傷性層150の厚さは、他の実施形態の耐擦傷性層150に関して記載されているように、約200nm〜数マイクロメートルであってよい。下側勾配層170は、おおよそ、基板110に接触している部分における基板の屈折率(これは比較的低いものとなり得る)から、耐擦傷性層150に接触している部分における耐擦傷性層150の屈折率(これは比較的高いものとなり得る)まで変化する屈折率を有してよい。下側勾配層170の厚さは、約10nm〜数マイクロメートル、例えば50nm〜1000nm、100nm〜1000nm、又は500nm〜1000nmであってよい。上側勾配層160は、おおよそ、耐擦傷性層150に接触している部分における耐擦傷性層150の屈折率(これは比較的高いものとなり得る)から、反射防止表面122における空気境界面の比較的低い屈折率まで変化する屈折率を有してよい。(反射防止表面122における)上側勾配層160の最上部は、シリケートガラス、シリカ、リンガラス又はフッ化マグネシウムといった、屈折率が1.38〜1.55の材料を含んでよい。上側勾配層160の最上部はまた、限定するものではないがAl
2O
3、Si
uAl
vO
x、Si
uAl
vO
xN
y、Si
vO
xN
y、又はAl
vO
xN
yといった、約1.38〜1.7の屈折率及び操作された硬度を有する材料を含んでよい。高い硬度及び低い屈折率は、反射防止表面122において望ましいものとなり得る。
図26は、
図25の光学コーティング120の例示的な屈折率プロファイルを示す。基板110、下側勾配層170、耐擦傷性層150、及び上側勾配層160は、
図26の屈折率プロファイルに対応する部分にマーキングされている。
【0049】
1つ以上の実施形態では、基板110における下側勾配層170の屈折率は、基板110の屈折率の0.2以内(例えば0.15、0.1、0.05、0.02、又は0.01倍以内)であってよい。耐擦傷性層における下側勾配層170の屈折率は、耐擦傷性層150の屈折率の0.2以内(例えば0.15、0.1、0.05、0.02、又は0.01倍以内)であってよい。耐擦傷性層150における上側勾配層160の屈折率は、耐擦傷性層150の屈折率の0.2以内(例えば0.15、0.1、0.05、0.02、又は0.01倍以内)であってよい。反射防止表面122における上側勾配層160の屈折率は、約1.38〜約1.55であってよい。実施形態では、耐擦傷性層150の屈折率は少なくとも約1.75、1.8、又は1.9でさえあってよい。
【0050】
1つ以上の実施形態では、下側勾配層170、上側勾配層160、又はこれら両方は、(非線形屈折率プロファイルをもたらす)非線形濃度プロファイルを有してよ。例えば、
図27及び28は、非線形上側勾配層160を示す。このような非線形上側勾配層160は、以下の実施例において説明されるように、形態パラメータによって定量化できる。形態パラメータ1は、線形屈折率プロファイルに対応する。1未満の形態パラメータは、勾配層の幾何学的中点における屈折率が、勾配層の上側及び下側表面における屈折率の平均より大きくなる、非線形屈折率プロファイルを指す。
図27は、1未満の形態パラメータを有する上側勾配層160を示す。1より大きい形態パラメータは、勾配層の幾何学的中点における屈折率が、勾配層の上側及び下側表面における屈折率の平均より小さくなる、非線形屈折率プロファイルを指す。
図28は、1より大きい形態パラメータを有する上側勾配層160を示す。1未満の形態パラメータを有するコーティング済み物品100は、勾配層全体にわたって硬質材料の濃度が高くなるため、高い硬度を有することができる。
【0051】
1つ以上の実施形態によると、コーティング済み物品100は、
図26の勾配を含む構造と、
図7の高RI/低RIを交互に含む構造との間のハイブリッドである構造を含んでよい。例えば
図7では、耐擦傷性層は、交互の高RI/低RI層を有する2つの反射防止コーティング130で挟まれ、
図26は、これらの交互の高RI/低RI層を、勾配層で置換する。ハイブリッドコーティングは、耐擦傷性層の下側の勾配層と、耐擦傷性層を覆う交互の高RI/低RIコーティングとを含んでよい。代替実施形態では、ハイブリッドコーティングは、耐擦傷性層を覆う勾配層と、耐擦傷性層の下側の交互の高RI/低RIコーティングとを含んでよい。勾配層を含む実施形態及び交互の高RI/低RIコーティングの実施形態(反射防止コーティングの実施形態と呼ばれる場合もある)に関して本明細書で提示される教示を、組み合わせる、及び交換することによって、上記2つの設計のハイブリッドを生産できることを理解されたい。
【0052】
光学コーティング120及び/又はコーティング済み物品100について、バーコビッチ圧子硬度試験で測定された硬度に関して説明できる。本明細書中で使用される場合、「バーコビッチ圧子硬度試験(Berkovich Indenter Hardness Test)」は、材料の硬度をその表面において、上記表面をダイヤモンドバーコビッチ圧子で押し込むことによって測定するステップを含む。バーコビッチ圧子硬度試験は、コーティング済み物品100の反射防止表面122、又は光学コーティング120内の層のうちのいずれの1つ以上を、ダイヤモンドバーコビッチ圧子で、約50nm〜約1000nmの押込み深さ(又は光学コーティング120若しくはその層のうち薄い方の全体の厚さ)まで押し込むステップと、押込み深さ範囲全体又はこの押込み深さの(例えば約100nm〜約600nmの範囲の)あるセグメントに沿ったこの押込みから、一般にはOliver, W.C.; Pharr, G. M. An improved technique for determining hardness 及び elastic modulus using load 及び displacement sensing indentation experiments. J. Mater. Res., Vol. 7, No. 6, 1992, 1564‐1583;及び Oliver, W.C.; Pharr, G.M. Measurement of Hardness 及び Elastic Modulus by Instrument Indentation: Advances in Understanding 及び Refinements to Methodology. J. Mater. Res., Vol. 19, No. 1, 2004, 3‐20に記載の方法を用いて、最大硬度を測定するステップを含む。本明細書中で使用される場合、硬度は平均硬度ではなく最大硬度を指す。
【0053】
典型的には、下層の基板より高い硬度を有するコーティングの(バーコビッチ圧子を用いるもの等の)ナノ押込み測定方法では、測定される硬度は、浅い押込み深さにおける可塑性ゾーンの発生により、初めは増大するように見える場合があり、その後増大して、より深い押込み深さにおいて最大値又は平坦域に達する。その後硬度は、下層の基板の影響により、更に深い押込み深さにおいて低下し始める。コーティングより硬度が高い基板を利用している場合、同一の影響を観察できる。しかしながら、硬度は、下層の基板の影響により、更に深い押込み深さにおいて増大する。
【0054】
押込み深さ範囲、及び1つ以上の特定の押込み深さ範囲における硬度値は、下層の基板の影響なしに、本明細書に記載の光学フィルム構造及びその層の特定の硬度応答を識別できるように選択できる。(光学フィルム構造が基板上に配置されているときに)バーコビッチ圧子で光学フィルム構造の硬度を測定する場合、材料の恒久的変形領域(可塑性ゾーン)は、上記材料の硬度に関連する。押込み中、弾性応力場は、この恒久的変形領域をはるかに超えて延在する。押込み深さが増大するにつれて、見かけの硬度及び弾性率は、下層の基板との応力場の相互作用によって影響を受ける。硬度に対する基板の影響は、比較的深い押込み深さにおいて(即ち典型的には、光学フィルム構造又は層の厚さの約10%超の深さにおいて)発生する。更に、押込みプロセス中に完全な可塑性を発生させるために、硬度応答がある一定の最小負荷を必要とすることが、更なる問題となる。このある一定の最小負荷の前、上記硬度は概ね増大する傾向を示す。
【0055】
小さい押込み深さ(これは小さい負荷として特性決定することもできる)(例えば最大約50nm)では、材料の見かけの硬度は、押込み深さに対して劇的に増大するように見える。この小さい押込み深さのレジームは、硬度の本当の尺度を表すわけではないが、その代わりに上述の可塑性ゾーンの発生を反映しており、これは圧子の有限曲率半径に関係する。中程度の押込み深さでは、見かけの硬度は最大レベルに近づく。より深い押込み深さでは、押込み深さが増大するにつれて基板の影響がより甚大になる。押込み深さが、光学コーティング120の厚さ又は層の厚さの約30%を超えると、硬度は劇的に低下し始める場合がある。
【0056】
いくつかの実施形態では、コーティング済み物品100は、反射防止表面122において測定した場合に、約8GPa以上、約10GPa以上又は約12GPa以上(例えば約14GPa以上、約16GPa以上、約18GPa以上、又は約20GPa以上)の硬度を呈してよい。コーティング済み物品100の硬度は、最大約20GPa又は30GPaでさえあってよい。このような測定された硬度値は、約50nm以上又は約100nm以上(例えば約50nm〜約300nm、約50nm〜約400nm、約50nm〜約500nm、約50nm〜約600nm、約200nm〜約300nm、約200nm〜約400nm、約200nm〜約500nm又は約200nm〜約600nm)の押込み深さに沿って、光学コーティング120及び/又はコーティング済み物品100が呈し得る。1つ以上の実施形態では、上記物品は、(反射防止表面の反対側の表面において測定できる)上記基板の硬度より高い硬度を呈する。
【0057】
実施形態によると、硬度は、コーティング済み物品100の異なる複数の部分で測定してよい。例えばコーティング済み物品は、第1の部分113及び第2の部分115の反射防止表面122において少なくとも約50nm以上の押込み深さで、少なくとも8GPa以上の硬度を示すことができる。例えば、第1の部分113及び第2の部分115の硬度は、約8GPa以上、約10GPa以上、又は約12GPa以上(例えば約14GPa以上、約16GPa以上、約18GPa以上、又は約20GPa以上)であってよい。
【0058】
実施形態によると、本明細書に記載のコーティング済み物品は、第1の部分113及び第2の部分115といったコーティング済み物品100の様々な部分において望ましい光学特性(低い反射率及び無色に近い色等)を有することができる。例えば光反射率は、第1の部分113及び第2の部分115において、各部分に対して略垂直な入射照明角度で視認した場合に、それぞれ比較的低くなり得る(また透過率は比較的高くなり得る)。別の実施形態では、各部分を略垂直な入射照明角度で視認した場合に、2つの部分の間の色の差異は、裸眼にとって微小なものとなり得る。別の実施形態では、これらの部分を同一の方向を有する入射照明角度で視認した場合、色の差異は裸眼にとって微小なものとなり得、また各部分において比較的低い反射率が存在し得る(即ち各部分の表面に対する入射照明角度は、これらの部分が互いに対して角度を有するため異なるが、照明方向は同一である)。光学特性としては、平均光透過率、平均光反射率、明所視反射率、明所視透過率、(例えばL*a*b*色座標における)反射色、及び(例えばL*a*b*色座標における)透過色が挙げられる。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「透過率(transmittance)」は、材料(例えば物品、基板又は光学フィルム若しくはその一部)を通過する所与の波長範囲内の入射光強度の百分率として定義される。用語「反射率(反射率)」は同様に、材料(例えば物品、基板又は光学フィルム若しくはその一部)から反射される所与の波長範囲内の入射光強度の百分率として定義される。反射率は、反射防止表面122のみにおいて測定される場合(例えば、物品のコーティングされていない裏面(例えば
図1の114)からの反射を、吸収材と結合させた裏面上に屈折率適合用オイルを用いることによって、又は他の公知の方法によって、除去した場合)、単一側面反射率として測定してよい。1つ以上の実施形態では、透過率及び反射率の特性決定のスペクトル解像度は、5nm又は0.02eV未満である。色は、反射においてより強くなり得る。角度色は、反射において、入射照明角度によるスペクトル反射率振動のシフトにより、視野角と共にシフトする。視野角による透過における角度色シフトもまた、入射照明角度によるスペクトル透過率振動の同一のシフトによるものである。入射照明角度による観察される色及び角度色シフトは、特に蛍光照明及び一部のLED照明等の鋭いスペクトル特徴を有する照明下において、デバイスのユーザにとって、気が散る原因となる、又は不快なものとなることが多い。透過における角度色シフトはまた、反射における色シフトの因子としても作用する場合があり、その逆もあり得る。透過及び/又は反射における角度色シフトの因子としては、視野角による角度色シフト、又は特定の光源又は試験システムによって定義される(角度とはある程度独立した)材料の吸収によって引き起こされ得る特定の白色点から離れる角度色シフトも挙げられる。
【0060】
平均光反射率及び平均光透過率は、約400nm〜約800nmの波長レジームにわたって測定してよい。更なる実施形態では、上記波長レジームは、約450nm〜約650nm、約420nm〜約680nm、約420nm〜約700nm、約420nm〜約740nm、約420nm〜約850nm、又は約420nm〜約950nmといった波長範囲を含んでよい。
【0061】
コーティング済み物品100は、様々な部分における明所視透過率及び反射率によって特性決定することもできる。本明細書中で使用される場合、「明所視反射率(photopic reflectance)」は、ヒトの眼の感度に従って波長スペクトルに対して反射率を重み付けすることにより、ヒトの眼の応答を模倣する。明所視反射率はまた、CIE色空間の慣習等の公知の慣習に従って、反射光の輝度値又は三刺激Y値として定義してもよい。平均明所視反射率は、以下の等式において、スペクトル反射率R(λ)に光源スペクトルI(λ)及び眼のスペクトル応答に関連するCIEの等色関数
【0065】
平均明所視透過率は、以下の等式において、スペクトル透過率T(λ)に光源スペクトルI(λ)及び眼のスペクトル応答に関連するCIEの等色関数
【0069】
一実施形態によると、コーティング済み物品100は、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した場合に、約8%以下の単一側面平均光反射率を示すことができ、第1の部分113の単一側面平均光反射率は、n
1に対する第1の入射照明角度θ
1で測定され、第1の入射照明角度θ
1は、n
1から約0°〜約60°の角度を含む。更なる実施形態では、第1の入射照明角度θ
1は、n
1から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含む。更なる実施形態では、コーティング済み物品100は、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した場合に、n
1から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の全ての入射照明角度θ
1に関して、約8%以下の単一側面平均光反射率を示すことができる。更なる実施形態では、入射照明角度θ
1の上述の範囲のうちのいずれの場合において、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した単一側面平均光反射率は、光波長レジーム全体にわたって、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、又は約0.8%以下であってよい。例えば単一側面平均光反射率は、約0.4%〜約9%、約0.4%〜約8%、約0.4%〜約7%、約0.4%〜約6%、又は約0.4%〜約5%、及びこれらの間の全ての範囲内であってよい。
【0070】
一実施形態によると、コーティング済み物品100は、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した場合に、約8%以下の単一側面平均光反射率を示すことができ、第2の部分115の単一側面平均光反射率は、n
2に対する第1の入射照明角度θ
2で測定され、第1の入射照明角度θ
2は、n
2から約0°〜約60°の角度を含む。更なる実施形態では、第1の入射照明角度θ
2は、n
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含む。更なる実施形態では、コーティング済み物品100は、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した場合に、n
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の全ての入射照明角度θ
2に関して、約8%以下の単一側面平均光反射率を示すことができる。更なる実施形態では、入射照明角度θ
2の上述の範囲のうちのいずれの場合において、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した単一側面平均光反射率は、光波長レジーム全体にわたって、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、又は約0.8%以下であってよい。例えば単一側面平均光反射率は、約0.4%〜約9%、約0.4%〜約8%、約0.4%〜約7%、約0.4%〜約6%、又は約0.4%〜約5%、及びこれらの間の全ての範囲内であってよい。
【0071】
別の実施形態では、本開示の角度範囲のうちのいずれにわたって、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した場合の単一側面平均光反射率と、本開示の角度範囲のうちのいずれにわたって、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した場合の単一側面平均光反射率との間の差異は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下でさえある。
【0072】
別の実施形態では、第1の部分113及び/又は第2の部分115における明所視反射率は、本開示のある角度範囲にわたって、単一側面平均光反射率に関して開示されている範囲内である。
【0073】
一実施形態によると、コーティング済み物品100は、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した場合に、約8%以下の平均光透過率を示すことができ、第1の部分113の平均光透過率は、n
1に対する第1の入射照明角度θ
1で測定され、第1の入射照明角度θ
1は、n
1から約0°〜約60°の角度を含む。更なる実施形態では、第1の入射照明角度θ
1は、n
1から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含む。更なる実施形態では、コーティング済み物品100は、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した場合に、n
1から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の全ての入射照明角度θ
1に関して、約8%以下の平均光透過率を示すことができる。更なる実施形態では、入射照明角度θ
1の上述の範囲のうちのいずれの場合において、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した平均光透過率は、光波長レジーム全体にわたって、約90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、又は98%以上であってよい。例えば平均光透過率は、約90%〜約95.5%、約91%〜約95.5%、約92%〜約95.5%、約93%〜約95.5%、約94%〜約95.5%、約95%〜約95.5%、約96%〜約95.5%、及びこれらの間の全ての範囲内であってよい。
【0074】
一実施形態によると、コーティング済み物品100は、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した場合に、約8%以下の平均光透過率を示すことができ、第2の部分115の平均光透過率は、n
2に対する第1の入射照明角度θ
2で測定され、第1の入射照明角度θ
2は、n
2から約0°〜約60°の角度を含む。更なる実施形態では、第1の入射照明角度θ
2は、n
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含む。更なる実施形態では、コーティング済み物品100は、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した場合に、n
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の全ての入射照明角度θ
2に関して、約8%以下の平均光透過率を示すことができる。更なる実施形態では、入射照明角度θ
2の上述の範囲のうちのいずれの場合において、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した平均光透過率は、光波長レジーム全体にわたって、約90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、又は98%以上であってよい。例えば平均光透過率は、約90%〜約95.5%、約91%〜約95.5%、約92%〜約95.5%、約93%〜約95.5%、約94%〜約95.5%、約95%〜約95.5%、約96%〜約95.5%、及びこれらの間の全ての範囲内であってよい。
【0075】
別の実施形態では、本開示の角度範囲のうちのいずれにわたって、基板110の第1の部分113の反射防止表面122において測定した場合の平均光透過率と、本開示の角度範囲のうちのいずれにわたって、基板110の第2の部分115の反射防止表面122において測定した場合の平均光透過率との間の差異は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下でさえある。
【0076】
別の実施形態では、第1の部分113及び/又は第2の部分115における明所視透過率は、本開示のある角度範囲にわたって、平均光透過率に関して開示されている範囲内である。
【0077】
別の実施形態によると、単一側面平均光反射率、平均光透過率、明所視反射率、明所視透過率、反射色、及び透過色のうちの1つ以上は、第1の部分113及び第2の部分115において測定してよく、第1の入射照明角度θ
1はn
1から約0°〜約60°の角度を含み、第2の部分115の所与の光学特性は第2の入射照明角度θ
2で測定され、第2の入射照明角度θ
2は、第1の入射照明角度の方向v
1と同一の方向とし、これにより第1の部分113及び第2の部分115の光学特性は同一の視認方向で測定される(即ちv
1はv
2と等しいが、n
1がn
2と等しくないためθ
1はθ
2と等しくない)。
【0078】
光学コーティング120/空気境界面及び光学コーティング120/基板110境界面からの反射波の間の光干渉は、コーティング済み物品100の見た目の色を生成する、スペクトル反射率及び/又は透過率の発振を引き起こし得る。1つ以上の実施形態では、コーティング済み物品100は第1の部分113において、法線n
1と入射照明角度θ
1における視認方向v
1との間で測定した場合に、約10以下の反射率及び/又は透過率の角度色シフトを示し得る。更に1つ以上の実施形態では、コーティング済み物品100は第2の部分115において、法線n
2と入射照明角度θ
2における視認方向v
2との間で測定した場合に、約10以下の反射率及び/又は透過率の角度色シフトを示し得る。
【0079】
1つ以上の実施形態によると、第1の部分113及び第2の部分115の基準点の色は、約10未満であってよい(例えば約9以下、約8以下、約7以下、約6以下、約5以下、約4以下、約3以下、又は約2以下でさえあってよい)。本明細書中で使用される場合、句「基準点の色(reference point color)」は、基準色に対する反射率及び/又は透過率の、CIE L*,a*,b*測色系におけるa*及びb*を指す。基準色(a*,b*)は、=(0,0)、(−2,−2)、(−4,−4)、又は基板110の色座標であってよい。基準点の色は、入射照明角度θ
1及びθ
2を変化させて測定してよい。基準(0,0)において、基準点の色は√((a*
物品)
2+(b*
物品)
2)として定義され、基準(−2,−2)において、基準点の色は√((a*
物品+2)
2+(b*
物品+2)
2)として定義され、基準(−4,−4)において、基準点の色は√((a*
物品+4)
2+(b*
物品+4)
2)として定義され、基板110の色座標としての基準において、基準点の色は√((a*
物品−a*
基板)
2+(b*
物品−b*
基板)
2)として定義される。実施形態では、基準点の色は複数の角度範囲にわたって測定してよく、これにより入射照明角度θ
1及びθ
2は、n
1又はn
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含んでよい。別の実施形態では、本開示の入射照明角度範囲のいずれに関して、第1の部分113、第2の部分115、又はこれら両方において、a*は約2以下であってよく、b*は約2以下であってよい。
【0080】
本明細書中で使用される場合、句「角度色シフト(angular color shift)」は、入射照明角度をシフトさせた場合の、反射率及び/又は透過率の、CIE L*,a*,b*測色におけるa*及びb*両方の変化を指す。なお、そうでないことが注記されていない限り、本明細書に記載の物品のL*座標は、いずれの角度又は基準点において同一であり、色シフトに影響を及ぼさない。例えば角度色シフトは、コーティング済み基板100のある特定の位置において、以下の式:
√((a*
v−a*
n)
2+(b*
v−b*
n)
2)、
を用いて決定でき、ここでa*
v及びb*
vは、入射照明角度において観察した場合の上記物品のa*及びb*座標を表し、a*
n及びb*
nは、法線又は法線付近において観察した場合の上記物品のa*及びb*座標を表す。
【0081】
1つ以上の実施形態では、第1の部分113の角度色シフトは、約10以下、約9以下、約8以下、約7以下、約6以下、約5以下、約4以下、約3以下、又は約2以下でさえあってよい。同様に、第2の部分115の角度色シフトは、約10以下、約9以下、約8以下、約7以下、約6以下、約5以下、約4以下、約3以下、又は約2以下でさえあってよい。入射照明角度θ
1及びθ
2はそれぞれ、n
1又はn
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含んでよい。更なる実施形態では、コーティング済み物品100は、基板110の第1の部分113及び第2の部分115において、n
1から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の全ての入射照明角度θ
1に関して、約10以下の反射又は透過色シフトを有してよい。いくつかの実施形態では、角度色シフトは約0であってよい。
【0082】
光源は、CIEによって決定される標準的な光源を含むことができ、これはA光源(タングステンフィラメント照明を表す)、B光源(日光シミュレート光源)、C光源(日光シミュレート光源)、Dシリーズ光源(自然日光を表す)、及びFシリーズ光源(様々なタイプの蛍光照明を表す)を含む。
【0083】
別の実施形態では、基板110の第1の部分113と基板110の第2の部分115との間の、コーティング済み物品100の反射色の差異は、約10以下であり(例えば約9以下、約8以下、約7以下、約6以下、約5以下、約4以下、約3以下、約2以下、又は約1以下でさえあってよく)、この反射色の差異は:
√((a*
第1の部分−a*
第2の部分)
2+(b*
第1の部分−b*
第2の部分)
2)
として定義され、第1の部分113の反射色は、n
1に対する第1の入射照明角度θ
1で測定され、第2の部分115の反射色は、n
2に対して測定された第2の入射照明角度θ
2で測定される。入射照明角度θ
1及びθ
2はそれぞれ、n
1又はn
2から約0°〜約60°、約0°〜約50°、約0°〜約40°、約0°〜約30°、約0°〜約20°、又は約0°〜約10°の角度を含んでよい。別の実施形態では、√((a*
第1の部分−a*
第2の部分)
2+(b*
第1の部分−b*
第2の部分)
2)で定義される反射色の差異は、第2の入射照明角度θ
2が第1の入射照明角度の方向v
1と同一の方向となるように測定してよく、これにより、第1の部分113及び第2の部分115の光学特性は同一の視認方向で測定される(即ちv
1はv
2と等しいが、n
1がn
2と等しくないためθ
1はθ
2と等しくない)。
【0084】
基板110は、無機材料を含んでよく、また非晶質基板、結晶質基板又はこれらの組み合わせを含んでよい。基板110は、人工材料並びに/又は天然材料(例えば石英及びポリマー)から形成してよい。例えば、いくつかの例では、基板110は、無機質であることを特徴としてよく、また具体的にはポリマー性であることを特徴としてよい。好適なポリマーの実施例としては、限定するものではないが:ポリスチレン(PS)(スチレンコポリマー及び混合物を含む)、ポリカーボネート(PC)(コポリマー及び混合物を含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートコポリマーといったコポリマー及び混合物を含む)、ポリオレフィン(PO)、並びにシクロポリオレフィン(環状PO)を含む、熱可塑性プラスチック;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリメチルメタクリレート(PMMA)(コポリマー及び混合物を含む)を含むアクリルポリマー;熱可塑性ウレタン(TPU);ポリエーテルイミド(PEI);並びにこれらのポリマーの混合物が挙げられる。他の例示的なポリマーとしては、エポキシ、スチレン、フェノール、メラミン及びシリコーン樹脂が挙げられる。
【0085】
いくつかの具体的な実施形態では、基板110は、特にポリマー、プラスチック及び/又は金属材料を含まなくてよい。基板110は、アルカリ含有基板であることを特徴としてよい(即ち上記基板は1つ以上のアルカリを含む)。1つ以上の実施形態では、基板110は、約1.45〜約1.55の屈折率を呈する。具体的な実施形態では、基板110は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15又は少なくとも20個の試料を用いたボール・オン・リング試験を用いて測定した場合に、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上1.5%以上又は2%以上でさえある、1つ以上の対向する大表面上のある表面における平均破損歪みを呈してよい。具体的な実施形態では、基板110は、約1.2%、約1.4%、約1.6%、約1.8%、約2.2%、約2.4%、約2.6%、約2.8%又は約3%以上の、1つ以上の対向する大表面上のその表面における平均破損歪みを呈してよい。
【0086】
好適な基板110は、約30GPa〜約120GPaの弾性率(又はヤング率)を呈してよい。いくつかの例では、基板の弾性率は、約30GPa〜約110GPa、約30GPa〜約100GPa、約30GPa〜約90GPa、約30GPa〜約80GPa、約30GPa〜約70GPa、約40GPa〜約120GPa、約50GPa〜約120GPa、約60GPa〜約120GPa、約70GPa〜約120GPa、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲であってよい。
【0087】
1つ以上の実施形態では、非晶質基板はガラスを含んでよく、これは強化されていてもいなくてもよい。好適なガラスの例としては、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラスが挙げられる。いくつかの変形例では、ガラスは酸化リチウムを含まなくてよい。1つ以上の代替実施形態では、基板110は、(強化されていてもいなくてもよい)ガラスセラミック基板といった結晶質基板を含んでよく、又はサファイアといった単結晶構造を含んでよい。1つ以上の具体的な実施形態では、基板110は、非晶質基材(例えばガラス)並びに結晶質クラッド(例えばサファイア層、多結晶アルミナ層及び/又はスピネル(MgAl
2O
4)層)を含む。
【0088】
1つ以上の実施形態の基板110は、(本明細書に記載のバーコビッチ圧子硬度試験で測定した場合に)コーティング済み物品100全体の硬度より低い硬度を有してよい。基板110の硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験又はビッカース硬度試験を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の方法を用いて測定してよい。
【0089】
基板110は実質的に、光学的に透明であり、透過性であり、光散乱要素を含まないものであってよい。このような実施形態では、基板は、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上又は約92%以上の、光波長領域に亘る平均光透過率を呈してよい。1つ以上の代替実施形態では、基板110は不透明であってよく、又は約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満若しくは約0.5%未満の、光波長領域に亘る平均光透過率を呈してよい。いくつかの実施形態では、これらの光線反射率及び透過率値は、(基板の両方の大表面における反射率若しくは透過率を考慮した)合計反射率若しくは合計透過率であってよく、又は基板の単一側面において(即ち反対側の表面を考慮せず、反射防止表面122のみにおいて)観察されるものであってよい。そうでないことが明記されていない限り、基板単独の平均反射率又は透過率は、基板の大表面112に対して0°の入射照明角度において測定される(しかしながら、このような測定を45°又は60°の入射照明角度において提供してもよい)。基板110は任意に、白色、黒色、赤色、青色、緑色、黄色、橙色等といった色を呈してよい。
【0090】
更に、又はあるいは、基板110の物理的厚さは、審美的及び/又は機能的な理由により、その寸法のうちの1つ以上に沿って変化してよい。例えば、基板110の縁部は、基板110の比較的中央の領域に比べて厚くてよい。基板110の長さ、幅及び物理的厚さ寸法もまた、コーティング済み物品100の用途又は使用に応じて変化させてよい。
【0091】
基板110は、多様な異なる複数のプロセスを用いて提供できる。例えば基板110がガラス等の非晶質基板を含む場合、様々な形成方法として、フロートガラスプロセス、並びにフュージョンドロー及びスロットドロー等のダウンドロープロセスが挙げられる。
【0092】
形成後、基板110を強化して、強化基板を形成してよい。本明細書中で使用される場合、用語「強化基板(strengthened substrate)」は、例えば基板の表面の比較的小さなイオンを比較的大きなイオンでイオン交換することによって、化学強化された基板を指してよい。しかしながら、熱強化、又は基板の複数の部分間の熱膨張係数の不一致を利用して圧縮応力領域及び中央張力領域を生成するステップといった、当該技術分野において公知の他の強化方法を利用して、強化基板を形成してもよい。
【0093】
イオン交換プロセスで基板110を化学強化する場合、基板の表面層のイオンは、同一価又は酸化状態の、より大きなイオンで置換(即ち交換)される。イオン交換プロセスは典型的には、基板中の比較的小さなイオンと交換されることになる比較的大きなイオンを含有する溶融塩浴に基板を浸漬することによって実行される。浴の組成及び温度;浸漬時間;塩浴(又は複数の塩浴)中の基板の浸漬数;複数の塩浴の使用;アニーリングや洗浄といった追加のステップを含むがこれらに限定されない、イオン交換プロセスに関するパラメータは、一般に、基板の組成及び所望の圧縮応力(CS)、強化作業によって得られる基板の圧縮応力層の深さ(又は層深さDOL、若しくは圧縮深さDOC)によって決定されることは、当業者には理解されるだろう。例えばアルカリ金属含有ガラス基板のイオン交換は、限定するものではないが、比較的大きなアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩及び塩化物といった塩を含有する、少なくとも1つの溶融浴中での浸漬によって達成できる。溶融塩浴の温度は典型的には約380℃〜最大約450℃であり、その一方で浸漬時間は約15分〜最大約40時間である。しかしながら、上述のものとは異なる温度及び浸漬時間も使用してよい。
【0094】
更に、ガラス基板を、浸漬と浸漬の間に洗浄及び/又はアニーリングステップを伴って、複数のイオン交換浴に浸漬させるイオン交換プロセスの非限定的な例は:2008年7月11日出願の米国仮特許出願第61/079,995号明細書からの優先権を主張する、Douglas C。Allan et al.による2009年7月10日出願の米国特許出願第12/500,650号明細書「Glass with Compressive Surface for Consumer Applications」(ここではガラス基板は、濃度が異なる複数の塩浴中での複数回の連続したイオン交換処理における浸漬によって強化される);及び2008年7月29日出願の米国仮特許出願第61/084,398号明細書からの優先権を主張する、Christopher M。Lee et al.による2012年11月20日出願の米国特許第8,312,739号明細書「Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass」(ここではガラス基板は、流出イオンで希釈された第1の浴中でのイオン交換と、それに続く、第1の浴より低濃度の流出イオンを含む第2の浴中での浸漬とによって強化される)に記載されている。米国特許出願第12/500,650号明細書、及び米国特許第8,312,739号明細書の内容は、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0095】
イオン交換によって達成される化学強化の程度は、中央張力(CT)、表面CS及び圧縮深さ(DOC)のパラメータに基づいて定量化できる。圧縮応力(表面CSを含む)は、有限会社折原製作所(日本)製FSM‐6000等の市販の機器を用いて、表面応力計(surface stress meter:FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(stress optical coefficient:SOC)の精密測定に依存する。SOCは、「ガラスの応力光係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」というタイトルのASTM規格C770‐16(その内容は、参照によりその全体が本出願に援用される)に記載の手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。最大CT値は、当該技術分野で公知の散乱光偏向鏡(scattered light polariscope:SCALP)技法を用いて測定される。本明細書中で使用される場合、DOCは、本明細書に記載の化学強化アルカリアルミノシリケートガラス物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを意味する。DOCは、イオン交換処理に応じてFSM又はSCALPで測定してよい。ガラス物品内の応力が、ガラス物品内へのカリウムイオンの交換によって生成される場合は、FSMを用いてDOCを測定する。上記応力が、ガラス物品内へのナトリウムイオンの交換によって生成される場合は、SCALPを用いてDOCを測定する。ガラス物品内の応力が、ガラス内へのカリウム及びナトリウム両方のイオンの交換によって生成される場合は、ナトリウムイオンの交換深さがDOCを示し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化(ただし圧縮応力から引張応力への応力の変化ではない)を示すと考えられるため、DOCはSCALPで測定され、上記ガラス物品内でのカリウムイオンの交換深さはFSMで測定される。
【0096】
一実施形態では、基板110は、250MPa以上、300MPa以上、例えば400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上又は800MPa以上の表面CSを有することができる。強化基板は、10μm以上、15μm以上、20μm以上(例えば25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)のDOC(以前のDOL)、及び/又は10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば42MPa、45MPa若しくは50MPa以上)、ただし100MPa未満(例えば95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)のCTを有してよい。1つ以上の具体的な実施形態では、強化基板は以下のうちの1つ以上を有する:500MPa超の表面CS、15μm超のDOC(以前のDOL)及び18MPa超のCT。
【0097】
基板110に使用してよい例示的なガラスは、アルカリアルミノケイ酸ガラス組成物又はアルカリホウケイ酸ガラス組成物を含んでよいが、他のガラス組成物も考えられる。このようなガラス組成物は、イオン交換プロセスによって化学強化できる。ある例示的なガラス組成物は、SiO
2、B
2O
3及びNa
2Oを含み、(SiO
2+B
2O
3)≧66モル%及びNa
2O≧9モル%である。ある実施形態では、このガラス組成物は、少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含む。更なる実施形態では、基板は、1つ以上のアルカリ土類酸化物を、このアルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5重量%となるように有する、ガラス組成物を含む。いくつかの実施形態では、好適なガラス組成物は更に、K
2O、MgO及びCaOのうちの少なくとも1つを含む。ある特定の実施形態では、基板に使用されるガラス組成物は、61〜75モル%のSiO2;7〜15モル%のAl
2O
3;0〜12モル%のB
2O
3;9〜21モル%のNa
2O;0〜4モル%のK
2O;0〜7モル%のMgO;及び0〜3モル%のCaOを含むことができる。
【0098】
基板110に好適な更なる例示的なガラス組成物は:60〜70モル%のSiO
2;6〜14モル%のAl
2O
3;0〜15モル%のB
2O
3;0〜15モル%のLi
2O;0〜20モル%のNa
2O;0〜10モル%のK
2O;0〜8モル%のMgO;0〜10モル%のCaO;0〜5モル%のZrO
2;0〜1モル%のSnO
2;0〜1モル%のCeO
2;50ppm未満のAs
2O
3;及び50ppm未満のSb
2O
3を含み、12モル%≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦20モル%、及び0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0099】
基板110に好適な、また更なる例示的なガラス組成物は:63.5〜66.5モル%のSiO
2;8〜12モル%のAl
2O
3;0〜3モル%のB
2O
3;0〜5モル%のLi
2O;8〜18モル%のNa
2O;0〜5モル%のK
2O;1〜7モル%のMgO;0〜2.5モル%のCaO;0〜3モル%のZrO
2;0.05〜0.25モル%のSnO
2;0.05〜0.5モル%のCeO
2;50ppm未満のAs
2O
3;及び50ppm未満のSb
2O
3を含み、14モル%≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦18モル%、及び2モル%の≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0100】
ある特定の実施形態では、基板110に好適なアルカリアルミノケイ酸ガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1つのアルカリ金属、並びにいくつかの実施形態では、50モル%超のSiO
2、他の実施形態では少なくとも58モル%のSiO
2、及び更に他の実施形態少なくとも60モル%のSiO
2を含み、比(Al
2O
3+B
2O
3)/Σ改質剤(即ち改質剤の合計)は1超であり、この比において、組成物はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。特定の実施形態では、このガラス組成物は:58〜72モル%のSiO
2;9〜17モル%のAl
2O
3;2〜12モル%のB
2O
3;8〜16モル%のNa
2O;及び0〜4モル%のK
2Oを含み、(Al
2O
3+B
2O
3)/Σ改質剤(即ち改質剤の合計)の比は1超である。
【0101】
更に別の実施形態では、基板110は:64〜68モル%のSiO
2;12〜16モル%のNa
2O;8〜12モル%のAl
2O
3;0〜3モル%のB
2O
3;2〜5モル%のK
2O;4〜6モル%のMgO;及び0〜5モル%のCaOを含むアルカリアルミノケイ酸ガラス組成物を含んでよく、ここで:66モル%≦SiO
2+B
2O
3+CaO≦69モル%;Na
2O+K
2O+B
2O
3+MgO+CaO+SrO>10モル%;5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%;(Na
2O+B
2O
3)‐Al
2O
3≦2モル%;2モル%≦Na
2O‐Al
2O
3≦6モル%;及び4モル%≦(Na
2O+K
2O)‐Al
2O
3≦10モル%である。
【0102】
ある代替実施形態では、基板110は:2モル%以上のAl
2O
3及び/若しくはZrO
2、又は4モル%以上のAl
2O
3及び/若しくはZrO
2を含む、アルカリアルミノケイ酸ガラス組成物を含んでよい。
【0103】
基板110が結晶質基板を含む場合、この基板は単結晶を含んでよく、上記単結晶はAl
2O
3を含んでよい。この単結晶基板はサファイアと呼ばれる。結晶質基板のための他の好適な材料は、多結晶質アルミナ層及び/又はスピネル(MgAl
2O
4)を含む。
【0104】
任意に、基板110は結晶質であってよく、またガラスセラミック基板を含んでよく、これは強化されていてもいなくてもよい。好適なガラスセラミックの例としては、Li
2O‐Al
2O
3‐SiO
2系(即ちLAS系)ガラスセラミック、MgO‐Al
2O
3‐SiO
2系(即ちMAS系)ガラスセラミック、並びに/又はβ石英固溶体、βスポジュメンss、コーディエライト及び二ケイ酸リチウムを含む主要な結晶相を含むガラスセラミックが挙げられる。ガラスセラミック基板は、本明細書で開示されている化学強化プロセスを用いて強化してよい。1つ以上の実施形態では、MAS系ガラスセラミック基板は、Li
2SO
4溶融塩中で強化してよく、これにより2Li
+によるMg
2+の交換を発生させることができる。
【0105】
1つ以上の実施形態による基板110は、基板110の様々な部分において、約100μm〜約5mmの物理的厚さを有することができる。例示的な基板110の物理的厚さは、約100μm〜約500μm(例えば100、200、300、400又は500μm)である。更なる例示的な基板110の物理的厚さは、約500μm〜約1000μm(例えば500、600、700、800、900又は1000μm)である。基板110は、約1mm超(例えば約2、3、4又は5mm)の物理的厚さを有してよい。1つ以上の具体的な実施形態では、基板110は、2mm以下又は1mm未満の物理的厚さを有してよい。基板110は、酸研磨又は他の方法で処置してよく、これにより表面のきずの影響を除去又は低減できる。
【0106】
本明細書で開示されているコーティング済み物品は、ディスプレイを備えた物品(即ちディスプレイ物品)(例えば携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム等を含む消費者向け電子機器)、建築用物品、輸送用物品(例えば自動車、鉄道、航空機、船舶等)、家電物品、又はある程度の透明性、耐擦傷性、耐摩擦性若しくはこれらの組み合わせを必要とするいずれの物品といった、別の物品に組み込むことができる。本明細書で開示されているコーティング済み物品のいずれを組み込んだ例示的な物品を、
図43A及び43Bに示す。具体的には、
図43A及び43Bは:前面4104、背面4106及び側面4108を有するハウジング4102;少なくとも部分的に又は全体的に上記ハウジング内にある、少なくともコントローラ、メモリ及びディスプレイ4110を上記ハウジングの前面に又は前面に隣接して含む、電子構成部品(図示せず);並びに上記ハウジングの前面に又は前面全体にわたり、上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板4112を含む、消費者向け電子デバイス4100を示す。いくつかの実施形態では、カバー基板4112又はハウジング4102の一部分のうちの少なくとも一方は、本明細書で開示されているコーティング済み物品のいずれを含んでよい。
【実施例】
【0107】
以下の実施例によって様々な実施形態を更に明らかにする。実施例の光学特性は、計算を用いてモデル化した。この計算は、アリゾナ州ツーソンのThin Film Center, Inc.製の薄膜設計プログラム「Essential Macleod」を用いて実施した。スペクトル透過率は、選択された波長に関して1nm間隔で計算された。所与のコーティング済み物品の各波長における透過率は、入力を受ける層の厚さ及び各層の屈折率に基づいて計算された。コーティングの材料に関する屈折率の値は、経験的に得られたか、又は入手可能な文献において発見された。材料の屈折率を実験で決定するために、コーティング材料の材料に関する分散曲線を用意した。イオンアシストを用い、約50℃の温度で、ケイ素、アルミニウム、組み合わせた若しくは同時スパッタリングしたケイ素及びアルミニウム、又はフッ化マグネシウム標的(それぞれ)から、DC、RF、又はRF重畳DC反応性スパッタリングによって、各コーティング材料の層を、ケイ素ウェハ上に形成した。いくつかの層の堆積中、ウェハを200℃まで加熱し、また直径3インチ(7.62cm)の標的を使用した。使用した反応性ガスは、窒素、フッ素及び酸素を含み、アルゴンを不活性ガスとして使用した。RF電力をケイ素標的に13.56MHzで供給し、またDC電力をSi標的、Al標的及び他の標的に供給した。
【0108】
形成された層及びガラス基板それぞれの(波長の関数としての)屈折率を、分光エリプソメトリーを用いて測定した。このようにして測定した屈折率を用いて、実施例に関する反射率スペクトルを算出した。これらの実施例は、これらを説明する表において、利便性のために単一の屈折率値を使用する。これは、約550nmの波長における分散曲線から選択される1点に対応するものである。
【0109】
本明細書に記載のコーティングの性能を、非平面基板上に堆積させた場合に低い光学性能を有し得る従来のコーティングと比較するために、比較例を供給する。
【0110】
比較例A
平面ガラス基板を、表1のコーティングでコーティングした。
図9は、垂直な入射角に対して視野角を変化させた、表1の光学コーティングに関する波長の関数としての反射率のグラフを示す。線202は0°の入射角に対応し、線204は15°の入射角に対応し、線206は30°の入射角に対応し、線208は45°の入射角に対応し、線210は60°の入射角に対応する。
図9から確認できるように、視野角が変化するに従って、反射率(特に約650nm以上)が増大した。従ってこのコーティングは、非平面基板をコーティングした場合に、基板上の異なる複数の位置に関して観察可能な光学的差異を有し得る。更に表1のコーティングを、その各層を様々な堆積角度のコサインのスカラー量だけ薄くして、モデル化した。例えば15°の堆積角度をモデル化するために、各層の厚さにコサイン15°を積算した。
図10は、垂直な視野角において観察した場合の層厚さを変化させた、表1のコーティングに関する波長の関数としての反射率のグラフを示す。線212は0°の堆積角度に対応し(表1のコーティングと同一)、線214は15°の堆積角度に対応し、線216は30°の堆積角度に対応し、線218は45°の堆積角度に対応し、線220は60°の堆積角度に対応する。
図10に見られるように、堆積角度が0°から増大すると、反射率は可視スペクトルの複数の部分にわたって増大した。
【0111】
【表1】
【0112】
比較例B
平面ガラス基板を表2のコーティングでコーティングした。
図11では、線222は、法線に対して8°の視野角における、比較例Bの光学コーティング(表2のコーティング)に関する波長の関数としての反射率のグラフを示す。
【0113】
【表2】
【0114】
実施例1
平面ガラス基板を表3のコーティングでコーティングした。
図11の線224は、法線に対して8°の視野角における、実施例1の光学コーティングに関する波長の関数としての反射率のグラフを示す。
図11において確認できるように、実施例1のコーティングは、700nmを超える波長においては、比較例Bのコーティングに比べて第1の表面の反射率が低下した。
【0115】
【表3】
【0116】
図12は、設計されたままの状態の実施例1の光学コーティングと、垂直な入射角において視認した場合に堆積角度35°を表す低減された層厚さを有する実施例1の光学コーティングとに関する、波長の関数としての反射率のグラフを示す。
図12から確認できるように、35°のモデル化された堆積角度は、約700nmより大きい波長において反射率を増大させた。しかしながら、可視スペクトルにわたる反射率は比較的低かった。
【0117】
図13は、設計されたままの状態の実施例1の光学コーティングと、垂直な入射角から60°までにおいて視認した場合に増大した堆積角度を表す低減された層厚さを有する実施例1の光学コーティングとに関する、L*a*b*色空間における反射率のa*対b*のグラフを示す。
【0118】
線240は、0°〜30°のモデル化された堆積角度を表す。30°までの堆積角度により、コーティングにはわずかな色の変化があった。線242は35°の堆積角度に対応し、線244は40°の堆積角度に対応し、線246は45°の堆積角度に対応し、線248は50°の堆積角度に対応し、線250は55°の堆積角度に対応し、線252は60°の堆積角度に対応する。モデル化する際、0°〜30°の視野入射角に関して、b*は10〜1であり、a*は−5〜0である。また、0°〜60°から視認した場合、0°〜40°の堆積角度に関してb*は2未満である。
【0119】
実施例2
平面ガラス基板を、下側勾配層、耐擦傷性層、及び上側勾配層を有する光学コーティングでコーティングした。下側勾配層をガラス基板上に形成した。Plasma‐Therm製Versaline HDPCVDチャンバ内で、シラン、アルゴン、酸素及び窒素から堆積させたSiO
2‐SiON‐SiN
x組成物を用いて、勾配層を堆積させた。勾配は、工程を多数の短いステップに分割することによって形成され、シラン流、酸素、窒素、圧力、アルゴン、コイルRF電力、及びRFバイアス電力は、形態パラメータによってステップ間で変動し、1である形態パラメータは線形曲線であり、1を超えて増大した形態パラメータは、ますます下に凸の曲線を形成し、1未満の形態パラメータはますます上に凸の曲線を形成した。耐擦傷性層をSiN
xで作製し、酸素を添加して、上方の下側勾配層内の勾配を達成した。
【0120】
図29は、コーティングを堆積させるために使用される時間の関数としての、N
2(参照番号306として示される)、O
2(参照番号304として示される)及びSiH
4(参照番号302として示される)の流量を示す。
図29の堆積スキームを利用して、500nmの下側勾配層(形態パラメータ=3)、1800nmの耐擦傷性層、及び126nmの上側勾配層を有する光学コーティングを生成した。
図30は
図29の条件で形成されたXPS組成プロファイルを示し、参照番号308は窒素を表し、参照番号310はケイ素を表し、参照番号312はアルミニウムを表し、参照番号314は酸素を表し、参照番号316はフッ素を表す。なお
図29では、下側勾配層は図の左側部分であり、上側勾配層は図の右側部分であるが、
図30では下側勾配層は図の右側部分であり、上側勾配層は図の左側部分である。
図31は、
図29の堆積条件によるコーティングに関する、算出された屈折率を示す。屈折率は、MFC流から、硬質SiN
x層からシリカまでの中間的な組成から得られた屈折率対ガス流のフィッティングに対して算出した。
図29に示した堆積は実施例2に関する基本の場合であり、特段の記載がない限り、実施例2のコーティングの1つのパラメータが修正される場合には、他の全てのパラメータは
図29のコーティングと一致したまま保持されることを理解されたい。
【0121】
図14は、様々な視野角に関する、(
図29の条件で堆積させた)実施例2の光学コーティングに関する第1の表面の反射率のグラフを示し、線260は、6°の入射角での反射を表し、線262は、20°の入射角での反射を表し、線264は、40°の入射角での反射を表し、線266は、60°の入射角での反射を表す。勾配構造は、波長の関数としての反射率の強度及び反射率の形状の両方について非コーティングガラスと略同様に見える、比較的特色が少ない屈折率曲線を生成することを観察できる。また、視野角の関数としての反射率の小変化にも留意されたい。勾配を有しない誘電体積層設計とは異なり、視野角によって色が変わるように通過帯域がシフトすることはない。反射率の〜2%の揺れは、勾配層/硬質層境界面における屈折率の階段状の変化によるものと考えられる。この階段状の変化は多くの方法で排除でき、そのうち最も明快なものは、必要な流れの範囲にわたる更なる酸素質量流量コントローラである。
【0122】
下側勾配層の厚さを変化させて複数の試料を調製し、耐擦傷性層は1800nmに維持し、そして上側勾配層は126nmに維持した。
図32は波長の関数としての反射率を示し、参照番号320は750nmの下側勾配層を表し、参照番号324は500nmの下側勾配層を表し、参照番号322は250nmの下側勾配層を表す。インピーダンス整合勾配層厚さを250nmから750nmに変化させても、反射率の変化又は揺れはほとんど観察されない。
【0123】
最適な勾配の構造は典型的には、シグモイド関数に類似した定量的プロファイルを使用する。インピーダンス整合勾配層におけるシグモイド様屈折率分布は、逆の形態パラメータを有する2つのべき乗則勾配を付加することによって生成した。試料を、500nmの下側勾配層に関して勾配曲線を変化させて調製した。
図33は波長の関数としての反射率を示し、参照番号326は3次多項式フィッティング勾配を示し、参照番号324は3次曲線を用いてべき乗則プロファイルを付加することによって生成された2ステップシグモイド様形状を表し、参照番号320は、5次曲線を用いてべき乗則プロファイルを付加することによって生成された2ステップシグモイド様形状を表す。これらの様々な勾配曲線は、比較的類似した反射率をもたらす。
【0124】
図15は、異なる複数の視野角における、様々な上部勾配コーティング厚さを有する実施例2の光学コーティングに関する、L*a*b*色空間における反射D65色のa*対b*のグラフを示す。白い円形は126nmの上側勾配層を有する試料を表し、正方形は256nmの上側勾配層を有する試料を表し、三角形は504nmの厚さを有する試料を表す。各円形、三角形又は正方形は、異なる視野角(即ち6°、20°、40°、又は60°)を表す。
図16は、垂直な視野角における、様々な上部勾配コーティング厚さを有する実施例2の光学コーティングに関する、L*a*b*色空間における透過したD65色のa*対b*のグラフを示す。「x」は126nmの上側勾配層を有する試料を表し、ひし形は256nmの上側勾配層を有する試料を表し、正方形は504nmの厚さを有する試料を表す。複数の試料において、上側勾配層が薄いほど、より無色に近いコーティングが得られた。
図34A及び34Bはそれぞれ、様々な勾配層厚さに関する、第1の表面の反射色及び透過色を示す。b*の全体としての変化はa*より大きい。より薄い上部コーティング勾配層の場合に、最も無色に近い点が得られる。
【0125】
図35〜38はそれぞれ、上部勾配コーティング厚さの関数としての、1面反射色、2面反射色、弾性率及び硬度、並びに透過色を示す。1面反射色に関して−2≦a*≦0;−4≦b*≦0、及び透過率に関して−0.4≦a*≦0.4;0≦b*≦0.5という目標が望まれる場合に、約160〜180nmの上側勾配層厚さがこれらのパラメータを達成し得ることを確認できる。
【0126】
図17は、厚さ126nm(参照番号274)、厚さ256nm(参照番号272)、及び厚さ504nm(参照番号270)に関する、厚さの関数としての上側勾配層の算出された屈折率を示す。
【0127】
図18は、上側勾配層を変化させて調製した試料のバーコビッチ硬度プロファイルを示す。線276は、126nmの上側勾配層を有する試料に関する硬度プロファイルを表し、線278は、256nmの上側勾配層を有する試料に関する硬度プロファイルを表し、線280は、504nmの上側勾配層を有する試料に関する硬度プロファイルを表す。薄い上側勾配層ほど高い硬度をもたらした。表4は、変化する上側勾配層の厚さの関数としての弾性率及び硬度を示す。
【0128】
【表4】
【0129】
様々な形態パラメータを有する126nmの上側勾配層を含む上述のコーティングを用いて、複数の試料を生産した。
図19は、様々な形態パラメータを有する実施例2のコーティングに関する上側勾配層プロファイルのグラフを示し、
図20は、様々な上側勾配層の形態パラメータを有する実施例2として調製した複数の試料の硬度プロファイルを示す。
図19及び20では、線282は0.2の形態パラメータを表し、線284は0.5の形態パラメータを表し、線286は0.3の形態パラメータを表し、線288は0.5の形態パラメータを表す。一般に、より線形でない形態パラメータほど、高い硬度をもたらした。表5は、変化する形態パラメータの関数としての弾性率及び硬度を示す。
【0130】
【表5】
【0131】
図21は、異なる複数の視野角における、様々な上部勾配コーティングの形態パラメータを有する実施例2の光学コーティングに関する、L*a*b*色空間における反射D65色のa*対b*のグラフを示し、
図22は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、垂直な視野角における、様々な上部勾配コーティングの形態パラメータを有する実施例2の光学コーティングに関する、L*a*b*色空間における透過したD65色のa*対b*のグラフを示す。
図21では、白い円形は0.2の形態パラメータを表し、正方形は0.25の形態パラメータを表し、三角形は0.3の形態パラメータを表し、「x」は0.5の形態パラメータを表す。
図22では、「x」は0.2の形態パラメータを表し、ひし形は0.25の形態パラメータを表し、正方形は0.3の形態パラメータを表し、三角形は0.5の形態パラメータを表す。
【0132】
図23は、様々な上側勾配層の形態パラメータを有する実施例2のコーティングに関する平均明所視透過率及び平均明所視反射率をグラフで示し、
図24は、様々な上側勾配層厚さを有する実施例2のコーティングに関する平均明所視透過率及び平均明所視反射率をグラフで示す。
図23及び24の両方において、正方形は、400nm〜780nmのスペクトルにわたる平均明所視反射率を表し、ひし形は、400nm〜780nmのスペクトルにわたる平均明所視透過率を表す。更に
図39は、変化する上部勾配コーティングの厚さの関数としての実施例2のコーティングの硬度及び2面明所視透過率をグラフで示す。
図39に示すように、特定の実施形態は、20GPaに近い硬度(一部のイオン交換済みガラス基板の硬度の2倍超)を有しながら、非コーティングガラスの明所視透過率に近い90%超の明所視透過率を有する。
【0133】
実施例3
6層インピーダンス整合積層体、2000nmの耐擦傷性コーティング、及び126nmの上側勾配層を内包するガラス基板上に、コーティングを堆積させた。よって実施例3のコーティングは、実施例2の下側勾配層を実施例3では別個の層の積層体で置換したことを除いて、実施例2のコーティングと同様であった。実施例3のコーティングを表6に示す。このコーティングは、スパッタリング法で堆積させた。
【0134】
【表6】
【0135】
図40は、様々な視野入射角における、波長の関数としての実施例3の光学コーティングを示し、参照番号354は6°の入射角を表し、参照番号356は20°の入射角を表し、参照番号352は40°の入射角を表し、参照番号350は60°の入射角を表す。
図42は、6°、20°、40°及び60°の入射角における、実施例3のコーティング済み物品に関する第1の表面の反射色座標のa*及びb*(2乗)を示す。実施例3のコーティング済み物品は、a*=−0.25及びb*=−0.25という透過色座標を有していた。
【0136】
実施例4
6層インピーダンス整合積層体、2000nmの耐擦傷性コーティング、及び126nmの上側勾配層を内包するガラス基板上に、コーティングを堆積させた。よって実施例4のコーティングは、実施例2の下側勾配層を実施例4では別個の層の積層体で置換したことを除いて、実施例2のコーティングと同様であった。実施例4のコーティングを表7に示す。このコーティングは、PECVDで堆積させた。
【0137】
【表7】
【0138】
図41は、様々な視野入射角における、波長の関数としての実施例4のコーティングの反射率を示し、参照番号360は6°の入射角を表し、参照番号362は20°の入射角を表し、参照番号364は40°の入射角を表し、参照番号366は60°の入射角を表す。
図42は、6°、20°、40°及び60°の入射角における、実施例4のコーティング済み物品に関する第1の表面の反射色座標のa*及びb*(2乗)を示す。実施例4のコーティング済み物品は、a*=−0.2及びb*=0.7という透過色座標を有していた。
【0139】
表8は、3つのコーティング試料のコーティング済み物品に関する、硬度、弾性率、明所視透過率、及び明所視反射率を報告する。コーティング試料A及びBは、従来の6層インピーダンス整合積層体、2マイクロメートルの硬質コーティング、及び厚さ〜125nmのAR勾配層を有する。コーティング試料Aは、SiO
2‐SiON‐SiN
x材料系を用いて、Plasma‐Therm製HDPCVD上にCVDによって堆積させた。コーティング試料Bは、SiAlON‐SiO
2材料系を用いて、AJA上にスパッタリングによって堆積させた。厚さ250nmのインピーダンス整合勾配層、2μmの硬質コーティング、及び厚さ125nmのAR勾配層を有するコーティング試料Cは、SiO
2‐SiON‐SiN
x材料系を用いて、Plasma‐Therm製HDPCVD上にCVDによって堆積させた。性能は略同一であった。
【0140】
【表8】
【0141】
明細書に記載の様々な特徴は、例えば以下の実施の形態に記載されているように、いずれのあらゆる組み合わせで組み合わせてよい。
【0142】
実施の形態1
第1の部分及び第2の部分を備える大表面を有する、基板であって、上記大表面の上記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、上記大表面の上記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、上記第1の方向と上記第2の方向との間の角度は約10°〜約180°である、基板;並びに
上記大表面の少なくとも上記第1の部分及び上記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、上記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分及び上記基板の上記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって上記反射防止表面上で測定した場合に、約50nm以上の押し込み深さにおいて約8GPa以上の硬度を示し;
上記コーティング済み物品は、上記反射防止表面において測定した場合に、上記基板の上記第1の部分において約8%以下の単一側面平均光反射率を示し、上記第1の部分の上記単一側面平均光反射率は、上記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約60°であり;
上記コーティング済み物品は、上記反射防止表面において測定した場合に、上記基板の上記第2の部分において約8%以下の単一側面平均光反射率を示し、上記第2の部分の上記単一側面平均光反射率は、上記第2の方向に対する第2の入射照明角度で測定され、上記第2の入射照明角度は、上記第2の方向から約0°〜約60°であり;
上記第1の部分及び上記第2の部分における上記単一側面平均光反射率は、約400nm〜約800nmの光波長レジームにわたって測定される、コーティング済み物品。
【0143】
実施の形態2
上記第1の部分に対して垂直な上記第1の方向と、上記第2の部分に対して垂直な上記第2の方向との間の上記角度は、約10°〜約90°である、実施の形態1に記載のコーティング済み物品。
【0144】
実施の形態3
上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約10°の角度であり;
上記第2の入射照明角度は、上記第2の方向から約0°〜約10°の角度である、実施の形態1又は2に記載のコーティング済み物品。
【0145】
実施の形態4
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約0°〜約60°の全ての角度に関して約8%以下の単一側面平均光反射率を示し;
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第2の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約0°〜約60°の全ての角度に関して約8%以下の単一側面平均光反射率を示す、実施の形態1〜3のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0146】
実施の形態5
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約5%以下の単一側面平均光反射率を示し;
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第2の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約5%以下の単一側面平均光反射率を示す、実施の形態1〜4のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0147】
実施の形態6
大表面を有する基板であって、上記大表面は、第1の部分及び第2の部分を備える大表面を有し、上記大表面の上記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、上記大表面の上記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、上記第1の方向と上記第2の方向との間の角度は約10°〜約180°である、基板;並びに
上記大表面の少なくとも上記第1の部分及び上記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、上記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分及び上記基板の上記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって上記反射防止表面上で測定した場合に、約50nm以上の押し込み深さにおいて約8GPa以上の硬度を示し;
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の差異は、国際照明委員会規格の光源下において(L*,a*,b*)測色系の反射色座標によって測定した場合に約10以下であり、上記反射色の上記差異は、√((a*
第1の部分−a*
第2の部分)
2+(b*
第1の部分−b*
第2の部分)
2)として定義され、上記第1の部分における上記反射色は、上記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約60°であり、上記第2の部分における上記反射色は、上記第2の方向に対する第2の入射照明角度で測定され、上記第2の入射照明角度は、上記第2の方向から約0°〜約60°である、コーティング済み物品。
【0148】
実施の形態7
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の上記差異は、約5以下である、実施の形態6に記載のコーティング済み物品。
【0149】
実施の形態8
上記第1の方向と上記第2の方向との間の上記角度は、約10°〜約90°である、実施の形態6又は7に記載のコーティング済み物品。
【0150】
実施の形態9
上記第1の入射照明角度は第1の方向から約0°〜約10°の角度であり;
上記第2の入射照明角度は第2の方向から約0°〜約10°の角度である、実施の形態6〜8のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0151】
実施の形態10
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の上記差異は、約0°〜約60°の全ての上記第1の入射照明角度に関して、及び約0°〜約60°の全ての上記第2の入射照明角度に関して、約10以下である、実施の形態6〜9のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0152】
実施の形態11
上記第1の部分の基準点の色は約10以下であり、上記第2の部分の基準点の色は約10以下であり、上記第1の部分の上記基準点の色は上記第1の入射照明角度で測定され、上記第2の部分の上記基準点の色は上記第2の入射照明角度で測定され、上記基準点は、(a*,b*)=(0,0)、(−2,−2)、又は(−4,−4)である、実施の形態6〜10のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0153】
実施の形態12
上記第1の部分の基準点の色は約5以下であり、上記第2の部分の基準点の色は約5以下であり、上記第1の部分の上記基準点の色は上記第1の入射照明角度で測定され、上記第2の部分の上記基準点の色は上記第2の入射照明角度で測定され、上記基準点は、(a*,b*)=(0,0)、(−2,−2)、又は(−4,−4)である、実施の形態6〜10のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0154】
実施の形態13
大表面を有する基板であって、上記大表面は第1の部分及び第2の部分を備え、上記大表面の上記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、上記大表面の上記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、上記第1の方向と上記第2の方向との間の角度は約10°〜約180°である、基板;並びに
上記大表面の少なくとも上記第1の部分及び上記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、上記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分及び上記基板の上記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって上記反射防止表面上で測定した場合に、約50nm以上の押し込み深さにおいて約8GPa以上の硬度を示し;
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の差異は、国際照明委員会規格の光源下において(L*,a*,b*)測色系の反射色座標によって測定した場合に約10以下であり、上記反射色の上記差異は、√((a*
第1の部分−a*
第2の部分)
2+(b*
第1の部分−b*
第2の部分)
2)として定義され、上記第1の部分における上記反射色は、上記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約60°であり、上記第2の部分における上記反射色は、第2の入射照明角度で測定され、上記第2の入射照明角度は、上記第1の部分及び上記第2の部分における上記反射色が同一の視認方向で測定されるよう、上記第1の入射照明角度の方向と同一の方向である、コーティング済み物品。
【0155】
実施の形態14
上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜10°の角度である、実施の形態1〜13のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0156】
実施の形態15
上記基板は、非晶質基板又は結晶質基板を含む、実施の形態1〜14のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0157】
実施の形態16
上記光学コーティングは、上記基板と接触する第1の勾配層、上記第1の勾配層を覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う第2の勾配層を備え、上記第2の勾配層は上記反射防止表面を画定し;
上記基板における上記第1の勾配層の屈折率は、上記基板の屈折率の0.2以内であり;
上記耐擦傷性層における上記第1の勾配層の屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記耐擦傷性層における上記第2の勾配層の屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記反射防止表面における上記第2の勾配層の屈折率は、約1.35〜約1.7である、実施の形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0158】
実施の形態17
上記光学コーティングは、第1の反射防止コーティング、上記第1の反射防止コーティングを覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う第2の反射防止コーティングを備え、上記第2の反射防止コーティングは上記反射防止表面を画定し、上記第1の反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備え、上記第2の反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備える、実施の形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0159】
実施の形態18
上記光学コーティングは、上記基板と接触する勾配層、上記勾配層を覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う反射防止コーティングを備え、上記反射防止コーティングは上記反射防止表面を画定し;
上記基板における上記勾配層の屈折率は、上記基板の屈折率の0.2以内であり;
上記耐擦傷性層における上記勾配層の屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備える、実施の形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0160】
実施の形態19
上記光学コーティングは、上記基板と接触する反射防止コーティング、上記反射防止コーティングを覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う勾配層を備え、上記勾配層は上記反射防止表面を画定し;
上記反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備え;
上記耐擦傷性層における上記反射防止コーティングの屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記反射防止表面における上記勾配層の屈折率は、約1.35〜約1.7である、実施の形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0161】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0162】
実施形態1
第1の部分及び第2の部分を備える大表面を有する、基板であって、上記大表面の上記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、上記大表面の上記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、上記第1の方向と上記第2の方向との間の角度は約10°〜約180°である、基板;並びに
上記大表面の少なくとも上記第1の部分及び上記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、上記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分及び上記基板の上記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって上記反射防止表面上で測定した場合に、約50nm以上の押し込み深さにおいて約8GPa以上の硬度を示し;
上記コーティング済み物品は、上記反射防止表面において測定した場合に、上記基板の上記第1の部分において約8%以下の単一側面平均光反射率を示し、上記第1の部分の上記単一側面平均光反射率は、上記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約60°であり;
上記コーティング済み物品は、上記反射防止表面において測定した場合に、上記基板の上記第2の部分において約8%以下の単一側面平均光反射率を示し、上記第2の部分の上記単一側面平均光反射率は、上記第2の方向に対する第2の入射照明角度で測定され、上記第2の入射照明角度は、上記第2の方向から約0°〜約60°であり;
上記第1の部分及び上記第2の部分における上記単一側面平均光反射率は、約400nm〜約800nmの光波長レジームにわたって測定される、コーティング済み物品。
【0163】
実施形態2
上記第1の部分に対して垂直な上記第1の方向と、上記第2の部分に対して垂直な上記第2の方向との間の上記角度は、約10°〜約90°である、実施形態1に記載のコーティング済み物品。
【0164】
実施形態3
上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約10°の角度であり;
上記第2の入射照明角度は、上記第2の方向から約0°〜約10°の角度である、実施形態1又は2に記載のコーティング済み物品。
【0165】
実施形態4
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約0°〜約60°の全ての角度に関して約8%以下の単一側面平均光反射率を示し;
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第2の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約0°〜約60°の全ての角度に関して約8%以下の単一側面平均光反射率を示す、実施形態1〜3のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0166】
実施形態5
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約5%以下の単一側面平均光反射率を示し;
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第2の部分の上記反射防止表面において測定した場合に、約5%以下の単一側面平均光反射率を示す、実施形態1〜4のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0167】
実施形態6
大表面を有する基板であって、上記大表面は、第1の部分及び第2の部分を備える大表面を有し、上記大表面の上記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、上記大表面の上記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、上記第1の方向と上記第2の方向との間の角度は約10°〜約180°である、基板;並びに
上記大表面の少なくとも上記第1の部分及び上記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、上記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分及び上記基板の上記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって上記反射防止表面上で測定した場合に、約50nm以上の押し込み深さにおいて約8GPa以上の硬度を示し;
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の差異は、国際照明委員会規格の光源下において(L*,a*,b*)測色系の反射色座標によって測定した場合に約10以下であり、上記反射色の上記差異は、√((a*
第1の部分−a*
第2の部分)
2+(b*
第1の部分−b*
第2の部分)
2)として定義され、上記第1の部分における上記反射色は、上記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約60°であり、上記第2の部分における上記反射色は、上記第2の方向に対する第2の入射照明角度で測定され、上記第2の入射照明角度は、上記第2の方向から約0°〜約60°である、コーティング済み物品。
【0168】
実施形態7
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の上記差異は、約5以下である、実施形態6に記載のコーティング済み物品。
【0169】
実施形態8
上記第1の方向と上記第2の方向との間の上記角度は、約10°〜約90°である、実施形態6又は7に記載のコーティング済み物品。
【0170】
実施形態9
上記第1の入射照明角度は第1の方向から約0°〜約10°の角度であり;
上記第2の入射照明角度は第2の方向から約0°〜約10°の角度である、実施形態6〜8のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0171】
実施形態10
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の上記差異は、約0°〜約60°の全ての上記第1の入射照明角度に関して、及び約0°〜約60°の全ての上記第2の入射照明角度に関して、約10以下である、実施形態6〜9のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0172】
実施形態11
上記第1の部分の基準点の色は約10以下であり、上記第2の部分の基準点の色は約10以下であり、上記第1の部分の上記基準点の色は上記第1の入射照明角度で測定され、上記第2の部分の上記基準点の色は上記第2の入射照明角度で測定され、上記基準点は、(a*,b*)=(0,0)、(−2,−2)、又は(−4,−4)である、実施形態6〜10のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0173】
実施形態12
上記第1の部分の基準点の色は約5以下であり、上記第2の部分の基準点の色は約5以下であり、上記第1の部分の上記基準点の色は上記第1の入射照明角度で測定され、上記第2の部分の上記基準点の色は上記第2の入射照明角度で測定され、上記基準点は、(a*,b*)=(0,0)、(−2,−2)、又は(−4,−4)である、実施形態6〜10のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0174】
実施形態13
大表面を有する基板であって、上記大表面は第1の部分及び第2の部分を備え、上記大表面の上記第1の部分に対して垂直な第1の方向は、上記大表面の上記第2の部分に対して垂直な第2の方向と同一でなく、上記第1の方向と上記第2の方向との間の角度は約10°〜約180°である、基板;並びに
上記大表面の少なくとも上記第1の部分及び上記第2の部分上に配置される、光学コーティングであって、上記光学コーティングは、反射防止表面を形成する、光学コーティング
を備える、コーティング済み物品であって:
上記コーティング済み物品は、上記基板の上記第1の部分及び上記基板の上記第2の部分において、バーコビッチ圧子硬度試験によって上記反射防止表面上で測定した場合に、約50nm以上の押し込み深さにおいて約8GPa以上の硬度を示し;
上記基板の上記第1の部分と上記基板の上記第2の部分との間の、上記コーティング済み物品の反射色の差異は、国際照明委員会規格の光源下において(L*,a*,b*)測色系の反射色座標によって測定した場合に約10以下であり、上記反射色の上記差異は、√((a*
第1の部分−a*
第2の部分)
2+(b*
第1の部分−b*
第2の部分)
2)として定義され、上記第1の部分における上記反射色は、上記第1の方向に対する第1の入射照明角度で測定され、上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜約60°であり、上記第2の部分における上記反射色は、第2の入射照明角度で測定され、上記第2の入射照明角度は、上記第1の部分及び上記第2の部分における上記反射色が同一の視認方向で測定されるよう、上記第1の入射照明角度の方向と同一の方向である、コーティング済み物品。
【0175】
実施形態14
上記第1の入射照明角度は、上記第1の方向から約0°〜10°の角度である、実施形態1〜13のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0176】
実施形態15
上記基板は、非晶質基板又は結晶質基板を含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0177】
実施形態16
上記光学コーティングは、上記基板と接触する第1の勾配層、上記第1の勾配層を覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う第2の勾配層を備え、上記第2の勾配層は上記反射防止表面を画定し;
上記基板における上記第1の勾配層の屈折率は、上記基板の屈折率の0.2以内であり;
上記耐擦傷性層における上記第1の勾配層の屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記耐擦傷性層における上記第2の勾配層の屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記反射防止表面における上記第2の勾配層の屈折率は、約1.35〜約1.7である、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0178】
実施形態17
上記光学コーティングは、第1の反射防止コーティング、上記第1の反射防止コーティングを覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う第2の反射防止コーティングを備え、上記第2の反射防止コーティングは上記反射防止表面を画定し、上記第1の反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備え、上記第2の反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備える、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0179】
実施形態18
上記光学コーティングは、上記基板と接触する勾配層、上記勾配層を覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う反射防止コーティングを備え、上記反射防止コーティングは上記反射防止表面を画定し;
上記基板における上記勾配層の屈折率は、上記基板の屈折率の0.2以内であり;
上記耐擦傷性層における上記勾配層の屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備える、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0180】
実施形態19
上記光学コーティングは、上記基板と接触する反射防止コーティング、上記反射防止コーティングを覆う耐擦傷性層、及び上記耐擦傷性層を覆う勾配層を備え、上記勾配層は上記反射防止表面を画定し;
上記反射防止コーティングは、少なくとも1つの低RI層及び少なくとも1つの高RI層を備え;
上記耐擦傷性層における上記反射防止コーティングの屈折率は、上記耐擦傷性層の屈折率の0.2以内であり;
上記反射防止表面における上記勾配層の屈折率は、約1.35〜約1.7である、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のコーティング済み物品。
【0181】
実施形態20
前面、背面及び側面を有する、ハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジング内にある、電子構成部品であって、上記電子構成部品は、少なくともコントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは、上記ハウジングの上記前面にあるか、又は上記前面に隣接する、電子構成部品;並びに
上記ディスプレイを覆うように配置された、カバー基板
を備える、消費者向け電子製品であって、
上記ハウジングの一部分又は上記カバー基板のうちの少なくとも一方は、実施形態1〜19のいずれか1つに記載のコーティング済み物品を備える、消費者向け製品。