(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯状の正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極板と、帯状の負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極板とが、絶縁性のセパレータを介して巻回された電極体を備え、
前記電極体の最外周には前記負極集電体が露出した負極集電体露出部が設けられ、前記負極板の巻終わり端が前記負極集電体露出部に貼着されたテープで固定されており、
前記テープは、前記負極板の軸方向両端のそれぞれから、前記負極板の前記軸方向長さの14%以内の領域に貼着されている、非水電解質二次電池。
前記負極活物質層は負極活物質として炭素材料とケイ素材料を含み、前記ケイ素材料の前記負極活物質中の含有量は3質量%以上20質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において「略」なる用語は、例えば、完全に同じである場合に加えて、実質的に同じとみなせる場合を含む意味で用いられる。さらに、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0011】
下記では、円筒形の金属製ケースを備えた円筒形電池である非水電解質二次電池10を例示するが、本開示の非水電解質二次電池はこれに限定されない。本開示の非水電解質二次電池は、例えば角形の金属製ケースを備えた角形電池であってもよい。
【0012】
図1は、非水電解質二次電池10の断面図である。
図2は、非水電解質二次電池10を構成する電極体14の斜視図である。
図1及び
図2に例示するように、非水電解質二次電池10は、巻回型の電極体14と、非水電解質(図示せず)とを備える。巻回型の電極体14は、正極板11と、負極板12と、セパレータ13とを有し、正極板11と負極板12がセパレータ13を介して渦巻状に巻回されて構成される。以下では、電極体14の軸方向一方側を「上」、軸方向他方側を「下」という場合がある。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0013】
正極板11は、例えば、アルミニウム合金箔等からなる帯状の正極集電体30(
図3参照)と、当該集電体30に接合された正極リード19とを有する。正極リード19は、正極集電体30を非水電解質二次電池10の正極端子に電気的に接続するための導電部材であって、電極群の上端から電極体14の軸方向α(上方)に延出している。ここで、電極群とは電極体14において各リードを除く部分を意味する。正極リード19は、例えば電極体14の径方向βの略中央部に設けられている。
【0014】
負極板12は、例えば、銅箔からなる帯状の負極集電体35(
図3参照)と、当該集電体に接続された負極リード20とを有する。負極リード20は、負極集電体35を非水電解質二次電池10の負極端子を電気的に接続するための導電部材であって、電極群の下端から軸方向α(下方)に延出している。例えば、負極リード20は電極体14の径方向内側の端部に配置される巻始め端部に設けられる。以下では、電極体14の内周側を巻芯側、外周側を巻外側という場合がある。
【0015】
正極リード19及び負極リード20は、集電体よりも厚みのある帯状の導電部材である。リードの厚みは、例えば集電体の厚みの3倍〜30倍であって、一般的に50μm〜500μmである。各リードの構成材料は特に限定されないが、正極リード19はアルミニウムを主成分とする金属によって、負極リード20はニッケル又は銅を主成分とする金属によって、それぞれ構成されることが好ましい。なお、リードの数、配置等は特に限定されない。
【0016】
図1に示す例では、ケース本体15と封口体16によって、電極体14及び非水電解質を収容する金属製の電池ケースが構成されている。電極体14の上下には、絶縁板17,18がそれぞれ設けられる。正極リード19は絶縁板17の貫通孔を通って封口体16側に延び、封口体16の底板であるフィルタ22の下面に溶接される。非水電解質二次電池10では、フィルタ22と電気的に接続された封口体16の天板であるキャップ26が正極端子となる。他方、負極リード20は絶縁板18の貫通孔を通ってケース本体15の底部側に延び、ケース本体15の底部内面に溶接される。非水電解質二次電池10では、ケース本体15が負極端子となる。
【0017】
電極体14は、上述した通り、正極板11と負極板12がセパレータ13を介して渦巻状に巻回されてなる巻回構造を有する。正極板11、負極板12、及びセパレータ13は、いずれも帯状に形成され、渦巻状に巻回されることで電極体14の径方向βに交互に積層された状態となる。電極体14において、各電極の長手方向が巻回方向γとなり、各電極板11,12の幅方向が軸方向αとなる。本実施形態では、電極体14の巻芯に空間28が形成されている。
【0018】
ケース本体15は、有底円筒形状の金属製容器である。ケース本体15と封口体16の間にはガスケット27が設けられ、電池ケース内の密閉性が確保されている。ケース本体15は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体16を支持する張り出し部21を有する。張り出し部21は、ケース本体15の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体16を支持する。
【0019】
封口体16は、電極体14側から順に積層された、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25、及びキャップ26を有する。封口体16を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材24を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体23と上弁体25は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば下弁体23が破断し、これにより上弁体25がキャップ26側に膨れて下弁体23から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26の開口部26aからガスが排出される。
【0020】
図3は、電極体14を構成する正極板11及び負極板12をそれぞれ展開状態で示した正面図である。
図3では、紙面右側が電極体14の巻始め側、紙面左側が電極体14の巻終わり側である。また、
図4は、電極体14がテープ40で固定された様子を示す径方向断面図である。なお、
図4では、見易くするために正極板11、負極板12およびセパレータ13の間に隙間がある状態で示すが、実際にはこれらは密接した状態に巻回されている。
【0021】
図3に例示するように、電極体14では、負極板12上でのリチウムの析出を防止するため、負極板12は正極板11よりも軸方向αの幅が大きく、かつ、巻回方向γの長さが長く形成される。そして、少なくとも正極板11の正極活物質層31が形成された部分は、セパレータ13を介して負極板12の負極活物質層36が形成された部分に対向配置される。
【0022】
正極板11は、帯状の正極集電体30と、当該集電体上に形成された正極活物質層31とを有する。本実施形態では、正極集電体30の両面に正極活物質層31が形成されている。正極集電体30には、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体30は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極集電体30の厚みは、例えば10μm〜30μmである。
【0023】
正極活物質層31は、正極集電体30の両面において、後述の正極集電体露出部32を除く全域に形成されることが好適である。正極活物質層31は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極板11は、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極集電体30の両面に塗布し、塗膜を乾燥・圧縮することにより作製できる。
【0024】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、特に限定されないが、一般式Li
1+xMO
2(式中、−0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0025】
上記導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
正極板11には、正極集電体露出部32が設けられる。正極集電体露出部32は、正極リード19が接続される部分であって、正極集電体30の表面が正極活物質層31に覆われていないことにより正極集電体30が露出した部分である。正極集電体露出部32は、正極リード19よりも幅広に形成される。正極集電体露出部32は、正極板11の厚み方向に重なるように正極板11の両面に設けられることが好適である。
【0027】
図3に示す例では、正極板11の長手方向中央部に、正極板11の全幅にわたって正極集電体露出部32が設けられている。正極集電体露出部32は、正極板11の長手方向端部寄りに形成されてもよいが、集電性の観点から、好ましくは長手方向両端から略等距離の位置に設けられる。正極集電体露出部32は、例えば正極集電体30の一部に正極合剤スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。なお、正極集電体露出部32は正極板11の幅方向の一方端から他方端に至らない長さで設けられてもよい。
【0028】
負極板12は、帯状の負極集電体35と、当該負極集電体35上に形成された負極活物質層36とを有する。本実施形態では、負極集電体35の両側表面に負極活物質層36が形成されている。負極集電体35には、例えば銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極集電体35の厚みは、非水電解質二次電池10の高容量化のためには薄いことが好ましく、例えば、7μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0029】
負極活物質層36は、負極集電体35の両側表面において、長手方向両端部を除く全域に形成されることが好適である。負極活物質層36は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極板12は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極集電体35の両面に塗布し、塗膜を乾燥・圧縮することにより作製できる。
【0030】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素、スズ等のリチウムと合金化する金属、又はこれらを含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質に含まれる黒鉛の種類やケイ素酸化物の形態などについては、特に限定されない。
【0031】
負極活物質は、非水電解質二次電池10の高容量化のためにはケイ素、酸化ケイ素、及びケイ酸リチウムから選ばれる少なくとも1種のケイ素材料を含むことが好ましい。ケイ素材料は、充放電時の体積変化が大きいため、負極活物質層36の割れを抑制するために炭素材料と混合して用いることが好ましく、例えば、負極活物質中のケイ素材料の含有量は3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、さらには5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
負極活物質層36に含まれる結着剤には、例えば正極板11の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
負極板12の巻始め端部には、負極集電体露出部37aが設けられている。負極集電体露出部37aは、負極リード20が接続される部分であって、負極集電体35の両側表面が負極活物質層36に覆われていないことで負極集電体35が露出した部分である。負極集電体露出部37aは、例えば負極集電体35の一部に負極合剤スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。
【0034】
負極集電体露出部37aは、負極板12の幅方向に沿って長く延びた略矩形形状を有し、負極板12の長さ方向に沿って負極リード20よりも幅広に形成される。負極集電体露出部37aは、負極板12の両面に設けられることが好適である。負極リード20は、一端部が負極集電体露出部37a上に位置し、他端部が負極集電体露出部37aの下端から延出して配置されている。負極リード20は、例えば、超音波溶接により負極集電体露出部37aに接合されている。
【0035】
負極板12の巻終わり端部には、負極集電体露出部37bが設けられている。負極集電体露出部37bは、負極集電体35の両側表面が負極活物質層36に覆われていないことで負極集電体35が露出した部分である。負極集電体露出部37bは、
図4に示すように、正極板11およびセパレータ13と共に渦巻き状に巻回されたとき、電極体14の最外周を構成する部分である。このように電極体14の最外周を負極集電体露出部37bで構成することで、電極体14がケース本体15内に収容された場合に負極集電体露出部37bがケース側壁15a(
図7参照)の内面に電気的に接触することが可能になる。その結果、負極板12の巻終わり端部に、負極リードを設けることを省略できる。
【0036】
図3に示すように、負極集電体露出部37bの巻回方向γの長さLは、電極体14の最外周全体を構成する長さに設定されるのが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、負極活物質層36の巻終わり側の端部36aが、電極体14の最外周にはみ出した状態で巻回されるように、負極集電体露出部37bの長さLが設定されてもよい。負極集電体露出部37bの長さは、負極板12の表裏で異なる値にすることができる。また、負極板集電体露出部37bは、負極板12の巻外側の表面のみに設けることもできる。その場合、負極集電体露出部37bの長さLは、負極板12の巻外側の負極集電体露出部37bの長さを基準に決定される。
【0037】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ13の厚みは、例えば10μm〜50μmである。セパレータ13は、電池の高容量化・高出力化に伴い薄膜化の傾向にある。セパレータ13は、例えば130℃〜180℃程度の融点を有する。
【0038】
図4に示すように、上述した正極板11および負極板12がセパレータ13を介して渦巻き状に巻回された後、最外周にテープ40が貼着されることによって、巻終わり端部が固定される。これにより、電極体14の巻き緩みが防止される。本実施形態では、テープ40は、電極体14の最外周の略1周にわたって貼り付けられるのが好ましい。これにより、電極体14をケース本体15に挿入する際に、最外周の負極集電体露出部37bがめくれるのを防止することができる。本実施形態では、テープ40の両端部間に例えば1mm程度の僅かな隙間44が形成されている。
【0039】
図5は、テープ40の拡大断面図である。
図5に例示するように、テープ40は、基材層46と接着剤層48とで構成される。基材層46は、絶縁性と耐電解質性に優れた樹脂材料で形成されるのが好適である。本実施形態では、基材層46の主成分は、ポリプロピレン(PP)であることが好ましい。但し、基材層46は、他の樹脂材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のエステル系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などで形成されてもよい。これらの樹脂材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
接着剤層48は、絶縁性および耐電解液性に優れた接着剤を用いて構成されることが好ましい。接着剤層48を構成する接着剤は、加熱することで粘着性を発現するホットメルト型又は加熱により硬化する熱硬化型であってもよいが、生産性等の観点から、室温で粘着性を有するものが好ましい。接着剤層48は、例えばアクリル系接着剤又は合成ゴム系接着剤によって構成される。
【0041】
基材層46よび接着剤層48を含むテープ40の厚みtは、後述する負極活物質層割れを抑制するためには薄いことが好ましいが、巻き緩み防止のための固定強度を確保するためには一定以上の厚みを有することが好ましく、例えば、8μm以上40μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0042】
テープ40の幅は、後述するようにテープ40の内側端縁部の位置が負極板12の軸方向の端部から14%以内の位置となるように適宜決定することができるが、上記のめくれ防止のためには一定以上の幅を有することが好ましく、例えば、3mm以上7mm以下とするのが好ましい。
【0043】
図6(a)は電極体の斜視図であり、
図6(b)は負極板の巻終わり端およびテープを展開状態で示す図である。本実施形態の電極体14において、テープ40は、負極板12の軸方向両端のそれぞれから負極板12の軸方向長さの14%以内の領域に貼着されている。
【0044】
より詳しくは、
図6(a)に示すように、本実施形態の電極体14では、当該電極体14の巻終わり端12aが、軸方向両端において帯状のテープ40でそれぞれ固定されている。
図6(b)では、負極板12の下端を0%、上端を100%とする軸方向の座標に基づいてテープ40の貼着位置を示している。電極体14の下端部に貼着されたテープ40は、その内側端縁部41aが負極板12の下端から14%の位置となるように貼着されている。また、電極体14の上端部に貼着されたテープ40は、その内側端縁部41aが負極板12の下端から86%の位置(すなわち上端から14%の位置)となるように貼着されている。ここで、テープ40の内側端縁部41aとは、負極板12の軸方向中央側に位置する端縁部をいい、その反対側の端縁部を外側端縁部41bという。
【0045】
本実施形態では、テープ40は、外側端縁部41bと負極板12の下端および上端との間に、例えば1mm程度のマージンが形成されるように貼着されている。これにより、テープ40が負極板12からはみ出すことで、隣接するセパレータ13に跨って貼着されてしまうのを抑制できる。ただし、このようなマージンを設けることなく、テープ40の外側端縁部41bが負極板12の下端および上端に一致するようにテープ40が貼着されてもよい。
【0046】
図6(b)に示すように、テープ40は、負極板12の巻終わり端12aを越えて延出しており、その延出した部分が電極体14の最外周を構成する負極集電体露出部37bの破線43で示す矩形領域に貼着される。これにより、各テープ40が電極体14の外周を略1周にわたって貼着されて、巻終わり端12aが固定される。その結果、電極体14を構成する正極板11、負極板12およびセパレータ13の巻き緩みが防止される。
【0047】
図7は、ケース本体15内に収容された電極体14におけるテープ固定部の拡大断面図である。なお、
図7では、電極体14の最外周を構成する負極集電体露出部37bとケース本体15のケース側壁15aとの間の隙間が誇張して示されているが、実際にはテープ40の厚みが十分に薄いため負極集電体露出部37bとケース側壁15aとの安定した接触をテープ40が妨げることはない。
【0048】
上述した構成からなる電極体14がケース本体15内に収容されて非水電解質二次電池10が構成される。この非水電解質二次電池10が充放電を繰り返すと、電極体14が膨張収縮を繰り返すことになる。特に、充電時においては、膨張率が比較的大きい負極活物質層36が膨張することによって、電極体14の直径が増加する。このとき、電極体14は、
図7中の破線50で示すように径方向外側へ向かって膨出し、その膨出量は電極体14の軸方向中央部でより大きくなる傾向にある。
【0049】
電極体14の軸方向両端部には、テープ40が巻き付けられて貼着されているため、電極体14の膨出を規制する拘束力が生じる。そのため、テープ40の内側端縁部41aに対応する位置で正極板11および負極板12に作用する応力が集中的に高くなる。このときの応力は、上述した電極体14の膨出力と同様に、テープ40の内側端縁部41aが電極体14の軸方向中央側にいくほど大きくなる。
【0050】
上記のような応力が繰返し作用することによって、負極集電体露出部37bよりも内周側に位置する負極板12の負極活物質層36に割れが生じる可能性がある。そうすると、この割れた部分で負極集電体35が露出することで金属リチウムが析出する恐れがある。
【0051】
そこで、本実施形態の非水電解質二次電池10では、最外周の負極集電体露出部37bにおいてテープ40を貼着する領域を、負極板12の軸方向両端のそれぞれから負極板14の軸方向長さの14%以内の領域としている。このような領域にテープ40を貼着することで、テープ40の内側端縁部41aに対応する位置で負極活物質層36に作用する応力が比確的小さくなる。したがって、テープ40の内側端縁部41aに対応する位置での負極活物質層36の割れを有効に抑制することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定される
ものではない。
【0053】
<実施例1>
[正極板の作製]
正極活物質としてLiNi
0.88Co
0.09Al
0.03O
2で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を100質量部と、アセチレンブラックを1質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを0.9質量部とを混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合剤スラリーを調製した。次に、当該正極合剤スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。塗膜が形成された集電体をローラーを用いて圧延した後、所定の電極サイズに切断し、長手方向中央部に設けられた正極集電体露出部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接して、正極板を作製した。
【0054】
[負極板の作製]
黒鉛粉末を95質量部と、酸化ケイ素(SiO)を5質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量部と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)の分散水を1質量部とを混合し、さらに水を適量加えて、負極合剤スラリーを調製した。次に、当該負極合剤スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。塗膜が形成された集電体をローラーを用いて圧延した後、所定の電極サイズに切断し、巻始め端部に設けられた負極集電体露出部に負極リードを超音波溶接して、負極板を作製した。
【0055】
[電極体の作製]
上記正極板および負極板を、ポリエチレン製多孔質膜からなるセパレータを介して巻回し、最外周に幅7mm、厚み30μmのポリプロピレン製の基材層を有するテープを、
図6に示すように内側端縁部が負極板の軸方向両端のそれぞれから負極板の軸方向長さの14%の位置となるように負極集電体露出部に貼り付けて、電極体を作製した。このとき、電極体の最外周の全周が、負極集電体露出部で構成されるようにした。
【0056】
[非水電解質の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジメチルメチルカーボネート(DMC)とを体積比1:3で混合した混合溶媒100質量部に、ビニレンカーボネート(VC)5質量部を添加し、LiPF
6を1.5モル/リットルの濃度で溶解させて、非水電解液を調製した。
【0057】
[二次電池の作製]
上記電極体の上下に絶縁板をそれぞれ配置し、電極体の負極リードをケース本体の底部に溶接すると共に、電極体の正極リードを封口体のフィルタに溶接して、電極体をケース本体内に収納した。その後、ケース本体内に上記非水電解液を注入した。最後に、ケース本体の開口部を封口体で塞いで非水電解質二次電池を作製した。この二次電池の容量は4600mAhであった。
【0058】
<実施例2>
上記正極板および負極板を、ポリエチレン製多孔質膜からなるセパレータを介して巻回した後、軸方向両端に幅3mm、厚み30μmのポリプロピレン製の基材層を有するテープを、
図8に示すように、内側端縁部が負極板の軸方向両端のそれぞれから負極板の軸方向長さの8%の位置となるように負極集電体露出部に貼り付けて、電極体を作製した。これ以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0059】
<比較例>
上記正極板および負極板を、ポリエチレン製多孔質膜からなるセパレータを介して巻回した後、軸方向両端に幅9mm、厚み30μmのポリプロピレン製の基材層を有するテープを、
図9に示すように、内側端縁部が負極板の軸方向両端のそれぞれから負極板の軸方向長さの17%の位置となるように負極集電体露出部に貼り付けて、電極体(14A)を作製した。これ以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
[評価・データ]
下記の条件で実施例1、実施例2、及び、比較例の各非水電解質二次電池について充放電サイクル試験を実施し、試験後に電極体の負極板の負極活物質層割れの有無を確認した。
【0061】
[充放電条件]
25℃環境下において、1380mA(0.3時間率)の定電流充電にて4.2Vに達した後、4.2Vで終止電流を92mAとした定電圧充電を行い、20分間休止後、放電電流4600mA(1時間率)で定電流放電を行い、20分休止するという充放電サイクルを500サイクル繰り返した。
【0062】
評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、実施例1および2では、負極活物質層割れは発生しなかったが、比較例では負極活物質層割れが発生していた。これにより、テープの内側端縁部の位置が負極板の両端のそれぞれから負極板の軸方向長さの14%以内に位置することが良いことが確認できた。
【0065】
なお、本開示の非水電解質二次電池は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲内において種々の変更や改良が可能であることはいうまでもない。