(54)【発明の名称】化合物(2S,3R)−イソプロピル2−(((2−(1,5−ジメチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)−1−((テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル)−1H−ベンゾ[D]イミダゾール−5−イル)メチル)アミノ)−3−ヒドロキシブタノエートエジシレートの水和物結晶
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートの水和物結晶。
5.1度、7.9度、10.1度、11.3度、11.9度、12.9度、13.4度、14.2度、18.3度、20.3度、21.0度及び21.8度の特定の2θ値のピーク(±0.1° 2θの実験誤差)を有するX線粉末回折パターンを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水和物結晶。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用する場合、「ブロモドメイン」という用語は、アセチル化リジン残基、例えば、ヒストンのN末端尾部のものなどに結合する、進化的、且つ構造的に保存されたモジュール(長さがおよそ110個のアミノ酸)を指す。それらは、より遥かに大きいブロモドメイン含有タンパク質(BCP)の一部として確認されているタンパク質ドメインであり、これらの多くは、遺伝子転写及び/又はクロマチン再構成を調節する役割を有する。ヒトゲノムは、少なくとも57種のブロモドメインをコードしている。
【0016】
本明細書で使用する場合、「BET」という用語は、ブロモドメイン含有タンパク質からなる、ブロモドメイン及び末端外ドメイン(extraterminal domain)ファミリーを指し、これらのタンパク質としては、BRD2、BRD3、BRD4、及びBRDtが挙げられる。
【0017】
本明細書で使用する場合、「BET阻害剤」という用語は、1種以上のBETファミリーのブロモドメイン含有タンパク質(例えば、BRD2、BRD3、BRD4、又はBRDT)の、例えばアセチル化リジン残基に対する結合を阻害することができる化合物を指す。
【0018】
本明細書で使用する場合、「エジシレート(edisylate)」という用語は、米国一般名(United States Adopted Name(USAN))で認可された1,2-エタンジスルホネートの短縮形を指す。
【0019】
多くの有機化合物が、それらがその中で反応する溶媒、又はそれらがそこから析出若しくは結晶化する溶媒と複合体を形成し得ることが理解されるだろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。化合物が水と複合体を形成する場合、これは「水和物」と呼ばれる。本明細書における「水和物」の言及は、例えば、半水和物、一水和物、セスキ水和物、二水和物及び三水和物を包含する。一実施形態において、水和物結晶は一水和物である。
【0020】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、病態の予防、特定された病態の寛解又は安定化、病態の症状の低減又は除去、病態の進行の速度を落とすこと又はその除去、及び以前罹患していた患者又は対象における病態の再発の防止又は遅延を指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、動物又はヒトの身体において所望の生物学的応答を誘発する、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の量を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、動物又はヒトの身体を指す。
【0023】
本明細書における「本発明の化合物(1種又は複数種)」の言及は、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートの水和物結晶を意味することを理解されたい。
【0024】
発明の陳述
第1の態様において、本発明は、BET阻害剤であり、従ってBET阻害剤が適応である様々な障害(特に炎症性疾患及び自己免疫性疾患、並びに癌)の治療に有用であり得る、化合物(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートの水和物結晶を提供する。
【0025】
国際特許出願第PCT/EP2016/055792号は、式(I)の、化合物(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート:
【0026】
【化1】
の2つの調製法について記載している(実施例303)。
【0027】
PCT/EP2016/055792はさらに、式(II)の、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートの1,2-エタンジスルホン酸塩の結晶形の調製法及び特性決定について記載している。
【0029】
本発明では、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートの新規な水和物結晶が見出された。
【0030】
本明細書中に記載される水和物結晶は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、ラマン分光法及び熱重量分析(TGA)により特性決定された。
【0031】
機器の詳細
X線粉末回折(XRPD)
データは、X’Celerator検出器を用いて、PANalytical X’Pert Pro粉末回折計(モデルPW3040/60)上で取得した。取得条件は以下のとおりであった:放射線:Cu K
α、発生器電圧:40kV、発生器電流:45mA、開始角度:2.0° 2θ、終了角度:40.0° 2θ、ステップサイズ:0.0167° 2θ、1ステップ当たりの時間:31.75秒。サンプルは、数ミリグラムのサンプルをシリコンウエハー(ゼロバックグラウンドプレート)上に載せ、粉末の薄膜を生じさせることによって調製した。
【0032】
FT-ラマン分光法
ラマンスペクトルは、1064nmのNd:YVO
4励起レーザー、液体窒素冷却されたGe検出器、及びmicrostageを備えたNicolet NXR9650分光計(Thermo Scientific)を用いて収集した。スペクトルは、Happ-Genzelアポダイゼーション関数及び2レベルゼロフィリングを用いて、分解能4cm
-1、128スキャンで取得した。バンド位置はOmnicソフトウェアを用いて決定し、各バンド位置における許容誤差(誤差範囲)は、約±1cm
-1である。
【0033】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCサーモグラムは、50mL/分のN
2パージ下の冷凍冷却システム及びオートサンプラーを備えたTA Instruments Q200示差走査熱量測定器を用いて取得した。DSCサーモグラムは、圧着アルミニウムパン中10.00℃/分で取得した。
熱重量分析(TGA)
TGAサーモグラムは、TA Instruments Q5000熱重量分析計を、50mL/分のN
2パージ下、10℃/分で用いて取得した。
【0034】
一実施形態において、
図1に実質的に示されるとおりのX線粉末回折パターンを有する、結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレート一水和物が提供される。
【0035】
実施例4についての特徴的なXRPD角度及びd-間隔を表1に記録する。ピーク割り当てのそれぞれについて、許容誤差は約±0.1°(2θ)である。ピーク強度は、優先方位によりサンプル間で変動し得る。ピーク位置は、PANalytical Highscore Plusソフトウェアを用いて測定した。
【0037】
さらなる実施形態において、表1に示されるとおりの、5.1度、7.9度、10.1度、11.3度、11.9度、12.9度、13.4度、14.2度、18.3度、20.3度、21.0度、及び21.8度の特定の2θ値のピーク(±0.1° 2θの実験誤差)を有するX線粉末回折パターンを有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0038】
別のさらなる実施形態において、5.1度、7.9度、10.1度、11.3度、11.9度、12.9度、13.4度、14.2度、18.3度、20.3度、21.0度、及び21.8度からなる群から選択される少なくとも9つの特定の2θ値のピーク(±0.1° 2θの実験誤差)を有するX線粉末回折パターンを有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0039】
別のさらなる実施形態において、5.1度、7.9度、10.1度、11.3度、11.9度、12.9度、13.4度、14.2度、18.3度、20.3度、21.0度、及び21.8度からなる群から選択される少なくとも8つ、又は少なくとも7つ、又は少なくとも6つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも4つの特定の2θ値のピーク(±0.1° 2θの実験誤差)を有するX線粉末回折パターンを有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0040】
別のさらなる実施形態において、5.1度、7.9度、10.1度、11.3度、11.9度、12.9度、13.4度、14.2度、18.3度、20.3度、21.0度、及び21.8度からなる群から選択される少なくとも3つの特定の2θ値のピーク(±0.1° 2θの実験誤差)を有するX線粉末回折パターンを有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0041】
さらなる実施形態において、
図2に実質的に示されるとおりのDSCサーモグラムを有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0042】
さらなる実施形態において、DSCにより決定される約223℃の融解開始点を有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0043】
さらなる実施形態において、
図3に実質的に示されるとおりのFTラマンスペクトルを有する、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0044】
さらなる実施形態において、805cm
-1、1017cm
-1、1060cm
-1、1117cm
-1、1211cm
-1、1253cm
-1、1264cm
-1、1282cm
-1、1295cm
-1、1331cm
-1、1363cm
-1、1413cm
-1、1459cm
-1、1514cm
-1、1575cm
-1、1631cm
-1、2932cm
-1、2966cm
-1及び3062cm
-1におけるピーク(ここで、各バンド位置における許容誤差は約±1cm
-1である)を含む本明細書中上記の条件下で得られるFT-ラマンスペクトルにより特徴づけられる、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0045】
別のさらなる実施形態において、805cm
-1、1017cm
-1、1060cm
-1、1117cm
-1、1211cm
-1、1253cm
-1、1264cm
-1、1282cm
-1、1295cm
-1、1331cm
-1、1363cm
-1、1413cm
-1、1459cm
-1、1514cm
-1、1575cm
-1、1631cm
-1、2932cm
-1、2966cm
-1及び3062cm
-1からなる群から選択される少なくとも15個のピーク(ここで、各バンド位置における許容誤差は約±1cm
-1である)を含む本明細書中上記の条件下で得られるFT-ラマンスペクトルにより特徴づけられる、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0046】
別のさらなる実施形態において、805cm
-1、1017cm
-1、1060cm
-1、1117cm
-1、1211cm
-1、1253cm
-1、1264cm
-1、1282cm
-1、1295cm
-1、1331cm
-1、1363cm
-1、1413cm
-1、1459cm
-1、1514cm
-1、1575cm
-1、1631cm
-1、2932cm
-1、2966cm
-1及び3062cm
-1からなる群から選択される少なくとも12個のピーク(ここで、各バンド位置における許容誤差は約±1cm
-1である)を含む、本明細書中上記の条件下で得られるFT-ラマンスペクトルにより特徴づけられる、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0047】
別のさらなる実施形態において、805cm
-1、1017cm
-1、1060cm
-1、1117cm
-1、1211cm
-1、1253cm
-1、1264cm
-1、1282cm
-1、1295cm
-1、1331cm
-1、1363cm
-1、1413cm
-1、1459cm
-1、1514cm
-1、1575cm
-1、1631cm
-1、2932cm
-1、2966cm
-1及び3062cm
-1からなる群から選択される少なくとも10個のピーク(ここで、各バンド位置における許容誤差は約±1cm
-1である)を含む本明細書中上記の条件下で得られるFT-ラマンスペクトルにより特徴づけられる、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0048】
別のさらなる実施形態において、805cm
-1、1017cm
-1、1060cm
-1、1117cm
-1、1211cm
-1、1253cm
-1、1264cm
-1、1282cm
-1、1295cm
-1、1331cm
-1、1363cm
-1、1413cm
-1、1459cm
-1、1514cm
-1、1575cm
-1、1631cm
-1、2932cm
-1、2966cm
-1及び3062cm
-1からなる群から選択される少なくとも8個のピーク(ここで、各バンド位置における許容誤差は約±1cm
-1である)を含む本明細書中上記の条件下で得られるFT-ラマンスペクトルにより特徴づけられる、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。
【0049】
なおさらなる実施形態において、当業者が理解するであろうとおり、上述の実施形態を特徴付ける分析データの任意の組み合わせにより特徴付けられる、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートが提供される。例えば、一実施形態において、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートは、
図1に実質的に示されるとおりのX線粉末回折パターン及び
図2に実質的に示されるとおりのDSCサーモグラム及び
図3に実質的に示されるとおりのFTラマンスペクトルを有する。別の実施形態において、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートは、
図1に実質的に示されるとおりのX線粉末回折パターン及び
図2に実質的に示されるとおりのDSCサーモグラムを有する。別の実施形態において、水和物結晶形の(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートは、
図1に実質的に示されるとおりのX線粉末回折パターン及び
図3に実質的に示されるとおりのFTラマンスペクトルを有する。
【0050】
X線粉末回折(XRPD)パターンの取得に関わる利用される装置、湿度、温度、粉末結晶の方位(配向)、及び他のパラメータが、回折パターンの線の外観、強度、及び位置に多少の変動を生じさせ得ることは、当業者に周知であり且つ理解されている。本明細書中に提供される「
図1に実質的に示されるような(示されるとおりの)」X線粉末回折パターンは、
図1のXRPDパターンを与えた化合物と同じ結晶形を有する化合物を表すと当業者が考え得るXRPDパターンである。すなわち、このXRPDパターンは、
図1のXRPDパターンと同一であってもよく、又はむしろ多少異なっていてもよい。このようなXRPDパターンは、必ずしも本明細書中に示される回折パターンのいずれか1つの線のそれぞれを示していなくてもよく、及び/又はデータの取得に関する条件の差異から生じる前記の線の外観、強度、若しくは位置のシフトにおけるわずかな変化を示していてもよい。当業者は、結晶化合物のサンプルが、本明細書中に開示される形と同じ形を有するか、又は異なる形を有するか否かを、それらのXRPDパターンの比較により、決定することができる。例えば、当業者は、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートのサンプルのXRPDパターンを
図1と重ね合わせ、当技術分野における専門技術及び知識を用いて、サンプルのXRPDパターンが
図1に実質的に示されるとおりであるか否かを容易に決定することができる。このXRPDパターンが
図1に実質的に示されるとおりである場合、サンプルの形は、本発明の化合物と同じ形を有すると容易に且つ正確に同定することができる。
【0051】
さらに、ラマンスペクトルの取得に関わる利用される装置、湿度、温度、粉末結晶の方位及び他のパラメータが、スペクトル中のピークの外観、強度、及び位置に多少の変動を生じさせ得ることもまた、当業者に周知であり且つ理解されている。本明細書中で提供される「
図3に実質的に示されるような(示されるとおりの)」ラマンスペクトルは、
図3のラマンスペクトルを与えた化合物と同じ結晶形を有する化合物を表すと当業者が考え得るラマンスペクトルである。すなわち、このラマンスペクトルは、
図3のラマンスペクトルと同一であってもよく、又はむしろ多少異なっていてもよい。このようなラマンスペクトルは、必ずしも本明細書中に示されるスペクトルのいずれか1つのピークのそれぞれを示していなくてもよく、及び/又はデータ取得に関する条件の差異から生じる前記ピークの外観、強度、又は位置のシフトにおけるわずかな変化を示していてもよい。当業者は、結晶化合物のサンプルが本明細書中に開示される形と同じ形を有するか、又は異なる形を有するかを、それらのラマンスペクトルの比較により決定することができる。例えば、当業者は、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートのサンプルのラマンスペクトルを
図3と重ね合わせて、当技術分野における専門技術及び知識を用いて、サンプルのラマンスペクトルが
図3に実質的に示されるとおりであるか否かを容易に決定することができる。XRPDパターンが
図3に実質的に示されるとおりである場合、サンプルの形は本発明の化合物と同じ形を有すると容易に且つ正確に同定することができる。本発明は、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートのエジシレート塩の水和物(例えば一水和物)に関する。好ましい実施形態において、水和物は結晶形態である。水和物の非晶質形態(例えば、一水和物の非晶質(amorphous monohydrate))も、本発明の一部を形成する。水和物結晶形態については、結晶化度の程度は、約60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を上回る。一実施形態において、結晶化度の程度は、99%超である。
【0052】
本明細書中に開示される(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートの水和物結晶は、これが例えば以下の性質のうちの1つ以上を有し得るという点において、既知のBET阻害剤に対して改善されたプロファイルを示し得る:
(i) 強力なBET阻害活性、
(ii) BETファミリーのタンパク質以外の他の既知のブロモドメイン含有タンパク質を上回る選択性、
(iii) 1つ以上の他のBETファミリーメンバーを上回る、特定のBETファミリーメンバーに対する選択性、
(iv) 任意の所与のBETファミリーメンバーについての、1つの結合ドメインに対する選択性(すなわち、BD2よりもBD1)、
(v) 改善された発展性(例えば、望ましい溶解度プロファイル、薬物動態、及び薬動力学)、又は
(vi) 低減された副作用プロファイル。
【0053】
本発明はまた、本発明の化合物の全ての好適な同位体バリエーションも包含する。本発明の化合物の同位体バリエーションは、少なくとも1個の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子量とは異なる原子量を有する原子で置き換えられているものとして定義される。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、及び塩素の同位体、例えばそれぞれ、
2H、
3H、
13C、
14C、
15N、
17O、
18O、
18F、及び
36Clなどが挙げられる。式(I)の化合物又はその塩の特定の同位体バリエーション、例えば、
3H又は
14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬物及び/又は基材の組織分布研究において有用である。トリチウム、すなわち
3H及び炭素14、すなわち
14Cの同位体が、それらの調製及び検出性の容易さから特に好ましい。さらに、重水素、すなわち
2Hなどの同位体による置換は、より大きな代謝安定性から得られる特定の治療的利点、例えばin vivo半減期の増加又は用量要件の低減を提供し得るため、一部の状況においては好ましい場合がある。本発明の化合物の同位体バリエーションは、従来型の手順によって、例えば例証的方法により、あるいは好適な試薬の適切な同位体バリエーションを用いる本明細書中以下の実施例に記載される調製法によって、一般的に調製することができる。
【0054】
使用の陳述
本明細書中に開示される式(I)の化合物、そのエジシレート塩(式(II)の化合物)及びその水和物結晶はBET阻害剤として知られており、したがって、全身性炎症若しくは組織炎症、感染症若しくは低酸素症に対する炎症反応、細胞の活性化及び細胞増殖、脂質代謝、線維症に関連する様々な疾患又は病態の治療、並びにウイルス性感染症の予防及び治療において治療的有用性を有し得る。一実施形態において、本発明の化合物は、各BETファミリーブロモドメイン含有タンパク質(例えばBRD2、BRD3、BRD4及びBRDT)の、アセチル化リジン残基への結合を阻害することができる。さらなる実施形態において、本発明の化合物は、BRD4の、その同族アセチル化リジン残基への結合を阻害することができる。
【0055】
BET阻害剤は、広範な種類の急性又は慢性の自己免疫性及び/又は炎症性の病態、例えば関節リウマチ、骨関節炎、急性痛風、乾癬、全身性紅斑性狼瘡、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、多発性硬化症、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、喘息、慢性閉塞性気道疾患、間質性肺炎、心筋炎、心膜炎、筋肉炎、湿疹、皮膚炎(アトピー性皮膚炎を含む)、脱毛症、白斑、水疱性皮膚症、腎炎、血管炎、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、鬱病、シェーグレン症候群、唾液腺炎、網膜中心静脈閉塞症、網膜分枝静脈閉塞症、アーヴァイン・ガス症候群(白内障後及び術後)、網膜色素変性症、毛様体扁平部炎、散弾様網膜脈絡膜症、網膜上膜、嚢胞性黄斑浮腫、傍中心窩毛細血管拡張症、牽引性黄斑症、硝子体黄斑牽引症候群、網膜剥離、神経網膜炎、特発性黄斑浮腫、網膜炎、ドライアイ(乾性角結膜炎)、春季角結膜炎、アトピー性角結膜炎、ぶどう膜炎(例えば前部ぶどう膜炎、全ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、ぶどう膜炎関連黄斑浮腫など)、強膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、肝炎、膵炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、アジソン病、下垂体炎、甲状腺炎、I型糖尿病、巨細胞性動脈炎、ループス腎炎を含む腎炎、例えば糸球体腎炎などの臓器合併症を伴う血管炎、巨細胞性動脈炎を含む血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、ベーチェット病、川崎病、高安動脈炎、壊疽性膿皮症、臓器合併症を伴う血管炎、並びに移植された臓器に対する急性拒絶などの治療において有用であり得る。関節リウマチの治療のためのBET阻害剤の使用が、特に目的とされる。
【0056】
一実施形態において、急性若しくは慢性の自己免疫性病態及び/又は炎症性病態は、例えば高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、及びアルツハイマー病などの、APO-A1の調節を介する脂質代謝の障害である。
【0057】
別の実施形態において、急性若しくは慢性の自己免疫性病態及び/又は炎症性病態は、例えば喘息又は慢性閉塞性気道疾患などの、呼吸器障害である。
【0058】
別の実施形態において、急性若しくは慢性の自己免疫性病態及び/又は炎症性病態は、例えば関節リウマチ、骨関節炎、急性痛風、乾癬、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、又は炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)などの、全身性炎症性障害である。
【0059】
別の実施形態において、急性若しくは慢性の自己免疫性病態及び/又は炎症性病態は、多発性硬化症である。
【0060】
さらなる実施形態において、急性若しくは慢性の自己免疫性病態及び/又は炎症性病態は、I型糖尿病である。
【0061】
BET阻害剤は、細菌、ウイルス、菌類、寄生虫による感染症又はそれらの毒素に対する炎症反応を伴う疾患又は病態、例えば敗血症、急性敗血症、敗血症症候群、敗血症性ショック、内毒血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群、中毒性ショック症候群、急性肺損傷、ARDS(成人型呼吸窮迫症候群)、急性腎不全、劇症肝炎、火傷、急性膵炎、術後症候群、サルコイドーシス、ヘルクスハイマー反応、脳炎、脊髄炎、髄膜炎、マラリア、並びにインフルエンザ、帯状ヘルペス、単純ヘルペス、及びコロナウイルスなどのウイルス感染症に関連するSIRSなどの治療において有用であり得る。一実施形態において、細菌、ウイルス、菌類、寄生虫による感染症又はそれらの毒素に対する炎症反応を伴う疾患又は病態は、急性敗血症である。
【0062】
BET阻害剤は、虚血再灌流傷害に関連する病態、例えば心筋梗塞、脳血管虚血(脳卒中)、急性冠動脈症候群、腎再灌流傷害、臓器移植、冠動脈バイパス術、心肺バイパス手技、肺、腎、肝、胃腸管、又は末梢肢の塞栓症などの治療において有用であり得る。
【0063】
BET阻害剤は、線維性の病態、例えば特発性肺線維症、腎線維症、術後狭窄、ケロイド性瘢痕形成、強皮症(斑状強皮症を含む)、心筋線維症、及び嚢胞性線維症などの治療において有用であり得る。
【0064】
BET阻害剤は、ウイルス感染症、例えば単純ヘルペス感染症及び再活性化、口唇ヘルペス、帯状ヘルペス感染症及び再活性化、水痘、帯状疱疹、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、頸部新生物、アデノウイルス感染症(急性呼吸器疾患を含む)、ポックスウイルス感染症(牛痘及び天然痘など)、並びにアフリカブタ熱ウイルスなどの治療において有用であり得る。一実施形態において、ウイルス感染症は、皮膚又は頸部上皮のHPV感染症である。別の実施形態において、ウイルス感染症は、潜伏性HIV感染症である。
【0065】
BET阻害剤は、血液学的(例えば白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫など)、肺、乳房、及び結腸を含む上皮の癌、正中癌、間葉、肝、腎の、及び神経学的な腫瘍を含む、癌の治療において有用であり得る。
【0066】
BET阻害剤は、脳癌(神経膠腫)、神経膠芽腫、バナヤン・ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット・デュクロス病、乳癌、炎症性乳癌、結腸直腸癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、結腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、扁平上皮癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫癌、骨肉腫、骨の巨細胞腫、甲状腺癌、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、プラズマ細胞腫、免疫芽球性大細胞白血病、外套細胞白血病、多発性骨髄腫、巨核芽球性白血病、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病、混合系統系白血病、赤白血病、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、外陰癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、腎癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、鼻咽腔癌、頬側癌、口腔癌、GIST(消化管間質性腫瘍)、NUT-正中癌、及び精巣癌から選択される1種以上の癌の治療において有用であり得る。
【0067】
一実施形態において、癌は、白血病、例えば急性単球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、及び混合系統系白血病(MLL)から選択される白血病である。別の実施形態において、癌はNUT-正中癌である。別の実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態において、癌は小細胞肺癌(SCLC)などの肺癌である。別の実施形態において、癌は神経芽細胞腫である。別の実施形態において、癌はバーキットリンパ腫である。別の実施形態において、癌は子宮頸部癌である。別の実施形態において、癌は食道癌である。別の実施形態において、癌は卵巣癌である。別の実施形態において、癌は乳癌である。別の実施形態において、癌は結腸直腸癌である。別の実施形態において、癌は前立腺癌である。別の実施形態において、癌は、去勢抵抗性前立腺癌である。
【0068】
一実施形態において、BET阻害剤の必要性が示される疾患又は病態は、全身性炎症反応症候群に関連する疾患、例えば敗血症、火傷、膵炎、大外傷、出血、及び虚血から選択される。この実施形態において、BET阻害剤は、診断時点で、SIRSの発生率を低減するため、急性肺損傷、ARDS、急性の腎、肝、心、又は胃腸管の損傷の発症を含むショック、多臓器不全症候群の発症を低減するため、及び死亡率を低減するために投与され得る。別の実施形態において、BET阻害剤は、敗血症、出血、広範な組織損傷、SIRS、又はMODS(多臓器不全症候群)の高いリスクに関連する手術又は他の手技に先立って投与され得る。特定の実施形態において、BET阻害剤の必要性が示される疾患又は病態は、敗血症、敗血症症候群、敗血症性ショック、及び内毒血症である。別の実施形態において、BET阻害剤は、急性又は慢性の膵炎の治療に対して必要性が示される。別の実施形態において、BET阻害剤は、火傷の治療に対して必要性が示される。
【0069】
さらなる態様において、本発明は、療法において使用するための本発明の化合物を提供する。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、BET阻害剤が適応である疾患又は病態の治療において使用するための本発明の化合物を提供する。
【0071】
さらなる態様において、本発明はまた、自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患、並びに癌の治療において使用するための本発明の化合物も提供する。
【0072】
さらなる態様において、本発明は、関節リウマチの治療において使用するための本発明の化合物を提供する。
【0073】
さらなる態様において、本発明は、骨関節炎の治療において使用するための本発明の化合物を提供する。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患の治療方法であって、治療有効量の本発明の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、上記方法に関する。一実施形態において、対象はヒト対象である。
【0075】
なおさらなる態様において、本発明は、関節リウマチを治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、上記方法に関する。
【0076】
なおさらなる態様において、本発明は、骨関節炎を治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、上記方法に関する。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患の治療において使用するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、関節リウマチの治療において使用するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0079】
さらなる態様において、本発明は、骨関節炎の治療において使用するための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0080】
医薬組成物/投与経路/用量
療法において使用する場合、本発明の化合物が、未加工の化学物質として投与される可能性もあるが、医薬組成物としてこの活性成分を提供するのが一般的である。
【0081】
さらなる態様において、本発明の化合物、及び1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0082】
賦形剤(1種又は複数種)は、薬学的に許容されなければならず、組成物の他の成分と適合性でなければならない。また、本発明の別の態様によれば、本発明の化合物と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを混合することを含む、医薬組成物の製造方法も提供される。本医薬組成物は、本明細書に記載される疾患のうちのいずれかの治療において使用することができる。
【0083】
本発明の化合物は、医薬組成物における使用が意図されているため、それらの化合物は、各々好ましくは、実質的に純粋な形態で、例えば少なくとも85%の純度、特に少なくとも98%の純度(重量基準での重量%)で提供されることが容易に理解されるであろう。
【0084】
医薬組成物は、単位用量毎に所定の量の活性成分を含む単位用量形態で提供されてもよい。好ましい単位投与量の組成物は、活性成分の1日用量又は下位用量、又はその適切な部分を含むものである。したがって、このような単位用量は、1日に2回以上投与されてもよい。
【0085】
医薬組成物は、任意の適切な経路による投与、例えば、経口(頬側若しくは舌下を含む)、直腸、吸入、鼻腔内、局所(頬側、舌下、若しくは経皮を含む)、眼(局所、眼内、結膜下、強膜上、テノン嚢下を含む)、膣、又は非経口(皮下、筋内、静脈内、若しくは皮内を含む)経路による投与のために適合させることができる。このような組成物は、製薬の技術分野において既知の任意の方法によって、例えば活性成分と賦形剤(1種又は複数種)とを組み合わせることによって調製することができる。
【0086】
一態様において、医薬組成物は、経口投与用に適合される。
【0087】
経口投与用に適合された医薬組成物は、例えば錠剤若しくはカプセル剤、粉剤若しくは顆粒剤、水性若しくは非水性液体中の溶液剤若しくは懸濁剤、食用発泡物若しくはホイップ、又は水中油型液状乳剤若しくは油中水型液状乳剤などの別々の単位として提供することができる。
【0088】
錠剤又はカプセル剤中に配合するのに好適な粉末は、本発明の化合物を好適な微細サイズに低減して(例えば、微粒子化により)、同様に調製された食用炭水化物などの医薬賦形剤、例えばデンプン又はマンニトールと混合することによって調製することができる。また、例えば風味剤、保存剤、分散剤、及び着色剤が存在していてもよい。
【0089】
カプセル剤は、上記のような粉末混合物を調製して、成形されたゼラチンシースに充填することによって作製することができる。充填作業の前に、粉末混合物に、例えばコロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又は固形ポリエチレングリコールなどの滑剤及び滑沢剤を添加することができる。カプセル剤を摂取する場合の医薬品の利用能を改善するために、例えば寒天、炭酸カルシウム、又は炭酸ナトリウムなどの崩壊剤又は可溶化剤を添加することもできる。
【0090】
また、所望される場合又は必要とされる場合、混合物に、好適な結合剤、滑剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、崩壊剤、及び着色剤を配合することもできる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース又はβ-ラクトースなど、トウモロコシ甘味剤、天然及び合成のガム、例えばアカシアガム、トラガカントガム、又はアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形中で使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製すること、造粒又はスラグ化すること、滑沢剤及び崩壊剤を添加すること、並びに錠剤へと圧縮することによって製剤化される。粉末混合物は、好適に粉砕された化合物と、上記のような希釈剤又は基剤、並びに場合により、例えばカルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン、若しくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶解遅延剤、第四級塩などの再吸収促進剤、及び/又はベントナイト、カオリン、若しくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤とを混合することによって調製される。粉末混合物は、シロップ、デンプンのり、アカディアゴムのり(acadia mucilage)、又はセルロース系若しくはポリマー系材料の溶液などの結合剤を用いて湿潤化して、スクリーンを押し通すことによって造粒することができる。造粒に対する代替案として、粉末混合物は打錠機に通してもよく、結果的に、不完全に形成されたスラグが得られ、これが顆粒へと砕かれる。顆粒は、錠剤成形用金型への固着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、又は鉱物油を添加することによって滑沢化してもよい。その後、滑沢化された混合物は錠剤へと圧縮される。また本発明の化合物は、自由流動性の不活性賦形剤と組み合わせて、造粒工程又はスラグ化工程を経ずに、直接錠剤へと圧縮することもできる。シェラックの密封コートからなる透明又は不透明の保護コーティング、糖又はポリマー材料のコーティング、及びワックスの光沢コーティングを提供してもよい。異なる単位投与量を区別するために、これらのコーティングに染料を添加してもよい。
【0091】
溶液剤、シロップ剤、及びエリキシル剤などの経口用流体は、所与の量が所定の量の化合物を含むような投与単位の形態で調製することができる。シロップ剤は、化合物を好適に風味付けされた水溶液中に溶解させることで調製することができ、一方で、エリキシル剤は、非毒性のアルコール系ビヒクルを使用することで調製される。懸濁剤は、化合物を非毒性ビヒクル中に分散させることで製剤化できる。また、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤及び乳化剤、保存剤、風味添加剤、例えばペパーミント油又は天然甘味料又はサッカリン又は他の人工甘味剤などを添加することもできる。
【0092】
経口投与用の組成物は、治療活性剤の放出を持続又はそれ以外の方法で制御するような、改変された放出プロファイルを提供するように設計され得る。
【0093】
適切である場合、経口投与用の投与単位組成物は、マイクロカプセル化することができる。組成物は、例えば粒子状材料をポリマー、ワックスなどで被覆又はその中に包埋することによって、放出を延長又は持続させるように調製することができる。
【0094】
経鼻投与又は吸入投与用の医薬組成物は、エアロゾル剤、溶液剤、懸濁剤、ゲル剤、又は乾燥粉剤として好都合に製剤化することができる。吸入投与に適した及び/又は適合された組成物については、本発明の化合物が、例えば微粒子化によって得られる粒径低減形態であることが好ましい。粒径が低減された(例えば微粒子化された)化合物の好ましい粒径は、約0.5〜約10ミクロンのD50値(例えばレーザー回折を用いて測定される)によって定義される。
【0095】
吸入投与用の医薬組成物は、薬学的に許容される水性又は非水性の溶媒中に活性物質の溶液又は微細懸濁液を含む、乾燥粉末組成物又はエアロゾル製剤であり得る。乾燥粉末組成物は、ラクトース、グルコース、トレハロース、マンニトール又はデンプンなどの粉末基剤、本発明の化合物(好ましくは粒径低減形態、例えば微粒子化形態の)、並びに場合により性能調整剤(例えばL-ロイシン若しくは別のアミノ酸及び/又はステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸の金属塩)を含み得る。好ましくは、吸入可能な乾燥粉末組成物は、ラクトース(例えばラクトース一水和物)と本発明の化合物との乾燥粉末ブレンドを含む。
【0096】
一実施形態において、吸入投与に適した乾燥粉末組成物を、好適な吸入デバイスの内側に取り付けられた薬剤パック(1つ又は複数)に備えられた複数の密封用量容器に組み込むことができる。この容器は1回ずつ破裂可能、剥離可能あるいはそれ以外の方法で開封可能な容器であってよく、当技術分野において公知のとおり、乾燥粉末組成物の用量が、吸入デバイスのマウスピースでの吸入により投与される。薬剤パックは、多数の異なる形(例えばディスク形又は細長い条片(ストリップ))を採り得る。代表的な吸入デバイスは、GlaxoSmithKline社により市販されているDISKHALER(商標)吸入器デバイス、DISKUS(商標)吸入デバイス、及びELLIPTA(商標)吸入デバイスである。DISKUS(商標)吸入デバイスは、例えばGB 2242134Aに記載されており、ELLIPTA(商標)吸入デバイスは、例えば、WO 03/061743 A1、WO 2007/012871 A1及び/又は WO2007/068896に記載されている。
【0097】
非経口投与用に適合された医薬組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び意図される受容者の血液と本組成物を等張にする溶質を含み得る、水性及び非水性の注射用滅菌溶液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。組成物は、単位用量又は多回用量の容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用の直前に、滅菌液状担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする、フリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保管されてもよい。即用の注射用溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0098】
局所投与用に適合される医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤、粉剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、発泡剤、噴霧剤、エアロゾル剤、又は油剤として製剤化することができる。このような医薬組成物は、従来型の添加剤を含んでもよく、これらの添加剤としては、限定されるものではないが、保存剤、薬物の浸透を補助する溶媒、共溶媒、エモリエント剤、噴射剤、粘度改変剤(ゲル化剤)、界面活性剤、及び担体が挙げられる。
【0099】
眼、又はその他の外部組織、例えば口及び皮膚の治療の場合、組成物は、好ましくは、局所用の軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、噴霧剤、又は発泡剤として適用される。軟膏剤に製剤化される場合、活性成分は、パラフィン系又は水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に採用することができる。あるいは、活性成分は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を用いたクリーム剤に製剤化することができる。眼への局所投与用に適合された医薬組成物としては、活性成分を好適な担体、特に水性溶媒中に溶解又は懸濁させた点眼剤が挙げられる。
【0100】
本発明の化合物の治療有効量は、例えば、対象の年齢及び体重、治療を必要とする正確な病態及びその重症度、製剤の性質及び投与経路などの多数の因子により決定され、究極的には担当の医師又は獣医師の判断に委ねられる。医薬組成物中、各投与単位は、遊離塩基として計算して、0.01〜1000mg、より好ましくは0.5〜100mgの式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み得る。
【0101】
本発明の化合物は、単独で用いてもよく、他の治療剤と組み合わせて用いてもよい。従って、本発明による併用療法は、少なくとも1種の本発明の化合物の投与及び少なくとも1種の他の治療活性剤の使用を含む。本発明の化合物と他の治療活性剤(1種又は複数種)は、単一の医薬組成物として一緒に投与してもよく、又は別個に投与してもよく、別個に投与する場合は、この投与は、同時に行ってもよいし、又は任意の順序で連続的に行ってもよい。
【0102】
さらなる態様において、本発明の化合物を、1種以上の他の治療活性剤、及び場合により1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と共に含む医薬組成物が提供される。
【0103】
当業者には、適切である場合、他の治療成分(1種又は複数種)を、その治療成分の活性及び/又は安定性及び/又は例えば溶解度などの物理的特性を最適化するために、塩の形態で、例えばアルカリ金属塩若しくはアミン塩として、又は酸付加塩として、あるいは溶媒和物、例えば水和物として使用してもよいことは、明白であろう。また、適切である場合、治療成分は、光学的に純粋な形態で使用され得ることも明白であろう。
【0104】
上に言及される組み合わせは、医薬組成物の形態で使用するために好都合に提供することが可能であり、従って、上に定義される組み合わせを1種以上の薬学的に許容される賦形剤と共に含む含む医薬組成物は、本発明のさらなる態様である。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートエジシレートの水和物結晶。
項2
一水和物である、項1に記載の水和物結晶。
項3
図1に実質的に示されるとおりのX線粉末回折パターン(XRPD)を有する、項1又は2に記載の水和物結晶。
項4
5.1度、7.9度、10.1度、11.3度、11.9度、12.9度、13.4度、14.2度、18.3度、20.3度、21.0度及び21.8度の特定の2θ値のピーク(±0.1° 2θの実験誤差)を有するX線粉末回折パターンを有する、項1〜3のいずれか1項に記載の水和物結晶。
項5
図2に実質的に示されるとおりのDSCサーモグラムを有する、項1〜4のいずれか1項に記載の水和物結晶。
項6
DSCにより決定される約223℃の融解開始点を有する、項1〜5のいずれか1項に記載の水和物結晶。
項7
図3に実質的に示されるとおりのFTラマンスペクトルを有する、項1〜6のいずれか1項に記載の水和物結晶。
項8
項1〜7のいずれか1項に定義される水和物結晶と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
項9
1種以上の他の治療活性剤をさらに含む、項8に記載の医薬組成物。
項10
療法において使用するための、項1〜7のいずれか1項に定義される水和物結晶。
項11
BET阻害剤が適応である疾患又は病態の治療において使用するための、項1〜7のいずれか1項に定義される水和物結晶。
項12
疾患又は病態が自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患である、項11に記載の使用のための水和物結晶。
項13
疾患又は病態が関節リウマチである、項11に記載の使用のための水和物結晶。
項14
疾患又は病態が骨関節炎である、項11に記載の使用のための水和物結晶。
項15
BET阻害剤が適応である疾患又は病態の治療方法であって、治療有効量の項1〜7のいずれか1項に定義される水和物結晶を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
項16
BET阻害剤が適応である疾患又は病態が、自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患である、項15に記載の治療方法。
項17
BET阻害剤が適応である疾患又は病態が関節リウマチである、項15に記載の治療方法。
項18
BET阻害剤が適応である疾患又は病態が骨関節炎である、項15に記載の治療方法。
【実施例】
【0105】
調製例
【0106】
【表2】
【0107】
実験の詳細
LCMS
システムA:
カラム:50mm x 2.1mm(内径)、1.7μm Acquity UPLC CSH C
18
流速:1mL/分。
温度:40℃
UV検出範囲:210〜350nm
質量スペクトル:交互走査(Alternate-scan)ポジティブモード及びネガティブモードエレクトロスプレーイオン化を用いて、質量分光計上で記録した。
利用した溶媒は以下のとおりであった:
A = アンモニア溶液でpH10に調整された水中10mM重炭酸アンモニウム。
B = アセトニトリル。
【0108】
【表3】
【0109】
1H NMR
1H NMRスペクトルは、Bruker AV-400 400 MHz分光計上でクライオプローブを用いて、0.00ppmのTMSを基準としてDMSO-d
6中で記録した。
【0110】
実施例1:(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート(式(I)の化合物)の調製
【0111】
【化3】
【0112】
(3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)メタノール
(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)メタノール(2.4g、14.02mmol)及び(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メタンアミン(2.423g、21.04mmol)を水(30mL)中に懸濁させ、炭酸カリウム(2.52g、18.23mmol)を添加し、次いで混合物を80℃で24時間撹拌し、その後撹拌しながら冷却した。得られた混合物をEtOAc(50mL)で抽出し、有機層を水(50mL)で洗浄し、乾燥させて真空中で蒸発させ、標題化合物(3.60g、13.52mmol、収率96%)を暗黄色の固体として得た。LCMS(システムA):t
RET=0.82分;MH
+267。標題化合物を精製することなく次のステップで使用した。
【0113】
(3-アミノ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)メタノール
(3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)メタノール(48g、180mmol)をエタノール(400mL)中に溶解させ、Pd/C 5重量%(3g、28.2mmol)上で大気圧にて18時間水素化し、次いで、混合物を窒素下でセライトに通して濾過し、濾液を真空中で蒸発させて、標題化合物(50g、212mmol、収率117%)を暗褐色油状物として得た。LCMS(システムA):t
RET=0.62分;MH
+237。生成物をさらに精製することなく次のステップに持ち越した。
【0114】
5-(5-(ヒドロキシメチル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1,3-ジメチルピリジン-2-(1H)-オン
(3-アミノ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)メタノール(50g、190mmol)を水(500mL)中に懸濁させ、1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-カルボアルデヒド(31.7g、209mmol)及びセチルピリジニウムブロミド(14.64g、38.1mmol)を添加し、その後混合物を一晩激しく撹拌した。この混合物をDCM(3x300mL)で抽出し、合わせた有機物をブライン(500mL)で洗浄し、次いで乾燥させて蒸発させ、暗褐色の固体を得た。これをEtOAc(500mL)中に懸濁させ、2時間加熱還流し、その後冷却して生成物を濾過により回収した。粗生成物をEtOAc(500mL)中に再懸濁させ、再度加熱還流し、次いで氷浴中で冷却して生成物を濾過により回収し、エーテル(300mL)で洗浄して褐色の固体(64g)を得た。LCMSは清浄な生成物を示したが、NMRスペクトルは、生成物中に残留している0.2当量のセチルピリジニウム塩の存在を示す。精製することなく次のステップに持ち越した。標題化合物は純度90重量%であった。LCMS(システムA):t
RET=0.66分;MH
+368。
【0115】
(2S,3R)-イソプロピル2-アミノ-3-ヒドロキシブタノエート、塩酸塩
AcCl(96mL、1343mmol)を2-プロパノール(500mL、6490mmol)に滴加し、次いで混合物を20分間撹拌した後、(2S,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸(40g、336mmol)を添加した。得られた懸濁液を一晩加熱還流し、その後冷却して真空中で蒸発させ、無色油状物を得た。これをエーテル(300mL)で摩砕して生成物を濾過により回収し、標題化合物を無色の固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.49 (br. s., 3H)、5.66 (br. s., 1H)、4.99 (td, J=6.24, 12.47 Hz, 1H)、4.09 (br. s., 1H)、3.80 (d, J=4.16 Hz, 1H)、1.17-1.29 (m, 9H)。
【0116】
2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボアルデヒド
5-(5-(ヒドロキシメチル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1,3-ジメチルピリジン-2(1H)-オン(64g、122mmol)をDCM(600mL)中に溶解させ、二酸化マンガン(42.4g、488mmol)を添加し、次いで混合物を18時間還流で加熱した。LCMSは完全な変換を示し、混合物を濾過し、固体をDCMで洗浄した。濾液を真空中で蒸発させて褐色ガム状物を得て、これをDCM(100mL)中に溶解させて、340gのシリカカラム上にロードし、次いで0〜50%EtOH/EtOAcで溶出(溶離)し、生成物含有画分を真空中で蒸発させて褐色の固体を得た。これをエーテル(200mL)で摩砕して固体を濾過により回収し、次いでEtOAc(300mL)中に懸濁させて1時間加熱還流し、その後氷浴中で冷却して生成物を濾過により回収し、2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボアルデヒド(42.5g、116mmol、収率95%)を砂色の固体として得た。LCMS(システムA):t
RET=0.74分;MH
+366。濾液を真空中で蒸発させて、残留物をEtOAc(50mL)中還流で30分間摩砕し、次いで冷却して濾過し、生成物のさらなる部分(3g)をベージュ色の固体として得て、NMRは所望のアルデヒドと一致していた。標題化合物は純度80重量%であった。
【0117】
(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート
2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボアルデヒド(42g、115mmol)及び(2S,3R)-イソプロピル2-アミノ-3-ヒドロキシブタノエート塩酸塩(34.1g、172mmol)をDCM(500mL)中に溶解させ、次いでEt
3N(48.1mL、345mmol)を添加し、その後ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(73.1g、345mmol)を添加して、混合物を室温で24時間撹拌した。この混合物を、5リットルの円錐フラスコ中1.5リットルの飽和重炭酸ナトリウム溶液に添加して1時間激しく撹拌し、次いで有機層を分離して、水性層をDCM(500mL)で抽出し、合わせた有機物を水(500mL)及びブライン(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて真空中で蒸発させ、褐色泡状物を得た。粗生成物をDCM(200mL)中に溶解させて750gのシリカカラム上にロードし、その後0〜30%EtOH/EtOAcで溶出して清浄な生成物含有画分を真空中で蒸発させ、標題化合物(51g、100mmol、収率87%)をベージュ色泡状物として得た。LCMS(システムA):t
RET=0.86分;MH
+511。
1H NMR (d6-DMSO):δ 1.06 - 1.26 (m, 13 H)、1.90 - 2.02 (m, 1 H)、2.11(s, 3 H)、2.20 - 2.41(m, 1 H)、3.00 (d, J=4.9 Hz, 1 H)、3.05 - 3.16 (m, 2 H)、3.56 (s, 3 H)、3.66 (d, J=1.32 Hz, 1 H)、3.76 - 3.86 (m, 1 H)、3.90 (d, J=13.2 Hz, 1 H)、4.26 (d, J=7.3 Hz, 2 H)、4.67 (d, J=5.4 Hz, 1 H)、4.93 (sept, J=6.2 Hz, 1 H)、7.22 (dd, J=8.3, 1.2 Hz, 1 H)、7.53 (s, 1 H)、7.61(d, J=8.3 Hz, 1 H)、7.73 (dd, J=2.3, 1.1 Hz, 1 H)、8.12 (d, J=2.2 Hz, 1 H)。
【0118】
実施例2:(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートのエジシレート塩の調製
カルーセル管に、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート(調製については実施例1を参照、100mg、0.196mmol)及びイソプロパノール(1.35mL)を添加した。撹拌混合物を40℃に加熱し、イソプロパノール(557μL)中のエタン-1,2-ジスルホン酸(44.7mg、0.235mmol)の溶液を添加した。この混合物を40℃で15時間撹拌した。この時間後、固体が形成された。反応物をカルーセルから取り外し、24℃に直接冷却し、6時間撹拌した。この時間後、懸濁液を濾過し、真空下で5分間乾燥させた。バイアル中に移したこの固体を、40℃の真空オーブン中で3日間さらに乾燥させ、標題化合物(91mg、収率66.3%)を白色の結晶固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ ppm 9.61(1H, br. s.)、9.29 (1H, br. s.)、8.35 (1H, br. s.)、8.02 (1H, d, J=8.6 Hz)、7.92 (1H, s)、7.82 - 7.75 (1H, m)、7.58 (1H, d, J=8.6 Hz)、4.94 (1H, spt, J=6.2 Hz)、4.46 - 4.34 (4H, m)、4.05 (1H, quin, J=6.4 Hz)、3.77 -3.69 (2H, m)、3.66 (1H, br. s.)、3.59 (3H, s)、3.17 -3.08 (2H, m)、2.66 (4H, s)、2.13 (3H, s)、2.06 - 1.93 (1H, m)、1.31 - 1.16 (13H, m)。LCMS(システムA):t
RET=0.88分;MH
+511。
【0119】
実施例3:エジシレート塩(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート(式(II)の化合物)の代替的調製法
EasyMax 400mL反応器に、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート(調製例については実施例1を参照)(10g、19.58mmol)及びイソプロパノール(135mL)を添加した。別のフラスコ中で、イソプロパノール(28mL)中のエタン-1,2-ジスルホン酸(4.47g、23.50mmol)の溶液を調製し、40℃で温めて濾過した。
【0120】
250rpmで撹拌された(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエートの溶液に、40%のエタン-1,2-ジスルホン酸溶液(11.2mL)を添加した。エジシレート塩(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート(例えば、上記の実施例2を参照)(131mg)の種(シード)を添加し、混合物を40℃で1.5時間撹拌した。この時間後、残りの60%のエタン-1,2-ジスルホン酸溶液(16.8mL)を6時間かけて滴加した。エタン-1,2-ジスルホン酸溶液の添加が完了すると、混合物を3.5時間かけて20℃にゆっくりと冷却し、さらに11時間室温で撹拌した。得られた懸濁液を、濾過カップ及び濾紙を用いて濾過し、濾液が透明になった。濾過ケーキをIPA(2×20mL及び10mL)で洗浄し、真空下でさらに乾燥させて湿濾過ケーキ(24.06g)を得た。固体を回収し、真空オーブン(44℃)中で22時間乾燥させて、標題化合物(11.337g、16.02mmol、収率82%)を白色の結晶固体として得た。LCMS(システムA):t
RET=0.88分;MH
+511。
【0121】
実施例4:(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート1,2-エタンジスルホネート水和物塩の調製
室温(26℃)の撹拌子を有するWheatonバイアル中で、脱イオン水(175μL)中のエタン1,2-ジスルホン酸(467.4mg)の溶液を、アセトン(8mL)中の非晶質(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート(調製例については実施例1を参照)(1.0g)の溶液に添加した。エタン1-2-ジスルホン酸を含むバイアルを脱イオン水(175μL)ですすいだ。混合物を50℃に加熱し、次いで、50℃で30分間撹拌した。反応混合物を1時間かけて50℃から室温に冷却し、その後室温から50℃に再加熱した。温度を50℃で30分間維持し、その後26℃に冷却した。懸濁液を26℃で14.5時間撹拌した。固体を濾過により単離し、真空下で10分間脱液し、標題化合物を白色の結晶固体(824mg)として得た。
【0122】
実施例5:(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート、1,2-エタンジスルホン酸水和物塩の代替的調製法
7.3%(v/v)水性プロパン-2-オール(0.1mL)中の結晶(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート1,2-エタンジスルホネート(調製例については実施例2又は3を参照)(26mg)の撹拌懸濁液に、(2S,3R)-イソプロピル2-(((2-(1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)メチル)アミノ)-3-ヒドロキシブタノエート1,2-エタンジスルホネート水和物(調製例については実施例4を参照)の幾つかの結晶種を添加した。無水物の水和物への変換は、5分以内に観察された。
【0123】
生物学的データ
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)アッセイ
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動結合アッセイを用いて、結合を評価した。このアッセイは、タンパク質のN末端の6-His精製タグを、ユーロピウムキレートで標識された抗-6His抗体(PerkinElmer AD0111)に対するエピトープとして利用し、ドナーフルオロフォアとして作用する上記タンパク質にこのユーロピウムを結合させる。小分子である、ブロモドメインBRD2、BRD3、BRD4及びBRDTの高親和性バインダーをAlexa Fluor647(参照化合物X)で標識し、これがFRET対のアクセプターとして作用する。
【0124】
参照化合物X:4-((Z)-3-(6-((5-(2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-8-メトキシ-1-メチル-4H-ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-4-イル)アセトアミド)ペンチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-2-((2E,4E)-5-(3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-3H-インドール-1-イウム-2-イル)ペンタ-2,4-ジエン-1-イリデン)-3-メチル-5-スルホインドリン-1-イル)ブタン-1-スルホネート)
【0125】
【化4】
【0126】
DMF(40μl)中のN-(5-アミノペンチル)-2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-8-メトキシ-1-メチル-4H-ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-4-イル)アセトアミド(調製については参照化合物J、WO 2011/054848 A1を参照、1.7mg、3.53μmol)の溶液に、同様にDMF(100μl)中のAlexaFluor647-ONSu(2.16mg、1.966μmol)の溶液を添加した。この混合物をDIPEA(1μL、5.73μmol)で塩基性化し、ボルテックスミキサーで一晩撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させた。この固体をアセトニトリル/水/酢酸(5/4/1、<1mL)中に溶解させ、濾過し、Phenomenex Jupiter C18分取カラムに適用し、以下の勾配で溶出した(A=水中0.1%トリフルオロ酢酸、B=0.1%TFA/90%アセトニトリル/10%水):流量=10ml/分、AU=20/10(214nm):5〜35%、t=0分:B=5%;t=10分:B=5%;t=100分:B=35%;t=115分:B=100%(分離勾配:0.33%/分)。
【0127】
主成分は、26〜28%Bの範囲で溶出したが、2つのピークで構成されているように見えた。「両」成分を含むはずの中間画分(F1.26)を、分析HPLC(Spherisorb ODS2、60分間にわたり1〜35%)で分析した。単一成分は28%Bで溶出した。
【0128】
画分F1.25/26及び27を合わせ、蒸発乾固した。DMFと共に移動させ、蒸発乾固させ、乾燥エーテルで粉砕し、青色の固体を<0.2mbarで一晩乾燥させ、1.54mgを得た。
【0129】
分析HPLC(Spherisorb ODS2、60分間にわたり1〜35%B):MSM10520-1:[M+H]
+(実測値):661.8(M-29に対応)。この値は、M-29である1320.984の計算質量について[(M+2H)/2]
+に等しい。これは、Alexa Fluor 647色素での標準的な出現であり、質量分析計条件下での2つのメチレン基の理論的喪失に相当する。
【0130】
アッセイ原理:競合化合物の不存在下において、ユーロピウムを励起するとドナーはλ618nmで発光し、この発光はAlexa標識されたブロモドメイン結合化合物を励起し、λ647nMで測定可能なエネルギー移動の増加を生じさせる。これらのタンパク質に結合し得る十分な濃度の化合物の存在下では、相互作用が妨げられ、蛍光共鳴エネルギー移動の定量可能な低下をもたらす。
【0131】
本発明の化合物の、ブロモドメインBRD2、BRD3、BRD4及びBRDTへの結合を、ブロモドメイン上の結合ドメイン1(BD1)又は結合ドメイン2(BD2)に対して異なる結合を検出するように変異させたタンパク質を用いて評価した。アセチルリジン結合ポケット内のこれらの単一残基突然変異は、フルオロリガンド(参照化合物X)の変異ドメインに対する親和性を大きく低下させた(非変異ドメインに対して1000倍超選択的であった)。従って、最終アッセイ条件においては変異ドメインに対するフルオロリガンドの結合は検出することができず、従って、このアッセイは、単一の非変異ブロモドメインに対する化合物の結合を決定するのに適している。
【0132】
タンパク質産生:組換えヒトブロモドメイン[(BRD2(1〜473)(Y113A)及び(Y386A)、BRD3(1〜435)(Y73A)及び(Y348A)、BRD4(1〜477)(Y97A)及び(Y390A)、並びにBRDT(1〜397)(Y66A)及び(Y309A)]を、N末端に6-Hisタグを付けて、大腸菌(E.coli)細胞中で(BRD2/3/4についてはpET15bベクター中で、BRDTについてはpET28aベクター中で)発現させた。His-タグ化されたブロモドメインのペレットを、50mMのHEPES(pH7.5)、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール、及び1μL/mLのプロテアーゼ阻害剤のカクテルに再懸濁させ、超音波処理を用いて大腸菌細胞から抽出し、ニッケルセファロース高速カラムを用いて精製し、タンパク質を洗浄した後、20カラム体積にわたる、0〜500mMイミダゾールと、50mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、500mMイミダゾールのバッファーの線形勾配で溶出した。最終精製は、Superdex 200分取等級サイズ排除カラムにより完了した。精製タンパク質は、20mMのHEPES(pH7.5)及び100mMのNaCl中で、-80℃にて保存した。タンパク質同定は、ペプチド質量フィンガープリンティング及び質量分析により確認された予測分子量によって確認した。
【0133】
ブロモドメインBRD2、3、4及びT、BD1+BD2変異体アッセイのためのプロトコール:
全アッセイ成分を、50mM HEPES(pH7.4)、50mM NaCl、5%グリセロール、1mM DTT及び1mM CHAPSからなるバッファー組成物中に溶解させた。ブロモドメインタンパク質の最終濃度は10nMであり、Alexa Fluor647リガンドはKdであった。これらの成分を予め混合し、5μLのこの反応混合物を、Greiner 384ウェル黒色低体積マイクロタイタープレート中の、50nlの様々な濃度の試験化合物又はDMSOビヒクル(最終0.5%DMSO)を含む全ウェルに添加し、暗中室温で30分間インキュベートした。1.5nM最終濃度の抗-6Hisユーロピウムキレートを含む5μLの検出混合物を全ウェルに添加し、少なくとも30分間のさらなる暗中インキュベーションを実施した。その後、プレートをEnvisionプレートリーダー(・ex = 317nm、ドナー・em = 615nm;アクセプター・em = 665nm;Dichroic LANCE dual)上で読み取った。両発光波長における時間分解蛍光強度測定を行い、アクセプター/ドナー比を計算してデータ解析に用いた。全データを、各プレート上の16個の高い(阻害剤対照-WO 2011/054846A1の実施例11)対照ウェル及び16個の低い(DMSO)対照ウェルの平均に対して正規化した。次いで、以下の形の4パラメータ曲線適合を適用した:
y = a + (( b - a) / ( 1 + ( 10 ^ x / 10 ^ c ) ^ d )
(式中、「a」は最小値であり、「b」はHill勾配であり、「c」はpIC50であり、「d」は最大値である)。
【0134】
結果:実施例1は、BRD4 BD1アッセイにおいては7.3の平均pIC
50を有し、またBRD4 BD2アッセイにおいては6.8の平均pIC
50を有することが見出された。実施例1のエジシレート塩は、BRD4 BD1アッセイにおいては7.3の平均pIC
50を有し、またBRD4 BD2アッセイにおいては6.6の平均pIC
50を有することが見出された。
【0135】
ヒト全血からのLPS誘導性MCP-1産生の測定
細菌リポ多糖(LPS)などのtoll様受容体のアゴニストによる単核球細胞の活性化は、MCP-1などの重要な炎症メディエーターの産生をもたらす。このような経路は、様々な自己免疫性疾患及び炎症性疾患の病態生理の中心であると広く考えられている。血液を、ヘパリンナトリウム(Leo Pharmaceuticals)(血液1ml当たり10単位のヘパリン)を含むチューブに収集する。100%DMSO中1μlの試験試料を含む96ウェルの化合物プレートを調製した(ドナーの可変性を考慮して2複製)。130μlの全血を、96ウェル化合物プレートの各ウェルに分注し、37℃、5%CO
2で30分間インキュベートした。PBS中で作製した10μlのリポ多糖(チフス菌(Salmonella typhosa)由来、L6386)(最終アッセイ濃度200ng/mL)を、化合物プレートの各ウェルに添加した。次いで、プレートを、加湿したプライマリーセルインキュベーター内に、37℃、5%CO
2で18〜24時間置いた。140μlのPBSを、血液を含む化合物プレートのすべてのウェルに添加した。その後、プレートを密封し、2500rpmで10分間遠心分離した。25μlの細胞上清を、ヒトMCP-1捕捉抗体で予めコーティングした96ウェルMSDプレートに入れた。プレートを密封し、600rpmのシェーカー上に1時間(室温)置いた。MSD SΜLFO-TAG(商標)試薬で標識した、25μlの抗ヒトMCP-1抗体を、MSDプレートの各ウェルに添加する(50×ストックをDiluent100(希釈剤100)で1:50に希釈し、。最終アッセイ濃度は1μg/mLである)。次いで、プレートを再密封し、さらに1時間振盪した後、PBSを用いて洗浄した。その後、150μlの2×MSDリードバッファーT(4×ストックのMSDリードバッファーTを脱イオン水を用いて50:50に希釈し、)を各ウェルに添加し、プレートをMSD Sector Imager 6000で読み取った。各化合物についての濃度応答曲線をデータから生成し、pIC
50値を計算した。
【0136】
結果:実施例1は、7.6の平均pIC
50を有していた。実施例1のエジシレート塩は、7.5の平均pIC
50を有していた。
【0137】
これらのデータは、上記の全血アッセイにおいて試験したブロモドメイン阻害剤が、重要な炎症メディエーターMCP-1の産生を阻害したことを示す。
【0138】
hCES-1による加水分解
カルボキシルエステラーゼ1(CES1)によるESM含有BET阻害剤の加水分解は、標的分子の送達の一態様である。組み換えヒトCES1による本発明の特定の化合物の加水分解速度を、HPLCアッセイを用いて決定した。ヒト細胞中で発現させ、精製して均一化した組み換えヒトCES1(Gly18-Glu563、C末端にポリヒスチジンタグを有する)を、Novoprotein(ニュージャージー州サミット、米国)(カタログ番号C450)から入手した。384ウェルプレート中20℃にて、50mMリン酸ナトリウム(pH7.5)/100mM NaClバッファー中で反応を行った。アッセイは、固定濃度の試験化合物(50μM)及びCES1(50nM)を使用し、反応の経時変化を、増加する時間(increasing times)でギ酸を添加してpHを低下することでサンプルを停止させることによって取得した。その後、停止させたサンプルを、0.1%ギ酸を含む水中アセトニトリルの勾配を使用し、50x2mm C18 5μM逆相カラム(Phenomenex Gemini)を流速1ml/分で用いて、HPLCにより分析し、未加水分解エステルから生成酸を分離した。300nm波長の吸光度を用いてクロマトグラフィーをモニターした。形成された生成物の%を、積分ピーク面積を用いて決定し、これを使用して反応の初期速度を決定した。これらの条件下での各試験化合物に対するCES1の特異的活性(μM/分/μMの単位)を、反応の初期速度をCES1濃度で割ることによって取得した。
【0139】
結果:実施例1は、上記アッセイにおいて、0.21(CES1 1μMにつき1分当たりに加水分解された試験化合物のμM)の加水分解の平均速度を有していた(n=2)。