特許第6983897号(P6983897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983897
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 60/00 20200101AFI20211206BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20211206BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20211206BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20211206BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B60W60/00
   B60W30/10
   B60W50/10
   G01C21/26 A
   G08G1/09 V
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-543464(P2019-543464)
(86)(22)【出願日】2018年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2018028792
(87)【国際公開番号】WO2019058776
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2017-184133(P2017-184133)
(32)【優先日】2017年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆之
(72)【発明者】
【氏名】三橋 雅仁
【審査官】 山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/158347(WO,A1)
【文献】 特開2009−265760(JP,A)
【文献】 特開2011−240816(JP,A)
【文献】 特開2015−076963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0297431(US,A1)
【文献】 特開2017−077823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 60/00
B60W 30/10
B60W 50/10
G01C 21/26
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転可能な自車両を制御する車両制御装置であって、
前記自車両が自動運転中に、前記自車両に搭乗している搭乗者からの停止要求を検出して前記停止要求のレベルを判断する搭乗者意図検出部と、
前記停止要求のレベルに基づいて前記自車両の停車計画を策定する停車計画策定部と、
前記停車計画に基づいて前記自車両の停車制御を実施する車両制御部と、を備え、
前記搭乗者意図検出部は、第1のレベルと、前記第1のレベルよりも低い第2のレベルと、前記第2のレベルよりも低い第3のレベルと、を少なくとも含む複数段階のレベルのいずれかを、前記停止要求のレベルとして判断し、
前記停車計画策定部は、
前記搭乗者意図検出部により前記停止要求のレベルが前記第1のレベルであると判断された場合は、予め設定された前記自車両の走行計画経路を変更して、前記自車両の現在位置から最も近くにある停車可能な場所に向けて前記自車両を停車させるように、前記停車計画を策定し、
前記搭乗者意図検出部により前記停止要求のレベルが前記第2のレベルであると判断された場合は、前記走行計画経路を変更せずに、前記走行計画経路上で停車可能な場所に向けて前記自車両を停車させるように、前記停車計画を策定し、
前記搭乗者意図検出部により前記停止要求のレベルが前記第3のレベルであると判断された場合は、前記走行計画経路を変更せずに、前記走行計画経路沿いにある駐車場併設施設に向けて前記自車両を停車させるように、前記停車計画を策定する車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記搭乗者意図検出部は、前記搭乗者が行った前記停止要求のレベルの選択操作、前記自車両の停車の目的、または前記搭乗者が前記停止要求を行ったときの前記搭乗者の心理状態に応じた身体的反応のいずれかに基づいて、前記停止要求のレベルを判断する車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記搭乗者意図検出部は、前記搭乗者の表情、心拍数、発汗量、発声音量および声色のいずれか少なくとも1つに基づいて、前記搭乗者が前記停止要求を行ったときの前記搭乗者の心理状態を検出し、その検出結果に基づいて前記停止要求のレベルを判断する車両制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の車両制御装置において、
前記停車計画策定部は、前記自車両の前方の地図情報を取得し、取得した前記地図情報に基づいて前記停車計画を策定する車両制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の車両制御装置において、
前記自車両の周辺に存在する他車両の走行状態を検出する他車両走行状態検出部をさらに備え、
前記停車計画策定部は、前記他車両の走行状態に基づいて前記停車計画を策定する車両制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の車両制御装置において、
前記自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出部をさらに備え、
前記停車計画策定部は、前記自車両の周囲環境に基づいて前記停車計画を策定する車両制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の車両制御装置において、
前記自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出部をさらに備え、
前記停車計画策定部は、前記自車両の走行状態に基づいて前記停車計画を策定する車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種センサを用いて自車両周辺の他車両の挙動や周囲環境等を検知し、自車両の走行状態を制御する自動運転技術の研究が進められている。こうした自動運転技術では、自動運転中であってもユーザが停車要求を行った場合には、それに応じて自車両を安全かつ速やかに停車させることが好ましい。特許文献1には、車両の外部からの自動停止要求を受信すると、車両の位置が他の車両に迷惑がかからないと想定される適正位置であると判断され、且つ、車両が停止状態であると判断される場合に、制動力を付与する制動開始指令を出力して車両を走行できなくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−329292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、盗難車両が逃走中の場合に、道路交通への悪影響を抑えつつ盗難車両を走行不可能とすることで、盗難車両を安全に回収するためのものである。したがって、自動運転中の車両において搭乗者が施設への立ち寄り等のために車両を停車させたい場合に、車両を安全に停車させることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両制御装置は、自動運転可能な自車両を制御するものであって、前記自車両が自動運転中に、前記自車両に搭乗している搭乗者からの停止要求を検出して前記停止要求のレベルを判断する搭乗者意図検出部と、前記停止要求のレベルに基づいて前記自車両の停車計画を策定する停車計画策定部と、前記停車計画に基づいて前記自車両の停車制御を実施する車両制御部と、を備え、前記搭乗者意図検出部は、第1のレベルと、前記第1のレベルよりも低い第2のレベルと、前記第2のレベルよりも低い第3のレベルと、を少なくとも含む複数段階のレベルのいずれかを、前記停止要求のレベルとして判断し、前記停車計画策定部は、前記搭乗者意図検出部により前記停止要求のレベルが前記第1のレベルであると判断された場合は、予め設定された前記自車両の走行計画経路を変更して、前記自車両の現在位置から最も近くにある停車可能な場所に向けて前記自車両を停車させるように、前記停車計画を策定し、前記搭乗者意図検出部により前記停止要求のレベルが前記第2のレベルであると判断された場合は、前記走行計画経路を変更せずに、前記走行計画経路上で停車可能な場所に向けて前記自車両を停車させるように、前記停車計画を策定し、前記搭乗者意図検出部により前記停止要求のレベルが前記第3のレベルであると判断された場合は、前記走行計画経路を変更せずに、前記走行計画経路沿いにある駐車場併設施設に向けて前記自車両を停車させるように、前記停車計画を策定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動運転中の車両において搭乗者が車両を停車させたい場合に、車両を安全に停車させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置を搭載した車両の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の主要部を示す機能ブロック図である。
図3】車両統合制御ユニットが行う処理の流れを示すフローチャートである。
図4】停車計画の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る車両制御装置を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置を搭載した車両の構成図であり、図2は、図1に示す車両制御装置の主要部を示す機能ブロック図である。
【0009】
図1に示す車両100は、一般的な構成を有する自動運転可能な後輪駆動車である。車両100は、エンジン1、自動変速機2、プロペラシャフト3、ディファレンシャルギア4、ドライブシャフト5、4つの車輪6および液圧式ブレーキ11、およびステアリング機構13を備える。車両100の走行用動力源としてのエンジン1は、たとえば筒内噴射式のガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンであり、ガソリン等の燃料を空気と混合して燃焼させることで駆動力を発生する。自動変速機2は、エンジン1とプロペラシャフト3を所定の変速比で機械的に接続または分離する。エンジン1から発生された駆動力が自動変速機2、プロペラシャフト3、ディファレンシャルギア4およびドライブシャフト5を介して駆動輪である後輪側の車輪6に伝達されることで、車両100が走行する。
【0010】
車両100には、自動運転を行うための車両制御装置17が搭載されている。車両制御装置17は、エンジン1の制御を司るエンジン制御ユニット15と、自動変速機2の制御を司る変速機制御ユニット14と、ステアリング機構13の制御を司るパワーステアリング制御ユニット16と、液圧式ブレーキ11の制御を司るブレーキ制御ユニット18と、これらの制御ユニットを統合制御する車両統合制御ユニット8とを備える。車両制御装置17に含まれる各制御ユニットは、たとえばマイクロコンピュータ、ROM、RAM等を用いて構成されたECU(Electronic Control Unit)であり、車両100内に配置されたLAN(Local Area Network)やCAN(Controller Area Network)等の通信回線を介して、互いに信号やデータの授受を行う。
【0011】
ステアリング機構13は、電動モータを有しており、運転者のステアリング操作またはパワーステアリング制御ユニット16の制御に応じて、操舵輪である前輪側の車輪6の向きを変えて車両100の走行方向を変化させる。液圧式ブレーキ11は、運転者のブレーキ操作またはブレーキ制御ユニット18の制御に応じて、各車輪6に設けられたブレーキロータにブレーキパッドを押し付けて車両100に制動力を与える。
【0012】
車両100の前部と後部には、外界認識センサとしての前方ステレオカメラ7と後方ステレオカメラ21がそれぞれ配備されている。前方ステレオカメラ7および後方ステレオカメラ21は、車両100の前方と後方をそれぞれ所定の視差による立体視で撮影する撮影部と、マイクロコンピュータ等で構成された制御部とをそれぞれ有している。前方ステレオカメラ7および後方ステレオカメラ21の各制御部は、先行車両または後続車両や、周囲の障害物、道路標識、路面標示、信号機等を被写体としてそれぞれの撮影部で撮影された映像に基づいて、車両100に対するこれらの被写体の相対速度、相対距離(車間距離)や路面からの高さなどを算出し、算出結果を車両統合制御ユニット8に供給する。車両100の運転状態が自動運転である場合、車両統合制御ユニット8は、前方ステレオカメラ7や後方ステレオカメラ21から供給されるこれらの情報に基づき、車両100の自動運転制御を行う。なお、ステレオカメラ以外のものを外界認識センサとして用いることも可能である。たとえば、レーザレーダやミリ波レーダ、車車間通信(C2C)・インフラ間通信(C2I)等のC2X通信、単眼カメラなどのうちの一つないし複数の組み合わせを用いて外界認識センサを構成し、認識対象物である先行車両、後続車両、障害物等の状態を求めて自動運転を行うようにしてもよい。
【0013】
車両統合制御ユニット8には、前方ステレオカメラ7および後方ステレオカメラ21からそれぞれ供給される情報に加えて、アクセルペダルセンサ9、ブレーキペダルセンサ10、ステアリングセンサ12、車輪速センサ20からの信号がそれぞれ供給される。アクセルペダルセンサ9は、アクセル開度(アクセルペダルの踏込量)を検出する。ブレーキペダルセンサ10は、ブレーキペダルの踏込量を検出する。ステアリングセンサ12は、ステアリングの操舵量を検出する。車輪速センサ20は、4つの車輪6に対してそれぞれ設けられ、各車輪6の回転速度を検出する。車両統合制御ユニット8は、これらの各センサから出力される検出信号に基づいて運転者が行った運転操作を検出し、エンジン制御ユニット15、変速機制御ユニット14、パワーステアリング制御ユニット16およびブレーキ制御ユニット18に対する指示内容をそれぞれ決定する。そして、決定した指示内容に応じた制御を各制御ユニットに対して行うことで、エンジン1、自動変速機2、ステアリング機構13および液圧式ブレーキ11を制御する。なお、これ以外のセンサからの検出信号を用いて、車両統合制御ユニット8から各制御ユニットへの指示内容を決定してもよい。たとえば、車両100の向きや傾きを検知するジャイロセンサからの検出信号や、ブレーキ液圧を検出する液圧センサからの検出信号などを利用することが考えられる。
【0014】
さらに車両統合制御ユニット8は、HMI装置22および地図情報記憶装置23と接続されている。HMI装置22は、たとえばディスプレイ装置、スピーカ、操作スイッチ、マイク、音声認識装置等で構成されており、車両統合制御ユニット8の制御により、車両100に搭乗している搭乗者、すなわち運転者や同乗者に対して各種情報提供を行うと共に、これらの搭乗者からの操作入力または音声入力に応じた信号を車両統合制御ユニット8に出力する。地図情報記憶装置23は、地図情報を記憶している。地図情報記憶装置23に記憶されている地図情報は、車両統合制御ユニット8により読み出され、車両統合制御ユニット8が実行する処理に利用される。
【0015】
エンジン制御ユニット15には、車両統合制御ユニット8や変速機制御ユニット14からのデータが入力される。また、エンジン1に配備された不図示のセンサ類から、エンジン1の運転状態(回転数、吸入空気量、スロットル開度、筒内圧力等)に関する様々な信号がエンジン制御ユニット15に供給される。エンジン制御ユニット15は、これらの信号やデータに基づいて、燃料噴射弁、点火コイルや点火プラグ等からなる点火ユニット、電制スロットル弁等に向けて所定の制御信号を供給して、エンジン1に対する燃料噴射制御、点火制御、スロットル制御等を実行する。なお、エンジン1がディーゼルエンジンの場合、点火ユニットは不要である。
【0016】
なお、図1に示した車両100の構成は、本発明を適用可能な車両の構成の一例であり、本発明の適用範囲を限定するものではない。たとえば、自動変速機2として無段変速機(CVT)を採用した車両でもよいし、エンジン1の代わりに電動モータを搭載した電動車両でもよい。また、エンジン1と電動モータを併用するハイブリッド式の自動車であってもよい。自動運転と手動運転を切替可能な車両であれば、基本的にどのような車両であっても本発明を適用可能である。
【0017】
次に車両統合制御ユニット8の詳細について、図2を参照して説明する。図2に示すように、車両統合制御ユニット8は、その機能として、先行車両走行状態検出部81、後続車両走行状態検出部82、周囲環境検出部83、自車両走行状態検出部84、搭乗者意図検出部85、停車計画策定部86、および車両制御部87を備える。なお、以下の説明では、車両統合制御ユニット8が搭載されている車両100を「自車両」と称する。
【0018】
先行車両走行状態検出部81は、自車両の前方を走行または停止している先行車両の相対速度、車間距離等の情報を前方ステレオカメラ7から取得し、これらの情報に基づいて先行車両の走行状態を検出する。具体的には、先行車両の走行速度、加減速度、車間距離変化等を算出することにより、先行車両の走行状態を検出する。なお、前方ステレオカメラ7から撮影映像を取得し、この撮影映像に基づいて先行車両走行状態検出部81が先行車両の走行状態を検出してもよい。
【0019】
後続車両走行状態検出部82は、自車両の後方を走行または停止している後続車両の相対速度、車間距離等の情報を後方ステレオカメラ21から取得し、これらの情報に基づいて後続車両の走行状態を検出する。具体的には、後続車両の走行速度、加減速度、車間距離変化等を算出することにより、後続車両の走行状態を検出する。なお、後方ステレオカメラ21から撮影映像を取得し、この撮影映像に基づいて後続車両走行状態検出部82が後続車両の走行状態を検出してもよい。
【0020】
なお、先行車両走行状態検出部81および後続車両走行状態検出部82は、いずれも他車両である先行車両または後続車両の走行状態を検出するものである。そのため、以下では先行車両走行状態検出部81と後続車両走行状態検出部82を合わせて、「他車両走行状態検出部」と称することもある。
【0021】
周囲環境検出部83は、前方ステレオカメラ7と後方ステレオカメラ21からそれぞれ供給される情報に基づいて、自車両の周囲環境を検出する。具体的には、自車両の前方または後方に存在している車両以外の物体、たとえば障害物、道路標識、路面標示、信号機等を検出することで、自車両の周囲環境を検出する。さらに、これらに先行車両や後続車両の状態を含めて自車両の周囲環境として検出してもよい。なお、前方ステレオカメラ7や後方ステレオカメラ21から撮影映像を取得し、この撮影映像に基づいて周囲環境検出部83が自車両の周囲環境を検出してもよい。
【0022】
自車両走行状態検出部84は、車輪速センサ20からの信号に基づいて、自車両の走行状態を検出する。具体的には、自車両の走行速度、加減速度等を算出することにより、自車両の走行状態を検出する。なお、車輪速センサ20からの信号以外の情報、たとえば前方ステレオカメラ7や後方ステレオカメラ21からの情報や、不図示のGPSセンサで取得された自車位置情報等を利用して、自車両走行状態検出部84が自車両の走行状態を検出してもよい。
【0023】
搭乗者意図検出部85は、HMI装置22からの信号に基づいて、自動運転中の自車両に搭乗している搭乗者が自車両の停車を意図しているか否かを判断する。搭乗者は、たとえば、自動運転中の自車両に対して予め設定された自動運転用の走行計画経路上にない地点への立ち寄りを希望する場合に、HMI装置22に対して所定の操作入力や音声入力を行うことで、自車両の停車要求を行うことができる。搭乗者から自車両の停車要求が行われると、搭乗者意図検出部85は、搭乗者の停車意図があると判断し、停車計画の策定を停車計画策定部86に指示する。
【0024】
停車計画策定部86は、搭乗者意図検出部85で検出された搭乗者の停車意図に応じて、自車両が安全に停車するための停車計画を策定する。停車計画策定部86は、自車両の前方の地図情報を地図情報記憶装置23から取得することで、自車両がこれから走行する予定の道路において停車可能な場所を特定し、停車計画の策定を行う。このとき、搭乗者の停車意図がどの程度であるかを判断すると共に、自車両の周囲環境等を判断して、どの場所に停車すべきかを決定する。なお、停車計画策定部86による具体的な停車計画の策定方法については、後で詳しく説明する。
【0025】
車両制御部87は、変速機制御ユニット14、エンジン制御ユニット15、パワーステアリング制御ユニット16およびブレーキ制御ユニット18をそれぞれ制御する。自車両の運転状態が自動運転である場合、車両制御部87は、前述のように前方ステレオカメラ7や後方ステレオカメラ21から供給される先行車両、後続車両、障害物、周囲環境等の情報に基づいて各制御ユニットを制御することで、自動運転制御を行う。このとき、先行車両走行状態検出部81、後続車両走行状態検出部82、周囲環境検出部83、自車両走行状態検出部84でそれぞれ検出された先行車両の走行状態、後続車両の走行状態、周囲環境、自車両の走行状態などを利用してもよい。また、停車計画策定部86により停車計画が策定された場合、車両制御部87は、その停車計画に基づいて各制御ユニットを制御することで、自車両の停車制御を実施する。一方、自車両の運転状態が手動運転である場合、車両制御部87は、前述のようにアクセルペダルセンサ9、ブレーキペダルセンサ10、ステアリングセンサ12、車輪速センサ20等の各センサからの検出信号に基づいて運転操作を検出し、各制御ユニットを制御する。なお、手動運転中に自動運転制御を部分的に組み合わせてもよい。
【0026】
次に、車両統合制御ユニット8が実行する制御内容の詳細について、図3のフローチャートを参照して説明する。図3は、車両統合制御ユニット8が行う処理の流れを示すフローチャートである。車両統合制御ユニット8は、図3に示す処理を所定の処理周期ごとに実行する。
【0027】
ステップS101において、車両統合制御ユニット8は、自車両が自動運転中であるか否かを判定する。自動運転中であれば処理をステップS102に進め、手動運転中であれば図3のフローチャートを終了する。
【0028】
ステップS102において、車両統合制御ユニット8は、搭乗者意図検出部85により、搭乗者の意図を検出する。このとき搭乗者意図検出部85は、HMI装置22からの信号を検出することで、搭乗者の意図を検出する。
【0029】
ステップS103において、車両統合制御ユニット8は、ステップS102で行った搭乗者の意図の検出結果に基づいて、搭乗者からの停止要求の有無を判定する。搭乗者からの停止要求を示す所定の信号がHMI装置22から入力された場合、車両統合制御ユニット8は停止要求ありと判断して処理をステップS104に進め、入力されなかった場合は停止要求なしと判断して図3のフローチャートを終了する。
【0030】
ステップS104において、車両統合制御ユニット8は、搭乗者意図検出部85により、ステップS102で検出した搭乗者からの停止要求のレベルを判断する。たとえば、搭乗者がHMI装置22に対して停止要求の操作を行うときに、予め設定された複数のレベルのいずれかを搭乗者に選択させ、その選択結果から停車要求のレベルを判断することができる。この場合、搭乗者は、停車の重要度や緊急度に応じて、たとえば「高」、「中」、「低」の三段階のレベルの中からいずれかをHMI装置22上で選択する。あるいは、停車の目的(安全上の緊急停車、施設への立ち寄り、施設種類等)からレベルを判断してもよいし、搭乗者が停車要求を行ったときの心理状態を搭乗者の表情、心拍数、発汗量、発声音量、声色等に基づいて検出し、その検出結果に基づいてレベルを判断してもよい。それ以外にも、任意の方法で停車要求のレベルを判断することが可能である。
【0031】
ステップS105において、車両統合制御ユニット8は、先行車両走行状態検出部81、後続車両走行状態検出部82、周囲環境検出部83、自車両走行状態検出部84により、先行車両の走行状態、後続車両の走行状態、周囲環境、自車両の走行状態をそれぞれ検知する。
【0032】
ステップS106において、車両統合制御ユニット8は、自車両の前方の地図情報を地図情報記憶装置23から読み込んで取得する。自動運転中の自車両では、自車両がどの道路を走行するかを示す走行計画経路が予め設定されており、その走行計画経路に従って自車両の走行制御が行われている。そのため、走行計画経路を参照することで、地図情報記憶装置23から読み込む地図情報の範囲を定めることができる。なお、走行計画経路から外れた地点でも自車両を停車させることができるように、走行計画経路よりも広い範囲で地図情報を読み込むことが好ましい。
【0033】
ステップS107において、車両統合制御ユニット8は、停車計画策定部86により、自車両の停車計画を策定する。ここでは、ステップS104で判断した停止要求のレベルや、ステップS105での各検知結果や、ステップS106で取得した地図情報などに基づいて、自車両の停車計画を策定する。
【0034】
たとえば、停車要求のレベルが「高」である場合は、緊急性が高いと判断し、停車までの距離または時間を可能な限り短縮して即時に自車両を停車させるように、停車計画を策定する。一方、停車要求のレベルが「中」である場合は、停車制御時の周囲の交通状況への影響を最小限に抑えるため、停車までの距離または時間をある程度確保して、路側帯などの一時的に停車可能な場所に自車両を停車させるように、停車計画を策定する。また、停車要求のレベルが「低」である場合は、停車中の周囲の交通状況への影響も考慮し、停車までの距離や時間を長めに確保して、店舗に併設された駐車場などの長時間停車可能な場所に自車両を停車させるように、停車計画を策定する。このように、ステップS107において停車計画策定部86は、停車までの距離または時間を停止要求のレベルに基づいて変化させ、停車計画を策定することができる。
【0035】
また、たとえば、停車要求のレベルが「高」である場合は、走行計画経路に関わらず可能な限り速やかに自車両を停車させるように停車計画を策定する。この場合、走行計画経路から外れても、なるべく近い位置で停車可能な場所を地図情報から探索し、その場所に向けて自車両を停車させるような停車計画を策定する。一方、停車要求のレベルが「中」である場合は、走行計画経路上で安全に停車可能な場所を地図情報から探索し、その場所に向けて自車両を停車させるような停車計画を策定する。また、停車要求のレベルが「低」である場合は、走行計画経路沿いにある駐車場併設施設(店舗、サービスエリア、パーキングエリア等)を地図情報から探索し、その施設に向けて自車両を停車させるような停車計画を策定する。このように、ステップS107において停車計画策定部86は、予め設定された走行計画経路を変更するか否かを停止要求のレベルに基づいて判断し、その判断結果に応じて、走行計画経路を変更して、または変更せずに、停車計画を策定することができる。
【0036】
なお、上記のようにして停車要求のレベルに応じた停車計画を策定する際には、ステップS105で検知した先行車両の走行状態や後続車両の走行状態に基づいて、先行車両や後続車両の走行を妨げないような停車計画とすることが好ましい。さらに、周囲の交通状況を考慮したり、自車両の走行状態が急激に変化するのを避けたりして、停車計画を策定するようにしてもよい。
【0037】
ステップS108において、車両統合制御ユニット8は、ステップS107で策定した停車計画に基づいて、自車両の停車制御を開始するか否かを判定する。停車制御を開始すると判断するまではステップS108に留まり、停車制御を開始すると判断したら処理をステップS109に進める。
【0038】
ステップS109において、車両統合制御ユニット8は、車両制御部87により、自車両の停車制御を実施する。このとき車両制御部87は、ステップS107で策定した停車計画に従い、前方ステレオカメラ7や後方ステレオカメラ21からの情報を用いて、変速機制御ユニット14、エンジン制御ユニット15、パワーステアリング制御ユニット16およびブレーキ制御ユニット18の各制御を行う。これにより、自車両を停車可能な場所へと速やかに停車させる。ステップS109の処理を終えたら、図3のフローチャートを終了する。
【0039】
本実施形態の車両制御装置17では、以上説明した処理を車両統合制御ユニット8において実行することで、自動運転中の自車両において搭乗者が自車両を停止させたい場合に、その停止要求レベルに応じて、自車両を安全に停止させることができる。
【0040】
次に、図3のステップS106で策定する停車計画の一例について、図4を参照して説明する。
【0041】
図4において、自動運転中の自車両51の前方には先行車両52が、後方には後続車両53がそれぞれ走行しており、対向車線には対向車両54が走行している。このような状態で、自車両51の搭乗者が停車要求を行ったとする。このとき、自車両51に搭載されている車両統合制御ユニット8は、道路端を走行している軽車両55を妨げず、かつ駐車禁止地帯56を避けるように停車位置57を決定することで、停車計画を策定する。そして、後続車両53の走行を妨げないように、停車位置57に向けて自車両51を制御し、停車位置57に自車両51を停車させる。
【0042】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0043】
(1)車両制御装置17は、自動運転可能な自車両を制御するものである。車両制御装置17は、車両統合制御ユニット8において、自車両が自動運転中に、自車両に搭乗している搭乗者からの停止要求を検出する搭乗者意図検出部85と、停止要求に応じて自車両の停車計画を策定する停車計画策定部86と、停車計画に基づいて自車両の停車制御を実施する車両制御部87とを備える。このようにしたので、自動運転中の車両において搭乗者が車両を停車させたい場合に、車両を安全に停車させることができる。
【0044】
(2)搭乗者意図検出部85は、停止要求のレベルを判断する(ステップS104)。停車計画策定部86は、搭乗者意図検出部85で判断した停止要求のレベルに基づいて、停車計画を策定する(ステップS107)。具体的には、たとえば、停車計画における停車までの距離または時間を停止要求のレベルに基づいて変化させる。また、予め設定された自車両の走行計画経路を変更するか否かを停止要求のレベルに基づいて判断し、その判断結果に応じて、走行計画経路を変更して、または変更せずに、停車計画を策定する。このようにしたので、停車の重要度や緊急度に応じて、適切な停車計画を策定することができる。
【0045】
(3)停車計画策定部86は、自車両の前方の地図情報を地図情報記憶装置23から取得し(ステップS106)、取得した地図情報に基づいて停車計画を策定してもよい。また、他車両走行状態検出部、すなわち先行車両走行状態検出部81および後続車両走行状態検出部82により検出された他車両の走行状態や、周囲環境検出部83により検出された自車両の周囲環境や、自車両走行状態検出部84により検出された自車両の走行状態に基づいて、停車計画を策定してもよい。このようにすれば、より一層適切な停車計画を策定することができる。
【0046】
以上説明した実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更があっても、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるものであれば本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1:エンジン、2:自動変速機、3:プロペラシャフト、4:ディファレンシャルギア、5:ドライブシャフト、6:車輪、7:前方ステレオカメラ、8:車両統合制御ユニット、9:アクセルペダルセンサ、10:ブレーキペダルセンサ、11:液圧式ブレーキ、12:ステアリングセンサ、13:ステアリング機構、14:変速機制御ユニット、15:エンジン制御ユニット、16:パワーステアリング制御ユニット、17:車両制御装置、18:ブレーキ制御ユニット、20:車輪速センサ、21:後方ステレオカメラ、22:HMI装置、23:地図情報記憶装置、81:先行車両走行状態検出部、82:後続車両走行状態検出部、83:周囲環境検出部、84:自車両走行状態検出部、85:搭乗者意図検出部、86:停車計画策定部、87:車両制御部、100:車両
図1
図2
図3
図4