(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0014】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
<SOI技術の有用性>
半導体装置の製造コストを削減する観点から、一枚の半導体ウェハから取得される半導体チップの個数を多くすることが望まれており、一枚の半導体ウェハからの半導体チップの取得数を増加させるために、電界効果トランジスタの微細化が行なわれている。そして、電界効果トランジスタの微細化には、電界効果トランジスタの駆動電圧(ドレイン電圧とゲート電圧)の低減を実現できることが要求される。したがって、電界効果トランジスタの微細化は、電界効果トランジスタの駆動電圧の低減を通じて、半導体装置の低消費電力化を実現できることに繋がる。
【0019】
この点に関し、例えば、支持基板と、支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、埋め込み絶縁層上に形成された半導体層とからなるSOI基板上に電界効果トランジスタを形成する場合、バルク基板(半導体基板)上に電界効果トランジスタを形成する場合に比べて、電界効果を高めることができる。なぜなら、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタでは、ドレインからの回り込み電界が埋め込み絶縁層によって遮断されるため、半導体層に形成されたチャネルがゲート電界のみによって制御されるからである。これにより、ドレイン電界によってオン/オフ比が著しく劣化する「短チャネル効果」を小さくできる。なお、ゲート電界によるチャネルの制御性が向上することは、ゲート電圧を小さくできることも意味する。すなわち、電界効果トランジスタを含む半導体装置の低消費電力化を実現できることを意味する。このように、SOI技術は、半導体装置の低消費電力化を図る観点から有用な技術であることがわかる。つまり、SOI技術は、電界効果トランジスタの駆動電圧の低減に適した技術であることから、SOI技術を使用することによって、電界効果トランジスタの微細化を進めることができるのである。ここで、半導体装置には、デジタル回路やアナログ回路が含まれているが、本発明者の検討の結果、特に、アナログ回路にSOI技術を使用する場合、アナログ回路の特性を向上するためには、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタの特性を改善するための工夫が必要であることが明らかになったので、以下に、この点について説明することにする。
【0020】
<アナログ増幅回路>
図1は、電界効果トランジスタと定電流源とを使用したアナログ増幅回路の一例を示す図である。
図1に示すように、アナログ増幅回路は、例えば、カレントミラー回路からなる定電流源CSと、電界効果トランジスタQとを備えている。具体的に、アナログ増幅回路においては、電源端子VDDとグランド端子VSSとの間に定電流源CSと電界効果トランジスタQとが直列接続されている。すなわち、電界効果トランジスタQのドレインDと定電流源CSとが接続されている一方、電界効果トランジスタQのソースSは、グランド端子VSSと接続されている。このとき、電界効果トランジスタQのゲート電極Gは、アナログ増幅回路の入力端子ITとして機能し、電界効果トランジスタQのドレインDと定電流源CSとの間の接続ノードがアナログ増幅回路の出力端子OTとして機能することになる。このように構成されているアナログ増幅回路では、まず、
図1に示すように、電界効果トランジスタQのゲート電極Gにゲート電圧Vgsが印加され、かつ、電界効果トランジスタQのドレインDにドレイン電圧Vdsが印加される。この場合、電界効果トランジスタは、飽和領域で動作するように構成されている。そして、このようにオン動作している電界効果トランジスタQのゲート電極Gに入力電圧ΔVgsを加える。すると、電界効果トランジスタQのドレイン電流は、変化することになるが、
図1に示すアナログ増幅回路では、電界効果トランジスタQと直列に定電流源CSが接続されているため、電界効果トランジスタQに入力電圧ΔVgsを加えても、定電流源CSによって、電界効果トランジスタQのドレイン電流が一定となるように制御される。具体的には、電界効果トランジスタQに入力電圧ΔVgsを加えても、定電流源CSによって、電界効果トランジスタQのドレイン電流が一定となるように、電界効果トランジスタQのドレイン電圧VdsがVds+ΔVdsに変化する。この結果、アナログ増幅回路の出力端子OTからは、ドレイン電圧(Vds+ΔVds)が出力される。以上のようにして、
図1に示すアナログ増幅回路では、入力端子ITに入力された入力電圧ΔVgsに対応して、出力端子OTから出力されるドレイン電圧(出力電圧)がΔVdsだけ変化する。このとき、入力電圧ΔVgsに対して、ドレイン電圧(出力電圧)の変化量であるΔVdsが大きくなるほどアナログ増幅回路のゲインが向上することになる。
【0021】
<飽和特性の重要性>
次に、
図1に示すアナログ増幅回路では、アナログ増幅回路のゲイン(増幅率)が電界効果トランジスタQの飽和特性に依存していることについて、
図2と
図3とを参照しながら説明する。
図2において、まず、電界効果トランジスタQが飽和領域の中の「A」の状態にあるとする。そして、この「A」の状態にある電界効果トランジスタQのゲート電極に入力電圧ΔVgsを加える。ここで、伝達コンダクタンスをgmとすると、電界効果トランジスタQのドレイン電流は、gm×ΔVgsだけ変化することになり、電界効果トランジスタQは、「A」の状態から「B」の状態に変化することになる。このとき、
図1に示すアナログ増幅回路では、電界効果トランジスタQと直列に定電流源CSが接続されているため、定電流源CSによって、電界効果トランジスタQのドレイン電流が一定となるように制御される。この結果、
図2において、電界効果トランジスタQは、「B」の状態から「C」の状態に変化する。このように、
図1に示すアナログ増幅回路では、電界効果トランジスタQのゲート電極に入力電圧ΔVgsを印加すると、電界効果トランジスタQは、「A」の状態から「C」の状態に変化する結果、電界効果トランジスタQのドレイン電圧は、ΔVdsだけ変化することになる。すなわち、
図1に示すアナログ増幅回路では、入力端子ITに入力電圧ΔVgsを入力すると、入力電圧ΔVgsに対応して、出力電圧がΔVdsだけ変化することになる。このとき、
図1に示すアナログ増幅回路のゲインは、ΔVds/ΔVgsで定義される。したがって、
図1に示すアナログ増幅回路のゲインは、入力電圧ΔVgsに対応する出力電圧の変化(ΔVds)が大きくなるほど大きくなることになる。この点に関し、
図3では、
図2よりも、電界効果トランジスタQの飽和領域において、ドレイン電圧Vdsの変化に対して、ドレイン電流Idsの変化が少ない特性を示している。この場合、
図2と
図3とを比較するとわかるように、電界効果トランジスタQに同じ入力電圧ΔVgsを加えた場合、ドレイン電圧の変化(ΔVds)が大きくなっていることがわかる。つまり、電界効果トランジスタQの飽和領域において、ドレイン電圧Vdsの変化に対して、ドレイン電流Idsの変化が少ない特性であるほど、
図1に示すアナログ増幅回路のゲインが大きくなることになる。そして、電界効果トランジスタQの飽和領域において、ドレイン電圧Vdsの変化に対して、ドレイン電流Idsの変化が少ないということは、電界効果トランジスタQの飽和特性が良好であることを意味している。したがって、
図1に示すアナログ増幅回路のゲインは、電界効果トランジスタQの飽和特性に依存しており、電界効果トランジスタQの飽和特性が良好であるほど、
図1に示すアナログ増幅回路のゲインが大きくなることがわかる。このことから、アナログ増幅回路に使用される電界効果トランジスタQでは、電界効果トランジスタQの飽和特性を向上することが重要であることがわかる。例えば、デジタル回路に使用される電界効果トランジスタでは、飽和領域でオン動作させる一方、サブスレッショルド領域でオフ動作させるように切り換え動作させればよいことから、デジタル回路の特性は、電界効果トランジスタの飽和特性の傾きにはあまり影響を受けない。これに対し、上述したアナログ増幅回路では、アナログ増幅回路のゲインが電界効果トランジスタQの飽和特性の傾きに大きく依存していることから、電界効果トランジスタQの飽和特性は、アナログ増幅回路の特性に大きな影響を与えるのである。したがって、アナログ増幅回路に使用される電界効果トランジスタQでは、アナログ増幅回路のゲインに代表される特性を向上する観点から、電界効果トランジスタQの飽和特性を良好にすることが重要なのである。
【0022】
<飽和特性の改善に対する工夫の必要性>
上述したように、アナログ増幅回路のゲインに代表される特性を向上するために、電界効果トランジスタの飽和特性を良好にすることが重要である。そして、本発明者は、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタにおいて、アナログ増幅回路の特性向上に直結する電界効果トランジスタの飽和特性を改善するためには、特に、SOI基板を構成する半導体層の厚さに対する工夫を施す必要があるという知見を新規に見出したので、以下に、この新規な知見について説明する。
【0023】
まず、SOI基板上に形成される電界効果トランジスタのゲート電極のゲート長が長い場合には、電界効果トランジスタの飽和特性を良好にするために、SOI基板を構成する半導体層の厚さに対する工夫を施す必要性は低くなる。例えば、
図4は、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さT1の厚い半導体層SL上に、ゲート電極GEのゲート長L1が長い電界効果トランジスタを形成した場合において、電界効果トランジスタの飽和特性の劣化が生じにくくなるメカニズムを説明する図である。
図4の左側において、SOI基板は、支持基板SUBと、支持基板SUB上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成された半導体層(シリコン層、SOI層)SLから構成されている。そして、SOI基板の半導体層SLに、電界効果トランジスタのソース領域SRと、電界効果トランジスタのドレイン領域DRとが離間して形成されている。このとき、ソース領域SRとドレイン領域DRで挟まれた半導体領域がチャネル形成領域CHとなり、このチャネル形成領域CH上に電界効果トランジスタのゲート絶縁膜GOXが形成されている。さらに、このゲート絶縁膜GOX上には、電界効果トランジスタのゲート電極GEが形成されている。
【0024】
なお、ゲート長L1とは、
図4に示すように、ソース領域SRおよびドレイン領域DRのうちの一方から他方に向かう方向に沿ったゲート電極GEの長さである。
【0025】
ここで、
図4の右側には、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルと、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルとが示されている。まず、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルに着目すると、電界効果トランジスタのオフ動作時において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間にポテンシャル障壁V1が形成されている。同様に、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルに着目すると、電界効果トランジスタのオフ動作時において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間にもポテンシャル障壁V1が形成されている。
【0026】
次に、電界効果トランジスタのオン動作時において、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍には、反転層が形成されるため、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域においては、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1が消失して、チャネル形成領域CHを介して、電子がソース領域SRからドレイン領域DRに向って流れる。一方、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域には、反転層が形成されないため、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域においては、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1がほぼ維持される結果、チャネル形成領域CHを介して、電子がソース領域SRからドレイン領域DRに向って流れない。このとき、ゲート電極GEのゲート長L1が長い電界効果トランジスタにおいては、ゲート長L1が長いため、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1が、ドレイン領域DRに印加されているドレイン電圧(Vds)の影響を受けにくい。この結果、ゲート電極GEのゲート長L1の長い電界効果トランジスタの飽和領域においては、ゲート電極GEから離れた位置におけるドレイン電流の増加が抑制されることから、電界効果トランジスタの飽和特性が良好となる。つまり、ゲート電極GEのゲート長が長い電界効果トランジスタでは、電界効果トランジスタの飽和特性を良好にするために、SOI基板を構成する半導体層の厚さに対する工夫を施す必要性は低くなる。
【0027】
これに対し、電界効果トランジスタの微細化によって、電界効果トランジスタのゲート電極GEのゲート長が短くなると、短チャネル効果が顕在化する。すなわち、電界効果トランジスタの微細化を図ることは、スケーリング則によって、電界効果トランジスタの駆動電圧(ドレイン電圧とゲート電圧)の低電圧化を図ることを意味する。ところが、ゲート電極GEのゲート長を短くすると、短チャネル効果が顕在化することから、単に、スケーリング則に基づいて、駆動電圧(ドレイン電圧やゲート電圧)の低電圧化を図っても、微細化された電界効果トランジスタの飽和特性を良好にすることが困難になるのである。すなわち、微細化されたゲート長の短い電界効果トランジスタでは、電界効果トランジスタの飽和特性を良好にするために、SOI基板を構成する半導体層の厚さに対する工夫を施す必要性が生じることになる。以下に、この点について説明する。
【0028】
図5は、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さT2の厚い(例えば、25nmよりも大きい)半導体層SL上に、ゲート電極GEのゲート長L2が短い電界効果トランジスタを形成した場合における飽和特性の劣化が生じるメカニズムを説明する図である。
図5の左側には、電界効果トランジスタの模式的な断面構造が示されている。
図5の左側において、SOI基板は、支持基板SUBと、支持基板SUB上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成された半導体層(シリコン層、SOI層)SLから構成されている。そして、SOI基板の半導体層SLに、電界効果トランジスタのソース領域SRと、電界効果トランジスタのドレイン領域DRとが離間して形成されている。このとき、ソース領域SRとドレイン領域DRで挟まれた半導体領域がチャネル形成領域CHとなり、このチャネル形成領域CH上に電界効果トランジスタのゲート絶縁膜GOXが形成されている。さらに、このゲート絶縁膜GOX上には、電界効果トランジスタのゲート電極GEが形成されている。
【0029】
なお、ゲート長L2とは、上記したように、ソース領域SRおよびドレイン領域DRのうちの一方から他方に向かう方向に沿ったゲート電極GEの長さである。
【0030】
ここで、
図5の右側には、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルと、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルとが示されている。まず、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルに着目すると、電界効果トランジスタのオフ動作時において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間にポテンシャル障壁V1が形成されている。同様に、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルに着目すると、電界効果トランジスタのオフ動作時において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間にもポテンシャル障壁V1形成されている。
【0031】
次に、電界効果トランジスタのオン動作時において、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍には、反転層が形成されるため、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域においては、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1が消失して、チャネル形成領域CHを介して、電子がソース領域SRからドレイン領域DRに向って流れる。一方、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域には、反転層が形成されないため、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域においては、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1がほぼ維持されると考えられ、チャネル形成領域CHを介して、電子がソース領域SRからドレイン領域DRに向って流れないと考えられる。ところが、微細化された電界効果トランジスタにおいて、単に、スケーリング則に基づいて駆動電圧(ドレイン電圧とゲート電圧)を低電圧化しても、ゲート電極GEのゲート長L2が短いことに起因して、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されるポテンシャル障壁が、ドレイン領域DRに印加したドレイン電圧の影響を受けやすくなる。このように、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さT2の厚い半導体層SL上に、ゲート電極GEのゲート長L2が短い電界効果トランジスタを形成した場合、ゲート電極GEから離れた位置において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されるポテンシャル障壁は、ドレイン電圧の影響を大きく受ける結果、小さくなるのである(短チャネル効果)。これにより、電界効果トランジスタのオン動作時において、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルよりも、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルが低くなる。この結果、ゲート電極GEのゲート長L2の短い電界効果トランジスタの飽和領域においては、ゲート電極GEから離れた位置におけるドレイン電流の増加が生じることから、電界効果トランジスタの飽和特性が劣化することになる。つまり、ゲート電極GEのゲート長L2が短い電界効果トランジスタでは、単に、スケーリング則に基づく駆動電圧(ドレイン電圧とゲート電圧)の低電圧化を図っても、短チャネル効果の顕在化によって、電界効果トランジスタの飽和特性の劣化が生じてしまうのである。つまり、電界効果トランジスタの飽和特性を良好にするために、SOI基板を構成する半導体層SLの厚さに対する工夫を施す必要性が高くなるのである。
【0032】
図6は、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さT3(<T2)の薄い半導体層SL上に電界効果トランジスタを形成した場合における飽和特性の劣化が生じにくくなるメカニズムを説明する図である。
図6の左側には、電界効果トランジスタの模式的な断面構造が示されている。
図6の左側において、SOI基板は、支持基板SUBと、支持基板SUB上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成された半導体層(シリコン層、SOI層)SLから構成されている。そして、SOI基板の半導体層SLに、電界効果トランジスタのソース領域SRと、電界効果トランジスタのドレイン領域DRとが離間して形成されている。このとき、ソース領域SRとドレイン領域DRで挟まれた半導体領域がチャネル形成領域CHとなり、このチャネル形成領域CH上に電界効果トランジスタのゲート絶縁膜GOXが形成されている。さらに、このゲート絶縁膜GOX上には、電界効果トランジスタのゲート電極GEが形成されている。
【0033】
ここで、
図6の右側には、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルと、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルとが示されている。まず、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域における電子のポテンシャルに着目すると、電界効果トランジスタのオフ動作時において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間にポテンシャル障壁V1が形成されている。同様に、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域における電子のポテンシャルに着目すると、電界効果トランジスタのオフ動作時において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間にポテンシャル障壁V1が形成されている。
【0034】
次に、電界効果トランジスタのオン動作時において、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍には、反転層が形成されるため、ゲート絶縁膜GOXに接するチャネル形成領域CHの表面近傍領域においては、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1が消失して、チャネル形成領域CHを介して、電子がソース領域SRからドレイン領域DRに向って流れる。一方、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域には、反転層が形成されないため、埋め込み絶縁層BOXに接するチャネル形成領域CHの裏面近傍領域においては、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されたポテンシャル障壁V1がほぼ維持される結果、チャネル形成領域CHを介して、電子がソース領域SRからドレイン領域DRに向って流れない。
【0035】
ここで、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さT3の薄い半導体層SL上に電界効果トランジスタを形成した場合では、SOI基板の半導体層SLが薄い結果、ドレイン領域DRの接合深さが浅くなる。このことは、ゲート電極GEで制御されるチャネル形成領域CHの電荷量が大きくなることを意味する(チャージシェアリングモデル)。言い換えれば、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さT3の薄い半導体層SL上に形成された電界効果トランジスタでは、ゲート電極GEによる制御性が向上するのである。したがって、厚さT3の薄い半導体層SL上に形成された電界効果トランジスタでは、ゲート電極GEから離れた位置においても、ゲート電極GEによる制御性が向上する結果、ドレイン領域DRに印加されたドレイン電圧(Vds)の影響が小さくなるのである。したがって、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さの薄い半導体層上に電界効果トランジスタを形成した場合、ゲート電極GEから離れた位置において、ソース領域SRとチャネル形成領域CHとの間に形成されるポテンシャル障壁は維持される。この結果、埋め込み絶縁層BOX上に形成された厚さの薄い半導体層SL上に、ゲート電極GEのゲート長L2が短い電界効果トランジスタを形成すると、電界効果トランジスタの飽和領域においては、ゲート電極GEから離れた位置におけるドレイン電流の増加が抑制されることから、電界効果トランジスタの飽和特性が良好となる。
【0036】
以上のことから、本発明者が新規に見出した知見である定性的なメカニズムの説明に基づくと、スケーリング則に基づく駆動電圧(ドレイン電圧とゲート電圧)の低電圧化を図っても、短チャネル効果の顕在化に起因する電界効果トランジスタの飽和特性の劣化が生じてしまうことを抑制できるのである。すなわち、SOI基板を構成する半導体層の厚さに対する工夫を施すことによって、電界効果トランジスタの微細化(駆動電圧の低電圧化)を図りながら、短チャネル効果の顕在化も抑制できる。つまり、本発明者が新規に見出した知見である定性的なメカニズムの説明に基づくと、SOI基板上に形成され、かつ、ゲート電極のゲート長の短い電界効果トランジスタにおいて、アナログ増幅回路の特性向上に直結する電界効果トランジスタの飽和特性を改善することができることがわかる。そこで、以下では、SOI基板を構成する半導体層の厚さに対する工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。
【0037】
<デバイス構造>
図7は、本実施の形態1における半導体装置のデバイス構造を示す模式的な断面図である。
図7では、nチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R1と、pチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R2とが図示されており、nチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R1にnチャネル型電界効果トランジスタQnが形成されている一方、pチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R2にpチャネル型電界効果トランジスタQpが形成されている。
【0038】
まず、nチャネル型電界効果トランジスタQnのデバイス構造について説明する。
図7において、支持基板SUBと埋め込み絶縁層BOXと半導体層SLとからなるSOI基板には、素子分離領域STIが形成されており、この素子分離領域STIで区画されたnチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R1にnチャネル型電界効果トランジスタQnが形成されている。このnチャネル型電界効果トランジスタQnは、SOI基板の半導体層SLに形成されたソース領域SR1と、SOI基板の半導体層SL内に形成され、かつ、ソース領域SR1とは離間して形成されたドレイン領域DR1とを有する。このとき、
図7に示すように、ソース領域SR1は、n型半導体領域NRと、n型半導体領域NRよりも不純物濃度の小さいn型半導体領域であるエクステンション領域EX1から構成されている。同様に、ドレイン領域DR1は、n型半導体領域NRと、n型半導体領域NRよりも不純物濃度の小さいn型半導体領域であるエクステンション領域EX1から構成されている。そして、nチャネル型電界効果トランジスタQnは、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とに挟まれたチャネル形成領域CH1と、チャネル形成領域CH1上に形成されたゲート絶縁膜GOX1と、ゲート絶縁膜GOX1上に形成されたゲート電極GE1とを有する。さらに、ゲート電極GE1の両側の側壁には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。また、ゲート電極GE1の表面と、ソース領域SR1の表面と、ドレイン領域DR1の表面とには、シリサイド膜が形成されている。このように構成されているnチャネル型電界効果トランジスタQnを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILを貫通する複数のプラグPLGが形成されている。複数のプラグPLGのうちの1つは、ソース領域SRと電気的に接続されているとともに、複数のプラグPLGのうちの他の1つは、ドレイン領域DRと電気的に接続されている。さらに、nチャネル型電界効果トランジスタQnを形成したSOI基板の半導体層SLの下層に位置する支持基板SUB内には、p型半導体領域からなるp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWLを内包するように、SOI基板の支持基板SUBには、n型半導体領域からなるn型ウェルNWLが形成されている。p型ウェルPWLの一部分上に形成されている埋め込み絶縁層BOXと半導体層SLとが除去されている。このとき、p型ウェルPWLの一部分は、支持基板SUB上に形成された層間絶縁膜ILを貫通するプラグPLGと電気的に接続されており、p型ウェルPWLの一部分の表面には、シリサイド膜が形成されている。
【0039】
次に、pチャネル型電界効果トランジスタQpのデバイス構造について説明する。
図7において、支持基板SUBと埋め込み絶縁層BOXと半導体層SLとからなるSOI基板には、素子分離領域STIが形成されており、この素子分離領域STIで区画されたpチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R2にpチャネル型電界効果トランジスタQpが形成されている。このpチャネル型電界効果トランジスタQpは、SOI基板の半導体層SLに形成されたソース領域SR2と、SOI基板の半導体層SL内に形成され、かつ、ソース領域SR2とは離間して形成されたドレイン領域DR2とを有する。このとき、
図7に示すように、ソース領域SR2は、p型半導体領域PRと、p型半導体領域PRよりも不純物濃度の小さいp型半導体領域であるエクステンション領域EX2から構成されている。同様に、ドレイン領域DR2は、p型半導体領域PRと、p型半導体領域PRよりも不純物濃度の小さいp型半導体領域であるエクステンション領域EX2から構成されている。そして、pチャネル型電界効果トランジスタQpは、ソース領域SR2とドレイン領域DR2とに挟まれたチャネル形成領域CH2と、チャネル形成領域CH2上に形成されたゲート絶縁膜GOX2と、ゲート絶縁膜GOX2上に形成されたゲート電極GE2とを有する。さらに、ゲート電極GE2の両側の側壁には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。また、ゲート電極GE2の表面と、ソース領域SR2の表面と、ドレイン領域DR2の表面とには、シリサイド膜が形成されている。このように構成されているpチャネル型電界効果トランジスタQpを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILを貫通する複数のプラグPLGが形成されている。複数のプラグPLGのうちの1つは、ソース領域SR2と電気的に接続されているとともに、複数のプラグPLGのうちの他の1つは、ドレイン領域DR2と電気的に接続されている。さらに、pチャネル型電界効果トランジスタQpを形成したSOI基板の半導体層SLの下層に位置する支持基板SUB内には、n型半導体領域からなるn型ウェルNWLが形成されている。n型ウェルNWLの一部分上に形成されている埋め込み絶縁層BOXと半導体層SLとが除去されている。このとき、n型ウェルNWLの一部分は、支持基板SUB上に形成された層間絶縁膜ILを貫通するプラグPLGと電気的に接続されており、n型ウェルNWLの一部分の表面には、シリサイド膜が形成されている。
【0040】
以上のようにして、SOI基板のnチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R1に、本実施の形態1におけるnチャネル型電界効果トランジスタQnが形成され、かつ、SOI基板のpチャネル型電界効果トランジスタ形成領域R2に、本実施の形態1におけるpチャネル型電界効果トランジスタQpが形成されている。
【0041】
ここで、ゲート絶縁膜GOX1と、ゲート電極GE1と、チャネル形成領域CH1と、ソース領域SR1と、ドレイン領域DR1とを含むnチャネル型電界効果トランジスタQnは、アナログ回路の構成要素である。このアナログ回路は、少なくとも1つ以上のnチャネル型電界効果トランジスタQnを含み、SOI基板の半導体層SLの厚さは、2nm以上、かつ、24nm以下である。このとき、例えば、ゲート電極GE1のゲート長は、100nm以下である。この場合、nチャネル型電界効果トランジスタQnのソース領域SR1に印加される電位とドレイン領域DR1に印加される電位との差の絶対値は、0.4V以上、かつ、1.2V以下である。このとき、0.4V以上である下限値の条件は、電界効果トランジスタを飽和領域で使用する条件から決定されている一方、1.2V以下である上限値の条件は、電界効果トランジスタがパンチスルーを引き起こさない条件から決定されている。また、nチャネル型電界効果トランジスタQnのチャネル形成領域CH1内における導電型不純物の不純物濃度は、1×10
17/cm
3よりも大きく、かつ、1×10
18/cm
3以下である。
【0042】
飽和特性を良好にする観点から、さらに望ましくは、SOI基板の半導体層SLの厚さは、例えば、8nm以上、かつ、12nm以下である。例えば、ゲート電極GE1のゲート長は、150nm以下である。この場合、nチャネル型電界効果トランジスタQnのソース領域SR1に印加される電位とドレイン領域DR1に印加される電位との差の絶対値は、0.4V以上、かつ、1.6V以下である。このとき、0.4V以上である下限値の条件は、電界効果トランジスタを飽和領域で使用する条件から決定されている一方、1.6V以下である上限値の条件は、電界効果トランジスタがパンチスルーを引き起こさない条件から決定されている。また、nチャネル型電界効果トランジスタQnのチャネル形成領域CH1内における導電型不純物の不純物濃度は、1×10
17/cm
3以下である。
【0043】
同様に、ゲート絶縁膜GOX2と、ゲート電極GE2と、チャネル形成領域CH2と、ソース領域SR2と、ドレイン領域DR2とを含むpチャネル型電界効果トランジスタQpも、アナログ回路の構成要素である。このアナログ回路は、少なくとも1つ以上のpチャネル型電界効果トランジスタQpを含み、SOI基板の半導体層SLの厚さは、2nm以上、かつ、24nm以下である。このとき、例えば、ゲート電極GE2のゲート長は、100nm以下である。この場合、pチャネル型電界効果トランジスタQpのソース領域SR2に印加される電位とドレイン領域DR2に印加される電位との差の絶対値は、0.4V以上、かつ、1.2V以下である。このとき、0.4V以上である下限値の条件は、電界効果トランジスタを飽和領域で使用する条件から決定されている一方、1.2V以下である上限値の条件は、電界効果トランジスタがパンチスルーを引き起こさない条件から決定されている。また、pチャネル型電界効果トランジスタQpのチャネル形成領域CH2内における導電型不純物の不純物濃度は、1×10
17/cm
3よりも大きく、かつ、1×10
18/cm
3以下である。
【0044】
飽和特性を良好にする観点から、さらに望ましくは、SOI基板の半導体層SLの厚さは、例えば、8nm以上、かつ、12nm以下である。例えば、ゲート電極GE2のゲート長は、150nm以下である。この場合、pチャネル型電界効果トランジスタQpのソース領域SR2に印加される電位とドレイン領域DR2に印加される電位との差の絶対値は、0.4V以上、かつ、1.6V以下である。このとき、0.4V以上である下限値の条件は、電界効果トランジスタを飽和領域で使用する条件から決定されている一方、1.6V以下である上限値の条件は、電界効果トランジスタがパンチスルーを引き起こさない条件から決定されている。また、pチャネル型電界効果トランジスタQpのチャネル形成領域CH2内における導電型不純物の不純物濃度は、1×10
17/cm
3以下である。
【0045】
また、SOI基板の埋め込み絶縁層BOXの厚さは、10nm以上、かつ、20nm以下であり、SOI基板の支持基板SUBには、nチャネル型電界効果トランジスタQnのチャネル形成領域CH1の下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接するp型ウェルPWLが形成されている。一方、SOI基板の支持基板SUBには、pチャネル型電界効果トランジスタQpのチャネル形成領域CH2の下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接するn型ウェルNWLも形成されている。
【0046】
<実施の形態1における特徴>
<<第1特徴点>>
続いて、本実施の形態1における特徴点について説明する。本実施の形態1における第1特徴点は、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが2nm以上、かつ、24nm以下である点にある。これにより、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタの飽和特性を向上することができる。この結果、アナログ回路のゲインに代表される回路特性を向上することができる。
【0047】
例えば、
図8(a)は、ゲート電極のゲート長が60nmの電界効果トランジスタをバルク基板に形成した場合において、ゲート電極に0.5V〜1.2Vの範囲のゲート電圧を印加した際のドレイン電圧(Vds)とドレイン電流(Ids)との関係を示すグラフである。また、
図8(b)は、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmのSOI基板に、ゲート電極のゲート長が60nmの電界効果トランジスタを形成した場合において、ゲート電極に0.5V〜1.2Vの範囲のゲート電圧を印加した際のドレイン電圧(Vds)とドレイン電流(Ids)との関係を示すグラフである。さらに、
図8(c)は、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmのSOI基板に、ゲート電極のゲート長が60nmの電界効果トランジスタを形成した場合において、ゲート電極に0.5V〜1.2Vの範囲のゲート電圧を印加した際のドレイン電圧(Vds)とドレイン電流(Ids)との関係を示すグラフである。
【0048】
まず、
図8(a)〜
図8(c)を見ると、
図8(c)に示すドレイン電圧とドレイン電流との関係を示すグラフにおける電界効果トランジスタの飽和特性が最も優れていることがわかる。また、
図8(b)に示すドレイン電圧とドレイン電流との関係を示すグラフにおける電界効果トランジスタの飽和特性は、
図8(c)に示すドレイン電圧とドレイン電流との関係を示すグラフにおける電界効果トランジスタの飽和特性よりも劣っている。一方、ドレイン電圧が1.2V以下の領域では、
図8(b)に示すドレイン電圧とドレイン電流との関係を示すグラフにおける電界効果トランジスタの飽和特性は、
図8(a)に示すドレイン電圧とドレイン電流との関係を示すグラフにおける電界効果トランジスタの飽和特性よりも優れている。このことから、半導体層の厚さが12nmのSOI基板に電界効果トランジスタを形成した場合、半導体層の厚さが24nmのSOI基板に電界効果トランジスタを形成した場合や、バルク基板に電界効果トランジスタを形成した場合よりも、電界効果トランジスタの飽和特性が優れているということができる。つまり、ゲート電極のゲート長が60nm程度に微細化された電界効果トランジスタの飽和特性を向上するためには、半導体層の厚さが12nmのSOI基板に電界効果トランジスタを形成することが望ましいことがわかる。
【0049】
以上の結果から把握される基本思想は、短チャネル効果が顕在化する微細化された電界効果トランジスタを、バルク基板上に形成するよりもSOI基板上に形成する方が電界効果トランジスタの飽和特性を向上しやすく、かつ、SOI基板の半導体層(シリコン層)の厚さが薄いSOI基板に形成するほど電界効果トランジスタの飽和特性を向上しやすくなるという思想である。特に、回路特性を向上する観点から電界効果トランジスタの飽和特性が重要となるアナログ回路では、半導体層(シリコン層)の厚さの薄いSOI基板に、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタを形成することが有用である。
【0050】
このような本実施の形態1における基本思想は、例えば、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さを2nm以上、かつ、24nm以下にするという本実施の形態1における第1特徴点を採用することによって具現化することができる。特に、本実施の形態1における第1特徴点は、ゲート電極のゲート長が150nm以下に微細化されて、短チャネル効果が顕在化しやすい電界効果トランジスタに適用することによって、電界効果トランジスタの飽和特性の劣化を効果的に抑制することができる。これにより、本実施の形態1における第1特徴点によれば、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタの微細化を図りながらも、アナログ回路の回路特性に大きな影響を及ぼす飽和特性を向上できる。
【0051】
特に、SOI基板は、バルク基板に比べて、電界効果トランジスタの低電圧駆動(ドレイン電圧とゲート電圧)を実現するために適した基板構造であることから、SOI基板に電界効果トランジスタを形成する場合、電界効果トランジスタを微細化することができる。つまり、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタをSOI基板に形成すると、電界効果トランジスタの低電圧駆動を実現できることから、電界効果トランジスタの微細化を図ることができる。このとき、電界効果トランジスタを微細化すると、短チャネル効果が顕在化しやすくなって、アナログ回路の回路特性に大きな影響を及ぼす飽和特性が劣化しやすくなると考えられる。この点に関しては、本実施の形態1における第1特徴点を採用することにより、短チャネル効果が顕在化しやすい微細化された電界効果トランジスタであっても、電界効果トランジスタの飽和特性を向上することができる。このように、本実施の形態1における第1特徴点によれば、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタの微細化を図りながらも、アナログ回路の回路特性に大きな影響を及ぼす飽和特性を向上することができる。
【0052】
図9(a)は、
図1で説明したアナログ増幅回路を低電圧駆動させる場合において、アナログ増幅回路に印加する具体的な電圧を記入した回路図である。
図9(a)において、電源端子VDDには、1.6Vが印加され、かつ、グランド端子VSSには、0Vが印加される。また、
図9(a)において、電界効果トランジスタQのゲート電極G(入力端子IT)には、0.6Vが印加され、かつ、電界効果トランジスタQのドレインD(出力端子OT)には、0.8Vが印加される。特に、本実施の形態1では、SOI基板上に電界効果トランジスタを形成しており、電界効果トランジスタの低電圧駆動が可能となることから、
図9(a)に示すような低電圧でも、アナログ増幅回路を動作させることができる。
【0053】
ここで、
図9(a)において、電界効果トランジスタQのゲート電極に0.6V(バイアス基準点)を印加した状態で、かつ、入力電圧(入力信号電圧)を印加すると、電界効果トランジスタQのドレインDに接続されている出力端子OTからは、0.8Vをバイアス基準点として、例えば、0.8V±0.5Vの出力電圧(出力信号電圧)が出力される。このとき、電界効果トランジスタQとして、
図8(c)に示す電流電圧特性を有する電界効果トランジスタを採用すると、
図8(c)に示す電界効果トランジスタは、1.6Vまでのドレイン電圧が印加される場合にはパンチスルーを引き起こさないことから、
図9(a)に示す条件の範囲内では、パンチスルーを起こさず、かつ、良好な飽和特性を有することになることから、
図9(a)に示すような低電圧において、アナログ増幅回路を動作させる際に適している電界効果トランジスタとなることがわかる。
【0054】
一方、電界効果トランジスタQとして、
図8(b)に示す電流電圧特性を有する電界効果トランジスタを採用すると、
図8(b)に示す電界効果トランジスタは、1.2Vまでのドレイン電圧が印加される場合にはパンチスルーを引き起こさないことから、
図9(a)に示す条件の範囲のうち、0.8V±0.4Vの出力電圧(出力信号電圧)を出力するようにして使用する場合には、パンチスルーを起こさず、かつ、良好な飽和特性を有することになることから、
図9(a)に示すような低電圧において、限定的ではあるが、アナログ増幅回路を動作させる際に使用できる電界効果トランジスタとなることがわかる。
【0055】
図9(b)は、電界効果トランジスタのゲート電極のゲート長と、
図9(a)に示すアナログ増幅回路におけるゲインとの関係を示すグラフである。ここで、
図9(b)に示される折れ線グラフ(1)は、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、
図9(a)に示すアナログ増幅回路を構成した場合におけるゲート長とゲインとの関係を示すグラフである。一方、
図9(b)に示される折れ線グラフ(2)は、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、
図9(a)に示すアナログ増幅回路を構成した場合におけるゲート長とゲインとの関係を示すグラフである。また、
図9(b)に示される折れ線グラフ(3)は、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、
図9(a)に示すアナログ増幅回路を構成した場合におけるゲート長とゲインとの関係を示すグラフである。
図9(b)において、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(1)に対して、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(2)は、ゲート長を変化させたときのゲインの変化が著しく大きくなっている。さらに、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(1)に対して、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(3)は、ゲート長を変化させたときのゲインの変化がさらに著しく大きくなっている。これは、バルク基板に形成された電界効果トランジスタの飽和特性よりも、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタの飽和特性や、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタの飽和特性が良好であることによる。したがって、
図9(b)に示す結果から、ゲート電極のゲート長を同じにした場合、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用するよりも、半導体層の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタや、半導体層の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用する方が、アナログ増幅回路のゲインを大きくできる。つまり、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用するよりも、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタや、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用する方が、アナログ増幅回路の回路特性を向上することができるのである。このことから、アナログ増幅回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが24nm以下である場合には、アナログ増幅回路の回路特性を向上できることがわかる。ただし、アナログ増幅回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが2nm未満となる場合には、SOI基板自体の製造が困難となる。このことから、アナログ増幅回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが2nm以上、かつ、24nm以下である場合には、SOI基板自体の製造容易性を確保しながら、アナログ増幅回路の回路特性を向上できるという顕著な効果を得ることができる。
【0056】
見方を変えると、例えば、
図9(b)において、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用してアナログ増幅回路のゲインを「46」に設計する場合、折れ線グラフ(1)から、ゲート電極のゲート長を400nm(0.4μm)にする必要がある。これに対し、
図9(b)において、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用してアナログ増幅回路のゲインを「46」に設計する場合、折れ線グラフ(3)から、ゲート電極のゲート長を90nm(0.09μm)にすればよいことになる。したがって、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、アナログ増幅回路を構成する場合における電界効果トランジスタの平面サイズは、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、アナログ増幅回路を構成する場合における電界効果トランジスタの平面サイズの5%程度に縮小できることを意味している。このように、本実施の形態1における電界効果トランジスタを使用して、
図9(a)に示すアナログ増幅回路を構成すると、電界効果トランジスタの占有面積を大幅に低減することができ、これによって、アナログ増幅回路を含む半導体装置の小型化を図ることができる。つまり、本実施の形態1における第1特徴点を採用すると、本実施の形態1における電界効果トランジスタの平面サイズをバルク基板に形成された電界効果トランジスタの平面サイズと同等にする場合においては、アナログ増幅回路の回路特性の向上を図ることができる。一方、本実施の形態1における第1特徴点を採用すると、本実施の形態1における電界効果トランジスタから構成されるアナログ増幅回路のゲインをバルク基板に形成された電界効果トランジスタから構成されるアナログ増幅回路のゲインと同等にする場合においては、アナログ増幅回路を含む半導体装置の小型化を図ることができるのである。なお、半導体装置の小型化を実現できれば、回路を駆動するための電流を低減できるため、半導体装置の低消費電化も図ることができる。
【0057】
続いて、
図10(a)は、
図1で説明したアナログ増幅回路を、
図9(a)の動作条件よりも高電圧駆動させる場合において、アナログ増幅回路に印加する具体的な電圧を記入した回路図である。
図10(a)において、電源端子VDDには、3.0Vが印加され、かつ、グランド端子VSSには、0Vが印加される。また、
図10(a)において、電界効果トランジスタQのゲート電極G(入力端子IT)には、1.1Vが印加され、かつ、電界効果トランジスタQのドレインD(出力端子OT)には、1.5Vが印加される。
【0058】
ここで、
図10(a)において、電界効果トランジスタQのゲート電極に1.1V(バイアス基準点)を印加した状態で、かつ、入力電圧(入力信号電圧)を印加すると、電界効果トランジスタQのドレインDに接続されている出力端子OTからは、1.5Vをバイアス基準点として、例えば、1.5V±1.0Vの出力電圧(出力信号電圧)が出力される。このとき、電界効果トランジスタQとして、
図8(c)に示す電流電圧特性を有する電界効果トランジスタを採用すると、
図8(c)に示す電界効果トランジスタは、1.6Vまでのドレイン電圧が印加される場合にはパンチスルーを引き起こさないが、それ以上のドレイン電圧では、パンチスルーを引き起こすことから、
図10(a)に示す条件の範囲のうち、1.5V±0.1Vの出力電圧(出力信号電圧)を出力するようにして使用する場合には、パンチスルーを起こさず、かつ、良好な飽和特性を有することになる。このことから、
図10(a)に示すような高電圧駆動させる場合においても、限定的ではあるが、
図8(c)に示す電流電圧特性を有する電界効果トランジスタは、アナログ増幅回路を動作させる際に使用できる電界効果トランジスタとなる。
【0059】
一方、電界効果トランジスタQとして、
図8(b)に示す電流電圧特性を有する電界効果トランジスタを採用すると、
図8(b)に示す電界効果トランジスタは、1.2Vを超えるドレイン電圧が印加される場合にはパンチスルーを引き起す。このことから、
図8(b)に示す電流電圧特性を有する電界効果トランジスタは、
図10(a)に示すような高電圧駆動させる場合においては、アナログ増幅回路を動作させる際に使用できなくなる。
【0060】
図10(b)は、電界効果トランジスタのゲート電極のゲート長と、
図10(a)に示すアナログ増幅回路におけるゲインとの関係を示すグラフである。ここで、
図10(b)に示される折れ線グラフ(1)は、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、
図10(a)に示すアナログ増幅回路を構成した場合におけるゲート長とゲインとの関係を示すグラフである。一方、
図10(b)に示される折れ線グラフ(2)は、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、
図10(a)に示すアナログ増幅回路を構成した場合におけるゲート長とゲインとの関係を示すグラフである。また、
図10(b)に示される折れ線グラフ(3)は、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用して、
図10(a)に示すアナログ増幅回路を構成した場合におけるゲート長とゲインとの関係を示すグラフである。
【0061】
図10(b)において、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(1)に対して、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(2)は、
図9(b)とは異なり、同等となっている。これは、
図8(b)の破線で囲まれた領域に示すように、半導体層(シリコン層)の厚さが24nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタでは、ドレイン電圧が1.0Vを超えると、パンチスルーが発生してしまい、ソース領域とドレイン領域との間の抵抗(rds)が低下するためである。すなわち、ソース領域とドレイン領域との間の抵抗を「rds」とし、伝達コンダクタンスを「gm」とすると、アナログ増幅回路のゲインは、「rds」×「gm」で表されることから、パンチスルーが発生して、ソース領域とドレイン領域との間の抵抗(rds)が低下すると、アナログ増幅回路のゲインが低下することになるからである。
【0062】
一方、バルク基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(1)に対して、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタを使用した場合のゲート長とゲインとの関係を示す折れ線グラフ(3)は、ゲート長を変化させたときのゲインの変化が著しく大きくなっている。これは、
図8(c)に示すように、ドレイン電圧の広い範囲にわたって、バルク基板に形成された電界効果トランジスタの飽和特性よりも、半導体層(シリコン層)の厚さが12nmであるSOI基板に形成された電界効果トランジスタの飽和特性が良好であることによる。
【0063】
したがって、幅広いドレイン電圧の範囲にわたって、アナログ増幅回路のゲインを向上する観点からは、アナログ増幅回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが12nm以下であることが望ましい。一方、SOI基板の半導体層の厚さが8nm未満になると、ソース領域とドレイン領域との間の抵抗(rds)が高くなり過ぎることから、アナログ増幅回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが8nm以上であることが望ましい。以上のことから、特に、幅広いドレイン電圧の範囲にわたって、アナログ増幅回路の回路特性を向上する観点からは、アナログ増幅回路を構成する電界効果トランジスタが形成されたSOI基板の半導体層の厚さが8nm以上、かつ、12nm以下であることが望ましい。
【0064】
<<第2特徴点>>
次に、本実施の形態1における第2特徴点は、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタのチャネル形成領域内における導電型不純物の不純物濃度が、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、3×10
17/cm
3、より望ましくは、1×10
17/cm
3以下である点にある。具体的に、本実施の形態1における第2特徴点は、例えば、
図7において、nチャネル型電界効果トランジスタQnのチャネル形成領域CH1に含まれているp型不純物(ボロンなど)の不純物濃度が、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下である点にある。同様に、本実施の形態1における第2特徴点は、例えば、
図7において、pチャネル型電界効果トランジスタQpのチャネル形成領域CH2に含まれているn型不純物(リンや砒素)の不純物濃度が、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下である点にある。これにより、例えば、アナログ回路が複数のnチャネル型電界効果トランジスタQnを含む場合、複数のnチャネル型電界効果トランジスタQn同士において、チャネル形成領域CH1に含まれているp型不純物の不純物濃度のばらつきを低減することができる。例えば、アナログ回路の構成要素として、差動アンプが含まれる場合があり、この差動アンプは、互いに同一特性を有する複数のnチャネル型電界効果トランジスタQnを含むように構成されている。
【0065】
具体的に、
図11は、差動アンプの機能および回路構成を模式的に示す図である。例えば、差動アンプは、入力端子「A」と入力端子「B」とを備え、入力端子「A」に入力された入力信号が、入力端子「B」に入力された入力信号よりも大きい場合に出力端子「OUT」から「1」を出力し、その他の場合には、出力端子「OUT」から「0」を出力する機能を有している。このような機能を有する差動アンプは、
図11に示すように、バイアス部と差動増幅部と増幅部と出力部とから構成されている。そして、差動増幅部に着目すると、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のゲート電極が入力端子「A」と接続され、かつ、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のゲート電極が入力端子「B」と接続されている。このとき、nチャネル型電界効果トランジスタQ1とnチャネル型電界効果トランジスタQ2とは同一特性であることが要求される。すなわち、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧と、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のしきい値電圧とは、同一であることが望まれる。なぜなら、入力端子「A」に入力される入力信号と、入力端子「B」に入力される入力信号とが等しい場合、出力端子「OUT」からは、「0」を出力する必要があるからである。すなわち、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧と、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のしきい値電圧とが相違すると、入力端子「A」に入力される入力信号と、入力端子「B」に入力される入力信号とが等しいにも関わらず、しきい値電圧のばらつきに起因して、誤動作することが起こりうるからである。そして、例えば、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧と、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のしきい値電圧とを等しくするためには、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のチャネル形成領域に含まれるp型不純物の不純物濃度と、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のチャネル形成領域に含まれるp型不純物の不純物濃度とを等しくする必要がある。この点に関し、チャネル形成領域に含まれるp型不純物の不純物濃度を高くすると、不純物濃度のばらつきが大きくなることから、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧と、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のしきい値電圧とのばらつきが大きくなる。そこで、本実施の形態1では、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のチャネル形成領域に含まれているp型不純物の不純物濃度を1×10
18/cm
3以下にしており、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にしている。同様に、本実施の形態1では、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のチャネル形成領域に含まれているp型不純物の不純物濃度を1×10
18/cm
3以下にしており、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にしている。これにより、本実施の形態1における第2特徴点によれば、例えば、差動アンプに含まれるnチャネル型電界効果トランジスタQ1とnチャネル型電界効果トランジスタQ2とのそれぞれのチャネル形成領域に含まれているp型不純物の不純物濃度のばらつきを低減することができる。このことかは、本実施の形態1における第2特徴点によれば、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧と、nチャネル型電界効果トランジスタQ2のしきい値電圧とのばらつきを小さくすることができ、これによって、差動アンプの動作信頼性を向上できる。
【0066】
<<第2特徴点による副作用>>
ただし、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタのチャネル形成領域内における導電型不純物の不純物濃度を、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にするという本実施の形態1における第2特徴点を採用すると、電界効果トランジスタのしきい値電圧が低下してしまうという副作用が生じる。このような電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下は、サブスレッドショルドリーク電流の増加を招くことになり、これによって、半導体装置の消費電力が増加してしまうことになる。したがって、サブスレッショルドリーク電流の増加を抑制するためには、電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下を抑制する必要があり、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタのしきい値電圧を維持するためには、電界効果トランジスタのチャネル形成領域内に含まれる導電型不純物の不純物濃度を高くする必要がある。そこで、本実施の形態1では、第2特徴点を採用することにより誘発されるしきい値電圧の低下という副作用を抑制する工夫を施している。すなわち、本実施の形態1では、サブスレッショルドリーク電流の増加を抑制する手段として、電界効果トランジスタのチャネル形成領域内に含まれる導電型不純物の不純物濃度を高くする手段に頼ることなく、代替え手段を採用する工夫を施している。
【0067】
<<副作用を抑制する対策1>>
副作用を抑制する対策1の基本思想は、SOI基板の支持基板の部分のうち、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタのチャネル形成領域の下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層と接する部分にウェル領域を形成し、このウェル領域に、バックゲート電圧を印加するという思想である。これにより、電界効果トランジスタのチャネル形成領域に含まれる導電型不純物の不純物濃度を、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にするという本実施の形態1における第2特徴点を採用したとしても、ウェル領域に印加するバックゲート電圧によって、電界効果トランジスタのサブスレッショルドリーク電流の増加を抑制することができる。具体的には、例えば、
図7において、SOI基板上に形成されたnチャネル型電界効果トランジスタQ1のチャネル形成領域CH1の下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接する部分にp型ウェルPWLを形成し、このp型ウェルPWLに負バイアスからなるバックゲート電圧を印加する。これにより、バックゲート電圧によって、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のチャネル形成領域CH1のポテンシャルが引き上げられる結果、nチャネル型電界効果トランジスタQ1のサブスレッショルドリーク電流の増加を抑制することができる。特に、本実施の形態1では、nチャネル型電界効果トランジスタQ1の非動作時から動作時にわたって、バックゲート電圧を印加できる。
【0068】
なお、非動作時から動作時にわたってバックゲート電圧を印加し続ける以外の例として、非動作時にのみバックゲート電圧を印加して、動作時には、バックゲート電圧を印加しないように構成することもできる。これにより、未使用時のリーク電流を抑えることができるとともに、動作時において、低いしきい値状態で駆動電流を高めることができる。
【0069】
また、非動作時にバックゲート電圧を印加し、かつ、動作時には、時分割でバックゲート電圧を印加したり、バックゲート電圧を印加しなかったりすることもできる。さらには、動作時にバックゲート電圧を印加し、かつ、非動作時には、ある領域にだけバックゲート電圧を印加する一方、別の領域には、バックゲート電圧を印加しないように構成することもできる。
【0070】
同様に、例えば、
図7において、SOI基板上に形成されたpチャネル型電界効果トランジスタQ2のチャネル形成領域CH2の下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接する部分にn型ウェルNWLを形成し、このn型ウェルNWLに正バイアスからなるバックゲート電圧を印加する。これにより、バックゲート電圧によって、pチャネル型電界効果トランジスタQ2のサブスレッショルドリーク電流の増加を抑制することができる。特に、本実施の形態1では、pチャネル型電界効果トランジスタQ2の非動作時から動作時にわたって、バックゲート電圧を印加できる。
【0071】
なお、非動作時から動作時にわたってバックゲート電圧を印加し続ける以外の例として、非動作時にのみバックゲート電圧を印加して、動作時には、バックゲート電圧を印加しないように構成することもできる。これにより、未使用時のリーク電流を抑えることができるとともに、動作時において、低いしきい値状態で駆動電流を高めることができる。
【0072】
また、非動作時にバックゲート電圧を印加し、かつ、動作時には、時分割でバックゲート電圧を印加したり、バックゲート電圧を印加しなかったりすることもできる。さらには、動作時にバックゲート電圧を印加し、かつ、非動作時には、ある領域にだけバックゲート電圧を印加する一方、別の領域には、バックゲート電圧を印加しないように構成することもできる。
【0073】
ここで、本実施の形態では、埋め込み絶縁層BOXの厚さは、10nm以上、かつ、20nm以下となっているSOTB技術が採用されている。これにより、本実施の形態1における対策1では、ウェル領域に印加されるバックゲート電圧による電界効果トランジスタのチャネルのポテンシャル制御により、不必要なリーク電流を抑制することができる。
【0074】
<<副作用を抑制する対策2>>
次に、副作用を抑制する対策2の基本思想は、いわゆる「フェルミレベルピニング」を利用して、電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下を抑制する思想である。「フェルミレベルピニング」とは、以下に示す現象である。例えば、nチャネル型電界効果トランジスタに着目した場合、ゲート電極には、n型ポリシリコン膜が使用される。このとき、ゲート絶縁膜に、例えば、ハフニウムやアルミニウムなどの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い元素を添加すると、n型ポリシリコン膜のフェルミ準位がシフトする現象である。具体的に、通常、n型ポリシリコン膜のフェルミ準位は、伝導帯の近傍に位置するが、ゲート絶縁膜にハフニウムやアルミニウムを添加すると、n型ポリシリコン膜のフェルミ準位が価電子帯側にシフトする。このことは、nチャネル型電界効果トランジスタのしきい値電圧が上昇することを意味する。通常は、ゲート電極を構成するn型ポリシリコン膜のフェルミ準位が伝導帯近傍に位置する場合に、設計値通りのしきい値電圧を確保できるが、上述した「フェルミレベルピニング」が生じると、nチャネル型電界効果トランジスタのしきい値電圧が設計値から高くなる方向にずれることになる。したがって、通常は、「フェルミレベルピニング」を抑制しようというインセンティブが働くことになる。
【0075】
ところが、本発明者は、発想の転換を図って、「フェルミレベルピニング」が生じると、nチャネル型電界効果トランジスタのしきい値電圧が上昇する点に着目して、上述した本実施の形態1における第2特徴点を採用することにより生じるしきい値電圧の低下という副作用を、意図的に「フェルミレベルピニング」を生じさせて抑制するのである。すなわち、副作用を抑制する対策2として、本実施の形態1においては、nチャネル型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜に、例えば、ハフニウムやアルミニウムに代表される酸化シリコン膜よりも誘電率の高い元素を含むように構成している。これにより、本実施の形態1によれば、意図的に「フェルミレベルピニング」を生じさせることができる結果、nチャネル型電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下を効果的に抑制できる。
【0076】
同様に、例えば、pチャネル型電界効果トランジスタに着目した場合、ゲート電極には、p型ポリシリコン膜が使用される。このとき、ゲート絶縁膜に、例えば、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い元素を添加すると、p型ポリシリコン膜のフェルミ準位がシフトする(「フェルミレベルピニング」)。具体的に、通常、p型ポリシリコン膜のフェルミ準位は、価電子帯の近傍に位置するが、ゲート絶縁膜に酸化シリコン膜よりも誘電率の高い元素を添加すると、p型ポリシリコン膜のフェルミ準位が伝導帯側にシフトする。したがって、pチャネル型電界効果トランジスタにおいても、意図的に「フェルミレベルピニング」を生じさせることができる結果、pチャネル型電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下を効果的に抑制できる。
【0077】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタとデジタル回路を構成する電界効果トランジスタとを同一のSOI基板上に形成する例について説明する。
【0078】
<電界効果トランジスタに要求される特性の相違>
アナログ回路を構成する電界効果トランジスタに要求される特性と、デジタル回路を構成する電界効果トランジスタに要求される特性とは相違する。具体的に、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタには、飽和特性が良好なことや、ソースとドレインとの間の耐圧とゲート絶縁膜の耐圧とが高いことが要求される。一方、デジタル回路では、デジタル回路を構成する電界効果トランジスタのスイッチングを頻繁に実施することから、デジタル回路を構成する電界効果トランジスタには、高速なスイッチング特性が要求される。このように、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタと、デジタル回路を構成する電界効果トランジスタとでは、要求される特性が異なる。このことから、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタのデバイス構造と、デジタル回路を構成する電界効果トランジスタのデバイス構造とは、必然的に相違する。以下では、同一のSOI基板上に形成されたアナログ回路を構成する電界効果トランジスタとデジタル回路を構成する電界効果トランジスタとのデバイス構造について説明する。
【0079】
<デバイス構造>
図12は、本実施の形態2における複数の電界効果トランジスタのデバイス構造を示す断面図である。具体的に、
図12では、アナログ回路形成領域ACR1に、アナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aが形成されている一方、デジタル回路形成領域DCR1に、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bが形成されている。なお、アナログ回路は、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aだけでなく、pチャネル型電界効果トランジスタも構成要素として含み、かつ、デジタル回路も、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bだけでなく、pチャネル型電界効果トランジスタも構成要素として含むが、
図12では、省略している。ここで、SOI基板の半導体層(シリコン層)SLの厚さは、2nm以上、かつ、24nm以下である。
【0080】
<<nチャネル型電界効果トランジスタQn1aのデバイス構造>>
図12において、SOI基板のアナログ回路形成領域ACR1には、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aが形成されている。nチャネル型電界効果トランジスタQn1aは、SOI基板の半導体層(シリコン層)SLに形成されたソース領域SR1aと、SOI基板の半導体層(シリコン層)SLに形成され、ソース領域SR1aと離間して形成されたドレイン領域DR1aとを有している。このとき、ソース領域SR1aは、n型半導体領域NR1aと、このn型半導体領域NR1aよりも不純物濃度の低いエクステンション領域EX1aとから構成されている。同様に、ドレイン領域DR1aも、n型半導体領域NR1aと、このn型半導体領域NR1aよりも不純物濃度の低いエクステンション領域EX1aとから構成されている。そして、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aは、ソース領域SR1aとドレイン領域DR1aとの間に挟まれたチャネル形成領域CH1aと、チャネル形成領域CH1a上に形成されたゲート絶縁膜GOX1aと、ゲート絶縁膜GOX1a上に形成されたゲート電極GE1aとを有している。ここで、ゲート電極GE1aの両側の側壁には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。一方、SOI基板の支持基板SUBには、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aのチャネル形成領域CH1aの下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接するp型ウェルPWL1aが形成されている。このp型ウェルPWL1aには、例えば、負バイアスからなるバックゲート電圧が印加可能に構成されている。以上のようにして、SOI基板のアナログ回路形成領域ACR1に、本実施の形態2におけるnチャネル型電界効果トランジスタQn1aが形成されている。
【0081】
<<nチャネル型電界効果トランジスタQn1bのデバイス構造>>
次に、
図12において、SOI基板のデジタル回路形成領域DCR1には、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bが形成されている。nチャネル型電界効果トランジスタQn1bは、SOI基板の半導体層(シリコン層)SLに形成されたソース領域SR1bと、SOI基板の半導体層(シリコン層)SLに形成され、ソース領域SR1bと離間して形成されたドレイン領域DR1bとを有している。このとき、ソース領域SR1bは、n型半導体領域NR1bと、このn型半導体領域NR1bよりも不純物濃度の低いエクステンション領域EX1bとから構成されている。同様に、ドレイン領域DR1bも、n型半導体領域NR1bと、このn型半導体領域NR1bよりも不純物濃度の低いエクステンション領域EX1bとから構成されている。そして、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bは、ソース領域SR1bとドレイン領域DR1bとの間に挟まれたチャネル形成領域CH1bと、チャネル形成領域CH1b上に形成されたゲート絶縁膜GOX1bと、ゲート絶縁膜GOX1b上に形成されたゲート電極GE1bとを有している。ここで、ゲート電極GE1bの両側の側壁には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。一方、SOI基板の支持基板SUBには、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bのチャネル形成領域CH1bの下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接するp型ウェルPWL1bが形成されている。このp型ウェルPWL1bには、例えば、負バイアスからなるバックゲート電圧が印加可能に構成されている。以上のようにして、SOI基板のデジタル回路形成領域DCR1に、本実施の形態2におけるnチャネル型電界効果トランジスタQn1bが形成されている。
【0082】
<<相違点>>
上述したように構成されているnチャネル型電界効果トランジスタQn1aとnチャネル型電界効果トランジスタQn1bとは、アナログ回路とデジタル回路のそれぞれに要求される特性の相違に起因して、デバイス構造に相違点が存在する。以下では、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aとnチャネル型電界効果トランジスタQn1bとの相違点について説明することにする。
【0083】
まず、第1相違点は、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aにおけるソース領域SR1aとドレイン領域DR1aとの間の絶縁耐圧は、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bにおけるソース領域SR1bとドレイン領域DR1bとの間の絶縁耐圧よりも大きくなっている。これは、アナログ回路では、デジタル回路よりも絶縁耐圧が高いことが要求されているからである。したがって、
図12に示すように、本実施の形態2では、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート電極GE1aのゲート長は、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bのゲート電極GE1bのゲート長よりも長い。
【0084】
続いて、第2相違点は、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aにおけるゲート絶縁膜GOX1aの絶縁耐圧は、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bにおけるゲート絶縁膜GOX1bの絶縁耐圧よりも大きくなっている。これは、アナログ回路では、デジタル回路よりも絶縁耐圧が高いことが要求されているからである。したがって、
図12に示すように、本実施の形態2では、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート絶縁膜GOX1aの厚さは、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bのゲート絶縁膜GOX1bの厚さよりも厚い。
【0085】
次に、第3相違点は、例えば、デジタル回路では、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bに対して、高速スイッチング特性が要求される。このため、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bには電流駆動力の大きいことが要求される。したがって、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bのしきい値電圧は、アナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのしきい値電圧よりも低くする必要がある。この第3相違点を実現する一例として、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート電極GE1aを構成する導体膜の構成材料と、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bのゲート電極GE1bを構成する導体膜の構成材料とを相違させることができる。これにより、nチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート電極GE1aの仕事関数と、nチャネル型電界効果トランジスタQn1bのゲート電極GE1bの仕事関数とを相違させることができる。この結果、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bのしきい値電圧と、アナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのしきい値電圧とを相違させることができる。
【0086】
<回路例>
本実施の形態2における半導体装置は、同一のSOI基板上にアナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aと、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bとが形成されている。このようにアナログ回路とデジタル回路とが混載されている本実施の形態2における半導体装置は、例えば、アナログ回路とデジタル回路とからなるA/D変換器の構成に適用することができる。以下では、本実施の形態2における半導体装置を適用できるA/D変換器の構成について説明する。
【0087】
図13は、逐次比較型A/Dコンバータの回路構成を示す回路ブロック図である。
図13において、逐次比較型A/Dコンバータは、サンプリングクロックに基づいて、アナログ入力電圧Vinを入力するサンプルホールド回路と、サンプルホールド回路でサンプルホールドされた入力電圧と基準電圧とを比較する比較器と、クロックに基づいて、逐次比較クロックを生成する逐次比較クロック生成部とを有する。さらに、逐次比較型A/Dコンバータは、逐次比較レジスタ(SAR)と、DA変換器と、出力レジスタとを有する。このように構成されている逐次比較型A/Dコンバータは、例えば、DA変換器で発生された第1電圧(例えば、FS/2とする)と、サンプルホールド回路でサンプルホールドされた入力電圧「Vin」とを比較器で比較する。そして、入力電圧>第1電圧(FS/2)の場合、最上位ビットを「1」にする一方、入力電圧<第1電圧(FS/2)の場合、最上位ビットを「0」にする。その後、DA変換器は、第2電圧(FS/2+FS/4)の電圧を発生して、この第2電圧と入力電圧とが比較で比較され、比較結果に基づいて、最上位の1桁下のビットを決定する。このような動作を繰り返すことにより、入力電圧に対応したデジタル出力を出力レジスタから出力する。このようにして、逐次比較型A/Dコンバータが動作することになる。
【0088】
このような逐次比較型A/Dコンバータには、例えば、サンプルホールド回路に代表されるアナログ回路と、逐次比較レジスタ(SAR)に代表されるデジタル回路とが含まれている。したがって、アナログ回路とデジタル回路とが混載されている本実施の形態2における半導体装置は、例えば、アナログ回路とデジタル回路とからなる逐次比較型A/D変換器の構成に適用することができる。
【0089】
<第2特徴点による副作用>
本実施の形態2における半導体装置においても、SOI基板上に形成されたnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのチャネル形成領域CH1a内における導電型不純物の不純物濃度を、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にするという前記実施の形態1における第2特徴点を採用する。同様に、本実施の形態2では、SOI基板上に形成されたnチャネル型電界効果トランジスタQn1bのチャネル形成領域CH1b内における導電型不純物の不純物濃度を、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にするという前記実施の形態1における第2特徴点を採用する。この場合、前記実施の形態1でも説明したように、電界効果トランジスタのしきい値電圧が低下してしまうという副作用が生じる。
【0090】
<副作用を抑制する対策1>
副作用を抑制する対策1の基本思想は、SOI基板の支持基板の部分のうち、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタ(nチャネル型電界効果トランジスタQn1a、nチャネル型電界効果トランジスタQn1b)のチャネル形成領域(CH1a、CH1b)の下方に位置し、かつ、埋め込み絶縁層BOXと接する部分にp型ウェル(PWL1a、PWL1b)を形成し、このp型ウェル(PWL1a、PWL1b)に、バックゲート電圧を印加するという思想である。これにより、電界効果トランジスタ(nチャネル型電界効果トランジスタQn1a、nチャネル型電界効果トランジスタQn1b)のチャネル形成領域(CH1a、CH1b)に含まれる導電型不純物の不純物濃度を、1×10
18/cm
3以下であり、望ましくは、1×10
17/cm
3以下にするという第2特徴点を採用したとしても、p型ウェルPWLに印加するバックゲート電圧によって、電界効果トランジスタ(nチャネル型電界効果トランジスタQn1a、nチャネル型電界効果トランジスタQn1b)のしきい値電圧の低下を抑制することができる。
【0091】
<副作用を抑制する対策2>
次に、副作用を抑制する対策2の基本思想は、前記実施の形態1と同様に、いわゆる「フェルミレベルピニング」を利用して、電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下を抑制する思想である。ここで、本実施の形態2においては、例えば、アナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート絶縁膜GOX1aは、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い材料(High―k)材料を含むように構成する一方、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bのゲート絶縁膜GOX1bは、酸化シリコン膜から構成することができる。この場合、アナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのしきい値電圧を、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bのしきい値電圧よりも高くすることができる。
【0092】
さらに、デジタル回路においても、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bでのサブスレッショルドリーク電流を低減するために、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1bのゲート絶縁膜GOX1bにも、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い材料を含むように構成することができる。このとき、例えば、アナログ回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート絶縁膜GOX1aにおける「High−k材料」の含有量は、デジタル回路を構成するnチャネル型電界効果トランジスタQn1aのゲート絶縁膜GOX1bにおける「High−k材料」含有量よりも少なくすることが望ましい。以下に、この理由について説明する。
【0093】
例えば、「フェルミレベルピニング」は、酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜に、ハフニウムやアルミニウムに代表される「High−k材料」を添加すると、ゲート絶縁膜中に固定電荷(酸素空孔)が形成されることによって、ゲート絶縁膜とゲート電極との界面における電子の分布が変化して、フェルミレベルがシフトする現象として理解されている。すなわち、ゲート絶縁膜に「High−k材料」を添加すると、固定電荷が形成される。そして、この固定電荷に電子が捕獲されたり離脱したりすることによって、電子の移動が生じることに起因して、電気的なノイズが発生する。したがって、ゲート絶縁膜に添加される「High−k材料」が多くなればなるほど、ゲート絶縁膜中に形成される固定電荷の数が多くなる。このことは、ゲート絶縁膜に添加される「High−k材料」が多くなればなるほど、電気的なノイズ成分が多くなることを意味する。
【0094】
この点に関し、アナログ回路は、デジタル回路に比べてノイズの影響を受けやすい。特に、本実施の形態2では、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタをSOI基板上に形成することにより、低電圧駆動を実現している。このことは、アナログ回路における信号成分が小さくなることを意味している。一方、低電圧駆動を実現しても、ノイズ成分は減少しないことから、S/N比(シグナル/ノイズ比)は小さくなる。そして、ゲート絶縁膜中に形成される固定電荷が多くなると、さらに、電気的なノイズ成分が多くなり、さらなるS/N比の低下を招くことになる。したがって、本実施の形態2では、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタのしきい値電圧の低下を抑制するために、ゲート絶縁膜中に「High−k材料」を添加する対策を取りながら、ゲート絶縁膜中に添加する「High−k材料」を最小限としている。このことから、本実施の形態2では、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタのゲート絶縁膜における「High−k材料」の含有量を、デジタル回路を構成する電界効果トランジスタのゲート絶縁膜における「High−k材料」含有量よりも少なくしているのである。これにより、アナログ回路を構成する電界効果トランジスタにおいては、S/N比の低下を抑制しながら、しきい値電圧の低下を抑制することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0096】
前記実施の形態は、以下の形態を含む。
【0097】
(付記1)
支持基板と、
前記支持基板上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された半導体層と、
前記半導体層内に形成された第1ソース領域と、
前記半導体層内に形成され、かつ、前記第1ソース領域とは離間して形成された第1ドレイン領域と、
前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域とに挟まれた第1チャネル形成領域と、
前記第1チャネル形成領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
を有し、
前記第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート電極と、前記第1チャネル形成領域と、前記第1ソース領域と、前記第1ドレイン領域とを含む第1電界効果トランジスタは、第1アナログ回路の構成要素であり、
前記第1アナログ回路は、少なくとも1つ以上の前記第1電界効果トランジスタを含み、
前記半導体層の厚さは、2nm以上、かつ、24nm以下であり、
前記半導体層内に形成され、かつ、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域とは離間して形成された第2ソース領域と、
前記半導体層内に形成され、かつ、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域と前記第2ソース領域とは離間して形成された第2ドレイン領域と、
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域とに挟まれた第2チャネル形成領域と、
前記第2チャネル形成領域上に形成され、かつ、前記第1ゲート絶縁膜とは離間して形成された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成され、かつ、前記第1ゲート電極とは離間して形成された第2ゲート電極と、
を有し、
前記第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート電極と、前記第2チャネル形成領域と、前記第2ソース領域と、前記第2ドレイン領域とを含む第2電界効果トランジスタは、第1デジタル回路の構成要素である、半導体装置。
【0098】
(付記2)
付記1に記載の半導体装置において、
前記第2チャネル形成領域内における導電型不純物の不純物濃度は、1×10
17/cm
3以下であり、
前記第1ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い材料を含み、
前記第2ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜から構成される、半導体装置。
【0099】
(付記3)
付記1に記載の半導体装置において、
前記第2チャネル形成領域内における導電型不純物の不純物濃度は、1×10
17/cm
3以下であり、
前記第1ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い材料を含み、
前記第2ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い材料を含み、
前記第1ゲート絶縁膜における前記材料の含有量は、前記第2ゲート絶縁膜における前記材料の含有量よりも少ない、半導体装置。
【0100】
(付記4)
支持基板と、
前記支持基板上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された半導体層と、
前記半導体層内に形成された第1ソース領域と、
前記半導体層内に形成され、かつ、前記第1ソース領域とは離間して形成された第1ドレイン領域と、
前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域とに挟まれた第1チャネル形成領域と、
前記第1チャネル形成領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記半導体層内に形成され、かつ、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域とは離間して形成された第2ソース領域と、
前記半導体層内に形成され、かつ、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域と前記第2ソース領域とは離間して形成された第2ドレイン領域と、
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域とに挟まれた第2チャネル形成領域と、
前記第2チャネル形成領域上に形成され、かつ、前記第1ゲート絶縁膜とは離間して形成されたた第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成され、かつ、前記第1ゲート電極とは離間して形成された第2ゲート電極と、
を有し、
前記第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート電極と、前記第1チャネル形成領域と、前記第1ソース領域と、前記第1ドレイン領域とを含む第1電界効果トランジスタは、A/Dコンバータのアナログ回路の構成要素であり、
前記第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート電極と、前記第2チャネル形成領域と、前記第2ソース領域と、前記第2ドレイン領域とを含む第2電界効果トランジスタは、A/Dコンバータのデジタル回路の構成要素であり、
前記半導体層の厚さは、2nm以上、かつ、24nm以下である、半導体装置。
【0101】
(付記5)
付記4に記載の半導体装置において、
前記第1電界効果トランジスタにおける前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の絶縁耐圧は、前記第2電界効果トランジスタにおける前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域との間の絶縁耐圧よりも大きい、半導体装置。
【0102】
(付記6)
付記4に記載の半導体装置において、
前記第1ゲート絶縁膜の膜厚は、前記第2ゲート絶縁膜の膜厚よりも厚い、半導体装置。
【0103】
(付記7)
付記4に記載の半導体装置において、
前記第1ゲート電極のゲート長は、前記第2ゲート電極のゲート長よりも長い、半導体装置。
【0104】
(付記8)
付記4に記載の半導体装置において、
前記第1ゲート電極を構成する第1導体膜は、前記第2ゲート電極を構成する第2導体膜と構成材料が異なる、半導体装置。