【実施例】
【0104】
本発明を、以下の非限定例によって例示する。
【0105】
(実施例1)
ヒト化標的化ドメインを有するROR1特異的CAR改変ヒトCD8
+及びCD4
+ T細胞の調製及び機能的試験
材料及び方法:
ヒト対象
Institutional Review Board of the University of Wurzburg (Universitatsklinikum Wurzburg、UKW)によって認可された研究プロトコールに参加するためのインフォームドコンセント文書を提供した健康なドナーから、血液試料を取得した。Ficoll-Hypaque (Sigma社、St.Louis、MO)上での遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0106】
細胞株
293T、K562、MDA-MB-231及びA549細胞株を、American Type Culture Collectionから取得した。K562-ROR1を、完全長ROR1遺伝子を用いるレンチウイルス形質導入によって生成した。ルシフェラーゼ発現株を、蛍(P.pyralis)ルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子を用いる上記細胞株のレンチウイルス形質導入によって誘導した。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDulbecco改変Eagle培地中で培養した。
【0107】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞株を、1つ又は複数の以下のコンジュゲート化mAb:CD3、CD4、CD8及び一致したアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。形質導入されたT細胞株を、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ)及びストレプトアビジン-PE (BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。7-AAD (BD Biosciences社)による染色を、生細胞/死細胞識別のために、製造業者により指示されたように実施した。フロー分析を、FACSCanto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0108】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、及びCAR-T細胞の生成
短い、又は長いスペーサー及び4-1BB共刺激ドメインを有するROR1特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されており、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[35]を参照されたい。全てのCAR構築物は、CARの下流に、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt;tEGFRとしても知られる)をコードしていた。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[36]を参照されたい。遺伝子を、T2Aリボソームスキップエレメントによって連結した。
【0109】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルス上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して、それぞれのレンチウイルスベクタープラスミド並びにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを同時トランスフェクトされた293T細胞中で産生させた。トランスフェクションの16時間後、培地を交換し、72時間後にレンチウイルスを収集した。CAR-T細胞を、記載のように[35]生成した。簡単に述べると、CD8
+又はCD4
+バルクT細胞を、健康なドナーのPBMCから選別し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)で活性化し、レンチウイルス上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入を、スピノキュレーションによって2日目に実施し、10%ヒト血清、GlutaminMAX(Life Technologies社)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mL IL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を増殖させた。トリパンブルー染色を実施して、生きたT細胞を定量化した。拡大後、EGFRt
+ T細胞を富化し、CD3特異的Okt3抗体並びに照射された同種異系PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を用いるポリクローナル刺激によって拡大した。
【0110】
細胞傷害性、サイトカイン分泌、及びCFSE増殖アッセイ
蛍ルシフェラーゼを安定に発現する標的細胞を、様々なエフェクター:標的(E:T)比でエフェクターT細胞と共に、5×10
3細胞/ウェルで3組、インキュベートした。4時間のインキュベーションの後、ルシフェリン基質を同時培養物に添加し、標的細胞のみと比較した、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中での発光シグナルの減少を、ルミノメーター(Tecan社)を使用して測定した。標準的な式を使用して特異的溶解を算出した。サイトカイン分泌の分析のために、5×10
4個のT細胞を、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種し、IFN-γ、TNF-α及びIL-2を、24時間のインキュベーション後に取り出された上清中で、ELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖の分析のために、5×10
4個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社)で標識し、洗浄し、外因性サイトカインを含まないCTL培地中、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を抗CD3又は抗CD4又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、分析から死細胞を除外した。試料をフローサイトメトリーによって分析し、生きたT細胞の細胞分裂をCFSE希釈液によって評価した。分裂指数を、FlowJoソフトウェアを使用して算出した。
【0111】
結果
ヒト化ROR1 CAR T細胞の生成、検出及び富化
健康なドナーに由来するPBMCを、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、バルクCD4
+又はCD8
+ヒトT細胞を、MACSを使用してこの細胞集団から抽出した。単離の直後、T細胞を、CD3/28 Dynabeadsで2日間活性化した後、5の感染多重度(MOI)で非ヒト化又はヒト化バージョンのROR1特異的CARをコードするレンチウイルスベクターを用いるスピノキュレーションによって形質導入した。形質導入の4日後にDynabeadsを除去し、10日目に、ビオチン化モノクローナルαEGFR抗体を用いる標識化及び抗ビオチンマイクロビーズを用いるMACSにより、EGFRt陽性細胞についてT細胞を富化した。富化の後、EGFRt陽性画分は、通常はわずかにより低いパーセンテージのEGFRt陽性細胞を示したhR11 CARを除いて、再現性よく、総細胞の90%を超えて占めていた(
図4A及び
図4B)。
【0112】
ヒト化ROR1 CAR T細胞の細胞溶解活性
CAR T細胞を上記のように生成し、それらの細胞溶解活性を、ROR1陽性及びffluc発現標的細胞株K562-ROR1、MDA-MB-231及びA549に対する6時間の細胞傷害性アッセイにおいて評価した(
図5A)。ROR1陰性K562対照に対する特異的溶解は検出されなかった。h2A2及びhR12 CARを発現するT細胞は、用量依存的である高い程度の標的細胞溶解と共に非常に強力な抗腫瘍効果を示し、より高いE:T比はより高いパーセンテージの標的細胞溶解を引き起こした。CARではなく、EGFRt形質導入マーカーをコードするベクター対照を形質導入されたT細胞株は、標的細胞のいずれかの溶解を引き起こさなかった。これは、CAR自体が標的細胞溶解を誘導したこと、及びまた、原理的には、内在性TCRによる同種認識に起因して起こり得るCAR非依存的標的細胞溶解が、本発明者等の実験において検出可能ではなかったことを示している。h2A2及びhR12 CARとは対照的に、hR11 CARは、その細胞溶解活性が顕著に損なわれ、6時間のアッセイにおいて検出可能な溶解を示さなかった。注目すべきことに、インキュベーション時間を、例えば、24時間まで増加させた場合、それは検出可能かつ特異的な標的細胞溶解を引き起こした。
【0113】
n=3の関連しない健康なドナーから生成されたCAR T細胞並びにROR1陽性標的細胞K562-ROR1及びMDA-MB-231を用いる同じ条件下で、細胞傷害性アッセイを繰り返した(
図5B)。全てのドナーについて、h2A2及びhR12 CARについて観察された溶解は、一貫して強力であったが、hR11 CARによって媒介された溶解は、6時間のインキュベーション時間後にかろうじて検出可能であった。
【0114】
hROR1 CAR T細胞のROR1特異的活性化後のエフェクターサイトカイン分泌
CD4
+又はCD8
+ CAR T細胞を、上記のように生成し、4:1のE:T比で24時間、致死的に照射されたROR1発現標的細胞株と共に同時培養した。インキュベーション後、細胞培養上清を収集し、ELISAによりエフェクターサイトカインIL-2及びIFN-γの存在について分析した。対照として、細胞を、ROR1陰性K562細胞と共に、又は標的細胞の非存在下で培養した(培地対照)。目的のエフェクターサイトカインを産生するCAR T細胞の一般的能力を制御するために、細胞を、タンパク質キナーゼC(PKC)/NF-κB活性化因子であるホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)と、Ca2
+イオノフォアであるイオノマイシンとの組合せでポリクローナル的に刺激した。アッセイ手順を、最大でn=3の関連しない健康なT細胞ドナーについて繰り返し、測定されたサイトカイン濃度を、グループ分析のために使用した。
【0115】
ヒト化2A2 CARは、そのサイトカインプロファイルが非ヒト化2A2 CARと同等であることを示した(
図6A)。IFN-γは、ROR1陽性標的又はPMA/Ionoを含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+とCD8
+ CAR T細胞の両方について1000〜1500pg/mlの範囲にあった。IL-2もまた、ROR1陽性標的細胞を含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+とCD8
+ CAR T細胞について500〜1000pg/mlの範囲にあった。驚くべきことに、h2A2 CAR T細胞のIL-2分泌は、K562-ROR1標的に関する非ヒト化バリアントと比較して上昇した。
【0116】
ヒト化R11 CARは、非ヒト化R11 CARと比較して減じられたサイトカイン分泌を示した(
図6B)。IFN-γ及びIL-2の濃度は、ROR1陽性標的細胞の存在下であっても、hR11 CARについてはバックグラウンドレベルであったが、非ヒト化R11 CARについては、CD4
+T細胞については1000pg/mlの範囲及びCD8
+T細胞については1800pg/mlのIFN-γの平均濃度並びに500〜1000pg/mlの範囲の平均IL-2濃度が検出された。非ヒト化又はヒト化R11 CARを発現するCAR T細胞は両方とも、PMA/Ionoを用いる抗原非特異的刺激に応答してIFN-γ及びIL-2を産生する一般的能力を保持していた。
【0117】
ヒト化R12 CARは、非ヒト化R12 CARと同等であるサイトカインプロファイルを示した(
図6C)。IFN-γは、ROR1陽性標的又はPMA/Ionoを含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+とCD8
+ CAR T細胞の両方について1000〜1500pg/mlの範囲にあった。IL-2も、ROR1陽性標的細胞を含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+については400pg/ml及びCD8
+ CAR T細胞については500〜800pg/mlの範囲にあった。
【0118】
総合すると、これらの結果は、h2A2及びhR12 CARの標的化ドメインのヒト化が、ROR1陽性標的細胞の遭遇後にエフェクターサイトカインIFN-γ及びIL-2を分泌するこれらのCARを発現するCD4
+及びCD8
+ヒトT細胞の能力を低下させなかったことを示している。検出されたサイトカインレベルは、非ヒト化CARと同等であり、一例では、非ヒト化CARよりも高かった。hR11 CARは、対照的に、T細胞が、両サイトカインの分泌に関する一般的能力を保持するとしても、ROR1陽性標的細胞に対する応答としてエフェクターサイトカインの検出可能な分泌を媒介しなかったが、これはhR11標的化ドメインのヒト化が観察された機能の喪失の原因となることを示唆している。これらのデータは、CDR移植によって生成されたCARにおけるヒト化結合ドメインの使用及びヒト化抗ROR1抗体の親和性を少しだけ減少させること(参考文献[31]を参照されたい)が、非ヒト化親結合ドメインを含むCAR T細胞と比較して、前記ヒト化結合ドメインを含むCAR T細胞の機能を予測することができないという事実の証拠である。
【0119】
ヒト化ROR1 CAR T細胞の増殖
CD4
+又はCD8
+ CAR T細胞を、記載のように生成し、CFSEで標識し、外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞株と同時培養した。インキュベーション時間の後、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCFSE希釈液について分析した。陰性対照として、CAR T細胞を、ROR1陰性K562細胞と共に、陽性対照として、50UI/mlのIL-2の存在下で同時培養した。
【0120】
ROR1陰性K562は、CAR構築物のいずれかを発現するT細胞の増殖を引き起こさなかった。EGFRt形質導入マーカーをコードするが、CAR配列を欠くベクター構築物を発現するT細胞は、バックグラウンド増殖を超える標的細胞のいずれかに応答する増殖を示さなかった(
図7A〜
図7D)。これは、ROR1 CAR-T細胞の検出された増殖は、ROR1発現細胞による刺激に対する応答として、CARによって特異的に媒介されたことを示している。
【0121】
驚くべきことに、上記で決定された、類似するサイトカイン分泌プロファイルにも拘わらず、ヒト化2A2 CARを発現するT細胞は、ROR1陽性標的細胞に応答して、非ヒト化2A2 CARを発現するT細胞よりも有意に強力に増殖した(
図7A)。標的細胞株に応じて、CD4
+h2A2 CAR T細胞の分裂指数は、非ヒト化2A2 ROR1 CARと比較して、一貫して2〜3倍高かった(
図7B)。ヒト化2A2 CARを発現するT細胞は、非ヒト化2A2 CARを発現するT細胞よりも高い細胞分裂回数を経た(
図7C)。MDA-MB-231標的細胞を含むh2A2 CAR T細胞の60%が、3回以上の細胞分裂周期を経由し、非ヒト化2A2 CARについては、この画分は20%であった。同様に、K562-ROR1標的細胞を含むh2A2 CAR T細胞の51%が、3回以上の細胞分裂周期を経由し、非ヒト化2A2 CARについては、この画分は18%であった。以前の観察と一致して、A549標的細胞を含むh2A2 CAR T細胞の18%が、3回以上の細胞分裂周期を経由し、非ヒト化2A2 CARについては、この画分は5%であった。
【0122】
ヒト化R11を発現するT細胞は、非ヒト化R11 CARを発現するT細胞よりも弱い増殖を示したが、その増殖は明らかにバックグラウンドレベルよりは上であった(
図7A)。標的細胞に応じて、分裂指数は1.5〜3.5の係数で減少した。
【0123】
ヒト化R12 CARを発現するT細胞の増殖は特異的であり、非ヒト化バリアントを発現するT細胞と全体として同等であった。MDA-MB-231に対する非ヒト化バリアントの応答と比較して、ヒト化R12 CARを発現するT細胞について、有意により高い増殖レベルが検出された。増殖指数は、非ヒト化R12 CARバリアントと比較して約2倍高かった。3回以上の細胞分裂を経たT細胞のパーセンテージは、ヒト化R12 CARについては37%であり、非ヒト化R12 CARについては20%であった。
【0124】
総合すると、これらの結果は、2A2及びR12 CARのヒト化バリアントが、非ヒト化バリアントよりも実質的に高いレベルで抗原遭遇に応答してT細胞増殖を活性化することができることを示している。他方、ヒト化R11は、増殖能力の顕著な低下を示し、増殖レベルは、非ヒト化R11 CARと比較して顕著に低下した。
【0125】
(実施例2)
ヒト化ROR1 CARによるROR1-タンパク質の結合
材料及び方法
ヒト対象
Institutional Review Board of the University of Wurzburg (Universitatsklinikum Wurzburg、UKW)によって認可された研究プロトコールに参加するためのインフォームドコンセント文書を提供した健康なドナーから、血液試料を取得した。Ficoll-Hypaque (Sigma社、St.Louis、MO)上での遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0126】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞株を、1つ又は複数の以下のコンジュゲート化mAb:CD3、CD4、CD8及び一致したアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。形質導入されたT細胞株を、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ)及びストレプトアビジン-PE (BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。7-AAD (BD Biosciences社)による染色を、生細胞/死細胞識別のために、製造業者により指示されたように実施した。フロー分析を、FACSCanto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0127】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、及びCAR-T細胞の生成
短い、又は長いスペーサー及び4-1BB共刺激ドメインを有するROR1特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されており、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[35]を参照されたい。全てのCAR構築物は、CARの下流に、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt;tEGFRとしても知られる)をコードしていた。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[36]を参照されたい。遺伝子を、T2Aリボソームスキップエレメントによって連結した。
【0128】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルス上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して、それぞれのレンチウイルスベクタープラスミド並びにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを同時トランスフェクトされた293T細胞中で産生させた。トランスフェクションの16時間後、培地を交換し、72時間後にレンチウイルスを収集した。CAR-T細胞を、記載のように[35]生成した。簡単に述べると、CD8
+又はCD4
+バルクT細胞を、健康なドナーのPBMCから選別し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)で活性化し、レンチウイルス上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入を、スピノキュレーションによって2日目に実施し、10%ヒト血清、GlutaminMAX(ThermoFisher Scientific 社、MA)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mL IL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を増殖させた。トリパンブルー染色を実施して、生きたT細胞を定量化した。拡大後、EGFRt
+ T細胞を富化し、CD3特異的Okt3抗体並びに照射された同種異系PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を用いるポリクローナル刺激によって拡大した。
【0129】
ROR1の結合
組換え凝集ROR1タンパク質を、AlexaFluor647標識キット(ThermoFisher Scientific社、MA)で標識し、これを使用して、ROR1 CARを発現するT細胞を染色した。T細胞をPBS、0.25%FCS中で1回洗浄した後、最終濃度5.3μg/mlの標識されたROR1タンパク質及びモノクローナルαEGFRt抗体を含有する同じバッファー中に再懸濁した。15分のインキュベーション時間後、細胞を過剰のPBS、0.25%FCSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0130】
結果:
その非ヒト化対応物と比較して、ヒト化2A2及びR12 ROR1 CARは、ROR1タンパク質への有意により強い結合を示した(
図8)。より高い全体的なパーセンテージのROR1タンパク質結合が検出されたが、これは、ヒト化CARのより良好な表面利用性及び/又は結合能力を示唆している。異なるAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化2A2 CARについては62.7%であり、ヒト化2A2 CARについては92.1%であった。同様に、異なるAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化R12 CARについては47.6%であり、ヒト化R12 CARについては79.0%であった。
【0131】
更に、強力なROR1結合を示したCAR T細胞のパーセンテージは、ヒト化2A2及びR12 CARについては増大し、結果として、これらの試料について、より低い頻度の弱いROR1結合が検出された。高いAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化2A2 CARについては2.61%であり、ヒト化2A2 CARについては20.0%であった。同様に、高いAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化R12 CARについては0.7%であり、ヒト化R12 CARについては7.68%であった。これは、ROR1タンパク質に強く結合するT細胞数の大まかに10倍の増加に相当する。
【0132】
ヒト化R11は、非ヒト化R11 CARについての97.9%と比較して、AlexaFluor647陽性T細胞の4.98%の低い全体的なROR1タンパク質結合を示した。同様に、高いAlexaFluor647シグナルを示すT細胞の頻度は、ヒト化R11については0.019%であり、非ヒト化バリアントについては66.5%であった。
【0133】
まとめると、これらのデータは、ヒト化バージョンの2A2及びR12 CARが、非ヒト化バージョンよりも強いROR1抗原への結合を有することを示している。それは予想外であったが、実施例1について実施したアッセイの部分における上昇した活性の説明を提供することができる。
【0134】
(実施例3)
ヒト化ROR1 CARを発現するCAR-T細胞を用いる養子免疫治療後のNOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにおけるヒトJeko-1マントル細胞リンパ腫の退縮
材料及び方法:
ヒト対象
Institutional Review Board of the University of Wurzburg (Universitatsklinikum Wurzburg、UKW)によって認可された研究プロトコールに参加するためのインフォームドコンセント文書を提供した健康なドナーから、血液試料を取得した。Ficoll-Hypaque (Sigma社、St.Louis、MO)上での遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0135】
細胞株
Jeko-1(野生型)、293T、K562、MDA-MB-231及びA549細胞株を、American Type Culture Collectionから取得した。K562-ROR1を、完全長ROR1遺伝子を用いるレンチウイルス形質導入によって生成した。ルシフェラーゼ発現株を、蛍(P.pyralis)ルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子を用いる上記細胞株のレンチウイルス形質導入によって誘導した。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDulbecco改変Eagle培地中で培養した。
【0136】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞株を、1つ又は複数の以下のコンジュゲート化mAb:CD3、CD4、CD8及び一致したアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。形質導入されたT細胞株を、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ)及びストレプトアビジン-PE (BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。7-AAD (BD Biosciences社)による染色を、生細胞/死細胞識別のために、製造業者により指示されたように実施した。フロー分析を、FACSCanto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0137】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、並びにCAR-T細胞及びJeko-1/ffluc細胞の生成
短い、又は長いスペーサー及び4-1BB共刺激ドメインを有するROR1特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されており、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[35]を参照されたい。全てのCAR構築物は、CARの下流に、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt;tEGFRとしても知られる)をコードしていた。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[36]を参照されたい。遺伝子を、T2Aリボソームスキップエレメントによって連結した。
【0138】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルス上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して、それぞれのレンチウイルスベクタープラスミド並びにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを同時トランスフェクトされた293T細胞中で産生させた。トランスフェクションの16時間後、培地を交換し、72時間後にレンチウイルスを収集した。CAR-T細胞を、記載のように[35]生成した。簡単に述べると、CD8
+又はCD4
+バルクT細胞を、健康なドナーのPBMCから選別し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)で活性化し、レンチウイルス上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入を、スピノキュレーションによって2日目に実施し、10%ヒト血清、GlutaminMAX(Life Technologies社)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mL IL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を増殖させた。トリパンブルー染色を実施して、生きたT細胞を定量化した。拡大後、EGFRt
+ T細胞を富化し、CD3特異的Okt3抗体並びに照射された同種異系PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を用いるポリクローナル刺激によって拡大した。Jeko-1/ffluc細胞を、ffluc/eGFPをコードするレンチウイルスを用いるレンチウイルス形質導入によって生成した。
【0139】
細胞傷害性、サイトカイン分泌、及びCFSE増殖アッセイ
蛍ルシフェラーゼを安定に発現する標的細胞を、様々なエフェクター:標的(E:T)比でエフェクターT細胞と共に、5×10
3細胞/ウェルで3組、インキュベートした。4時間のインキュベーションの後、ルシフェリン基質を同時培養物に添加し、標的細胞のみと比較した、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中での発光シグナルの減少を、ルミノメーター(Tecan社)を使用して測定した。標準的な式を使用して特異的溶解を算出した。サイトカイン分泌の分析のために、5×10
4個のT細胞を、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種し、IFN-γ、TNF-α及びIL-2を、24時間のインキュベーション後に取り出された上清中で、ELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖の分析のために、5×10
4個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社)で標識し、洗浄し、外因性サイトカインを含まないCTL培地中、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を抗CD3又は抗CD4又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、分析から死細胞を除外した。試料をフローサイトメトリーによって分析し、生きたT細胞の細胞分裂をCFSE希釈液によって評価した。分裂指数を、FlowJoソフトウェアを使用して算出した。
【0140】
NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにおける実験
動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)は、全てのマウス実験を認可した。6〜8週齢のメスのNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ (NSG)マウスを、Jackson Laboratoryから取得したか、又は社内で飼育した。マウスに、尾静脈を介して0.5×10
6個のJeko-1/ffluc腫瘍細胞を注射し、その後、h2A2又はhR12 ROR1 CAR細胞の尾静脈注射を投与した。両方のROR1 CAR T細胞株(h2A2及びhR12)が、形質導入マーカーEGFRtを発現した。対照T細胞は、EGFRt形質導入マーカーのみを発現した。
【0141】
腫瘍増殖の生物発光イメージングのために、マウスは、PBS中に再懸濁されたルシフェリン基質(Caliper Life Sciences社)の腹腔内注射(15μg/g体重)を受けた。マウスを、イソフルランで麻酔し、1秒〜1分の獲得時間で小ビニングモードでルシフェリン注射の10分後にXenogen IVIS Imaging System (Caliper社)を使用して画像化して、不飽和画像を取得した。ルシフェラーゼ活性を、Living Image Software (Caliper社)を使用して分析した。光子束(放射輝度)を、それぞれ個々のマウスの全身を包含する目的の領域内で測定した。
【0142】
結果:
ヒト化ROR1 CARのin vivo活性を評価するために、本発明者等は、免疫欠損NSGマウスのコホート(n=5)に、尾静脈注射により、ヒトのROR1を発現するマントル細胞リンパ腫株Jeko-1/fflucを接種した。21日後、腫瘍が播種された時、マウスを、単回静脈内用量のhR12又はh2A2 ROR1 CAR T細胞で処置した。対照マウスを、EGFRt対照ベクターのみを発現するT細胞で処置したか、又は未処置のまま放置した。
【0143】
本発明者等は、hR12及びh2A2 ROR1 CAR-T細胞で処置した全てのマウスにおいて、急速な腫瘍退縮及び生存の改善を観察した(応答率100%)。
図9Aは、ベースライン放射輝度からの変化率としての、T細胞導入の7日後の腫瘍退縮を示す。ベースラインを、21日目での処置の前に各マウスについて測定した。ヒト化ROR1 CARで処置されたマウスとは対照的に、未処置のまま放置したか、又はEGFRt対照ベクターを発現するT細胞で処置された対照群は、全てのマウスにおいて継続的な腫瘍増殖を示した(応答率0%)。CAR T細胞処置の7日後の平均放射輝度は、hR12については2
*10
4p/sec/cm
2/srであり、h2A2については1
*10
5であった。対照群の平均放射輝度は、未処置のマウスについては6
*10
6であり、EGFRtのみのベクター対照で処置されたマウスについては1
*10
6であった。
【0144】
ヒト化ROR1 CAR T細胞は、マウスにおいて生着及び持続し、実験の終わりまでマウスの脾臓及び骨髄で検出可能であった。
図9Bは、56日目でのhR12コホートに由来する1匹のマウス及びh2A2コホートの1匹のマウスの骨髄試料に由来する代表的なフローサイトメトリーデータを示す。CD4及びCD8 T細胞が検出可能であり、ヒト化ROR1 CARを発現していた。本発明者等は、臓器試料中のヒト化ROR1 CAR T細胞の存在を確認した;総細胞中のヒト化ROR1 CAR T細胞の割合は、個々のマウス間で変化したが、一般的には1〜10%の範囲であった。
【0145】
まとめると、これらのデータは、h2A2及びhR12 CARが、in vivoで強力かつ特異的な抗腫瘍活性を提供することを示している。