特許第6983910号(P6983910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山東丹紅制薬有限公司の特許一覧

特許6983910デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質
<>
  • 特許6983910-デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質 図000020
  • 特許6983910-デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質 図000021
  • 特許6983910-デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質 図000022
  • 特許6983910-デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質 図000023
  • 特許6983910-デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質 図000024
  • 特許6983910-デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983910
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】デゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質
(51)【国際特許分類】
   C07C 219/26 20060101AFI20211206BHJP
   A61K 31/135 20060101ALN20211206BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20211206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   C07C219/26CSP
   !A61K31/135
   !A61P25/04
   !A61P43/00 111
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-558686(P2019-558686)
(86)(22)【出願日】2018年6月29日
(65)【公表番号】特表2020-525401(P2020-525401A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】CN2018093721
(87)【国際公開番号】WO2019007285
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】201710532702.8
(32)【優先日】2017年7月3日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518236775
【氏名又は名称】山東丹紅制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG DANHONG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】張 揚
(72)【発明者】
【氏名】伍 文韜
(72)【発明者】
【氏名】李 志祥
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第90/000390(WO,A1)
【文献】 米国特許第04001331(US,A)
【文献】 Journal of Crystal and Molecular Structure,1981年,11(3-4),P.69-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 219/00
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物の結晶形であって、
【化2】
そのX線粉末回折スペクトルは2θ値が13.07°±0.2°、16.84°±0.2°及び18.51°±0.2°である特性ピークを含む結晶形。
【請求項2】
X線粉末回折スペクトルは2θ値が13.07°±0.2°、15.30°±0.2°、16.84°±0.2°、18.51°±0.2°、21.44°±0.2°、23.18°±0.2°、24.04°±0.2°及び26.20°±0.2°である特性ピークを含む請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
X線粉末回折スペクトルは、さらに、2θ値が12.415°、14.723°、15.061°、20.273°、22.033°、23.016°、27.914°である特性ピークを含む請求項2に記載の結晶形。
【請求項4】
前記結晶形のDSC曲線は73.71℃±3℃と245.82℃±3℃における2つの吸熱ピークを含む請求項1に記載の結晶形。
【請求項5】
前記結晶形のTGA曲線は120.00℃±3℃の時に、重量が5.812%減少し、200.12℃±3℃の時に、重量が6.5748%減少する請求項1に記載の結晶形。
【請求項6】
式(II)で表される化合物の非晶質
【化3】
【請求項7】
前記非晶質のMDSC曲線は79.07℃±3℃にガラス転移を生じる請求項に記載の非晶質。
【請求項8】
前記非晶質のTGA曲線は120.00℃の時に、重量が4.270%減少し、199.60℃±3℃の時に、重量が5.1553%減少する請求項に記載の非晶質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、2017年07月03日に提出された中国特許出願であるCN201710532702.8の優先権を主張し、その内容を本出願に組み込む。
本発明はデゾシン類似体塩酸塩の結晶形及び非晶質に関し、具体的には、式(I)で表される化合物の結晶形及び式(II)で表される化合物の非晶質に関する。
【背景技術】
【0002】
デゾシンは、化学名が(-)-[5R-(5α,11α,13S*)]-13-アミノ-5,6,7,8,9,10,11,12-オクタヒドロ-5-メチル-5,11-メタノベンゾシクロデセン-3-オールであり、典型的なオピオイド系鎮痛薬に属し、スウェーデンのAstra社により開発された。このような薬物はオピオイド受容体を刺激することによって役割を果たす。デゾシンは鎮痛作用がペンタゾシンより強くκ受容体作動薬であり、μ受容体拮抗薬でもある。デゾシンは嗜癖性が小さく、手術後の中程度から重度の痛み、内臓痛及び末期がん患者の痛みの治療に適用される。デゾシンは良い耐性と安全性を備えるため、将来性のあるオピオイド系鎮痛薬になることが期待される。
デゾシンの構造は下記の通りである:
【0003】
【化1】
【0004】
薬物活性成分の異なる固体形態は異なる性質を有する可能性がある。異なる固体形態の性質の変化により改良された処方を提供でき、例えば、合成や処理しやすく、安定性を高めるとともに有効期間を延長する。異なる固体形態による性質の変化は最終の剤形を改善することもできる。薬物活性成分の異なる固体形態はさらに多結晶又は他の結晶形を生じることができ、これによって固体の活性薬物成分の性質変化を評価するチャンスをより多く提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の式(I)で表される化合物の結晶形及び(II)で表される化合物の非晶質は調製プロセスが簡単で、かつ比較的に安定し、光、熱、湿度に影響されにくく、製造しやすい。
【0006】
一方で、本発明は式(I)で表される化合物の結晶形を提供し、そのX線粉末回折スペクトルは2θ値が13.07°±0.2°、16.84°±0.2°及び18.51°±0.2°である特性ピークを含む。
【0007】
【化2】
【0008】
本発明のいくつかの態様には、式(I)で表される化合物の結晶形のX線粉末回折スペクトルは2θ値が13.07°±0.2°、15.30°±0.2°、16.84°±0.2°、18.51°±0.2°、21.44°±0.2°、23.18°±0.2°、24.04°±0.2°及び26.20°±0.2°である特性ピークを含む。
【0009】
本発明のいくつかの態様において、式(I)で表される化合物の結晶形のX線粉末回折スペクトルは図4のように示される。
【0010】
本発明のいくつかの態様において、式(I)で表される化合物の結晶形のX線粉末回折スペクトルは表1のように示される。
【0011】
【表1】
【0012】
本発明のいくつかの態様において、式(I)で表される化合物の結晶形のDSC曲線は73.71℃±3℃と245.82℃±3℃における2つの吸熱ピークを含む。
【0013】
本発明のいくつかの態様において、式(I)で表される化合物の結晶形のDSC曲線は図5のように示される。
【0014】
本発明のいくつかの態様において、式(I)で表される化合物の結晶形のTGA曲線は120.00℃±3℃の時に、重量が5.812%減少し、200.12℃±3℃の時に、重量が6.5748%減少する。
【0015】
本発明のいくつかの態様において、式(I)で表される化合物の結晶形のTGA曲線は図6のように示される。
【0016】
また一方で、式(II)で表される化合物の非晶質は下記の通りであり、
【0017】
【化3】
【0018】
そのX線粉末回折スペクトルが図1のように示される。
【0019】
本発明のいくつかの態様において、式(II)で表される化合物の非晶質のMDSC曲線は79.07℃±3℃にガラス転移を生じる。
【0020】
本発明のいくつかの態様において、式(II)で表される化合物の非晶質のMDSC曲線は図2のように示される。
【0021】
本発明のいくつかの態様において、式(II)で表される化合物のTGA曲線は120.00℃の時に、重量が4.270%減少し、199.60℃±3℃の時に、重量が5.1553%減少した。
【0022】
本発明のいくつかの態様において、式(II)で表される化合物のTGA曲線は図3のように示される。
【0023】
定義と説明
【0024】
別の説明がない限り、本出願に使用される下記の術語とフレーズは下記の意味を含む。一つの特定のフレーズ又は術語は特別な定義がない場合に、確定ではないもの又は明確ではないものと考えられるべきではなく、通常の意味に従って理解すべきである。本出願に商品名が現れる時に、それに対応する商品又はその活性成分を指す。
【0025】
本発明の中間体化合物は当業者に公知の各種の合成方法により調製されることができ、以下に挙げられる具体的な実施方式、他の化学合成方法との組み合わせによる実施方式及び当業者に公知の同等物による置換方式を含み、好ましい実施方式は本発明の実施例を含むが、本発明の実施例に限定されない。
【0026】
本発明の具体的な実施方式の化学反応は適切な溶剤中において行われ、前記溶剤は本発明の化学変化及びそれに必要な試薬と材料に適合しなければならない。本発明の化合物を得るために、場合によって当業者により既存の実施方式に基づいて合成工程や反応過程を修正又は選択する必要がある。
【0027】
以下、実施例によって本発明を具体的に述べるが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0028】
本発明に使用される全ての溶剤は市販されるもので、直ちに使用することができ、さらに精製する必要がない。
【0029】
本発明に使用される溶剤は市販により得ることができる。
【0030】
本発明には下記の略語が採用される。
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;BocO:Boc酸無水物;EDCI:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩;DMAP:4-ジメチルアミノピリジン。
【0031】
機器及び分析方法
【0032】
1.1 粉末X線回折(X-ray powder diffractometer、XRPD)
【0033】
機器型番:Bruker D8 advance X線回折計
テスト方法:およそ10〜20mgの試料をXRPD検出に用いる。
XRPDの詳細なパラメータは下記のとおりである:
光源:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
光源電圧:40kV、光源電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:4-40deg
ステップサイズ:0.02deg
ステップ時間:0.12秒
試料皿回転数:15rpm
【0034】
1.2 示差走査熱量法(Differential Scanning Calorimeter、DSC)
【0035】
機器型番:TA Q2000示差走査熱量計
【0036】
テスト方法:試料(〜1mg)をDSCのアルミパンに置いてテストを行い、50mL/min Nの条件で、昇温速度10℃/minで、試料を室温から300℃に加熱する。
【0037】
1.3 変調型示差走査熱量法(Modulated Differential Scanning calorimeter、MDSC)
【0038】
機器型番:TA Q2000示差走査熱量計
【0039】
テスト方法:試料(〜2mg)をDSCのアルミパンに置いてテストを行い、50mL/min Nの条件で、昇温速度2℃/min、振幅1℃、周期60sで、試料を0℃から200℃に加熱する。
【0040】
1.4 熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)
【0041】
機器型番:TA Q5000熱重量分析計
【0042】
テスト方法:試料(2〜5mg)をTGAの白金パンに置いてテストを行い、25mL/min Nの条件で、昇温速度10℃/minで、試料を室温から重量減少20%まで加熱する。
1.5 高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatograph、HPLC)
【0043】
機器型番:Agilent 1200高速液体クロマトグラフ
【0044】
分析方法は下記の通りである:
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】式(II)で表される化合物の非晶質のXRPDスペクトルを示す図。
図2】式(II)で表される化合物の非晶質のMDSCスペクトルを示す図。
図3】式(II)で表される化合物の非晶質のTGAスペクトルを示す図。
図4】式(I)で表される化合物の結晶形のXRPDスペクトルを示す図。
図5】式(I)で表される化合物の結晶形のDSCスペクトルを示す図。
図6】式(I)で表される化合物の結晶形のTGAスペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本出願には本発明が詳細に説明され、その具体的な実施方式も開示され、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、本発明の具体的な実施方式に様々な変更や改良を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0049】
調製に関する実施例
中間体1−3の調製:
【0050】
【化4】
【0051】
化合物I-1(100.0g,339.69mmol)と化合物I-2(133.8g,509.54mmol)を無水トルエン(1.0L)に溶解し、反応液を120℃に昇温した後に引き続き16時間撹拌した。熱時ろ過し、ろ過により得られた固体を再度500mLのトルエンに分散し、還流まで加熱し、熱時ろ過し、真空乾燥して化合物I-3を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接次の反応に用いられる。
H NMR(400MHz,CDOD):δ8.98-8.97(d,J=4.4Hz,1H),8.46(s,2H),8.32-8.27(m,2H),8.19-8.15(m,1H),7.99-7.98(m,1H),7.88-7.82(m,2H),6.67(s,1H),5.75-5.66(m,1H),5.47-5.42(m,1H),5.20-5.16(m,2H),5.05-5.02(m,1H),4.62-4.60(m,1H),4.08-4.05(m,1H),3.75-3.65(m,1H),3.52-3.46(m,1H),3.43-3.40(m,1H),2.76(brs,1H),2.34-2.26(m,2H),2.12(brs,1H),1.95-1.90(m,1H),1.49-1.44(m,1H);LCMS(ESI)m/z:521.1[M+1]+
【0052】
【化5】
【0053】
工程1:化合物1-2の調製
【0054】
化合物1-1(5.0kg,24.58mol)を無水ジクロロメタン(31.0L)に加え、一括で無水コハク酸(2.7kg,27.18mol)と塩化アルミニウム(6.7kg,50.32mol)を加え、反応液を20〜25℃で引き続き20時間撹拌した。反応液を60Lの氷水にゆっくり入れて撹拌するとともにクエンチし、1Lの濃塩酸を加え、引き続き5分間を撹拌し、大量の白い固体を生成した。ろ過し、ろ過ケーキを5Lの水で洗浄し、真空乾燥して化合物1-2を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.19-8.16(m,1H),6.69-6.66(d,J=12.4Hz,1H),3.98(s,3H),3.30-3.26(m,2H),2.82-2.79(m,2H)。LCMS(ESI)m/z:304.9[M+1]+
【0055】
工程2:化合物1-3の調製
【0056】
20℃で、化合物1-2(7.5kg,24.61mol)をトリフルオロ酢酸(8.9kg,78.52mol,5.81L)に加え、バッチでトリエチルシラン(8.8kg,76.06mol)をゆっくり加え、反応液を95℃に昇温した後に引き続き16時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、10Lの石油エーテルを加え、大量のピンク色の固体が析出した。ろ過し、ろ過ケーキを10Lの石油エーテルで洗浄し、真空乾燥して化合物1-3を得た。
H NMR(400MHz,CDOD):δ7.43-7.41(d,J=8.0Hz,1H),6.86-6.83(d,J=11.6Hz,1H),3.87(s,3H),2.65-2.61(t,J=7.6Hz,2H),2.34-2.30(t,J=7.6Hz,2H),1.91-1.83(m,2H)。LCMS(ESI)m/z:290.8[M+1]+
【0057】
工程3:化合物1-4の調製
【0058】
アルゴンガスの雰囲気で、化合物1-3(1.1kg,3.92mol)をメタノール(4.5L)に溶解し、得られた溶液に湿パラジウム炭素(80.0g,10%)を加え、水素ガスで3回置換し、反応液を2.5Mpa、50℃のオートクレーブにおいて引き続き48時間撹拌した。反応液の温度を低下させ、反応液をゆっくり取り出し、500mLの濃塩酸を加えて均一に撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを2Lのメタノールで洗浄した。合併後のろ液に対して50%の水酸化ナトリウム水溶液でpHを10〜11に調節した。有機溶剤を減圧除去し、4Lの酢酸エチルで2回抽出し、合併後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して粗化合物1-4を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接に次の反応に用いられる。
H NMR(400MHz,CDOD):δ7.10-7.05(m,1H),6.65-6.28(m,2H),3.80(s,3H),2.67-2.63(t,J=7.2Hz,2H),2.40-2.36(t,J=7.6Hz,2H),1.97-1.89(m,2H)。
【0059】
工程4:化合物1-5の調製
【0060】
15℃で、化合物1-4(596.0g,2.81mol)を無水ジクロロメタン(2.0L)に溶解し、2mLの無水DMFを加え、塩化オキサリル(427.8g,3.37mol、295.01mL)をゆっくり滴下し、この温度で反応液を引き続き0.5時間撹拌した。反応液における有機溶剤を減圧除去し、粗生成物に200mLの無水ジクロロメタンを加え、有機溶剤を減圧除去し、得られた粗生成物1-5は精製を経ず直接次の反応に用いられる。
【0061】
工程5:化合物1-6の調製
【0062】
25℃で、粗生成物1-5(202.0g,875.75mmol)を無水ジクロロメタン(4.0L)に溶解し、一括で粉末状の無水塩化アルミニウム(105.1g,788.17mmol)を加え、20℃で反応液を引き続き7分間撹拌した。反応液を撹拌された1Lの氷水に入れて、分液し、水相を1Lのジクロロメタンで1回抽出し、有機相を合併し、有機溶剤を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1(v:v))で分離、精製し、化合物1-6を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):δ7.37-7.36(d,J=2.4Hz,1H),6.85-6.82(m,1H),3.84(s,3H),2.90-2.87(t,J=6.4Hz,2H),2.68-2.65(t,J=6.4Hz,2H),2.17-2.11(m,2H)。
【0063】
工程6:化合物1-7の調製
【0064】
窒素ガスの保護下で、化合物1-6(1.0kg,5.15mol)を無水トルエン(4.0L)に溶解し、氷水浴の条件で臭化メチルマグネシウム(3M,2.1L,5.15mol)を滴下し、滴下中に内温が10℃を超えないように維持し、反応液を25℃までゆっくり昇温した後に引き続き16時間撹拌した。反応液を4Lの飽和塩化アンモニウム水溶液に入れて、分液し、水相を5Lの酢酸エチルで2回抽出し、合併後の有機相を3Lの飽和食塩水で1回洗浄し、有機溶剤を減圧除去し、化合物1-7を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接次の反応に用いられる。
H NMR(400MHz,CDCl):δ6.98-6.97(d,J=1.6Hz,1H),6.56-6.53(m,1H),3.87(s,3H),2.70-2.67(m,2H),1.99-1.80(m,4H),1.56(s,3H)。
【0065】
工程7:化合物1-8の調製
【0066】
25℃で、粗生成物1-7(1.8kg,8.75mol)をアセトニトリル(1.0L)に溶解し、6Nの塩酸(2.5L)を加え、反応液を引き続き16時間撹拌した。4Lの酢酸エチルを加え、分液し、水相を5Lの酢酸エチルで3回抽出し、合併後の有機相を3Lの飽和食塩水で洗浄し、有機溶剤を減圧除去し、粗生成物1-8を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接次の反応に用いられる。
H NMR(400MHz,CDCl):δ6.63-6.62(d,J=2.0Hz,1H),6.51-6.48(m,1H),5.93-5.90(m,1H),3.80(s,3H),2.73-2.69(t,J=8.0Hz,2H),2.25-2.22(m,2H),2.04-2.03(d,J=3.2Hz,3H)。
【0067】
工程8:化合物1-9の調製
【0068】
25℃で、化合物1-8(493.0g,2.56mol)をアセトン(2.0L)と水(2.0L)の混合溶剤に溶解し、炭酸水素ナトリウム(861.8g,10.26mol)を加え、バッチで過硫酸水素カリウム(1.0kg,1.67mol)をゆっくり加え、加える間に内温が30℃を超えないように制限し、この温度で反応液を引き続き1.5時間撹拌した。反応液に2Lの飽和亜硫酸ナトリウム水溶液をゆっくり加え、ヨウ化カリウムデンプン試験紙によって検出した結果青くならず、静置し、上澄み液を取り出し、固体を1.5Lのジクロロメタンで3回洗浄し、上澄み液とジクロロメタンを合併し、分液し、水相を6Lのジクロロメタンで抽出し、合併後の有機相を6Lの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮し、濃縮中にヨウ化カリウムデンプン試験紙によって検出した結果、いずれも青くならず、粗生成物1-9を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接次の反応に用いられる。
【0069】
工程9:化合物1-10の調製
【0070】
0℃で、粗化合物1-9(450.0g,2.16mol)を無水ジクロロメタン(3.0L)に溶解し、得られた溶液に三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体(30.7g,216.00mmol,26.67mL)の無水ジクロロメタン(100mL)溶液をゆっくり滴下し、反応液を引き続き30分間撹拌した。反応液を1.5Lの飽和炭酸ナトリウム溶液にゆっくり入れて、有機相を分離し、水相を1.5Lのジクロロメタンで2回抽出し、合併後の有機相を2Lの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、有機溶剤を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=15:1(v:v))で分離、精製し、化合物1-10を得た。
H NMR(400MHz,CDCl3):δ6.59-6.52(m,2H),3.79(s,3H),3.49-3.47(m,1H),3.14-3.10(m,1H),2.99-2.85(m,1H),2.58-2.48(m,2H),1.46-1.44(d,J=7.6Hz,3H)。
【0071】
工程10:化合物1-11の調製
【0072】
0℃で、化合物1-10(448.0g,2.15mol)と1、5-ジブロモペンタン(1.5kg,6.45mol)をトルエン(30.0L)とジクロロメタン(3.0L)の混合溶剤に溶解し、化合物I-3(119.8g,215.00mmol)を加え、窒素ガスの雰囲気で、50%の水酸化カリウム水溶液(3.0L)をゆっくり滴下し、反応液を15℃に昇温した後に引き続き20時間撹拌した。6Lの飽和食塩水を加え、分液し、水相を6Lの酢酸エチルで抽出し、合併後の有機相における有機溶剤を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1(v:v))で分離、精製し、化合物1-11を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):δ6.63-6.62(d,J=2.0Hz,1H),6.56-6.53(m,1H),3.81(s,3H),3.34-3.30(t,J=7.2Hz,2H),3.14-3.10(m,1H),2.95-2.85(m,1H),2.65-2.57(m,2H),2.23-2.08(m,1H),1.77-1.73(m,2H),1.70-1.58(m,1H),1.39(s,3H),1.34-1.30(m,2H),0.97-0.94(m,2H)。
【0073】
この化合物のee値は58.7%であり、RRTはそれぞれ1.782と1.954である。
【0074】
工程11:化合物1-12の調製
【0075】
0℃で、化合物11(1.1kg,3.05mol)をジメチルスルホキシド(7.0L)に溶解し、バッチでナトリウムtert-ブトキシド(351.8g,3.66mol)をゆっくり加え、且つ内温が30℃を超えないように維持し、引き続き30分間撹拌した。反応液を6Lの氷水にゆっくり入れ、6Lの酢酸エチルを加え、分液し、水相を20Lの酢酸エチルで抽出し、合併後の有機相を20Lの飽和食塩水で洗浄し、有機溶剤を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1(v:v))で分離、精製し、化合物1-12を得た。
【0076】
H NMR(400MHz,CDCl):δ6.54-6.53(d,J=2.0Hz,1H),6.47-6.43(m,1H),3.72(s,3H),3.02-2.98(m,1H),2.86-2.80(m,1H),2.70-2.68(m,1H),2.35-2.25(m,1H),1.81-1.78(m,1H),1.71-1.68(m,2H),1.52-1.47(m,4H),1.27(s,3H),1.26-1.23(m,2H)。
【0077】
工程12:化合物1-13の調製
【0078】
化合物1-12(882.0g,3.19mol)をエタノール(3.0L)に溶解し、得られた溶液にピリジン(2.5kg,31.92mol,2.58L)とヒドロキシルアミン塩酸塩(2.2kg,31.92mol)を加え、反応液を100℃に昇温した後に引き続き24時間撹拌した。反応液を6Lの酢酸エチルに入れて、4Lの水を加え、分液し、水相を4Lの酢酸エチルで2回抽出し、合併後の有機相を4Lの塩酸(4N)で洗浄し、そして4Lの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶剤を減圧除去し、粗生成物1-13を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接次の反応に用いられる。
H NMR(400MHz,CDCl3):δ6.57-6.56(d,J=1.6Hz,1H),6.44-6.39(m,1H),3.74-3.66(m,4H),2.88-2.84(m,1H),2.78-2.76(m,1H),2.21-2.20(m,1H),2.08-2.03(m,1H),1.56-1.48(m,6H),1.46(s,3H),1.45-1.40(m,2H)。
【0079】
工程13:化合物1-14の調製
【0080】
化合物1-13(404.0g,1.39mol)をメタノール(7.0L)に溶解し、アンモニア水(130.3g,929.02mmol,143.13mL)を加え、アルゴンガスの雰囲気でラネーニッケル(377.8g,2.20mol)を加え、水素ガスで3回置換し、反応液を3Mpaの水素ガス及び80〜85℃のオートクレーブにおいて引き続き72時間撹拌した。室温まで冷却し、アルゴンガスの雰囲気で、ろ過し、1Lのメタノールでろ過ケーキを洗浄し、有機溶剤を減圧除去し、粗生成物1-14を得た。この化合物はさらなる精製を経ず直接次の反応に用いられる。
H NMR(400MHz,CDCl3):δ6.57-6.56(d,J=1.6Hz,1H),6.44-6.39(m,1H),3.74-3.66(m,4H),2.88-2.84(m,1H),2.78-2.76(m,1H),2.21-2.20(m,1H),2.08-2.03(m,1H),1.56-1.48(m,6H),1.46(s,3H),1.45-1.40(m,2H)。
【0081】
工程14:化合物1-15の調製
【0082】
化合物1-14(756.0g,2.73mol)を酢酸エチル(750mL)とメタノール(2.3L)の混合溶液に溶解し、それにD-酒石酸(250.0g,1.67mol)を加え、反応液を80〜85℃に昇温した後に引き続き1時間撹拌し、白い固体を生成し、水(750mL)を加え、反応液を80〜85℃で引き続き2時間撹拌し、室温までゆっくり冷却し、24時間を静置した。ろ過し、ろ過ケーキを1Lの酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥し、化合物1-15の酒石酸塩を得た。
H NMR(400MHz,CDOD):δ6.67-6.66(m,1H),6.63-6.60(m,1H),4.40(s,2H),3.78(s,3H),3.68-3.65(m,1H),2.93-2.90(m,2H),2.56-2.54(m,1H),1.97-1.85(m,2H),1.78-1.70(m,2H),1.61-1.57(m,3H),1.49(s,3H),1.21-1.18(m,1H),0.90-0.84(m,2H)。LCMS(ESI)m/z:278.1[M+1]+
【0083】
この化合物のee値は99.1%であり、RRTはそれぞれ2.726と3.205である。
【0084】
工程15:化合物1-16の調製
【0085】
化合物1-15(162.0g,378.98mmol)を40%の臭化水素酸水溶液(710mL)に加え、反応液を120℃に昇温した後に引き続き72時間撹拌した。冷却し、ろ過し、ろ過ケーキを1.5Lの水で洗浄し、真空乾燥し、化合物1-16の臭化水素酸塩を得た。
H NMR(400MHz,CDOD):δ6.67-6.66(d,J=0.8Hz,1H),6.47-6.43(m,1H),3.69-3.67(m,1H),2.93-2.90(m,2H),2.57-2.55(m,1H),1.98-1.92(m,2H),1.79-1.59(m,5H),1.48(s,3H),1.24-1.21(m,1H),0.92-0.89(m,2H)。LCMS(ESI)m/z:264.0[M+1]+
【0086】
この化合物のee値は99.5%であり、RRTはそれぞれ3.228と3.966である。
【0087】
工程16:化合物1-17の調製
【0088】
化合物1-16(170.1g,494.05mmol)を無水テトラヒドロフラン(1200mL)に溶解し、トリエチルアミン(104.0mL,750.3mmol)を加え、(Boc)2O(108.2g,495.81mmol)をゆっくり滴下し、30℃で反応液を引き続き16時間撹拌した。反応液を2Lの水に入れ、800mLの酢酸エチルで抽出し、分液し、水相を800mLの酢酸エチルで2回抽出した。合併後の有機相を1Lの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶剤を減圧除去した。粗生成物を加熱し、1200mLのn-ヘプタンと酢酸エチル(5:1(v:v))の混合溶剤に分散し、一夜静置した後、ろ過し、ろ過ケーキを真空乾燥し、化合物1-17を得た。
H NMR(400MHz,CDOD):δ6.52-6.51(d,J=1.2Hz,1H),6.39-6.34(m,1H),4.04-4.00(m,1H),2.89-2.76(m,2H),2.30-2.29(m,1H),1.83-1.71(m,4H),1.58-1.51(m,12H),1.28-1.26(m,4H),0.96-0.90(m,2H)。LCMS(ESI)m/z:308.0[M-56+1]+
【0089】
工程17:化合物1-18の調製
【0090】
化合物1-17(155.1g,426.72mmol)を無水ジクロロメタン(2.0L)に加え、DMAP(26.1g,213.36mmol)、セバシン酸(43.2g,213.36mmol)とEDCI(106.3g,554.73mmol)を順に加え、30℃で反応液を引き続き16時間撹拌した。反応液を2Lの水に入れて、分液し、水相を850mLジクロロメタンで2回抽出した。合併後の有機相を1.5Lの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶剤を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1-3:1(v:v))で分離、精製し、化合物1-18を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):δ6.76(s,2H),6.71-6.69(m,2H),4.96-4.93(d,J=10.4Hz,2H),4.13-4.09(m,2H),2.96-2.85(m,4H),2.58-2.54(t,J=7.6Hz,1H),2.42(brs,2H),1.79-1.51(m,31H),1.49-1.28(m,21H),0.96-0.90(m,4H)。LCMS(ESI)m/z:893.6[M+1]+
【0091】
工程18:化合物1の調製
【0092】
化合物1-18(120.0g,134.39mmol)を酢酸エチル(410mL)に溶解し、一括で4Mの塩化水素の酢酸エチル溶液(500mL)を加え、ガスが発生しなくなるまで、室温で反応液を引き続き2時間撹拌した。窒素ガスの雰囲気でろ過し、ろ過ケーキを300mLの酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥し、化合物1の塩酸塩を得た。
1H NMR(400MHz,CDOD):δ6.83(s,2H),6.73-6.71(m,2H),4.03-4.00(m,2H),2.93-2.89(m,4H),2.52-2.49(m,6H),1.90-1.86(m,4H),1.69-1.63(m,8H),1.52-1.49(m,6H),1.41(s,6H),1.40-1.33(m,8H),1.18-1.12(m,2H),0.79-0.72(m,4H)。LCMS(ESI)m/z:693.5[M+1]+
化合物1-11と化合物1-15のキラル分析方法は下記の表4のように示される:
【0093】
【表4】
【0094】
化合物1-16のキラル分析方法は下記の表5のように示される:
【0095】
【表5】
【0096】
実施例2:式(II)で表される化合物の非晶質の試料の調製
適量の原料化合物1を取り、瑪瑙乳鉢に加えて60分間研磨することにより得られる。
XRPDの検出結果を図1に示し、MDSC及びTGAの検出結果を図2及び図3に示す。
【0097】
実施例3:式(I)で表される化合物の結晶形の試料の調製
【0098】
200mgの原料化合物1を取り、2.0mLのアセトニトリル-水混合溶剤(90:10,v:v)を加えた。37℃の条件で2日磁気撹拌し、遠心後に残存した固体試料を真空乾燥オーブンに置き、(35℃)3日乾燥した。
XRPDの検出結果を図4及び表1に示し、DSC及びTGAの検出結果を図5及び図6に示す。
【0099】
特性に関する実施例
【0100】
実施例1:固体安定性試験
【0101】
1.式(I)で表される化合物の結晶形の固体安定性試験
【0102】
《原薬と製剤の安定性実験の指導原則》(中国薬典2015版四部通則9001)に基づいて、化合物を高温(60℃、開放)、高湿(RT/92.5%RH、開放)、光照射(5000lx、密閉)の条件で5日、10日放置した場合の安定性を考察する。
【0103】
適量の式(I)で表される化合物の結晶形の試料を取り、ガラス製の試料ボトルの底部に置き、薄い層に広げた。高温及び高湿の条件で放置された試料に対してアルミホイル紙でボトル口部を封止するとともに、アルミホイル紙に小さい孔を穿設し、これにより試料が外気に十分に接触することを確保でき、光照射(5000lx)の条件で放置された試料に対してボトルキャップで封止するとともに、シーリングフィルムでさらに封止し、室温で密閉して放置し、5日目、及び10日目に試料を取り出し、XRPD検出を行った。検出結果を0日目の初期検出結果と比較し、その結果、試料の結晶形はいずれも変化しなかった。試験結果を下記の表6に示す。
【0104】
【表6】
【0105】
結果によると、この化合物の結晶形は高温、高湿と光照射の条件でいずれも安定し、変化しなかった。
【0106】
2.式(II)で表される化合物の非晶質の試料の固体安定性試験
【0107】
非晶質の試料の高温・高湿(40℃/相対湿度75.0%、密閉)・加速条件での安定性。
約1.4gの試料を秤量して2層のLDPE袋に詰め、各層のLDPE袋をそれぞれ封止し、その後LDPE袋と薬用乾燥剤をアルミ箔袋に入れてヒートシーリングし、高温・高湿条件で置き、30日目に試料を取り出して検出を行い、検出結果を0日目の初期検出結果と比較した。試験結果を下記の表7に示す。
【0108】
【表7】
【0109】
結果によると、この化合物の非晶質の固体は高温・高湿・密閉の条件で相対的に安定し、総不純物量に明らかな増加はなかった。
【0110】
3.式(II)で表される化合物の非晶質の試料の溶解度実験
【0111】
非晶質の試料のpH1.0/2.0(塩酸溶液)、pH3.8/4.5/5.5(酢酸塩緩衝液)、pH6.0/6.8/7.4(リン酸塩緩衝液)及び水における平衡溶解度を検出する。(中国薬典《通常の経口固体製剤の溶出度試験の技術指導原則》に基づいて調製)。
【0112】
9つの8mLガラスボトルを取り、それぞれに5mLの異なる媒体(pH1.0、pH2.0、pH3.8、pH4.5、pH5.5、pH6.0、pH6.8、pH7.4緩衝液、純水)を加え、適量の非晶質の試料をそれぞれ加え、懸濁液とした。マグネチックスターラーを前記試料に入れて、磁気攪拌装置に置いて撹拌する(温度:37℃)。
【0113】
24時間後、取り出した試料を遠心し、HPLCにより上層の試料の上澄み液の濃度とpH値を測定する(結果を表8に示す)。
【0114】
【表8】
【0115】
結果によると、化合物の非晶質の固体は塩酸溶液、酢酸塩緩衝液及び水に溶解しやすく、リン酸塩緩衝液には微溶又は不溶である。
【0116】
4.式(II)で表される化合物の非晶質の試料の吸湿性試験
【0117】
非晶質の試料の吸湿性を検出する。(中国薬典2015年版四部通則の方法に基づいて化合物に対して吸湿性測定を行う)。
【0118】
3つの乾燥の栓付きガラス計量ボトルを取り、重量を量り、m11、m12、m13と記るす。適量の原薬試料を取り、重量が量られた計量ボトル(試料の厚さが約1mm)に敷き、その後重量を精密に量り、m21、m22、m23と記する。計量ボトルを開放して放置し、且つボトルキャップとともに下部に塩化アンモニウム飽和溶液がある乾燥器に置き、乾燥器のキャップを閉め、その後乾燥器を25℃の恒温オーブンに置き、24時間放置した。24時間放置した後、計量ボトルのキャップを閉め、その後取り出して重量を精密に量り、m31、m32、m33と記るす。吸湿性による重量増加を計算し、計算式は下記の通りである:重量増加百分率=100%×(m-m)/(m-m)。(吸湿性結果を表9に示す)。
【0119】
【表9】
【0120】
実験の結論:吸湿性テストの結果によると、非晶質の試料の吸湿による重量増加は平均で5.24%であり、15%未満だが2%より大きく、この化合物は吸湿性を有する。
【0121】
薬物代謝実験
【0122】
実験目的:
ラット体内で薬物代謝実験を行うことによって、体内における化合物のCmax、t1/2、AUC、MRT及びB/P ratioなどの数値を指標として、ラット体内の化合物の代謝状況を評価する。
【0123】
1.ラットの筋肉に親化合物A及びそのプロドラッグB(具体的な構造は式Aと式Bのように示される)を注射する薬物代謝動態学研究
【0124】
テスト用の化合物と適量のゴマ油を混合し、ボルテックスするとともに超音波処理を行い、25μmol/mLの均一の懸濁液を得た。6歳から9歳までのSDラット(Shanghai SLAC Laboratory Animal Co.,Ltd)を選定し、その筋肉にテスト用の化合物の懸濁液を20μmol/kg又は40μmol/kg注射する。一定時間の全血を集め、沈殿剤(アセトニトリル、メタノール及び分析用の内部標準物質)を加えて遠心する。上澄み液に対してLC-MS/MS方法により薬物濃度を分析 (テスト用の薬物がプロドラッグである場合、プロドラッグと加水分解後の親薬物の濃度を同時に分析)するとともに、Phoenix WinNonlinソフトウェア(米国Pharsight社)により薬物代謝パラメーターを計算する。
【0125】
【化6】
【0126】
【表10】
【0127】
注釈:すべての化合物の投薬量はいずれも20μmol/kgである。理論的には、20μmol毎のジカルボン酸エステルのプロドラッグは40μmolの化合物21の有効成分に加水分解することができる。
【0128】
ND=確定できない(末端排出相を十分に定義できないため、パラメーターを確定できない)
【0129】
化合物Aは化合物1-16が塩になる前の遊離アルカリ
【0130】
化合物Bは式(II)で表される化合物が塩になる前の遊離アルカリ
【0131】
筋肉注射による薬物代謝実験の結果によると、化合物Aのジカルボン酸エステルのプロドラッグのゴマ油懸濁液は注射により筋肉に投薬された後、体内でゆっくり分解した後、素早く親薬物である化合物Aに加水分解し、親薬物である化合物Aのラット体内における滞留時間を著しく延長するとともに、Cmaxを低下させることができ、これにより薬物の有効期間を延長する目的と安全性を向上する目的を達成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6