(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983915
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】後方プリクラッシュセーフティシステム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20211206BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20211206BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20211206BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20211206BHJP
B60W 40/107 20120101ALI20211206BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20211206BHJP
B60R 21/0134 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/095
B60W40/04
B60W40/105
B60W40/107
B60W50/14
B60R21/0134 312
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-569681(P2019-569681)
(86)(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公表番号】特表2020-523709(P2020-523709A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2017064316
(87)【国際公開番号】WO2018228666
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】519442818
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】アチェルボ グラディス
(72)【発明者】
【氏名】タケウチ コウジ
(72)【発明者】
【氏名】フクタ ジュンヤ
【審査官】
藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−227587(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/024316(WO,A1)
【文献】
特開2007−188349(JP,A)
【文献】
特開2016−151828(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0152803(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第105667441(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 〜 1/16
B60W 30/08 〜 30/095
B60W 40/02 〜 40/04
B60W 40/105 〜 40/107
B60W 50/14 〜 50/16
B60R 21/00 〜 21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両(SV)の後方プリクラッシュシステム(RPCS)であって、前記RPCSが、後方から前記対象車両(SV)に接近する目標車両(TV)によって反射された検出レーダー信号に応答してRPCS警報信号をトリガーするよう構成された判断ロジック(2)を備え、該判断ロジック(2)が、検出された特定の交通シナリオにおいて前記RPCS警報信号のトリガーを修正するよう構成され、
前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の距離が、距離閾値よりも小さく(D<DTH)、前記相対速度(VR)が相対速度閾値(VRTH)よりも小さい(VR<VRTH)場合、及び前記目標車両(TV)の加速度(aTV)が加速度閾値より小さい(aTV<aTH)場合には、前記判断ロジック(2)は前記RPCS警報信号を抑制するように構成されている、
ことを特徴とする後方プリクラッシュシステム(RPCS)。
【請求項2】
前記特定の交通シナリオが、
前記対象車両の速度(VSV)と、
前記目標車両の速度(VST)と、
前記対象車両と前記目標車両との間の相対速度(VR)と、
前記対象車両の加速度(aSV)と、
前記目標車両の加速度(aTV)と、
前記対象車両と前記目標車両との間の相対加速度(aR)と、
前記対象車両と前記目標車両との間の現在距離(D)と、
前記目標車両のコリドー占有率と、
を含む更なる測定パラメータに基づいて検出される、
請求項1に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項3】
前記判断ロジック(2)は、前記目標車両(TV)が前記対象車両(SV)と衝突する衝突までの時間(TTC)を計算するように構成されている、
請求項1または2に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項4】
前記判断ロジック(2)は、前記対象車両の速度がゼロ以下(VSV≦0)である場合の第1のモードにおいて、前記対象車両と前記目標車両との間の前記相対速度(VR)、前記相対加速度(aR)、及び前記対象車両と前記目標車両との間の前記現在距離(D)に応じて前記衝突までの時間(TTC)を計算するよう構成され、
前記判断ロジック(2)は更に、前記対象車両(SV)の速度がゼロよりも大きい(VSV>0)場合の第2のモードにおいて、前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の前記相対速度(VR)に応じて、及び前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の前記現在距離(D)に応じて前記衝突までの時間(TTC)を計算するよう構成されている、
請求項3に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項5】
前記判断ロジック(2)に接続された少なくとも1つのレーダーセンサデバイス(3)が、前記対象車両(SV)のリアバンパーに設けられ、後方から前記対象車両(SV)に接近している前記目標車両(TV)によって反射されたレーダー信号を検出するよう構成されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項6】
前記判断ロジック(2)に接続された左側レーダーセンサデバイスが、前記対象車両(SV)のリアバンパーの左側に設けられ、右側レーダーセンサデバイスが、前記対象車両(SV)のリアバンパーの右側に設けられ、前記左側及び右側レーダーセンサデバイスは、後方から前記対象車両(SV)に接近している前記目標車両(TV)によって反射されたレーダー信号を検出するため、重なり合う視野(FoV)を有する、
請求項5に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項7】
前記対象車両(SV)の当該車線のコリドー車線間のコリドーを占有する接近している前記目標車両(TV)のコリドー占有率が、調整可能なコリドー占有率閾値を超えた場合、前記判断ロジック(2)は、RPCS警報信号を送出するよう構成される、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項8】
前記目標車両(TV)のコリドー占有率は、前記対象車両(SV)のリアバンパーに設けられた前記左側レーダーセンサデバイス及び前記右側レーダーセンサデバイスによって検出された反射レーダー信号に応じて、前記判断ロジック(2)により監視される、
請求項5に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項9】
監視サイクルの所定数Nにおいて、前記目標車両(TV)の加速度が最後のサイクルの値から減少された(aTVi+i<aTVi)場合、及び前記対象車両(SV)の速度が閾値速度よりも小さく(VSV<VTH)、前記対象車両(SV)の加速度が、増大するか又は前の監視サイクルと同じまま(aSVi+i>aSVi)である場合、前記判断ロジック(2)は、前記RPCS警報信号を抑制するように構成されている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の後方プリクラッシュシステム。
【請求項10】
対象車両(SV)の後方プリクラッシュシステム(RPCS)(1)によってRPCS警報信号を提供する方法であって、
前記対象車両(SV)の少なくとも1つのレーダーセンサデバイス(3)によって、後方から前記対象車両(SV)に接近している目標車両(TV)によって反射されたレーダー信号を検出するステップ(S1)と、
検出された特定の交通シナリオにおいて前記対象車両(SV)後方プリクラッシュシステム(RPCS)(1)によって送出される前記RPCS警報信号のトリガーを修正するステップ(S2)と、を含み、
前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の距離が、距離閾値よりも小さく(D<DTH)、前記相対速度(VR)が相対速度閾値(VRTH)よりも小さい(VR<VRTH)場合、及び前記目標車両(TV)の加速度(aTV)が加速度閾値より小さい(aTV<aTH)場合には、前記判断ロジック(2)は前記RPCS警報信号を抑制するように構成されている、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記特定の交通シナリオが、
前記対象車両の速度(VSV)と、
前記目標車両の速度(VST)と、
前記対象車両と前記目標車両との間の相対速度(VR)と、
前記対象車両の加速度(aSV)と、
前記目標車両の加速度(aTV)と、
前記対象車両と前記目標車両との間の相対加速度(aR)と、
前記対象車両と前記目標車両との間の現在距離(D)と、
前記目標車両のコリドー占有率と、
を含む更なる測定パラメータに基づいて検出される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象車両(SV)の後方プリクラッシュシステム(RPCS)(1)によってRPCS警報信号を提供する方法であって、
前記対象車両(SV)の少なくとも1つのレーダーセンサデバイス(3)によって、後方から前記対象車両(SV)に接近している目標車両(TV)によって反射されたレーダー信号を検出するステップ(S1)と、
検出された特定の交通シナリオにおいて前記対象車両(SV)後方プリクラッシュシステム(RPCS)(1)によって送出される前記RPCS警報信号のトリガーを修正するステップ(S2)と、を含み、
前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の距離が、距離閾値よりも小さく(D<DTH)、前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の前記相対速度(VR)が相対速度閾値よりも小さい(VR<VRTH)場合、及び前記目標車両(TV)の加速度が加速度閾値より小さい(aTV<aTH)場合及び/又は監視サイクルの所定数Nにおいて、前記目標車両(TV)の現在加速度が、前のサイクルにおける前記目標車両(TV)の加速度よりも小さく(aTVi+i<aTVi)、前記目標車両(TV)の速度が閾値速度よりも小さく(VSV<VTH)、前記対象車両(SV)の現在加速度が前のサイクルにおける前記目標車両(TV)の加速度よりも小さい(aSVi+i>aSVi)場合、前記RPCS警報信号が自動的に抑制される、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記目標車両(TV)が前記対象車両(SV)と衝突する衝突までの時間(TTC)が、前記対象車両(SV)の速度がゼロ以下(VSV≦0)である場合の第1のモードにおいて、前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の相対速度(VR)及び前記対象車両(SV)の加速度(aSV)と前記目標車両(TV)の加速度(aTV)との間の相対加速度(aR)に応じて、並びに前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の現在距離(D)に応じて計算され、
前記衝突までの時間(TTC)が、前記対象車両(SV)の速度がゼロよりも大きい(VSV>0)場合の第2のモードにおいて、前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の前記相対速度(VR)に応じて、及び前記対象車両(SV)と前記目標車両(TV)との間の前記現在距離(D)に応じて、前記衝突までの時間(TTC)が算出される、
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象車両、詳細には乗用車の後方プリクラッシュセーフティシステム、すなわちRPCSに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗客の安全を確保するために、幅広い従来技術が提案されている。パッシブセーフティシステムの焦点は、対象車両に接近する目標車両などの別の物体との衝突によって生成される潜在的に高いエネルギーを吸収するように構成された車体を設計することであった。これらの種類のパッシブセーフティシステムは、例えば、シートベルト及びエアバッグを含む。次第に、高度アクティブプリクラッシュセーフティシステムが車両で使用されている。これらのアクティブセーフティシステムを使用すると、他の車両、障害物、歩行者、又は車両の経路及び/又は車両の周辺にある他の種類の物体を検出して、対象車両の応答をトリガーし、特に他の物体。詳細には対象車両に接近する目標車両との衝突を回避することができる。後方プリクラッシュセーフティシステムは、後方から対象車両に接近している別の物体又は目標車両によって反射されるレーダーを用いて、接近する目標車両の運転者に警報するハザードランプなどのアクティベータをトリガーすることができる。従って、従来の後方プリクラッシュセーフティシステムは、別の物体が後方から対象車両に接近している場合には、警報信号を出すことができる。しかしながら、多くのシナリオでは、不要な後方プリクラッシュシステム(RPCS)警報信号が、後方プリクラッシュセーフティシステムによって送出又は生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、不要なRPCS警報信号を排除するような後方プリクラッシュセーフティシステム及び対応するその方法を提供することである。後方プリクラッシュシステムRPCSは、また、点滅ハザードランプ(FHL)とも呼ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を備えた後方プリクラッシュセーフティシステムによる本発明の第1の態様によって達成される。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、対象車両の後方プリクラッシュシステムであって、上記RPCSが、後方から上記対象車両に接近する目標車両によって反射される検出レーダー信号に応答してRPCS警報信号をトリガーするよう構成された判断ロジックを備え、該判断ロジックが、検出された特定の交通シナリオにおいて上記RPCS警報信号のトリガーを修正するよう構成されている、後方プリクラッシュシステムを提供する。
【0006】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの実施可能な実施形態において、特定の交通シナリオが、対象車両の速度と、目標車両の速度と、対象車両と目標車両との間の相対速度と、対象車両の加速度と、目標車両の加速度と、対象車両と目標車両との間の相対加速度と、対象車両と目標車両との間の現在距離と、目標車両のコリドー占有率と、を含む更なる測定パラメータに基づいて検出される。本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの実施可能な実施形態において、目標車両の現在距離が、現在距離閾値よりも小さく(D<D
TH)、対象車両と目標車両との間の相対速度(V
R)が相対速度閾値よりも小さい(V
R<V
RTH)場合、並びに目標車両の加速度が加速度閾値より小さい(a
TV<a
TH)場合、後方プリクラッシュ安全システムの判断ロジックは、RPCS警報信号を抑制するよう構成されている。
【0007】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの別の実施可能な実施形態において、後方プリクラッシュ安全システムの判断ロジックは、目標車両が対象車両と衝突する衝突までの時間TTCを計算するよう構成される。
【0008】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの更に別の実施可能な実施形態において、後方プリクラッシュ安全システムの判断ロジックは、対象車両の速度がゼロ以下(V
SV≦0)である場合の第1のモードにおいて、相対速度(V
R)、相対加速度(a
R)、及び現在距離(D)に応じて衝突までの時間TTCを計算するよう構成され、更に、対象車両の速度(V
SV)がゼロよりも大きい(V
SV>0)場合の第2のモードにおいて、対象車両と目標車両との間の相対速度(V
R)及び現在距離(D)のみに応じて衝突までの時間TTCを計算するよう構成される。
【0009】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの別の実施可能な実施形態において、判断ロジックに接続された少なくとも1つのレーダーセンサデバイスが、対象車両のリアバンパーに設けられ、後方から対象車両に接近している目標車両によって反射されたレーダー信号を検出するよう構成されている。本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの更に別の実施可能な実施形態において、判断ロジックに接続された左側レーダーセンサデバイスが、対象車両のリアバンパーの左側に設けられ、右側レーダーセンサデバイスが、対象車両のリアバンパーの右側に設けられ、左側及び右側レーダーセンサデバイスは、後方から対象車両に接近している目標車両によって反射されたレーダー信号を検出するため、重なり合う視野FoVを有する。
【0010】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの別の実施可能な実施形態において、対象車両の当該車線のコリドー車線間のコリドーを占有する接近している目標車両のコリドー占有率が、調整可能なコリドー占有率閾値を超えた場合、後方プリクラッシュセーフティシステムの判断ロジックは、RPCS警報信号を送出するよう構成される。
【0011】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの別の実施可能な実施形態において、目標車両のコリドー占有率は、対象車両のリアバンパーに設けられた左側レーダーセンサデバイス及び右側レーダーセンサデバイスによって検出された反射レーダー信号に応じて、判断ロジックにより監視される。
【0012】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの別の実施可能な実施形態において、監視されるコリドー占有率が、対象車両の隣接車線に隣接した車線とかなり高度に重なり合っている場合、コリドー占有率閾値が、自動的に増大される。
【0013】
本発明の第1の態様による後方プリクラッシュ安全システムの更に別の実施可能な実施形態において、後方プリクラッシュ安全システムの判断ロジックは、所定の監視サイクル数Nに対して、目標車両の現在加速度が目標車両の事前に検出された加速度よりも小さい(a
TVi+1<a
TVi)場合、対象車両の速さV
SVが所定の速度閾値よりも小さい(V
SV<V
TH)場合、及び対象車両の現在加速度が、対象車両の事前に検出された加速度よりも大きい(a
SVi+1>a
SVi)場合、RPCS警報信号を抑制するよう構成される。
【0014】
別の態様によれば、本発明は更に、請求項12の特徴を備えた対象車両の後方プリクラッシュセーフティシステムによってRPCS警報信号を提供する方法を提供する。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、対象車両の後方プリクラッシュシステム(RPCS)によってRPCS警報信号を提供する方法であって、該方法が、対象車両の少なくとも1つのレーダーセンサデバイスによって、後方から対象車両に接近している目標車両によって反射されたレーダー信号を検出するステップと、検出された特定の交通シナリオにおいて対象車両後方プリクラッシュ安全システムによって送出されるRPCS警報信号のトリガーを修正するステップと、を含む。本発明の第2の態様による方法の実施可能な実施形態において、特定の交通シナリオが、対象車両の速度と、目標車両の速度と、対象車両と目標車両との間の相対速度と、対象車両の加速度と、目標車両の加速度と、対象車両と目標車両との間の相対加速度と、対象車両と目標車両との間の現在距離と、目標車両のコリドー占有率と、を含む更なる測定パラメータに基づいて自動的に検出される。
【0016】
本発明の第2の態様による方法の実施可能な実施形態において、対象車両と目標車両との間の距離が、距離閾値よりも小さく(D<D
TH)、対象車両と目標車両との間の相対速度が相対速度閾値よりも小さい(V
R<V
RTH)場合、及び目標車両の加速度が加速度閾値より小さい(a
TV<a
TH)場合、RPCS警報信号が自動的に抑制される。
【0017】
本発明の第2の態様による方法の別の実施可能な実施形態において、監視サイクルの所定数Nにおいて、目標車両の現在加速度が、前のサイクルにおける目標車両の加速度よりも小さく(a
TVi+i<a
TVi)、目標車両の速度が閾値速度よりも小さく(V
SV<V
TH)、対象車両の現在加速度が前のサイクルにおける目標車両の加速度よりも小さい(a
SVi+i>a
SVi)場合、RPCS警報信号が自動的に抑制される。
【0018】
本発明の第2の態様による方法の別の実施可能な実施形態において、目標車両が対象車両と衝突する衝突までの時間TTCが計算される。
【0019】
本発明の第2の態様による方法の別の実施可能な実施形態において、目標車両が対象車両と衝突する衝突までの時間TTCが、対象車両の速度がゼロ以下(V
SV≦0)である場合の第1のモードにおいて、対象車両と目標車両との間の相対速度及び対象車両の加速度と目標車両の加速度との間の相対加速度に応じて、並びに対象車両と目標車両との間の現在距離に応じて計算され、衝突までの時間TTCが更に、対象車両の速度がゼロよりも大きい(V
SV>0)場合の第2のモードにおいて、対象車両と目標車両との間の相対速度に応じて、及び対象車両と目標車両との間の現在距離に応じて算出される。
【0020】
以下において、本発明の様々な態様の実施可能な実施形態について、同梱の図面を参照しながら詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の態様による、対象車両の後方プリクラッシュセーフティシステムの実施可能な例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図2】本発明の第2の態様による、RPCS警報信号提供する方法の実施可能な例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【
図3】本発明の実施可能な実施形態による、RPCS警報信号提供する方法及びシステムの動作を例示する交通シナリオの概略図である。
【
図4】本発明の実施可能な実施形態による、方法及びシステムの動作を説明するための更に別の交通シナリオの概略図である。
【
図5】本発明の実施可能な実施形態による、方法及びシステムの動作を説明するための更に別の交通シナリオの概略図である。
【
図6】本発明による、方法及びシステムの実施可能な実施形態を例示する別の例示的な交通シナリオの概略図である。
【
図7】本発明の特定の実施形態による、方法及びシステムの動作を例示する別の例示的な交通シナリオの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1で分かるように、本発明の第1の態様による後方プリクラッシュセーフティシステム1は、道路上を速度Vsvで運転している対象車両SVにて実施される。対象車両SVは、例えば、道路上を速度Vsvで運転している乗用車又はトラックとすることができる。
【0023】
対象車両SVの後方プリクラッシュセーフティシステム1は、例示の実施形態において、判断ロジック2を備える。例示の実施形態において、判断ロジック2は、
図1に例示されるように、後方から対象車両SVに接近している物体によって反射される検出レーダー信号に応答して、少なくとも1つのRPCS警報信号をトリガーするよう構成されている。後方から対象車両SVに接近している物体は、
図1に示すような目標車両TVとすることができる。目標車両TVは、乗用車又はトラック、もしくは他の何れかの交通参加者とすることができる。目標車両TVは、
図1に示すような速度V
TVで移動している。更に、対象車両SV並びに目標車両TVは、加速度a
SV、a
TVそれぞれで加速することができる。判断ロジック2は、後方から対象車両SVに接近している目標車両TVによって反射された検出レーダー信号に応答して、RPCS警報信号をトリガーすることができる。対象車両SVの判断ロジック2は、例示の実施形態において、検出された特定の交通シナリオにおいてRPCS警報信号のトリガーを修正するよう構成される。
【0024】
図1の例示の実施例において、接近している目標車両TVは、先行している対象車両SVの方向に向かって速度V
TVで移動する。目標車両TVと対象車両SVとの間の相対速度V
Rは、対象車両SVの速度V
SVと目標車両TVの速度V
TVの間の差である。
【0025】
実施可能な実施形態において、接近している目標車両TVの相対速度V
Rは、センサ信号に基づいて対象車両SVの判断ロジック2によって検出することができる。別の実施可能な実施形態において、接近している目標車両TVと移動している対象車両SVとの間の相対速度V
Rはまた、反射したレーダー信号から導くことができる。
【0026】
図1に示すように、対象車両SVは、例示の実施形態において少なくとも1つのレーダーセンサデバイス3を備え、該レーダーセンサデバイス3は、実施可能な実施構成において、対象車両SVのリアバンパーに設置することができる。レーダーセンサデバイス3は、後方から対象車両SVに接近している目標車両TVによって反射されたレーダー信号を検出するよう構成されている。レーダーセンサデバイス3は、信号線4を介して後方プリクラッシュセーフティシステム1の判断ロジック2に検出したレーダー信号を供給する。
【0027】
図1の例示の実施形態において、後方プリクラッシュセーフティシステム1の判断ロジック2は、制御信号線6を介して少なくとも1つのアクティベータ5を制御することができる。実施可能な実施形態において、制御ロジック2は、アクティベータ5に供給される制御信号CRTLを自動的にトリガーすることができる。アクティベータ5は、特定の実施形態において、例えば、プリクラッシュヘッドレストシステムを備えることができる。プリクラッシュヘッドレストシステムは、対象車両SV内の乗員の負傷を低減するのに用いることができる。アクティベータ5を形成するプリクラッシュヘッドレストシステムは、衝突が起こる前に乗員の頭部に向けてヘッドレストを前方に移動させることにより、追突が避けられないものとして判断ロジック2によって判断されたときに、瞬時的に上記のことを達成することができる。衝突判断ロジック2は、避けられない衝突を検出すると、プリクラッシュヘッドレスト作動制御信号CRTLをヘッドレスト制御ユニット5に送信することができる。
図1に例示されるように、後方プリクラッシュセーフティシステム1は、検出された特定の交通シナリオにおいてRPCS警報信号をトリガーするように構成されている。これらの特定の交通シナリオは、測定パラメータに基づいて検出することができる。測定パラメータは、実施可能な実施形態において、対象車両SVの速度V
SV及び/又は目標車両TVの速度V
TVを含むことができる。別の実施可能な実施形態において、特定の交通シナリオを検出するのに評価される更なる測定パラメータは、対象車両SVの加速度a
SV及び/又は目標車両TVの加速度a
TVを含むことができる。更に、特定の交通シナリオを検出するのに用いられる測定パラメータは、対象車両SVと目標車両TVの間の相対加速度a
Rを含むことができる。別の実施可能な実施形態において、特定の交通シナリオを検出するのに用いられる測定パラメータは、対象車両SVと目標車両TVの間の現在距離Dを含むことができる。更に別の実施可能な実施形態において、特定の交通シナリオを検出するのに用いられる測定パラメータは、目標車両TVのコリドー占有率を含むことができる。
【0028】
図2は、本発明の1つの態様による対象車両SVの後方プリクラッシュセーフティシステム1によってRPCS警報信号を提供する方法の実施可能な例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【0029】
第1のステップS1において、後方から対象車両SVに接近する目標車両TVによって反射されたレーダー信号は、対象車両SVの少なくとも1つのレーダーセンサデバイス3によって検出される。更なるステップS2において、対象車両SVの後方プリクラッシュセーフティシステム1によって送出されるRPCS警報信号のトリガーは、検出された特定の交通シナリオにおいて修正される。
【0030】
図3は、本発明による方法及びシステムの動作を例示する実施可能な交通シナリオを概略的に示している。かなりの低速度V
SVで走行する対象車両SVに近接近している目標車両TVは、もはや重大な脅威をもたらさない。従って、目標車両TVが、かなり低い一定の現在距離D及び速度VTVに到達し、目標車両の絶対加速度a
TVが低く、目標車両TVが既に十分な量の制動力が加わっていることを示す場合、後方プリクラッシュセーフティシステム1の判断ロジック2は、RPCS警報信号を抑制することができる。
【0031】
例えば、対象車両のリアバンパーに対する対象車両SVと接近している目標車両TVとの間の計算された垂直現在距離D(車線の方向での)が10m未満であり、対象車両SVの速度に対する目標車両TVの相対速度V
Rが8m/s未満である場合、当該時点からの目標車両TVの絶対加速度a
TVが−1m/sであれば、判断ロジック2は、この交通シナリオにおいてRPCS警報信号を抑制することができる。従って、現在距離Dが距離閾値よりも小さく(D<D
TH)、相対速度V
Rが速度閾値V
RTHよりも小さい(V
R <V
RTH)場合、更に、目標車両TVの絶対加速度a
TVが 絶対加速度閾値より小さい(a
TV<a
TH)場合には、接近している目標車両TVが対象車両SVに脅威を与えないので、後方プリクラッシュセーフティシステム1の判断ロジック2はRPCS警報信号を抑制する。
【0032】
図4、5は、不要なRPCS警報信号を抑制する、判断ロジック2によって認識された特定の交通シナリオを更に概略的に示す。実施可能な実施形態において、後方プリクラッシュセーフティシステム1の判断ロジック2は、対象車両SVと衝突する目標車両TVの衝突までの時間TTCを計算することができる。衝突までの時間TTCを計算するために、対象車両SVと目標車両TVとの間の相対加速度、現在距離及び相対速度を用いることができる。しかしながら、対象車両SVと目標車両TVの両方が移動しているときの相対加速度a
Rの使用は、衝突までの時間TTCの誤った値に導く可能性がある。従って、後方プリクラッシュセーフティシステム1の実施可能な実施形態において、TTCは、2つの異なるモードを用いて計算することができる。
【0033】
対象車両SVが停止しており、後方に移動(V
SV≦0)している第1の状況において、判断ロジック2は、対象車両SVと目標車両TVとの間の相対速度V
R、相対加速度a
R、及び現在距離Dを含む3つの要因に応じて、衝突までの時間TTCを計算する。
【0035】
しかしながら、対象車両SVが前方に移動している(V
SV≧0)場合、判断ロジック2は、基礎計算を用いて、対象車両SVと目標車両TVとの間の相対速度V
R及び現在距離Dのみを評価して、衝突までの時間TTCを計算するよう構成されている。
【0037】
実施可能な実施形態において、判断ロジック2は、2つの計算モードを切り換えるスイッチング関数を含む。TTC値は、対象車両SVの検出速さ又は速度V
SVに応じて異なるモードで算出される。対象車両の速度V
SVが0m/s以下(V
SV≦0)である場合、判断ロジック2によって適用されるTTC計算は、対象車両SVと目標車両TVとの間の相対加速度a
Rを考慮する。しかしながら、対象車両SVの速度V
SVが0m/sよりも大きい(V
SV>0)である場合、判断ロジック2によって実施されるTTC計算は、対象車両SVと目標車両TVとの間の現在距離D及び相対速度V
Rに応じてのみTTCを算出する基礎計算を含む。
【0038】
図4は、対象車両SVの当該速さ又は速度V
SVがゼロ以下(V
SV≦0)であり、ここでTTCが、対象車両SVと目標車両TVとの間の現在距離D、対象車両SVと目標車両TVとの間の相対速度V
R、及び相対加速度a
Rに応じて自動的に算出される状況を例示している。
【0039】
図5は、対象車両の速さがゼロよりも大きく(V
SV>0)、ここでTTCが、対象車両SVと目標車両TVとの間の現在距離D、及び対象車両SVと目標車両TVとの間の相対速度V
Rにのみ応じて判断ロジック2によって算出される別の交通シナリオを示している。
【0040】
図6は、別の交通シナリオを例示している。対象車両SVは、実施可能な実施形態において、後方から対象車両SVに接近している目標車両TVによって反射されたレーダー信号を検出するよう構成された少なくとも1つのレーダーセンサデバイス3を有するリアバンパーを備える。好ましい実施形態において、左側レーダーセンサデバイスが、対象車両SVのリアバンパーの左側に設けられ、右側レーダーセンサデバイスが、対象車両SVのリアバンパーの右側に設けられる。左側及び右側レーダーセンサデバイスは、後方から対象車両SVに接近している少なくとも1つの目標車両TVによって反射されたレーダー信号を検出するため、重なり合う視野FoVを有する。左側及び右側センサ物体は、互いに独立しているので、センサの物体が、対向するセンサの視野FOVに重なり合うか、又は横断する可能性がある。
図6に例示するように、広い又は広範の目標車両TVが対象車両SVの当該車線から隣接車線の何れかに変化したときに、この交通シナリオが起こる可能性がある。左側レーダーセンサデバイスは、右側レーダーセンサデバイスの値と独立したセンサ信号を提供するので、物体のRPCSコリドー占有率のチェックを考慮することができる。対向するセンサ側により重なり合う物体又は目標車両TVは、判断ロジック2によりRPCS警報信号を送出するために達成しなければならないコリドー占有率を増大させる必要がある。対象車両SVの当該車線のコリドー車線間のコリドーを占有する接近している目標車両TVのコリドー占有率が、調整可能なコリドー占有率閾値を超えた場合、判断ロジック2は、RPCS警報信号を送出するよう構成される。例えば、コリドー占有率閾値は、
図6にも例示されるように、0.35の値を有することができる。加えて、全てのRPCS物体は、0.35のコリドー占有率閾値を含むことができる。しかしながら、この初期コリドー占有率閾値は、センサ物体を分析するために相応に動的に調整される。左側センサデバイスの物体は、以下のように分析される。接近している物体の寸法が、右側のRPCSコリドー車線にかなり高度な重なり合いを有する場合、コリドー占有率閾値が自動的に増大される。同じ分析が、左側センサ物体に対して実施される。目標車両TVのコリドー占有率は、対象車両SVのリアバンパーに設けられた左側レーダーセンサデバイス及び右側レーダーセンサデバイスによって検出された反射レーダー信号に応じて、判断ロジック2により監視することができる。監視されるコリドー占有率が、
図6に示すような対象車両SVの隣接車線に隣接した車線とかなり高度に重なり合っている場合、コリドー占有率閾値は、自動的に増大される。
【0041】
図7は、RPCS警報信号のトリガーに影響を及ぼす、判断ロジック2によって検出された別の交通シナリオを概略的に示す。対象車両SVが突然強いブレーキを作動させたとき、すなわち、対象車両SVの負の加速度が増大し、目標車両TVが、対象車両SVとの衝突を回避するために十分な量のブレーキ力を作動させた場合、目標車両TVもまた、対象車両SVの当該車線から隣接車線に車線変更すると、これは、依然として、従来のシステムにおいて不要なRPCS警報信号をトリガーする可能性がある。従って、本発明による後方プリクラッシュセーフティシステム1の好ましい実施形態において、目標車両の現在加速度a
TVi+1が目標車両の事前に検出された加速度よりも小さい(a
TVi+1<a
TVi)このような交通状況において、対象車両の速さV
SVが所定の速度閾値よりも小さい(V
SV<V
TH)場合、及び更に、対象車両SVの加速度が増大し(a
SVi+1>a
SVi)、これら3つの状況が、所定の監視サイクル数Nに対して連続的に適合する場合には、RPCS警報信号を抑制するよう構成される。
図7に示すようなこの特定の交通シナリオにおける目標車両TVの特性を見ると、目標車両の加速度、目標車両の速さ及び加速度の連続的な減少は、独自の挙動を提供する。不要なRPCS警報信号を抑制するために、判断ロジック2によって3つの状況がチェックされて、RPCS警報信号を抑制する。第1の状況は、目標車両の加速度a
TVが最後のサイクルの値から減少される状況である。第2の状況は、対象車両の速さV
SVが、例えば、1m/秒よりも小さい状況である。
【0042】
第3の状況は、対象車両の加速度a
SVが、増大するか、前の監視サイクルと同じままの状況である。これら3つの状況が連続的に満たされる場合、判断ロジック2は、RPCS警報信号を自動的に抑制する。
【0043】
本発明による後方プリクラッシュセーフティシステム1の別の実施形態も実施可能である。例えば、実施可能な実施形態において、接近している目標車両TVのレーダー断面RCS及び/又は接近している目標車両TVの相対速度V
Rが、構成可能な閾値を下回る場合、RPCS警報信号は、この判断ロジック2より抑制することができる。渋滞交通状況と同様に、後方から対象車両SVに追従する追従目標車両TVのレーダー断面RCSは、静止状態を維持することができ、対象車両SVに対する追従目標車両TVの速度が検出される度にリフレッシュすることができる。このような渋滞交通状況又はシナリオにおいて、後方から車両に接近する追従目標物体以外の別の目標物体によって反射される検出レーダー信号に応答して、RPCS警報信号は、判断ロジック2によって抑制することができる。更に別の実施可能な実施形態において、後方から対象車両SVに接近する物体又は目標車両TVは、接近している目標車両TVのレーダー断面RCS及び/又は接近している目標車両TVの相対速度に応じて判断ロジック2によって分類することができる。実施可能な実施形態において、接近している目標車両TVは、トラック、自動車、オートバイ、自転車及び/又は歩行者を含めて、交通参加者を含むことができる。