【文献】
Clin. Cancer Res., 2013年,Vol.19, No.5,p.1021-1034
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IL−15Rα sushiドメインをIL−15またはそのIL−15R結合性断片に結合するフレキシブルなリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
有効量の請求項1〜6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む組成物であって、対象における、PD1のPD−L1との相互作用の阻害方法において使用するための、組成物。
有効量の請求項1〜6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む組成物であって、対象における、PD−L1により仲立ちされる免疫抑制の阻害方法において使用するための、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】抗体tccR3λF8、tccR3κA11、tccR3λH4、tctR3κA8、sR3λD7、及びR2κA6の、ヒトhPDL1−Fcへの結合(左上パネル)、hPDL1のhPD1に対するブロック(左下パネル)、マウスmPDL1−Fcへの結合(右上パネル)、及びmPDL1のhPD1に対するブロック(右下パネル)を示す。
【
図2】抗体sR3λD7、tccR3κB7、tccR3κA4、tccR3λF8、tccR3λD7、tccR3λH4、及びtccR3κD9の、ヒトhPDL1−Fcへの結合(左上パネル)、hPDL1のhPD1に対するブロック(左下パネル)、マウスmPDL1−Fcへの結合(右上パネル)、及びmPDL1のhPD1に対するブロック(右下パネル)を示す。
【
図3】抗体tccR3κF8、tccR3κD9、tccR3λD7、tccR3λD7、sR3κF10、sR3λD7、及びtccR3λF8の、ヒトhPDL1−Fcへの結合(左上パネル)、hPDL1のhPD1に対するブロック(左下パネル)、マウスmPDL1−Fcへの結合(右上パネル)、及びmPDL1のhPD1に対するブロック(右下パネル)を示す。
【
図4】抗体R2κA6、sR3λD7、tccR3λD7、tccR3κB7、及びtccR3κH4の、ヒトhPDL1−Fcへの結合(左上パネル)、hPDL1のhPD1に対するブロック(左下パネル)、マウスmPDL1−Fcへの結合(右上パネル)、及びmPDL1のhPD1に対するブロック(右下パネル)を示す。
【
図5】抗体sR3λD7、tctR3κA8、tccR3κA11、tccR3λD7、tccR3κD9、tccR3λF8、tccR3κF8、tccR3κF10、tccR3λH4、tccR3κB7、及びtccR3κA4の、PDL1−293細胞(上)及びMDS−MB−231(下)細胞への結合を示す。
【
図6】(A)ヒト単核細胞由来の樹状細胞、(B)PD−L1 MDA−MB−231細胞を発現するヒト癌細胞株、及び(C)PD−L1 B16−F10を発現するマウス細胞株への、抗PD−L1抗体の結合を示す。
【
図7】(A)aCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズにより活性化された場合の、CD4増殖の増加、(B)SEBで活性化したヒトPBMCにおけるサイトカイン分泌の増加、及び(C)mo−DCとの混合リンパ球反応における、CD4増殖の増加、により測定した、抗PD−L1抗体の機能ブロック活性を示す。
【
図8】抗PDL1抗体及びIL15の両方が、(A)mo−DCとの混合リンパ球反応、並びに(B)αCD3及びPD−L1 FcでコーティングしたビーズによるCD8の刺激、の際に存在する場合の、CD4及びCD8の活性化を示す。
【
図9】(A)固相ELISA、及び(B)aCD3でコーティングしたビーズによって活性化されたCD4への結合、による測定で、抗PD−L1 sushiドメイン−IL15(抗PDL1−SD15と称する)融合タンパク質が、PD−L1への結合を維持することを示す。
【
図10】抗PD−L1−SD15融合タンパク質と共にin vitroで培養したPBMCが、NK細胞数の増加(A)、CD8細胞数の増加(B)、及びグランザイムB(%)により測定した活性化状態(C)をもたらしたことを示す。CD4細胞(D)では効果は観察されなかった。
【
図11】aCD3でコーティングしたビーズ(A)の存在下において、in vitroでCD8の刺激を加えた場合に、抗PD−L1−SD15融合タンパク質が、IL15と同様にCD8を活性化するように機能することを示す。しかし、aCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズの存在下において、抗PD−L1−SD15融合タンパク質はIL15(B)と比較した場合に、CD8の増殖を5倍超で増加することができる。cD7−SD15negは、陰性対照として機能する、非機能的IL15を有する抗PD−L1 cD7である。
【
図12】抗原提示細胞上にPD−L1 Fcが存在する場合の、CD8の活性化を示す。(A)グランザイムB陽性CD8における割合(%)の増加、及び(B)全サイトカイン分泌の増加、による測定のとおり、抗PD−L1−SD15融合タンパク質であるcD7−SD15は、著しく低い濃度でCD8を刺激した。cD7−SD15の添加により、IL15と比較して、aCD3及びPD−L1 Fcにより活性化されたCD8において、CD8活性化の最大量もまた増加した。(C)抗PD−L1抗体及び遊離IL15の両方の存在下におけるCD8増殖のデータ(点線)は、抗PD−L1−SD15融合タンパク質の存在下でのCD8増殖のデータ(直線)と重なり合う。
【
図13A1】抗PD−L1抗体のV
H(
図13A1〜3)及びV
L(
図13B1〜3)鎖のアミノ酸配列を示す。V
H配列に関して、四角で囲った領域はCDRを示す。CDR−1Hに関して、Chothia CDRはイタリック体であり、Kabat CDRは下線を引いてある。CDR−2Hに関して、Kabat CDRは四角で囲った配列のChothia CDR(イタリック体)と同一の広がりを持つ。V
L配列に関して、四角で囲った領域はKabat/Chothia CDRを示す。
【
図14】IL15Rα sushiドメイン及びIL15を含むSD15のアミノ酸配列(配列番号:261)、tccλD7HC−SD15のアミノ酸配列(配列番号:262)、及びtccλD7HC−SD15のLALA変異のアミノ酸配列(配列番号:263)を示し、これは、FcγRIにとって重要な重鎖定常領域内の位置(Leu
234及びLeu
235)にて、隣接する2つのロイシンのアラニン置換を含む。
【
図15】分子のPD−L1結合部のみ(cD7)、並びにKLHに特異的な結合領域及びIL15領域を含有する融合タンパク質(KLHSD15)と比較した、抗PD−L1−SD15融合タンパク質(CD7SD15)の毒性を示す。ヒトCD8 T細胞及びMAD−MB−231腫瘍細胞を、10% FBSを補充したIMDM内で7日間共培養した。腫瘍細胞殺活性は、FACS内でViability Dye eFluor 780により染色した、死滅腫瘍細胞の数を測定することにより評価した。
【
図16】抗PD−L1−SD15融合タンパク質が、PD−L1を発現する腫瘍を有するマウスの生残率を引き延ばしたことを示す。Balb/cマウスに、2×10
5個のマウスCT26結腸腫瘍細胞を静脈内注射した。24時間後、マウスは抗PD−L1抗体cD7(紫の線:一投与あたり75ug)、抗PD−L1−SD15融合タンパク質cD7−SD15(緑の線:一投与あたり75ug、青の線:一投与あたり25ug)、またはsD7−SD15(灰色の線:一投与あたり75ug、赤の線:一投与あたり25ug)の腹腔内投与を、最初の週は週に二度、次いで残りの治療過程においては週に一度で受けた。対照群のマウスは、等体積の生理食塩水または通常のIgG溶液を受けた。生残率は、Kaplan−Meierプロットを使用して測定した。
【
図17】可溶性ヒトPDL1、可溶性マウスPDL1、及び可溶性ラットPDL1に対する、2つの親和性成熟抗PDL1抗体の結合、並びに、ヒトPDL2への非結合を示す。
【
図18】親tccλD7抗体と比較した、2つの親和性成熟抗PDL1抗体による、ヒトPD1のヒトPDL1に対するブロック(左パネル)、及びマウスPD1のマウスPDL1に対するブロック(右パネル)を示す。
【
図19】抗PD−L1抗体tccλD7の2つの親和性成熟変異体は、フローサイトメトリーにより測定したとおり、PD−L1を発現するヒトMDA−MB−231腫瘍細胞に対するより高い結合活性を有することを示す。
【
図20】Th1サイトカインIL2(上のパネル)及びIFNγ(下のパネル)の産生を促進する能力が増大した、抗PD−L1抗体tccλD7の親和性成熟変異体を示す。
【
図21】本発明の融合タンパク質の、PD−L1発現MDA−MB−231腫瘍細胞への結合を示す。
【
図22】本発明のタンパク質の、IL15応答性ヒト巨核芽球性白血病細胞への刺激活性を示す。
【
図23】本発明の融合タンパク質に対する、hPD−L1結合(左パネル)及びリガンドブロック(右パネル)活性を示す。
【
図24】本発明の融合タンパク質に対する、サイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。
【
図25】本発明の融合タンパク質に対する血清の安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
免疫細胞上でPD−1がPD−L1と相互作用することで、免疫細胞による増殖及びサイトカイン産生が阻害される。PD−L1はまた、癌を含む種々の組織で誘発可能かつ上方制御される。PD−1及びPD−L1は共に、免疫抑制の役割を果たす。本発明は、PD−L1に結合し、PD−1との相互作用をブロックする新規の抗体、及びかかる抗体の抗原結合断片を提供する。本発明の実施形態において、抗体は免疫抑制を低下させるかまたは阻害する。
【0018】
本発明の新規の抗体は表1、及び添付の配列一覧に記述されており、これらは、重鎖及び軽鎖CDR(Kabat及びChothiaの識別システムにしたがって識別)、並びに完全な重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列について説明している。最初の2つの重鎖CDRは、Kabat及びChothiaの一般的なシステムにしたがって識別され、これらにより、区別できるが重なり合う、CDRの位置が提供される。多数の重鎖及び軽鎖を比較することで、多くのCDR配列の中で著しい類似性が示される。したがって、多くのCDRを混合し、配列内でマッチングさせることができると予想される。
【0019】
抗体は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、及び/または付加を有することができる。ある種の実施形態において、抗体は上述の重鎖可変領域の1つ及び上述の軽鎖可変領域の1つを含む。ある種の実施形態において、PD−L1抗体またはその結合断片は、表1で説明したCDR及び可変領域配列に少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、1つ以上のCDRまたは1つ以上の可変領域を含む。
【0020】
「同一性」とは、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れた、2つのアミノ酸または核酸配列により共有されている、同一位置の数または割合を意味し、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要がある。「実質的に同一である」とは、保存的アミノ酸置換、例えば同一クラスの別のアミノ酸に対するアミノ酸置換(例えばグリシンに対するバリン、リジンに対するアルギニン等)によって、または、タンパク質の機能を破壊しないアミノ酸配列の位置における1つ以上の非保存的置換、欠失、もしくは挿入によってのみ異なるアミノ酸配列を意味する。アミノ酸置換は、場合によっては、(a)置換領域におけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルク、を維持する効果が著しく異ならない置換を選択することにより行うことができる。例えば、天然の残基は側鎖の性質に基づいてグループ:(1)疎水性アミノ酸(ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン);(2)中性親水性アミノ酸(システイン、セリン及びスレオニン);(3)酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸);(4)塩基性アミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン及びアルギニン);(5)鎖配向に影響を与えるアミノ酸(グリシン及びプロリン);並びに(6)芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニン)に分けることが可能である。これらのグループ内で行われる置換は、保存的置換と考えることができる。置換の例としては、非限定的に、アラニンに対するバリン、アルギニンに対するリジン、アスパラギンに対するグルタミン、アスパラギン酸に対するグルタミン酸、システインに対するセリン、グルタミンに対するアスパラギン、グルタミン酸に対するアスパラギン酸、グリシンに対するプロリン、ヒスチジンに対するア
ルギニン、イソロイシンに対するロイシン、ロイシンに対するイソロイシン、リジンに対するアルギニン、メチオニンに対するロイシン、フェニルアラニンに対するロイシン、プロリンに対するグリシン、セリンに対するスレオニン、スレオニンに対するセリン、トリプトファンに対するチロシン、チロシンに対するフェニルアラニン、及び/またはバリンに対するロイシンの置換が挙げられる。
【0021】
好ましくは、アミノ酸配列は、本明細書にて開示したアミノ酸配列に少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一である。配列類似性を測定するための方法及びコンピュータプログラムは一般に入手可能であり、非限定的に、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Research 12: 387,1984)、BLASTP,BLASTN,FASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)、及びALIGNプログラム(version 2.0)が挙げられる。既知のSmith−Watermanアルゴリズムもまた使用し、類似性を測定してよい。BLASTプログラムはNCBI及び他のソースからから入手可能である(BLAST Manual,Altschul,et al.,NCBI NLM NIH,Bethesda,Md.20894;BLAST 2.0、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/にて)。配列の比較において、これらの方法は種々の置換、欠失、及び他の変異を調査する。保存的置換としては通常、以下の群内の置換が挙げられる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン、リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。
【0022】
本発明の抗体は更に、結合特性が直接変異、親和性成熟法、ファージディスプレイ、または鎖シャッフリングにより改善された抗体も含む。親和性及び特異性は、CDRを変異させ、所望の特性を有する抗原結合部位に対してスクリーニングすることにより修正または向上されてよい。CDRは様々な方法で変異される。一方法は、個々の残基または残基の組み合わせをランダム化することで、別様においては同一である抗原結合部位の母集団において、20個のアミノ酸全てが特定の位置に見出されるようにすることである。あるいは、エラープローンPCR法により、CDR残基の一連の範囲にわたり変異を誘発する(例えば、Hawkins et al.,J.Mol.Biol,226:889−896(1992)を参照のこと)。例えば、重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含有するファージディスプレイベクターを、大腸菌の突然変異誘発株内で増殖させてよい(例えば、Low et al.,J.Mol.Biol,250:359−368(1996)を参照のこと)。突然変異誘発のこれらの方法は、当業者に既知の多くの方法を代表するものである。
【0023】
免疫原性を最小限にするためには、ヒト定常領域配列を含む抗体が好ましい。抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(例えばIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE)、及びこれらのサブクラスの一員であってよいか、またはこれらを組み合わせてよい。抗体クラスは、自然抗体のエフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞傷害(ADCC))を最適化するように選択されてよい。
【0024】
本発明のある種の実施形態は、PD−L1結合抗体断片の使用を伴う。Fvは、6つ全ての超可変ループ(CDR)を含む、完全な重鎖及び軽鎖可変領域を包含する最少の断片である。定常領域を欠いているため、可変領域は非共有結合である。V
H及びV
L領域を結合させて抗原結合部位を形成することができるリンカーを使用して、重鎖及び軽鎖を結合し単一ポリペプチド鎖(「一本鎖Fv」または「scFv」)にしてよい。本発明の一実施形態において、リンカーは(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)
3である。scFv断片は抗体全体の定常領域を欠いているため、これらは抗体全体よりも大幅に小さ
い。scFv断片にはまた、通常の重鎖定常領域と他の生体分子との相互作用がなく、これは、ある種の実施形態において好ましくない場合がある。
【0025】
V
H、V
L、及び任意にC
L、C
H1、または他の定常領域を含む抗体断片もまた、使用することができる。パパイン分解によって生成された抗体一価の断片はFabと呼ばれ、重鎖ヒンジ領域を欠いている。ペプシン分解によって生成された断片はF(ab’)
2と呼ばれ、重鎖ヒンジを保持し二価である。このような断片はまた、組み換えにより作製してもよい。他の多くの有用な抗原結合抗体断片は当技術分野において既知であり、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単一領域抗体、並びに他の一価及び多価の形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明は更に多価の抗原結合タンパク質を提供し、抗体、その抗原結合断片、及び抗体の抗原結合部の全てまたは一部からなるタンパク質の形態とすることができるが、これらに限定されない。多価の抗原結合タンパク質は、単一特異的、二重特異的、または多重特異的であってよい。用語「特異性」とは、特定の分子が結合できる抗原決定基の異なる種類の数を意味する。免疫グロブリン分子が1種類のみの抗原決定基に結合する場合、その免疫グロブリン分子は単一特異的である。免疫グロブリン分子が異なる種類の抗原決定基に結合する場合、その免疫グロブリン分子は多重特異的である。
【0027】
本発明の一実施形態において、PD−L1結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴による測定で、少なくとも約10
2M
-1s
-1;少なくとも約10
3M
-1s
-1;少なくとも約10
4M
-1s
-1;少なくとも約10
5M
-1s
-1;または少なくとも約10
6M
-1s
-1の結合速度定数(Kon)を有する。一実施形態において、PD−L1結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴による測定で、10
2M
-1s
-1〜10
3M
-1s
-1;10
3M
-1s
-1〜10
4M
-1s
-1;10
4M
-1s
-1〜10
5M
-1s
-1;または10
5M
-1s
-1〜10
6M
-1s
-1の結合速度定数(Kon)を有する。
【0028】
別の実施形態において、PD−L1結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴による測定で、最大約10
-3s
-1;最大約10
-4s
-1;最大約10
-5s
-1;または最大約10
-6s
-1の解離速度定数(Koff)を有する。一実施形態において、PD−L1結合タンパク質は、表面プラズモン共鳴による測定で、10
-3s
-1〜10
-4s
-1;10
-4s
-1〜10
-5s
-1;または10
-5s
-1〜10
-6s
-1の解離速度定数(Koff)を有する。
【0029】
別の実施形態において、PD−L1結合タンパク質は、最大約10
-7M;最大約10
-8M;最大約10
-9M;最大約10
-10M;最大約10
-11M;最大約10
-12M;または最大約10
-13Mの解離定数(K
d)を有する。一実施形態において、結合タンパク質は、その標的に対して、10
-7M〜10
-8M;10
-8M〜10
-9M;10
-9M〜10
-10M;10
-10M〜10
-11M;10
-11M〜10
-12M;10
-12M〜10
-13Mの解離定数(K
d)を有する。
【0030】
本明細書で記載される結合タンパク質は、造影剤、治療薬または細胞毒性剤を更に含むコンジュゲートであってよい。一実施形態において、造影剤は、放射線標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、またはビオチンである。別の実施形態では、放射線標識は
3H、
14C、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、または
153Smである。更に他の実施形態では、治療剤または細胞毒性剤は、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗生物質、増殖因子、サイトカイン、血管新生阻害剤、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、毒素、またはアポトーシス剤である。以下で論じる通り、免疫活性化サイトカインが特に重要である。
【0031】
本発明はまた、PD−L1に結合して免疫抑制を阻害して、他のリガンドまたは受容体
との相互作用により免疫応答も促進する分子も提供する。本明細書で例示するように、かかる分子は、抗体のPD−L1結合領域を、NKまたはT細胞機能を刺激する領域と結合する。かかる刺激領域は、非限定的に、IL2、IL7、IL15、及びIL21等に限定されないインターロイキンまたはインターフェロンに対して応答性の受容体に結合して、受容体を刺激する領域とすることができる。本明細書で例示する刺激領域は、リンカーにより、IL15に結合したIL15Rα鎖のsushiドメインを含むハイブリッド領域(例えば配列番号:261)である。完全分子の例は、配列番号:262により表記される。抗体領域とIL15R刺激領域との間にあり、領域内でのタンパク質分解を阻害する、2つのアミノ酸置換基で修飾されたほぼ同一の分子は、配列番号:263により表記される。本明細書で実証されるとおり、免疫抑制を阻害するPD−L1結合領域、及び免疫応答を促進する第2領域を含む分子は、これらの機能を別々に付与する2つの異なる分子と比較して、増加した免疫細胞活性を付与する。
【0032】
本明細書で例示するように、分子のPD−L1結合部は、抗体の抗原結合領域である。複数の、新規の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域、並びにこれらを含む抗体を提供する。本発明に従うと、PD−L1結合部は、PD−L1に結合して免疫抑制をブロックする任意の作用物質とすることができる。これらには、本明細書にて開示したこれらの新規の抗体、並びにPD1由来のペプチド及びタンパク質(PD−L1の天然リガンド)に限定されない、抗PD−L1抗体及び断片が挙げられる。
【0033】
本明細書にて開示するとおり、PD−L1結合領域は、NK及びT細胞活性を刺激する領域に結合される。この領域はIL15を含み、フレキシブルなリンカーである、IL15受容体のα鎖の「sushi」ドメインにより刺激領域に結合される。sushiドメインはIL15に高い親和性を有して結合し、sushiドメインとIL15との複合体は、NK及びT細胞増殖の刺激に対して特に活性である。特に顕著なことは、実施例に示されるとおり、IL15刺激領域と同一の分子内でPD−L1結合領域を組み合わせた作用物質による治療は、別々の分子としてPD−L1結合領域とIL15刺激領域を使用する併用治療よりも効果的である。
【0034】
したがって、ある種の実施形態では、本発明は、PD−L1に結合し、PD1への結合をブロックする領域と、IL15Rを刺激することで免疫細胞の増殖を刺激する領域とを含む、ハイブリッド分子を企図する。例示するように、IL15R刺激領域は、例えば一本鎖Fv分子(即ち、主にセリンとグリシンである15〜20個のアミノ酸を含有)に対して用いられるものに類似の、フレキシブルなリンカーによりIL15に結合したIL15R α鎖のsushiドメインを含む。実際には、使用可能な他の方法が存在し、これらは例えば、製造手順に対して好ましい場合がある。更に、ある方法では領域の構造、したがって、開示したハイブリッドタンパク質のモジュール構造及び他の特徴を認識する。例えば、sushiドメインをIL15に結合するリンカーは、ハイブリッドを1つのポリペプチドとして発現するのに有用であるが、他の作用物質、リンカー、または架橋剤で置き換えることも同様に可能である。あるいは、IL15R α鎖のsushi含有領域に対するIL15の高親和性は、sushiドメインとIL15が、共有結合を必要としない安定な複合体を形成し得ることを示す。同様に、例示のタンパク質が抗体全体の定常領域を構成する一方で、PD−L1結合抗体の他の抗原結合断片も十分間に合う。
【0035】
したがって、本発明は、IL15R刺激領域に結合したPD−L1結合領域を提供し、このIL15R刺激領域は、IL15R α鎖のsushiドメインまたはその変異体、及びIL15またはその変異体を含む。ある種の実施形態において、変異体は、本明細書にて開示した配列に80%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、または95%同一である。一実施形態では、IL15R α鎖のsushiドメインとIL15は共有結合複合体を形成する。別の実施形態において、IL15R α鎖のsu
shiドメインとIL15は、非共有結合複合体を形成する。PD−L1結合領域は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDR、または、本明細書にて開示した抗体、その抗原結合断片、もしくはその変異体(例えば80%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、もしくは95%同一である変異体)の重鎖及び/もしくは軽鎖可変領域、もしくは、PD−1への結合をブロックする当該技術分野において公知のPD−L1抗体もしくはその抗原結合断片を含むことができる。
【0036】
本発明の抗PD−L1抗体及びハイブリッドタンパク質は、予防または治療目的で哺乳類に使用した場合、製薬上許容できる担体を更に含む組成物の形態で投与されることが理解される。製薬上許容できる好適な担体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、スクロース、ポリソルベート、エタノール等、加えてこれらの組み合わせの1つ以上が挙げられる。製薬上許容できる担体は更に、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝剤等の少量の補助剤を含んでよく、これらは抗体の保存性または有効性を高める。
【0037】
本発明の方法において、治療に有効な量の、本発明のハイブリッドタンパク質の抗体は、それを必要とする哺乳類に投与される。本発明で使用する場合、用語「投与する」は、必要な結果を達成し得る任意の方法により、本発明の抗体及び融合タンパク質を哺乳類に送達することを意味する。抗体は例えば、静脈内または筋肉内投与をしてよい。本発明の例示の抗体はヒトへの投与に特に有用であるが、これらは他の哺乳類にも同様に投与してよい。本発明で使用する場合、用語「哺乳類」はヒト、実験動物、ペット、及び家畜を含むことを目的としているが、これらに限定されない。「治療に有効な量」とは、哺乳類に投与した際、キナーゼ活性阻害等、所望の治療効果を生み出すのに効果的である本発明の抗体の量を意味する。
【0038】
本発明の抗体及びハイブリッドタンパク質は、腫瘍及び他の腫瘍性疾患の阻害、並びに、免疫抑制と関係する他の病態の治療に有用である。治療可能な腫瘍としては、原発腫瘍、転移性腫瘍、及び難治性腫瘍を挙げることができる。難治性腫瘍としては、化学療法剤のみ、抗体のみ、放射線のみ、またはこれらの組み合わせによる治療に対して応答しない、または耐性のある腫瘍が挙げられる。難治性腫瘍はまた、このような作用物質により阻害されたように見えるが、治療を終えた後に最大5年で、場合によっては10年以上で再発する腫瘍も包含する。抗体は、血管新生化腫瘍、及び血管新生化されていない、または依然として実質的に血管新生化されていない腫瘍の治療に効果的である。
【0039】
抗体により治療され得る充実性腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、神経膠腫及びリンパ腫が挙げられる。かかる腫瘍の幾つかの例としては、類表皮腫瘍、扁平腫瘍(例えば頭頸腫瘍)、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、胸腫瘍、小細胞及び非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、並びに肝臓腫瘍が挙げられる。その他の例としては、カポジ肉腫、CNS腫瘍、神経芽細胞腫、毛管血管芽細胞腫、髄膜腫及び脳転移、黒色腫、胃腸及び腎臓癌/肉腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫、好ましくは多形性膠芽腫、並びに平滑筋肉腫が挙げられる。本発明の拮抗剤が効果的である血管新生化皮膚癌の例としては、悪性ケラチノサイト(例えばヒト悪性ケラチノサイト)の増殖を抑制することにより治療可能な扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、及び皮膚癌が挙げられる。
【0040】
非充実性腫瘍の例としては、IL15等のサイトカインに対して非応答性である白血病、多発性骨髄腫及びリンパ腫が挙げられる。白血病の幾つかの例としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、赤血球白血病(erythrocytic leukemia)、または単球性白血病が挙げられる。リンパ腫の幾つかの例としては、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0041】
本発明のハイブリッドタンパク質を刺激するPD−L1抗体及び免疫細胞はまた、ウイルス感染の治療にも使用される。T細胞上にPD−1が発現することは、HIVのウイルス量及びHCVに感染した患者と関係があり、PD−1の発現は、枯渇したウイルス特異的なCD8
+T細胞のマーカーとして識別されている。例えば、PD−1
+CD8
+T細胞は、エフェクター機能障害、及びPD−1が関係するT細胞の枯渇を示すが、これらは、PD−1/PD−L1の相互作用をブロックすることにより回復可能である。このことは、ウイルス特異的なCD8
+T細胞が仲立ちする免疫の回復をもたらし、拮抗抗体を使用してPD−1のシグナル伝達を妨げることにより、T細胞のエフェクター機能が回復することを示している。PD−1/PD−L1のブロックに基づく免疫療法は、腫瘍抗原に対するT細胞耐性の破壊をもたらすだけでなく、ウイルス特異的エフェクタ−T細胞を再活性化し、慢性的ウイルス感染での病原体を撲滅する戦略も提供する。したがって、本発明の抗体及びハイブリッドタンパク質は、非限定的にHCV及びHIV、並びにリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を含む慢性ウイルス感染の治療に有用である。
【0042】
本発明の抗体及びハイブリッドタンパク質は、それを必要とする患者に、第二剤と共に有利に投与することができる。例えば、幾つかの実施形態では、本発明の抗体またはハイブリッドタンパク質は、抗新生物薬と共に対象に投与される。幾つかの実施形態では、本発明の抗体またはハイブリッドタンパク質は第2の血管新生阻害剤と共に対象に投与される。幾つかの実施形態では、本発明の抗体またはハイブリッドタンパク質は、抗炎症剤または免疫抑制剤と共に投与される。
【0043】
抗悪性腫瘍薬としては、細胞傷害性化学療法剤、標的低分子及び生体分子、並びに放射線が挙げられる。化学療法剤の非限定例としては、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、イリノテカン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、ダカルバジン、フロクシウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、インターフェロンα、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロランブシル、タキソール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
標的低分子及び生体分子としては、チロシンキナーゼ調節物質及び受容体型チロシンキナーゼ阻害剤等のシグナル伝達経路の成分阻害剤、並びに、腫瘍特異的抗原に結合する作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍形成に関係する成長因子受容体の非限定例は、血小板由来成長因子(PDGFR)、インスリン様成長因子(IGFR)、神経成長因子(NGFR)、及び線維芽細胞増殖因子(FGFR)に対する受容体、並びに、EGFR(erbB1)、HER2(erbB2)、erbB3、及びerbB4を含む、上皮成長因子受容体ファミリーの受容体である。
【0045】
EGFR拮抗剤としては、EGFRまたはEGFRリガンドに結合し、リガンド結合及び/または受容体活性化を阻害する抗体が挙げられる。例えば、この作用物質は、他のEGFRファミリーメンバーとの、受容体ダイマーまたはヘテロダイマーの形成をブロックすることができる。EGFRに対するリガンドとしては例えば、EGF、TGF−α アンフィレグリン、ヘパリン結合EGF(HB−EGF)、及びβレグルリン(betar
egullulin)が挙げられる。EGFR拮抗剤はEGFRの細胞外部分に外的に結合することができ(これはリガンドの結合を阻害し得る、もしくは阻害し得ない)、または、チロシンキナーゼ領域に内的に結合することができる。EGFR拮抗剤としては更に、例えば、EGFRシグナル伝達経路の成分の機能を阻害することにより、EGFR依存性シグナル伝達を阻害する作用物質が挙げられる。EGFRに結合するEGFR拮抗剤の例としては、EGFRに特異的な抗体(及びその機能的等価物)等の生体分子、並びに、EGFRの細胞質領域に直接作用する合成キナーゼ阻害剤等の小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
小分子及び生物学的阻害剤としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、及びセツキシマブを含む上皮成長因子受容体(EGFR)の阻害剤、HER2の阻害剤(例えばトラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン(トラスツズマブ−DM1;T−DM1)及びペルツズマブ)、抗VEGF抗体及び断片(例えばベバシズマブ)、CD20を阻害する抗体(例えばリツキシマブ、イブリツモマブ)、抗VEGFR抗体(例えばラムシルマブ(IMC−1121B)、IMC−1C11、及びCDP791)、抗PDGFR抗体、並びにイマチニブが挙げられる。低分子キナーゼ阻害剤は特定のチロシンキナーゼに特異的であることができるか、または2つ以上のキナーゼの阻害剤であることができる。例えば、化合物N−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−7−({[(3aR,6aS)−2−メチルオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロール−5−イル]メチル}オキシ)−6−(メチルオキシ)キナゾリン−4−アミン(XL647、EXEL−7647及びKD−019としても知られている)は、EGFR、EphB4、KDR (VEGFR)、Flt4(VEGFR3)及びErbB2を含む複数の受容体型チロシンキナーゼ(RTK)のin vitro阻害剤であり、かつ、SRCキナーゼの阻害剤でもあり、特定のTKIに対して腫瘍が非反応性となる経路に関係する。本発明の一実施形態において、必要な対象の治療には、式Iの化合物のRhoキナーゼ阻害剤の投与、及びKD−019の投与が含まれる。
【0047】
ダサチニブ(BMS−354825;Bristol−Myers Squibb,New York)は別の、経口投与可能なATP部位競合Src阻害剤である。ダサチニブはまた、Bcr−Abl(慢性骨髄性白血病(CML)またはフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)急性リンパ性白血病(ALL))を有する患者にて使用するためのもので、FDA認可済み)、並びにc−kit、PDGFR、c−FMS、EphA2、及びSFKsも標的とする。Src及びBcr−Ablの他の2つの経口チロシンキナーゼ阻害剤は、ボスチニブ(SKI−606)及びサラカチニブ(AZD0530)である。
【0048】
本発明の一実施形態において、本発明のPD−L1抗体またはコンジュゲートは、慢性ウイルス感染症を治療するために抗ウイルス剤と組み合わせて使用される。例えば、HCVに関しては、以下の作用物質を使用することができる。HCVプロテアーゼ阻害剤としては、ボセプレビル、テラプレビル(VX−950)、ITMN−191、SCH−900518、TMC−435、BI−201335、MK−7009、VX−500、VX−813、BMS790052、BMS650032及びVBY376が挙げられるが、これらに限定されない。HCV非構造タンパク質4B(NS4B)阻害剤としては、クレミゾール、並びに、非限定的にベンゾイミダゾールRBI(B−RBI)及びインダゾールRBI(I−RBI)を含む他のNS4B−RNA結合阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。HCV非構造タンパク質5A(NS5A)阻害剤としては、BMS−790052、A−689、A−831、EDP239、GS5885、及びPP1461が挙げられるが、これらに限定されない。HCVポリメラーゼ(NS5B)阻害剤としては、ヌクレオシド類似体(例えばバロピシタビン、R1479、R1626、R7128)、ヌクレオチド類似体(例えばIDX184、PSI−7851、PSI−7977)、及び非ヌクレオシド類似体(例えばフィリブビル(filibuvir)、HCV−7
96、VCH−759、VCH−916、ANA598、VCH−222 (VX−222)、BI−207127、MK−3281、ABT−072、ABT−333、GS9190、BMS791325)が挙げられるが、これらに限定されない。また、リバビリン、またはタリバビリン(ビラミジン;ICN 3142)等のリバビリン類似体、ミゾリビン、メリメポジブ(Merimepodib)(VX−497)、ミコフェノール酸モフェチル、及びミコフェノレートを使用することもできる。
【0049】
ある種の実施形態において、一回分の本発明の抗体またはハイブリッドタンパク質を対象に、毎日、1日おき、数日おき、3日に1回、週に1回、週に2回、週に3回、または2週に1回投与する。他の実施形態では、2、3または4回分の投与量の化合物または組成物を毎日、数日おき、3日に1回、週に1回、または2週に1回、対象に投与する。幾つかの実施形態では、投与量の化合物または組成物を2日、3日、5日、7日、14日、または21日間投与する。ある種の実施形態において、投与量の化合物または組成物を1ヶ月、1.5ヶ月、2ヶ月、2.5ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月間またはそれ以上投与する。
【0050】
投与方法としては、非経口、皮内、硝子体内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経鼻、硬膜外、経口、舌下、経鼻、脳内、腟内、経皮、経粘膜、直腸、吸入、または局所(特に耳、鼻、目、もしくは皮膚)が挙げられるが、これらに限定されない。投与方法は施術者の裁量に委ねられる。ほとんどの場合、投与により化合物を血流中に放出する。眼疾患の治療には、生物学的作用物質の硝子体内投与が好ましい。
【0051】
特定の実施形態において、局所的に化合物を投与するのが望ましい場合がある。この投与は例えば、局所注入・局所適用により、注射により、カテ−テルにより、またはインプラント(このインプラントは多孔性・非多孔性、またはゲル状物質であり、シラスティック膜または繊維等が含まれる)により達成され得るが、これらに限定されない。かかる例において投与は、化合物を実質的に血流中に放出することなく、選択的に局部組織を標的としてよい。
【0052】
例えば、吸入器もしくはネブライザを使用、及びエアロゾル化剤を処方して、またはフルオロカーボンもしくは合成肺サーファクタント中での還流により、経肺投与もまた用いることができる。ある種の実施形態において、従来の結合剤及びトリグリセリド等の賦形剤を用いて化合物を座薬として配合してよい。
【0053】
別の実施形態において、化合物を小胞、特にリポソームとして送達する(Langer,1990,Science 249:1527−1533;Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Bacterial infection,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez Berestein,ibid.,pp.317−327;通常同上の箇所を参照のこと)。
【0054】
別の実施形態において、化合物を制御放出系にて送達する(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138(1984)を参照のこと)。Langer,1990,Science 249:1527−1533の説明にて考察されている制御放出系の例を使用してよい。一実施形態では、ポンプを使用してよい(Langer,supra;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.Engl.J
.Med.321:574を参照のこと)。別の実施形態では、高分子材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macro mo 1.Chem.23:61を参照のこと;また、Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105も参照のこと)。
【0055】
上述の投与スケジュールは例示の目的のためだけに提供するものであり、これらに限定されるべきではない。当業者は速やかに、あらゆる投与が本発明の範囲内にあることを理解するであろう。
【0056】
本明細書において開示された発明原理の変形が当業者により行われ得ることが理解及び想定されるべきであり、また、このような変形は本発明の範囲に含まれるべきであることが意図される。
【0057】
本出願の至るところで、種々の出版物が参照されている。これらの出版物は、本発明が関係する現況技術をより完全に説明するために、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。以下の実施例において本発明を更に説明するが、決して本発明の適用範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0058】
混合リンパ球反応:
RosetteSepヒト単核細胞濃縮キット(StemCell technologies)を使用した全血からの陰性選択により、CD14陽性単核細胞を単離した。150ng/mLのGM−CSFと50ng/mLのIL−4を含む10% FBSを補充したIMDM中で、CD14陽性細胞を6〜7日間培養することにより、未成熟リンパ球由来の樹状細胞(mo−DC)を作製した。RosetteSepヒトCD4濃縮キット(StemCell technologies)を使用して、CD4陽性細胞を全血から陰性単離した。次に、異なるドナーからのmo−DC及びCD4陽性細胞をそれぞれ、CD4細胞に対するmo−DCの比率を1〜10にして、共培養した。抗PDL1抗体のブロック機能を評価するために、増量した抗PDL1抗体を、共培養の初めに添加した。場合によっては、増量したIL15もまた、共培養の初めに添加した。6または7日目にて、ELISAによる分泌IL−2及びIFNγの測定のために、上清を収集した。CD4細胞の数、及び増殖マーカーであるKi67の発現を、フローサイトメトリーにより評価した。
【0059】
PBMCの活性化
Histopaque−1077(Sigma)を使用してPBMCを全血から単離し、10% FBSを補充したIMDM中で培養して、SEB(0.1ug/mL)、PHA(1ug/mL)または抗−CD3クローンHiT3a(1ug/mL,eBioscience)のいずれかにより、3〜7日間活性化した。抗PDL1抗体または抗PDL1−SD15融合タンパク質のいずれかの結合を、活性化したPBMC内でフローサイトメトリーにより3日後に評価した。抗PDL1抗体の機能評価は、SEBによるPBMC活性化の間に、増量した抗PDL1抗体を添加することにより行った。2または3日目に
、IL−2及びIFNγの測定のために上清を収集した。抗PDL1−SD15融合タンパク質の場合、抗PDL1−SD15または抗PDL1抗体のいずれかの存在下で、他の活性化を行うことなくPBMCを培養した。6日目に細胞を収集し、フローサイトメトリーによりCD8及びグランザイムB、CD8及びパーフォリン、並びにCD4細胞の数を測定した。
【0060】
CD4及びCD8細胞の活性化:
CD4及びCD8陽性細胞を、RosetteSep濃縮キット(StemCell technologies)を使用して全血から陰性単離した。CD4細胞を、抗CD3、または抗CD3及びPDL1 Fcでコーティングしたビーズのいずれかにより、抗PDL1抗体の存在下にてIMDM、10% FBS中で活性化した。5日目に、ELISAによるIFNγ測定のために上清を収集し、フローサイトメトリーを使用して、増殖マーカーであるKi67の細胞での発現を評価した。抗CD3でコーティングされたビーズ、及びIL15または抗PDL1−SD15融合タンパク質のいずれかにより、CD8細胞を活性化した。場合によっては、抗CD3でコーティングしたビーズの代わりに、抗CD3及びPDL1 Fcを使用した。6または7日目にて、ELISAによりIFNγ及びTNFα分泌の測定のために上清を収集した。フローサイトメトリーを使用して、グランザイムB及びパーフォリンマーカーによるCD8の活性化の測定を行うために、細胞を収集した。
【0061】
抗体融合タンパク質の命名法:
抗PD−L1 IL15融合タンパク質を用いる実験においては、融合タンパク質に関してはより短い名称を説明で識別する。融合タンパク質tcclD7HC−SD15は、図の説明ではcD7−SD15と識別する。融合タンパク質tcclF8HC−SD15は、図の説明ではF8−SD15と識別する。
【0062】
ファージディスプレイライブラリーからの、PD−L1に対する特異的高親和性抗体
高親和性を有する抗PD−L1抗体を、ファージディスプレイライブラリーを使用して入手した。一手順では、Dyaxライブラリーから増幅したファージFabを3ラウンド分、免疫チューブ(immune−tube)に固定化した、組み換えヒトPDL1−Fc(PDL1 ECD及びヒトFc融合タンパク質、Q9NZQ7)、またはマウスPDL1−Fc(Q9EP73)のいずれかの上でパンニングした。ラウンド2(R2)及びラウンド3(R3)からのELISA陽性クローンをシークエンシングした。
【0063】
第2の手順では、Dyaxライブラリーから増幅したファージFabを、第1ラウンドでは組み換えヒトPDL1−Fc(PDL1 ECD及びヒトFc融合タンパク質、Q9NZQ7)上でパニングし、次いで、第2ラウンドでは活性化T細胞上でパニングした。第3ラウンドについては、活性化T細胞または組み換えヒトPDL1−Fcのいずれかを、パニングに使用した。可溶性PDL1−Fc、及びPDL1−Fcを発現する細胞の両方に結合可能なクローンをシークエンシングした。これらの抗体のV
H及びV
L可変領域配列を、
図13、及び表1の1〜26列に示す。
【0064】
更なる性質決定のため、固有のクローンをIgGに転換した。可変領域をDyax発現ベクターpBh1に挿入した。野生型CH1−CH2−CH3領域、並びに変異CH1−CH2−CH3(L234A及びL235A、本明細書ではLALA変異体とも称する)の両方を、IgGフォーマットに調製した。
【表1-1】
【表1-2】
【0065】
これらの抗体は、固相ELISAによりPD−L1に(
図1〜4)、及びHEK−293細胞(
図5)に特異的結合を有することが確認された。これらの抗体の存在下におけるPD−1のブロック:PD−L1の相互作用のブロックは、固相ELISAにより、及びPD−L1を発現するHEK−293細胞により測定した。Biacoreを使用して、各抗体の親和定数を計算した。
【表2】
【表3】
【0066】
これらの抗体はまた、未成熟単核細胞由来の樹状細胞(
図6A)、ヒトPD−L1発現乳癌株MDA−MB−231細胞(
図6B)、マウスPD−L1発現腫瘍株B16−F10細胞(
図6C)、並びにヒト活性化CD4及びCD8 T細胞への結合により、PD−L1を発現する体内細胞への結合を確認した。
【0067】
機能的活性抗PD−L1抗体は、PD−1/PD−L1相互作用をブロックし、T細胞増殖及び活性化を増加させる。
高親和性結合抗PD−L1抗体において、PD−1/PD−L1相互作用をブロックしてT細胞増殖を増加させる機能について測定した。陰性精製したCD4T細胞を、抗PD−L1抗体の存在下にて、αCD3、またはαCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズのいずれかによりin vitroで活性化した。αCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズで刺激したCD4細胞は、αCD3のみでコーティングしたビーズで刺激したCD4と比較して、少ない増殖、並びにIFNγ及びIL−2の分泌を示した。αCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズで刺激したCD4培養液に、機能的活性抗PD−L1抗体を添加することにより、抗体を添加しない培養液と比較して、CD4の増殖が増加する(CD4の総数、または増殖マーカーKi67の割合のいずれかにより測定)(
図7A)。αCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズを有するCD4培養液に、機能的活性遮断抗PD−L1抗体を添加することで、CD4によるサイトカイン分泌も増加する(上清に蓄積したIFNγ及びIL−2をELISAにより測定)。
【0068】
全血から単離したPBMCを、抗PD−L1遮断抗体の存在下にてスーパー抗原であるブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)により刺激した場合、サイトカイン分泌の増加が観察される。SEBで48時間培養したPBMCの上清(予め冷凍)を収集し、ELISAによりIFNγ及びIL−2を測定した。抗体を添加しなかった対照と比較した場合、複数の抗PD−L1抗体の培養液の中で、T細胞数の増加は観察されなかったが、IFNγ及びIL−2の量の著しい増加が観察された(
図7B)。
【0069】
加えて、抗PD−L1遮断抗体の存在下において培養したCD4 T細胞及びmo−DCの混合リンパ球反応(MLR)において、CD4増殖及び活性化の増加もまた、観察された。抗体を添加しなかった培養液と比較した場合、複数の抗PD−L1抗体は、MLR中でCD4増殖を増加させた(
図7C)。これらの抗体はまた、ELISAにより測定したとおり、IFNγ及びIL−2の分泌も増加させた。
【0070】
IL15は、in vitroでのT細胞増殖及び活性化に対する、抗PD−L1抗体の効果を増加させる。
抗PD−L1抗体のみを含む、CD4及びmo−DCの培養液と比較した場合、抗PD−L1遮断抗体及びサイトカインIL15の両方の存在下での、CD4T細胞とmo−DCとのMLRは、CD4増殖(
図8A)、IFNγ及びIL−2分泌の著しい増加をもたらした。これらのアッセイでは、IL15は、抗PD−L1抗体と等モル濃度で添加した。抗PD−L1抗体及びIL15が低濃度の場合(0.5nM、
図8A)、CD4増殖への幾らかの相乗効果が観察された。
【0071】
aCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズによりin vitroで刺激した全血から陰性精製したCD8もまた、用量に依存してIL15に応答する。αCD3及びPD−L1 Fcでコーティングしたビーズ、並びに抗PD−L1抗体を含むCD8の培養液にIL15を添加することにより、CD8増殖は大きく増加した(
図8B)。
【0072】
抗PD−L1−IL15融合タンパク質は、IL15をPD−L1発現抗原提示細胞に対して標的化し、応答するCD8細胞の増殖及び活性化を増加させる。
抗PD−L1抗体及びIL15融合タンパク質は、抗体のFc領域を、IL15Rのsushiドメイン及びIL15分子そのものに結合させることにより構築した。IL15Rα sushiドメイン、IRD−11 エクソン3(exone3)、リンカー及びIL15の融合(「SD15」として設計)を、配列番号:261として提供する。SD15は、従来のIgGの重鎖c末端に取り付けた。IL15Rα sushiドメイン、IRD−11エクソン3、リンカー及びIL15を有する融合タンパク質を、tccλD7可変領域及びIgG1 C
H1−C
H2−C
H3可変領域(配列番号:262)の重鎖c末端に取り付けた。この構築物はまた、IgG1重鎖の末端において、(1)「G−K」開裂の可能性を低下させ、(2)ベクターにクローニング部位(BamHI)を加えるため、に、KのSへの置換を含んだ。
【0073】
この軽鎖は従来の抗体のものである。軽鎖、及びLALA変異体を有するかまたは有しない融合重鎖の両方を、発現のためにDyax pBh1ベクターに挿入した。
【0074】
この融合分子は抗PD−L1−sushiドメイン−IL15または抗PD−L1−SD15を指定する。IL15がsushiドメインの代わりにFcに結合した、異なる型の融合タンパク質もまた構築し、この融合タンパク質はIL15機能活性を有しなかったため、我々は、このタンパク質をアッセイによっては陰性対照として使用した(抗PD−L1−SD15negと称する)。
【0075】
固相PD−L1 Fc結合ELISAアッセイで、抗PD−L1−SD15融合タンパク質の結合を抗PD−L1抗体と比較した際、著しい変化は観察されなかった(
図9A)。抗PD−L1−SD15タンパク質の結合を、これらそれぞれの元の抗PD−L1抗体と比較した際に、PD−L1を発現する活性化CD4細胞に対する結合親和性の幾らかの変化が観察された(
図9B)。これらそれぞれの抗PD−L1抗体と比較した際、抗PD−L1−SD15タンパク質は、PD−L1を発現する細胞に対して低い親和性を有する。しかし、細胞表面上で結合した抗PD−L1−SD15と、結合した抗PD−L1に対
する二次抗体の結合に差異が存在し得る。
【0076】
抗PD−L1−SD15融合タンパク質のIL15の融合を測定するために、抗PD−L1−SD15融合タンパク質またはIL15のいずれかの存在下で、全血から単離したPBMCを培養した。他の刺激は培養液に加えなかった。IL15と同様に、抗PD−L1−SD15融合タンパク質はNK細胞数を増加させ(
図10A)、CD8増殖(
図10B)及び活性化(グランザイムB陽性CD8の割合(%)で測定、
図10C)を増加させた。全ての培養液で、CD4の数の著しい増加は見られなかった(
図10D)。
【0077】
CD8での抗PD−L1−SD15活性を評価するために、αCD3、またはαCD3及びPDL1 Fcでコーティングしたビーズのいずれかの存在下で、これらの融合タンパク質をCD8培養液に添加した。この場合、PDL1 Fcが抗原提示細胞、αCD3及びPDL1 Fcでコーティングしたビーズ上に存在するとき、抗PD−L1−SD15はCD8増殖を著しく増加させた(
図11A、PDL1 Fcなしと、
図11B、ビーズ上にPD−L1 Fcあり)。更に、CD8活性化の著しい増加も観察された。グランザイムB陽性CD8細胞(
図12A)、及びIFNγ分泌(
図12B)の割合(%)が約10倍増加したことが測定されたとおり、cD7−SD15はCD8を活性化するのに必要な有効用量を低下させる。cD7−SD15はまた、IL15と比較した場合に、CD8活性化の最大量を増加させる(
図12A及びB)。抗PD−L1抗体、及び遊離IL15を添加した場合と比較すると、抗PD−L1−SD15融合タンパク質は、これらの組み合わせを別々に添加した場合より、CD8増殖をより高い水準まで増加させた(
図12C)。低用量の抗PD−L1−SD15融合タンパク質を用いて、より高い水準のCD8活性化及び増殖を達成することができるため、抗PD−L1−SD15融合タンパク質のこれらの性質は、免疫療法の設定において有益となるであろう。抗原提示細胞がPD−L1を発現する場合に、CD8が抗PD−L1−SD15融合タンパク質に対して増幅して応答することは、選択的CD8活性化を達成するのに有利となるであろう。
【0078】
抗PD−L1−IL15融合タンパク質の細胞毒性
抗PD−L1−SD15融合タンパク質が、PD−L1を発現する腫瘍細胞に対するCD8 T細胞の、IL15により誘発される細胞毒性を増加させるかどうかを測定するために、腫瘍細胞死の測定前の7日間、CD8 T細胞を、PD−L1を発現する腫瘍細胞に対して結合活性を有しない抗PD−L1−SD15融合タンパク質または抗KLH−SD15の存在下において、ヒトPD−L1を発現するMAD−MB−231腫瘍細胞と共培養した。ヒトCD8 T細胞及び腫瘍細胞を、10% FBSを補充したIMDM内で7日間共培養した。腫瘍細胞殺活性は、FACS内でViability Dye eFluor 780により染色した、死滅腫瘍細胞の数を測定することにより評価した。CD8 T細胞が仲立ちするMDA−MB−231の細胞毒性は、共培養中の抗KLH−SD15による治療と比較して、抗PD−L1−SD15融合タンパク質により著しく向上した(
図15)。更に、PD−L1−SD15融合タンパク質であるcD7−SD15は、マウスPD−L1に対する結合活性を有しないビヒクルまたはPD−L1−SD15融合タンパク質sD7−SD15で治療したマウスと比較して、マウスCT26結腸腫瘍細胞を静脈注射したマウスの腫瘍モデルにおいて、PD−L1を発現する腫瘍細胞を有するマウスの生残率を著しく増加させた(
図16)。これらの結果は、二機能性抗PD−L1−SD15融合タンパク質により、IL15により刺激された免疫エフェクター細胞を、PD−L1を過剰発現する主要部位に標的化することが、副作用を最小限にしつつ、抗腫瘍免疫を向上させる利点を有することを示している。このタイプの二機能性抗体サイトカイン融合タンパク質は、新規の免疫調節治療薬としての可能性を有し、腫瘍進行の制御においてより大きな抗腫瘍効果を達成する。
【0079】
親和性成熟
CDR−1Hのメチオニン位の3つにアミノ酸置換基を導入し、向上した親和性をスクリーニングすることにより、tccλD7重鎖の変異体を作製した。より詳細には、第1、第2及び第4のメチオニン位を同時に変化させたtccλD7の変異体(約1×10
8個)を含有するライブラリーを作製した。免疫チューブ上に固定化した組み換えヒトPDL1−Fc(PDL1 ECD及びヒトFc融合タンパク質、Q9NZQ7)、またはマウスPDL1−Fc(Q9EP73)上で、ライブラリーをパニングした(4ラウンド)。ラウンド3及びラウンド4のELISA陽性クローンをシークエンシングした。固有のクローンを競合ELISAにより比較した。表4は、スクリーンから入手した25個の変異体で観察した、親和性成熟したCDR−1H配列、及びCDRを含有する重鎖可変領域に対するアミノ酸置換基を、配列番号と共に示す。これらの変異体のアミノ酸配列はまた、表1に一覧で示した配列に記述されている。
【表4】
【0080】
tccD7_#114及びtccD7_#102(それぞれ、本明細書においてはtc
cD7_#1及びtccD7_#2とも〜と称する)の2つの変異体を、本明細書の他の場所に記載されているように、IgG、及びADCCの減少のためにヒンジ領域にLeu−Ala置換を含有するIgG形態に転換した。抗体を発現させ、更なる性質決定のために精製した。2つの親和性成熟変異体に対する可溶性PDL1に対する結合の向上を、
図17に示す。
図18は、ヒトPD1のヒトPDL1に対する結合をブロックした(左パネル)、及びマウスPD1のマウスPDL1に対する結合をブロックした(右パネル)2つの変異体を示す。親と比較して、変異体はMDA−MB−231細胞に対してより高い結合活性を示した(
図19)。
【0081】
親和性成熟変異体を、Th1サイトカインIL2及びIFNγの産生を促進する能力に関して試験した。全血から単離したPBMCを、抗PD−L1抗体の存在下において、スーパー抗原ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB、0.1μg/mL)で刺激した。SEBと共に7日間培養したPBMCの上清を収集し、IFNγ及びIL−2をELISAにより測定した。cD7と比較した場合、IFNγ及びIL−2の量の著しい増加が、抗PD−L1抗体cD7#1及び#2の変異体を含む培養液で観察された(
図20)。
【0082】
PD−L1結合領域、IL15Rα sushiドメイン及びIL15を含有する幾つかの融合タンパク質変異体を構築した。ある種の構築物は、IL15Rα sushiドメインとIL15部分との間にリンカーを含む。一構築物において、IL15受容体α sushiドメインのc末端に存在する、エクソン3の11個のアミノ酸を、種々の長さの「GS」リンカーで置換した。GSリンカーは、配列番号:325、315、317、319、321、及び323をそれぞれ有する構築物において、SGGSGGGGSGGGSGGGGS(配列番号:324;18個のアミノ酸)、SGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ(配列番号:314;20個のアミノ酸)、SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGG(配列番号:316;25個のアミノ酸)、SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGG(配列番号:318;30個のアミノ酸)、SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGG(配列番号:320;40個のアミノ酸)、及びSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGG(配列番号:322;50個のアミノ酸)を含む。
【0083】
融合タンパク質はHEK293細胞内に一時的に、または安定して発現し、これを、メーカーの説明書に従ってプロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した。ある種の実験において、分子の抗PD−L1部分のIg重鎖と軽鎖定常領域間の会合を安定させるために、λ軽鎖のC末端セリンを欠失した(本明細書では「ds」と表す)。
【0084】
sushiドメイン及びIL15(配列番号:325)を有するtccλD7親和性成熟変異体#102を含有する融合タンパク質に関し、フローサイトメトリーによりMDA−MB−231への結合を試験した。tccλD7を含有する融合タンパク質と比較して、全てが向上した結合を示した(
図21)。tccλD7親和力成熟変異体#102を含有する融合タンパク質はまた、IL15応答性ヒト巨核芽球性白血病細胞上で刺激活性を有することが確認された。10% FBS、及びヒト膀胱癌5637細胞の20%馴化培地を補充した、RPMI1640中の抗PD−L1−SD15融合タンパク質により、細胞を48時間培養した。細胞増殖を、CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存アッセイによる相対発光量(RLU)として測定した(
図22)。
【0085】
サイズ排除クロマトグラフィーによる分析は、発現した融合タンパク質の5%未満の凝集(
図24)、及び向上した血清安定性(
図25)を示した。