特許第6983929号(P6983929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983929ヘッドアップディスプレイのコンバイナ上の二重像を抑制するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983929
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイのコンバイナ上の二重像を抑制するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20211206BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-31637(P2020-31637)
(22)【出願日】2020年2月27日
(62)【分割の表示】特願2015-189582(P2015-189582)の分割
【原出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-115209(P2020-115209A)
(43)【公開日】2020年7月30日
【審査請求日】2020年3月30日
(31)【優先権主張番号】14/499,812
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ブレント・ディー・ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】カーンホワ・ルゥ
(72)【発明者】
【氏名】イライアス・エス・ハーム
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−057897(JP,A)
【文献】 特開2008−052076(JP,A)
【文献】 特開2008−165201(JP,A)
【文献】 特表平03−505489(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0034087(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0315577(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103792662(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射された画像を外部光景の像の上に重ね合わせるためのヘッドアップディスプレイシステムであって、
第1面と第2面を有するコンバイナであって、前記第1面を規定するように前記コンバイナ上に配置されるか又は前記第1面と前記第2面の間において前記コンバイナ内に配置された一軸性吸収偏光構造を含んだコンバイナと、
偏光された光を前記コンバイナ上に投射するように構成された偏光画像発生システムと、
を備え、
前記一軸性吸収偏光構造は、局所的な吸収軸を有し、前記局所的な吸収軸は、前記一軸性吸収偏光構造の各点において、前記ヘッドアップディスプレイシステムの設計視点に向かって前記コンバイナの中を伝達される前記外部光景の像の屈折した伝搬方向に実質的に整列しており、前記コンバイナは、前記画像発生システムからの前記偏光された光の第1部分を、前記第1面から前記ヘッドアップディスプレイシステムの前記設計視点へ向けて反射するように構成され、前記一軸性吸収偏光構造は、前記画像発生システムからの前記偏光された光の第2部分を実質的に吸収するように構成される、
ヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項2】
コンバイナと偏光画像発生システムとを備えるヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記コンバイナは、
第1面と第2面を有し第1像を第1方向に透過させるように構成された透明層であって、前記第1方向は、前記第2面から前記第1面に向かう方向である、透明層と、
前記第1面上又は前記透明層内に配置された偏光層であって、前記第1面は、表面の各点における接平面を規定し、前記偏光層は、前記表面の各点における前記接平面に対して非ゼロの角度の一軸性吸収軸を有し、それによって、前記透明層を通過して前記第2面から反射する偏光画像によって生成される屈折画像を抑制するように構成される、偏光層と、
を備え、
前記偏光画像発生システムは、前記偏光画像を前記コンバイナ上に投射するように構成され、反射された画像と前記第1像は、前記第1方向において結合される、
ヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項3】
ヘッドアップディスプレイシステムに用いられる光学ウィンドウであって、前記光学ウィンドウは、前記ヘッドアップディスプレイシステムの使用者の設計上の視点である設計視点を有し、前記光学ウィンドウは、
第1面と第2面を有する光伝達エレメントと、
前記第1面と前記第2面との間において前記光伝達エレメント内に配置された偏光構造と、
を備え、
前記光伝達エレメントと前記偏光構造は、
前記第1面及び前記第2面を通して、前記設計視点へ向かう任意の偏光の光をその偏光が前記偏光構造によって実質的に変化することなく透過させ、
前記設計視点と異なる方向へ向かう光を前記第1面、前記第2面、及び前記偏光構造を通して透過させ、その結果、前記光が前記偏光構造によって少なくとも部分的に偏光され減衰されるようにする、
ように構成される、
光学ウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、概してヘッドアップディスプレイ(HUD)に関し、より具体的には、コンバイナからの二重像を抑制(低減又は除去)するHUDに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] ヘッドアップディスプレイ(HUD)は、航空宇宙産業においてますますポピュラーになりつつある。既知のHUDは、典型的には、少なくともプロジェクタ、コンバイナ、及びイメージジェネレータを含む。プロジェクタは、イメージジェネレータから供給される画像を受け取り、HUDは、典型的には、無限遠若しくは他の遠距離に存在するように知覚される像を作り出すための、凸レンズ又は凹面鏡などの光学コリメータを含むだろう。
【0003】
[0003] コンバイナは、プロジェクタによって投射された像を、視界と投射された無限遠像とが同時に見えるような方法で反射させる。コンバイナは、典型的には、非常に精密に設計され制御された光学エレメントであり、平板状又は湾曲していてよい。いくつかのコンバイナは、プロジェクタからコンバイナ上に投射されたある波長の光を反射する一方で他の波長の光を透過させる、特別なコーティングを有することもある。
【0004】
[0004] 伝統的な従来技術のHUDは、典型的には、航空電子工学用途向けの性能要求を満たすために精巧な光学系に依拠している。これらの性能要求は、精密な角度制御と、パイロット若しくは他のユーザの両眼を取り囲むほど十分大きい射出瞳又はヘッドボックスにわたる均一性とを含む。一例として、嵩の大きいオーバーヘッドユニット(OHU)のサイズ、重さ、及びコストは、要求される性能のレベルによって大いに影響され得る。
【0005】
[0005] 図1を参照すると、例えば航空機に含まれるような既知のHUD100は、プロジェクタ102と、例えば航空機の風防に近接した部分反射エレメントである、像113及び116をレシーバ106、例えば人の目へ方向付けるコンバイナ104とを含む。伝統的な航空機のHUDでは、コンバイナ104は、典型的には、非常に精密に設計され制御された別々の光学エレメントであり、前面108即ち内面と、背面110即ち外面とを含む。プロジェクタ102は、画像112を前面108上に投射し、ここで所望の像113が、レシーバ106へ向けて反射されるとともに、画像112のうちのいくらかは、コンバイナ104の中を伝搬して、潜在的に不要な像116として背面110から反射する。前面108に対する背面110の反射率を低減するか、あるいは2つの反射像を効果的に位置合わせする方策がとられるのでないかぎり、像113及び116は二重像をレシーバ106へ提示し得る。外側のビュー118が背面110においてコンバイナ104へ入り、コンバイナ104を通ってレシーバ106まで伝搬して、反射されたHUD像113及び116と結合される。コンバイナ104は、この例では風防又は風除けから離れ且つ近接した光学エレメントとして説明されたが、ある乗り物HUDの構成、とりわけ自動車HUDは、別のエレメントを用いるのではなくコンバイナとして風除け又は風防を利用することがある。これらもまた、目に見える多重反射像の可能性を伴うだろう。
【0006】
[0006] 非常に多くの場合、また特に湾曲したコンバイナでは、注意深く設計され蒸着されたコーティングが、前面及び背面に適用されることがある。これらのコーティングの選択には、複数の目的がある。1つの典型的な目標は、前方の光景の高い「シースルー」透過率を維持するのと同時にHUDイメージの適切な反射率を提供することである。一般には部分反射コーティングが、片方の面、最も普通には前面の上に適用されるであろう。
他の目的は、前方の光景への着色を最小化しながらHUD反射の輝度を最大化することを含んでよい。更に別の目的は、コンバイナのリア面からの反射に関連した不要な視覚的アーティファクトを最小化することであってよい。一例として、コンバイナ面は、狭帯域反射多層干渉コーティングを有し、リア面は、何らかのタイプの反射防止コーティングを有してもよい。しかしながら、乗り物の風除け又は風防をコンバイナとして利用する際には、そのようなリアコーティングの実用性と有効性は、例えば雨又は他の汚染物の蓄積に起因して影響を受けることがあるだろう。
【0007】
[0007] したがって、コンバイナの背面からのHUDディスプレイの反射を除去又は低減することによって、コンバイナからの二重像を抑制するHUDを提供することが望まれる。更に、例示的な実施態様の他の望ましい特徴及び特性は、付随する図面並びに前述の技術分野及び背景技術とともに捉えれば、後続の詳細な説明及び添付のクレームから明らかとなるだろう。
【発明の概要】
【0008】
[0008] HUDシステム及び方法が、コンバイナの背面(外面)によるHUD画像の反射を除去又は低減する。
【0009】
[0009] 例示的な一実施態様では、 投射された画像を外部光景の像の上に重ね合わせ
るためのヘッドアップディスプレイシステムであって、第1面と第2面を有し一軸性吸収偏光構造を含んだコンバイナと、偏光された光を前記コンバイナ上に投射するように構成された偏光画像発生システムと、を備え、前記一軸性吸収偏光構造は、局所的な吸収軸を有し、前記第1面を規定するように前記コンバイナ上に配置されるか又は前記第1面と前記背面の間において前記コンバイナ内に配置され、前記局所的な吸収軸は、各点において、前記ヘッドアップディスプレイシステムの設計視点に向かって前記コンバイナの中を伝達される前記外部光景の像の伝搬方向に実質的に整列しており、前記コンバイナは、前記画像発生システムからの前記偏光された光の第1部分を、前記第1面から前記ヘッドアップディスプレイシステムの前記設計視点へ向けて反射するように構成され、前記一軸性吸収偏光構造は、前記画像発生システムからの前記偏光された光の第2部分を実質的に吸収するように構成される、ヘッドアップディスプレイシステム。
【0010】
[0010] 別の例示的な実施態様では、 ヘッドアップディスプレイシステムは、コンバ
イナと偏光画像発生システムとを備え、前記コンバイナは、第1面と第2面を有し第1像を第1方向に透過させるように構成された透明層と、前記第1面上又は前記透明層内の一方に配置された偏光層であって、前記第1面は、表面の各点における接平面を規定し、前記偏光層は、前記接平面に対して非ゼロの角度の一軸性吸収軸を有し、それによって、前記透明層を通過して前記第2面から反射する偏光画像によって生成される屈折画像を抑制するように構成される、偏光層と、を備え、前記偏光画像発生システムは、前記偏光画像を前記コンバイナ上に投射するように構成され、反射された画像と前記第1像は、前記第1方向において結合される。
【0011】
[0011] 更に別の例示的な実施態様では、方法は、偏光画像発生システムからの偏光画像をコンバイナと関連して配置された偏光構造上に投射するステップであって、前記偏光画像の第1部分は、前記偏光構造に到達するよりも前に前記コンバイナの第1面によって第1方向に反射される、ステップと、前記コンバイナの第2面から反射された屈折した偏光画像の第2部分を、前記偏光構造を通過する際に減衰させることによって低減させるステップと、非偏光像が、前記偏光構造によって偏光されることなく前記コンバイナ及び前記偏光層を前記反射された第1部分の方向に透過するようにするステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[0012] 以下、本発明は次の図とともに説明される。図において、同様の符号は同様の要素を表す。
【0013】
図1】[0013] 図1は、航空機又は他の乗り物における使用に適した既知のHUDシステムの図である。
図2】[0014] 図2は、二重像を抑制するHUDシステムの第1の例示的な実施態様である。
図3】[0015] 図3は、二重像を抑制するHUDシステムの第2の例示的な実施態様である。
図4】[0016] 図4は、二重像を抑制するHUDシステムの第3の例示的な実施態様である。
図5】[0017] 図5は、二重像を抑制するHUDシステムの第4の例示的な実施態様である。
図6】[0018] 図6は、二重像を抑制するコンバイナの例示的な実施態様である。
図7】[0019] 図7は、二重像を抑制するコンバイナシステムの別の例示的な実施態様である。
図8】[0020] 図8は、例示的な実施態様による例示的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0021] 以下の詳細な説明は本質的に単なる例示であり、本主題又は本願の実施態様及びそのような実施態様の使用を限定するようには意図されていない。例示として本明細書で説明される如何なる実装も、他の実装より好ましい又は有利であると必ずしも解されてはならない。更にまた、前述の技術分野、背景技術、発明の概要、又は以下の詳細な説明において提示される、如何なる明示的若しくは暗示的な理論によっても拘束される意図は何ら存在しない。
【0015】
[0022] この書面では、例えば第1及び第2等の相関的な用語が用いられることがあるが、それは1つのエンティティ又はアクションを別のエンティティ又はアクションから区別するためだけのものであり、必ずしも実際のそのような関係性又はそのようなエンティティ若しくはアクション間の順序を要件とし、あるいは暗示するのではない。「第1」、「第2」、「第3」等のような序数は、単に複数のうちの異なる1つを表すだけであり、クレームの言語によって明確に定義されるのでない限り、如何なる順序あるいはシーケンスも意味しない。クレームのいずれかにおける文章のシーケンスは、クレームの言語によって明確に定義されるのでない限り、処理ステップがそのようなシーケンスによる時間的又は論理的な順序で実施されなければならないということを意味しない。処理ステップは、クレームの言語と矛盾せず、また論理的に無意味でない限度において、本発明の範囲から逸脱することなく任意の順序で相互に交換されてよい。
【0016】
[0023] 簡潔さの目的のために、光学システムに関するありふれた手法、並びにあるシステム及びサブシステム(及びそれらの個々の動作部品)の他の機能的側面は、本明細書において詳しくは説明されないことがある。多くの代替的若しくは付加的な機能的関係又は物理的関連が、本主題の実施態様には存在し得るということが留意されるべきである。
【0017】
[0024] 本明細書で説明される実施態様は航空機のHUDシステムに特有であるけれども、本発明の主題の原理は、海上航行船舶及び自動車におけるHUDなどの他の乗り物のディスプレイシステムに適用されることができること、並びに画像のいくつか又は全てが、可視光以外の周波数として伝搬されてよいことが、認識されるべきである。
【0018】
[0025] 本明細書において技術は、機能的及び/又はブロックコンポーネントの点から、並びに様々なコンピューティングコンポーネント又はデバイスによって実施されること
のできる動作、処理タスク、及び機能の象徴的な表現に関連して説明されることがある。そのような動作、タスク、及び機能は、時には、コンピュータ実行、コンピュータ化、ソフトウェア実装、又はコンピュータ実装される、と称される。実際、1又は複数のプロセッサデバイスは、システムメモリ内の記憶域にあるデータビットを表す電気信号の操作によって、また信号の他の処理によって、説明される動作、タスク、及び機能を実行することが可能である。図に示される様々なブロックコンポーネントは、特定の機能を実施するように構成された任意の数のハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアコンポーネントによって実現されることができる、ということが認識されるべきである。
【0019】
[0026] この説明の過程において、様々な例示的実施態様を示す異なる図による同様の要素を特定するために、同様の符号が用いられることがある。
【0020】
[0027] 図2を参照すると、HUDシステム200の一実施態様の機能的なブロック図が描かれており、偏光画像発生システム201と、前面208に隣接して位置する偏光層205を有したコンバイナ204とを含む。この例示的な実施態様では偏光層205はコンバイナ204の前面に隣接して位置しているが、偏光層205は、代替的に、コンバイナ内のどこかに形成又は配置されてもよい。偏光画像発生システム201は、例えば、偏光画像212を投射するためのプロジェクタ202と偏光子(偏光フィルタ)203とを含んでよい。
【0021】
[0028] この例示的な実施態様では、コンバイナ204は航空機における風防である。しかしながら、他の例示的な実施態様では、コンバイナ204は、風を逸らす以外の他の目的に用いられることのできる透明層であってよい。例示的な実施態様によれば、コンバイナ204は、数多くの既知のコンバイナのうちのいずれか1つを用いて、又は、今後開発され、操作者が見ることのできるフォーマットでテキスト情報、画像情報、及び/又はアイコン的情報を提供するのに適したコンバイナを用いて、実現されることができる。例えば、HUD用途向けに説明される有益性に加えて、説明される構成の更なる有益性が考慮されることが可能である。
【0022】
[0029] プロジェクタ202は、ユーザによって所望される情報、例えば、航空環境において用いられる場合はフライトのパラメータ又は条件に関連する情報を投射する機能を実現するように、様々に構成されてよい。具体的に、HUDシステム200は、ホスト航空機の現在のフライト状態データを処理するように構成されてよい。この点に関し、フライト状態データのソースは、ホスト航空機の動作状態、ホスト航空機が動作している環境、フライトパラメータ等に関連した様々な種類のデータを生成、測定、及び/又は提供する。フライト状態データのソースによって提供されるデータは、限定なしに、対気速度データ、対地速度データ、高度データ、ピッチデータとロールデータを含む姿勢データ、ヨーデータ、GPSデータなどの地理的位置データ、時間/日付情報、進行方向情報、気象情報、飛行経路データ、進路データ、レーダ高度データ、幾何学的高度データ、風速データ、風向データ等を含んでよい。
【0023】
[0030] プロジェクタ202は様々に実現されることができ、適合能力を有するのであってよいということが認識されるだろう。本明細書で用いられる「適合能力を有する(conformal-capable)」という用語は、説明される実施態様が、コンバイナ又は他のイメー
ジコンバイナエレメントを通して観察可能な前方の光景に実質的に適合した(conformal to)イメージを表示するように構成されることが可能である、ということを示すが、本システムは、非適合(non-conformal)モード及びアプリケーションでも、外の光景に対し
てほとんど又は全くシースルーでない構成でも用いられることができる。
【0024】
[0031] 偏光子203は、画像212の電磁放射を偏光させるようにプロジェクタ20
2の上に配置され、又は他の方法でプロジェクタ202と結合される。代替的に、偏光子203は、もし偏光画像212が偏光画像発生システム201によって本来的に偏光されているなら、省略されてもよい。好ましい偏光子203は一軸性吸収型偏光子エレメントであるが、これは限定的であるようには意図されず、他の種類の偏光エレメント(例えば、反射型、誘電体型、及びビームスプリット型偏光子、ワイヤグリッド偏光子、又はコレステリック偏光子と適切な1/4波長位相差フィルムとの組み合わせ)が偏光子203に用いられることが可能である。
【0025】
[0032] 図2は、説明の目的及び記載の平易さのためのディスプレイシステム200の簡略化した表現であり、本主題の適用性又は範囲を限定するようには何ら意図されていない、ということが理解されるべきである。実際、ディスプレイシステム200は、当該分野において認識されるように、付加的な機能及び特徴を提供するための数多くの他のデバイス並びにコンポーネントを、単独で、又は追加のシステムと組み合わせて含んでよい。
【0026】
[0033] 例示的な実施態様によれば、本明細書で説明される装置及び方法は、偏光が一般に2次元パラメータではなく3次元パラメータであるという事実を利用する。図2は、任意の偏光を有した前方の外部光景からの(外側のビューと称されることがある)光218が、コンバイナ204を通り抜けて目206へ向けて伝搬され、反射画像213と結合される例示的な実施態様である。偏光画像発生システム201(コリメート光学系はオプションである)からの画像212はコンバイナ204の方へ向けられ、画像212の第1部分が(外側のビュー218と結合される)画像213として目206へ向けて反射される。第2部分214(「屈折光線」)はコンバイナに入り、その一部215がコンバイナの背面210によって反射される。この屈折光線214はその後反射光線215となって、潜在的な二重像である光線216として目へ向かって進行し得る。しかしながら、本明細書で説明される発明は、以下で論じられるように、第2部分214、215、216、及びしたがって二重像を除去し、あるいは実質的に低減する。様々な図がコンバイナ204の反射面又はコンポーネントを前面208であるとして示すが、前面の上には付加的な層がオプションとして存在することが可能であろう、ということが留意されるべきである。開示される実施態様は、画像212に関係する光線が、偏光層205に到達するより前にコンバイナの前面又は反射面に到達することを想定するが、当該前面又は反射面が大気に接する外部面であることは要求されない。
【0027】
[0034] 図2はディスプレイからの1本の光線の経路をトレースしているが、本発明は複数の画像の問題に対して上手く作用する。複数の画像を有する例については、米国特許5,013,134の図2を参照されたい。同図は、(コリメートされていない)画像上の共通の点から放出された2つの光線が、どのように観察者の網膜上の別個の点に行き着くことができるかを示す。当該特許はまた、ゴースト像を少なくともある程度はある範囲の角度及び位置にわたって主画像の上に重ね合わせることを許容するテーパー状の風除けのアプローチ(図6を参照)を教示する。二重像が互いに重ね合わされる別の確立された特別なケースは、平行平面から反射するよくコリメートされたイメージのケースに存在する。
【0028】
[0035] 図2の実施態様は、(短い平行な線によって表された)傾斜軸209を有する偏光層205を含むことによって多重像の問題に対処する。このコンバイナ204内の一軸性吸収軸に対しては、傾斜軸209と実質的に揃った伝搬方向を持つどんな光も吸収されない。何故なら、その光の両方の偏光軸が傾斜軸209と直交しているからである。傾斜軸209は、偏光層205の面(あるいは、もし湾曲しているなら、偏光層に関する当該特定の近傍若しくは場所における局所的な平面又は接平面)に対して非ゼロの角度に向けられている。
【0029】
[0036] しかしながら、偏光画像発生システム201からの屈折光線214は、その光の少なくとも一部分を傾斜軸209に沿って偏光させることが可能であり、即ち電界は傾斜軸209に直交ではなく、それにより、傾斜軸209によって減衰させられる。傾斜軸209の偏光度に加えて、偏光画像発生システム201の出力偏光を適切に調整することによって、例えばコンバイナのところでP偏光を優勢にすることによって、第2面210の反射216は効果的に低減又は除去されることが可能である。
【0030】
[0037] 別の例示的な実施態様によれば、傾斜軸偏光子205は、図2におけるようにコンバイナ204に取り付けられたエレメントである。傾斜軸偏光子205は、恒久的に積層されることが可能であろうし、又は代替的に、コンバイナ204のビューエリア若しくはオプションとしてコンバイナ204のより大きなエリアをカバーする塗布膜であってもよいであろう。
【0031】
[0038] 図3の例示的な実施態様は、コンバイナ204内、例えば多層コンバイナ204の内部に埋め込まれた、傾斜軸209を有した偏光子205を備える。
【0032】
[0039] 更に別の例示的な実施態様では、設計視点(design eye point)(DEP)からの外側ビューの減衰が許容できる限りにおいて、傾斜軸209は、外側ビューの内部伝搬角度と完全には揃わず、偏光層205の局所的な平面に対して垂直(図4を参照。同図では、短い平行な線209が偏光層205の面に直角である)、即ち垂直(homeotropic
)軸又はz軸であってもよいであろう。外側ビュー218と、存在する場合には屈折光線214の反射215の両方が、層205によるいくらかの僅かな減衰を受けるであろうが、屈折光線214は更に、関与する細かい反射及び屈折角にもちろん依存して、相当量の減衰を経験することが可能であろう。
【0033】
[0040] 所望の反射面によってどの波長又は偏光が優先的に反射されるかを選択的に変更するために、付加的なコーティングが膜又はコンバイナの中に/上へ組み込まれることが可能であろう。図5を参照すると、コンバイナ204は、偏光層205に加えてコーティング205’及び205”を含む。これは、特に偏光画像発生システム201の画像212がコンバイナ204の反射に対してP偏光である場合に望ましいだろう。あるいはまた、例えば、S偏光を有する入射光を反射して、屈折光線の偏光をより効果的に吸収されるように回転させるために、偏光位相差層205’、205”が用いられることが可能であろう。同様に、傾斜軸偏光子205とコンバイナ204のリア面210との間に、HUDシステム200内の当該領域を通過する光の偏光を回転させるために、位相差層が追加されることが可能であろう。
【0034】
[0041] 図6に示された湾曲したコンバイナの例示的な実施態様を参照すると、偏光軸209の傾斜は、その軸がDEPからのある角度範囲の視線に揃うように、コンバイナ204のエリアにわたって変化することが可能であろう。同様のバリエーションが、いくつかの前の図に描かれたような平板状のコンバイナのケースに適用されることも可能であろう。
【0035】
[0042] 傾斜した一軸配向を有する単一の偏光層を表すほか、図6の図は、従来型偏光子の技術を利用する付加的な実施態様を描写するものと解釈されることも可能である。偏光層内の短い線を傾斜した吸収軸として解釈するのではなく、それらの線は、バルク層の中に埋め込まれた従来型の偏光子シート又は偏光子片を表すことが可能であろう。一例として、そのようなバルク層は、数ミリメートルの厚さであってよいであろう。図6又は7には示されていないが、ガラスなどの更なる支持層も同様に存在し得る。そのような偏光子片は、示されたような直線軸に直交ではない偏光を有する入射光の一部を吸収するだろうが、観察者の目には実質的に透明のままであるだろう。何故なら、それらの光線方向の
それぞれは、示されたような直線軸に対して実質的に垂直な両方の偏光を有するだろうからである。この実施態様は、従来型偏光子を用いて多重反射の抑制を可能にするが、同時に、航空機の操縦などのある用途においてHUDに通常必要とされる、例えば80%以上の高い透過率を維持する。重要なのは、注意深く材料の屈折率整合をとることと、視覚的アーティファクトを乱すことにつながる可能性があり得る空気溜まりを避けることであろう。観察時のジオメトリは、視覚的アーティファクトを防止するために設計視点(DEP)の視線配置に適切に一致すべきである。ここで、DEPは、外の光景を観察する際にパイロットの目206に対するノミナル位置であるとみなされる。
【0036】
[0043] 厚さ及び詳細な投射ジオメトリに応じて、この「積層された」従来型の偏光子構造は、積層された層間がはっきりと分離して、潜在的に非常にまばらであることが可能である。
【0037】
[0044] この代替的な構成は、従来型のシート又は小片の吸収軸が、S偏光を有する入射光を優先的に吸収するように紙面に対して垂直であるということを仮定することによって、より一層広く解釈されることが可能である。しかしながら、このケースでは、コンバイナを透過した外部の前方光景の中に明暗の縞が現れることを回避するために、層がDEPの視線に一致することがより一層重要であるだろう。
【0038】
[0045] なおも図6を参照して、更に別の例示的な実施態様では、積層された層のそれぞれは、当該層の中へ屈折してくる両方の偏光を実質的に吸収する、交差した偏光子を含むことが可能であろう。これを達成するためのより単純な方法は、埋め込まれて積層された層が、あるいはファイバさえもが、偏光子タイプの機能を必要とすることなく、非常に薄く且つ濃色である、あるいは不透明な黒色でさえあることであろう。これは、軸外(off-axis)伝搬を低減するための光ファイバフェイスプレート内の域外吸収(extramural absorption)(EMA)材料の使用、軸外スループットを低減するための埋め込みルーバ
ーの使用、あるいは同様に、X線コリメータ内で用いられるようなソーラスリット(Soller slit)の使用に幾分類似しているであろうが、HUDの前面反射と連携した有用な実
施態様の点において顕著な特質を持つ。S偏光を吸収する上述の積層体と同様に、もしDEP視線の高透過率と最小透過率の変調が重要であるならば、位置合わせトレランスは必然的に厳しくなるであろう。
【0039】
[0046] 図7を参照すると、例えば図6の調整された傾斜角は、垂直(homeotropic)
偏光子の小片又はシート220を用いることによって達成されることも可能であろう。このケースでは、個々のシートは、各小片の垂直(homeotropic)吸収軸がその場所におけ
るノミナルな視線と実質的に揃うように、図6の従来型の偏光子片のケースに対しておよそ90度回転するであろう。そのようなケースでは、屈折光線のカバー範囲に明白なギャップが存在しないように、小片を互い違いにする又はオーバーラップさせることが好ましいであろう。
【0040】
[0047] 偏光層(又は本明細書でいくつかが開示された、関連する偏光構造 )205
は、風防/コンバイナ兼用、又は、風防若しくは風除けとは分離したコンバイナのどちらに関して用いられるのにも有効であろう。分離したエレメントであるケースでは、明示されてはいないが、典型的には、様々な図2乃至7におけるコンバイナ204の近傍且つ左側に別の透明な風防構造が存在するであろう。そのような分離した風防とコンバイナとの相対的な角度によっては、その風防は、潜在的にHUDイメージの更なる多重反射に寄与し得るであろうが、本発明は、それらの反射も同様に減衰又は除去するであろう。何故なら本発明は、もし存在するならそのような分離した風防に到達する前に光線を減衰させることによって機能するからである。
【0041】
[0048] 図1−7は様々な平板状及び湾曲したコンバイナの領域を示しているが、代替的なコンバイナの湾曲が同様に考慮されることが可能である、ということが理解されるべきである。例えば、ある表面によって規定される「平面」への言及がなされる場合、湾曲面についての対応する解釈は、言及されている当該点に対する局所的な平面又は接平面であろう。
【0042】
[0049] 好ましい実施態様では、傾斜軸構造は、例えば安定性の高い二色性色素又は(大抵の従来型偏光膜におけるような)ヨウ素系構造の使用によって、光度測定的に(photometrically)安定である。しかしながら、様々な傾斜の吸収軸を含む、傾斜した吸収軸
を有したそのような偏光子を作製するための様々な実施態様が可能である。
【0043】
[0050] 一例として、適切な二色性ゲスト色素/吸収材料を含んだ配向可能なホスト材料の架橋(又は乾燥)中における固定又は可変印可場の使用など、傾斜角を垂直から変更するための様々な方法が可能である。
【0044】
[0051] 傾斜を実現又は変更するための代替的な方法は、ほぼ垂直な(homeotropic)
偏光膜に印可される機械的な剪断力の使用によることが可能であろう。剪断力は局所的に、又は膜の大きなエリアにわたって印可されることが可能であろう。更に別のものは、膜を特定の表面に適合させることによるものである。
【0045】
[0052] 本発明の別の顕著な利益は、本発明は外部面210による反射の特性に依存しないということである。何故なら本発明は、屈折光線214を当該外部面210に到達する前に減衰させるからである。例えば、外部面210上の曇りや雨は(屈折光線214として)外部面に到達するHUD光212の拡散散乱を引き起こし得るであろうが、この開示されたアプローチは、当該外部面210に到達する前にそのような光214を減衰させるであろう。
【0046】
[0053] 本明細書で説明される方法は、観察される像の実効性及び/又は明瞭性に影響を与える望まれない反射を低減するための、既知の又はまだ説明されていない他の方法と共にもちろん用いられてよい。
【0047】
[0054] 図8は、ディスプレイシステム、例えば操縦室のディスプレイ又は自動車のディスプレイでの使用に適した方法800の例示的な実施態様を示すフローチャートである。説明の目的のために、方法800の以下の記載は、前述の図と共に上で言及された要素を参照することがある。方法800は任意の数の付加的な又は代替的なタスクを含んでよいこと、図8に示されたタスクは図示された順序で実施される必要はないこと、及び、方法800は本明細書では詳しく説明されない追加の機能性を有したより包括的な手順又は方法に統合されてよいことが、認識されるべきである。その上、図8に示されたタスクの1又は複数は、意図された全体の機能性が損なわれないでいる限り、方法800の実施態様から省略されることが可能であろう。
【0048】
[0055] 図8の例示的な方法によれば、方法800は、偏光画像発生システムからの偏光画像をコンバイナ内に配置された偏光構造上に投射するステップ802であって、前記偏光画像の第1部分は、前記偏光構造に到達するよりも前に前記コンバイナによって第1方向に反射される、ステップと、前記コンバイナの背面から反射された屈折した偏光画像の第2部分を、前記偏光構造を通過する際に減衰させることによって低減させるステップ804と、非偏光像が、前記偏光構造によって偏光されることなく前記コンバイナ及び前記偏光層を透過するようにするステップ806と、を含む。
【0049】
[0056] 特定の実施態様に関する利益、他の利点、及び課題に対する解決策が上述され
た。しかしながら、当該利益、利点、課題に対する解決策、及び、任意の利益、利点、若しくは解決策が生じる又はより明白になるようにするあらゆる要素は、いずれか若しくは全てのクレームの決定的な、必須の、又は本質的な特徴又は要素として解されてはならない。本明細書で用いられる際、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、
又はそれらの任意の他の変化形は、非排他的な包含をカバーするように意図され、したがって、要素のリストを含む処理、方法、品目、又は装置は、それらの要素だけを含むのではなく、明示的に列挙されていない又はそのような処理、方法、品目、若しくは装置に内在していない他の要素を含んでよい。
【0050】
[0057] 少なくとも1つの例示的な実施態様が前述の詳細な説明において提示されたけれども、膨大な数の変形が存在するということが認識されるべきである。例示的な実施態様は例に過ぎず、本発明の範囲、適用性、又は構成を何ら限定するようには意図されていない、ということも認識されるべきである。そうではなく、前述の詳細な説明は、本発明の例示的な実施態様を具現化するための便利なロードマップを当業者に提供し、添付のクレームに記載される本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様において説明された要素の機能及び構成に様々な変更がなされることができる、ということが理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8