(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図面において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、X軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直線に平行である。
【0010】
図1は、本実施形態における溶着装置1の外観を示す斜視図である。また、
図2Aは、
図1に示す溶着装置をZ軸正方向側から見た概略平面図である。
図2Bは、
図1に示す溶着装置1のY軸断面を示す概略断面図である。
図2Cは、
図1に示す溶着装置1のX軸断面を示す概略断面図である。
【0011】
溶着装置1は、被加工板2の表面に所定の酸化物粒子を溶着させる。本実施形態において、被加工板2は、窓ガラス等に用いられるガラス板であるが、被加工板2はガラス板に限定されない。被加工板2は、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂のような樹脂で形成された樹脂板でもよい。以下、溶着装置1の構成について説明する。
【0012】
(構成)
図1〜
図2Cに示すように、溶着装置1は、供給部11、酸化ガス生成部12、ダクト部13、及びノズル部14を備える。
【0013】
図1〜
図2Bに示すように、供給部11は、管状部材111と、管状部材111と連結された貯留室112とを有する。管状部材111は円筒形状を有する。貯留室112は略直方体形状を有する。管状部材111及び貯留室112のそれぞれの内部空間はつながっている。
【0014】
管状部材111は、開口部11aを有する。開口部11aから酸化物粒子の原料を含む可燃ガスが投入される。酸化物粒子の原料を含む可燃ガスの詳細については後述する。
【0015】
貯留室112の下部は開放され、貯留室112の内部空間は酸化ガス生成部12の内部空間とつながっている。
【0016】
図1〜
図2Cに示すように、酸化ガス生成部12は、管状部材121と、管状部材121と連結された燃焼室122とを有する。管状部材121及び燃焼室122は、略直方体形状を有し、それぞれの内部空間はつながっている。
【0017】
管状部材121は、開口部12aを有する。開口部12aから希釈ガスが投入される。
図2A〜
図2Cに示すように、燃焼室122の内部において、供給部11側にバーナー123が設けられている。また、
図2Bに示すように、燃焼室122において管状部材121と反対側には、点火装置124が設けられている。
【0018】
図2A及び
図2Cに示すように、バーナー123は、スリット123aを有する。スリット123aの長辺(Y軸方向)と短辺(X軸方向)の長さはそれぞれ、長さLと長さW0(L>W0)である。供給部11から酸化物粒子の原料を含む可燃ガスがバーナー123に供給され、点火装置124によって点火されると、スリット123aの形状に応じた扁平状の火炎が形成される。なお、扁平状の火炎を形成するため、スリット123aの長辺と短辺の長さの比(L/W0)は、5以上、且つ28以下が好ましい。
【0019】
ここで、酸化物粒子の原料を含む可燃ガスと希釈ガスについて説明する。酸化物粒子は、例えば、シリカ(SiO
2)粒子又は酸化チタン(TiO
2)粒子である。本実施形態では、酸化物粒子としてシリカ(SiO
2)粒子を例に説明する。
【0020】
可燃ガスは、炭化水素系ガスと、酸化物粒子の原料を含む液相原料を気化した気相原料とを含有する。本実施形態では、ケイ素(Si)を含む液相原料を気化させた気相原料(以下、シリカ原料)と、炭化水素系ガスと空気とを混合したものが可燃ガスとして用いられる。
【0021】
ケイ素(Si)を含む液相原料は、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のシラン化合物でもよい。炭化水素系ガスは、プロパン(C
3H
8)ガス、ブタン(C
4H
10を主成分とする)ガス、エタン(C
2H
6)ガス等であってもよいし、プロパン及びブタンの混合ガスであってもよい。炭化水素系ガスとシリカ原料との混合比は、例えば、炭化水素系ガスに対してシリカ原料は0.2以上、且つ0.9以下が好ましい。
【0022】
希釈ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガス、又は空気である。
【0023】
可燃ガスの燃焼によって、シリカガス、二酸化炭素、及び水蒸気が発生する。希釈ガスによってシリカガスは希釈される。希釈ガスの流量は、ノズル部14から噴出させるシリカ粒子の分布密度、及びノズル部14からシリカ粒子を噴出させる速度に応じて調整可能である。本実施形態において、希釈ガスの流量(G)と、シリカガスの流量(V)との比(V/G)は、0.6以上、且つ4.0以下が好ましい。
【0024】
続いて、ダクト部13とノズル部14について、
図1、
図2B、
図2C及び
図3を用いて説明する。
図3は、
図2Cに示すダクト部13の一部とノズル部14とを拡大した概略断面図である。
【0025】
ダクト部13は、略直方体形状を有する管である。
図2B及び
図2Cに示すように、ダクト部13の内部空間は、燃焼室122の内部空間及びノズル部14の内部空間とつながっている。ダクト部13は、燃焼室122で発生したシリカガスをノズル部14へ導く。
図2B及び
図2Cに示すように、ダクト部13における内部のY軸方向とX軸方向の長さはそれぞれ、長さWと長さW1(W1<W)である。
【0026】
図2C及び
図3に示すように、ノズル部14は、X軸方向の長さがZ軸正方向側よりZ軸負方向側が小さい凸形状を有する。
図3に示すように、ノズル部14は、ノズルスリット14aと、ノズルスリット14aにつながる溝14bとを有する。
【0027】
ノズルスリット14aと溝14bのY軸方向の長さは、ダクト部13のY軸方向の長さW(
図2B参照)と同等である。ノズルスリット14aは、幅(X軸方向の長さ)と深さ(Z軸方向の長さ)はそれぞれ、幅W3と深さH1である。また、溝14bの幅と深さはそれぞれ、幅W2と深さH2である。ノズルスリット14aの幅W3は、溝14bの幅W2よりも小さく、ノズルスリット14a深さH1は、溝14bの深さH2よりも大きい。
【0028】
シリカ粒子のサイズは、ノズルスリット14aのZ軸方向の長さH1を調整することによって揃えられる。本実施形態において、ノズルスリット14aから噴出されるシリカ粒子は、粒子サイズが60nm以上、且つ400nm以下のナノ粒子であるが、粒子サイズはこれに限定されない。粒子サイズは、40nm以上、且つ1000nm以下であってもよい。
【0029】
粒子サイズが60nm以上、且つ400nm以下のシリカ粒子をノズルスリット14aから噴出させる場合、ノズルスリット14aの幅W3とZ軸方向の長さH1との比(H1/W3)は、7以上、且つ30以下が好ましい。また、ダクト部13のY軸方向の長さWとノズルスリット14aの幅W3との比(W/W3)は、15以上、且つ600以下が好ましい。また、ダクト部13のX軸方向の長さW1とノズルスリット14aの幅W3との比(W1/W3)は、20以上、且つ70以下が好ましく、溝14bの幅W2とノズルスリット14aの幅W3との比(W2/W3)は、W1/W3以下が好ましい。
【0030】
ノズル部14において、溝14bの外側には第1平面部141を有し、溝14bの底部に、第1平面部141と略平行な第2平面部142を有する。溝14bにおける内壁143は、ダクト部13の内壁131と略平行であり、第2平面部142に対して略垂直である。第1平面部141及び第2平面部142は、ノズルスリット14aの噴出方向(Z軸方向)に対して略垂直に設けられている。
【0031】
(溶着処理)
次に、溶着装置1における溶着処理について説明する。溶着装置1において被加工板2にシリカ粒子を溶着させる際、被加工板2(
図1参照)を溶着装置1に対してX軸方向又はY軸方向に一定速度で移動させてもよいし、溶着装置1を被加工板2に対してX軸方向又はY軸方向に走査させてもよい。要は、被加工板2と溶着装置1とを相対的に移動させればよい。
【0032】
図2Bにおいて、供給部11から酸化ガス生成部12の燃焼室122へシリカ原料と炭化水素系ガスと空気とを混合させた可燃ガスが供給され、点火装置124が点火される。これにより、上記可燃ガスが燃焼され、バーナー123によって扁平状の火炎が形成される。そして、火炎に向けて管状部材121から希釈ガスが供給され、燃焼によって生じたシリカガスは希釈ガスと混合される。燃焼室122で生成されるシリカガスに含まれるシリカ粒子は、約1500℃程度の温度を有する。
【0033】
図2B及び
図2Cにおいて、燃焼室122で発生したシリカガスは、ダクト部13からノズル部14へと導かれる。シリカガスに含まれるシリカ粒子は、ノズル部14へ到達するまで合体成長を繰り返し、約600℃程度の温度を保持した状態でノズルスリット14aから噴出される。ノズルスリット14aからシリカ粒子が噴出される速度は、例えば、20m/秒以上、且つ50m/秒(ノルマル(25℃)換算値)である。被加工板2がガラス板である場合、図示しないヒータによって被加工板2は、被加工板2が軟化する温度まで加熱される。本実施形態において、被加工板2はガラス板であるため、約600℃程度まで加熱される。ノズルスリット14aから噴出されたシリカ粒子が被加工板2に衝突することにより、被加工板2の表面が溶融し、被加工板2の表面にシリカ粒子が均一に溶着される。つまり、シリカ粒子が不均一に折り重なることなく、略均等な高さで被加工板2の表面に溶着される。
【0034】
(まとめ)
本実施形態における溶着装置1は、以下の構成を備えることによって、被加工板2の表面にシリカ粒子を均一に溶着させることができる。
(1)バーナー123への供給燃料
溶着装置1は、シリカ原料と炭化水素系ガスとを混合した可燃ガス、すなわち、気相原料を供給部11からバーナー123に供給する。液相原料の場合、火炎に液相原料を噴霧する等して燃焼させるため、燃焼によって生じるシリカガスに含まれるシリカ粒子が不均一に分散されやすく、燃焼室122内でシリカ粒子の濃度の粗密部分ができる。気相原料は、濃度が均一な状態でバーナー123に供給される。そのため、燃焼室122において、燃焼の際にシリカ粒子が均一に分散され、シリカ粒子の濃度の粗密部分ができにくい。燃焼室122においてシリカ粒子が均一に分散することにより、ノズル部14から噴出されるシリカ粒子の濃度も均一化され、被加工板2の表面にシリカ粒子が均一に溶着されやすい。
【0035】
(2)バーナー123で形成される火炎
気相原料をバーナー123で燃焼させることによって、扁平状の火炎が形成される。そのため、棒状の火炎を形成するバーナーが用いられる場合と比べ、シリカ粒子を効率良くより均一に分散させやすい。棒状の火炎を形成するバーナーで気相原料を燃焼させる場合、シリカ粒子が同心円状に分散され、燃焼室122内にシリカ粒子が均一に分布しない。この場合、シリカ粒子が噴出されるノズル部14までの距離をより長くすることで、シリカ粒子を均一に分布させることは可能である。しかしながら、ノズル部14までの距離が長くなるほど、放熱面積が増大し、シリカ粒子の温度が維持されにくくなり、シリカ粒子の良好な成長が妨げられる。そのため、シリカ粒子の温度を維持するための加熱機構が別途必要となり、装置の大型化とコスト増大を招く。
【0036】
これに対し、本実施形態のように扁平状の火炎を形成するバーナー123を用いる場合、シリカ粒子を直線状に幅広く均一に分散させることができる。そのため、棒状の火炎を形成するバーナーを用いる場合と比べ、酸化ガス生成部12からノズル部14までの距離を小さくすることができる。ノズル部14までの距離が短いほど、シリカ粒子がノズル部14に到達するまでシリカ粒子の温度が維持されやすく、シリカ粒子が良好に成長して均一に分布されやすい。よって、シリカ粒子の温度を維持するための加熱機構を設ける必要が無く、装置の小型化及びコスト低減を図ることができる。
【0037】
なお、シリカ粒子をバーナー123のスリット123aに沿って直線状に幅広く均一に分散させるため、ダクト部13内のY軸方向の長さWと、バーナー123のY軸方向の長さLとの比(L/W)は、0.5以上、且つ1.5以下が好ましい。また、シリカ粒子の温度を維持するため、酸化ガス生成部12及びダクト部13のZ軸方向の全長を長さTとした場合、長さTとバーナー123のY軸方向の長さLとの比(T/L)は、1.4以上、且つ5.0以下が好ましい。
【0038】
(3)ダクト部13の形状
溶着装置1において、ダクト部13は、その内部空間におけるY軸とX軸方向のそれぞれの長さが略一定(
図2B及び
図3参照)であるストレート管である。仮に、ダクト部13の内部空間がノズル部14に向かって狭くなっている場合、ダクト部13の内壁にシリカガスに含まれるシリカ粒子が付着しやすく、内壁にシリカ粒子による凹凸が所々形成される。ダクト部13の内壁にシリカ粒子による凹凸が形成されると、ノズル部14からシリカ粒子を噴出する際、一部のシリカ粒子は内壁の凹凸によってノズル部14への流れを妨げられ、ノズル部14の手前でシリカ粒子が均一に分散されない状態となる。ダクト部13の内壁に形成された凹凸に流れを妨げられたシリカ粒子はノズル部14に向かって落下する。この状態で、ノズルスリット14aからシリカ粒子が噴出されると、被加工板2の表面にシリカ粒子が不均一に積層されて溶着される。シリカ粒子の上に重なったシリカ粒子は、被加工板2の表面に直接接着されたシリカ粒子と比べて接着強度が弱いため、外力によって取れやすく、被加工板2の耐久性を維持することが難しい。本実施形態では、ダクト部13はストレート管であるため、ダクト部13の内部空間がノズル部14に向かって狭くなっている場合よりも内壁にシリカ粒子が付着しにくい。そのため、ノズル部14の手前でシリカ粒子が均一に分散された状態で、ノズル部14からシリカ粒子が噴出され、被加工板2の表面にシリカ粒子が不均一に折り重なって付着しにくい。
【0039】
(4)ノズル部14の形状
溶着装置1において、ノズル部14は、ノズルスリット14aの噴出方向に対して略垂直に設けられた第1平面部141と第2平面部142とを有する(
図3参照)。ダクト部13は、上記したように、その内壁にシリカ粒子の凹凸が形成されにくい構造を有するが、ダクト部13の内壁にシリカ粒子の凹凸が形成されたとしても、第1平面部141及び第2平面部142により、被加工板2の表面にシリカ粒子を均一に溶着させることができる。具体的には、
図3において、ダクト部13の内壁131にシリカ粒子の凹凸が形成され、凹凸に衝突したシリカ粒子は、ノズル部14における第1平面部141又は第2平面部142に落下する。つまり、ダクト部13の内壁に形成された凹凸に衝突して落下したシリカ粒子がノズルスリット14aに入り込みにくい。その結果、ノズルスリット14aに入り込むシリカ粒子の濃度は均一に保たれやすく、被加工板2の表面にシリカ粒子が均一に溶着される。
【0040】
(ガラス板等の製造方法)
上述した溶着処理は、表面に酸化物粒子が溶着された加工板(加工後の被加工板2に相当)を製造する方法として説明することもできる。具体的には、加工板の製造方法は、酸化物粒子の原料を含む可燃ガスを燃焼機構に供給する第1工程と、燃焼機構で可燃ガスを燃焼させて酸化ガスを生成する第2工程と、生成された酸化ガスを加工板側へ導く第3工程と、酸化ガスを加工板の表面へ噴出し、酸化ガスに含まれる酸化物粒子を加工板に溶着させる第4工程とを含む。加工板の製造方法は、さらに、第4工程において加工板が所定温度となるように加熱する第5工程を含んでもよい。また、加工板の製造方法において、第2工程は、生成された酸化ガスと希釈ガスとを混合させる処理を含んでもよい。燃焼機構は、扁平状の火炎を形成するバーナーを含んでもよい。
【0041】
以上、図面(
図1〜
図3)を参照しながら溶着装置及び加工板の製造方法の実施形態を説明した。但し、溶着装置及び加工板の製造方法は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下、上述した実施形態の変形例を説明する。
【0042】
[変形例]
(1)ノズル部14の構造は、
図2C及び
図3に示す構造に限定されない。
図4A〜
図4Cは、
図2C及び
図3とは異なるノズル部の構造を示す概略断面図である。なお、
図4A〜
図4Cにおいて、実施形態と同じ構成には実施形態と同じ符号が付されている。以下、
図4A〜
図4Cに示すノズル部24、34、44について具体的に説明する。
【0043】
図4Aに示すノズル部24は、ノズルスリット14aと、平面部241とを有する。
図4Aに示すように、ノズル部24には溝14b(
図3参照)が設けられていない。ノズル部24の内部において、平面部241は、ノズルスリット14aの外側に設けられ、ノズルスリット14aの噴出方向に対して略垂直である。平面部241が設けられることにより、ダクト部13の内壁131にシリカ粒子の凹凸が形成されても、凹凸に衝突したシリカ粒子は平面部241に落下し、ノズルスリット14aに直接入り込みにくい。その結果、ノズルスリット14aに吸入されるシリカ粒子の濃度は均一に保たれやすく、被加工板2の表面にシリカ粒子が均一に溶着される。
【0044】
図4Bは、
図4Aとは異なるノズル部34を示す概略断面図である。
図4Bに示すように、ノズル部34は、ノズルスリット14aと、溝34bと、第1平面部341及び第2平面部342とを有する。溝34bは、ノズルスリット14aに向かってX軸方向の長さが短くなる略台形形状の断面を有する。第1平面部341は、ノズル部34の内部において、ダクト部13側であって溝34bの外側に設けられている。第2平面部342は、溝34bの底部であってノズルスリット14aの外側に設けられている。第1平面部341と第2平面部342とは、ノズルスリット14aの噴出方向に対して略垂直である。
【0045】
溝34bの内壁343は、
図3に示すノズル部14の溝14bの内壁143よりもノズルスリット14aに向かって傾斜しているため、シリカ粒子が内壁343に付着しやすい。しかしながら、第1平面部341及び第2平面部342が設けられることにより、ダクト部13の内壁131や溝14bの内壁143にシリカ粒子の凹凸が形成されても、凹凸に衝突したシリカ粒子は第1平面部341及び第2平面部342に落下しやすい。そのため、第1平面部341及び第2平面部342が設けられていない場合と比べ、ノズルスリット14aに入り込むシリカ粒子の濃度は均一に保たれやすく、被加工板2の表面にシリカ粒子が均一に溶着される。
【0046】
図4Cは、
図4A及び
図4Bとは異なるノズル部44を示す概略断面図である。
図4Cに示すように、ノズル部44は、ノズルスリット14aと、溝44bとを有する。溝44bは、ノズルスリット14aに向かってX軸方向の長さが短くなる略逆三角形形状の断面を有する。
図4Cに示すように、溝44bのダクト部13側のX軸方向の長さは、ダクト部13内のX軸方向の長さと同等であり、溝44bの内壁443はノズルスリット14aまで連続して形成されている。つまり、ノズル部44には、ノズルスリット14aの噴出方向に対して垂直に形成された平面は設けられていない。そのため、ダクト部13の内壁131にシリカ粒子の凹凸が形成された場合、シリカ粒子の凹凸に衝突して落下したシリカ粒子がノズルスリット14aに入り込みやすい。しかしながら、ダクト部13内においてシリカ粒子は均一に分散されているため、ノズル部44の構造であっても、被加工板2の表面に略均一にシリカ粒子を溶着させることができ、被加工板2の耐久性はある程度維持される。
【0047】
(2)
図2Bに示す溶着装置1では、燃焼室122の一方向(Y軸負方向側)から希釈ガスを流入させているが、燃焼室122内に複数の方向(例えば、Y軸正方向及び負方向側)から希釈ガスを流入させてもよい。シリカガスを所定の濃度に希釈する際、バーナー123によって形成される扁平状の火炎の全周囲から希釈ガスを流入させる方がシリカガスを均一に希釈しやすい。そのため、少なくとも燃焼室122の内部に対して複数の方向から希釈ガスを流入させることが好ましい。
【0048】
(3)溶着装置1で加工(溶着処理)された被加工板2、及び加工板の製造方法を用いて作製された加工板は、撥水性、親水性、及び防汚性等の性能を必要とする車両の窓ガラス、自動車のサイドミラー、防犯カメラのカバーレンズ等に適用することができる。また、溶着装置1で加工された被加工板2、及び加工板の製造方法を用いて作製された加工板は、太陽光パネルのカバーガラスに適用されてもよい。加工後の被加工板2、及び製造された加工板の表面にはシリカ粒子等の酸化物粒子の突起が均一に形成されているため、光を反射しにくく、透過性が高い。そのため、加工後の被加工板2、及び製造された加工板が太陽光パネルのカバーガラスに適用されても、太陽光パネルの変換効率を妨げることなく、太陽光パネルを保護することができる。なお、加工後の被加工板2、及び製造された加工板に対してフッ素加工を施すことで、被加工板2及び加工板の撥水性をさらに向上させてもよい。
【0049】
(4)溶着装置1及び加工板の製造方法において、被加工板2及び加工板がポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の樹脂で構成されている場合、シリカ粒子を溶着させる際に被加工板2は約50℃程度に加熱されてもよい。また、この場合、被加工板2に噴出されるシリカガスは約200℃程度にして噴射されてもよい。
【0050】
(5)溶着装置1及び加工板の製造方法において、被加工板2及び加工板の表面に溶着される酸化物粒子が酸化チタン(TiO
2)粒子である場合、酸化チタン粒子の液相原料を気化した気相原料と、炭化水素系ガスとを混合させた可燃ガスが供給部11から酸化ガス生成部12へ供給される。酸化チタン粒子の液相原料は、例えば、TiCl
4(四塩化チタン)等が用いられてもよい。
【0051】
(6)溶着装置1及び加工板の製造方法では、板状の被加工板2及び加工板に酸化物粒子を溶着させたが、酸化物粒子を溶着させる物体の形状は板状に限定されない。