(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧回転装置とは、油圧ポンプ又は油圧モータのように、回転する軸に垂直又は平行に設けられた複数個のシリンダ内の体積を、軸の回転方向に沿って圧縮又は膨張させることで、機械的エネルギーを圧力に変換、又は、圧力を機械的エネルギーに変換させる装置をいう。
【0003】
また、種々の油圧回転装置のうち、可変型斜板式油圧回転装置は、回転可能なシリンダブロックに、回転軸線方向に往復運動する複数の駆動ピストンを装着し、各駆動ピストンの端部に対向する斜板の角度を切り替えることで、容量を可変し得るように設けられる。
【0004】
この時、斜板の一側背面を変速ピストンで加圧することで、斜板の角度を低速から高速に切り替えている。即ち、変速ピストンが斜板の一側を加圧して斜板の角度を低減すると、回転速度が増加されるとともにトルクが低減される。
【0005】
従って、油圧回転装置がクローラー(Crawler)のような建設機械に適用された場合、建設機械に高いトルクが要求される時には、油圧回転装置が低速で回転することでトルクを上昇させ、建設機械に機動力が要求される時には、油圧回転装置が高速で回転することで高速で移動し得るようになる。
【0006】
このように、油圧回転装置が変速機能を有するため、可変型斜板式油圧回転装置には、変速ピストンが設けられる。変速ピストンが斜板を押して油圧回転装置の容積を変更することで、油圧回転装置は、高速又は低速への速度変更を行うことができる。
【0007】
なお、変速ピストンと斜板との接触角度は、高速時と、低速時とで異なる。通常、変速ピストンが斜板を押して斜板の斜板角が低減すると、高速となり、この時、変速ピストンと斜板との接触角度が傾斜するようになる。従って、変速ピストンに横荷重が発生する。また、高速時には、斜板が変速ピストンにより支持されるので、低速時に比べて、高速時に変速ピストンに相対的に大きな荷重が加えられる。このように、高速時に変速ピストンに発生した横荷重は、変速ピストンにおいて斜板と接触するピストンシューと往復運動するピストン本体との間の面圧を局部的に増加させ、偏摩耗が発生する。このような偏摩耗の発生によって、油圧回転装置の効率が低下し、装備の偏走行を引き起こし、作業効率が低下するという問題点がある。また、局部的な面圧の増加によって、間欠的に変速ピストンがケーシングに挟まる現象が発生することもあり得る。変速ピストンがケーシングに挟まれると、変速不可となるか、左右にそれぞれ配置された油圧回転装置のうちの1つの変速ピストンにのみ挟まり現象が発生する場合、左右の油圧回転装置の速度の差によって、建設機械が回転して転倒するという問題が発生することもあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施例は、摩耗の発生を極力抑制し、寿命を向上させた油圧回転装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例によれば、可変型斜板式油圧回転装置は、複数のシリンダを有し、回転するシリンダブロックと、前記シリンダブロックを低速で回転させるための1段及び、前記1段より斜板角が小さくなって前記シリンダブロックを高速で回転させる2段に区分して動作する斜板と、前記斜板の一領域と接触するピストンシュー及び、前記ピストンシューと関節連結されて往復運動するピストン本体を有し、前記斜板の斜板角を可変させる変速ピストンとを含む。また、前記斜板が、前記1段で動作する時に、前記ピストンシュー及び前記斜板が接触する面と、前記シリンダブロックの回転軸線との間の交角に比べ、前記斜板が2段で動作する時に、前記ピストンシュー及び前記斜板が接触する面と、前記シリンダブロックの回転軸線との間の交角が、相対的に90度により近くなるように形成される。
【0010】
前記油圧回転装置は、前記斜板と対向して前記斜板を支持する支持面と、前記支持面の一領域に窪んで形成されて前記変速ピストンを収容する変速ピストン収容部とを有するケーシングをさらに含むことができる。
【0011】
また、前記斜板が前記1段で動作する時に、前記ケーシングと対向する前記斜板の一面は、前記ケーシングの前記支持面により支持され、前記斜板が前記2段で動作する時に、前記ケーシングと対向する前記斜板の一面は、前記変速ピストンの前記ピストンシューにより支持される。
【0012】
さらに、前記斜板の一面は、支持点を中心に回転して前記1段で動作する時に、前記ケーシングの支持面と相対的に近くなる第1の面と、前記2段で動作する時に、前記ケーシングの支持面と相対的に近くなる第2の面と、前記変速ピストンのピストンシューと接触する第3の面と、を含むことができる。
【0013】
この時、前記第1の面は、前記斜板が前記1段で動作する時に前記ケーシングの支持面と平行であり、前記第2の面は、前記斜板が前記2段で動作する時に前記ケーシングの支持面と平行であることができる。
【0014】
また、前記第1の面及び前記第2の面の間の交角と、前記第1の面及び前記第3の面の間の交角とが、同一であることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例によれば、油圧回転装置は、摩耗の発生を極力抑制して寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳述する。本発明は、 様々な形態に具現することができ、後述の実施例に限定されない。
【0018】
なお、図面は、概略的で、縮尺に合わせて図示されていないことに留意されたい。図中、相対的な寸法及び比率は、図面の明確性及び便宜を図るため、その大きさが誇張又は縮小して示されており、任意の寸法は、例示に過ぎず、限定的なものではない。また、2以上の図面に示される同一の構造物、要素又は部品には、同一の参照符号を付することで、類似した特性を有するものであることを示す。
【0019】
本発明の実施例は、好適な実施例を具体的に示す。それで、様々な図解があり得る。従って、図示した領域の特定の形態に局限されず、例えば、製造による形態の変形をも含む。
【0020】
以下、
図1〜
図4を参照して本発明の一実施例に係る油圧回転装置101を説明する。本発明の一実施例に係る油圧回転装置101は、可変型斜板式であり、モータで動作又はポンプで動作することができる。即ち、油圧回転装置101は、油圧モータ又は油圧ポンプであるか、油圧モータ及びポンプの兼用であることができる。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、本発明の一実施例に係る油圧回転装置101は、シリンダブロック200、斜板400、及び変速ピストン500を含む。
【0022】
また、本発明の一実施例に係る油圧回転装置101は、ケーシング600、駆動ピストン350、及び回転軸310をさらに含むことができる。
【0023】
シリンダブロック200は、複数のシリンダ250をもって回転する。複数のシリンダ250は、シリンダブロック200の周り方向に同一の間隔をおいて設けることができる。即ち、複数のシリンダ250は、シリンダブロック200の回転中心から放射状に等間隔で配列される。
【0024】
回転軸310は、シリンダブロック200に結合され、シリンダブロック200の回転力を外部に伝達、又は外部から供給される回転力をシリンダブロック200に伝達する。
【0025】
駆動ピストン350は、シリンダブロック200の複数のシリンダ250にそれぞれ挿入されて作動油の圧力で往復運動しながらシリンダブロック200を回転させるか、シリンダブロック200の回転に従って往復運動しながら圧力を発生させて作動油を吐き出す。この時、駆動ピストン350の一端は、後述の斜板400とスライド可能に接触する。従って、油圧回転装置101がモータとして動作する時、駆動ピストン350に作動油が流入されて駆動ピストン350がシリンダ250内で往復運動するようになると、駆動ピストン350の一端が斜板400の傾斜面に沿ってスライドしながらシリンダブロック200が回転するようになる。他方、油圧回転装置101がポンプとして動作する時、エンジンの回転力が伝達されてシリンダブロック200が回転するようになると、駆動ピストン350の一端が斜板400の傾斜面に沿ってスライドしながらシリンダ250内で往復運動し、駆動ピストン350が往復運動しながら圧力を発生させて作動油を吐き出すようになる。
【0026】
斜板400は、油圧回転装置101がモータとして動作する時に回転速度を調節し、又は、ポンプとして動作する時に吐き出される作動油の流量を調節する。即ち、斜板400の傾きによって、油圧回転装置101の回転速度、又は吐き出される作動油の流量が決定される。
【0027】
本発明の一実施例において、斜板400は、シリンダブロック200を低速で回転させるための1段と、1段より斜板角が小さくなってシリンダブロック200を高速で回転させるための2段とに区分して動作する。
【0028】
変速ピストン500は、斜板400の斜板角を調節する。変速ピストン500が斜板400を加圧して斜板400の一側が押されると、斜板400の斜板角が小さくなってシリンダブロック200の回転速度が増加し、トルクが減少する。即ち、斜板400が、予め設定された傾きを有する1段で動作中、変速ピストン500により斜板400の傾きが1段より小さい2段に変速されると、油圧回転装置101の速度が増加し、トルクが減少する。
【0029】
具体的に、変速ピストン500は、斜板400の一領域と接触するピストンシュー540と、ピストンシュー540と関節連結されて往復運動するピストン本体510とを含む。ピストン本体510は、シリンダブロック200の回転軸線CLと同じ方向に往復運動し、ピストンシュー540と斜板400との接触面は、ピストン本体510の動作状態に従って傾きが変化する。また、例えば、ピストン本体510は、スプリングのような弾性部材の弾性力によって、ピストンシュー540を斜板400方向に加圧することができる。
【0030】
特に、本発明の一実施例において、斜板400が1段で動作する時、ピストンシュー540と斜板400との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角より、斜板400が2段で動作する時、ピストンシュー540と斜板400との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が、相対的に90度により近くなるように設けられる。
【0031】
図1は、本発明の一実施例に係る油圧回転装置101が1段で動作中の状態を示し、
図2は、2段で動作中の状態を示す。
【0032】
即ち、
図1に示されるように、斜板400が1段で動作する時、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角は、90度より小さくなり、
図2に示されるように、斜板400が2段で動作する時、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角は、90度に相対的に近くなる。
【0033】
なお、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が90度に近くなるほど、変速ピストン500に加えられる横荷重は、減少する。また、
図2に示されるように、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が90度であると、変速ピストン500に加えられる横荷重は、理論的に0となる。
【0034】
ケーシング600は、斜板400と対向して斜板400を支持する支持面640と、支持面640の一領域に窪んで形成されて変速ピストン500を収容する変速ピストン収容部650とを有する。即ち、変速ピストン500のピストン本体510は、ケーシング600の変速ピストン収容部650内で往復運動するようになる。
【0035】
例えば、斜板400が1段で動作する時、ケーシング600と対向する斜板400の一面は、ケーシング600の支持面640により支持され、斜板400が2段で動作する時、ケーシング600と対向する斜板400の一面は、変速ピストン500のピストンシュー540により支持される。
【0036】
図1のように、斜板400が1段で動作する時には、斜板400とピストンシュー540との接触面が傾斜し、変速ピストン500に横荷重が加えられることがある。しかし、斜板400が1段で動作する時には、斜板400が主としてケーシング600の支持面640により支持されることで、変速ピストン500のピストンシュー540には、斜板400が2段で動作する時に比べて相対的に非常に小さな荷重が加えられる。従って、斜板400が1段で動作する時、変速ピストン500に加えられる横荷重は、相対的に僅かであるため、偏摩耗の発生が少なく、変速ピストン500の寿命に与える影響が相対的に小さくなる。
【0037】
また、
図2のように、変速ピストン500のピストンシュー540が斜板400を支持し、ピストンシュー540に相対的に大きな荷重がかかる2段の場合は、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が、相対的に1段の場合に比べて90度に近くなる。最も好ましくは、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が、90度となる。従って、ピストンシュー540に大きな荷重がかかっても、横荷重の発生は、ゼロ、又は非常に僅かであるため、変速ピストン550における偏摩耗の発生を極力抑制することができる。
【0038】
上述のように、斜板400と変速ピストン500のピストンシュー540との接触面が有する傾きを調節するため、斜板400の一面は、
図3に示されるように、支持点を中心に回転して1段で動作する時にケーシング600の支持面640と相対的に近くなる第1の面410と、2段で動作する時にケーシング600の支持面640と相対的に近くなる第2の面420と、変速ピストン500のピストンシュー540と接触する第3の面430とを含む。
【0039】
例えば、1段では、斜板400の第1の面410が、ケーシング600の支持面640と接触し、2段では、斜板400の第2の面420が、ケーシング600の支持面640と接触することができる。
【0040】
また、斜板400の第1の面410は、斜板400が1段で動作する時、ケーシング600の支持面640と平行であり、斜板400の第2の面420は、斜板400が2段で動作する時、ケーシング600の支持面640と平行であるように形成することもできる。
【0041】
また、斜板400の第1の面410と第2の面420との間の交角θ1と、斜板400の第1の面410と第3の面430との間の交角θ2とが同じ角度であるように形成することもできる。この場合、斜板400が2段で動作する時、変速ピストン500のピストンシュー540と斜板400の第3の面との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が90度となり、また、変速ピストン500に加えられる横荷重は、理論的にゼロである。
【0042】
図4は、本発明の一実施例に係る油圧回転装置101に使用された斜板400の背面図であり、
図5は、本発明の一実施例の変形例に係る油圧回転装置101に使用された斜板401の背面図である。
図4中、斜板400の第3の面430は、円形状に近くなり、
図5中、斜板401の第3の面431は、長孔形状に近くなる。
【0043】
上記のような構成によって、本発明の一実施例に係る油圧回転装置101は、摩耗の発生を極力抑制することで寿命を向上させることができる。
【0044】
特に、変速ピストン500に加えられる横荷重を最小化して変速ピストン500における偏摩耗の発生を抑制することにより、変速ピストン500の寿命を向上させ、また、変速ピストン500の誤作動による事故の発生を防止することができる。
【0045】
以下、
図6乃至
図9を参照しながら実施例と比較例とを対比して説明する。
【0046】
実施例では、
図1乃至
図3と同様な構成を有する。これに対して、比較例では、
図6及び
図7と同様な構成を有する。即ち、実施例に係る油圧回転装置101に使用された斜板400の一面は、上述したように、第1の面410、第2の面420、及び第3の面430に区分され、比較例に係る油圧回転装置10に使用された斜板の一面は、平らな1つの面を有する。
【0047】
実施例において、上述したように、斜板400が1段で動作する時、
図1のように、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角は、90度より小さくなる。従って、1段で変速ピストンに横荷重が加えられることもあり得る。しかし、斜板400が1段で動作する時は、斜板400が主としてケーシング600の支持面640により支持されるので、変速ピストン500のピストンシュー540には、斜板400が2段で動作する時に比べて相対的に非常に小さな荷重が加えられる。従って、斜板400が1段で動作する時、変速ピストン500に加えられる横荷重は、相対的に僅かであるため、偏摩耗の発生が少なく、変速ピストン500の寿命への影響が非常に少ない。
【0048】
また、斜板400が2段で動作する時、
図2のように、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック220の回転軸線CLとの間の交角は、90度である。斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が90度に近くなるほど、変速ピストン500に加えられる横荷重は、減少する。また、斜板400とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角が90度となると、変速ピストン500に加えられる横荷重は、理論的にゼロである。従って、斜板400が2段で動作する時、変速ピストン500の偏摩耗の発生が極力抑制され、変速ピストン500の寿命が大きく向上する。
【0049】
これに対して、比較例では、
図6に示されるように、斜板40が1段で動作する時、斜板40とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック200の回転軸線CLとの間の交角は、90度である。即ち、斜板40とピストンシュー540との接触面と、ケーシング600の支持面とは、面一又は平行である。
【0050】
しかし、
図7に示されるように、斜板40が2段で動作する時、斜板40とピストンシュー540との接触面と、シリンダブロック220の回転軸線CLとの間の90度より小さくなる。従って、駆動ピストン500により伝達される力によって斜板40がピストンシュー540を加えると、変速ピストン500に横荷重が加えられるようになる。
図7中、参照符号Fは、斜板40が変速ピストン500に加える荷重を示し、Frは、横荷重、Faは、縦荷重である。特に、斜板40が2段で動作する時には、変速ピストン500のピストンシュー540が斜板40を支持しているため、変速ピストン500に大きな荷重がかかり、これによって、変速ピストン500に発生する荷重も大きくなる。これは、比較例では、斜板40が2段で動作する時、変速ピストン500に発生する偏摩耗が相対的に大きくなることを意味する。
【0051】
図8は、実施例及び比較例における横力解釈地点を示す。また、
図9は、実施例と比較例との横力解釈を比較して示すグラフである。
【0052】
図9中、比較例F1と比較例F2とを見てみると、実施例F1と実施例F2と対比して相対的に非常に大きな横力が加えられることが確認される。即ち、実施例では、変速区間でのみ横力が一時的に発生し、2段で動作する時には、横力が殆ど発生していないことが確認される。
【0053】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明してきたが、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明の技術的思想や必須特徴を変更することなく種々に実施することができる。
【0054】
上述した実施例は、例示に過ぎず、限定的なものではなく、本発明の範囲は、後述の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範疇、並びにその等価概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。