(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルボキシル化オレフィンコポリマーが、前記カルボキシル化オレフィンコポリマーの総重量に基づいて、0.05〜20重量%の量でカルボン酸塩を含む、請求項1に記載の多層膜。
前記結合層が、エラストマーをさらに含み、前記エラストマーは、均一に分岐したエチレン−α−オレフィンコポリマー、ポリオレフィンエラストマー、ビニル芳香族ブロックコポリマー、または、これらエラストマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせである、請求項1に記載の多層膜。
前記結晶ブロック複合体が、230℃及び2.16キログラムでASTM D1238に従って測定されるとき、0.1〜30dg/分の溶融流量比を有する、請求項1に記載の多層膜。
前記ポリプロピレンが、ランダムコポリマーポリプロピレン、衝撃性コポリマーポリプロピレン、高衝撃性ポリプロピレン、高溶融強度ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、または、これらポリプロピレンのうちの少なくとも1つを含む組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の多層膜。
前記アクリル酸エチレンコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルメタクリレート、ジメチルマレアート、ジエチルマレアート、ジブチルマレアート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、酢酸ビニル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、またはそれらの組み合わせとエチレンポリマーとの重合から得られる、請求項1に記載の多層膜。
前記アクリル酸エチレンコポリマーが、イオンで中和され、前記イオンが、Li、Na、K、Ag、Hg、Cu、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cd、Sn、Pb、Fe、Co、Zn、Ni、Al、Sc、Hf、Ti、Zr、Ce、またはそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の多層膜。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「複合体」等の用語は、他のポリマーとブレンドされるか、または添加物、充填剤等を含有するポリマー等の2つ以上の材料の混合物を意味する。複合体に含まれるのは、予備反応、反応、及び事後反応の混合物であり、反応生成物及び副産物、ならびに予備反応混合物または反応混合物のうちの1つ以上の構成成分から形成される反応混合物及び分解物の未反応構成成分があればその後半に含まれることになる。
【0007】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」等の用語は、2つ以上のポリマーの複合体を意味する。かかるブレンドは、混和性であり得るか、またはあり得ない。かかるブレンドは、相分離され得るか、またはされ得ない。かかるブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当技術分野で既知である任意の他の方法から決定されるような1つ以上のドメイン構成を含有し得るか、または含有し得ない。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層は、ブレンドを含有し得る。
【0008】
「ポリマー」は、同種類か異なる種類かに関わらず、モノマーを重合することにより調製される化合物を意味する。よって、総称であるポリマーは、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられる、用語ホモポリマーと、以下で定義される用語インターポリマーとを包含する。それはまた、例えば、ランダム、ブロック等の全ての形態のインターポリマーも包含する。用語「エチレン/α−オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α−オレフィンポリマー」は、以下に記載されるインターポリマーを示す。ポリマーは、モノマー「から作製」されている、特定のモノマーまたはモノマーの種類「に基づいて」いる、特定のモノマー含有量を「含有」している等としばしば言及されるが、これは、特定のモノマーの重合残余を指すものであって、未重合種を指すものではないことが明確に理解されることが留意される。
【0009】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーを重合することにより調製されるポリマーを意味する。この総称には、2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマーが含まれ、かつ例えば、ターポリマー、テトラポリマー等の2つを超える異なるモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0010】
「ポリオレフィン」、「ポリオレフィンポリマー」、「ポリオレフィン樹脂」等の用語は、モノマーとしての単純オレフィン(一般式、C
nH
2nを持つアルケンと呼称される
)から生成されるポリマーを意味する。ポリエチレンは、1つ以上のコモノマーで、または1つ以上のコモノマー無しでエチレンを重合することにより生成され、ポリプロピレンは、1つ以上のコモノマーで、または1つ以上のコモノマー無しでプロピレンを重合することにより生成される。よって、ポリオレフィンには、エチレン−α−オレフィンコポリマー、プロピレン−α−オレフィンコポリマー等のインターポリマーが含まれる。
【0011】
本明細書で使用される場合、米国特許第5,783,638号に記載されるように、「溶融点」(プロットされたDSC曲線の形に関して溶融ピークとも言及される)は典型的に、ポリオレフィンの溶融点またはピークを測定するためのDSC(示差走査熱量測定)技法により測定される。2つ以上のポリオレフィンを含む多くのブレンドが、1つを超える溶融点またはピークを有し、多くの個別のポリオレフィンが、たった1つの溶融点またはピークを含むことを留意されたい。
【0012】
用語「及び/または」には、「及び」ならびに「または」の両方が含まれる。例えば、用語、A及び/またはBは、A、B、またはA及びBを意味すると解釈される。
【0013】
自動車パネルにおいて使用され得、軽量、柔軟なデザイン考案、より低価格の利点を提供し得る多層化膜が本明細書で開示される。本多層化膜はまた、良好な印刷適性/塗装性ならびに良好な耐傷付性及び耐損傷性も示し、このことにより、それらが自動車パネルにおいて有用とされる。本多層化膜は、少なくとも3層を含み、それらのうちの1つが、結晶ブロック複合体(CBC)、カルボキシル化エチレンコポリマー、及び任意選択的にポリオレフィン系エラストマーを含む結合層である。この結合層は、ポリプロピレンを含む第1の層を、エチレンイオノマー、アクリル酸エチレンコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む(第1の層に対向して配置される)第2の層に接合するために使用される。
【0014】
ここで、
図1を参照すると、多層膜100は、第1の層102、結合層104、及び第2の層106を含む。結合層104は、互いに対向して配置される第1の表面103及び第2の表面105を含む。第1の層102は、第1の表面103で結合層104に接触し、(第1の層102に対向して配置される)第2の層106は、第2の表面105で結合層104に接触する。
【0015】
上記のとおり、結合層104は、結晶ブロック複合体(CBC)、カルボキシル化エチレンコポリマー、及び任意選択的にポリオレフィン系エラストマーを含む。
【0016】
用語「結晶ブロック複合体」(CBC)は、3つの構成成分である、結晶エチレン系ポリマー(CEP)(本明細書において軟質ポリマーとも言及される)、結晶アルファ−オレフィン系ポリマー(CAOP)(本明細書において硬質ポリマーとも言及される)、ならびに結晶エチレンブロック(CEB)及び結晶アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を含むブロックコポリマーを有するポリマーを指し、ブロックコポリマーのCEBは、ブロック複合体中のCEPと同じ複合体であり、ブロックコポリマーのCAOBは、ブロック複合体のCAOPと同じ複合体である。加えて、CEPの量とCAOPの量との間の複合分割は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間と本質的に同じになる。継続的なプロセスにおいて生成されるとき、結晶ブロック複合体は、1.7〜15、具体的には1.8〜10、具体的には1.8〜5、より具体的には1.8〜3.5の多分散指数(PDI)を望ましくは有する。かかる結晶ブロック複合体は、例えば、全て2011年12月22に公開された、米国特許出願公開第2011/0313106号、同第2011/0313108号、及び同第2011/0313108号に記載され、結晶ブロック複合体、それらを作製するためのプロセス、及びそれらを分析する方法の記述に関して、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0017】
CAOBは、モノマーがその中で、90mol%超、具体的には93mol%超、より具体的には95mol%超、及び具体的には96mol%超の量で存在する、重合されたアルファオレフィン単位の高結晶ブロックを指す。言い換えると、CAOB中のコモノマー含有量は、10mol%未満、及び具体的には7mol%未満、ならびにより具体的には5mol%未満、及び最も具体的には4mol%未満である。プロピレン結晶化度を有するCAOBは、80℃以上、具体的には100℃以上、より具体的には115℃以上、及び最も具体的には120℃以上である対応する溶融点を有する。いくつかの実施形態において、CAOBは、全てのまたは実質的に全てのプロピレン単位を含む。一方で、CEBは、コモノマー含有量がその中で、10mol%以下、具体的には0mol%〜10mol%、より具体的には0mol%〜7mol%、及び最も具体的には0mol%〜5mol%である重合されたエチレン単位のブロックを指す。かかるCEBは、具体的には75℃以上、より具体的には90℃、及び100℃以上である対応する溶融点を有する。
【0018】
一実施形態において、結晶ブロック複合体ポリマーは、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテン、及び1つ以上のコモノマーを含む。具体的には、ブロック複合体は、プロピレン及びエチレン及び/もしくは1つ以上のC
4−20α−オレフィンコモノマー、ならびに/または1つ以上の追加の共重合性コモノマーを重合された形態で含むか、あるいはそれらは、4−メチル−1−ペンテン及びエチレン及び/または1つ以上のC
4−20α−オレフィンコモノマーを含むか、あるいはそれらは、1−ブテン及びエチレン、プロピレン及び/または1つ以上のC
5−C
20α−オレフィンコモノマー及び/または1つ以上の追加の共重合性コモノマーを含む。追加の好適なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィン及び環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、ならびにビニリデン芳香族化合物から選択される。好ましくは、モノマーはプロピレンであり、コモノマーはエチレンである。
【0019】
結晶ブロック複合体ポリマー中のコモノマー含有量は、好ましい核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技法を用いる任意の好適な技法を使用して測定され得る。
【0020】
ブロック複合体及び結晶ブロック複合体は、100℃超、具体的には120℃超、及びより具体的には125℃超の溶融点Tmを有する。実施形態において、Tmは、100℃〜250℃、より具体的には120℃〜220℃の範囲であり、具体的には125℃〜220℃の範囲でもある。具体的には、ブロック複合体及び結晶ブロック複合体の溶融流量比(MFR)は、0.1〜1000dg/分、より具体的には0.1〜50dg/分、及びより具体的には0.1〜30dg/分である。
【0021】
実施形態において、ブロック複合体及び結晶ブロック複合体は、1モル当たり10,000〜約2,500,000グラム(g/モル)、具体的には35000〜約1,000,000、及びより具体的には50,000〜約300,000、具体的には50,000〜約200,000g/モルの重量平均分子量(M
w)を有する。
【0022】
結晶ブロック複合体ポリマーは、0.5〜95重量%の軟質コポリマー、0.5〜95重量%の硬質ポリマー、及び5〜99重量%のブロックコポリマーを含む。より具体的には、結晶ブロック複合体ポリマーは、0.5〜79重量%の軟質コポリマー、0.5〜79重量%の硬質ポリマー、及び20〜99重量%のブロックコポリマー、ならびにより具体的には0.5〜49重量%の軟質コポリマー、0.5〜49重量%の硬質ポリマー、及び50〜99重量%のブロックコポリマーを含む。重量パーセントは、結晶ブロック複合体の総重量に基づく。軟質コポリマー、硬質ポリマー、及びブロックコポリマーの重量パーセントの合計は、100%に等しい。
【0023】
実施形態において、結晶ブロック複合体ポリマーは、0.5〜95重量%のCEP、0
.5〜95重量%のCAOP、及び5〜99重量%のブロックコポリマーを含む。より具体的には、結晶ブロック複合体ポリマーは、0.5〜79重量%のCEP、0.5〜79重量%のCAOP、及び20〜99重量%のブロックコポリマー、ならびにより具体的には0.5〜49重量%のCEP、0.5〜49重量%のCAOP、及び50〜99重量%のブロックコポリマーを含む。重量パーセントは、結晶ブロック複合体の総重量に基づく。CEP、CAOP、及びブロックコポリマーの重量パーセントの合計は、100%に等しい。
【0024】
実施形態において、結晶ブロック複合体のブロックコポリマーは、5〜95重量%の結晶エチレンブロック(CEB)及び95〜5重量%の結晶アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を含む。それらは、10〜90重量%のCEB及び90〜10重量%のCAOBを含み得る。より具体的には、ブロックコポリマーは、25〜75重量%のCEB及び75〜25重量%のCAOBを含み、さらにより具体的には30〜70重量%のCEB及び70〜30重量%のCAOBを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、結晶ブロック複合体は、ゼロ超〜約0.4未満、または0.1〜0.3である結晶ブロック複合指数(CBCI)を有する。他の実施形態において、CBCIは、0.4超〜最大1.0である。いくつかの実施形態において、CBCIは、0.1〜0.9、約0.1〜約0.8、約0.1〜約0.7、または約0.1〜約0.6である。加えて、CBCIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、または約0.6〜約0.9の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、CBCIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲である。他の実施形態において、CBCIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲である。
【0026】
結晶ブロック複合体は、結合層104の総重量に基づいて、40〜90重量パーセント(重量%)、具体的には45〜85重量%、及びより具体的には50〜75重量%の量で存在する。
【0027】
カルボキシル化オレフィンコポリマーは、エチレンまたはプロピレンポリマーを含み、それは、不飽和カルボン酸もしくは無水物、エステル、アミド、イミド、またはそれらの金属塩をそこにグラフトし、これ以降、それは「グラフト化合物」と指定される。このグラフト化合物は、好ましくは脂肪族不飽和ジカルボン酸もしくは無水物、エステル、アミド、イミド、またはかかる酸由来の金属塩である。カルボン酸は、好ましくは最大6個、より好ましくは最大5個の炭素原子を含有する。アルカリ金属塩は、好ましい金属塩である。不飽和カルボン酸の例は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、及びシトラコン酸である。不飽和カルボン酸の誘導体の例は、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、モノエチルマレアート、ジエチルマレアート、モノメチルフマレート、ジメチルフマレート、モノメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、アクリルアミド、メタクリルアミド、モノマレアミド、ジマレアミド、N,N−ジエチルマレアミド、N−モノブチルマレアミド、N,N−ジブチルマレアミド、モノフマルアミド、ジフマルアミド、N−モノエチルフマルアミド、N,N−ジエチルフマルアミド、N−モノブチルフマルアミド、N,N−ジブチルフマルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、カリウムアクリレート、及びカリウムメタクリレートである。グリシジルメタクリレートは、好ましいグラフト化合物である。1つ以上、好ましくは1つのグラフト化合物は、エチレンまたはプロピレンポリマー上にグラフトさ
れる。
【0028】
エチレンまたはプロピレンポリマー中のグラフト化化合物含有量は、グラフト化エチレンまたはプロピレンポリマーの総重量に基づいて、0.05、より具体的には0.5〜、及び最も具体的には2.0〜30、具体的には〜15、及び最も具体的には〜8重量%の範囲である。
【0029】
グラフトプロセスは、開始剤を分解することにより先導されて、フリーラジカルを形成し得、それにはアゾ含有化合物、カルボン酸ペルオキシド及びペルオキシエステル、アルキルヒドロペルオキシド、ならびにジアルキル及びジアシルペルオキシド等が含まれる。これらの化合物及びそれらの特性の多くは、記載されている(参照:J.Branderup,E.Immergut,E.Grulke,eds.「Polymer Handbook,」4th ed.,Wiley,New York,1999,Section II,pp.1−76.)。あるいは、グラフト化合物は、典型的な管プロセス及び高圧蒸気滅菌プロセスによりエチレンと共重合され得る。
【0030】
グラフト化エチレンポリマー、ならびにグラフトのために使用されるエチレンポリマーは、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0031】
実施形態において、グラフト化エチレンまたはプロピレンポリマー、ならびにグラフトのために使用されるエチレンまたはプロピレンポリマーは、好ましくは最大0.902g/cm
3、より好ましくは0.850〜0.902g/cm
3、最も好ましくは0.860〜0.890g/cm
3、特に0.865〜0.880g/cm
3の密度を有する。しかし、ポリマー密度は、グラフトによりわずかに変化することが理解される。エチレンポリマーの場合、プライマーに十分な機械強度及び可撓性を提供し、有機溶媒中のグラフト化エチレンポリマーの十分な可溶性を達成するために、ポリマー密度が重要であるということが分かった。
【0032】
用語「エチレンまたはプロピレンポリマー」は、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、異なるエチレンポリマーの混合物、異なるプロピレンポリマーの混合物、または少なくとも1つのエチレンポリマー及び少なくとも1つのプロピレンポリマーの混合物を意味する。好ましいエチレンポリマー及びプロピレンポリマーは、以下に記載される。エチレンまたはプロピレンポリマーは、好ましくは5〜35%、より好ましくは10〜20%の結晶化度を有する。
【0033】
エチレンまたはプロピレンポリマーは、エチレンもしくはプロピレンホモポリマー、またはプロピレンならびに少なくとも1つのC
4−C
20−α−オレフィン及び/もしくはC
4−C
18−ジオレフィンのインターポリマーであり得る。好ましくは、エチレンポリマーは、エチレンならびに少なくとも1つのC
3−C
20−α−オレフィン及び/またはC
4−C
18−ジオレフィンのインターポリマーである。最も好ましくは、エチレンポリマーは、最大0.902g/cm
3の密度を有する、エチレン及びC
3−C
20−α−オレフィンのインターポリマーである。用語「インターポリマー」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの異なるモノマーの重合により調製されるポリマーを指す。よって、総称であるインターポリマーは、2つの異なるモノマーから調製されるポリマー、及び2つを超える異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマーを包含する。インターポリマーは、ランダムまたはブロックインターポリマーであり得る。
【0034】
好ましいα−オレフィンは、4〜10個の炭素原子を含有し、そのうちの1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンが、最も好ましい。好ましいジオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、ジシクロペンタジエン、メチレン−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンである。インターポリマーは、C
2−C
20アセチレン系不飽和モノマー等の他のコモノマーを含有し得る。
【0035】
グラフトエチレンは、エチレン及びC
4−C
10−α−オレフィンのランダムまたはブロックコポリマー、最も好ましくはエチレン及び1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、または1−オクテンのコポリマーを含み得る。エチレン含有量は、ポリマーの総重量に基づいて、好ましくは50%超、より好ましくは60〜90%、最も好ましくは70〜80%である。
【0036】
好ましくは上述の範囲内の密度を有する、既知であるエチレンポリマーが、グラフトのために使用され得る。1つの有用な種類のエチレンポリマーは、狭い分子重量分布、ポリマー主鎖に沿ったコモノマー単位のランダム分布、及び少なくとも75の均一指標を有する、エチレンの直鎖状コポリマー及び少なくとも4個の炭素原子を有するα−オレフィンの直鎖状コポリマーである。かかるポリマーは、Elstonにより米国特許第3,645,992号に記載される。他の有用なエチレンポリマー及びそれらを生成するためのプロセスは、米国特許第5,324,800号に記載される。それらは、500〜1,400,000、好ましくは1000〜500,000の重量平均分子量、及び1.5〜4.0の分子重量分布M
w/M
nを有する。それらは、エチレン及びC
3−C
20−α−オレフィンの直鎖状コポリマーである。他の有用なエチレンポリマーは、米国特許第4,429,079号に記載される。それらは、0.1〜50g/10分、好ましくは1〜30g/10分の溶融指数、0.870〜0.900g/cm
3、好ましくは0.875〜0.895g/cm
3の密度、5〜40%、好ましくは7〜30%のエックス線による結晶化度、40℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃の溶融点、及び85〜95モル%のエチレン含有量を有する、エチレンのランダムコポリマー及び3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンのランダムコポリマーである。エチレンポリマーには、TAFMER(Mitsui Petrochemicalの商標)及びEXACT(Exxon Chemicalの商標)の商標で入手可能な、特に最大0.902g/cm
3の密度を有するポリマーが含まれる。
【0037】
上述のグラフト化合物が、上にグラフト化されるエチレンならびに少なくとも1つのC
3−C
20−α−オレフィン及び/またはC
4−C
18−ジオレフィンの最も好ましいインターポリマーは、
i)ポリマー主鎖に沿った炭素原子1000個当たり0.01〜3の長鎖分岐と、
ii)I
10/I
2≧5.63の溶融流量比と、
iii)等式:(M
w/M
n)≦(I
10/I
2)−4.63により定義される分子重量分布M
w/M
nと、
iv)全体溶融破壊の発生における4×10
6ダイン/cm
2超の臨界剪断応力、またはほぼ同じ溶融指数及びM
w/M
nを有する直鎖状エチレンポリマーの表面溶融破壊の発生における臨界剪断速度よりも少なくとも50%大きい表面溶融破壊の発生における臨界剪断速度と、を有する実質的に直鎖状のエチレンポリマーである。
【0038】
実質的に直鎖状のエチレンポリマー及びそれらを調製する方法は、米国特許第5,272,236号及び同第5,278,272号でより詳細に記載される。
【0039】
実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、ポリマー主鎖に沿って炭素原子1000個当たり0.01〜、好ましくは0.05〜3、及び好ましくは〜1の長鎖分岐を有する。本明細書で、長鎖分岐は、少なくとも約6個の炭素原子の鎖の長さとして定義され、その長さを超えると炭素NMR分光学により識別されることができない。長鎖分岐は、ほぼポリマー主鎖の長さであり得る。エチレン/α−オレフィンコポリマーに関して、長鎖分岐は、α−オレフィン(複数可)のポリマー主鎖中への組み込みにより生じる短鎖分岐よりも少なくとも炭素1個分長い。実質的に直鎖状のエチレン/α−オレフィンコポリマー中の長鎖分岐の存在の実証効果は、高められるレオロジー特性として現れる。
【0040】
エチレン/1−オクテンコポリマーを含む、エチレンポリマー中の長鎖分岐の存在を決定するための有用な既知である技法がある。2つのかかる方法は、低角度光散乱検出と相まったゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC−LALLS)及び示差粘度計検出(GPC−DV)と相まったゲル浸透クロマトグラフィーである。長鎖分岐検出に関するこれらの技法の使用及びその根底となる理論は、文献中に明確に記録されている。Zimm,G.H.and Stockmayer,W.H.,J.Chem.Phys.,17,1301(1949)and Rudin,A.,Modern Methods of Polymer Characterization,John Wiley & Sons,New York(1991)pp.103−112を参照されたい。
【0041】
用語「実質的に直鎖状の」とは対照的に、用語「直鎖状」は、ポリマーには測定可能または明白な長鎖分岐が欠けていること、つまりそのポリマーは、炭素1000個当たり平均0.01未満の長分岐で置換されることを意味する。
【0042】
「溶融指数」または「I
2」は、190℃/2.16kgの条件で、ASTM D−1238に従って測定される溶融指数を意味する。「I
10」は、190℃/10kgの条件で、ASTM D−1238に従って測定される。実質的に直鎖状のエチレンポリマーの溶融指数I
2は概して、0.01g/10分〜1000g/10分、好ましくは0.01g/10分〜100g/10分である。その溶融流量指数比、つまりI
10/I
2は、少なくとも5.63、好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7であり、溶融流量指数の多分散指数への依存を示す従来のポリエチレンとは対照的に、本質的に多分散指数から独立する。
【0043】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定されるような実質的に直鎖状のエチレンポリマーの多分散指数(つまり、分子重量分布、または重量平均分子量の数平均分子量に対する比(M
w/M
n))は、等式:(M
w/M
n)≦(I
10/I
2)−4.63により定義される。多分散指数は、好ましくは3.5未満、より好ましくは1.5〜2.5である。
【0044】
さらに、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、明確、かつ実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、気体押出レオメトリーにより決定される、全体溶融破壊の発生における4×10
6ダイン/cm
3超の臨界剪断応力、または実質的に直鎖状のエチレンポリマーに関する表面溶融破壊の発生における臨界剪断速度が、直鎖状エチレンポリマーに関する表面溶融破壊の発生における臨界剪断速度よりも少なくとも50%大きくなるような気体押出レオロジーを有し、実質的に直鎖状のエチレンポリマー及び直鎖状エチレンポリマーが、同じコモノマー(複数可)を含み、直鎖状エチレンポリマーが、I
2、M
w/M
n及び密度を、実質的に直鎖状のエチレンポリマーに関する対応する値の10%以内で有し、実質的に直鎖状のエチレンポリマー及び直鎖状エチレンポリマーのそれぞれの臨界剪断速度が、気体押出レオメーターを使用して同じ溶融温度で測定される。
【0045】
溶融破壊に関する臨界剪断速度及び臨界剪断応力、ならびに他のレオロジー特性の決定は、気体押出レオメーター(GER)を使用して行われる。気体押出レオメーターは、M
.Shida,R.N.Shroff and L.V. Cancio in Polymer Engineering Science,Vol.17,No.11,p.770(1977)、及び“Rheometers for Molten Plastics”by John Dealy,published by Van Nostrand Reinhold Co.(1982)on pp.97−99に記載される。
【0046】
実質的に直鎖状のエチレンポリマーは、−30℃〜150℃の単一の示差走査熱量測定、つまりDSC溶融ピークを有する。単一の溶融ピークは、器具の敏感度にも依るが、ポリマーの総融解熱の12%未満、典型的に9%未満、及びより典型的に6%未満を構成する低溶融側において「肩」または「瘤」を示し得る。
【0047】
カルボキシル化オレフィンコポリマーは、結合層104の総重量に基づいて、30〜60重量パーセント(重量%)、具体的には35〜55重量%の量で存在する。
【0048】
結合層104はまた、結晶ブロック複合体(CBC)及びカルボキシル化オレフィンコポリマーに加えて、任意のエラストマーも含み得る。任意のエラストマーは、(既に上で詳述の)エチレン−α−オレフィンコポリマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、プロピレン系エラストマー)、ビニル芳香族ブロックコポリマー等、または前述のエラストマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせであり得る。
【0049】
ポリオレフィンエラストマーはまた、ランダムまたはブロックプロピレンポリマー(即ち、ポリプロピレン)も含み得る。ランダムポリプロピレンエラストマーは典型的に、プロピレン由来である90モル%以上の単位を含む。プロピレンコポリマー中の単位の残余は、少なくとも1つのα−オレフィンの単位由来である。
【0050】
プロピレンコポリマーのα−オレフィン構成成分は、好ましくは(本発明の目的に関して、α−オレフィンとみなされる)エチレンまたはC
4−20直鎖状、分岐状、もしくは環状α−オレフィンである。C
4−20α−オレフィンの例には、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、及び1−オクタデセンが含まれる。α−オレフィンはまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環状構造も含有し得、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンをもたらす。用語の典型的な意味におけるα−オレフィンではないが、ノルボルネン及び関連オレフィン、特に5−エチリデン−2−ノルボルネン等の特定の環状オレフィンは、α−オレフィンであり、上述のα−オレフィンのいくつかまたは全ての代わりに使用され得る。同様に、スチレン及びその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)は、本発明の目的に関してα−オレフィンである。例示的なランダムプロピレンコポリマーには、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−オクテン等が含まれるが、これらに限定されない。例示的なターポリマーには、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、及びエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)が含まれる。
【0051】
一実施形態において、ランダムポリプロピレンコポリマーは、120℃超のT
m及び/または70J/g超の融解熱(共にDSCにより測定される)、ならびに好ましくは、必須ではないがZiegler−Nattaにより作製される触媒作用を有する。
【0052】
別の実施形態において、ポリオレフィンエラストマーは、プロピレン−α−オレフィンインターポリマーであり、実質的にアイソタクチックプロピレン配列を有することを特徴とする。プロピレン−α−オレフィンインターポリマーには、プロピレン系エラストマー(PBE)が含まれる。「実質的にアイソタクチックプロピレン配列」は、配列が、
13C NMRにより測定される0.85超、代替として0.90超、別の代替として0.92超、及び別の代替として0.93超のアイソタクチック三連構造(mm)を有することを意味する。アイソタクチック三連構造は、当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,504,172号及び国際公開第00/01745号に記載され、それは、
13C NMRスペクトルにより決定されるコポリマー分子鎖中の三連構造単位という点でアイソタクチックな配列を指す。
【0053】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、プロピレン由来である単位及び1つ以上のα−オレフィンコモノマー由来であるポリマー単位を含む。プロピレン−α−オレフィンコポリマーを製造するために活用される典型的なコモノマーは、C2及びC4〜C10α−オレフィン、例えば、C2、C4、C6、及びC8α−オレフィンである。
【0054】
プロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、1〜40重量%の1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含む。1〜40重量%の全ての個別の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書で開示される。プロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、(230℃/2.16kgで)ASTM D−1238に従って測定される10分当たり0.1〜500グラム(g/10分)の範囲の溶融流動速度を有し得る。プロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、少なくとも1重量%(少なくとも2ジュール/グラム(J/g)の融解熱(H
f))〜30重量%(50J/g未満のH
f)の範囲の結晶化度を有する。プロピレン−α−オレフィンインターポリマーは典型的に、0.895g/cm
3未満の密度を有する。プロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、米国特許第7,199,203号に記載されるように、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、120℃未満の溶融温度(T
m)及び1グラム当たり70ジュール(J/g)未満の融解熱(H
f)を有する。プロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、3.5以下、または3.0以下、または1.8〜3.0の数平均分子量(M
w/M
n)で除算される重量平均分子量として定義される分子重量分布(MWD)を有する。
【0055】
かかるプロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、米国特許第6,960,635号及び同第6,525,157号にさらに記載され、その全内容が、参照することにより本明細書に組み込まれる。かかるプロピレン−α−オレフィンインターポリマーは、The Dow Chemical CompanyからVERSIFY(商標)の商品名、またはExxonMobil Chemical CompanyからVISTAMAXX(商標)の商品名で市販される。
【0056】
用語、ビニル芳香族ブロックコポリマーは、少なくとも1つの飽和または不飽和エラストマーモノマー部分と組み合わせてビニル芳香族モノマーの少なくとも1つのブロック部分を有するポリマー、及びより好ましくはエラストマー芳香族でもビニル芳香族でもないポリマーのブロックを有しないポリマーを意味する。ビニル芳香族ブロックコポリマーの例は、「スチレンブロックコポリマーまたはスチレン系ブロックコポリマー」である。用語「スチレンブロックコポリマー」または「スチレン系ブロックコポリマー」は、少なくとも1つの飽和または不飽和エラストマー(ゴム)モノマー部分と組み合わせてスチレン系モノマーの少なくとも1つのブロック部分を有するポリマー、及びより好ましくはゴムでもスチレン系でもないポリマーのブロックを有しないポリマーを意味する。不飽和ゴムモノマー単位を有する好適なスチレンブロックコポリマーには、スチレン−ブタジエン(SB)、スチレン−イソプレン(SI)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレン、α−メチルスチレン−イソプレン−α−メチルスチレン等が含まれる。
【0057】
用語「スチレンブタジエンブロックコポリマー」は、本明細書で、SB、SBS、ならびにスチレン(S)及びブタジエン(B)の大きな数のブロックを包括して使用される。
同様に、用語「スチレンイソプレンブロックコポリマー」は、スチレン及びイソプレン(I)のうちの1つの少なくとも1つのブロックを有するポリマーを包括して使用される。スチレンブロックコポリマーの構造は、線型またはラジアル型、及びジブロック、トリブロック、またはより高いブロック型であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも4つの異なるブロックまたは一対の2つの繰り返しブロック、例えば、繰り返しスチレン/ブタジエンまたはスチレン/エチレンプロピレンブロックを有するスチレン系ブロックコポリマーが、所望される。スチレンブロックコポリマーは、Dexco PolymersからVECTOR(登録商標)の商標、KRATON PolymersからKRATON(商標)の商標、Chevron Phillips Chemical CoからSOLPRENE(商標)及びK−Resinの商標、ならびにBASF Corp.からSTYROLUX(商標)の商品名で市販される。スチレンブロックコポリマーは、単独でまたは2つ以上の組み合わせで任意選択的に使用される。
【0058】
ブロックコポリマーのスチレン部分は好ましくは、α−メチルスチレン及び環置換されたスチレン、特に環メチル化スチレンを含む、スチレンまたはその類似物またはその相同体のポリマーまたはインターポリマーである。好ましいスチレン系は、スチレン及びα−メチルスチレンであり、スチレンが特に好ましい。
【0059】
スチレン系ブロックコポリマーのエラストマー部分は、任意選択的に不飽和または飽和のどちらかである。不飽和エラストマーモノマー単位を有するブロックコポリマーは、ブタジエンまたはイソプレンのホモポリマー及び少量のスチレン系モノマーを有するこれら2つのジエンうちの1つのまたはそれらの両方のコポリマーを含み得る。用いられるモノマーがブタジエンのとき、ブタジエンポリマーブロック中の約35〜約55モル%の凝縮ブタジエン単位が、1,2−構成を有することが、好ましい。かかるブロックが水素化されるとき、得られる生成物は、エチレン及び1−ブテン(EB)の規則性コポリマーブロックであるか、またはそれに類似する。用いられる共役ジエンが、イソプレンの場合、得られる水素化生成物は、エチレン及びプロピレン(EP)の規則性コポリマーブロックであるか、またはそれに類似する。好ましいブロックコポリマーは、不飽和エラストマーモノマー単位を有し、より好ましくは、少なくとも1つのスチレン系単位の部分及び少なくとも1つのブタジエンまたはイソプレンの部分を含むことであり、SBS及びSISが最も好ましい。複合体中でポリプロピレンを他のポリマーと適合させるのに、SISが特に効果的であることが分かったため、とりわけ、SISが好ましい。さらに、それは、SBSと比較して、製造中にゲルを形成する架橋の傾向が低いため、好ましい。膜の製造に流延テンターラインが使用されるとき、ならびにそのより高い鮮明性及びより低い混濁が有益であるとき、スチレンブタジエンブロックコポリマーは、代替的に好ましい。
【0060】
エラストマースチレンブロックコポリマーは、靱性、及びブロックコポリマーの不在下で取得されると考えられるよりも低い剛性を提供する。エラストマー挙動は、ASTM D412及び/またはASTM D882の手順により測定される、有利には少なくとも約200、具体的には少なくとも約220、より具体的には少なくとも約240、最も具体的には少なくとも約260、及び具体的には最高約2000、より具体的には最高約1700、最も具体的には最高約1500%の引張破断伸び率の特性により示される。工業的には、この種類の殆どのポリマーは、10〜80重量%のスチレンを含有する。ポリマーの特定の種類及びポリマーの形態の範囲内において、スチレン含有量が増加すると、ブロックコポリマーのエラストマー的性質が低下する。
【0061】
ブロックコポリマーは望ましくは、ASTM方法D1238条件GによるMFR測定、少なくとも10分当たり約2、具体的には少なくとも約4グラム(g/10分)、具体的には20g/10分、及びより具体的には30g/10分の溶融流動速度(MFR)を有する。
【0062】
好ましいスチレン系ブロックコポリマーには、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(「SIS」)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(「SBS」)、スチレン−エチレン−プロピレンブロックコポリマー(「SEP」)、及び水素化スチレン系ブロックコポリマー、例えばスチレン−(エチレンブチレン)−スチレンブロックコポリマー(「SEBS」)(例えば、Kraton Polymers LLCからKRATON(商標)1657の商品名で市販されるSEBS)が含まれる。好ましくは、本結合層中で使用されるスチレン系ブロックコポリマーは、SBSである。
【0063】
一実施形態において、スチレンブタジエンブロックコポリマーは、腕部の中心においてポリブタジエンを、かつ先端においてポリスチレンを含む放射状または星型ブロック構成を有する。かかるポリマーは、本明細書において星型スチレンブタジエンブロックコポリマーを指し、当業者が備えている技能の範囲内であり、Chevron Phillips Chemical CoからK−Resinの商品名で市販される。これらのポリマーは、星型ブロックの形態で約27%以上のブタジエンを含有し、しばしばポリスチレンの二峰性の分子重量分布を特徴とする。内部ポリブタジエン部分は、ほぼ同じの分子量であるが、一方で、外部ポリスチレン部分は、異なる分子量である。この特徴は、ポリブタジエン部分の厚みの制御を促進して、改善された鮮明性を取得する。高い鮮明性のために、ポリブタジエン部分の厚みは、好ましくは可視スペクトルの波長の約1/10以下である。
【0064】
エチレン−α−オレフィンコポリマーは、ポリエチレンを有すると上述されており、再度詳述されることはない。ポリプロピレンは、層102に関して以下に詳述される。
【0065】
エラストマーが使用される場合、それは、結合層104の総重量に基づいて、最大50重量%、具体的には10〜30重量%の量で存在する。結合層104は、本多層膜の総厚の1〜20%、具体的には2〜10%、具体的には3〜8%、及びより具体的には4〜6%の厚みを各々有する。
【0066】
第1の層102は、ポリプロピレンを含む。それはまた、プロピレンに加えて、エラストマー及びポリエチレンも任意選択的に含み得る。ポリプロピレンは、ランダムコポリマーポリプロピレン(rcPP)、衝撃性コポリマーポリプロピレン(hPP+少なくとも1つのエラストマー衝撃性改質剤)(ICPP)もしくは高衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)、または前述のポリプロピレンのうちの少なくとも1つを含む組み合わせから選択される。
【0067】
ポリプロピレンは概して、ホモポリマーポリプロピレンのアイソタクチックの形態であるが、ポリプロピレンの他の形態(例えば、シンジオタクチックまたはアタクチック)も使用され得る。ポリプロピレン衝撃性コポリマー(例えば、エチレンをプロピレンと反応させる二次共重合ステップが用いられるもの)及びランダムコポリマー(やはり反応器改質であり、プロピレンと共重合した1.5〜7%のエチレンを通常含有する)がまた、本明細書で開示されるTPO配合物中に使用され得る。種々のポリプロピレンポリマーの完全な考察は、Modern Plastics Encyclopedia/89,mid October 1988 Issue,Volume 65,Number 11,pp.86−92に含まれ、その全開示が、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明において使用するためのポリプロピレンの分子量、ひいてはポリプロピレンの溶融流動速度は、適用に応じて変化する。本明細書において有用なポリプロピレンに関する溶融流動速度は概して、約0.1グラム/10分(g/10分、230℃及び2.16kgで、ASTM D1238に従って測定される)〜約100g/10分、具体的には
0.5g/10分〜約80g/10分、及び具体的には4g/10分〜約70g/10分である。プロピレンポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーであり得るか、またはそれは、ランダムコポリマーもしくは衝撃性コポリマー(ゴム相を既に含有する)でさえであり得る。かかるプロピレンポリマーの例には、VISTAMAX(Exxon Mobilにより作製される)、VERSIFY及びINSPIRE(The Dow Chemical Co.により作製される)、ならびにPROFAX(Lyondellにより作製される)が含まれる。
【0068】
第1の層102は、第1の層102の総重量に基づいて、40〜100重量%、具体的には50〜90重量%の量でポリプロピレンを含有し得る。
【0069】
第1の層102は、第1の層の総重量に基づいて、最大40重量%、具体的には10〜35重量%の量でエラストマーを任意選択的に含有し得る。エラストマーは、エチレン−α−オレフィンコポリマー(既に上で詳述される)、ポリオレフィンエラストマー(例えば、プロピレン系エラストマー)、ビニル芳香族ブロックコポリマー、または上述されるようなそれらの組み合わせであり得る。第1の層はまた、第1の層の総重量に基づいて、最大40重量%、具体的には10〜35重量%の量でポリエチレンも含有し得る。ポリエチレンは、上述されており、再度ここで詳述されることはない。
【0070】
第1の層102は、多層化膜100の総厚に基づいて、30〜80%、具体的には40〜70%、及びより具体的には50〜70%の厚みを有する。典型的な実施形態において、第1の層は、本多層化膜の総厚の少なくとも50%である厚みを有する。
【0071】
第2の層106は、エチレンイオノマーもしくはアクリル酸エチレンコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。
【0072】
アクリル酸エチレンコポリマーは、エチレンコポリマーの総重量に基づいて、アクリル酸、アルキルアクリル酸、もしくはアルキルアクリレート、またはそれらの組み合わせ等の極性モノマーの重量の5〜50重量%、具体的には10〜20重量%、及びより具体的には12〜15重量%の量で繰り返し単位を含み得るポリマーである。アルキル基は、1〜20個の炭素原子を含み得る。コポリマーの残余は、エチレンポリマーである。エチレン−α−オレフィンコポリマー(上で定義される)を含むエチレンポリマーは、アクリル酸エチレンコポリマー中またはエチレンイオノマー(以下で詳述される)中で使用され得る。
【0073】
かかる極性モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルメタクリレート、ポリ
(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルメタクリレート、ジメチルマレアート、ジエチルマレアート、ジブチルマレアート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、酢酸ビニル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0074】
エチレンコポリマーは、一酸化炭素、二酸化硫黄、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、これらの酸の塩、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルビニルエーテル、またはそれらの組み合わせ等の任意のコモノマーの最大35重量%を含み得る。
【0075】
実施形態において、エチレンコポリマーの酸部分は、陽イオンで中和されて、イオノマーを生成し得る。例えば、金属イオンを用いた中和は、カルボン酸の総含有量に基づいて、0.1〜100、具体的には10〜90、具体的には20〜80、及びより具体的には20〜約40重量%であり得る。金属イオンは、一価、二価、三価、多価、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり得る。例には、Li、Na、K、Ag、Hg、Cu、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cd、Sn、Pb、Fe、Co、Zn、Ni、Al、Sc、Hf、Ti、Zr、Ce、またはそれらの組み合わせが含まれる。金属イオンが、多価である場合、ステアレート、オレアート、サリチレート、及びフェノラートラジカル等の錯化剤が含まれ得る。
【0076】
イオノマーはまた、20%超の中和を有するイオノマーと、例えば所望の程度の中和を達成するためのエチレン(メタ)アクリル酸コポリマーとのブレンドでもあり得る。
【0077】
エチレンコポリマーの例には、エチレン/メチルアクリレート(EMA)、エチレン/エチルアクリレート(EEA)、エチルアクリレート(EA)、エチレン/ブチルアクリレート(EBA)、エチレン/イソブチルアクリレート/メタクリル酸、エチレン/メチルアクリレート/無水マレイン酸、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(EBAGMA)及びエチレン/ブチルアクリレート/炭素モノオキシド(EBACO)、ならびにブチルアクリレート(BA)が含まれる。市販のエチレンコポリマーの例には、E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont),Wilmington,Delから入手可能である、Surlyn(登録商標)、Nucrel(登録商標)、Appeel(登録商標)、Bynel(登録商標)、Elvaloy(登録商標)、及びElvax(登録商標)商標を持つものが含まれる。
【0078】
第2の層106は、アルミニウム、銅、スズ、または金を含む金属箔も含み得る。第2の層が金属を含むとき、好ましい金属は、アルミニウム箔である。
【0079】
第2の層106は、多層化膜100の総厚に基づいて、5〜80%、具体的には7〜70%、及びより具体的には10〜60%の厚みを有する。典型的な実施形態において、第1の層は、本多層化膜の総厚の少なくとも50%である厚みを有する。
【0080】
多層膜100の各層は、ワックス、抗酸化剤、オゾン化防止剤、離型剤、殺生物剤、熱安定剤、顔料、色素剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤等、または前述の添加物のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ等の他の添加物を含有し得る。
【0081】
本多層膜のより多くの層のうちの1つは、費用を低減することに加えて溶融粘度を低減
し得るワックスを任意選択的に含み得る。好適なワックスの非限定的な例には、石油ワックス、低分子量ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィンワックス、合成ワックス、約55〜約110℃の溶融点を有するパラフィン及び微結晶ワックス、フィッシャートロプシュワックス、または前述のワックスのうちの少なくとも1つを含む組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、ワックスは、約400〜約6,000g/モルの数平均分子量を有する低分子量ポリエチレンホモポリマーまたはインターポリマーである。
【0082】
更なる実施形態において、本多層膜の層の各々は、抗酸化剤または安定剤を任意選択的に含み得る。好適な抗酸化剤の非限定的な例には、アミン系抗酸化剤、例えばアルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルまたはアラルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルアミン等;及びヒンダードフェノール化合物、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン(例えば、Ciba Geigy,New YorkからのIRGANOX(商標)1010);オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナマート(例えば、Ciba Geigyから市販されるIRGANOX(商標)1076)、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。使用されるとき、複合体中の抗酸化剤の量は、任意の特定の層の総重量に基づいて、最大約1重量%、具体的には0.05〜0.75重量%、具体的には0.1〜0.5重量%であり得る。
【0083】
更なる実施形態において、本明細書で開示される複合体は、紫外線照射による複合体の変質を回避または低減し得る紫外線安定剤を任意選択的に含み得る。好適な紫外線安定剤の非限定的な例には、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、アリールエステル、オキサニリド、アクリル酸エステル、ホルムアミジンカーボンブラック、ヒンダードアミン、ニッケル消光剤、ヒンダードアミン、フェノール系抗酸化剤、金属塩、亜鉛化合物等、または前述の紫外線安定剤のうちの少なくとも1つを含む組み合わせが含まれる。使用されるとき、任意の特定の層中の紫外線安定剤の量は、特定の層の総重量に基づいて、約0超〜約1重量%、具体的には0.05〜0.75重量%、及び具体的には0.1〜0.5重量%であり得る。
【0084】
更なる実施形態において、本明細書で開示される複合体は、着色料または顔料を任意選択的に含み得る。当業者に既知である任意の着色料または顔料は、本明細書で開示される接着複合体中で使用され得る。好適な着色料または顔料の非限定的な例には、二酸化チタン及びカーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニン顔料、ならびにCiba Specialty Chemicals,Tarrytown,NYから全て入手可能であるIRGAZIN(登録商標)、CROMOPHTAL(登録商標)、MONASTRAL(登録商標)、CINQUASIA(登録商標)、IRGALITE(登録商標)、ORASOL(登録商標)等の他の有機顔料が含まれる。使用されるとき、任意の特定の層中の着色料または顔料の量は、本多層化膜の任意の特定の層の総重量に基づいて、最大10重量%、具体的には0.1〜5重量%、及びより具体的には0.5〜2重量%の量で存在し得る。
【0085】
一実施形態において、膜100を製造する1つの方法中、多層化膜100の層102、104、及び106の各々に関するそれぞれの複合体は、別個の装置に供給され、その中で剪断力、拡張力、及び伸張力にかけられる。複合体に前述の力を及ぼす装置は、押出機(一軸式または二軸式)、ヘンシェル混合機、ワーリングブレンダー、Buss Kneader、Banbury、圧延ミル(2つ以上のロール)、高剪断インペラー分散機、
混ねつ機等中で実行され得る。本多層化膜中の任意の層に関する成分は、ヘンシェル混合機、ワーリングブレンダー、高剪断インペラー分散機等のいずれかにおいて乾式混合または溶液ブレンドされ得、その後押出される。
【0086】
典型的な実施形態において、それぞれの層の各々に関する複合体は、別個の押出機に供給される。第1の層102に関する複合体は、第1の押出機に供給され、結合層104に関する複合体は、第2の押出機に供給され、第3の層106に関する複合体は、第3の押出機に供給される。それぞれの押出機からの複合体は、単一のダイに供給され、共押出されて、本多層化膜を形成する。次いで、共押出された膜は、吹込まれて、所望の厚みの多層化膜を形成する。実施形態において、共押出された後の本多層化膜は、2つ以上のロールを有する圧延ミル中で積層される。
【0087】
別の実施形態において、本多層化膜を製造する別の方法中、各層は、別個に押出され得、次いで押出された層は、積層(押出積層、熱積層、圧縮成型、接着積層等)に形成され得る。圧縮成型または積層は、圧延ミルまたは圧縮成型プレスで実行され得る。
【0088】
別の実施形態において、本多層化膜を製造する別の方法中、2つの層は、共に共押出され得、次いで共押出された層は、第3の層にコーティングされ得るかまたは第3の層と共に積層され得る。押出コーティングは、樹脂をスロットダイから直接移動ウェブ上に押出することを伴い、それは次いで、ゴムで保護された加圧ロール及びクロムでメッキされた冷却ロールから成るニップを通して送られ得る。その後半で、溶融した膜を冷却して固体状態に戻し、また、プラスチック表面に所望の仕上げを供給する。例えば、第2の層106は、アルミニウム箔であり得、層102及び104は、押出コーティングプロセスによりアルミニウム箔にコーティングされ得る。
【0089】
上で詳述のとおり、複数の多層化膜は、共に積層されて、単一の多層化膜を形成し得る。2つ以上の多層化膜が共に積層されるとき、共通層のうちの少なくとも1つは、所望される場合、省略され得る。例えば、2つの多層化膜が共に積層される場合、第2の層106のうちの少なくとも1つは、省略され得る。よって、単一の多層化膜が3つの層を含有し、一方で共に積層される2つの多層化膜は、5つの層を含有することになり、3つの多層化膜は7つの層を含有することになる。
【0090】
本明細書で開示される本多層化膜は、本多層化膜中にポリプロピレンを含むコア層の存在が、それに改善された剛性、層間剥離することのない高い熱融着強度、高耐クリープ性、高温性能及び耐油性/防皺性、ならびに良好な光学的鮮明性を提供するという点で有益であり、これにより本多層化膜を包装、自動車パネル等において使用することが可能になる。本多層膜の目的とする使用に応じて、本発明による本多層膜またはシート構造は、特定の性能要件を満たすために考案され得る。
【0091】
本明細書で開示される本多層化膜及び本膜の製造方法は、以下の実施例において例証される。
【実施例】
【0092】
実施例1
本実施例は、開示される多層化膜及びそれらの製造方法を示す。これらの実施例はまた、比較多層化膜を上回る本多層化膜の特性を示すためにも実行された。本膜において実行された試験は、以下で詳述される。
【0093】
多層化膜の種々の層で使用された成分(本実施例に関する及び後の実施例に関する)は、以下の表1で詳述される。
【0094】
【表1】
【0095】
結晶ブロック複合体(CBC1)は、以下の表1Aで示される特性を有する。
【0096】
【表1A】
【0097】
表1の構成成分、衝撃性改質剤、及び相溶化剤の化合を、毎分50回転数(RPM)で回転するHaake Rheomix 3000において実行した。この混合機を190℃に予熱し、ピストンが確実に停止した後、混合を5分間継続する。配合物は、表2で示される。比較膜試料は、文字(試料A〜Eを参照)で識別されるが、本発明を例証する試料は、数字(試料1〜2を参照)で識別される。比較試料A〜E及び発明の試料1〜2の層構造は、表2で示される。試料を作製する方法は、以下で詳述され、比較試料及び本発明の試料の特性は、表3で示される。
【0098】
【表2】
【0099】
T型剥離粘着力試験のために使用される対面して接合されるプラークを、積層、即ち接着対の2つの圧縮成型されたプラークを溶融接合することにより調製した。溶融接合のための圧縮成型されたプラークは、剥離検体が試験のために打抜きされ、型抜きされて1mm厚になる。全ての剥離検体が、接合区域で亀裂を起こし、真の接着力が測定され得ることが所望される。接着力が、検体がかけられる曲げ力からの最小限の寄与を有することも所望される。よって、剥離試験中の層の引張降伏を最小限に抑える(例えば、厚みを最大限に高める)ことと、(厚みを最小限に抑えるために)層がかけられる曲げ力を最小限に抑えることとの間の妥協点のバランスを取るために1mmの厚みを選択した。
【0100】
試料調製は、以下のとおり詳述される。
【0101】
第1のステップ:190℃、25000ポンド毎平方インチ(psi)の圧力下で5分間、個々のプラークを圧縮成型する。
【0102】
第2のステップ:一対に積み重ね、190℃、200psiの接触圧力下で10分間再成型する。
【0103】
第3のステップ:接合したプラークを、剥離試験前に48時間、ASTM環境で条件付けした。接合したプラークを、NAEF穴プレスにより、約75mmの長さの脚部を供えた25mm×250mmの片に切り取った。
【0104】
T型剥離試験:
使用される試験方法は、254mm/分の一定伸張速度で部分的に予備剥離された膜上での180°剥離強度測定である。23℃に温度制御された室内で、全ての測定を実行した。本片を、INSTRU−MET Corporation製のINSTRON Model 1122により把持し、剥離した。空圧式把持具を備えるINSTRONを操作し、180°に2つの検体脚部を分離し、接合した領域を各脚部と90°に残し、約50mmの2つの把持具の間の最初の距離をから開始して、254mm/分の一定分離速度を使用した。各検体は75mm引っ張られる。一対当たり5つの個別の検体の応力歪み曲線を記録した。平均ピーク荷重を、剥離開始の目印と最も高い荷重の端部との間の平均接着強度として報告し、平均した。
【0105】
表3は、接着評価を示す。
【0106】
【表3】
【0107】
PP D221mイオノマー3801、PRIMACOR 3440、及びアルミニウム箔を含む異なる基材への接着性は、表4に要約される。発明の実施例(試料#1及び2)は、PP及びイオノマー3801への優れた接着性を示す。加えて、試料#1は、PRIMACOR 3440への良好な接着性を示すが、試料#2は、PRIMACOR 3440への優れた接着性、及びアルミニウム箔への良好な接着性を示す。一方、比較実施例、即ち試料#A〜Hは、PPまたはイオノマー3801のいずれかに対する十分な接着性を示すが、両方共には示さない。
【0108】
【表4】