(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
<先行技術>
構造的に多様な触媒が先行技術から知られている。それらは、典型的には、熱又は紫外線及び/若しくは可視光線のいずれかによって活性化される。いわゆるカールステッド触媒のようなPt(0)錯体を典型的に含む特に反応性の系は、室温でも付加−架橋シリコーンを架橋することができる。反応性が高いため、これらの触媒は、反応性成分が加工直前にのみ混合される二成分系にのみ適している。このような系はRTV−2系と呼ばれる。
【0005】
一成分付加−架橋シリコーンゴム系の必要性は、理想的には室温で全く硬化せず、高温で、又は紫外線及び/若しくは可視光線に曝露された場合にできるだけ迅速に硬化することが長い間知られていた。先行技術では、早期(premature)の架橋の問題を解決するために種々のアプローチが知られている。1つの可能性は阻害剤の使用からなる。これは、ポットライフを延ばすために混合物に添加剤として添加される。阻害剤は常に触媒化合物に対してモル過剰で使用され、その触媒活性を阻害する。しかし、阻害剤の量の増加に伴い、ポットライフの延長の他に、高温での系の反応性が低下し、開始温度が上昇する。文献では、異なる物質クラスの阻害剤の例が数多くある。
【0006】
US3723567Aは、阻害剤としてアミノ−官能性シランを開示する。US5270422Aでは、アルキルジアミンとアセチレン性不飽和アルコールとの併用が阻害に用いられている。EP0761759A2は、マレイン酸塩及びエチノールのようなさらなる阻害剤と共に、亜リン酸塩(phospite)が使用される、阻害剤の組合せを請求する。DE19757221A1はまた、阻害剤の使用における亜リン酸塩物質クラスを記載する。ホスフィンは、US4329275Aにおいて阻害用添加剤として請求されている。有機過酸化物と組み合わせた亜リン酸塩の組合せについては、EP1437382A1に記載されている。架橋反応速度に対する負の影響に加えて、部分的に揮発性の阻害剤又は揮発性成分を放出する阻害剤の使用も好ましくないことが証明されている。WO2016133946A1は、マイクロカプセル化触媒を用いて長期保存期間を達成する。この方法の欠点は、意図せずせん断エネルギーが加えられると材料の時期尚早の架橋を生じる可能性があることである。
【0007】
EP0545591B1は、酸化状態0の白金を有する予め形成された白金触媒を請求し、これはシリコーン混合物への配位子の付加によって達成することができる。50℃で5日間のポットライフを達成するために、これを少なくとも等モルの程度(1〜60倍)に加える。実施例において、白金触媒と付加された配位子との間の反応生成物の存在を種々の分析法で実証した。この方法と個別の化合物の使用法の相違は、シリコーン混合物中の配位子と白金化合物の反応では完全な変換が保証できず、所望の主生成物に加えて多様な副生成物が生成するという事実からなる。
【0008】
適切な添加剤により、室温で完全に阻害し、硬化条件下での反応速度に影響を及ぼさない混合物は、現在のところ知られていない。
【0009】
先行技術によれば、使用される触媒は通常熱により活性化される、すなわち、付加−架橋性シリコーン組成物は、したがって架橋処理のために加熱されなければならない。先行技術に従って、この場合シリコーン組成物は、例えばコーティング処理において、選択されたポッティング、成形及び共押し出し、又は他の成形方法における場合と同様に、しばしば基材に塗布されなければならない。実際の加硫処理は、この場合、加熱処理によって行われ、そのためにはコスト及びエネルギー集約型のプラントが頻繁に稼働されなければならない。
【0010】
熱による触媒の活性化に加えて、照射によって活性化されるものも知られている。照射によりヒドロシリル化反応を開始するのに適した多数の白金錯体が技術文献に記載されている。記載されている全ての白金触媒は、光によって活性化することができ、光源のスイッチを切った後でも、シリコーン組成物を架橋することができる。この手順は、暗反応として当業者に知られている。
【0011】
EP0122008B1は、感光性触媒として(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体を含む紫外線架橋性シリコーン組成物を記載する。高い触媒活性が有利であるとされている。しかし、欠点は、この触媒クラスがシリコーンマトリックス中でわずかな分散性しか示さないことである。また、白金触媒の光によって誘起される分解には、非常に短い波のUV―C放射線の使用が必要であり、これは必然的に生産ラインの直接の周囲での高いオゾン汚染につながる。
【0012】
EP0561919B1は、放射線架橋ヒドロルシリル化のための方法を記載し、この方法では、組成物は、(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体に加えて、化学線を吸収し、このように光収率の増大に寄与するフリーラジカル光開始剤をさらに含む。この(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体とフリーラジカル光開始剤の組合せにより、架橋処理が加速されたヒドロシリル化反応の開始が可能になる。しかし、追加の化合物の使用は、それに対応して製造方法がより複雑になるので、原則として不利と考えなければならない。
【0013】
対照的に、EP0398701B1は、Pt(II)−β−ジケトネート(diketonate)錯体を請求し、これは、曝露の際の短いゲル化時間と併せて、長いポットライフという利点を有する。しかし、比較的極性の高い化合物はシリコーンマトリックスに溶けにくいという欠点を有し、そのため多くの用途に適するには限界がある。
【0014】
EP0146307B1は、シリコーンマトリクス中における良好な溶解性を特徴とする(η
5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金(IV)錯体を開示する。この錯体を用いると、比較的高濃度の溶液を得ることもできる。しかし、この化合物の主な欠点は、それらの比較的高い蒸気圧及びそれらの揮発性である。その結果、シリコーンエラストマーの製造又は加工において真空が適用されると白金濃度が変化することを排除できない。排除されないさらなる結果は、毒性学的に懸念される白金化合物による周囲の空気の汚染である。
【0015】
EP0358452B1では、架橋に必要な照射光をより長い波長に移動させるために、(η
5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金(IV)錯体を触媒として含む組成物に増感剤が添加される。その結果生じる利点は、紫外線ではなく可視光で混合物を硬化させることができることである。
【0016】
EP0561893B1は、(η
5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金(IV)錯体に加えて、化学線を吸収し、このようにして光収率の増大に寄与するフリーラジカル光開始剤をさらに含む放射線架橋性組成物を記載する。この組合せは使用した混合物の量子収率を増加させることができる。結果として増加した暗反応性は、欠点として考えなければならない。さらに、追加の化合物の使用により、製造処理コスト及び材料コストの両方が上昇する。
【0017】
EP1803728A1は、量子収率を増大させ、活性化に必要な光波長を長波長に移動させるために、シクロペンタジエニル環上に特定の置換基(ナフチル、アントラセニル等)を有する修飾(η
5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金(IV)錯体を開示する。しかし、芳香環の連結は、シリコーンマトリックス中の錯体の溶解度に悪影響を及ぼす。これらの化合物には揮発性という欠点もある。
【0018】
中心原子上の配位子の選択により合成においてすでに安定化されている個別の化合物は、例えば、EP0994159B1、EP0146307B1又はWO2009092762におけるもののようなσ−アルキル貴金属化合物を含み、ここで中心原子は酸化状態+II及び+IVに割り当てることができる錯体である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<化合物(A)>
本発明に従って使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素を含まない有機化合物、及びまた好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物であることができ、又はそれらの混合物でもよい。
【0028】
ケイ素を含まない有機化合物(A)の例は、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチルヘプタジエン−(1,5)、3−フェニルヘキサジエン−(1,5)、3−ビニルヘキサジエン−1,5及び4,5−ジメチル−4,5−ジエチルオクタジエン−(1,7)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’−ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0029】
本発明によるシリコーン組成物は、構成成分(A)として少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含むことが好ましく、ここで、付加−架橋組成物に現在まで使用されている全ての脂肪族不飽和有機ケイ素化合物、例えば、尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステル−アミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシルアリーレンセグメント及び/又はカルボランセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、エーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することができる。
【0030】
使用される脂肪族炭素−炭素多重結合を有する、SiCに結合したラジカルを含む有機ケイ素化合物(A)は、一般式(I)の単位から構成される線状又は分枝状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
R
aR
4bSiO
(4−a−b)/2(I)
式中、
Rは、各々独立に、同一であるか又は異なる、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない有機又は無機基であり、
R
4は、各々独立に、同一であるか又は異なる、少なくとも1つの脂肪族炭素−炭素多重結合を有する一価の置換又は非置換の、SiCに結合した炭化水素基であり、
aは0、1、2又は3であり、及び
bは0、1又は2であり、
ただし、a+bの合計は3以下であり、1分子あたり少なくとも2つの基R
4が存在することとする。
【0031】
基Rは、一価又は多価基であり得、ここで、多価基、例えば二価、三価及び四価基は、次いで、式(I)の、例えば、2つ、3つ(there)、4つのような2つ以上のシロキシ単位を互いに結合する。
【0032】
Rのさらなる例は、式(I)に従い、一価の基F、−Cl、−Br、OR
5、−CN、−SCN、−NCO及び酸素原子又は基−C(O)−によって割り込まれ得る、SiCに結合した置換又は非置換の炭化水素基であり得、及びまた両側においてSiCに結合した二価の基でもあり得る。基RがSiCに結合した置換炭化水素基である場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、−OR
5、−NR
5−、−NR
52、−NR
5−C(O)−NR
52、−C(O)−NR
52、−C(O)R
5、−C(O)OR
5、−SO
2−Ph及び−C
6F
5である。この場合、R
5は、各々独立して、同一であるか又は異なる、水素原子又は1〜20個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、Phはフェニル基である。
【0033】
基Rの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基等のヘキシル基、n−ヘプチル基等のヘプチル基、n−オクチル基及び2,2,4−トリメチルペンチル基のようなイソオクチル基等のオクチル基、n−ノニル基等のノニル基、n−デシル基等のデシル基、n−ドデシル基等のドデシル基、及びn−オクタデシル基等のオクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基等のアリール基、o−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基等のアルカリル基、並びにベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基等のアラルキル基である。
【0034】
置換基Rの例は、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基のようなハロアルキル基、o−、m−及びp−クロロフェニル基のようなハロアリール基、−(CH
2)―N(R
5)C(O)NR
52、−(CH
2)
n−C(O)NR
52、−(CH
2)
n−C(O)R
5、−(CH
2)
n−C(O)OR
5、−(CH
2)
n−C(O)NR
52、−(CH
2)−C(O)−(CH
2)
mC(O)CH
3、−(CH
2)−O−CO−R
5、−(CH
2)−NR
5−(CH
2)
m−NR
52、−(CH
2)
n−O−(CH
2)
mCH(OH)CH
2OH、−(CH
2)
n(OCH
2CH
2)
mOR
5、−(CH
2)
n−SO
2−Ph及び(CH
2)
n−O−C
6F
5であり、式中R
5及びPhは上で規定した規定に対応し、n及びmは0〜10の間の同一の又は異なる整数である。
【0035】
式(I)による両側のSiに結合した二価の基に等しいRの例は、水素原子の置換による追加の結合によって生じる、基Rについて上述した一価の例から誘導されるものである。そのような基の例は、−(CH
2)−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CH(CH
3)−CH
2−、−C
6H
4−、−CH(Ph)−CH
2−、−C(CF
3)
2−、−(CH
2)
n−C
6H
4−(CH
2)
n−、−(CH
2)
n−C
6H
4−C
6H
4−(CH
2)
n−、−(CH
2O)
m、−(CH
2CH
2O)
m、−(CH
2)
n−O
x−C
6H
4−SO
2−C
6H
4−Ox−(CH
2)
n−であり、式中、xは0又は1であり、Ph、m及びnは上で規定した規定を有する。
【0036】
基Rは、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない1〜18個の炭素原子を有する、SiCに結合した、置換されていてもよい一価の炭化水素基、特に脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない1〜6個の炭素原子を有する、SiCに結合した一価の炭化水素基、特にメチル又はフェニル基であることが好ましい。
【0037】
基R
4は、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)を受けやすい任意の基であり得る。基R
4がSiCに結合した置換炭化水素基である場合、置換基として好ましいのはハロゲン原子、シアノ基及びOR
5であり、式中R
5は前述の規定を有する。
【0038】
基R
4は、ビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、5−ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、ビニルシクロヘキシルエチル、ジビニルシクロヘキシルエチル、ノルボルネニル、ビニルフェニル及びスチリル基等の2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基であることが好ましく、ビニル、アリル及びヘキセニル基を使用することが特に好ましい。
【0039】
構成成分(A)の分子量は、約10
2〜10
6g/molの広い限界値内で変化し得る。例えば、構成成分(A)は、例えば、1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサンのような比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサンであってもよいが、例えばペンダント又は末端の、Siに結合したビニル基を有する、分子量10
5g/mol(NMRによって測定される数平均)のハイポリマーポリジメチルシロキサンであってもよい。構成成分(A)を形成する分子の構造も固定されない。特に、比較的高分子量のシロキサン、言い換えればオリゴマー又はポリマーシロキサンの構造は、線状、環状、分枝状、又は樹脂状、網目状であり得る。線状及び環状ポリシロキサンは、式R
3SiO
1/2、R
4R
2SiO
1/2、R
4RSiO
1/2及びR
2SiO
2/2の単位で構成されることが好ましく、式中R及びR
4は上で規定された規定を有する。分枝状及び網目状ポリシロキサンはさらに三官能性及び/又は四官能性単位を含み、式RSiO
3/2、R
4SiO
3/2及びSiO
4/2のものが好ましい。構成要素(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物も使用できることが理解されるであろう。
【0040】
化合物(A)として特に好ましいのは、いずれの場合も25℃、せん断速度1秒
−1で粘度が0.01〜500,000Pa・s、より好ましくは0.1〜100,000Pa・sのビニル官能性の実質的に線状のポリジオルガノシロキサンを使用することである。
【0041】
本文中の粘度は、DIN EN ISO 3219:1994(液体、乳化又は分散状態におけるポリマー/樹脂)及びDIN 53019に従って測定される。25℃での粘度の測定及び流動曲線は、例えば、プレート/コーンシステム又は同等の器具を備えたAnton Paar MCR301から空気をマウントした回転式レオメーターのような回転式粘度計で測定することができる。
【0042】
<化合物(B)>
有機ケイ素化合物(B)として、付加−架橋性組成物にこれまで採用されてきた全ての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することが可能である。Siに結合した水素原子を含む、使用されたオルガノポリシロキサン(B)は、一般式(II)の単位で構成される線状、環状、又は分枝状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
R
cH
dSiO
(4−c−d)/2(II)
式中、
Rは上で規定した規定を有し、
cは0、1、2又は3であり、及び
dは0、1又は2であり、
ただし、c+dの合計は3以下であり、1分子あたり少なくとも2個の、Siに結合した水素原子が存在するものとする。
【0043】
本発明に従い使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、オルガノポリシロキサン(B)の総重量に基づき、0.04〜1.7重量%の範囲でSiに結合した水素を含むことが好ましい。
【0044】
構成成分(B)の分子量も同様に10
2〜10
6g/molの間のように広い限界値内で変化し得る。したがって、構成成分(B)は、例えば、テトラメチルジシロキサンのような比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサンであってもよいが、鎖内又は末端にSiH基を有するハイポリマーポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂でもよい。
【0045】
構成成分(B)を形成する分子の構造も固定されない。特に、比較的高分子量のSiH含有シロキサン、言い換えればオリゴマー又はポリマーの構造は、線状、環状、分枝状、又は他の樹脂状、網目状であり得る。線状及び環状ポリシロキサン(B)は、式R
3SiO
1/2、HR
2SiO
1/2、HRSiO
2/2及びR
2SiO
2/2の単位で構成されることが好ましく、Rは上記の規定を有する。分枝及び網目状ポリシロキサンは、さらに三官能性及び/又は四官能性単位を含み、式RSiO
3/2、HSiO
3/2及びSiO
4/2のものが好ましく、Rは上記の規定を有する。
【0046】
構成成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物も使用できることが理解される。特に好ましいのは、低分子量の、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンのようなSiH官能性化合物、及び25℃で10〜10,000mPa・sの粘度及び1秒
−1のせん断速度を有する、ポリ(水素メチル)シロキサン及びポリ(ジメチル水素メチル)シロキサンのような高分子量のSiH含有シロキサン、又はメチル基の一部が3,3,3−トリフルオロプロピル基又はフェニル基に置換された類似のSiH含有化合物を使用することである。
【0047】
本発明による架橋性シリコーン組成物中の構成成分(B)の量は、(A)からの脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1〜20、より好ましくは1.0〜5.0の間となるようにすることが好ましい。
【0048】
本発明に従って使用される化合物(A)及び(B)は、市販製品であるか、又は化学において一般的な方法によって製造することができる。
【0049】
化合物(A)及び(B)の代わりに、本発明によるシリコーン組成物は、脂肪族炭素−炭素多重結合及びSiに結合した水素原子を同時に有するオルガノポリシロキサン(C)を含むことができる。本発明によるシリコーン組成物はまた、3つの化合物(A)、(B)、及び(C)の全てを含むことができる。
【0050】
<化合物(C)>
シロキサン(C)を用いる場合には、該当するシロキサンは一般式(III)、(IV)及び(V)の単位から構成されるものが好ましい。
R
fSiO
4/2(III)
R
gR
4SiO
3−g/2(IV)
R
hHSiO
3−h/2(V)
式中、
R及びR
4は上で規定した規定を有し、
fは0、1、2又は3であり、
gは0、1又は2であり、及び
hは0、1又は2であり、
ただし、1分子あたり少なくとも2つの基R
4及び少なくとも2個の、Siに結合した水素原子が存在する。
【0051】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、MP樹脂として知られるSO
4/2、R
3SiO
1/2、R
2R
4SiO
1/2及びR
2HSiO
1/2単位で構成されるものであり、これらの樹脂はRSiO
3/2及びR
2SiO単位をさらに含むことができ、また、R
2R
4SiO
1/2、R
2SiO及びRHSiO単位から実質的になる線状オルガノポリシロキサンであって、R及びR
4が前述の規定を満たすものである。
【0052】
オルガノポリシロキサン(C)は、好ましくは、いずれの場合も25℃及び1秒
−1のせん断速度で、0.01〜500,000Pa・s、より好ましくは0.1〜100,000Pa・sの平均粘度を有する。オルガノポリシロキサン(C)は、化学において一般的な方法によって製造可能である。
【0053】
<化合物(D)>
化合物(D)は貴金属触媒であり、貴金属は0より大きい酸化状態にある。驚くべきことに、化合物(E)のみがスカベンジャーとして作用し、触媒活性のある副産物及び分解生成物を捕捉し、それによってその触媒作用を遮断し、それによって本発明によるシリコーン組成物の非常に長いポットライフを可能にすることがわかったので、このことは必要である。
【0054】
Pt及びPdのような白金族の貴金属触媒(D)は、好ましくは+II及び+IVの酸化状態にあるPt及びPdである。Ir及びRhのようなイリジウム属の貴金属触媒(D)の場合、Ir及びRhは+I及び+IIIの酸化状態にあることが好ましい。
【0055】
化合物(D)として適切な白金化合物の例は、次のとおりである。Pt(2)β−ジケトネート錯体、(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体、(η−ジオレフィン)(σ−アルキル)白金錯体、(η
5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金(IV)錯体、ビス(アセチルアセトナト)Pt(II)錯体、ビス(ホスフィン)白金(II)ジハライド錯体、ビス(σ−アルキニル)(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)錯体。
【0056】
上で規定した錯体のペンダント基は、広い限度値内で変化し得る。本質的な特徴は、中心の金属の直接的な環境だけである。
【0057】
化合物(D)の適切な具体例は、以下の通りである。
ビス(アセチルアセトナト)Pt(II)、
ビス(σ−tert−ブチルエチニル)シクロオクタジエンPt(II)、
ビス(σ−tert−ブチルフェニル)シクロオクタジエンPt(II)、
ビス(σ−1−エチニル−1−シクロヘキサノール)シクロオクタジエンPt(II)、
トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[((2−メチルアリル)ジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(V)、
トリメチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(2−トリメトキシシリル)エチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(4−トリメトキシシリル)ブチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(2−トリメトキシシリル)−1−メチルエチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)−2−メチル−2−プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[ビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[ビス(2−メチルアリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル(tert−ブチル)]シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(トリメトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(2−トリメトキシシリル)エチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(4−トリメトキシシリル)ブチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(2−トリメトキシシリル)−1−メチルエチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)−2−メチル−2−プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[トリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(トリエトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(トリアセトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ビス−トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル](アリルジメチルシリルシリル)シクロペンタジエニル白金(IV)、
トリメチル[(3−トリエトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(トリエトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−トリエトキシシリル)プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(トリエトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリエチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリス(トリメチルシリルメチル)[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリエチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリエチル[(トリメトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリエチル[トリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)及び
トリエチル[(トリメトキシシリル)メチルトリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)。
【0058】
本発明による化合物(D)は好ましくは、
トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[ビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)]シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)及び
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
(1R,2R)−シクロヘキサンジアミン(1,2−エタンジオナト)白金(II)である。
【0059】
本発明による化合物(D)は、特に好ましくは、
トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)及び
トリメチル[(3−トリメトキシシリル)プロピル](アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル]シクロペンタジエニル]白金(IV)並びにOH−末端ポリジアルキルシロキサノレート(siloxanolate)(ポリマー結合変異型)とのその反応生成物(この場合、メトキシ基は、10〜1000の間の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンにより完全に又は部分的に置換されている。)、ビス(σ−エチニルベンゼン)Pt(II)シクロオクタジエン、ビス(σ−tert−ブチルフェニル)Pt(II)シクロオクタジエンである。
【0060】
<化合物(E)>
本発明によるシリコーン組成物のポットライフにとって極めて重要なのは化合物(E)である。化合物(E)は、酸化状態が0を超えるPt、Pd、Ir及びRhのような貴金属に結合することができる、異なる少なくとも二座の配位子の単一成分又は混合物である。
【0061】
化合物(E)は、貴金属に結合することができる、少なくとも2個のヘテロ原子を含む有機化合物である。全ての酸化状態の貴金属に強力な配位子として結合する、窒素原子、硫黄原子、酸素原子又はリン原子を含む種々の化合物クラスは、先行技術から知られている。
【0062】
化合物(E)の例は、アゾジカルボン酸塩、トリアゾリンジオン、複素芳香族窒素化合物、ジホス配位子又はピンサー配位子である。この場合、物質が分子として存在するか、シリカ又はポリマーのような支持体に結合しているかは、効果に関して何の役割も果たさない。
【0063】
本発明の一実施形態では、化合物(E)による化合物(D)の前処理の一種を実施し、ここで、化合物(E)は、処理後及び他の化合物と混合する前に、本発明によるシリコーン組成物から除去される。この前処理の1つの可能性は、シリカ又はポリマーのような支持体に結合した化合物(E)を(D)と混合し、その後ろ過により化合物(E)を除去することから成る。
【0064】
硫黄含有化合物(E)の例は次の通りである:
ジメルカプロール、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプトプロパンスルホン酸又はチオプロニン。
【0065】
酸素含有化合物(E)の例は次の通りである:
カテコール、アセチルアセトネート又は酒石酸。
【0066】
リン含有化合物(E)の例は次の通りである:
ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、BINAP、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、キラホス又はDIPAMP。
【0067】
さらに置換されていてもよいヘテロ芳香族構造を部分的に有する窒素含有化合物(E)は、ポルフィリン、4−ヒドロキシピリジン−2,6−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ネオクプロイン、ビキノリン、テルピリジン、ビピラジン、フタラジン、キノリン−2−イルメタンチオール、4,4’−ジピリジン、3,3’−ジピリジン、2,4’−ジピリジン、インダゾール、ジピリジルケトン、ポリ−4−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニルピリジン、2,2’:6’,2”−テルピリジン又は4,4’−トリメチレンジピリジン、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート又は4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオンである。
【0068】
この場合、特定された化合物の水素原子をアルキル、アリール、アリールアルキル、又はヘテロ原子で置換することができる。
【0069】
ジメルカプロール、ポルフィリン、2,2’−ビピリジン、フェナントロリン及びネオクプロインが好ましい。
【0070】
2,2’−ビピリジン、フェナントロリン及びネオクプロインが特に好ましい。
【0071】
この場合、モノマーとしての化合物(E)は置換されてもよいし、又はポリマー構造に結合してもよい。
【0072】
化合物(E)はどの時点でも混合可能である。本発明の範囲を限定することなく、化合物(D)の場合にすでに上でさらに述べたように、作用様式の理論は、化合物(E)と添加された化合物(D)の不純物との反応である。すなわち、触媒(D)の合成から不純物として生じる触媒化合物や、貯蔵中に形成される(D)の分解生成物である。この捕獲反応によって、結合しなければシリコーン組成物の時期尚早の望ましくない架橋をもたらす触媒種が結合する。既存の理論によれば、化合物(D)自体はここで化合物(E)と反応しない。理想的には、化合物(E)の添加も架橋挙動に影響しないか、又は影響してもごくわずかである。本発明との関連において、触媒(D)の熱的活性化又は光化学的活性化の場合、50%架橋程度までの、最大50%までの架橋持続時間の延長は許容可能であり、従って本発明に従う。反応性混合物のポットライフは、ひいては、本発明の一成分組成物が、50℃で少なくとも7日間保存時及び室温(約20〜25℃)で160日間保存時に、10秒
−1のせん断速度での2倍の動的粘度の最大増加を示すように延びる。
【0073】
化合物(E)は通常、化合物(D)の不足分に用いられる。化合物(D)に対する化合物(E)のモル比は、この場合、0.0001〜10の間、好ましくは0.001〜1の間、特に好ましくは0.005〜0.8の間である。
【0074】
<追加の任意選択的化合物(F)及び(G)>
上記の化合物(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)に加えて、本発明によるシリコーン組成物中にさらなる化合物(F)又は(G)が存在してもよい。
【0075】
化合物(F)、例えば阻害剤及び安定剤は、本発明によるシリコーン組成物の処理時間、開始温度及び架橋速度の標的調節に役立つ。これらの阻害剤及び安定剤は、付加−架橋組成物の分野において非常によく知られている。一般的な阻害剤の例は、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オールのようなアセチレンアルコール、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサンのようなポリメチルビニルシクロシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサンのようなメチルビニル−SiO
1/2基及び/又はR
2ビニルSiO
1/2末端基を有する低分子量シリコーンオイルであって、Rは上記の規定を有するもの、トリアルキルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル及びマレイン酸ジエチルのようなマレイン酸ジアルキル、フマル酸ジアリル及びフマル酸ジエチルのようなフマル酸アルキル、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド及びピナンヒドロペルオキシドのような有機ヒドロペルオキシド、有機過酸化物、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミン及びアミド、ホスファン及びホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン及びオキシムである。これらの阻害剤添加剤(F)の効果は、その濃度が個別に測定されなければならないようにその化学構造に依存する。阻害剤及び阻害剤混合物は、混合物に添加される総量に基づいて、1%未満、好ましくは0.1%未満、特に好ましくは0.01%未満の量の割合で添加されることが好ましい。
【0076】
化合物(G)は、付加−架橋組成物の製造のために今日まで使用されてきた他の全ての添加剤である。
【0077】
本発明によるシリコーン組成物は、任意選択的に、70重量%まで、好ましくは0.0001〜40重量%の割合で、構成成分(G)としてさらなる添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、例えば、不活性充填剤、シロキサン(A)、(B)及び(C)とは異なる樹脂様ポリオルガノシロキサン、補強及び非補強充填剤、殺菌剤、香料、レオロジー添加剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、光保護剤、難燃剤及び電気的性質に影響する薬剤、分散剤、溶媒、接着促進剤、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、(F)とは異なる熱安定剤等であることができる。これらの添加剤には、石英粉、珪藻土、クレイ、白亜、リトポン、カーボンブラック、黒鉛、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、カルボン酸の金属塩、金属ダスト、ガラス繊維、プラスチック繊維等の繊維、プラスチック粉末、金属ダスト、染料、顔料等が含まれる。
【0078】
本発明によるシリコーン組成物中に化合物(G)として使用することができる補強充填剤の例は、少なくとも50m
2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ又は沈降シリカであり、並びにファーネスカーボンブラック及びアセチレンカーボンブラックのようなカーボンブラック及び活性炭であり、少なくとも50m
2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ又は沈降シリカが好ましい。前記シリカ充填剤は、親水性特性を有し得るか、又は既知の方法によって疎水化され得る。親水性充填剤中で混合する場合、疎水性化剤の添加が必要である。本発明による架橋性組成物中の活性な補強充填剤(G)の含有率は、0〜70重量%、好ましくは0〜50重量%の範囲にある。
【0079】
本発明によるシリコーン組成物は、必要であれば、液体中に溶解、分散、懸濁又は乳化させることができる。本発明による組成物は、特に構成成分の粘度及び充填剤含有率に依存して、粘度が低く、注げるものであってよく、ペースト状の硬さを有し、粉末状であってもよく、又は滑らかな粘性の高い塊であってもよく、これは、RTV−1、RTV−2、LSR及びHTVと称される専門家のサークルでしばしばよく知られている組成物において当てはまる。特に、本発明による組成物は、粘性が高い場合には、顆粒の形態で製造することができる。この場合、個々の顆粒粒子は、全ての化合物を含むことができ、又は本発明に従って使用される化合物は、異なる顆粒粒子中に別々に取り込まれる。本発明による架橋したシリコーン組成物の弾性特性に関して、極めて軟らかいシリコーンゲルから始まり、ガム様材料を経由して、ガラス様特性を有する高度に架橋されたシリコーンまで全範囲が含まれる。
【0080】
本発明によるシリコーン組成物は、二成分シリコーン組成物と同様に一成分シリコーン組成物でもよい。
【0081】
本発明によるシリコーン組成物は、個々の化合物を均一に混合することにより一成分組成物(1K)を得る等の既知の方法によって製造することができる。この場合の順序は任意であるが、(A)、(B)、任意に(F)及び(G)の混合物と白金触媒(D)を均一に混合することが好ましい。本発明に用いられる白金触媒(D)は、ここでは、固体物質として、又は適切な溶媒に溶解した溶液として、又は少量の(A)又は(A)と(F)とを均一に混合したいわゆるバッチとして取り入れることができる。
【0082】
二成分組成物(2K)も同様に、個々の化合物を均一に混合することによって製造され、ただしA成分もB成分も同時に脂肪族多重結合を有する化合物、Siに結合した水素を有する化合物、及び触媒、すなわち、本質的に構成成分(A)、(B)及び(D)又は(C)及び(D)を同時に含まないものとする。
【0083】
しかし、本発明によるシリコーン組成物は、好ましくは1Kシリコーン組成物である。
【0084】
本発明に従い使用される化合物(A)〜(G)は、いずれの場合も、そのような化合物の単一の種類及びそのような化合物の少なくとも2つの異なる種類の混合物であることができる。
【0085】
本発明による架橋性シリコーン組成物は、ヒドロシリル化反応により架橋可能な現在知られている組成物と同じ条件下で、脂肪族多結合に、Siに結合した水素を付加することにより架橋することができる。
【0086】
この場合、10℃〜220℃、特に好ましくは25℃〜150℃の温度及び900〜1100hPaの圧力が好ましい。しかし、より高い又はより低い温度及び圧力を適用することもできる。
【0087】
本発明によるシリコーン組成物及び本発明に従って該組成物から製造された架橋生成物は、エラストマーに架橋可能なオルガノポリシロキサン組成物又はエラストマーが今日まで使用されてきた全ての目的に使用することができる。したがって、本発明は、本発明による組成物を架橋することによって製造される成形品又はコーティングに関する。これは、例えば、任意の基材のシリコーン被覆又は含浸、例えば、射出成形法、真空押し出し法、押し出し法、キャスティング及び圧縮成形、並びに密封、埋め込み及びキャスティング組成物等として使用する印象を含む。
【0088】
本発明による架橋性シリコーン組成物は、容易に利用可能な出発材料を用いて、したがって経済的に単純な方法で製造することができるという利点を有する。本発明による架橋性組成物は、25℃及び周囲圧力での一成分配合物として良好な保存安定性を有し、高温でのみ速やかに架橋するというさらなる利点を有する。本発明によるシリコーン組成物は、二成分配合物の場合、これらが二成分を混合した後に架橋性シリコーン組成物を生じ、その加工性は25℃及び周囲圧力で長期間にわたって変化せず、すなわち極めて長いポットライフを示し、高温でのみ速やかに架橋するという利点を有する。
【0089】
本発明による架橋性シリコーン組成物の製造において、貴金属触媒(D)を容易に計量添加し、容易に取り込むことができることは、大きな利点である。
【0090】
本発明によるシリコーン組成物は、該組成物から得られる架橋性シリコーンゴムが優れた半透明性/透明性を有するというさらなる利点を有する。
【0091】
本発明によるシリコーン組成物はさらに、ヒドロシリル化反応が反応時間とともに減速しないという利点を有する。
【実施例】
【0092】
以下に記載する実施例では、特に記載のない限り、比率及びパーセントに関する全ての数値は、重量を指す。特に記載のない限り、以下の実施例は、周囲大気の圧力、すなわち約1000hPa、及び室温、すなわち約20℃で又は追加の加熱又は冷却を行わずに反応物を室温で混合する際に設定された温度で実施される。以下では、全ての粘度データは25℃の温度を指す。以下の実施例は、この実施例に限定されることなく本発明を解明する。ポットライフの数値は、25秒
−1のせん断速度でパドル撹拌器を用いて試料を3分間撹拌した後に測定した動的開始粘度の倍加を指す。曝露後又は特定の温度でのゲル化時間の数値は、0.5秒
−1のせん断速度で測定した動的開始粘度の倍加を意味する。
【0093】
以下の略語を使用する。
Cat. 触媒
Ex. 実施例
No. 番号
BM ベース混合物
Conc. 濃度
ppm 百万分の一
*) 比較例
【0094】
実施例では、種々のシリコーン組成物を1Kシリコーン組成物の製造のためのベース混合物(BM)として使用する。成分を表1に規定する。
【0095】
【表1】
【0096】
化合物A:化合物Aは平均鎖長220のα,ω−ジビニル末端線状ポリジメチルシロキサンである。
化合物B:化合物Bは平均鎖長100単位、S−H濃度1.7mmol/gの線状のくし形架橋剤である。
化合物C:化合物Cは平均鎖長220のα,ω−ジビニル末端線状ポリジメチルシロキサンであり、2つの鎖単位は平均して1つのSi−H官能基を有する。
化合物D:これは後になって初めて表2に従う異なるBMと組み合わされ、変化する。
化合物F1:疎水性ヒュームドシリカ130m
2/g
化合物F2:疎水性ヒュームドシリカ300m
2/g
化合物G:(接着促進剤、レオロジー添加剤):一例として化合物Gとして、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランを用いる。
【0097】
量別の比率は以下のように調整する:
BM1:88重量%の化合物A及び12重量%の化合物B
BM2:95重量%の化合物A及び5重量%の化合物B
BM3:59重量%の化合物A、9重量%の化合物B、30重量%の化合物F1及び2重量%の化合物G
BM4:64.5重量%の化合物A、3.5重量%の化合物B、30重量%の化合物F1及び2重量%の化合物G
BM5:59重量%の化合物A、9重量%の化合物B、30重量%の化合物F2及び2重量%の化合物G
BM6:30重量%の化合物A、3.5重量%の化合物B、34.5重量%の化合物C、30重量%の化合物F1及び2重量%の化合物G
BM7:30重量%の化合物A、3.5重量%の化合物B、34.5重量%の化合物C、30重量%の化合物F2及び2重量%の化合物G
BM8:60重量%の化合物A、8重量%の化合物B、15重量%の化合物F1、15重量%の化合物F2及び2重量%の化合物G
BM9:59重量%の化合物A、9重量%の化合物B及び30重量%の化合物F1
【0098】
安定な一成分シリコーン組成物を製造するために、少なくとも1つの貴金属触媒を添加する。これを使用前に次のように処理する(=化合物D)。
【0099】
[実施例1:安定な触媒Cat.1の製造]
フラスコ中で、ビス(σ−tert−ブチルエチニル)シクロオクタジエンPt(II)5gを酢酸エチル50mlに溶かす。2,2’−ビピリジン500mgを加えた後、溶液を室温で24時間撹拌する。次に、真空にして室温で溶媒を除去する。
【0100】
[実施例2:安定な触媒Cat.2の製造]
フラスコ中で、ビス(σ−tert−ブチルフェニル)シクロオクタジエンPt(II)5gを酢酸エチル50mlに溶かす。1,10−フェナントロリン50mgを加えた後、溶液を室温で24時間撹拌する。次に、真空にして室温で溶媒を除去する。
【0101】
[実施例3:安定な触媒Cat.3の製造]
フラスコに、トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)5gを最初に仕込み、ネオクプロイン200mgを加える。次いで、懸濁液を室温で24時間撹拌する。
【0102】
[実施例4:安定な触媒Cat.4の製造]
フラスコに、トリメチル[(トリメトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)5gを最初に仕込み、ポリ−4−ビニルピリジン1000mgを加える。次いで、懸濁液を室温で24時間撹拌する。ポリ−4−ビニルピリジンを、孔径10〜16μm(G4)のガラスフリットによるろ過によって完全に除去する。
【0103】
[実施例5:安定な触媒Cat.5の製造]
フラスコに、予備反応において少なくとも70%の程度まで600の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーによりメトキシ基が置換されたトリメチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)5gを最初に仕込み、1,10−フェナントロリン500mgを加える。懸濁液を室温で24時間撹拌する。
【0104】
[実施例6:安定な触媒Cat.6の製造]
フラスコに、予備反応において少なくとも70%の程度まで600の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーによりメトキシ基が置換されたトリメチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)5gを最初に仕込み、5重量%の1,10−フェナントロリンを予備反応で表面に共有結合させた、5gのシリカゲル60(0.063〜0.200mm、CAS 7631−86−9)を加える。懸濁液を室温で24時間撹拌する。1,10−フェナントロリンで被覆したシリカゲルを、孔径10〜16μm(G4)のガラスフリットによるろ過によって完全に除去する。
【0105】
[実施例7:安定な触媒Cat.7の製造]
フラスコに、予備反応において少なくとも70%の程度まで200の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーによりメトキシ基が置換されたトリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル(tert−ブチル)シクロペンタジエニル]白金(IV)5gを最初に仕込み、ネオクプロイン500mgを加える。懸濁液を室温で24時間撹拌する。
【0106】
[実施例8:安定な触媒Cat.8の製造]
フラスコに、予備反応において少なくとも70%の程度まで600の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーによりメトキシ基が置換されたトリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)5gを最初に仕込み、ジメルカプロール300mgを加える。混合物を室温で24時間撹拌する。
【0107】
[実施例9:安定な触媒Cat.9の製造]
フラスコ中で、ビス(アセチルアセトナト)Pt(II)5gを酢酸エチル50mlに溶かし、5重量%の2,2’−ビピリジンが予備反応で表面に共有結合した、5gのシリカゲル60(0.063〜0.200mm、CAS 7631−86−9)を加える。室温で24時間撹拌した後、孔径10〜16μm(G4)のガラスフリットで被覆シリカゲルを完全に除去する。
【0108】
[例10:Cat.10]
ビス(σ−tert−ブチルエチニル)シクロオクタジエンPt(II)
【0109】
[例11:Cat.11]
ビス(σ−tert−ブチルフェニル)シクロオクタジエンPt(II)
【0110】
[例12:Cat.12]
トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)
【0111】
[例13:Cat.13]
トリメチル[(トリメトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)
【0112】
[例14:Cat.14]
メトキシ基が予備反応において少なくとも70%の程度まで600の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーで置換されたトリメチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)。
【0113】
[例15:Cat.15]
メトキシ基が予備反応において少なくとも70%の程度まで600の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーで置換されたトリメチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)。
【0114】
[例16:Cat.16]
メトキシ基が予備反応において少なくとも70%の程度まで200の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーで置換されたトリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピル(tert−ブチル)シクロペンタジエニル]白金(IV)。
【0115】
[例17:Cat.17]
メトキシ基が予備反応において少なくとも70%の程度まで600の鎖長を有するOH末端ポリジメチルシロキサンポリマーで置換されたトリメチル[(3−ジメトキシメチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)。
【0116】
[例18:Cat.18]
ビス(アセチルアセトナト)Pt(II)
【0117】
[例19]: 1,3−ジビニル−1,1’,3,3’−テトラメチルジシロキサン(カールステッド触媒)]
【0118】
表2にそれらから架橋性組成物を製造したベース混合物と触媒の組合せと貯蔵試験の結果を示す。白金触媒の濃度データは、文献上通例である金属を指す。比較例(=”*”)は、安定化されない、本発明でない組成物の特性を示す。(実施)例37〜45では、指定された化合物を触媒に使用したが、安定化キレート配位子を触媒に提供せず、配合工程の終わりにシリコーン配合物に提供した(=”**”)。白金触媒の段階又は混合物中でスカベンジャーの効果を奏することが重要であることは意義深い。この場合、安定化化合物が架橋性混合物中に留まるか、又は、例えば濾過によって除去することができる固相結合配位子を用いることによって架橋性混合物から再び除去されるかは重要ではない。
【0119】
【表2】
【0120】
表3は、一例としてベース混合物1を用いて、安定化された混合物の活性を安定化されていない比較例*)と比較したものである。驚くべきことに、使用される二座配位子の種類は、ゲル化時間の有意な延長をもたらさないことが見出された。曝露後又は特定の温度でのゲル化時間の数値は、0.5s
−1のせん断速度で測定した動的開始粘度の倍加を意味する。架橋反応は、(実施)例118、119、127及び128において、150℃までの温度上昇によって熱的に活性化され、(実施)例120〜126及び129〜135は、試料部位での放射線強度が約70mW/cm
2になるように、光源から離れたところで、Hohnle製の紫外線キューブにおいて10秒間の曝露によって活性化される。照射後、試料をAnton Paar製のレオメーターに移し、粘度を測定する。時間の仕様は、10秒の照射期間終了時から測定する。
【0121】
【表3】