(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984030
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ソナーにおける改良及びソナーに関する改良
(51)【国際特許分類】
G01S 7/524 20060101AFI20211206BHJP
G01S 7/526 20060101ALI20211206BHJP
G01S 15/10 20060101ALI20211206BHJP
G01S 15/88 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
G01S7/524 R
G01S7/526 M
G01S15/10
G01S15/88
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-543413(P2020-543413)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(65)【公表番号】特表2021-501338(P2021-501338A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(86)【国際出願番号】GB2018053128
(87)【国際公開番号】WO2019086850
(87)【国際公開日】20190509
【審査請求日】2020年6月19日
(31)【優先権主張番号】1717987.0
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】17199457.7
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ−エイイ− システムズ パブリック リミテッド カンパニ−
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ミストレイ、ニヒル
(72)【発明者】
【氏名】ライトン、ティモシー・グラント
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ポール・ロバート
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−174842(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0038344(US,A1)
【文献】
千村 大(千葉工大)ら,「超音波感度補正チャープ波を用いた水中時間反転波距離測定」(Time Reversal Target Ranging in Water by Using Ultrasonic Sensitivity Compensated Chirp Wave),日本音響学会 2016年秋季研究発表会講演論文集CD−ROM,一般社団法人日本音響学会,2016年08月31日,pp.1081-1082,ISSN 1880-7658
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を含む一対のパルスを送信するように動作可能なソナーシステムであって、前記ダウンチャープ信号は、前記アップチャープ信号の時間反転バージョンであり、前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号は、少なくとも部分的に重複する、ソナーシステム。
【請求項2】
前記アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、同時に送信される、請求項1に記載のソナーシステム。
【請求項3】
前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって線形に変化する、請求項1又は2に記載のソナーシステム。
【請求項4】
前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって対数的に変化する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のソナーシステム。
【請求項5】
アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を含む一対のパルスを送信するように動作可能なソナーシステムであって、前記ダウンチャープ信号は、前記アップチャープ信号の時間反転バージョンであり、前記ソナーシステムは、一対の整合フィルタを有する受信機をさらに備え、前記一対の整合フィルタの各々は、それぞれの前記送信されたアップチャープ又はダウンチャープの時間反転レプリカである伝達関数を有する、ソナーシステム。
【請求項6】
アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を送信するステップを備えるソナーシステムを動作させる方法であって、前記ダウンチャープ信号は、前記アップチャープ信号の時間反転バージョンであり、前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号は、少なくとも部分的に重複する、方法。
【請求項7】
前記アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、同時に送信される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって線形に変化する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって対数的に変化する、請求項6又は7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソナーシステム、特に気泡を含む流体媒体内で動作可能なソナーシステムに関する。通常、対象となる環境は、海などの開放水域である。
【背景技術】
【0002】
ソナーシステムは、しばしば、海岸線又は海底の物理的特徴との相互作用によって、並びに船舶及びボートによってもたらされ得る気泡状態においては困難な場合がある。水上船舶の気泡伴流の測定及びモデリングは、軍事用途において非常に重要である。伴流は、特定の船舶を検出、追跡、及び識別するための方法も提供しつつ、散乱及び吸収を通して音響動作に干渉し得る。
【0003】
ソナーが標的(軍事的な意味での標的、又はより一般的には関心対象であり得る)を識別するために使用されるとき、気泡からの音響後方散乱に問題が生じることがある。超音波照射されると(すなわち、ソナー送信機からの音響エネルギーを受けると)、気泡からの後方散乱は、水中の「実際の」標的の検出を妨げる可能性がある。さらに、高い振幅の音圧によって励起されると、気泡は、それらが適切な大きさである場合、本質的に非線形の挙動を示し、これは通常、それらがその脈動共振に近いか、又は振幅が十分に高い(すなわち、音響サイクルのピークの粗密の間に、水が一時的にテンションがかかった状態となることを可能にするのに十分である)場合、それらの脈動共振よりも小さいことを意味する。
【0004】
線形散乱体と非線形散乱体とを分離するために利用され得るいくつかの2パルスソナー技法を使用する既知の従来技術がある。TWIPS(TWin Inverted Pulse Sonar)及びBiaPSS(Biased Pulse Summation Sonar)は、クラッタ低減を用いてそのような分類を実行するために非線形の気泡ダイナミクスを利用する、既知のプロセスである。したがって、これらの技術は、気泡混入水における標的検出を向上させるために使用され得る。TWIPS及びBiaPSSは、気泡が大きな非線形脈動に駆動されることに依存するが、これは、高振幅ソナーソースの利用可能性に依存する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、本明細書で明示的に言及されるか否かにかかわらず、従来技術の問題に対処することである。
【0006】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載の装置及び方法が提供される。本発明の他の特徴は、従属請求項及び以下の説明から明らかになるであろう。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を含む一対のパルスを送信するように動作可能なソナーシステムが提供され、ダウンチャープ信号は、アップチャープ信号の時間反転バージョンである。アップチャープ信号は、立ち上がり周波数を有するFM信号であり、ダウンチャープ信号は、立ち下がり周波数を有するFM信号である。
【0008】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、少なくとも部分的に重複する。
【0009】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、同時に送信される。
【0010】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって線形に変化する。
【0011】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって対数的に変化する。
【0012】
好適には、本システムは、一対の整合フィルタを有する受信機をさらに備え、一対の整合フィルタの各々は、それぞれの送信されたアップチャープ又はダウンチャープの時間反転レプリカである伝達関数又はインパルス応答を有する。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を送信するステップを備えるソナーシステムを動作させる方法が提供され、ダウンチャープ信号は、アップチャープ信号の時間反転バージョンである。
【0014】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、少なくとも部分的に重複する。
【0015】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は同時に送信される。
【0016】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって線形に変化する。
【0017】
好適には、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって対数的に変化する。
【0018】
本発明のより良い理解のために、及び本発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、例として、添付の概略図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】
図1aは、ダウンチャープに対する気泡の応答を示す。
【
図1b】
図1bは、アップチャープに対する気泡の応答を示す。
【
図1c】
図1cは、アップチャープ及びダウンチャープに対する気泡の応答を示す。
【
図2a】
図2aは、ダウンチャープに重畳されたアップチャープに対する一群の気泡の整合フィルタリングされた応答を示す。
【
図2b】
図2bは、ダウンチャープに重畳されたダウンチャープに対する一群の気泡の整合フィルタリングされた応答を示す。
【
図2c】
図2cは、ダウンチャープに重畳されたアップチャープ/ダウンチャープに対する一群の気泡の整合フィルタリングされた応答を示す。
【
図3a】
図3aは、同時に送信されるアップチャープ及びダウンチャープに適用される異なる処理を示す。
【
図3b】
図3bは、同時に送信されるアップチャープ及びダウンチャープに適用される異なる処理を示す。
【
図3c】
図3cは、同時に送信されるアップチャープ及びダウンチャープに適用される異なる処理を示す。
【
図4】
図4は、
図3b及び3cに示す結果のより詳細な図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態での使用に適したハードウェア実装を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来技術を参照して説明したように、一対の時間反転チャープ信号の使用が、生物医学的用途のために以前に提案されている。しかしながら、本発明の一実施形態によれば、駆動チャープ信号の増加又は減少する周波数スイープに対して、気泡応答間の差のために、線形標的及び気泡の両方からの散乱を、前者に対してより大きな影響を伴って増強することが可能である。
【0021】
気泡がその共振よりもはるかに大きい周波数で超音波照射されるとき、気泡はほとんど応答しない。それは、慣性制御レジームにおいてオフレゾナンスで駆動されるので、大きな振幅まで脈動しない。しかしながら、気泡は、オフレゾナンスであるがその共振よりも低い周波数で駆動されるとき、依然として脈動し得る。これは、小さい気泡が速い応答時間で応答するからである。
【0022】
一対のダウンチャープパルス(すなわち、チャープ信号がより高い周波数からより低い周波数に低減される)を考慮すると、共振で駆動される前に、各気泡は、その共振よりも高い周波数によって超音波照射されており、前述のように、それにはほとんど応答しない。したがって、初期状態は、静的な気泡壁と同様である。その後、ダウンチャープにおけるより低い周波数は、その共振振動の減衰を遅延させることができる。したがって、2つのダウンチャープは、非線形応答においてより大きな振幅を有する、気泡からの再現可能なエコーを与える。
【0023】
対照的に、一対のアップチャープパルス(すなわち、チャープ信号がより低い周波数からより高い周波数に増加される)は、両方ともその共振の前に気泡を振動させ、したがって、初期状態はそれほど再現可能ではない(したがって、従来技術のTWIPS技法によって提供される消去及び増強はそれほど効果的ではない)。加えて、減衰はより急速であり、非線形信号成分のエネルギーを低減する。
【0024】
これは、
図1に例示されており、(a)に示すような直線的に減少するサインスイープと、(b)に示すような直線的に増加するサインスイープとの両方によって超音波照射されたときの35μmの気泡の応答を示している。応答が異なることは直ちに明らかであり、(c)に示すように、アップチャープに対する応答を反転させ、ダウンチャープに対する応答の上にそれを重ねることによって、これを確認する。プロットの右側の円で囲まれた領域は、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号に対する異なる気泡の応答を明確に示す。
【0025】
駆動信号が気泡の固有振動数を下回る時間中の応答の分析は、ダウンチャープがより大きな非線形応答をもたらすことを示す。
【0026】
線形散乱体の場合、応答は同じである。したがって、2つの減算は互いに打ち消し合い、P+(2つのパルスからのエコーの合計)は非ゼロとなる。しかしながら、逆位相でもある時間反転パルスを使用して、2つの反射の減算は、偶数次高調波も抑制しながら、線形成分を増強するべきである。2つの加算は、奇数の高調波のみを含み、したがって、同一の逆位相パルスを用いる従来技術のTWIPS技法と同様の効果を提供する。
【0027】
従来技術のTWIPS技法では、第2のパルスが放出される前に第1のパルスからのエコーが終了することを可能にするために、両方のパルスがそれらの間に十分な遅延を有する必要がある。しかしながら、遅延はまた、同じ気泡群が両方のパルスによって超音波照射されることを確実にするように十分に短い必要がある。
【0028】
本発明の実施形態は、この問題に対処し、近接して又は一度に2つのパルスを放出することによって、より広い範囲の検出を可能にする(気泡及び他の微粒子による伝送損失及び減衰を無視する)。(TWIPSで使用されるような)逆位相で同一のパルスを同時に放出することは、2つのパルスが互いに打ち消し合うので、何も放出しないことになる。したがって、本発明の実施形態は、気泡群によって同様の(整合フィルタリングされた)応答を与える2つの異なるパルスを使用する。
【0029】
送信パルスが単に互いに打ち消し合わないことを保証するために、アップチャープ信号及びダウンチャープ信号のプロファイルは、これが起こらないように選択される。さらに、必要な同時性の程度は、所望の結果を保証するように選択され得る。TWIPSのような従来技術のシステムは、送信されたパルス間の明確な分離を必要とする。本発明の実施形態では、ある程度の重複が可能であり、好ましい。重複の程度は、重複なしから、一方のパルスの送信時間が他方のパルスの送信時間と同じであるか又はその中に含まれる完全な重複までの範囲であり得る。
【0030】
時間反転パルス対を使用することによって、アップチャープ及びダウンチャープを同時に放出し、その後、適切な整合フィルタを使用することによって、いずれかのチャープからの反射を抑制することが可能になる。この方法を使用することによって、検出範囲に対するパルス間遅延の影響はもはや関連しなくなる。さらに、両方のパルスを同時に放射することは、同じ気泡集団がアップチャープ及びダウンチャープの両方によって同時に超音波照射されることを可能にする。
【0031】
これは、逆位相であり、且つ同時に送信された場合に単に互いに打ち消し合う一対のパルスを使用する、従来技術のTWIPS技法で使用される技法とは異なる。
【0032】
本発明の第1の実施形態では、チャープの周波数変化(それらが互いに時間反転されたバージョンであるため、アップ及びダウンの両方の変形)は線形であり、すなわち、チャープは、一定期間にわたって、線形に、周波数Aから周波数Bへのスイープを含む。周波数の変化率は、([周波数B−周波数A]/期間)である。
【0033】
本発明の第2の実施形態では、チャープの周波数変化(それらが互いに時間反転されたバージョンであるため、アップ及びダウンの両方の変形)は対数的であり、すなわち、チャープは、一定期間にわたって、対数的に、周波数Aから周波数Bへのスイープを含む。この構成の利点は、線形の実施形態と比較して、ドップラー効果に対する耐性であり、これは実際の状況において有利である。
【0034】
一対のパルスからエコーを受信すると、同時に放出されたその対のうちの一方の特定の成分に対する応答にエコーを分離するのが、フィルタリングプロセスである。その結果、エコーに存在していた可能性のある高調波がフィルタから除去される。フィルタは、1つはアップチャープ用、1つはダウンチャープ用の個々のチャープの内容に整合するように設計される。各フィルタの伝達関数は、送信された(アップ又はダウン)チャープの時間反転レプリカである。
【0035】
しかしながら、
図1に示すように、ダウンチャープと比較して、アップチャープに対して気泡がどのように異なって応答するかを思い出すことが重要である。
図2a〜cは、ダウンチャープに重畳されたアップチャープに対する、一群の気泡と、一群の気泡の背後に配置された標的との整合フィルタリングされた応答を示す。
【0036】
図2aは、アップチャープによって超音波照射されたときの気泡群及び線形散乱標的の整合フィルタリングされた応答を示す。
図2bは、ダウンチャープによって超音波照射されたときの気泡群及び線形散乱標的の整合フィルタリングされた応答を示す。
図2cは、気泡群応答におけるインコヒーレンスを強調するために、
図2a及び
図2bの応答を一緒に示している(アップチャープ及びダウンチャープの場合に実質的に同一である、標的散乱と比較した気泡散乱に関連するより暗い部分によって示される)。
【0037】
アップチャープ及びダウンチャープのみからエコーを散乱エネルギーに分離した後の気泡群応答は、
図2aと
図2bとでは異なる。対照的に、標的応答はほとんど同じである。2つの応答の合計は、後者の応答の間に不連続性があるため、標的地点のレベルが気泡群領域内のレベルよりも高くなることになる。
【0038】
図3a〜cは、同時に送信されるダウンチャープ及びアップチャープを使用するエコーロケーション試験からのプロットを示す。
図3aは、標準的なソナー処理を示す。
図3bは、以下の比:P−/P+(すなわち、2つのパルス間の差と2つのパルスの和との比)を用いた従来技術のTWIPS処理を示す。
図3cは、本発明の一実施形態を示す。P−/P2+(すなわち、2つのパルスの間の差と、駆動信号の中心周波数の2倍である中心周波数を有するフィルタを使用してフィルタリングされたP+の処理された形態との比)。
【0039】
いずれの場合も、この試験では、音源及びレシーバから約2mの水タンクの底部から泡の小群が放出された。時間とともに、気泡は水面に向かって上方に移動した。しかしながら、標的は、音源から約3mで静止したままであった。気泡及び標的のおおよその位置を
図3a〜cに示す。
【0040】
線形増強及び気泡散乱抑制は時間反転パルスを同時に放出するときに見られるが、最良の結果をもたらすのはP−/P2+(すなわち、
図3c)である。
【0041】
これは、(右側の軸に示すような)−30dBと0dBとの間の振幅に焦点を当てて
図3bと
図3cとの2つの比を比較する
図4にさらにより明確に示される。気泡からのいくらかの散乱が依然として存在するが、P−/P2+のプロット(右手側)は、明瞭な白色の垂直線によって示されるように、実際の標的の強化された存在感を維持しながら、他の場所ではるかに少ないノイズを示す。
【0042】
本発明の実施形態は、送信パルス及び受信パルスを形成及び同期させ、受信エコーを処理するための適合された処理モジュールを有する既知のハードウェアモジュールを使用して実装され得る。
図5は、本発明の実施形態での使用に適したハードウェア実装を示す。
図5のシステムは、送信用の波形を準備し符号化するのに必要なデジタル処理を実行するプロセッサ100を備える。これはアナログ処理セクション200に接続され、それは送信機及び受信機を含み、各々がソナー送信機300及びソナー受信機400にそれぞれ接続される。プロセッサ100は、本発明の実施形態に関連して前述したように、送信パルスを生成し、受信エコーを処理するようにプログラムされる。
【0043】
本明細書で説明される例示的な実施形態の少なくともいくつかは、専用の特殊目的ハードウェアを使用して、部分的に又は全体的に構築され得る。本明細書で使用される「コンポーネント」、「モジュール」、又は「ユニット」などの用語は、特定のタスクを実行するか、又は関連する機能を提供する、個別又は集積コンポーネント、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は特定用途向け集積回路(ASIC)の形態の回路などのハードウェアデバイスを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、説明される要素は、有形の永続的なアドレス指定可能な記憶媒体上に存在するように構成され得、1つ又は複数のプロセッサ上で実行するように構成され得る。これらの機能要素は、いくつかの実施形態では、例として、ソフトウェアコンポーネント、オブジェクト指向ソフトウェアコンポーネント、クラスコンポーネント及びタスクコンポーネントなどのコンポーネント、プロセス、関数、属性、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ、及び変数を含み得る。例示的な実施形態は、本明細書で論じられるコンポーネント、モジュール、及びユニットを参照して説明されたが、そのような機能要素は、より少ない要素に組み合わされてもよく、又は追加の要素に分離されてもよい。任意の特徴の様々な組み合わせが本明細書に記載されており、記載された特徴が任意の適切な組み合わせで組み合わされ得ることが理解されるであろう。特に、任意の1つの例示的な実施形態の特徴は、そのような組み合わせが相互に排他的である場合を除いて、必要に応じて任意の他の実施形態の特徴と組み合わせられ得る。本明細書を通して、用語「備えている(comprising)」又は「備える(comprises)」は、特定されたコンポーネントを含むが、その他のものの存在を排除しないことを意味する。
【0044】
本願に関連して本明細書と同時に又は本明細書より前に出願され、本明細書と共に公衆の閲覧に供される全ての論文及び文書に注意が向けられ、全てのそのような論文及び文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)に開示される特徴の全て、及び/又はそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせられ得る。
【0046】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)に開示された各特徴は、別段に明記されない限り、同じ、同等、又は類似の役割を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。したがって、別段に明記されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の一例に過ぎない。
【0047】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つもしくは任意の新規な組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規な1つもしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を含む一対のパルスを送信するように動作可能なソナーシステムであって、前記ダウンチャープ信号は、前記アップチャープ信号の時間反転バージョンである、ソナーシステム。
[2] 前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号は、少なくとも部分的に重複する、[1]に記載のソナーシステム。
[3] 前記アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、同時に送信される、[2]に記載のソナーシステム。
[4] 前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって線形に変化する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のソナーシステム。
[5] 前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって対数的に変化する、[1]〜[4]のいずれかに記載のソナーシステム。
[6] 一対の整合フィルタを有する受信機をさらに備え、前記一対の整合フィルタの各々は、それぞれの前記送信されたアップチャープ又はダウンチャープの時間反転レプリカである伝達関数を有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のソナーシステム。
[7] アップチャープ信号及びダウンチャープ信号を送信するステップを備えるソナーシステムを動作させる方法であって、前記ダウンチャープ信号は、前記アップチャープ信号の時間反転バージョンである、方法。
[8] 前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号は、少なくとも部分的に重複する、[7]に記載の方法。
[9] 前記アップチャープ信号及びダウンチャープ信号は、同時に送信される、[8]に記載の方法。
[10] 前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって線形に変化する、[7]又は[8]に記載の方法。
[11] 前記アップチャープ信号及び前記ダウンチャープ信号の周波数は、一定期間にわたって対数的に変化する、[7]又は[8]に記載の方法。