特許第6984038号(P6984038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984038
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ブレーカー
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/02 20060101AFI20211206BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01H37/02 B
   H01H37/54 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-552455(P2020-552455)
(86)(22)【出願日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2018039726
(87)【国際公開番号】WO2020084740
(87)【国際公開日】20200430
【審査請求日】2021年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】公文 高博
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−120302(JP,A)
【文献】 特開2017−098186(JP,A)
【文献】 特開2010−093178(JP,A)
【文献】 特開2014−164966(JP,A)
【文献】 特開2013−084443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00 − 37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池及び負荷を含む直流回路に用いられるブレーカーであって、
前記2次電池の正極に直接的にレーザー溶接される第1端子と、
固定接点を有する固定片と、
弾性変形する弾性部及び該弾性部の一端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、
前記第1端子を露出させた状態で、前記固定片、前記可動片及び前記熱応動素子を収容するためのケースとを備えたブレーカーであって、
前記第1端子の前記レーザー溶接で用いられる光が照射される第1面には、前記光を吸収し溶融する第1メッキ層が形成され
前記第1端子の前記正極と溶接される第2面には、前記第1端子よりもイオン化傾向が大きく、前記正極よりもイオン化傾向が小さい金属を主成分とする第2メッキ層が形成されていることを特徴とする、ブレーカー。
【請求項2】
前記第1メッキ層は、前記第1面の一部に局所的に形成されている、請求項1記載のブレーカー。
【請求項3】
前記第2メッキ層は、前記第2面の一部に局所的に形成されている、請求項1又は2に記載のブレーカー。
【請求項4】
前記負荷との間に設けられた金属片とレーザー溶接される第2端子を備え、
前記第2端子の前記光が照射される第3面には、前記光を吸収し溶融する第3メッキ層が形成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項5】
前記第3メッキ層は、前記第3面の一部に局所的に形成されている、請求項4に記載のブレーカー。
【請求項6】
前記第1メッキ層及び前記第2メッキ層は、ニッケル、すず又はクロムを主成分として構成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項7】
前記第3メッキ層は、ニッケル、すず又はクロムを主成分として構成されている、請求項4又は5に記載のブレーカー。
【請求項8】
前記第1端子及び前記第2端子は、前記ケースから突出し、
前記第1端子の前記ケースからの突出長さと、前記第2端子の前記ケースからの突出長さとが異なる、請求項4又は5に記載のブレーカー。
【請求項9】
前記第1メッキ層の長さと、前記第3メッキ層の長さとが異なる、請求項8に記載のブレーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の直流回路に用いて好適な小型のブレーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置としてブレーカーが使用されている。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置として用いられるブレーカーは、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作する(良好な温度特性を有する)ことと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。
【0003】
ブレーカーには、温度変化に応じて作動し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片、可動片、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、ケースに収納されてなり、固定片及び可動片の端子がケースから突出し、電気機器の直流回路に接続されて使用される。
【0004】
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/105175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の電気機器では、高性能化及び2次電池の充電時間の短縮のために、通電時の電気抵抗が小さく電流容量の大きいブレーカーが望まれている。このため、上記固定片及び可動片は、導電性に優れた金属、例えば、銅等を主成分とする金属によって構成されている。
【0007】
上記固定片及び可動片に設けられた端子は、通常、直流回路を構成する金属片(タブリード)と溶接によって接合されている。金属片は、銅等を主成分とする固定片及び可動片との溶接が良好に行える金属(例えば、ニッケル)を主成分として構成されている。
【0008】
しかしながら、固定片及び可動片よりも導電率の低いニッケル製の金属片は、抵抗値が大きいため、直流回路全体の抵抗値が増大する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、直流回路全体の抵抗値を容易に低減できるブレーカーを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、2次電池及び負荷を含む直流回路に用いられるブレーカーであって、前記2次電池の正極に直接的にレーザー溶接される第1端子と、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部及び該弾性部の一端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、前記第1端子を露出させた状態で、前記固定片、前記可動片及び前記熱応動素子を収容するためのケースとを備えたブレーカーであって、少なくとも、前記レーザー溶接で用いられる光が照射される面には、前記光を吸収し溶融する第1メッキ層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1メッキ層は、前記第1面の一部に局所的に形成されている、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1端子の前記正極と溶接される第2面には、前記第1端子よりもイオン化傾向が大きく、前記正極よりもイオン化傾向が小さい金属を主成分とする第2メッキ層が形成されている、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第2メッキ層は、前記第2面の一部に局所的に形成されている、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記負荷との間に設けられた金属片とレーザー溶接される第2端子を備え、前記第2端子の前記光が照射される第3面には、前記光を吸収し溶融する第3メッキ層が形成されている、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第3メッキ層は、前記第3面の一部に局所的に形成されている、ことが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1メッキ層及び前記第2メッキ層は、ニッケル、すず又はクロムを主成分として構成されている、ことが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第3メッキ層は、ニッケル、すず又はクロムを主成分として構成されている、ことが望ましい。
【0018】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1端子及び前記第2端子は、前記ケースから突出し、前記第1端子の前記ケースからの突出長さと、前記第2端子の前記ケースからの突出長さとが異なる、ことが望ましい。
【0019】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1メッキ層の長さと、前記第3メッキ層の長さとが異なる、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のブレーカーは、2次電池及び負荷を含む直流回路に用いられ、2次電池の正極に直接的にレーザー溶接される第1端子と、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部及び可動接点を有する可動片と、温度変化に伴って変形する熱応動素子と、第1端子を露出させた状態で、固定片、可動片及び前記熱応動素子を収容するためのケースとを備える。レーザー溶接で用いられる光が照射される面には、前記光を吸収し溶融する第1メッキ層が形成されている。これにより、第1メッキ層の溶融がきっかけとなって第1端子及び2次電池の正極が順次溶融し、第1端子と正極とが良好に溶接される。従って、従来の直流回路において2次電池の正極と第1端子との間に配されていたニッケル製の金属片が不要となり、直流回路全体の抵抗値を容易に低減することが可能となる。また、直流回路の簡素化が可能となり、容易にコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のブレーカーが用いられる直流回路の回路図。
図2】本発明の一実施形態によるブレーカーの概略構成を示す組み立て前の斜視図。
図3】通常の充電又は放電状態における上記ブレーカーを示す断面図。
図4】過充電状態又は異常時などにおける上記ブレーカーを示す断面図。
図5】本発明のブレーカーが用いられる2次電池パックを示す平面図。
図6】上記ブレーカーとその周辺部の構成を示す断面図。
図7】上記ブレーカーの変形例とその周辺部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態によるブレーカー1が用いられる直流回路500を示している。直流回路500は、ブレーカー1、2次電池501及び負荷502を含む。負荷502は、2次電池501によって駆動される。ブレーカー1は、2次電池501と負荷502との間に配されている。2次電池501と、ブレーカー1と、負荷502とは、直列に接続されている。
【0023】
図2乃至図4は、ブレーカー1の構成を示している。ブレーカー1は、電気機器等に実装され、過度な温度上昇又は過電流から電気機器を保護する。
【0024】
ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0025】
固定片2には、ケース10から露出する端子22が形成されている。ケース10から露出する可動片4には、端子42が形成されている。
【0026】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする板状の金属材料(この他、銅−チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成されている。固定片2は、端子22をケース本体7の外側に露出させた状態で、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれ、ケース本体7に収容されている。
【0027】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。
【0028】
端子22は、固定片2の一端に形成されている。端子22はケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。端子22は、2次電池501と電気的に接続される。固定片2の他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。支持部23は、ケース本体7の内部に形成されている開口73dからケース本体7の内部空間に露出されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。固定片2が階段状に曲げられることにより、固定接点21と支持部23とが段違いに配置され、PTCサーミスター6を収納する内部空間が容易に確保される。
【0029】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図2において上側の面)をA面、その反対側の面をB面として説明している。固定接点21から可動接点41に向く方向を第1方向と、第1方向とは反対の方向を第2方向とそれぞれ定義した場合、A面は第1方向を向き、B面は第2方向を向く。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5、PTCサーミスター6等についても同様である。
【0030】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0031】
可動片4の長手方向の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、例えば、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0032】
可動片4の長手方向の他端部には、ブレーカー1の外部の直流回路500と電気的に接続される端子42が形成されている。端子42はケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。
【0033】
可動片4は、可動接点41と端子42の間に、当接部43及び弾性部44を有している。当接部43は、端子42と弾性部44との間でケース本体7及び蓋部材8と当接する。当接部43は、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部43aを有する。突出部43aが設けられていることにより、当接部43が幅広く大きな領域でケース本体7及び蓋部材8によって挟み込まれ、可動片4がケース10に対して強固に固定される。
【0034】
弾性部44は、当接部43から可動接点41の側に延出されている。可動片4は、弾性部44の基端側の当接部43で、ケース10によって片持ち支持され、その状態で弾性部44が弾性変形することにより、弾性部44の先端部に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0035】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、反転動作温度及び正転復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部44のB面には、熱応動素子5に対向して一対の突起44a,44bが形成されている。突起44aは、基端側で熱応動素子5に向って突出し、遮断状態で熱応動素子5と当接する。突起44bは、突起44aよりも先端側(すなわち可動接点41側)で熱応動素子5に向って突出し、遮断状態で熱応動素子5と当接する。過熱により熱応動素子5が変形すると、熱応動素子5が突起44a及び突起44bと当接し、熱応動素子5の変形が突起44a及び突起44bを介して弾性部44に伝達され、可動片4の先端部が押し上げられる(図4参照)。
【0036】
熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、断面が円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより、板状に形成されている。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部44が押し上げられ、かつ弾性部44の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましい。
【0037】
熱応動素子5の材料としては、洋白、黄銅、ステンレス鋼等の各種の合金からなる熱膨張率が異なる2種類の板状の金属材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。例えば、安定した作動温度及び復帰温度が得られる熱応動素子5の材料としては、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金を組み合わせたものが望ましい。また、化学的安定性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄−ニッケル−クロム合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金を組み合わせたものが挙げられる。さらにまた、化学的安定性及び加工性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄−ニッケル−クロム合金、低膨脹側に鉄−ニッケル−コバルト合金を組み合わせたものが挙げられる。
【0038】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、固定片2の支持部23は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0039】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。
【0040】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための内部空間である凹部73が形成されている。凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0041】
蓋部材8には、銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板がインサート成形によって埋め込まれていてもよい。金属板は、可動片4のA面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
【0042】
図2が示すように、固定片2(固定接点21)、可動片4(可動接点41、弾性部44)、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。これにより、端子22及び42を露出させた状態で、ブレーカー1が組み立てられる。
【0043】
図3及び4は、ブレーカー1の動作の概略を示している。図3は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は逆反り前の初期形状を維持している。弾性部44によって可動接点41が固定接点21の側に押圧されることにより、可動接点41と固定接点21とが接触し、ブレーカー1の固定片2と可動片4とが導通可能な状態とされる。
【0044】
図3に示されるように、熱応動素子5は、導通状態の可動片4の突起44a及び突起44bと離隔していてもよい。これにより、可動接点41と固定接点21との接触圧力が高められ、両者間の接触抵抗が低減される。
【0045】
図4は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りして可動片4の弾性部44と接触し、弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断される。一方、熱応動素子5は、可動片4と接触して、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。すなわち、PTCサーミスター6は、可動片4を遮断状態に移行させている熱応動素子5を介して、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0046】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部44の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図3に示す導通状態に復帰する。
【0047】
図5は、直流回路500(図1参照)の少なくとも一部を構成する2次電池パック550を示している。2次電池パック550は、2次電池501と、ブレーカー1と、回路基板503とを有している。直流回路500の負荷502は、回路基板503上又は回路基板503の外部に実装されている。
【0048】
2次電池501は、電荷を蓄える蓄電セル510と、蓄電セル510の外部に露出された正極511と、負極512とを有する。正極511は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属片によって構成される。負極512は、例えば、銅を主成分とする金属片によって構成される。正極511と、負極512とによって一対の電極が構成される。
【0049】
回路基板503には、一般的なPCB(プリント回路基板)の他、FPC(フレキシブルプリント回路基板)等が適用される。
【0050】
2次電池501の正極511と回路基板503との間には、ブレーカー1が実装されている。一方、2次電池501の負極512は、回路基板503と接続されている。これにより、正極511、ブレーカー1、回路基板503、負荷502、負極512を含む直流回路500が構成される。
【0051】
ブレーカー1の端子22は、2次電池501の正極511に直接的に接続されている。「直接的に接続されている」とは、端子22がタブリード等の金属片を介さずに正極511に接続されている状態を意味している。
【0052】
本実施形態では、端子22と正極511とがレーザー溶接によって接続されている。「レーザー溶接」とは、レーザー光を照射し、そのエネルギーによって金属を溶融させて接合させる溶接手法である。例えば、本実施形態では、波長が1064nmのYAGレーザーが用いられ、図5において手前から奥に向って(後述する図6においては、上方から下方に向って)レーザー光が照射される。
【0053】
正極511と端子22とがレーザー溶接されていることにより、従来の直流回路において2次電池の正極と第1端子との間に配されていたニッケル製の金属片が不要となり、直流回路500全体の抵抗値を容易に低減することが可能となる。また、直流回路500が簡素化され、容易にコストダウンを図ることが可能となる。
【0054】
図6は、ブレーカー1とその周辺部の構成を示している。端子22のレーザー光が照射される面22a(本実施形態では、上記A面)には、レーザー光を吸収し溶融するメッキ層25が形成されている。本実施形態では、メッキ層25は、ニッケル、すず又はクロム又はそれらを主成分とする合金によって構成されている。これにより、メッキ層25の溶融がきっかけとなって端子22及び2次電池501の正極511が順次溶融し、端子22と正極511とが良好に溶接される。従って、正極511と端子22との間の接触抵抗が容易に低減され、直流回路500全体の抵抗値をより一層低減できるようになる。なお、メッキ層25は、面22aとは反対側の面22b(上記B面)に形成されていてもよい。この場合、例えば、2次電池501に対してブレーカー1の天地を逆にして、正極511と端子22とを接続可能となる。
【0055】
端子22の正極511と溶接される面22bには、メッキ層26が形成されている。メッキ層26は、端子22よりもイオン化傾向が大きく、正極511よりもイオン化傾向が小さい金属を主成分としている。本実施形態では、メッキ層26は、ニッケル、すず又はクロム又はそれらを主成分とする合金によって構成されている。これにより、端子22から正極511までの間での腐食が抑制される。
【0056】
メッキ層25は、端子22の面22aの一部に局所的に形成されているのが望ましい。本実施形態では、面22aのうち、ケース10の側壁の近傍を除く領域にメッキ層25が形成されている。これにより、端子22が変形する際、メッキ層25にかかる応力が低減され、メッキ層25の損傷(例えば、クラック等)を抑制できる。また、プレス加工等により、端子22に曲げ部が形成されている形態にあっては、曲げ部及びその近傍を除く領域にメッキ層25が形成されるのが望ましい。これにより、曲げ部を形成する際のメッキ層25の損傷を抑制できる。メッキ層26についても同様に、端子22の面22bの一部に局所的に、メッキ層26が形成されているのが望ましい。
【0057】
図5に示されるように、ブレーカー1と回路基板503との間、すなわち、ブレーカー1と負荷502との間には、金属片520が設けられている。金属片520は、上記PCB又はFPCに形成されている金属箔の一部であってもよい。金属片520は、例えば、導電性に優れた銅を主成分とする金属によって構成されている。ブレーカー1の端子42は、金属片520とレーザー溶接によって接続されている。
【0058】
端子42のレーザー光が照射される面42a(本実施形態では、上記A面)には、レーザー光を吸収し溶融するメッキ層45が形成されている。本実施形態では、メッキ層45は、ニッケル、すず又はクロム又はそれらを主成分とする合金によって構成されている。これにより、メッキ層45の溶融がきっかけとなって端子42及び金属片520が順次溶融し、端子42と金属片520とが良好に溶接される。従って、端子42と金属片520との間の接触抵抗が容易に低減され、直流回路500全体の抵抗値をより一層低減できるようになる。なお、メッキ層45は、面42aとは反対側の面42b(上記B面)に形成されていてもよい。この場合、2次電池501に対してブレーカー1の天地を逆にして、金属片520と端子42とを接続可能となる。
【0059】
メッキ層45は、端子42の面42aの一部に局所的に形成されているのが望ましい。本実施形態では、面42aのうち、ケース10の側壁の近傍を除く領域にメッキ層45が形成されている。これにより、端子42が変形する際、メッキ層45にかかる応力が低減され、メッキ層45の損傷を抑制できる。面42bにメッキ層が形成される形態についても同様に、端子42の面42bの一部に局所的に、メッキ層が形成されているのが望ましい。
【0060】
また、本実施形態のブレーカー1のように、端子42には、プレス加工等により曲げ部47が形成されていてもよい。この場合、メッキ層45は、曲げ部47及びその近傍を除く領域に形成されるのが望ましい。これにより、曲げ部47を形成する際のメッキ層45の損傷を抑制できる。
【0061】
端子22及び端子42は、ケース10の側壁から可動片4の長手方向に延び突出している。端子22のケース10からの突出長さL1と、端子42のケース10からの突出長さL2とは異なっていてもよい。本実施形態では、端子22の突出長さL1は、端子42の突出長さL2よりも大きく設定されている。これにより、端子22と正極511との接触面積が拡大され、両者間の接触抵抗を容易に低減することが可能となる。端子42の突出長さL2が端子22の突出長さL1よりも大きく設定されている形態では、端子42と金属片520との接触面積が拡大され、両者間の接触抵抗を容易に低減することが可能となる。
【0062】
メッキ層25の長さL3と、メッキ層45の長さL4は異なっていてもよい。長さL3は、ケース10から端子22が突出する方向でのメッキ層25の長さである(長さL4についても同様である)。本実施形態では、メッキ層25の長さL3は、メッキ層45の長さL4よりも大きく設定されている。これにより、端子22と正極511とが広い面積で良好に溶接される。メッキ層45の長さL4がメッキ層25の長さL3よりも大きく設定されている形態では、端子42と金属片520とが広い面積で良好に溶接される。
【0063】
ところで、端子22の面22bにメッキ層26と同等の金属層がクラッド等の手法により形成される形態にあっても、端子22から正極511までの間での腐食が抑制される。しかしながら、このようなクラッド等の手法によって形成された金属層は厚さ寸法が大きいので、導電率が低い金属が適用された場合、正極511と端子22との間の抵抗値が大きくなり、金属層における電圧降下が大きくなる。
【0064】
一方、本実施形態において端子22の面22bに形成されるメッキ層26は、クラッド等の手法によって形成された金属層よりも厚さ寸法が小さい。従って、固定片2を構成する金属よりも導電率が低い金属によってメッキ層26が構成される場合であっても、正極511と端子22との間の抵抗値が抑制される。
【0065】
以上、本発明のブレーカー1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、ブレーカー1は、少なくとも、2次電池501及び負荷502を含む直流回路500に用いられるブレーカーであって、2次電池501の正極511に直接的にレーザー溶接される端子22と、固定接点21を有する固定片2と、弾性変形する弾性部44及び弾性部44の一端部に可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5と、端子22を露出させた状態で、固定片2、可動片4及び熱応動素子5を収容するためのケース10とを備えたブレーカー1であって、端子22のレーザー溶接で用いられるレーザー光が照射される面22aには、レーザー光を吸収し溶融するメッキ層25が形成されていればよい。
【0066】
本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、直流回路全体の抵抗値を容易に低減できる。
【0067】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態の可動片4は、弾性部44から端子42に亘って一体的に形成されているが、このような形態に限られることなく、例えば、特開2017−37757号公報に示されるような、可動接点41の側の可動アームと端子42の側の端子片とに分離している形態の可動片4が本発明に適用されてもよい。また、可動アームと端子片が溶接等によって固定されていてもよい。この場合において、端子42の側の端子片は、固定片2等と共にケース本体7にインサート成形されていてもよい。
【0069】
さらにまた、メッキ層25に替えて、レーザー光の反射を抑制するための着色剤を含有する樹脂被膜が面22aに形成されていてもよい。メッキ層26、45についても同様である。着色剤としては、黒色有機顔料(例えば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾ・ペリレン)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン)等の有機顔料の他、(例えば、カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、金属酸化物(酸化銅、酸化コバルト、酸化クロム))の無機顔料、さらには、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノフタロン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料、ピロドン系染料、ピラゾロン系染料、アクリド系染料、黒色染料(例えば、アジン系染料、ニグロシン系染料、オルトアミノフェノール、パラフェニレンジアミン)等の染料が用いられる。これらの着色剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0070】
図5、6では、固定片2に形成された端子22が2次電池501の正極511に直接的にレーザー溶接される第1端子であり、可動片4に形成された端子42が金属片520にレーザー溶接される第2端子である形態のブレーカー1が記載されている。そして、これに伴い、面22aに形成されているメッキ層25が第1メッキ層と、面22bに形成されているメッキ層26が第2メッキ層とされ、面42aに形成されているメッキ層45が第3メッキ層とされている。
【0071】
これに対して、図7は、上記ブレーカー1の変形例であるブレーカー1Aとその周辺部の構成を示している。ブレーカー1Aに示されるように、本発明では、可動片4に形成された端子42が、2次電池501の正極511に直接的にレーザー溶接される第1端子とされていてもよい。この場合、固定片2に形成された端子22は、金属片520にレーザー溶接される第2端子とされていてもよい。これに伴い、面42aに形成されているメッキ層45が第1メッキ層と、面42bに形成されているメッキ層46が第2メッキ層とされ、面22aに形成されているメッキ層25が第3メッキ層とされる。ブレーカー1Aにおいて、その他の構成は、ブレーカー1と同等である。
【符号の説明】
【0072】
1 :ブレーカー
2 :固定片
4 :可動片
5 :熱応動素子
10 :ケース
21 :固定接点
22 :端子
25 :メッキ層(第1メッキ層)
26 :メッキ層(第2メッキ層)
41 :可動接点
42 :端子
44 :弾性部
45 :メッキ層(第3メッキ層)
500 :直流回路
501 :2次電池
502 :負荷
503 :回路基板
510 :蓄電セル
511 :正極
512 :負極
520 :金属片
550 :2次電池パック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7