(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒト対象が、22q11.2欠失に関連する完全なディジョージ症候群;コロボーマ、心臓欠損、後鼻孔閉鎖、成長もしくは精神遅滞、生殖器形成不全および耳の異常もしくは難聴症候群(CHARGE)、またはフォークヘッドボックスタンパク質N1(FOXN1)欠損症に関連する無胸腺症、に罹患している、請求項4に記載の方法。
前記組織分類器が、コントロールライブラリにおいてスライド画像内の検出される核の特徴フィンガープリントを生成し、それらの対応する特徴フィンガープリントに基づいて前記スライド画像をクラスタリングすることによって、移植するための未知の組織の対象に移植するための組織の能力または品質を判定する、請求項2に記載の方法。
前記組織が、血管組織、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靭帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
前記特徴フィンガープリントが、前記検出される核の面積、前記検出される核の周囲長、前記検出される核の積分密度、および前記検出される核の真円度の数値を含む測定値から生成される、請求項1に記載の方法。
前記ヒト対象が、22q11.2欠失に関連する完全なディジョージ症候群;コロボーマ、心臓欠損、後鼻孔閉鎖、成長もしくは精神遅滞、生殖器形成不全および耳の異常もしくは難聴症候群(CHARGE)、またはフォークヘッドボックスタンパク質N1(FOXN1)欠損症に関連する無胸腺症、に罹患している、請求項19に記載の方法。
前記特徴フィンガープリントが、コントロールライブラリにおいてスライド画像内の検出される核の特徴フィンガープリントを生成し、それらの対応する特徴フィンガープリントに基づいて前記スライド画像をクラスタリングすることによって、未知の組織の対象内に移植するための組織の能力または品質を判定する、請求項17に記載の方法。
前記組織が、血管組織、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靭帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
前記特徴フィンガープリントが、前記検出される核の面積、前記検出される核の周囲長、前記検出される核の積分密度、および前記検出される核の真円度の数値を含む測定値から生成される、請求項17に記載の方法。
前記ヒト対象が、22q11.2欠失に関連する完全なディジョージ症候群;コロボーマ、心臓欠損、後鼻孔閉鎖、成長もしくは精神遅滞、生殖器形成不全および耳の異常もしくは難聴症候群(CHARGE)、またはフォークヘッドボックスタンパク質N1(FOXN1)欠損症に関連する無胸腺症、に罹患している、請求項34に記載のシステム。
前記システムが、コントロールライブラリにおいてスライド画像内の検出される核の特徴フィンガープリントを生成し、それらの対応する特徴フィンガープリントに基づいて前記スライド画像をクラスタリングすることによって、未知の組織の対象に移植するための組織の能力または品質を分類する、請求項31に記載のシステム。
前記組織が、血管組織、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靭帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織からなる群から選択される、請求項31に記載のシステム。
前記特徴フィンガープリントが、前記検出される核の面積、前記検出される核の周囲長、前記検出される核の積分密度、および前記検出される核の真円度の数値を含む測定値から生成される、請求項36に記載のシステム。
前記ヒト対象が、22q11.2欠失に関連する完全なディジョージ症候群;コロボーマ、心臓欠損、後鼻孔閉鎖、成長もしくは精神遅滞、生殖器形成不全および耳の異常もしくは難聴症候群(CHARGE)、またはフォークヘッドボックスタンパク質N1(FOXN1)欠損症に関連する無胸腺症、に罹患している、請求項49に記載の分類器。
前記組織が、血管組織、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靭帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織からなる群から選択される、請求項46に記載の分類器。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本明細書に開示される原理、およびその利点のより完全な理解のために、添付の図面と併せて以下の説明が参照される。
【0038】
【
図1】未分類のスライド画像の入力を受信し、未分類のスライド画像の分析および事前に確立された許容基準との比較に基づいて、未分類のスライド画像における組織が移植組織候補であるかどうかを判定する分類器の動作の概略図である。
【
図2】クラスタが異なるグループa、b、c、dおよびeに区分された例示的なクラスタおよびクラスタ樹状図を示す。
【
図3A-3D】下には、背景ピクセル量が異なるスライド画像を示す。
図3Aは、適切な背景ピクセル量での組織サンプルを示すスライド画像を示す。
図3Bおよび3Cは、背景ピクセルが多過ぎるスライド画像を示す。
図3Dは、不十分な背景ピクセル数でのスライド画像を示す。
【
図4A-4C】核分裂の程度が異なるスライド画像を示す。
図4Aは、正しく分裂された核を有するスライド画像を示し、
図4Bおよび4Cは、正しく分裂されていない核を有するスライド画像を示す。
【
図5】胸腺組織標本のヘマトキシリン画像を分析する画像処理ステップを示す。
図5は、ヘマトキシリンで染色された胸腺組織標本を示し、これは、分析対象のフィールドをボックス内の輪郭として識別し、中央の画像において拡大され、スライド画像の赤いチャネルに変換され、抽出されかつ反転されて右の画像においてバイナリ画像が形成される。
【
図6A-6D】組織が胸腺組織であり、抽出された特徴が面積、周囲長、積分密度、および真円度を含む、一実施形態における特徴抽出の例示的な結果を示す。
図6Aは、面積決定値を示す。
図6Bは、周囲長決定値を示す。
図6Cは、積分密度決定値を示す。
図6Dは、真円度決定値を示す。
【
図7】スライド画像用に生成されたフィンガープリントの表現を示す。フィンガープリントは、画像内の核の基本的な特徴を定量的に表す。
【
図8】デューク大学から受信された胸腺標本を含むクラスタリングステップからの生の出力の表現を示す。
【
図9】訓練フェーズ中のグループ化ステップの結果を示す。
図9には、胸腺組織の実験サンプルのスライド画像に基づいてクラスタリングされた複数のポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループが示されている。
【
図10】表2の各セグメントグループ内の集団間の差異の統計分析の結果例を示す。
図10は、各グループ内のスライド画像の集団が大幅に変化しなかったことを示し、これは、これらのスライド画像が同様の特徴フィンガープリントを共有していることを示す。
【
図11】スライド画像の例示的な分析のフローチャートである。一実施形態では、フローチャートは、上記の処理ステップを実行する分類器によって実施される。スライド画像を先ず、評価して、画像が分類ステップ中に分析するのに適しているかどうかが判定されてもよい。
【
図12A-12D】胸腺組織のスライド画像の特定の抽出された特徴に基づいて例示的な特徴フィンガープリントを示す仮想例である。
図12Aは、核の面積に対して生成された特徴フィンガープリントのポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられるスライド画像間の違いを示す。
図12Bは、核の周囲長に対して生成された特徴フィンガープリントにおけるポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられたスライド画像間の違いを示す。
図12Cは、核の積分密度に対して生成された特徴フィンガープリントのポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられたスライド画像間の違いを示す。
図12Dは、核の真円度に対して生成された特徴フィンガープリントのポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられたスライド画像の違いを示す。
【
図13A-13F】分類器の例示的な適用から、陽性および陰性の対照群を有する皮質胸腺細胞の例示的なスライド画像までの特徴の指紋を示す。
図13Aは、ポジティブコントロールグループに関連付けられた胸腺組織の例示的なスライド画像である。
図13Bは、ネガティブコントロールグループに関連付けられた胸腺組織の例示的なスライド画像である。
図13Cは、真円度決定値に関連付けられた特徴フィンガープリントを示す。
図13Dは、面積決定値に関連付けられた特徴フィンガープリントを示す。
図13Eは、積分密度決定値に関連付けられた特徴フィンガープリントを示す。
図13Fは、周囲長決定値に関連付けられた特徴フィンガープリントを示す。
【
図14A-14D】臨床的かつ分解された培養胸腺組織の核を示す。
図14A〜14Cは、培養された胸腺臨床組織サンプルの3つのバッチを表す。
図14Dは、分解された胸腺組織を表す。
【
図15】組織面積について正規化された1日当たりの細胞数の傾向を示す。
【
図16A-16B】培養プロセス0日目の胸腺組織の画像である。
図16Aは、0日目の培養されるH&E染色胸腺組織の写真である。
図16Bは、40倍の倍率での培養されたH&E染色胸腺組織の一部のクローズアップ拡大写真である。
【
図17A-17B】培養プロセス5日目の胸腺組織の画像である。
図17Aは、5日目の培養されたH&E染色胸腺組織の写真である。
図17Bは、40倍の倍率での培養されたH&E染色胸腺組織の一部のクローズアップ拡大写真である。
【
図18A-18B】培養プロセス9日目の胸腺組織の画像である。
図18Aは、9日目の培養されたH&E染色胸腺組織の写真である。
図18Bは、40倍の倍率での培養されたH&E染色胸腺組織の一部のクローズアップ拡大写真である。
【
図19A-19B】培養プロセス12日目の胸腺組織の画像である。
図19Aは、12日目の培養されたH&E染色胸腺組織の写真である。
図19Bは、40倍の倍率での培養されたH&E染色胸腺組織の一部のクローズアップ拡大写真である。
【
図20A-20B】培養プロセス21日目の胸腺組織の画像である。
図20Aは、21日目の培養されたH&E染色胸腺組織の写真である。
図20Bは、40倍の倍率での培養されたH&E染色された胸腺組織の一部の拡大倍率である。
【
図21A-21E】0、5、9、12および21日目の核の外観の変化を示す、0、5、9、2および21日目のH&E染色培養胸腺組織の画像である。
図21Aは、核の高い割合がより高い積分密度を有し、胸腺細胞の数が多いことを示している。胸腺細胞が組織から洗い流されると、5日目(
図21B)、9日目(
図21C)、12日目(
図21D)、21日目(
図21E)の組織は、積分密度の著しい減少および胸腺上皮細胞のプロファイルにより類似したプロファイルを示す。
【
図22】同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物の技術バッチからの積分密度決定値の時間経過を示すグラフである。胸腺細胞が組織から洗い流されると、5日目の組織は、統合密度の著しい減少と、胸腺上皮細胞のプロファイルにより類似したプロファイルを示す。エラーバーは平均から1S.D.である。
【
図23】真円度の測定値を示すグラフである。非常に高い真円度を有する細胞の数は、培養プロセス全体を通して時間経過とともに減少する。これは、真円度が低い核をもたらし、かつ真円度の高い胸腺細胞が洗い出されるアポトーシスが原因である可能性がある。真円度が低い0日目のサンプルの場合、それは、単一の核よりも真円度が低い単一のエンティティとして測定される胸腺細胞の凝集が原因であると考えられる。エラーバーは平均から1S.D.である。
【
図24】周囲長の測定値を示すグラフである。0日目0日目では、周囲長が長いセルの割合が大きくなり、これは、大きい周囲長の値をもたらす、プログラムで細胞の塊が単一の形状として読み取られることが原因である可能性がある。周囲長の増加は、胸腺細胞の洗い出しと、培養時間の経過とともにアポトーシスを起こしている細胞と、その結果としてのそのイベントによる周囲長の増加の組み合わせである可能性がある。エラーバーは平均から1S.D.である。
【
図25】面積の時間経過を示すグラフである。この手法では、ユークリッド距離(サンプルとグランドセントロイドと間の誤差の二乗和の平方根)を使用して、調査した4つの変数すべてを考慮したときの2つのサンプル間の類似性を測定した。参考のために、ユークリッド距離が短いほど、2つのサンプルは互いにより類似している。エラーバーは平均から1S.D.である。
【
図26】データの主効果プロットおよび交互作用プロットである。
図26に示すデータによって、培養胸腺組織が時間の経過とともに同様に挙動することが確認される。
【
図27】1日当たりの重心から胸腺までの距離の95%の信頼区間を示すグラフである。
【
図28A-28B】病理医が赤色で輪郭を描いた胸腺上皮細胞の例示的な画像である。
【
図29】病理医が赤色で輪郭を描いた胸腺上皮細胞(TEC)の画像である。胸腺細胞は青色で輪郭が描かれている。
【
図30】H&Eスライドからの総細胞数に対するTECの比率のプロットである。
【
図31】選択した組織領域に対して正規化された細胞の総数に対するTECの比率のプロットである。
【
図32】例としてグループ「C」と「D」との間の距離を示すクラスタ樹状図である。強調表示された緑および赤のボックスは、単一のグループ化を示す。これは、0.43のカットオフy軸高さに基づいている。この例では、グループCとDは0.6の距離にあるため、2つの別個のグループであるとみなされる。各グループ内のサンプルは統計的に類似しているとみなされ、異なるグループ内のサンプルは統計的に異なるとみなされる。
【
図33】臨床的に良好なサンプルおよび確認された不良なサンプルすべてを有する訓練セットを示すグラフである。ボックスのあるクラスタは、強制的に分解されたサンプルである。
【
図34】最終的なサンプルライブラリを示している。左から右に、グループは、グループ4、グループ3、グループ2、およびグループ1という。グループ1、2および3は合格分類に関連付けられ、グループ4は不合格分類に関連付けられている。
【
図35A-35D】最終サンプルライブラリにおける各クラスタグループについての代表的な画像を示す。グループ1(
図35A)、2(
図35B)、および3(
図35C)は、肯定的な臨床転帰のサンプルで構成されている。グループ4(
図35D)は、確認された分解サンプルで構成されている。グループ1のサンプルはLOT−345由来、グループ2のサンプルはLOT−160由来、グループ3のサンプルはLOT−194由来、グループ4のサンプルはFD.SP17−40348−C1.1(分解方法:−20℃で凍結)由来である。
【
図36A-36D】グループごとに分けられた、様々なパラメータのグラフ表示である。
図36Aは、面積決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
図36Bは、真円度決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
図36Cは、積分密度決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
図36Dは、周囲長決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
【
図37】強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ1からの画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【
図38】グループ1の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【
図39】グループ1の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【
図40】グループ1の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【
図41】グループ1の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【
図42】強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ2の画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【
図43】グループ2の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【
図44】グループ2の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【
図45】グループ2の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【
図46】グループ2の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【
図47】強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ3からの画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【
図48】グループ3の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【
図49】グループ3の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【
図50】グループ3の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【
図51】グループ3の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【
図52】強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ4からの画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【
図53】グループ4の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【
図54】グループ4の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【
図55】グループ4の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【
図56】グループ4の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【
図57】ビンごとのグループ間およびグループ内の変動性の分析のプロットである。データは、先ずグループごとに、次にパラメータに対するビンごとにx軸上に示される。各パラメータの上のグラフは個々のものであり、下のグラフはそのグループの標準偏差である。両者ともデータの広がりを視覚化するために使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で提供されるタイトル、見出し、および小見出しは、本開示の様々な態様を限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、以下で定義される用語は、明細書全体への参照によってより完全に定義される。本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。
【0040】
特に定義されない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本出願では、「または」の使用は、特に明記されない限り、「および/または」を意味する。複数の従属請求項の文脈では、「または」の使用は、代替の場合のみ、複数の先行する独立または従属請求項に戻って参照される。
【0041】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」、ならびに任意の単語の単数形の使用は、1つの指示対象に明確かつ明白に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用される場合、「含む」という用語およびその文法上の変形は、リスト中の項目の列挙が、列挙された項目に置換または追加することができる他の同様の項目を除外しないように、非限定的であることが意図される。
【0042】
本発明は、以下の定義を参照して最も明確に理解される:
【0043】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、ほぼ、大体、または前後を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、それは、記載される数値の上下に境界を拡張することによって、その範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、+/−10%の分散によって、述べられた値の上下の数値を変更するために使用される。本明細書で使用される場合、約という用語は、明示的に示されるかどうかに関係なく、例えば、整数、分数、およびパーセンテージを含む、数値を指す。約という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等であるとみなす(例えば、同じ関数または結果を有する)数値の範囲(例えば、列挙された範囲の+/−5〜10%)を指す。数値または範囲のリストに先立って少なくともおよび約などの用語が使用される場合、用語は、リストにおいて提供される値または範囲のすべてを変更する。いくつかの場合では、約という用語は、最も近い有効数字が四捨五入された数値を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んだ(comprised)」などの含むことの任意の形態)、「有すること(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含むことの任意の形態)、または「含有すること(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有することの任意の形態)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。加えて、「含むこと(comprising)」という用語と併せて使用される用語は、「〜からなること(consisting of)」または「〜から本質的になること(consisting essentially of)」という用語と併せて使用することができることも理解される。
【0045】
本明細書で使用される「組織」という用語は、ヒトまたは動物における任意のタイプの組織を指し、これらに限定されないが、血管組織、皮膚組織、肝臓組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靭帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織を含む。
【0046】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲、または整数範囲は、特に示されない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の1/10および100分の1など)を含むと理解されるべきである。範囲は、概算であり、整数よりも変動し得る。
【0047】
単位、接頭辞、および記号は、Systeme International de Unites(SI)で承認された形式で示される。数値範囲は、範囲を定義する数値を含める。測定値は、有効数字および測定に関連する誤差を考慮して、概算であると理解される。
【0048】
さらに、明確にするために、別個の実施形態の文脈において記載される、本明細書に記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記載される様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な部分組み合わせで提供することもできる。
【0049】
「面積」はμm
2で報告される。核面積は、胸腺細胞に対してよりも胸腺上皮細胞に対してのほうが大きい。アポトーシスを起こしている細胞もより小さくなる可能性がある。
【0050】
「円形度」は、細胞がどの程度の円形であるかの尺度である。真円度は0〜1のスケールで示され、1は真円である。胸腺細胞は、胸腺上皮細胞と比較して真円度が高い。非生存細胞は、生存細胞と比較して真円度が低い。このように、両方の胸腺細胞が減少し、より多くの生存不能な細胞が組織スライスにおいて観察されることが予想されるため、真円度は培養時間の経過とともに減少すると予想され得る。分解されたサンプルはまた、生存不能な細胞が多くなり、それによって分布がより低い真円度にシフトするため、真円度が低下すると予想される。
【0051】
「積分密度」は、核がどの程度濃く染色されているかを表す。均一に濃い染色を示す胸腺細胞に対する積分密度は高い。胸腺上皮細胞は、濃く染色された縁および顕著に濃い核小体を備えたほとんど透明な核質を有する。
【0052】
「周囲長」は、検出される核の輪郭を表し、μmで報告される。周囲長は細胞の生存能力に関連付けられ、細胞が分解すると、核の輪郭が不規則になり、その周囲長が増加する。培養が進むにつれて全細胞に対するTE細胞の割合が増加するにつれて、周囲長も増加する。周囲長の変化は、組織の分解と同様に、培養において時間経過とともに予想される。
【0053】
定量的組織学的方法の概要
開発された定量的組織学的方法は、同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物と統計的および生物学的に関連性を有すると判定された特性に基づいて画像のようにクラスタリングする画像ベースのアルゴリズムである。被走査H&E組織学的スライドが作成される。スライドは、SCN画像またはTIFF画像のどちらかとして検証済みの胸腺組織分析ソフトウェアにアップロードされる。アップロードされるファイルがSCN画像の場合、アルゴリズムは分析のためにそれをTIFF画像に変換する。エオシン染色で強調表示された核がここで白い背景で黒い形状になるように、画像の赤いチャネルが抽出され、次いで反転される。
【0054】
次に、面積、周囲長、積分密度(形状の暗さ)、および真円度が各核について測定される。次に、これらの属性の度数分布は、データベースにおける既知の良好なサンプルおよび不良なサンプルと比較され得る。次に、属性に対して統計的クラスタリング比較が実行されて、新しい入力サンプルが既知のサンプルと統計的に類似しているかどうかが判定され、したがって、以前に識別された基準に従って「合格」または「不合格」として判定され得る。
【0055】
同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物の臨床およびR&D H&Eスライドの選択について、40倍または20倍の倍率で走査された。次に、定量的組織学的方法の開発のために画像がアップロードされた。
【0056】
スライドを定量化するために、先ず画像を分析して、画像から属性データを抽出され得るようにした。これを実現するために、画像はTIFF FGP形式に変換され、次いで、ImageJを介して画像処理アルゴリズムによって処理され、画像は1μm/pixelに較正され、赤いチャネルが抽出され、次いで、赤いチャネルが反転され、したがって、より濃い染色された核がより高いピクセル強度をもたらす。この分析の描写については、
図5A〜Cを参照されたい。
【0057】
画像分析が画像間で一貫していることを保証するために、閾値が決定され、核の選択のための適切な値に設定された。面積で10μm
2を超える、連続したピクセルの領域としてここで定義される画像が粒子(細胞核)について分析される。次に、面積、周囲長、幅などを含む各粒子についてのパラメータが抽出された(評価されたパラメータの全リストについては、表1を参照されたい)。
【0058】
最初に分析された組織集団における主成分分析によって統計的に有意であると判定された特徴は、面積、周囲長、積分密度、および真円度であった。他の特徴は、サンプルを区別するのに役立たないことが判明し、その後はもはや分析されなくなった。
【0059】
図14A〜14Dは、臨床的に培養された胸腺組織サンプル(
図14A〜14C)の3つのバッチおよび分解された胸腺組織サンプルを示す。
図14Aに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=11.34、真円度=0.696、周囲長=14.310および積分密度=1889.2。
図14Bに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=11.41、真円度=0.993、周囲長=11.982および積分密度=1912.4。
図14Cに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=10.53、真円度=0.846、周囲長=12.510および積分密度=1707.4。
図14Dに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=13.0、真円度=0.352、周囲長=21.556および積分密度=1786.0。各画像の単一の核は円で識別される。
【0060】
核ごとに4つのパラメータが記録されると、スライド全体にわたる核の分布を示すために、パラメータごとに度数分布が作成される。一般に、各スライドには100,000を超えるデータポイントが存在する。分布内の各パラメータのビン幅およびカットオフは、スライド間でまだ変動性を示している最も少ないビンを選択することによって決定された。各ビン内の核の割合が決定され、それらの値がクラスタリング分析に使用される。
【0061】
定量分析およびクラスタリングの概要
本明細書で説明する定量分析は、デジタルパソロジーへの偏りのない/創発的なアプローチである。訓練フェーズおよび分類フェーズの両方に、各画像の特徴フィンガープリントを生成するためのコンピューター化された特徴抽出が含まれる。一実施形態では、特徴フィンガープリントは、各画像の基礎となる核特徴を表す。細胞の特徴抽出を利用することによって、各スライド画像に表される組織内の基礎となる細胞集団の定量的特性評価が可能になる。両方のフェーズには、スライド画像内の各セルを表す定量的特徴によって組織学的セクションを分類するための統計的階層的凝集クラスタリング手法も含まれる。クラスタリング分析は、各スライド画像に対して生成されるフィンガープリント間の類似性に基づいて、スライド画像を異なるグループに分類する。一実施形態では、階層的凝集クラスタリングが、未知の組織の能力を判定するために組織分類器を訓練することと訓練された組織分類器を利用することの両方のために、画像分析のコンテキスト内で使用される。本開示のクラスタリングの実施形態の例は、以下の明細書、図および実施例に記載されている。例えば、限定としてではなく、クラスタリング手法について、
図2、7〜9、32以降、ならびに付随するテキストおよび表に対応付けて説明される。
【0062】
組織分類のコンテキストでの階層的凝集クラスタリングには、基礎となるデータセットの創発的特性を明らかにするために、データから直接クラスタを組み立てることが含まれる。分類フェーズでは、一実施形態によれば、クラスタリング手法は、未知の組織の生成された特徴フィンガープリントの既知の組織の以前にクラスタリングされた特徴フィンガープリントとの類似性に基づいて未知の組織の分類(例えば、スライド画像のライブラリから)を可能にする。クラスタリング手法はまた、クラスタの中心点間の距離を示すクラスタ樹状図の相対的な高さの分析に依存する(
図2を参照)。相対的な高さは通常、クラスタの数値的特徴間の違いに比例する(以下でさらに説明する)。
【0063】
図2は、クラスタが異なるグループa、b、c、dおよびeに分けられている例示的なクラスタおよびクラスタ樹状図を示す。クラスタおよび/またはクラスタ樹状図の生成後、統計分析手法を適用して、統計的に有意に互いに異なるグループを判定し得る。統計分析手法の一例は、多変量分散分析(multivariate analysis of variance、MANOVA)であり、これは、2つ以上(つまり複数)の変数を有するデータセット間の分散を判定するための手順である。
【0064】
訓練および分類フェーズには、適合性の判定、画像処理、特徴抽出、およびクラスタリングのうちの1つ以上の工程が含まれ得る。
【0065】
適合性の判定
適合性の判定は、スライド画像の特性を評価して、スライド画像が、開示された実施形態に記載されるようなさらなる定量分析に適しているかどうかを判定することを指す。適合性の判定は、画像の訓練セットおよび新しいスライド画像の両方に対して実行され得る。一実施形態では、スライド画像の適合性判定は、メタデータ分析、背景ピクセル分析(例えば、スライド画像に存在する背景ピクセルの量の検査)、および組織エントロピー(および核セグメンテーション)分析(例えば、スライド画像におけるエントロピー量の検査)を含む。
【0066】
メタデータ分析
スライド画像のメタデータ分析は、スライド画像が定量分析に適切なメタデータプロパティを有するかどうかを判定する。考慮される可能性のあるメタデータの例としては、ファイル名(例えば、ファイル名が一意であるかどうか)、最終変更日(ファイルが最後に変更された日付)、ファイルサイズ(例えば、バイト単位での、ファイルのサイズ)、フォーマット(例えば、TIFなどのファイル種類)、画像の幅(例えば、ピクセル単位での、スライド画像の幅を含む値)、画像の高さ(例えば、ピクセル単位での、スライド画像の高さを含む値)、ビット深さ(スライド画像のカラーチャネルについての合計ビット数)、色の種類(画像の色の種類、例えば、RGB)、x解像度(例えば、X方向のスライド画像の解像度を表す値)、y解像度(例えば、Y方向のスライド画像の解像度を表す値)、解像度の単位(例えば、x解像度およびy解像度の特性の単位を含む文字列)、画像の背景比率(総ピクセル数に対する背景ピクセルの量の比率)、背景ラベル(画像の背景ピクセルの量を表すラベル)、組織エントロピー(セグメント化された問題ピクセルのみを表すエントロピー)、および核セグメンテーションラベル(核セグメンテーション分析の成功を表すラベル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
一実施形態では、スライド画像は、上記の1つ以上のメタデータプロパティの分析に基づく定量分析に適しているとみなされ得る。例えば、一実施形態では、上記のすべてのフィールドがスライド画像のヘッダ内に存在し、読み取り可能であり、スライド画像が0.8μm〜1.2μmのx解像度および0.8μm〜1.2μmのy解像度を有する場合、スライド画像は定量分析に適している。別の実施形態では、いずれかのフィールドが欠落しているか破損している場合、スライド画像は定量分析から除外され得る。
【0068】
背景分析
背景ピクセルの分析は、組織の画像が、背景に関して分析される組織のビューを必要とするさらなる分析に適していることを保証するためのステップである。一実施形態では、定量分析は、スライド画像内の標準化された量の背景ピクセルを利用して、組織セグメンテーションおよび核セグメンテーション中に正確なセグメンテーションが行われることを保証する。背景ピクセルが多過ぎる画像(空の画像)または背景ピクセルが十分でない画像(トリミングされた画像)は、セグメンテーション分析(以下で説明)中にパフォーマンスが低下するため、背景ピクセルの範囲は、この範囲外の画像が開示される実施形態の定量分析を続行する前にスクリーニングされるように決定される必要がある。
【0069】
背景分析の結果は、背景ラベル(例えば、合格または不合格)をスライド画像に関連付ける結果となり得る。例えば、
図3A〜3Dは、様々な量の背景ピクセルを有するスライド画像を示す。
図3Aは、適切な量の背景ピクセルでの組織サンプルを示すスライド画像を示す。一実施形態では、適切な量のピクセルを有するスライド画像は、さらなる分析に適しているとみなされる。この種類の画像は、第1の背景クラスとみなされ得る。
【0070】
図3Bおよび3Cは、背景ピクセルが多過ぎるスライド画像を示す。一実施形態では、背景ピクセルが多過ぎるスライド画像は、さらなる分析には適さないとみなされる。この種類の画像は、第2の背景クラスとみなされ得る。
【0071】
図3Dは、不十分な数の背景ピクセルを有するスライド画像を示す。一実施形態では、そのようなスライド画像は、さらなる分析には適さないとみなされる。この種類の画像は、第3の背景クラスとみなされ得る。
【0072】
ここで、背景分析の例示的なステップについて説明する。スライド画像についての背景画像は、総ピクセル数に対する背景ピクセル数の比率に基づく分類間隔を使用して分類される。例えば、空の画像(例えば、
図3B、3C)は、かなり高い画像背景比率(例えば、95%)を示し、トリミングされた画像は、かなり低い画像背景比率(例えば、5%)を示し(例えば、
図3D)、通常の量の背景ピクセルおよび組織を有する画像は、中程度の画像背景比率(例えば、20%〜80%)を示す(例えば、
図3A)。これらの値は、単なる例示であり、訓練セット内の画像の分析に基づいて動的に決定され得る。
【0073】
背景分析は、訓練セット内の画像に対して(例えば、定量分析に適しているとみなされる値の適切な範囲を生成するために)、コントロールセットにおける画像に対して(例えば、コントロールセットにおける画像の背景値が生成される適切な範囲内にあるかどうかを判定するために)、および新しい不特定の画像のために、実行される。一実施形態では、スライド画像についての画像背景比率分類を判定することは、以下のステップを含むが、これらに限定されない。
【0074】
一実施形態では、訓練セットのスライド画像の画像背景比分類を判定することは、以下のステップを含むが、これらに限定されない。
1.訓練セットにおけるすべての画像についての画像背景比を計算する。
a.正規化された画像ヒストグラムカウントを計算する。
b.赤色チャネルからのすべての画像ピクセルで反転関数を使用して、背景ピクセルから組織ピクセルをセグメント化する(例えば、アプリケーションImageJのotsu_dark関数)。
c.N=2
スライド画像のビット深度であるN個のビンを有するすべての画像ピクセルからヒストグラムカウントを生成する。
d.すべてのヒストグラムカウントを画像における総ピクセル数で除算して、データを正規化する。
e.閾値より大きいピクセルの割合を計算する。この割合は、画像背景比率を表す。
2.適切な数の背景ピクセル(例えば、合格)を有するとみなされる画像についての画像背景比率の分類間隔を計算する。
a.第1、第2、および第3の背景クラスの各々について、平均画像背景比率および標準偏差を計算する。
b.分類範囲の上限を計算する。
i.第1および第2の背景クラスについての平均画像背景比率間の中間点を計算する。この値は、受け入れられる分類間隔の上限として割り当てられ得る。
c.分類範囲の下限を計算する。
ii.第1、第2および第3の背景クラスについての平均画像背景比率間の中間点を計算する。この値は、受け入れられる分類間隔の下限として割り当てられる。
【0075】
一実施形態では、スライド画像の訓練クラスにおいて実行される前述のステップの結果によって、許容可能な背景範囲が生成される。この許容可能な背景範囲内の背景値を有するスライド画像は、さらなる定量分析に適しているとみなされ得る。次に、許容可能な背景範囲を適用して、コントロールライブラリ内の画像などの、訓練クラス外の新しい画像を分類し得る。例えば、第1の背景クラス(例えば、
図3A)を有する画像について計算される背景範囲内の背景比率を有すると判定される新しいスライド画像は、適切な量の背景ピクセルを有するとして分類され、分析の次のステップに受け入れられる。逆に、第1の背景クラスを有する画像について計算される背景範囲外の新しいスライド画像(例えば、
図3B〜D)は拒否され、さらなる分析には進むことはない。
【0076】
組織エントロピー分析
核セグメンテーション分析は、核ピクセルがスライド画像内の他のピクセルから適切に分離されていることを確認する。スライド画像の特徴フィンガープリントは、部分的に核の特徴に基づいているため、実施形態における定量分析には、正しくセグメント化された核ピクセルが必要である。核セグメンテーション分析の結果は、核セグメンテーションラベル(例えば、合格または不合格)をスライド画像に関連付ける結果をもたらし得る。
【0077】
核セグメンテーション分析には、組織ピクセルのエントロピーを評価して、正確な核セグメンテーションが行われるように十分なエントロピーが存在することを確認することが含まれる。画像エントロピーは、熱力学的エントロピーと同様に、システム内の状態の数に対応する。多くの異なるピクセル値が画像間で均等に分布している画像は、状態の数が多いため、エントロピーが高くなる。ピクセル値が画像間で不均一に分布している画像は、状態の数が少ないため、エントロピーが低くなる。スライド画像における組織ピクセルのエントロピーを評価することによって、画像に適切なコントラストおよび鮮鋭性が存在することが保証され、スライド画像の定量分析に役立つ。組織のコントラストが低い画像は、通常の組織のコントラストの量を有する画像と比較してエントロピーが低くなる。核ごとのピクセルの数と配置は、それらの「特徴」に対応し、組織サンプルをクラスタリングするために使用される特徴フィンガープリントの生成に対応する。これらの特徴は、スライド画像の核ごとに異なる。一実施形態では、前の2つのステップ(メタデータ分析、画像背景)を通過した画像は、この組織エントロピー分析に進む。
【0078】
訓練セットに適用すると、組織エントロピー分析により、画像内で受け入れられる組織エントロピーの範囲が作成される。一実施形態では、組織エントロピー分析は、以下のステップを含み得るが、これらに限定されない:
1.背景ピクセルからすべての組織ピクセルをセグメント化する。
i.赤色チャネルのすべての画像ピクセルで反転関数を使用して、背景ピクセルから組織ピクセルをセグメント化する(例えば、アプリケーションImageJのotsu_dark関数)。
ii.エントロピー方程式を使用してすべての組織ピクセルのエントロピーを計算し、対応する値を保存する。エントロピー方程式の例を以下に示し、ここで、ETはすべての組織ピクセルの組織エントロピーであり、pはビンiにおける組織ピクセルの正規化されたヒストグラムカウントであり、Nはヒストグラムで使用されるヒストグラムビンの数である。
【数1】
iii.スライド画像内のすべてのセグメント化された核のバイナリマスクを作成する(例えば、すべての組織ピクセルに関数otsu_darkを適用する)。バイナリマスクは特定の画像に対応し、使用されるピクセルを指す。バイナリマスクは通常、セグメンテーションが実行されるときに作成される。例えば、H&E画像に対応するバイナリ核マスクは、元の画像と同じ次元の行列であり、核マスクは1ビットのみであり、所定の値(例えば、0または1)のみが含まれる。元の画像内の核の位置と一致するピクセル位置は、所定の値(例えば、1)を有し、非核ピクセルは、所定の値(例えば、0)を有する。
2.すべての画像について核セグメンテーションラベルを作成する。このラベルは、組織エントロピー分析に関して上記の画像処理ルーチンで実行された核セグメンテーションの成功を表す。核セグメンテーションは、元のスライド(例えば、H&E)画像内の他のすべてのピクセルから核のピクセルを分離することである。核セグメンテーションが実行されるため、オブジェクト分析は画像内の細胞核に対してのみ実行される。
i.核セグメンテーションの精度を決定する。例えば、このステップは、アプリケーションを使用して、正確なおよび不正確なセグメンテーションの例を提供する画像キーと比較して実行され得る。
1.特定の不透明度の値を使用して、バイナリ核マスクを赤いチャンネル画像にオーバーレイする(下の
図4A〜C)。
2.マスクが核の上に適切にオーバーレイされていると定義されている正しいセグメンテーションについて、所定の数の核(例えば、50個)を調べる。
a.所定の数の核のうちの特定の数(例えば、45個)以上の核が正しくセグメント化される場合、画像には、第1の核セグメンテーションラベル(例えば、「0」)が与えられ得る(
図4A)。
b.特定の数より少ない核が正しくセグメント化されている場合、画像には、第2の核セグメンテーションラベル(例えば、「1」)が与えられ得離(
図4B、C)。
3.第1の核セグメンテーションラベルが付いた画像の組織エントロピーの分類間隔を計算する。
i.第1および第2の核セグメンテーションラベルを有する画像の各々についての平均組織エントロピーおよび標準偏差を計算する。
ii.分類範囲の下限を計算する。
1.第1および第2の核セグメンテーションラベルについての平均組織エントロピーの中間点を計算する。この値が、組織エントロピー範囲の下限として割り当てられる。
2.組織エントロピーの許容範囲は、ステップ3.ii.1で計算された範囲の下限から無限大まで及ぶ可能性がある。
【0079】
一実施形態では、スライド画像の訓練クラスに対して実行された前述のステップの結果が、スライド画像における組織エントロピーについての許容可能な分類範囲を生成する。次に、許容可能な分類範囲を適用して、新しいスライド画像を分類することができる。組織エントロピー値が分類範囲の下限よりも大きいスライド画像(ステップ3.ii.1を参照)は、適切な量の組織エントロピーを有するとして分類され、この方法を使用した分析に受け入れられる。分類範囲の下限よりも小さい組織エントロピー値を有するスライド画像は拒否され、さらなる定量分析に進むことはない。
【0080】
図4A〜4Cは、核セグメンテーションの程度が異なるスライド画像を示す。
図4Aは、正しくセグメント化された核を有するスライド画像を示し、
図4Bおよび4Cは、誤ってセグメント化された核を有するスライド画像を示す。
【0081】
画像処理
スライド画像のヘマトキシリンチャネルは各細胞の核の特徴を表すため、このチャネルの分析に関して、画像処理機能について以下でさらに説明する。一実施形態では、ヘマトキシリン画像はエオシン画像から分離される。一実施形態では、画像処理ステップはまた、以下の
図5A〜Cに示されるように、分析のためにスライド画像をバイナリ画像に変換することを含み得る。一実施形態では、スライド画像(
図5A)は、同じ解像度およびスケールを使用して分析される。次に、核および対応する核の特徴を検出するために、ピクセルの連続領域がバイナリ画像から抽出される(
図5Bを参照)。一実施形態では、スライド画像の赤いチャネルが抽出され、反転されて、
図5Cに示されるようなバイナリ画像が形成される。一部のシステムでは、画像の赤いチャネルがスライド画像内の核の最良の画像を提供する。
【0082】
特徴抽出
一実施形態では、特徴抽出ステップは、スライド画像において検出された各核の特徴を抽出し、抽出された特徴の各々について指紋を生成することを含む。一実施形態では、特徴は、数値の特徴値として表される。以下の表1は、例えば、検出可能であり、したがって各核について抽出できる特徴を示しているが、これに限定されない。核ごとに1つ以上の特徴が抽出され得る。例えば、特定の特徴が、様々な能力の適用の目的により関連している場合がある。すなわち、特定の機能が、合格になる組織と不合格になる組織との間で大幅に異なると判定される場合がある。
【0083】
一実施形態では、分類される組織が胸腺組織(アッセイの一部である場合もあれば、その一部である場合もある)である場合、関連する抽出される特徴は、各検出される核の面積、各検出される核の周囲長、各検出される核の積分密度、および各核の真円度である。面積に関しては、胸腺細胞よりも胸腺上皮細胞のほうが核面積が大きい。周囲長は細胞の生存能力に関連付けられ、細胞が分解すると、核の輪郭が不規則になり、その周囲長が増加する。積分密度は胸腺細胞で高く、均一に濃い染色を示す。胸腺上皮細胞は、濃く染色された縁、ほとんどが透明な核質を有し、顕著な濃い核小体がある。胸腺細胞は、胸腺上皮細胞と比較して真円度が高い。非生存細胞は、生存細胞と比較して真円度が低い。
【0084】
一実施形態では、積分密度は、検出される核のサイズおよび検出される核に関連付けられる暗さの値により表される。円形は、検出される核の円形形状の評価を表し、一実施形態では、範囲(例えば、0.0〜1.0、ここで、1.0は完全な円を表す)によって表され得る。
【表1】
【0085】
ここで、一実施形態によるスライド画像についての特徴フィンガープリントの判定について説明する。最初に、抽出される特徴ごとに数値フィンガープリントが作成される。例えば、上記の実施形態では、特徴フィンガープリントは、スライド画像内の核の面積、周囲長、積分密度、および真円度ごとに生成される。一実施形態では、ヒストグラムは、抽出される特徴(例えば、面積、周囲長、積分密度および真円度)の各々について生成される。各ヒストグラムは、特徴の特定の範囲(ビン)での結果の頻度を示す。特徴フィンガープリントは、各スライド画像について組み合わされたヒストグラムから生成される。クラスタリング(下記および以下に示す例で論じられる)は、抽出される特徴の統計分析に基づいている。ヒストグラムを
図6A〜6Dに示す。
図6A〜Dは、組織が胸腺組織であり、抽出される特徴が面積、周囲長、積分密度、および真円度を含む一実施形態における特徴抽出の例示的な結果を示す。
図6Aは、面積決定値を示す。
図6Bは、周囲長決定値を示す。
図6Cは、積分密度決定値を示す。
図6Dは、真円度決定値を示す。
【0086】
クラスタリング
一実施形態では、クラスタリングは、スライド画像の特徴フィンガープリントに基づいてクラスタを組み立てることを含み得る。一実施形態では、生成された特徴フィンガープリントについてのユークリッド距離行列が表にされている。次に、距離行列は、スライド画像のグループ内分散が最小化されるようにスライド画像の最適な配置を探すことによって、階層的凝集クラスタリングに使用され得る。
【0087】
一実施形態では、特徴フィンガープリントは、上記のように抽出される特徴の組み合わされたヒストグラムから生成される各スライド画像についての数値によって表され得る。訓練フェーズでは、階層的凝集クラスタリングが、デューク(Markert Lab)、強制分解(CT2)、製造(CT2)標本スライドなどの既知のデータセットを有するコントロール画像のライブラリからのスライド画像の特徴フィンガープリントに適用される。一実施形態では、クラスタリングはまた、統計分析を実行して、クラスタをグループに分離して、各グループ内のスライド画像間の統計的有意性を保証するカットオフ高さを判定することを含む。分類フェーズでは、未知のサンプルは、ライブラリからのスライド画像との共クラスタリングによって分類される。次に、未知のサンプルは、未知のサンプルが共同クラスタリングされるクラスタ内のグループに基づいて分類される。
【0088】
以下の
図7は、スライド画像用に生成された例示的な指紋の表現を示す。上記のように、フィンガープリントは、画像内の核の基礎となる特徴の定量的表現である。
【0089】
以下の
図8は、デューク大学から提供された組織サンプルからのデータを含むクラスタリングステップからの生の出力の例示的な表現を示す。
【0090】
一実施形態では、クラスタリングステップは、クラスタのグループへの分離を含み得る。統計的に有意な方法で分離を実行するためのカットオフ高さを計算する必要がある。一実施形態では、カットオフ高さは、グループ間およびグループ間の対応する多変量分散分析(MANOVA)を用いてカットオフ高さの体系的な増加を通じて計算され、選択されるカットオフ高さは、グループの数を最小化する一方で、グループ集団間の特徴フィンガープリントにおける差異の統計的有意性を最大化する。組織が胸腺組織であり、抽出される特徴に面積、周囲長、積分密度、および真円度が含まれる例示的な実験試験において、カットオフ高さ(例えば、0.4)が、クラスタを特定の数のグループ(例えば、9つ)に分離することをもたらすクラスタのセグメンテーションについて判定された。
【0091】
例示的な実験試験では、グループが形成された後、グループ内のサンプルの集団が、能力基準に合格したと以前に判定されたサンプル(すなわち、合格分類とされる「良好な」サンプル)からのスライド画像からなる場合、グループはポジティブコントロールグループとして割り当てられた。これらのグループの例には、デュークおよび製造データセットが含まれる。グループ内のサンプルの集団が、能力基準に合格しなかったと以前に判定されたスライド(すなわち、分類に失敗した「不良」サンプル)からなる場合、グループはネガティブコントロールグループとして割り当てられた。これらのグループの例には、強制分解データセットが含まれていた。
【0092】
以下の
図9は、訓練フェーズ中のグループ化ステップの例示としての結果を示す。
【0093】
図9は、胸腺組織のスライド画像に基づいてクラスタリングされた複数のポジティブおよびネガティブコントロールグループを示す。そのような実施形態では、能力についての単一の合格/不合格基準は存在し得ない。むしろ、複数の特徴が、サンプルを区別し、能力について考慮される場合がある。切片が採取される領域および組織のサイズなどのスライド画像における変動に基づいて、ポジティブコントロールグループ間でより多くの変動が存在する可能性がある。例えば、胸腺などのより複雑な組織の様々な領域から採取される切片は、様々な皮質髄質比(例えば、胸腺細胞、上皮網状細胞、およびハッサル体の数の分布)を有するが、尚も能力の合格基準を満たし得る。
【0094】
一実施形態では、
図9のコントロールグループについて以下の説明は、単に例示的なものであり、それぞれのコントロールグループの形成をもたらすスライド画像の可能な共通の特徴を説明することを意図している。コントロールグループは、それらに含まれるスライド画像内の他の特徴または特徴の組み合わせに基づいて形成され得る。
図9の例では、
図9の第1のネガティブコントロールグループ(「ネガティブコントロール1」)は、ハッサル体の存在、不十分に定義された髄質および皮質領域、および広範な壊死および線維症に基づいてグループ化された。
図9における第2のネガティブコントロールグループ(「ネガティブコントロール2」)は、ハッサル体の存在が最小限またはまったくないこと、線維症および壊死、ならびに不十分に定義された延髄および皮質領域に基づいてグループ化された。
図9における第3のネガティブコントロールグループ(「ネガティブコントロール3」)は、ハッサル体の存在が最小限またはまったくないこと、線維症および壊死、ならびに不十分に定義された髄質および皮質領域に基づいてグループ化された。
【0095】
図9に示すポジティブコントロールグループに関して、この例では、
図9の第1のコントロールグループ(「ポジティブコントロール1」)は、定義された皮質または髄質領域の欠如、ハッサル体の存在、およびリンパ球の量が少ないまたは正常に基づいてグループ化された。
図9の第2のコントロールグループ(「ポジティブコントロール2」)は、正常な上皮細胞、正常な皮質および髄質領域、ハッサル体の存在、および正常な成熟T細胞の変化を伴うリンパ球の存在に基づいてグループ化された。
図9の第3のコントロールグループ(「ポジティブコントロール3」)は、正常な上皮細胞、正常な皮質および髄質領域の存在、ハッサル体の存在、および正常な成熟T細胞の変化を伴うリンパ球に基づいてグループ化された。
図9の第4のコントロールグループ(「ポジティブコントロール4」)は、リンパ球の量が少ないこと、髄質および皮質領域の程度が異なること、一部の組織では髄質から皮質に広がる壊死の存在、および無しから存在までの上皮細胞の変化に基づいてグループ化された。
図9の第5のコントロールグループ(「ポジティブコントロール5」)は、正常な皮質および髄質領域、ハッサル体の存在、正常な胸腺細胞の分布、および正常な成熟T細胞の変化を伴うリンパ球に基づいてグループ化された。
図9の第6のコントロールグループ(「ポジティブコントロール6」)は、ハッサル体の存在が最小限またはまったくないこと、皮質および髄質領域についての識別の欠如、および高度の線維組織に基づいてグループ化された。本開示の代替のクラスタリング技術は、本明細書の実施例に見出すことができる。
【0096】
以下の表2および3は、共クラスタリング分析を実行した後にグループを形成する統計分析の例示的な結果を示す。一実施形態では、MANOVA分析が実行される。表2は、共クラスタリング分析に基づくグループが、互いに大幅に異なるクラスタリングされたグループ間の集団をもたらしたことを示す。
【表2】
【表3】
【0097】
図10は、表2の各セグメント化グループ内の集団間の差異の統計分析の例示的な結果をさらに示す。
図10は、各グループ内のスライド画像の集団が大幅に変化しなかったことを示し、これは、それらのスライド画像が同様の特徴フィンガープリントを共有していることを示している。
【0098】
表3は、ランダムに生成されたグループのうちのグループ(すなわち、共クラスタリングを実行しない場合の)が、各グループの集団間で統計的有意性をもたらさなかったことを示している。
【0099】
一実施形態では、訓練段階の後、分類器は、ライブラリからのスライド画像のセグメント化されたグループ化を確立した。グループ化は、ポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに分けられ、ポジティブコントロールグループには、移植の候補である(すなわち、合格分類)と以前に判定されたスライド画像が含まれ、ネガティブコントロールグループには、移植の候補ではない(すなわち、不合格分類)と以前に判定されたスライド画像が含まれる。
【0100】
分類フェーズでは、分類されるサンプルスライド画像が分析されて、スライド画像内の組織の能力が評価される。スライド画像は、分析の準備として処理される。一実施形態では、これは、画像のバイナリ画像への変換を含む。次に、特徴検出が実行される。一実施形態では、ヘマトキシリンチャネル(すなわち、核)がスライド画像から抽出される。抽出されたチャネルについての特徴が判定される。特徴フィンガープリントは、抽出されるチャネルの特徴に基づいて生成される。一実施形態では、特徴フィンガープリントは、上記の
図8に示されるようなヒストグラムによって表され得る。別の実施形態では、特徴フィンガープリントは、抽出されるチャネルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の特徴から生成される。
【0101】
次に、生成される特徴フィンガープリントは、訓練フェーズ中に生成されたポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループの特徴フィンガープリントと比較され得る。一実施形態では、比較ステップは、生成される特徴フィンガープリントを、ポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループの特徴フィンガープリントと共クラスタリングすることを含む。
【0102】
共クラスタリング後、統計分析(例えば、MANOVA)を実行して、生成される特徴フィンガープリントクラスタが統計的に有意な方法でポジティブコントロールグループまたはネガティブコントロールグループのいずれかと相関するかどうかを判定するために、形成されるクラスタを評価する。統計分析の結果が、統計的に有意なクラスタリングの欠如を、またはネガティブコントロールグループで特徴フィンガープリントクラスタが生成されたことを示す場合、スライド画像は、能力基準を満たしていないものとみなされ、不合格類に関連付けられ得るか、または分解について定性的に評価され得る。統計分析の結果がポジティブコントロールグループでのクラスタリングを示す場合、スライド画像は、能力基準に合格したとみなされ、合格分類に関連付けられ得る。
【0103】
以下の
図11は、スライド画像の例示的な分析のフローチャートを表している。一実施形態では、フローチャートは、上記のステップを実行する分類器によって実施される。スライド画像を先ず評価して、画像が分類ステップ中に分析されるのに適しているかどうかを判定し得る。そうでない場合、スライド画像は除外され、分析の適合性要件を満たしていないものと判定される。スライド画像が必要な適合性要件を満たしている場合、スライド画像は除外されずに分析される。分析には、上記の画像処理ステップ、特徴抽出ステップおよびクラスタリングステップの少なくとも1つが含まれる。試験結果の結果により、スライド画像の特徴フィンガープリントがポジティブコントロールグループまたはネガティブコントロールグループでクラスタリングされるかどうかの判定がもたらされ得る。下の
図11に示すように、ポジティブコントロールグループでクラスタリングされる場合、スライド画像は、能力基準を満たしているとみなされるため、合格分類に関連付けられ得る。ネガティブコントロールグループでクラスタリングされている場合、スライド画像は、能力基準を満たさないとみなされるため、不合格分類に関連付けられ得る。
【0104】
以下の表4は、分類フェーズが胸腺組織のスライド画像のライブラリに適用されたときの実験実施形態におけるネガティブコントロールグループおよびポジティブコントロールグループのスライド画像からの組織の対応する定性的特徴を表している。
【表4】
【0105】
表5は、ネガティブコントロールグループ(ネガティブ1〜5とラベル付け)とポジティブコントロールグループ(ポジティブ1〜6とラベル付け)とに対応する特性を示す。
【表5】
【0106】
一実施形態では、クラスタリングは、スライド画像内のすべての細胞の核の組成および特徴に基づく。胸腺細胞の場合、胸腺細胞は集団核の大部分を構成するため、分析に寄与する要因となる可能性がある。延髄および皮質胸腺細胞は、フィンガープリントに使用される特徴に基づいて、特徴フィンガープリントに異なるように寄与する。細胞集団における量的な違いは、クラスタリングにおける違いにつながる特徴フィンガープリントの量的な違いにつながる。胸腺細胞の組成は、組成の有意な変動が壊死、線維症、および一般的な分解を示すため、組織の健康状態を表す。クラスタリングは、同様のフィンガープリントパターンを共有するサンプルをグループ化し、したがって、それらの細胞集団の同様の特徴を共有する。フィンガープリントが統計的に大幅に異なるサンプル画像は、異なるグループにあるものである。
【0107】
特徴フィンガープリンティングはスライド画像内のすべての検出可能な核を評価するため、開示される定量分析および特徴フィンガープリント生成のための実施形態は、分類器が細胞集団のシフトを検出することを可能にする。培養中、胸腺細胞の総数は組織内で減少するはずである。ただし、皮質の髄質胸腺細胞に対する相対的な比率は一定に保たれるはずである。この比率の大幅な変更は、不均一な組織の分解または能力の低下を示している可能性がある。細胞集団における有意な変化は、定量的特徴フィンガープリントにおけるシフトとして検出される。皮質髄質胸腺細胞の比率の有意な変化(増加または減少)は、特徴フィンガープリントをネガティブコントロールグループにシフトさせるため、サンプルはネガティブコントロールサンプルでクラスタリングする。
【0108】
図12A〜12Dは、胸腺組織のスライド画像の特定の抽出される特徴に基づく例示的な特徴フィンガープリントを示し得る仮想例である。
図12Aは、核の領域について生成される特徴フィンガープリントにおけるポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられるスライド画像間の差異を示す。
図12Bは、核の周囲長について生成される特徴フィンガープリントにおけるポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられるスライド画像間の差異を示す。
図12Cは、核の積分密度について生成される特徴フィンガープリントにおけるポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられるスライド画像間の差異を示す。
図12Dは、核の真円度について生成される特徴フィンガープリントにおけるポジティブコントロールグループおよびネガティブコントロールグループに関連付けられるスライド画像間の差異を示す。
【0109】
図13は、分類器の例示的な適用からの、ネガティブコントロールグループに関連付けられる胸腺組織の例示的なスライド画像およびポジティブコントロールグループに関連付けられる胸腺組織の例示的なスライド画像への特徴フィンガープリントを示す。面積特徴および積分密度特徴についてのフィンガープリントを含む特徴フィンガープリントは、ネガティブコントロールグループのスライド画像とポジティブコントロールグループのスライド画像との間の皮質胸腺細胞における違いを示す。
【0110】
本発明の好ましい実施形態では、組織の分類されていないスライド画像の定量的組織病理学的評価を実行する方法および定量的組織病理学的評価を実行するように組織分類器を訓練する方法が、以下の例示的な方法で実行され得る。
【0111】
検査される組織に対する培養期間は、所望の再生医療産生物の移植後の陽性の臨床転帰を構成する結果に基づいて選択される。同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産物に関して、培養期間は、組織から胸腺細胞を洗い流すことによって、および/またはアポトーシスによって、組織が胸腺細胞を除去することを可能にする。培養された胸腺組織のTECは、培養時間を通して実質的に維持される。
【0112】
アッセイでは、培養の5〜9日目に採取したサンプルを検査して、培養胸腺組織の放出および移植性に対する適合性を評価する。産生物をよりよく理解し、アッセイの識別能力をよりよく評価するために、データを評価して明確な傾向を判定し得るサンプルを1日目〜21日目およびそれ以降に採取する。
【0113】
例えば、臨床的に培養される胸腺組織サンプルおよび分解される胸腺組織サンプルのバッチは、面積、周囲長、積分密度、および真円度などの組織病理学的特徴について検査され得る。検出される核の数の全体的な傾向が検査され、これは、胸腺細胞が組織から洗い流されるか、アポトーシスを起こすにつれて、時間の経過とともに減少すると予想される。次に、これらのデータは、複数のロットからの異なるスライスが異なる日に検査される場合に、組織面積に対して正規化される。組織切片のサイズはスライス間で異なり、データセットにおいてばらつきを生じさせる可能性があるが、培養日数が増えると一般的な負の傾向が見られ、10日目あたりのデータに視覚的なステップ変化が見られる。以前のデータは、細胞の総数の減少と比較した場合、胸腺細胞の大部分が培養期間の早い段階で枯渇することを示している。次に、培養組織サンプルを経時的研究で分析して、例えば、組織間の変動性を評価し得る。例示を目的として、胸腺間組織の変動性を評価するためのプロセスについて説明する。これには、胸腺上皮細胞および胸腺細胞の評価が含まれる。胸腺間変動ステップで得られるデータが、階層的クラスタ分析に供される。データの訓練セットが確立され、次いで、培養される胸腺組織のグループごとの分析が判定される。これらのデータは、組織の強制分解試験で、および/またはグループごとの判定を、臨床転帰が陰性の不合格の標本に関連付けられるデータのセットと比較することによって得られるデータと比較される。
【0114】
組織の一般的な外観、およびその結果としての組織学的スライドは、選択される培養期間の過程にわたって、例えば、培養胸腺組織の場合は0、5、9、12および21日で変化する。重ねて、培養胸腺組織の例示においては、胸腺細胞が培養胸腺組織から洗い流されるためである。5、9、12および21日目の組織は、積分密度における著しい減少と、胸腺上皮細胞についてのプロファイルにより類似したプロファイルとを示す。非常に高い真円度を有する細胞の数は、培養プロセス全体を通して時間経過とともに減少する。これは、低い真円度をもたらし、核が円形ではなくなり、非常に高い真円度の胸腺細胞を洗い流すアポトーシスが原因である可能性がある。真円度が低い0日目のサンプルの場合、単一の核よりも真円度が低い単一のエンティティとして測定される胸腺細胞の凝集が原因である可能性がある。0日目には、周囲長の高い細胞の割合が高くなり、これは、大きい周囲長の値をもたらす単一の形状としてプログラムにおいて読み取られるセルの塊が原因である可能性がある。周囲長の増加は、胸腺細胞の洗い流しと、培養時間の経過とともにアポトーシスを起こす細胞と、その結果としてのそのイベントによる周囲長の増加との組み合わせである可能性がある。全体として、培養時間の経過にわたる核の特徴は、傾向に対する理論的予測と一致している。データにおける明らかな変化のほとんどが、ロットの意図されたリリース日より前である。これは、変化の多くが培養の最初の数日間に発生し、その後、環境を最大21日間維持できることを示唆している。これは、細胞集団の真の傾向およびそれらが時間経過とともにどのように変化するかを検出するためのアッセイをサポートする。
【0115】
サンプルが胸腺間で類似しているかどうかをよりよく理解するために、胸腺間の変動が検査される。胸腺間変動は、検査されるサンプルが1日目からのものである胸腺内変動と同様の方法で評価し得るが、単一の胸腺に限定されるのではなく、評価にはロット全体のサンプルが含まれる。各サンプルのユークリッド距離は、分離されたデータセット内のすべてのサンプルの中心点まで計算され得る。次に、ANOVAが、胸腺によって中心までの距離で実行される。このような分析は、5日目および9日目のサンプルで実行される。サンプルが胸腺間で類似しているかどうかをよりよく理解するために、胸腺間変動が調査され得る。胸腺ごとに、毎日95%の信頼区間が生成される。同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物を特徴付けるのを助けるために、胸腺上皮細胞のみのより具体的な分析が行われる。胸腺上皮細胞は、同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物の作用機序に重要であると仮定されている。病理医は、胸腺上皮細胞として同定された細胞の核を選択する。胸腺上皮細胞の核は、組織集団における他の細胞とは異なる。TECは一般に大きく、核小体が存在し、核小体は、明るい紫色の外側の核の中心に暗い紫色の点として現れる。次に、既知のマークされた細胞がソフトウェアから個別のデータポイントとして抽出される。このデータを使用して、次の手順を順番に実行できるようにするフィルタが考案され得る。2つのサイズフィルタは、結合された細胞の分割前および分割後の両方で、サイズ範囲ウィンドウ外の細胞を除去する。以下のフィルタリングステップが実行された。
【0116】
最も濃いピクセルの下に含める閾値を定義することにより、最も暗い細胞がデータセットから削除される。次に、面積が50μm
2以下の細胞を除去する。穴が埋められ、結合された細胞を分割するためにウォーターシェッドが適用される。次に、30〜250μm
2の範囲外および真円度0.75未満の細胞を、データセットから除外する。前述のフィルタは、TEC細胞を特徴付けるために生成および制限されたデータセットを用いる画像の分析を可能にする。培養期間の過程にわたって組織内の細胞の総割合を調査すると、TECにおいて一般的に増加する。TECにおける増加は、胸腺細胞が組織から洗い流されるにつれて、残りの細胞の多くがTECであるためである。TECの前述の分析はまた、培養期間を通して組織から洗い流される胸腺細胞の傾向のより良い見方を提供する。同様の分析は、TECの比率が増加するにつれて、培養の過程で胸腺細胞の数が減少するというデータから推測され得る。前述のデータは、グループに分けられたサンプルを示すために使用され得る。グループは、階層クラスタ分析によって生成される。この分析は、類似した特性のデータの有意味のクラスタ(「グループ」と呼ばれる)をもたらす類似性に基づいてデータを繰り返してグループ化することにより、類似した特性を有するサンプルを体系的かつ統計的に識別する。細胞をグループ化するプロセスには、次のステップが必要であった。
【0117】
グループ間の距離が計算される。距離は、グループ間の類似性の尺度である。2つのグループを結合させるコストが計算される。ここでのコストは、グループを結合させることによって追加されるエラーの量である。マージコストが最も少ないグループが結合される。このプロセスは、すべてのデータが1つのグループに結合されるまで繰り返される。結果として得られるデータセットは、本質的に、サンプルが互いにどの程度「関連」または類似しているかのファミリーツリーを示す。ブランチ間の高さは、2つのグループが互いにどの程度関連しているかを示す。水平x軸上の距離は、グラフ化されたときにいずれかの密接な関係を示すものではない。各グループ内のサンプルは統計的に類似しているとみなされ、異なるグループ内のサンプルは統計的に異なるとみなされる。
【0118】
カット高さが異なるグループ間のどこにあるかを判定するために、スクリープロットを使用して、グループ間の距離が最も重要な場所を調査し得る。これにより、サンプル間の最小限の差異がアルゴリズムに過度の影響を与えないことが保証される。差異が小さ過ぎると、サンプルが同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物について現実的であるというよりも類似し過ぎてクラスタリングする必要がないため、将来のサンプルは独立したグループに分かれる可能性が高くなる。あるいは、サンプル間で確実に区別できるように、グループは適切なカットオフを有する必要がある。同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物の場合、組織の性質およびそれ自体が現れる可能性のあるロット間のばらつきのために、不均一性の可能性が高い。以前に陽性の臨床転帰(ここでは生存によって定義される)を示したサンプルを検査し、分解された組織と比較することによって、適切な分化レベルを判定し得る。
【0119】
臨床転帰に関連するほとんどの情報を含む訓練セットが選択され得る。最初は、サンプルは、様々な代表的なR&D研究、ならびに複数の強制分解条件および臨床サンプルから組み込まれる。これらのデータは、良好グループおよび不良グループにクラスタリングされ得る。訓練セットは、ロットリリースについて検査される将来のインプロセスサンプルを表す既知の「良好」サンプルおよび既知の「不良」サンプルに限定されている場合、最も有益であるとみなされ得る。このステップでは、次の方法でサンプルを制限する。
【0120】
サンプルは、培養期間の中間点または5〜9日目からのものでない場合、除去され得る。同種異系の培養された胸腺組織由来の組織の例では、これは、定量的組織学に基づくロット放出のためのインプロセスサンプルが採取され得る場合である。サンプルは、代表的であると考えられているが、調査すべき関連付けられる臨床転帰がないR&Dロットからのものである場合にも、削除され得る。さらに、サンプルは、不良な臨床転帰と関連付けられる場合、削除され得る。サンプルはまた、直交法で分解を確認できなかった場合、強制分解アームから除去され得る。
【0121】
基礎となるデータをグループ化して、基礎となる特徴が様々なクラスタにもたらすものをよりよく理解することができる。グループは、良好な臨床転帰、ならびに不良な臨床転帰に関連する強制的に分解されるサンプルおよび/または組織に関連付けられ得る。異なるパラメータは、強制的に分解されるサンプルおよび/または不良な臨床転帰からの良好な臨床転帰(例えば、中間サイズの面積、高い真円度、および高い周囲長)を有するグループの区別化を促進し得る。
【0122】
例えば、グループは、周囲長が長く、積分密度が高く、面積が大きく、真円度が低い核の割合が大きいことによって特徴付けられ得る。これは、ソフトウェアで独立した細胞として読み取ることができない核の塊の存在が原因である可能性がある。これは、培養期間の初期にまだ多数の胸腺細胞が存在する組織で発生する可能性が高くなる。
【0123】
良好な臨床転帰を有する追加のグループが定義され得る。例えば、グループは、他のグループおよび/またはミッドレンジの積分密度と比較した場合に、高い真円度値および/またはより大きい面積を有する多数の細胞を有することによって指定され得る。これらの値は、培養期間のミッドレンジの健康な生存組織に対して予測される。面積、真円度、積分密度、および周囲長の測定値のヒストグラムは、データから作成され得る。
【0124】
比較のために、5日目および9日目にサンプルが除去される前に、サンプルを胸腺器官培地(TOM)に戻す強制分解試験を実施し得る。これは、同種異系培養された出生後の胸腺組織由来の産生物が、プロセス条件の変化に対してどれほど頑健であるかを示している。すべての培養条件が、使用される手段のいずれかによって検出可能な分解を引き起こす可能性があるわけではない。これらの条件は、組織が機能しなくなったり、生存できなくなったりする時点まで組織に恒久的な損傷を与えることはないと考えられる。分解されるサンプルで予測されるように、真円度が低く、面積が小さく、周囲長が高いセルの割合が高くなっている。これは、生存能力をもはや維持できなくなったために形状が変化し、エッジが縮んで収縮する細胞を示している。グループ内の類似性を示すために、各グループについての変動性の分析により長さされて、「良好」および「不良」(合格対不合格)の分類が判定され得る。前述のステップを使用して、合格および不合格の特性に関連付けられる組織標本の分析が評価され得る。
【実施例】
【0125】
同種異系の培養された出生後胸腺組織由来の産生物(例えば、「RVT−802」)は、通常、レシピエントへの移植の12〜21日前に培養される。この培養期間は、歴史的に、再生医療産生物の移植後に良好な臨床転帰をもたらすことが実証されている。理論に束縛されることを意図していないが、この培養期間は、組織から胸腺細胞を洗い流すか、またはアポトーシスのどちらかによって、組織が胸腺細胞を除去することを可能にすると考えられている。胸腺上皮細胞は培養期間を通して維持される。
【0126】
検証済みのアッセイでは、培養の5〜9日目に採取されるサンプルを検査して、培養胸腺組織の放出の適合性を評価する。産生物をよりよく理解し、アッセイの識別能力をよりよく評価するために、1〜21日目およびそれ以降に採取されるサンプルがソフトウェアプログラムによって実行され、得られたデータを相互に比較して、どの傾向が明らかかを評価した。
【0127】
図14A〜14Dは、臨床的に培養された胸腺組織サンプル(
図14A〜14C)の3つのバッチおよび分解された胸腺組織サンプルを示す。
図14Aに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=11.34、真円度=0.696、周囲長=14.310および積分密度=1889.2。
図14Bに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=11.41、真円度=0.993、周囲長=11.982および積分密度=1912.4。
図14Cに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=10.53、真円度=0.846、周囲長=12.510および積分密度=1707.4。
図14Dに示されているサンプルの面積、周囲長、積分密度、および真円度の4つの特徴は次のとおりである:面積=13.0、真円度=0.352、周囲長=21.556および積分密度=1786.0。各画像における単一の核は円で識別される。
【0128】
検出された核の数の全体的な傾向も調べられ、これは、胸腺細胞が組織から洗い流されるか、アポトーシスを起こすにつれて、時間の経過とともに減少すると予想され、これについては
図15で観察できる。これらのデータは、複数のロットからの異なるスライスが異なる日に検査されたため、組織面積に対して正規化され、組織切片のサイズはスライス間で異なり、データセットにばらつきが生じる可能性があるが、培養日数が増えると一般的な負の傾向が見られ、10日目あたりのデータに視覚的なステップ変化が見られた。以前のデータは、胸腺細胞の枯渇の大部分が、以下に示す細胞の総数の減少と比較した場合、培養期間の早い段階であることを示している。
【0129】
実施例1.培養胸腺組織の経時的研究
組織の一般的な外観、およびその結果としての組織学的スライドは、培養期間の過程をとおして変化する。
図16AおよびB、17AおよびB、18AおよびB、19AおよびB、ならびに20AおよびBに示されている画像は、様々な時間間隔、すなわち、0、5、9、12および21日でのH&E染色スライドにおける培養胸腺組織の外観の違いを示している。画像は40倍の倍率で表示されている。これらの画像およびさらなる分析のために選択された日は、製造プロセスの観点から重要であるとして指定された日からのものである。0日目は受け入れた組織を表す。0日目の組織学は、アイデンティティの目的で採取される。0日目および5〜9日目の組織学的サンプルの両方をホルマリン固定し、パラフィン包埋と切片化のために病理学研究所に持ち込まれた。切片は、ボード認定の病理医によって染色および評価された。
【0130】
図21A〜21Eは、0、5、9、2および21日目のH&E染色された培養胸腺組織の画像であり、0、5、9、12および21日目の核の外観の変化を示している。
図21Aは、胸腺細胞の数が多いことを示す高い積分密度を有する核の高い比率を示している。胸腺細胞が組織から洗い流されると、5日目(
図21B)、9日目(
図21C)、12日目(
図21D)、21日目(
図21E)の組織は、積分密度の著しい減少および胸腺上皮細胞のプロファイルにより類似しているプロファイルを示す。
【0131】
図22は、同種異系の培養された出生後胸腺組織由来の産生物の技術的バッチからの積分密度決定値の時間経過を示している。胸腺細胞が組織から洗い流されると、5日目の組織は、統合密度の著しい減少および胸腺上皮細胞のプロファイルにより類似したプロファイルを示す。エラーバーは平均から1S.D.である。
【0132】
図23に真円度の測定値を示す。非常に高い真円度を有する細胞の数は、培養プロセス全体を通して時間経過とともに減少する。これは、真円度が低い核、および非常に高い真円度の胸腺細胞の洗い流しをもたらすアポトーシスが原因である可能性がある。真円度が低い0日目のサンプルの場合、単一の核よりも真円度が低い単一のエンティティとして測定される胸腺細胞の凝集が原因である可能性がある。エラーバーは平均から1S.D.である。
【0133】
図24に周囲長の測定値を示す。0日目には、周囲長の長い細胞の割合が高くなり、これは、大きい周囲長値をもたらす単一の形状としてのプログラムで読み取られる細胞の塊が原因である可能性がある。周囲長の増加は、胸腺細胞の洗い流しと、培養時間の経過とともにアポトーシスを起こす細胞と、その結果としてのそのイベントによる周囲長の増加との組み合わせである可能性がある。エラーバーは平均から1S.D.である。
【0134】
図25は、調べた4つの変数すべてを考慮した場合に、2つのサンプル間の類似性を測定するためのユークリッド距離(サンプルとグランドセントロイドとの間の誤差の二乗和の平方根)を示している。参考までに、ユークリッド距離が短いほど、2つのサンプルは互いに類似している。エラーバーは平均から1S.D.である。
【0135】
図26は、データの主効果プロットおよび交互作用プロットである。
図26に示すデータによって、培養胸腺組織が時間の経過とともに同様に挙動することが確認される。
【0136】
全体として、培養時間の経過にわたる核の特徴は、傾向に対する理論的予測と一致している。データにおける明らかな変化のほとんどが、ロットの意図されたリリース日より前である。これは、変化の多くが培養の最初の数日間に発生し、その後、環境を最大21日間維持できることを示唆している。これは、細胞集団の真の傾向およびそれらが時間経過とともにどのように変化するかを検出するためのアッセイをサポートする。
【0137】
実施例2:胸腺間変動性試験
サンプルが胸腺間で類似しているかどうかをよりよく理解するために、胸腺間の変動が検査された。胸腺間変動は、検査されるサンプルが1日目からのものである胸腺内変動と同様の方法で評価されたが、単一の胸腺に限定されるのではなく、評価にはロット全体のサンプルが含まれる。各サンプルのユークリッド距離は、分離されたデータセット内のすべてのサンプルの中心点まで計算された。次に、ANOVAが、胸腺によって中心までの距離で実行された。この分析は、5日目および9日目のサンプルで実行された。
【0138】
サンプルが胸腺間で類似しているかどうかをよりよく理解するために、胸腺間の変動が検査された。胸腺間変動は、検査されるサンプルが1日目からのものである胸腺内変動と同様の方法で評価されたが、単一の胸腺に限定されるのではなく、ロット全体のサンプルが含まれる。各サンプルのユークリッド距離は、分離されたデータセット内のすべてのサンプルの中心点まで計算された。次に、ANOVAが、胸腺によって中心までの距離で実行された。この分析は、5日目および9日目のサンプルで実行された。
【0139】
以下の表6からは、9日目のロット間に検出可能な差異はない。5日目の胸腺間にはわずかな統計的差異がある。これらが産生物の品質に差異をもたらす実際的な差異をもたらすかどうかを判定することは困難である。これを異なる方法で評価するために、胸腺ごとに毎日95%の信頼区間が生成された。
図27に示されているように、バッチMFG−058は、5日目では他の組織の信頼区間と重なり合っていないが、9日目までに重なり合う。このロットは他のロットに対する代表的な方法で製造されており、いずれの日も肉眼的組織学的検査で差異は観察されなかった。このように、これは組織間の核分布のわずかな差異に対する方法の感度のアーティファクトである可能性がある。
【表6】
【0140】
実施例3:胸腺上皮細胞の分析
同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物を特徴付けるのを助けるために、胸腺上皮細胞のみのより具体的な分析が行われた。胸腺上皮細胞は、同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物の作用機序に重要であると仮定される。画像が病理医に送信された。病理医は、胸腺上皮細胞として同定された細胞の核を選択した(
図28AおよびBを参照)。胸腺上皮細胞の核は、組織集団の他の細胞とは異なる。TECSは一般に大きく、核小体が存在し、これは、
図28AおよびBにおいて薄い紫色の外側の核の中心内に濃い紫色の点として現れる。
【0141】
既知のマークされたセルが、ソフトウェアから個々のデータポイントとして抽出された。このデータを使用して、次のステップを順番に実行できるようにするフィルタが考案された。2つのサイズフィルタは、結合された細胞の分割前および分割後の両方で、サイズ範囲ウィンドウ外の細胞を除去する。以下のフィルタリングステップが実行された。
【0142】
最も暗いピクセル(染色強度に応じて100〜130〜150〜180ピクセル強度の含まれるピクセル)の下に含める閾値を定義することにより、最も暗い細胞がデータセットから削除された。
【0143】
面積が50μm
2以下の細胞を除去した。
【0144】
穴が埋められ、結合された細胞を分割するためにウォーターシェッドが適用された。
【0145】
30〜250μm
2の範囲外および真円度<0.75の細胞を、データセットから除外した。
【0146】
前述のフィルタは、TEC細胞を特徴付けるために生成および制限されたデータセットを用いる画像の分析を可能にした。培養期間の過程にわたって組織内の細胞の総割合を調査すると、TECにおいて一般的に増加する。TECにおける増加は、胸腺細胞が組織から洗い流されるにつれて、残りの細胞の多くがTECであるためである。この変化は、
図30において、H&Eスライドの総細胞数に対するTECの比率で視覚化できる。これらの判定はまた、TECが産生物の有効性に必要とされる培養期間を通して維持されることを示している。
図31に示すように、組織面積に対して正規化される場合に、同じ傾向が見られる。分析セットからTECを分類および抽出するためのデータは、1日当たり1つのサンプルで行われ、サンプル間のばらつきがある。
【0147】
実施例4:胸腺細胞分析
実施例3のTEC分析はまた、培養期間を通して組織から洗い流される胸腺細胞の傾向のより良い見方を与える。胸腺細胞についても同様の分析は行われていないが、上記のデータから、TECの比率が増加するにつれて、培養の過程で胸腺細胞の数が減少することが推測され得る。この変化はまた、複数の倍率でのH&E染色スライドの画像でも視覚化され得る(例えば、
図16〜21を参照)。これらの画像の胸腺細胞は、小さい暗い紫色の核である。
図16Aおよび16Bの0日目の画像には、それらは多数あり、
図17Aおよび17Bに示すように、5日目までに著しい減少がある。これは、胸腺細胞マーカーであるL−セレクチン(REP−016)のサイトカインおよびケモカイン分析だけでなく、多くの病理学の報告でも指摘されてきた。全体的なデータの傾向も、前述の定量分析を使用したこの分析と一致している。
【0148】
実施例5:階層クラスタ分析
例1〜4に提示されるデータは、
図32に示すように4つのグループに分けられたサンプルを示している。
図32に示されているグループは、階層クラスタ分析によって生成された。この分析は、類似した特性のデータの有意味のクラスタ(「グループ」と呼ばれる)をもたらす類似性に基づいてデータを繰り返してグループ化することにより、類似した特性を有するサンプルを体系的かつ統計的に識別する。細胞をグループ化するプロセスには、次のステップが必要であった。
【0149】
グループ間の距離が計算される。距離は、グループ間の類似性の尺度である。
【0150】
2つのグループを結合させるコストが計算される。ここでのコストは、グループに結合させることによって追加されるエラーの量である。
【0151】
マージコストが最も少ないグループが結合される。
【0152】
このプロセスは、すべてのデータが1つのグループに結合されるまで繰り返される。
【0153】
結果として得られるデータセットは、基本的に、サンプルが互いにどの程度「関連」または類似しているかのファミリーツリーを示す。ブランチ間の高さは、2つのグループが互いにどの程度関連しているかを示す。水平x軸上の距離は、いずれかの密接な関係を示すものではない。これの例示については、
図32を参照されたい。
図32は、例としてグループ「C」と「D」との間の距離を示すクラスタ樹状図である。強調表示された緑および赤のボックスは、単一のグループ化を示す。これは、0.43のカットオフy軸の高さに基づいている。この例では、グループCとDは0.6の距離にあるため、2つの別個のグループであるみされる。各グループ内のサンプルは統計的に類似しているとみなされ、異なるグループ内のサンプルは統計的に異なるとみなされる。
【0154】
カット高さが異なるグループ間のどこにあるかを判定するために、スクリープロットを使用して、グループ間の距離が最も重要な場所を調査し得る。これにより、サンプル間の最小限の差異がアルゴリズムに過度の影響を与えないことが保証される。差異が小さ過ぎると、サンプルが同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物について現実的であるというよりも類似し過ぎてクラスタリングする必要がないため、将来のサンプルは独立したグループに分かれる可能性が高くなる。あるいは、サンプル間で確実に区別できるように、グループは適切なカットオフを有する必要がある。同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物の場合、組織の性質およびそれ自体が現れる可能性のあるロット間のばらつきのために、不均一性の可能性が高い。以前に陽性の臨床転帰(ここでは生存によって定義される)を示したサンプルを検査し、分解された組織と比較することによって、適切な分化レベルを判定し得る。
【0155】
実施例6:訓練セット判定
好ましい実施形態では、臨床転帰に関連するほとんどの情報を含む訓練セットが選択された。最初は、サンプルは、様々な代表的なR&D研究、ならびに複数の強制分解条件および臨床サンプルから組み込まれた。これにより、多くの良好なグループおよび不良グループを含むクラスタリング分析がもたらされた(
図33を参照)。アッセイのさらなる開発の後、ロットリリースについて検査される将来のインプロセスサンプルを表す既知の「良好」サンプルおよび既知の「不良」サンプルに限定した場合、訓練セットが最も有益であると判定された。これは、次のようにサンプルを制限する。
【0156】
サンプルは、培養期間の中間点または5〜9日目からのものでない場合、除去された。これは、定量的組織学に基づくロットリリースのためのインプロセスサンプルが採取される場合である。
【0157】
サンプルは、代表的であると考えられているが、調査すべき関連する臨床転帰がないR&Dロットからのものである場合、除去された。
【0158】
サンプルは、不良な臨床転帰と関連している場合、除去された。これらのサンプルは、使用中の定性的組織学的分析に基づいて施設から放出されたため、「不良」とは考えられず、ロット自体が臨床転帰の原因であると考えられるケースはなかった。これらのケースは、機能したという明確な証拠がないため、除去された。
【0159】
サンプルは、直交法で分解を確認できなかった場合、強制分解アームから除去された。これらのサンプルは病理医によって検査され、使用済み培地サンプルはサイトカインとケモカインについて検査され、別の方法で「不良」であることが確認されなかったサンプルは、最終訓練セットから除外された。同種異系の培養された出生後の胸腺組織由来の産生物は、様々な条件に対して耐性があることが示されているため、「良好な」組織が得られる可能性が依然としてあるケースを検出するために分析を歪曲してはならない。分析セットに残された条件は、−20℃で凍結したサンプル、または培地を10XPBSと交換したサンプルからのものであった。分解条件および結果の完全なリストについては、表7を参照されたい。
【表7】
【0160】
最終訓練セットで使用された残りのサンプルは、1年で生存が示された臨床症例からのものか、R&D組織の分解が確認された症例からのものである。得られたクラスタを
図33に示す。
【0161】
これにより、最初は5つのクラスタ、臨床的に良好なサンプルを有する4つのクラスタ、および確認された不良サンプルを有する1つのクラスタがもたらされた。良好なクラスタのうちの1つには、2つのサンプルのみが含まれ、それ自体には大きな変動性がなかったため、モデルを活用してシフトを引き起こした。したがって、新しいサンプル検査されるとき、これら2つのサンプルにより、他のクラスタが移動して、これらのサンプルを適切にグループ化できる可能性が高くなる。これを試験するために、各サンプルの体系的な除去とその後の再クラスタリングを検査した。これらのサンプルのいずれかが、分離された場合、結果として得られるサンプルをシフトさせることがわかった。そのため、これらのサンプルは除去された。これにより、独立してクラスタリングするこれら2つの組織に類似した追加のサンプルがもたらされ得るが、全体的な結果は、比較するためのより堅牢なアルゴリズムおよび訓練セットになると判断された。これらのサンプルを将来のサンプルと組み合わせて使用して、後日、データセットを拡張できるときにバケットを再評価し得る。ソフトウェアで検証された最終的な訓練ライブラリを
図34に示す。
【0162】
実施例7:グループごとの分析
図34に示されている4つのグループの基礎となるデータを調べて、基礎となる特徴が様々なクラスタにどのような結果をもたらすかをよりよく理解しようとした。グループは、グループ1、2、3および4と呼ばれる。上記の
図32の樹状図は、どのグループ名が各クラスタに属するかをマッピングしているが、追加の参考のために、グループ1、2、および3は良好な臨床転帰を有するサンプルからのものであり、グループ4は強制分解サンプルで構成されている。各グループの組織からの代表的な画像を
図35A〜35Dに示す。
図35A〜35Dは、最終サンプルライブラリの各クラスタグループについての代表的な画像を示す。グループ1(
図35A)、2(
図35B)、および3(
図35C)は、臨床転帰が良好なサンプルで構成されている。グループ4(
図35D)は、確認された分解サンプルで構成されている。グループ1のサンプルはLOT−345からのものであり、グループ2のサンプルはLOT−160からのものであり、グループ3のサンプルはLOT−194からのものであり、グループ4のサンプルはFD.SP17−40348−C1,1からのものである(分解方法:−20℃で凍結)。
【0163】
互いに隣り合うすべてのクラスタのグラフ表示を
図36A〜36Dに示す。
図36Aは、面積決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
図36Bは、真円度決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
図36Cは、積分密度決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
図36Dは、周囲長決定値に関するデータのクラスタのグラフ表示である。
【0164】
図36A〜36Dは、最終サンプルライブラリにおける各クラスタグループの代表的な画像を示す。グループ1、2、および3は、臨床転帰が良好なサンプルで構成されている。グループ4は、確認された分解サンプルで構成されている。グループ1のサンプルはLOT−345由来、グループ2のサンプルはLOT−160由来、グループ3のサンプルはLOT−194由来、グループ4のサンプルはFD.SP17−40348−C1.1(分解方法:−20℃で凍結)由来である。
【0165】
図36A〜36Dにプロットされたデータからわかるように、様々なパラメータが、良好な臨床転帰(例えば、中程度のサイズの面積、高い真円度、および高い周囲長)を有するグループの分化を促進する。強制的に分解されるサンプルはまた、グラフに赤いバーで示されているように、他のグループとは多くの点で著しく異なる。このデータは、良好な臨床転帰をもたらす複数のデータセットがあることを示している。データセットに現在捕捉されていないために、いずれのグループにもクラスタリングされないサンプルが良好または不良に見える可能性がある他の方法があり得る。
【0166】
グループ1.グループ1は最大のクラスタである。それは、良好な臨床転帰を有する19個の異なる組織で構成されている。グループ1は、周囲長が大きく、積分密度が高く、面積が大きく、真円度が低い核の割合が大きいことを特徴としている。これは、ソフトウェアで独立したセルとして読み取ることができない核の塊の存在が原因である可能性がある。これは、培養期間の初期にまだ多数の胸腺細胞が存在する組織で発生する可能性が高くなる。盲検試験が実施されたとき、0日目の組織からのサンプルがグループ1にクラスタリングされ、それによって上記の理論が支持される。このアッセイが存在する多数の胸腺細胞を有する組織を拒絶するようには見えないが、グループ1のサンプルは、培養期間の終わりに移植されたときに良好な臨床転帰を有した。
【0167】
図37は、強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ1からの画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【0168】
図38は、グループ1の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【0169】
図39は、グループ1の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【0170】
図40は、グループ1の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【0171】
図41は、グループ1の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【0172】
グループ2.
グループ2には、良好な臨床転帰を有する10個のロットの組織が含まれている。グループ2および3両者は、真円度の値が高い細胞の割合が大きい。グループ2はまた、グループ3および4と比較した場合、面積が大きく、中程度の積分密度の細胞を有するように見える。これらの値は、グループ2を形成するサンプルによって示されるように、中程度の培養期間で健康な生体組織に相当する。面積、真円度、積分密度、周囲長の測定値のヒストグラムを
図43〜46に示す。
【0173】
図42は、強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ2の画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【0174】
図43は、グループ2の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【0175】
図44は、グループ2の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【0176】
図45は、グループ2の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【0177】
図46は、グループ2の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【0178】
グループ3.
グループ3は、良好な臨床転帰を示した6個のロットで構成されている。グループ2と同様に、グループ3は真円度の高い細胞の割合が大きく、胸腺細胞および全体的な細胞の生存率の両方を示している。グループ3は、最小面積のセルの割合が最も高く、積分密度の範囲も低くなっている(第2および第3のビン)。
【0179】
図47は、強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ3からの画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【0180】
面積、真円度、積分密度、周囲長の測定値のヒストグラムを
図48〜51に示す。
【0181】
図48は、グループ3の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【0182】
図49は、グループ3の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【0183】
図50は、グループ3の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【0184】
図51は、グループ3の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【0185】
グループ4.
グループ4は、4つの強制分解サンプルで構成されている。ここに示す分解条件は、−20℃で4時間凍結したサンプルと、培地を10X PBSと24時間置き換えたサンプルに対するものである。これらの条件の両者とも、定性的組織学による著しい分解と、TECの健全性のバイオマーカーであるCCL21を検査するときに著しい変化を示した。すべての強制分解条件および各方法についての結果の表を以下に示す。
【0186】
図52は、強調表示された、面積10(赤)、真円度0.9(緑)、周囲長18(青)、および積分密度1500(黄色)の特徴を有するグループ4からの画像である。これらのグループは一般に、グループ間で最大の変動を示す。
【0187】
面積、真円度、積分密度、周囲長の測定値のヒストグラムを
図53〜56に示す。
【0188】
図53は、グループ4の細胞の面積測定値を示すヒストグラムである。
【0189】
図54は、グループ4の細胞の真円度測定値を示すヒストグラムである。
【0190】
図55は、グループ4の細胞の積分密度測定値を示すヒストグラムである。
【0191】
図56は、グループ4の細胞の周囲長測定値を示すヒストグラムである。
【0192】
実施例8:強制分解試験。
強制分解試験を実施し、5日目および9日目にサンプルを除去する前に、サンプルを胸腺器官培地(TOM)に戻した。これは、同種異系培養された出生後の胸腺組織由来の産生物が、プロセス条件の変化に対してどれほど頑健であるかを示している。サンプルが55℃に加熱されることが、従来の組織学の現在の方法では検出できなかったことに注目するのは興味深いことである。これは、組織が加熱されることにより、組織病理学的観点から組織が本質的に固定されたためと考えられる。ただし、CCL21分析では分解が明らかであった。試験された条件の多くは、使用された手段のいずれかで検出可能な分解を引き起こさなかった。これらの条件は、組織が機能しなくなったり、生存できなくなったりする時点まで組織に恒久的な損傷を与えることはなかったと考えられる。産生物が上記の条件のいずれにもさらされないようにするためのプロセス制御がある。分解されるサンプルで予測されるように、真円度が低く、面積が小さく、周囲長が高いセルの割合が高くなっている。これは、生存能力をもはや維持できなくなったために形状が変化し、エッジが縮んで収縮する細胞を示している試験の強制分解条件を表7に示す。
【0193】
グループ内の類似性を示すために、各ビンについての変動性の分析により検査した。グループ4は、ビン内のサンプル全体でビン内で最も高い標準偏差を定期的に示した。これはおそらく、そのグループ内のサンプルが少ないためであるが、組織が分解して一貫性が低下するため、組織にとっても予測されないことではない(
図57を参照)。
【0194】
図57は、ビンごとのグループ間およびグループ内の変動性の分析のプロットである。データは、先ずグループごとに、次にパラメータについてのビンごとにx軸上に示される。各パラメータについての上のグラフは個々についてのものであり、下のグラフはそのグループの標準偏差である。両者ともデータの広がりを視覚化するために使用できる。
【0195】
略語
AE1/AE3:すべてのサイトケラチンと反応して上皮細胞を同定する2つの抗体のカクテル。
【0196】
CD3:胸腺細胞を含むT細胞と反応する抗体。CK14:再増殖の可能性があると仮定された上皮細胞のサブセットにおける細胞骨格の成分であるサイトケラチン14のみを検出する抗体。
【0197】
FFPE:ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片。
【0198】
H&E:ヘマトキシリンおよびエオシン、哺乳類の組織切片の光学顕微鏡検査に最も一般的に使用される組織学的染色。
【0199】
Ki−67:Ki−67抗体は、細胞増殖に関連するタンパク質であるKi−67抗原を認識する。
【0200】
TEC:胸腺上皮細胞。
【0201】
本出願で議論される参考文献は、それらの意図された目的のために、参照によってその全体が組み込まれ、その文脈に基づいて明らかである。
【0202】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。これらの刊行物の開示は、その全体が参照によって本出願に組み込まれる。
【0203】
本明細書に引用されるありとあらゆる特許、特許出願、刊行物、およびアクセッション番号の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0204】
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されてきたが、前述の説明は、例示することが意図され、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。他の態様、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲内である。
【0205】
前述の実施形態および利点は、単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本教示は、他のタイプの装置、実験、および外科的手順に容易に適用することができる。また、本発明の実施形態の記載は、例示的であることが意図され、特許請求の範囲を限定しないことが意図される。多くの代替、変更、および変形が、当業者には明らかであろう。
【0206】
本開示は、様々な実施形態を参照して開示されてきたが、他の実施形態およびこれらの変形が、本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような実施形態および同等の変形を含むと解釈されることが意図される。
【0207】
前述の明細書は、当業者が実施形態を実施することを可能にするために十分であると考えられる。前述の説明および実施例は、特定の実施形態を詳述し、発明者によって企図される最良の形態を説明する。しかしながら、前述がいかに詳細に本文中に出現しても、実施形態は、多くの方法で実施され得、添付の特許請求の範囲およびその同等物に従って解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0208】
参考文献
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Markert ML,et al.,2004,“Postnatal thymus transplantation with immunosuppression as treatment for DiGeorge syndrome,” Blood 104(8):2574−2581.
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