特許第6984072号(P6984072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984072
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイスのための皮下送達機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20211206BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   A61M5/142 522
   A61M5/20 550
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-526715(P2021-526715)
(86)(22)【出願日】2019年9月24日
(65)【公表番号】特表2021-529652(P2021-529652A)
(43)【公表日】2021年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2019075765
(87)【国際公開番号】WO2020069926
(87)【国際公開日】20200409
【審査請求日】2021年5月14日
(31)【優先権主張番号】18197886.7
(32)【優先日】2018年10月1日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ジャスト・マニュエル
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−525428(JP,A)
【文献】 特表2016−530016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイス(1)のための皮下送達機構において、
ハウジングと、
前記ハウジング内に移動可能に装着された針ホルダー(12)と、
前記針ホルダーに固定された針(10)と、
前記針ホルダー(12)を前記ハウジングに対して後退位置と延出送達位置との間で移動させるように構成された針作動機構(20)と、
を含み、
前記針作動機構(20)は、前記ハウジングに対して旋回可能に装着された第1のレバー(30)と、前記第1のレバーの遠位部分に係合して前記第1のレバーを回転させるように構成された、前記ハウジングに対して回転可能に装着された回転式アクチュエータ(22)と、を含み、
前記針作動機構(20)は、前記ハウジングに対して旋回可能に装着された第2のレバー(40)をさらに含み、前記第2のレバーは、前記第1のレバー(30)の回転によって前記第2のレバーが反対の回転方向に回転するように前記第1のレバーに連結され、
前記第2のレバーの係合端部(45)は、前記第1のレバーの回転時に前記針ホルダー(12)に係合して前記針(10)を前記後退位置と前記延出送達位置との間で移動させることを特徴とする、皮下送達機構。
【請求項2】
前記第1のレバーの回転軸(A1)は、前記第2のレバーの回転軸(A2)と平行である、請求項1に記載の皮下送達機構。
【請求項3】
前記第2のレバーの前記回転軸(A2)は、前記回転式アクチュエータの回転軸と同軸である、請求項2に記載の皮下送達機構。
【請求項4】
前記第1のレバー(30)は、前記ハウジングに固定されるかまたは前記ハウジングと一体的に形成された第1の支持部材(33)上に回転可能に装着され、前記第2のレバーは、第2の支持部材(43)上に回転可能に装着され、前記第2の支持部材は、
前記ハウジングに固定されるかもしくは前記ハウジングと一体的に形成され、前記回転式アクチュエータ(22)を回転可能に支持するか、または、
前記回転式アクチュエータの一部を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の皮下送達機構。
【請求項5】
前記第1のレバー(30)は、第1の支持部材(33)の周りに旋回可能に装着された旋回部分(32)と、前記旋回部分から係合端部(35)まで延びるアーム(34)と、を含み、前記回転式アクチュエータ(22)は、前記第1のレバー(30)の前記係合端部(35)に係合するように構成されたキャッチ(26)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の皮下送達機構。
【請求項6】
前記第2のレバー(40)は、第2の支持部材(43)の周りに旋回可能に装着された旋回部分(42)と、前記旋回部分から前記針ホルダー(12)の連結部分(16)に連結された係合端部(45)まで延びるアーム(44)と、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の皮下送達機構。
【請求項7】
前記針ホルダー(12)の前記連結部分は、前記第2のレバーの前記係合端部を受容するスロットの形態である、請求項6に記載の皮下送達機構。
【請求項8】
前記第1のレバーの係合端部(35)は、前記第2のレバー上の連結インターフェース(46)に係合し、前記連結インターフェースは、前記第2のレバーの旋回部分(42)の近位で、前記第2のレバーの係合端部(45)から遠位に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の皮下送達機構。
【請求項9】
前記連結インターフェース(46)は、
前記第2のレバー(40)上に形成され、前記第1のレバーの係合端部を中に挿入可能に受容する、軸方向に延びるスロット、または
前記第2のレバー(40)上に形成され、前記第1のレバーの係合端部の一部に形成されたスロットに挿入可能に受容される、軸方向に延びる突起、
を含む、請求項8に記載の皮下送達機構。
【請求項10】
前記針ホルダー(12)は、前記第1の支持部材(33)と前記第2の支持部材(43)との間に配置されている、請求項に記載の皮下送達機構。
【請求項11】
薬剤送達デバイス(1)において、
必要とする患者に投与される薬剤を収容する薬剤カートリッジ(3)を受容するように構成された送達ユニット(2)を含み、前記送達ユニットは、請求項1〜10のいずれか一項に記載の皮下送達機構をさらに含む、薬剤送達デバイス(1)。
【請求項12】
前記ハウジングは、ベース壁(5)と、前記ベース壁から直立する針ホルダーガイド(6)と、を含み、前記皮下送達機構の前記針ホルダー(12)は、前記針ホルダーガイド(6)にスライド可能に連結されたガイド部材(14)を含む、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、針作動機構を有する薬剤送達デバイスのための皮下送達機構、およびそのような皮下送達機構を含む薬剤送達デバイスに関する。
【0002】
〔関連技術の説明〕
針作動機構を有する薬剤送達デバイスは、WO2015015379に記載されている。前述の文献に記載された薬剤送達デバイスにおける針作動機構は、ポンプ駆動装置によって作動され得、かつプレストレスを施されたばねの高いばね力を克服すること、または針の係合および後退のための複雑な機構を必要としない、信頼性があり安全な針作動機構を有利に提供する。
【0003】
それにもかかわらず、特定の適用における上述の針作動機構の欠点は、レバーアームが効率的な動作のためにある特定のサイズを必要とすることである。特に濃縮インスリンのような非常に少量でポンピングされる薬剤のための、小型パッチデバイスのような非常に小型の薬剤送達デバイスについては、上述の機構は十分にコンパクトではない。
【0004】
したがって、単純で信頼性のある針作動機構の利点の恩恵を受けながら、針の後退位置と延出送達位置との間の距離を減少させることなく、特にコンパクトな構成でこれを提供することが有利であろう。
【0005】
〔発明の概要〕
上記を鑑みて、本発明の目的は、コンパクトで安全でありかつ信頼性のある針作動機構を備えた薬剤送達デバイスを提供することである。
【0006】
製造するのに経済的な薬剤送達デバイスを提供することが有利である。
【0007】
装着するのに快適で、使用しやすい薬剤送達デバイスを提供することが有利である。
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載の薬剤送達デバイスのための皮下送達機構を提供することによって達成された。
【0009】
本明細書には、薬剤送達デバイスのための皮下送達機構が開示され、これは、ハウジングと、ハウジング内に移動可能に装着された針ホルダーと、針ホルダーに固定された針と、針ホルダーをハウジングに対して後退位置と延出送達位置との間で移動させるように構成された針作動機構と、を含む。針作動機構は、ハウジングに対して旋回可能に装着された第1のレバーと、第1のレバーの遠位部分に係合して第1のレバーを回転させるように構成された、ハウジングに対して回転可能に装着された回転式アクチュエータと、を含む。針作動機構は、ハウジングに対して旋回可能に装着された第2のレバーをさらに含み、これは、第1のレバーの回転によって第2のレバーが反対の回転方向に回転するように第1のレバーに連結され、第2のレバーの係合端部は、第1のレバーの回転時に針ホルダーに係合して針を後退位置と延出送達位置との間で移動させる。
【0010】
有利な実施形態では、第1のレバーの回転軸は、回転式アクチュエータの回転軸と同軸である第2のレバーの回転軸と平行である。
【0011】
有利な実施形態では、第1のレバーは、ハウジングに固定されるかまたはハウジングと一体的に形成された第1の支持部材上に回転可能に装着され、第2のレバーは、第2の支持部材上に回転可能に装着され、第2の支持部材は、
ハウジングに固定されるかもしくはハウジングと一体的に形成され、回転式アクチュエータを回転可能に支持するか、または、
回転式アクチュエータの一部を形成する。
【0012】
有利な実施形態では、第1のレバーは、第1の支持部材の周りに旋回可能に装着された旋回部分と、旋回部分から係合端部まで延びるアームと、を含み、回転式アクチュエータは、第1のレバーの前記係合端部に係合するように構成されたキャッチを含む。
【0013】
有利な実施形態では、第2のレバーは、第2の支持部材の周りに旋回可能に装着された旋回部分と、旋回部分から針ホルダーの連結部分に連結された係合端部まで延びるアームと、を含む。
【0014】
有利な実施形態では、針ホルダーの連結部分は、第2のレバーの係合端部を受容するスロットの形態である。
【0015】
有利な実施形態では、第1のレバーの係合端部は、第2のレバー上の連結インターフェースに係合し、この連結インターフェースは、第2のレバーの旋回部分の近位で、第2のレバーの係合端部から遠位に配置される。
【0016】
有利な実施形態では、連結インターフェースは、
第2のレバー上に形成され、第1のレバーの係合端部を中に挿入可能に受容する、軸方向に延びるスロット、または、
第2のレバー上に形成され、第1のレバーの係合端部の一部に形成されたスロットに挿入可能に受容される、軸方向に延びる突起、
を含む。
【0017】
有利な実施形態では、針ホルダーは、第1の支持部材と第2の支持部材との間に配置される。
【0018】
本明細書では、薬剤送達デバイスも開示されており、これは、必要とする患者に投与される薬剤を収容する薬剤カートリッジを受容するように構成された送達ユニットを含み、この送達ユニットは、上記実施形態のいずれかに記載されるような皮下送達機構をさらに含む。
【0019】
一実施形態では、ハウジングは、ベース壁と、ベース壁から直立する針ホルダーガイドと、を含み、皮下送達機構の針ホルダーは、針ホルダーガイドにスライド可能に連結されたガイド部材を含む。
【0020】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】本発明による薬剤送達デバイスの一実施形態の斜視図である。
図1b図1aのデバイスの斜視分解組立図である。
図2a】針が後退位置にあるときの、本発明による皮下送達機構の一実施形態の斜視図である。
図2b】針が延出送達位置にあるときの図1aと同様の図である。
図3a図2aの正面図である。
図3b図2bの正面図である。
図4a図2aの上面図である。
図4b図2bの上面図である。
図5a】針が後退位置にあるときの、本発明による皮下送達機構の別の実施形態の斜視図である。
図5b】針が延出送達位置にあるときの図5aと同様の図である。
図6a図5aの正面図である。
図6b図5bの正面図である。
図7】本発明の一実施形態による皮下送達機構のレバーの相対的寸法を示す概略図である。
【0022】
〔例示的な実施形態の詳細な説明〕
図面、特に図1a、図1bを参照すると、薬剤送達デバイス1は、送達ユニット2と、ベースユニット4と、を含む。一実施形態では、送達ユニット2は、使い捨てユニット2であり、再利用可能とすることができるベースユニット4に取り外し可能に接続されているが、他の実施形態では、ベースは、単一の使い捨てユニットとして送達ユニットと共に形成され得ることが理解されよう。
【0023】
薬剤送達デバイスは、一実施形態では、患者の皮膚に装着するための、使用前は剥離フィルム9で覆われた粘着性ベースを有するパッチポンプデバイスであってよい。粘着性ベースは、有利には、使い捨ての送達ユニット2のハウジング部7上に設けてもよい。
【0024】
送達ユニット2は、流体を経皮的に送達する皮下送達機構と、患者に投与される流体を収容するリザーバを有する薬剤カートリッジ3と、リザーバから皮下送達機構に流体を移送するポンプ5と、上記構成要素を支持する支持部材またはハウジング7と、を含む。
【0025】
ベースユニット4は、制御ポンプ駆動装置、制御電子機器および電源(バッテリ)を含むことができる。ポンプ駆動装置は、送達ユニットのポンプ5に連結してポンプ5を駆動する機械的動力を提供するインターフェースを含む。
【0026】
皮下送達機構は、針ホルダー12と協働して、針ホルダー12に接続された針10を後退位置から延出送達位置まで移動させるように構成された針作動機構20を含む。
【0027】
針作動機構20は、回転式アクチュエータ22と、ハウジング7に対して旋回可能に装着された第1のレバー30と、ハウジング7に対して旋回可能に装着された第2のレバー40と、を含む。
【0028】
第1のレバー30は、一実施形態では、ハウジング7に固定的に接続されるかまたはハウジング7と一体的に形成され得る第1の支持部材33に旋回可能に装着され得、第2のレバー40は、ハウジング7に固定的に接続されるかまたはハウジング7と一体的に形成され得る第2の支持部材43に旋回可能に装着され得る。
【0029】
変形例では、第1の支持部材33および第2の支持部材43のいずれかまたは両方が、それぞれのレバーの回転軸を中心としてハウジング7と回転可能に接続されてもよい。レバー30、40はハウジングに対して回転するので、固定支持体上で、またはハウジングに対してやはり回転する支持体上で、回転することができる。例えば、回転式アクチュエータ22の一部によって第2の支持部材を形成してもよい。
【0030】
好ましい実施形態では、第1のレバー30の回転軸A1は、回転式アクチュエータの回転軸と同軸である第2のレバー40の回転軸A2と平行である。しかしながら、変形例において、第2のレバーは、回転式アクチュエータ22と同軸でない軸の周りに旋回可能に装着され得ることに留意されたい。
【0031】
本発明によるデバイスは、単一のレバーを有するシステムと比較して針ホルダーの動きを増幅するために第2のレバーを組み込んでいる。図7に示すように、第2のレバー40は距離c1で第1のレバー30と係合し、針ホルダーは第2のレバーの回転軸A2から距離c2で第2のレバーに連結される。針ホルダー12の並進運動変位はh3であり、これは第1のレバー30の変位h2によって規定される。針ホルダー12の並進運動における移動量は、h3=h2*(c2/c1)で表すことができる。移動量h2は、切片定理(intercept theorem):h2=h1*(b2/b1)を用いて近似することができ、ここで、b1は、第1の回転軸A1から回転式アクチュエータ22とのアーム34の係合までの距離であり、b2は、第1の回転軸A1から第2のレバー40とのアーム34の係合までの距離である。h2を置き換えると、針ホルダーの移動量はh3=h1×(b2/b1)×(c2/c1)となる。
【0032】
パラメータb1、b2、c1、c2は、システム全体のサイズによって束縛される。具体的には、次のとおりである。
・b2+c1〜=D1(ここで、D1は、両レバー30、40の回転軸A1、A2間の距離である)
・c2+R_fix<D1(ここで、R_fixは、第1のレバーの取付具(fixture)の半径である)
・b2+R_act<D2(ここで、R_actは回転式アクチュエータの半径であり、D2は第1のレバーの回転軸と回転式アクチュエータの回転軸との間の距離である)
・b1+R_act=D2
【0033】
第1のレバー30は、第1の支持部材33に装着された旋回部分32と、そこから係合端部35まで延びるアーム34と、を含む。第2のレバー40は、第2の支持部材43に装着された旋回部分42と、そこから係合端部45まで延びるアーム44と、を含む。第2のレバー40は、第1のレバー30の係合端部35に係合するように、第2のレバーのアーム44上に連結インターフェース46をさらに含み、第1のレバー30が第1の回転方向に回転すると、第2のレバー40が第1の回転方向とは反対の第2の回転方向へ回転する。
【0034】
連結インターフェース46は、2つのアーム34、44間の旋回連結機能を達成するために異なる構成を有してもよい。連結インターフェースと第2のレバーのアームとは、例えば一体部を形成してよく、第1のレバー30のアーム34から軸方向に突出して間にスロットを形成する第1の延長部46aおよび第2の延長部46bを含み得、そのスロットの中に第2のレバーの係合端部35が挿入される。変形例(不図示)では、第1のレバーのアーム34は、第2のレバーの一部を中に受容する溝またはスロットを形成する軸方向延長部を含むことができる。第1のレバー30および第2のレバー40は、回転式アクチュエータ22によって第1のレバーが回転されるときに第2のレバーの回転を与えるように構成された種々の他の相補的な連結インターフェース部分、例えば、第1のレバーおよび第2のレバーのうちの一方における軸方向に延びるピンであって、第1のレバーおよび第2のレバーのうちの他方におけるスロットに受容されるもの、を含むことができる。
【0035】
第1のレバー30の旋回部分32は、例えば、第1の円筒状支持部材33の周囲に装着されたリング状の旋回部分とすることができる。また、第2のレバー40の旋回部分42も、回転式アクチュエータ22の側面に隣接して第2の円筒状支持部材43の周囲に装着されたリング状の旋回部分とすることができる。あるいは、第2のレバー40のリング状の旋回部分42を、回転式アクチュエータ22の周方向外側リム18の周囲に装着してもよい。
【0036】
図示の実施形態では本質的には周方向外側リム24を有するディスクまたはホイールの形態である、回転式アクチュエータ22は、回転式アクチュエータ22が回転すると第1のレバー30の係合端部35に係合するキャッチ26を備える。キャッチ26は、外側リム24の凹部またはノッチによって形成され、よって、第1のレバー30の係合端部35の上面および下面とそれぞれ係合するキャッチエッジ26a、26bを提供する。図3aおよび図3b(一実施形態)に、また図6a、図6b(別の実施形態)に示すように、後退位置および延出位置における係合端部35は、ノッチ26内に延びる。
【0037】
図5a、図5b、図6aおよび図6bで最もよく分かるように、第1のレバー30は、ある一定の力で、回転式アクチュエータ22と絶えず機械的に接触しているように構成され得る。この接触は、送達ユニット2の動作寿命の間維持され得る。このため、第1のレバー30は、例えば、第1のレバー30の係合部分34のそれぞれの側に位置する第1のばねアーム36および第2のばねアーム38を備えることができる。
【0038】
しかしながら、回転式アクチュエータ22は、後退位置から延出位置に移動する際に第1のレバー30を押し下げる要素を提供するか、または、レバー30に係合してレバーを延出位置から後退位置まで上方に移動させる要素を有する、種々の他の形態および形状を有してもよく、係合端部35も、前述の動きを行うために回転式アクチュエータ22のキャッチ26に相補的な種々の形状および形態を有してもよいことが理解されよう。
【0039】
好ましい実施形態では、回転式アクチュエータ22は、回転ポンプエンジンのロータ部分に連結されるか、またはこれと一体的に形成されてよい。本発明と共に有利に使用することができる適切なポンプエンジンおよび駆動ユニットは、WO2005/039674に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。したがって、後退位置から延出送達位置への針の作動は、薬剤送達デバイスの初期使用時にポンプロータをポンピング方向に回転させることによって行われ得、薬剤送達デバイスの使用終了時の針の後退は、ポンプロータの方向を反転させることによって行われ得る。
【0040】
しかしながら、他の回転ポンプエンジンおよびポンプ駆動装置が使用され得ることが認識されるであろう。さらに、回転式アクチュエータは、薬剤送達ポンプとは独立した駆動装置によって駆動されるか、またはクラッチ機構および/もしくは減速ギアセットを備えたトランスミッションを介してポンプ駆動装置に連結されてもよい。
【0041】
針ホルダー12は、送達ユニット2のハウジング7のベース壁5に装着された針ホルダーガイド6にスライド可能に装着されたガイド部材14を含む。針ホルダーガイド6は、針作動機構20の第1の支持部材33と第2の支持部材43との間に位置付けられる。針ホルダーガイド6は、例えば、針ホルダー12がこれに沿って並進運動して針10を後退位置から延出送達位置に移動させるための直線状ガイドとすることができる。
【0042】
一実施形態では、針ホルダーガイド6は、2つの並進運動ガイドレール8a、8bを含むことができ、針ホルダー12は、2つの並進運動ガイドレール8a、8bがこれに沿って針ホルダーを並進運動変位させるために通過する2つのガイドレール受容開口を含み得る、ガイド部材14を含む。針ホルダー12は、連結部分16も含み、連結部分は、第2のレバー40のアーム44の係合端部45に連結されている。
【0043】
連結部分16は、連結機能を達成するために異なる構成を有してもよい。例えば、針ホルダー12の連結部分16は、第2のレバー40のアーム44の係合端部45の両側において、針ホルダー12の並進運動軸に対して垂直に延びる第1の延長部18aおよび第2の延長部18bを含む。他の連結構成を実施してもよい。例えば、アーム44の係合端部45は、貫通孔、または針ホルダー12に接続されたスタッドに旋回可能に接続されたフックを含むことができる。
【0044】
皮下送達機構20の針10が後退位置にあるとき、針ホルダー12は針ホルダーガイド6の上部に位置する。針作動機構20の回転式アクチュエータ22が回転方向に回転して、針10を後退位置から延出送達位置へ移動させると、第1のレバー30がキャッチ26に係合する。このとき、上方キャッチエッジ26aが係合端部35の上面を押圧することにより、第1のレバー30が回転し、これにより第2のレバー40が回転する。係合端部45が針ホルダー12に連結されると、第2のレバー40の回転により、針ホルダー12が、針10の後退位置および延出送達位置にそれぞれ対応する針ホルダーガイド6の上部から下部に移動する。
【0045】
図示された実施形態では、延出送達位置において、回転式アクチュエータ22は、送達方向に回転し続けることができる。送達方向において、キャッチ26の上方キャッチエッジ26aは、第1のレバー30の係合端部35を越えて移動可能となるように構成されており、回転式アクチュエータ22は、一旦針が延出位置にくると、第1のレバー30によってブロックされることなく、送達方向に連続的に回転することができる。
【0046】
送達ユニットの使用が終了すると、針を延出送達位置から後退位置に後退させるコマンドが実行される。この動作中、ポンプエンジン(不図示)の駆動ユニットは逆方向に移動するように制御され、これにより、回転式アクチュエータ22は逆方向に移動する。逆方向では、キャッチ26の下方キャッチエッジ26bが第1のレバー30の係合端部35に係合し、よってこれを持ち上げる。アーム34の上側が連結インターフェース46の第1の延長部46aに接触すると、第2のレバー40が第1のレバーによって持ち上げられ、針ホルダー12を上昇させて針10を延出位置から後退位置に移動させる。
【0047】
本発明の実施形態による針作動機構は、非常にコンパクトな針作動機構、したがってコンパクトな皮下送達機構を有利に提供すると共に、薬剤送達のための最適な皮下貫通を達成するのに必要な、後退位置と延出送達位置との間の針の大きな移動距離を確保する。さらに、本発明の実施形態による針作動機構は、単純であり、頑丈であり、信頼性がある。
【0048】
〔例示される特徴部のリスト〕
薬剤送達デバイス1
送達ユニット2(使い捨て部品)
薬剤カートリッジ3
ハウジング7
ベース壁5
針ホルダーガイド6
並進運動ガイドレール8a、8b
第1の支持部材33
第2の支持部材43
皮下送達機構
針10
針ホルダー12
ガイド部材14
ガイドレール受容開口
連結部分16
第1の延長部18a
第2の延長部18b
針作動機構20
回転式アクチュエータ22
リム24
キャッチ26
凹部/ノッチ
キャッチエッジ
上方キャッチエッジ26a
下方キャッチエッジ26b
連結インターフェース
第1のレバー30
旋回部分32
アーム34
係合端部35
第1のばねアーム36(一実施形態)
第2のばねアーム38(一実施形態)
第2のレバー40
旋回部分42
アーム44
係合端部45
第1のレバー連結インターフェース46
第1の延長部46a
第2の延長部46b
ベースユニット4(再利用可能部品)
電子制御システム
電源(バッテリ)
ポンプ駆動装置
連結インターフェース
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 薬剤送達デバイス(1)のための皮下送達機構において、
ハウジングと、
前記ハウジング内に移動可能に装着された針ホルダー(12)と、
前記針ホルダーに固定された針(10)と、
前記針ホルダー(12)を前記ハウジングに対して後退位置と延出送達位置との間で移動させるように構成された針作動機構(20)と、
を含み、
前記針作動機構(20)は、前記ハウジングに対して旋回可能に装着された第1のレバー(30)と、前記第1のレバーの遠位部分に係合して前記第1のレバーを回転させるように構成された、前記ハウジングに対して回転可能に装着された回転式アクチュエータ(22)と、を含み、
前記針作動機構(20)は、前記ハウジングに対して旋回可能に装着された第2のレバー(40)をさらに含み、前記第2のレバーは、前記第1のレバー(30)の回転によって前記第2のレバーが反対の回転方向に回転するように前記第1のレバーに連結され、
前記第2のレバーの係合端部(45)は、前記第1のレバーの回転時に前記針ホルダー(12)に係合して前記針(10)を前記後退位置と前記延出送達位置との間で移動させることを特徴とする、皮下送達機構。
(2) 前記第1のレバーの回転軸(A1)は、前記第2のレバーの回転軸(A2)と平行である、実施態様1に記載の皮下送達機構。
(3) 前記第2のレバーの前記回転軸(A2)は、前記回転式アクチュエータの回転軸と同軸である、実施態様2に記載の皮下送達機構。
(4) 前記第1のレバー(30)は、前記ハウジングに固定されるかまたは前記ハウジングと一体的に形成された第1の支持部材(33)上に回転可能に装着され、前記第2のレバーは、第2の支持部材(43)上に回転可能に装着され、前記第2の支持部材は、
前記ハウジングに固定されるかもしくは前記ハウジングと一体的に形成され、前記回転式アクチュエータ(22)を回転可能に支持するか、または、
前記回転式アクチュエータの一部を形成する、実施態様1から3のいずれかに記載の皮下送達機構。
(5) 前記第1のレバー(30)は、第1の支持部材(33)の周りに旋回可能に装着された旋回部分(32)と、前記旋回部分から係合端部(35)まで延びるアーム(34)と、を含み、前記回転式アクチュエータ(22)は、前記第1のレバー(30)の前記係合端部(35)に係合するように構成されたキャッチ(26)を含む、実施態様1から4のいずれかに記載の皮下送達機構。
【0050】
(6) 前記第2のレバー(40)は、第2の支持部材(43)の周りに旋回可能に装着された旋回部分(42)と、前記旋回部分から前記針ホルダー(12)の連結部分(16)に連結された係合端部(45)まで延びるアーム(44)と、を含む、実施態様1から5のいずれかに記載の皮下送達機構。
(7) 前記針ホルダー(12)の前記連結部分は、前記第2のレバーの前記係合端部を受容するスロットの形態である、実施態様6に記載の皮下送達機構。
(8) 前記第1のレバーの係合端部(35)は、前記第2のレバー上の連結インターフェース(46)に係合し、前記連結インターフェースは、前記第2のレバーの旋回部分(42)の近位で、前記第2のレバーの係合端部(45)から遠位に配置されている、実施態様1から7のいずれかに記載の皮下送達機構。
(9) 前記連結インターフェース(46)は、
前記第2のレバー(40)上に形成され、前記第1のレバーの係合端部を中に挿入可能に受容する、軸方向に延びるスロット、または
前記第2のレバー(40)上に形成され、前記第1のレバーの係合端部の一部に形成されたスロットに挿入可能に受容される、軸方向に延びる突起、
を含む、実施態様8に記載の皮下送達機構。
(10) 前記針ホルダー(12)は、前記第1の支持部材(33)と前記第2の支持部材(43)との間に配置されている、実施態様1から9のいずれかに記載の皮下送達機構。
【0051】
(11) 薬剤送達デバイス(1)において、
必要とする患者に投与される薬剤を収容する薬剤カートリッジ(3)を受容するように構成された送達ユニット(2)を含み、前記送達ユニットは、実施態様1〜10のいずれかに記載の皮下送達機構をさらに含む、薬剤送達デバイス(1)。
(12) 前記ハウジングは、ベース壁(5)と、前記ベース壁から直立する針ホルダーガイド(6)と、を含み、前記皮下送達機構の前記針ホルダー(12)は、前記針ホルダーガイド(6)にスライド可能に連結されたガイド部材(14)を含む、実施態様11に記載の薬剤送達デバイス。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7