特許第6984082号(P6984082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984082
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ドライバユニット
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/142 20060101AFI20211206BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B25B23/142
   B25B23/14 620G
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-162146(P2017-162146)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-38068(P2019-38068A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有川 誠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0118078(US,A1)
【文献】 特開2015−066620(JP,A)
【文献】 特開2014−037033(JP,A)
【文献】 特開2006−095626(JP,A)
【文献】 特開2011−088265(JP,A)
【文献】 特開2003−136419(JP,A)
【文献】 特開2014−054702(JP,A)
【文献】 特開2004−082222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B23/00−23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の締付対象物を、該締付対象物の軸心周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付ける締付作業を行うためのドライバユニットであって、
軸心方向の一端部に上記締付対象物と係合するビットが設けられた主軸と、
上記主軸の軸心方向の他端部に取り付けられるグリップと、
上記締付作業において、該締付作業に関連する情報を検出するための複数のセンサとを備え、
上記締付作業では、上記ビットが上記締付対象物と係合した状態で、上記グリップを介して上記主軸を回転させることで、上記締付対象物が上記ワークに対して締め付けられ、
上記複数のセンサは、
上記締付作業時において、上記主軸にかかる回転トルクを検出するトルクセンサと、
上記締付作業時における、上記締付作業開始時の上記主軸の軸心に対する当該締付作業実行中の上記主軸の軸心の傾きである主軸傾きを検出可能な傾き検出センサとを含み、
上記各センサの検出結果に基づいて上記締付作業の適否を評価する評価手段に、上記各センサの検出結果を提供するように構成されており、
上記評価手段は、上記締付作業の熟練者が締付作業を行った際に上記複数のセンサにより取得された情報である熟練者データを格納する記録媒体を有し、ユーザが行った締付作業おいて取得された上記各センサの検出結果を、上記熟練者データと比較して、上記締付作業の適否を評価することを特徴とするドライバユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のドライバユニットにおいて、
上記評価手段は、作業者の上記締付作業と同期して、該締付作業の適否を評価するように構成されていることを特徴とするドライバユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライバユニットにおいて、
上記評価手段による上記締付作業の適否を評価において、上記傾き検出センサの検出結果に基づく上記締付作業の適否の評価は、上記傾き検出センサにより検出された上記主軸傾きの絶対値が、上記熟練者データに基づいて設定された所定値以下であるときに、上記締付作業が適切に行われていると評価されることを特徴とするドライバユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のドライバユニットにおいて、
上記ビットは、上記主軸に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とするドライバユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のドライバユニットにおいて、
上記複数のセンサは、上記締付作業時における、上記主軸の軸心周りの回転の回転ピッチを検出する回転ピッチ検出センサを更に含むことを特徴とするドライバユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のドライバユニットにおいて、
上記複数のセンサの検出結果を同期する同期回路を更に備え、
上記評価手段は、上記同期回路により同期された、上記トルクセンサの検出結果、上記傾き検出センサの検出結果、及び回転ピッチ検出センサの検出結果を、評価結果を表示する表示部にグラフ形式で表示可能に構成されていることを特徴とするドライバユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸状の締付対象物(木ネジなど)を、該締付対象物の軸心周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付けるためのドライバユニットに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸状の締付対象物を、該締付対象物の軸心周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付けるためのドライバユニットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、締付対象物を締め付ける力に応じて電気信号を出力するストレインゲージ(トルクセンサ)と、ストレインゲージから出力された電気信号に基づいて締め付けトルクを算出する演算部と、演算部で算出された締め付けトルクを表示する表示部と、互いに直交する3方向の加速度を検出する3軸加速度センサとを備え、3軸加速度センサの検出結果によって特定されるドライバユニットの姿勢に基づいて、表示部の表示方向を変化させるドライバユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−37033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軸状の締付対象物を、該締付対象物の軸心周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付ける締付作業においては、一般に、ドライバユニットから締付対象物に与える力が重要であるといわれている。特に、締付対象物に与える力のうち、ドライバユニットを締付対象物に対して押す力を7割とし、ドライバユニットにより締付対象物を回す力を3割とすると、締付作業をスムーズに行うことができるとされている。
【0006】
ところが、本願発明者らの検討によれば、上記ように手動で行う締付作業では、締付対象物に与える力に加えて、ドライバユニットを締付対象物に対して押す力の方向、詳しくは、締付対象物の軸心に対するドライバユニットの軸心の傾きの大きさ、及び該傾きのブレが重要であることが判明した。特に、手動のドライバユニットで締付対象物をワークに締め付ける場合には、作業者は、ドライバユニット自体を回転させながら該ドライバユニットを支えなければならないため、締付対象物の軸心に対するドライバユニットの軸心の傾きが変動しやすく、上記傾きの大きさやブレが締付作業に与える影響が大きい。
【0007】
特許文献1に記載のドライバユニットでは、3軸加速度センサによってドライバユニットの姿勢を検出することができるものの、3軸加速度センサの検出結果は単に表示部の表示方向の変更に利用しているだけであり、ドライバユニットの姿勢と締付作業の作業性との関係を考慮していない。つまり、特許文献1に記載のドライバユニットでは、作業者は、ドライバユニットの姿勢、特に、ドライバユニットの軸心の傾きが過大になったり、該傾きのブレが大きくなったりしたことによって締付作業の作業性が悪化したときに、作業性の悪化の原因を適切に認識することができず、当該締付作業及び次回の締付作業において、作業状態を改善することができない。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸状の締付対象物を、該締付対象物の軸周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付ける締付作業を行う際に、締付作業の適否を適切に評価して、締付作業を円滑に行うことができるようにするドライバユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、軸状の締付対象物を、該締付対象物の軸心周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付ける締付作業を行うためのドライバユニットを対象として、軸心方向の一端部に上記締付対象物と係合するビットが設けられた主軸と、上記主軸の軸心方向の他端部に取り付けられるグリップと、上記締付作業において、該締付作業に関連する情報を検出するための複数のセンサとを備え、上記締付作業では、上記ビットが上記締付対象物と係合した状態で、上記グリップを介して上記主軸を回転させることで、上記締付対象物が上記ワークに対して締め付けられ、上記複数のセンサは、上記締付作業時において、上記主軸にかかる回転トルクを検出するトルクセンサと、上記締付作業時における、上記締付作業開始時の上記主軸の軸心に対する当該締付作業実行中の上記主軸の軸心の傾きである主軸傾きを検出可能な傾き検出センサとを含み、上記各センサの検出結果に基づいて上記締付作業の適否を評価する評価手段に、上記各センサの検出結果を提供するように構成されており、上記評価手段は、上記締付作業の熟練者が締付作業を行った際に上記複数のセンサにより取得された情報である熟練者データを格納する記録媒体を有し、ユーザが行った締付作業おいて取得された上記各センサの検出結果を、上記熟練者データと比較して、上記締付作業の適否を評価する、という構成とした。
【0010】
この構成によると、評価手段は、トルクセンサにより検出される回転トルクだけでなく、傾き検出センサによって検出可能な上記主軸傾きに基づいて締付作業の適否を判定するため、締付作業の適否を適切に判断することができる。すなわち、例えば、回転トルクの大きさは適切であっても上記主軸傾きの大きさが異常に大きい場合や、上記主軸傾きの大きさ自体は小さくとも上記主軸傾きのブレが大きい場合に、これらの締付作業が不適であると評価することができ、当該締付作業又は次回の締付作業において修正すべき点を作業者が認識することができる。尚、上記締付作業の開始時には、通常、作業者は締付対象物の軸心と主軸の軸心とが略一致するようにドライバユニットをセットするため、上記主軸傾きは、実質的に、締付対象物の軸心に対する主軸の軸心の傾きを表しているといえる。
【0011】
上記ドライバユニットでは、上記評価手段は、作業者の上記締付作業と同期して、該締付作業の適否を評価するよう構成されている、ことが好ましい。
【0012】
この構成によると、判定手段は、作業者の締付作業と同期して、該締付作業の適否を判定するよう構成されているため、作業者は、締付作業の適否をリアルタイムで認識することができ、締付作業における、上記主軸傾きや回転ピッチを適宜修正することができる。この結果、締付作業を一層円滑に行うことができるようになる。
【0013】
上記ドライバユニットの一実施形態では、上記評価手段による上記締付作業の適否を評価において、上記傾き検出センサの検出結果に基づく上記締付作業の適否の評価は、上記傾き検出センサにより検出された上記主軸傾きの絶対値が、上記熟練者データに基づいて設定された所定値以下であるときに、上記締付作業が適切に行われていると評価される。
【0014】
すなわち、手動で締付作業を行うドライバユニットでは、ドライバユニット自体を回転させながら該ドライバユニットを支えなければならないため、締付対象物の軸心に対するドライバユニットの軸心の傾き(上記主軸傾きと略一致)が変動しやすく、上記傾きの大きさやブレが上記締付作業に与える影響が大きい。特に、上記主軸傾きが大きすぎると、締付対象物に適切にトルクを伝達できなくなったり、ビットが空転してしまったりして、上記締付作業に悪影響を及ぼす。このため、上記主軸傾きの絶対値が所定値以下であるか否かに基づいて、上記締付作業の適否を評価することによって、手動で締付作業を行う場合に、締付作業を円滑に行い易くなる。
【0015】
上記ドライバユニットでは、上記ビットは、上記主軸に取り外し可能に取り付けられている、ことが好ましい。
【0016】
この構成によると、ビットの交換が容易になり、ビットが破損した際に容易にビットの交換ができる。また、締付対象物に応じて最適な形状のビットに容易に交換することができるため、締付作業を一層円滑に行うことができる。
【0017】
上記ドライバユニットでは、上記複数のセンサは、上記締付作業時における、上記主軸の軸心周りの回転の回転ピッチを検出する回転ピッチ検出センサを更に含む、ことが好ましい。
【0018】
すなわち、手動での締付作業では、ドライバユニットを手動で回転させる関係上、ドライバユニットの回転ピッチがばらつく可能性が高い。回転ピッチがばらつくということは、締付対象物のワークへの締付作業が円滑に行われていないことを意味するが、回転ピッチがばらつく原因を理解できなければ、作業者は、当該締付作業又は次回の締付作業において、作業状態の修正を行うことができず、締付作業を円滑に進めることが困難になる。そこで、回転トルク及び上記主軸傾きに加えて、回転ピッチを検出すれば、例えば、回転ピッチにばらつきが見られた場合に、作業者は、該回転ピッチにばらつきの原因をある程度認識することができる。この結果、締付作業をさらに円滑に行うことができるようになる。
【0019】
上記回転ピッチ検出センサを有するドライバユニットにおいて、上記複数のセンサの検出結果を同期する同期回路を更に備え、上記評価手段は、上記同期回路により同期された、上記トルクセンサの検出結果、上記傾き検出センサの検出結果、及び回転ピッチ検出センサの検出結果を、評価結果を表示する表示部にグラフ形式で表示可能に構成されている、という構成でもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係るドライバユニットによると、複数のセンサの検出結果に基づいて締付作業の適否を評価することができ、当該締付作業又は次回の締付作業において修正すべき点を作業者が認識することができるため、締付作業を円滑に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るドライバユニットの構成を示す分解斜視図である。
図2】上記ドライバユニットを用いた締付作業の評価システムを示す概略図である。
図3】上記評価システムにおける制御系を示すブロック図である。
図4】上記評価システムによって、作業者の締付作業の適否が評価されるまでの処理動作を示すフローチャートである。
図5】上記締付作業の評価システムにより取得されたデータの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係るドライバユニット1の構成を示す。このドライバユニット1は、軸状の締付対象物としてのネジを、該ネジの軸心周りに手動で回転させることで、該ネジをワークに対して締め付ける締付作業を行う際に用いられるドライバユニットである。
【0024】
ドライバユニット1は、主軸10と、該主軸10の一端部に取り付けられ、上記ネジのネジ頭と係合するビット20と、該主軸10の他端部に取り付けられるグリップ30と、上記主軸10に取り付けられ、上記締付作業において、該締付作業に関連する情報を検出する複数のセンサ(後述するジャイロセンサ101等)を有するセンサユニット40とを備えている。このドライバユニット1を用いた締付作業では、ビット20がネジと係合した状態で、グリップ30を介して主軸10を回転させることで、上記締付対象物がワークに対して締め付けられる。
【0025】
主軸10は、軸状の主軸本体11と、該主軸本体11の軸心方向(つまり主軸10の軸心方向)の一端部に形成されかつ径方向外側に広がるフランジ部12と、上記主軸本体11の軸心方向の他端側に形成されかつ該主軸本体11よりも大径の円筒状をなすグリップ取付部13とを有している。尚、主軸10は本実施形態では常磁性金属で構成されている。
【0026】
主軸本体11の上記軸心方向の上記一端部には、上記軸心上に設けられかつフランジ部12よりも上記軸心方向の一側に突出した突出部15が設けられている。突出部15は四角柱状をなしている。突出部15は後述するアダプタソケット50に設けられた係合穴51に係合する。
【0027】
グリップ取付部13には、上記軸心方向の他側(フランジ部12とは反対側)から上記軸心方向の上記一側に向かって延びるグリップ取付穴13aが形成されている。該グリップ取付穴13aには、グリップ30の後述する軸部32が挿入される。詳細には、図示していないが該グリップ取付穴13aの内部には、グリップ30の後述する係合凹部33に係合する係合爪が設けられている。
【0028】
主軸本体11の上記軸心方向の中間には、上記締付作業時において、主軸10にかかる回転トルクを検出するトルクセンサ100が埋設されている。トルクセンサ100は、例えば圧電素子で構成されており、主軸10にかかる回転トルクに基づいて、主軸10に発生した歪みを電気信号として出力する。
【0029】
本実施形態では、ビット20は、アダプタソケット50を介して主軸10に取り付けられている。
【0030】
アダプタソケット50は、円柱状をなしており、アダプタソケット50の軸心方向の一側の端部には、主軸10の突出部15が挿入される主軸係合穴51が設けられ、アダプタソケット50の軸心方向の他側の端部には、ビット20の後述する軸部21が挿入されるビット係合穴52が形成されている。
【0031】
アダプタソケット50の主軸係合穴51は、主軸10の突出部15の形状に対応して、アダプタソケット50の軸心方向から見て四角形状をなしている。
【0032】
アダプタソケット50のビット係合穴52は、ビット20の軸部21の形状に対応した形状(詳しくは後述するが、軸部21は六角柱状をなしているため、アダプタソケット50の軸心方向から見て六角形状)をなしている。
【0033】
アダプタソケット50内には、1つ又は複数の磁石(つまり、強磁性体の部材)が埋設されている。この磁石の磁力によりアダプタソケット50は、主軸10の突出部15がアダプタソケット50の主軸係合穴51に挿入された状態で、該主軸10に保持される。また、詳しくは後述するが、ビット20も上記磁石の磁力によって、アダプタソケット50に対して保持される。
【0034】
ビット20は、軸部21と、上記軸部21の先端に設けられかつ上記ネジのネジ頭と係合するビット本体22とを有している。
【0035】
軸部21は、六角柱状をなしており、アダプタソケット50のビット係合穴52に挿入される。アダプタソケット50のビット係合穴52は、ビット20の軸部21の形状に対応して、アダプタソケット50の軸心方向から見て六角形状をなしており、軸部21がビット係合穴52に挿入された状態では、軸部21(すなわち、ビット20)がアダプタソケット50に対して回転しようとしても、軸部21の角部がビット係合穴52の壁部と当接して回転しないようになる。
【0036】
上記ビット本体22は、該軸部21の先端部に設けられている。本実施形態では、ビット本体22はクロス型をなしているが、マイナス型をなしていてもよい。
【0037】
本実施形態では、ビット20は常磁性体金属で構成されている。これにより、ビット20の軸部21が、アダプタソケット50のビット取付穴52に挿入されたときには、アダプタソケット50に設けられた磁石の磁力によって、ビット20がアダプタソケット50に保持される。尚、ビット20が強磁性体金属で構成されていてもよい。
【0038】
尚、本実施形態では、ビット20は、アダプタソケット50を介して、主軸10に対して取外可能に取り付けられているが、ビット20が主軸10と一体であってもよい。
【0039】
グリップ30は、軸状のグリップ本体31と、該グリップ本体31の軸心方向の一端から延びる軸部32とを有している。
【0040】
グリップ本体31は、樹脂材や木材で構成されていて、軸心方向の中央部分に、径方向内側に向かって凹んだ窪み部31aが周方向全体に亘って形成されている。この窪み部31aは、作業者がグリップ本体31を掴みやすくするためのものである。尚、該窪み部31aは必須ではなく、グリップ本体31が全体として円柱状や樽形状をなしていてもよい。
【0041】
軸部32は、グリップ本体31の軸心上に設けられており、該グリップ本体31の軸心に沿って延びている。軸部32の一端部はグリップ本体内に埋め込まれている。これにより、グリップ本体31と軸部32とは一体的に結合されている。詳細には図示しないが、グリップ本体31内には、軸部32のグリップ本体31に対する回転を防止するための回転止めが設けられている。
【0042】
軸部32は、先端部32a(グリップ本体31とは反対側の端部)が四角柱状をなしている。該先端部32aの4つの面部の少なくとも1つには、軸部32の軸心に向かって凹んだ係合凹部33が形成されている。この係合凹部33は、軸部32が、主軸本体11のグリップ取付穴13aに挿入されたときに、該グリップ取付穴13a内に設けられた上記係合爪と係合する部分である。上記係合爪がグリップ30の係合凹部33と係合することによって、グリップ30が主軸10(厳密には、グリップ取付部13)から抜けることが防止される。
【0043】
センサユニット40は、複数のセンサと、該複数のセンサを収容するハウジング41と、トルクセンサ100を含む複数のセンサからの出力信号に基づいて回転トルク等の演算等を行うマイコン42と、該マイコン42で処理された情報を後述する評価装置60に送信(提供)するための通信モジュール43と、マイコン41等の駆動源としてもバッテリ44とを有している。尚、図1は、簡略化して記載しているため、ハウジング41内に何も収容されていないように見えるが、実際には、マイコン42、通信モジュール43、バッテリ44、並びに、後述するジャイロセンサ101及び3軸加速度センサ102等、さらには、これらを電気的に連結させるケーブル等が収容されている。
【0044】
ハウジング41は、図1に示すように、2つに分割されている。図示は省略しているが、2つの分割型41aは、例えば係合ピンと係合孔との係合によって結合される。すなわち、例えば、2つの分割型41aのうちの一方の分割型41aに複数の係止ピンが形成され、他方の分割型41aに係止孔が形成されていて、該係合ピンが係合孔に係合するように、2つの分割型41aを突き合わせることで、2つの分割型41aが結合される。
【0045】
ハウジング41の各分割型41aには、主軸本体11の外周形状に対応した半円状の凹部41bがそれぞれ形成されている。センサユニット40を主軸10に取り付ける際には、各分割型41aの凹部41bを、主軸本体11の外周面に沿うように、該主軸本体11に嵌合させた状態で、2つの分割型41aを結合させることで、センサユニット40が主軸10に取り付けられる。センサユニット40が主軸10に取り付けられた状態では、ハウジング41がフランジ部12及びグリップ取付部13に引っ掛かるため、センサユニット40が主軸10から抜け落ちることはない。
【0046】
ハウジング41内に収容される複数のセンサは、締付作業時における、該締付作業開始時の主軸10の軸心に対する当該締付作業実行中の主軸10の軸心の傾きである主軸傾きを検出するジャイロセンサ101(傾き検出センサ、図3参照)と、上記締付作業時における、主軸10の軸心周りの回転の回転ピッチを検出する3軸加速度センサ102(回転ピッチ検出センサ、図3参照)とを含んでいる。各センサ101,102は、ハウジング41内に収容された他の部品(通信モジュール43等)と干渉せずかつ出来る限り正確に検出対象の値を検出できるように、ハウジング41内に配設されている。例えば、ジャイロセンサ101は、上記締付作業において、作業者についての前後方向、左右方向、及び上下方向に、主軸10の軸心がどの程度傾いたかを検出できるようにハウジング41内に配設されている。尚、図1では、ジャイロセンサ101及び3軸加速度センサ102を1つだけ示しているが、実際には、各センサ101,102とも複数配設されている。
【0047】
尚、締付作業の開始時には、通常、作業者は締付対象物(本実施形態ではネジ)の軸心と主軸10の軸心とが略一致するようにドライバユニット1をセットするため、上記主軸傾きは、実質的に、締付対象物の軸心に対する主軸10の軸心の傾きを表しているといえる。
【0048】
マイコン42は、図3に示すように、同期回路42aと、演算回路42bと、演算回路42bで算出された結果を集計する集計回路42cとを有している。集計回路42cで集計されたデータが通信モジュール43を介して評価装置60へ送信される。
【0049】
通信モジュール43は、マイコン42から伝達されたデータを無線通信により、評価装置60へ送信する。無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)を利用することができる。尚、評価装置60へのデータの送信は、無線送信でなく有線での送信であってもよい。
【0050】
次に、本実施形態に係るドライバユニット1によって、作業者の締付作業の適否を評価するシステムについて説明する。
【0051】
図2は、締付作業の評価システムSを概略的に示す。この評価システムSは、締付対象物としての木ネジ2を、ワークとしての木材3に対して締め付ける締付作業を評価するシステムである。
【0052】
評価システムSでは、上記締付作業時において、作業者がドライバユニット1を木ネジ2の軸心方向に押す力(以下、ドライバ押力という)を測定する押力測定装置4も設けられている。押力測定装置4は、図2に示すように、基台5に固定された台座71と、該台座71と上下方向に離間した状態で該台座71と連結され、ワーク3が載置される載置台72と、台座71と載置台72との間に配設され、ドライバ押力を検出するためのマルチフォースセンサ104とが設けられている。マルチフォースセンサ104は、ワーク3及び載置台72を介して伝達されるドライバ押力を検出する。
【0053】
また、押力測定装置4は、マルチフォースセンサ104に基づいてドライバ押力を算出する演算器73(図3参照)と、演算器73で算出された結果を評価装置60に送信するための通信モジュール74(図3参照)を有している。尚、評価装置60へのデータの送信は、無線送信でなく有線での送信であってもよい。
【0054】
尚、本実施形態の評価システムSでは、ドライバ押力を測定するために、上述したような押力測定装置4が設けられているが、ドライバ押力を測定する必要がないのであれば、押力測定装置4は設ける必要がなく、省略してもよい。
【0055】
通信モジュール74は、演算器73により算出された結果を無線通信により、評価装置60へ送信する。無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)を利用することができる。
【0056】
評価装置60は、図3に示すように、ドライバユニット1及び押力測定装置4から送信されたデータを受信する受信部61と、ドライバユニット1から送信されたデータと押力測定装置4から送信されたデータとの同期を行うための同期回路62と、ドライバユニット1及び押力測定装置4から送信されたデータから判定を行うためのデータを算出するたえの演算回路63と、演算回路63の算出結果を記録する記録媒体64と、演算回路63の算出結果から締付作業の適否を評価するための評価回路65と、評価回路65での上記締付作業の評価結果を表示する表示部66とを有している。
【0057】
次に、評価システムSの制御系について説明する。
【0058】
図3に示すように、ドライバユニット1では、トルクセンサ100、ジャイロセンサ101、及び3軸加速度センサ102からの出力信号が、検出データとしてマイコン42の同期回路42aに送られる。同期回路42aでは、3つのセンサ100〜102の検出データの同期が行われる。同期が行われた検出データは演算回路42bに送信され、その後、集計回路42cで集計される。集計されたデータは、通信モジュール43を介して無線送信により評価装置60に送信される。
【0059】
押圧測定装置4では、マルチフォースセンサ104からの出力信号が演算器73に送信され、該演算器73による演算が完了した後、通信モジュール74を介して無線送信により評価装置60に送信される。
【0060】
ドライバユニット1及び押力測定装置4から評価装置60に送信されたデータは、評価装置60の受信部61で受信される。受信されたドライバユニット1からのデータと押力測定装置4からのデータとは、同期回路62で同期される。同期が完了した各データは、演算回路63に送られ、該演算回路63により評価を行うためのデータが算出される。演算回路63の算出結果は記録媒体64に記録されるとともに、評価回路65に送られる。そして、評価回路65によって締付作業の適否が評価される。この評価の結果は、表示部66に表示される。表示の形式は特に限定されず、例えば、締付作業の適否を作業者が理解できるように、回転トルクや上記主軸傾きの時間変化をグラフで表示することができる。尚、記録媒体64には、後述する熟練者データが予め格納されており、評価回路65は、記録媒体64に格納された上記熟練者データを読み出して、締付作業の評価を行う。
【0061】
本実施形態では、ドライバユニット1及び押力測定装置4からの評価装置60へのデータ送信は、作業者による締付作業中は常に行われており、評価装置60は、上記送信されたデータに基づく当該締付作業の評価を逐一行っている。すなわち、本実施形態では、評価装置60は、作業者の締付作業と同期して、該締付作業の適否を評価するように構成されている。これにより、作業者は、締付作業が不適と評価された瞬間に当該評価を認識して、締付作業における、上記主軸傾き等を適宜修正することができる。
【0062】
次いで、評価システムSによって、作業者の締付作業の適否が評価されるまでの処理動作を、図4のフローチャートに基づいて説明する。尚、図4のフローチャートは、ドライバユニット1、押力測定装置4、及び評価装置60の電源が入った後の状態でのフローチャートである。
【0063】
最初のステップS101で、ドライバユニット1と評価装置60との通信状態及び押力測定装置4と評価装置60との通信状態の適否が判定される。両方の通信状態が適切である場合には、ステップS102に進み、少なくとも一方の通信状態が適切でなければ、両方の通信状態が適切になるまで、ステップS101の判定が繰り替えされる。
【0064】
次のステップS102では、ドライバユニット1及び押力測定装置4において、各種データが取得される。
【0065】
続く、ステップS103では、ドライバユニット1及び押力測定装置4から評価装置60に各種データが送信される。
【0066】
次のステップS104では、送信された各種データに基づいて、評価装置60で評価用のデータが算出される。
【0067】
続く、ステップS105では、算出された評価用のデータが記録媒体64に記録される。
【0068】
次のステップS106では、算出された評価用のデータに基づいて、作業者の上記締付作業の適否が評価される。尚、本実施形態では、上記締付作業の適否の評価は、上記締付作業を当該締付作業の熟練者が行った場合のデータである熟練者データを基準に行われる。
【0069】
その後、ステップS107において、評価結果が表示部66に表示される。上記ステップS107の後は、しかる後にリターンする。
【0070】
図5は、評価装置60による締付作業の評価結果の一例として、上記主軸傾きに基づく評価を示す。
【0071】
図5に示すグラフは、前後方向における主軸傾きを示している。詳しくは、グラフ中の破線が締付作業開始時の主軸10の軸心の位置を示しており、該破線の位置よりもプラス側は、主軸10が前側に傾いていることを示し、該破線の位置よりもマイナス側は、主軸10が後側に傾いていることを示す。また、グラフ中の2本の一点鎖線は、締付作業の適否の評価基準を表しており、2本の一点鎖線の間の範囲(一点鎖線を含む)にあるときに締付作業が適切であると評価されるようになっている。すなわち、本実施形態では、評価装置60による締付作業の適否を評価において、ジャイロセンサ101の検出結果に基づく該締付作業の適否の評価は、ジャイロセンサ101により検出された上記主軸傾きの絶対値が所定値以下であるときに、当該締付作業が適切に行われていると評価されるようになっている。
【0072】
上記所定値は、本実施形態では、上記熟練者データを基準に設定されている。すなわち、例えば、上記熟練者が上記締付作業を行った場合の上記主軸傾きの絶対値の最大値に対して−10%〜+10%の値を上記所定値として設定することができ、より詳しくは、例えば0.9°〜1.1°程度を上記所定値として設定することができる。尚、上記所定値は上記値に限定されず、軸状の締付対象物の形状や使用するビットの形状等により適宜変更することができる。また、上記所定値は、1人の熟練者が上記締付作業を行って得られた熟練者データを基準にしてもよく、複数の熟練者のそれぞれが上記締付作業を行って得られた複数の熟練者データを基準に(例えば、各熟練者データにおける上記主軸傾きの絶対値の平均をとる等)してもよい。
【0073】
図5に示すように、本締付作業では、開始後しばらくの間は適切に作業されていると評価されているが、下限値を下回ったところで不適であると評価される。そして、不適であると評価された後には、作業が適切であると評価されている。このように、本実施形態によると、不適と評価された後、作業者は、作業状態の修正等をすることができ、その後の作業を適切に行うようにすることができる。この結果、締付作業を円滑に行うことができる。尚、実際の表示では、例えば、下限値を下回ったところを、色を変えて表示するなどして、作業者が不適と評価されたことを直ぐに認識できるようになっている。
【0074】
尚、詳細には図示していないが、本実施形態では、評価結果として、例えば、3軸加速度センサ102によって検出される回転ピッチを同じ時間軸で表示することができ、これによれば、回転ピッチにばらつきが見られた場合に、作業者は、該回転ピッチにばらつきの原因が上記主軸傾きのブレにあるのか等、原因をある程度認識することもできる。
【0075】
したがって、本実施形態では、主軸10と、主軸10の軸心方向の一端部に取り付けられ、締付対象物(ネジ)と係合するビット20と、主軸10の軸心方向の他端部に取り付けられるグリップ30と、上記締付作業において、該締付作業に関連する情報を検出するための複数のセンサとを備え、上記締付作業では、ビット20が上記締付対象物と係合した状態で、グリップ30を介して主軸10を回転させることで、上記締付対象物が上記ワークに対して締め付けられ、上記複数のセンサは、上記締付作業時において、主軸10にかかる回転トルクを検出するトルクセンサ100と、上記締付作業時における、上記締付作業開始時の主軸10の軸心に対する当該締付作業実行中の主軸10の軸心の傾きである主軸傾きを検出可能なジャイロセンサ101とを含み、上記各センサの検出結果に基づいて上記締付作業の適否を評価する評価装置60に、上記各センサの検出結果を提供するように構成されているため、複数のセンサの検出結果に基づいて上記締付作業の適否を評価することができ、当該締付作業又は次回の締付作業において修正すべき点を作業者が認識することができるため、締付作業を円滑に行うことができる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0077】
例えば、上述の実施形態では、評価装置60は、作業者の締付作業と同期して、該締付作業の適否を評価するように構成されていたが、これに限らず、締付作業が終了した後に、当該締付作業の適否を評価するようにしてもよい。この場合、作業者は当該締付作業では、作業状態を修正等できないが、次回の締付作業において、作業状態を修正等をすることができるため、結果として、締付作業を円滑に行うことができるようになる。
【0078】
また、上述の実施形態では、評価装置60は、ドライバユニット1と別体であったが、ドライバユニット1と一体になっていてもよい。また、評価装置60の構成要素うち表示部66のみを別体にして、表示部66以外の構成要素をドライバユニットに組み込むようにしてもよい。
【0079】
さらに、上述の実施形態では、上記主軸傾きの絶対値に基づいて、締付作業を評価する場合を示したが、これに代えて又はこれに加えて、上記主軸傾きの変動率に基づいて評価を行ってもよい。さらに、これらに加えて、回転トルクの大きさに基づく評価を行うこともできる。尚、回転トルクの大きさに基づく評価では、例えば、上記熟練者が上記締付作業を行った際の回転トルクに対して、10%以上のズレがあった場合に、実際の作業者の上記締付作業が不適であると評価することができる。
【0080】
また、上述の実施形態では、ドライバユニット1に対する押力を検出するマルチフォースセンサ104を、ドライバユニット1とは別体で設けていたが、これに限らず、マルチフォースセンサ104をドライバユニット1に組み込んでもよい。また、上述の実施形態のように、締付対象物を介して、ドライバユニット1に対する押力を検出するようにマルチフォースセンサ104を配置するとともに、別のマルチフォースセンサをドライバユニット1に組み込むようにしてもよい。このようにすれば、インプット側の押力とアウトプット側の押力とを検出することができるようになる。
【0081】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、軸状の締付対象物を、該締付対象物の軸心周りに手動で回転させることで、該締付対象物をワークに対して締め付ける締付作業を行うためのドライバユニットとして有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 ドライバユニット
2 木ネジ(軸状の締付対象物)
3 ワーク
10 主軸
20 ビット
30 グリップ
60 評価装置(評価手段)
100 トルクセンサ
101 ジャイロセンサ(傾き検出センサ)
図1
図2
図3
図4
図5