特許第6984211号(P6984211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984211
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】駆動装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20211206BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20211206BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G02B26/00
   G01J3/26
   B81B3/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-146220(P2017-146220)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-28205(P2019-28205A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】松下 友紀
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−515946(JP,A)
【文献】 特開2015−225148(JP,A)
【文献】 特開2012−088419(JP,A)
【文献】 特開2015−125083(JP,A)
【文献】 特開2014−170236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0070794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00
G01J 3/26
B81B 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の対向部材と、
前記一対の対向部材の間の静電容量である第一検出値を検出する容量検出部と、
入力信号に基づいて、前記一対の対向部材の間の距離を変更するギャップ変更部と、
前記一対の対向部材の間の距離を基準距離に維持する距離維持部と、
前記第一検出値と、前記一対の対向部材の間の距離の目標値を表す目標信号と、に基づいてフィードバック制御を実施するフィードバック制御部と、を備え、
前記フィードバック制御部は、前記フィードバック制御として、前記一対の対向部材の間の距離が前記基準距離となった際に前記容量検出部により検出される前記静電容量である第二検出値と、前記一対の対向部材の間の距離が前記基準距離となる場合の前記一対の対向部材の間の前記静電容量の理想値との差に基づいて、前記第一検出値を補正して、補正された前記第一検出値と前記目標信号とに基づいて、前記入力信号を調整し、
前記基準距離は、前記ギャップ変更部により変更可能な前記一対の対向部材の間の距離の最小距離であり、
前記一対の対向部材の間の距離を前記基準距離に変更した後、当該距離を順次増加させる
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記一対の対向部材の間の前記静電容量と、前記一対の対向部材の間の距離との関係を示す関係データを記憶する記憶部を備え、
前記フィードバック制御部は、前記第二検出値と前記理想値との差に基づいて前記関係データを補正し、補正された前記関係データに基づいて前記フィードバック制御を実施する
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の駆動装置において、
第一ミラーが設けられる第一基板と、前記第一ミラーに対向する第二ミラーが設けられて前記第一基板に対向する第二基板とを備え、
前記一対の対向部材は、前記第一ミラー及び前記第二ミラーである
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
互いに対向する一対の対向部材と、
前記一対の対向部材の間の静電容量である第一検出値を検出する容量検出部と、
入力信号に基づいて、前記一対の対向部材の間の距離を変更するギャップ変更部と、
前記一対の対向部材の間の距離を基準距離に維持する距離維持部と、
前記第一検出値と、前記一対の対向部材の間の距離の目標値を表す目標信号と、に基づいてフィードバック制御を実施するフィードバック制御部と、を備え、
前記フィードバック制御部は、前記フィードバック制御として、前記一対の対向部材の間の距離が前記基準距離となった際に前記容量検出部により検出される前記静電容量である第二検出値と、前記一対の対向部材の間の距離が前記基準距離となる場合の前記一対の対向部材の間の前記静電容量の理想値との差に基づいて、前記第一検出値を補正して、補正された前記第一検出値と前記目標信号とに基づいて、前記入力信号を調整し、
前記一対の対向部材の一方が設けられる第一基板と、前記一対の対向部材の他方が設けられて前記第一基板に対向する第二基板とを備える駆動装置であって
前記距離維持部は、前記第一基板及び前記第二基板の少なくともいずれか一方に設けられ、前記一対の対向部材間の距離が前記基準距離となった際に、前記第一基板及び前記第二基板のいずれか他方に当接する突出部である
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項に記載の駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御部と、を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに対向する一対の基板と、各基板にそれぞれ配置されて互いに対向する反射膜と、各基板にそれぞれ配置されて互いに対向する電極と、を備えた波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターでは、各基板に、それぞれ、互いに対向する静電力印加用電極(静電アクチュエーター)を配置している。このような波長可変干渉フィルターでは、電圧制御部により静電アクチュエーターに電圧を印加させることで、反射膜間のギャップ量(間隔寸法)が変化する。また、反射膜間の静電容量をギャップ検出器で検出し、検出された静電容量に基づいて、電圧制御部から静電アクチュエーターに印加する電圧を微調整(フィードバック制御)することで、反射膜間ギャップの寸法を所望の目標値に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−225148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のような波長可変干渉フィルターでは、反射膜又は反射膜に接続された配線への異物の付着や、経時変化や、電源変動等により、反射膜や反射膜に接続された配線の寄生容量が変化すると、ギャップ検出器で検出される静電容量が変化するため、フィードバック制御を高い精度で実施できないという問題がある。
【0006】
本発明は、対向部材間の距離を目標値に精度良く合わせることが可能な駆動装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一適用例に係る駆動装置は、互いに対向する一対の対向部材と、前記一対の対向部材の間の静電容量を検出する容量検出部と、入力信号に基づいて、前記一対の対向部材の間の距離を変更するギャップ変更部と、前記一対の対向部材の間の距離を基準距離に維持する距離維持部と、前記容量検出部により検出される前記静電容量である第一検出値に基づいて、前記入力信号のフィードバック制御を実施するフィードバック制御部と、を備え、前記フィードバック制御部は、前記一対の対向部材の間の距離が前記基準距離となった際に前記容量検出部により検出される前記静電容量である第二検出値と、前記一対の対向部材の間の距離が前記基準距離となる場合の前記一対の対向部材の間の前記静電容量の理想値との差に基づいて、前記第一検出値を補正して、前記フィードバック制御を実施することを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、対向部材間の距離が基準距離となる場合の第二検出値と理想値との差により寄生容量の変化量を検出できる。このため、当該寄生容量の変化量に基づいて第一検出値を補正し、補正した第一検出値に基づいてフィードバック制御を実施することで、寄生容量が変化した場合でも、精度の高いフィードバック制御を実施でき、対向部材間の距離を目標値に精度良く合わせることができる。
【0009】
本適用例の駆動装置において、前記基準距離は、前記ギャップ変更部により変更可能な前記一対の対向部材の間の距離の最小距離であり、前記一対の対向部材の間の距離を前記基準距離に変更した後、当該距離を順次増加させることが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、最初に対向部材間の距離を基準距離に設定した際に、寄生容量の変化量を検出できるので、以降、対向部材間の距離を各目標値に設定する際は、寄生容量の変化量で第一検出値を補正し、補正した第一検出値に基づいてフィードバック制御を実施できる。このため、対向部材間の距離を各目標値に精度良く合わせることができる。
また、本適用例によれば、対向部材間の距離を各目標値に設定する一連の駆動処理を繰り返し行う場合、当該駆動処理を行う毎に寄生容量の変化量を検出することができるため、例えば電源投入時のみ寄生容量の変化量を検出する場合に比べて、対向部材間の距離を各目標値に精度良く合わせることができる。
【0011】
本適用例の駆動装置において、前記一対の対向部材の間の前記静電容量と、前記一対の対向部材の間の距離との関係を示す関係データを記憶する記憶部を備え、前記フィードバック制御部は、前記第二検出値と前記理想値との差に基づいて前記関係データを補正し、補正された前記関係データに基づいて前記フィードバック制御を実施することが好ましい。
【0012】
本適用例では、関係データを補正することで、対向部材間の距離の目標値に対する静電容量を正確に把握できる。
【0013】
本適用例の駆動装置において、第一ミラーが設けられる第一基板と、前記第一ミラーに対向する第二ミラーが設けられて前記第一基板に対向する第二基板とを備え、前記一対の対向部材は、前記第一ミラー及び前記第二ミラーであることが好ましい。
【0014】
本適用例では、一対のミラーにより、駆動装置をエタロン(ファブリーペローエタロン)として機能させることができ、ミラー間の距離を目標値に設定することで、目的波長の光が出力される。
本適用例によれば、出力される光の波長を決めるミラー間の距離を直接検出して、フィードバック制御を実施できるため、目的波長の光をより高精度で出力させることができる。
【0015】
本適用例の駆動装置において、前記一対の対向部材の一方が設けられる第一基板と、前記一対の対向部材の他方が設けられて前記第一基板に対向する第二基板とを備え、前記距離維持部は、前記第一基板及び前記第二基板の少なくともいずれか一方に設けられ、前記一対の対向部材間の距離が前記基準距離となった際に、前記第一基板及び前記第二基板のいずれか他方に当接する突出部であることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、突出部が第一基板及び第二基板のいずれか他方に当接するまで、ギャップ変更部によって対向部材間の距離を短くすることで、対向部材間の距離を基準距離に容易に設定できる。
【0017】
本発明の一適用例に係る電子機器は、上記駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
上記駆動装置によれば、対向部材間の距離を精度良く制御できるので、当該駆動装置を備える電子機器では、当該制御に伴う各種処理の精度を高めることができる。例えば、波長可変干渉フィルターでは、高精度な波長制御を行うことができ、波長可変干渉フィルターを制御することで出射光を検出する分光測定装置では、目的波長の光の光量を高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
図2】第一実施形態の光学モジュールの概略構成を示す図。
図3】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの断面図。
図4】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの平面図。
図5】第一実施形態の電圧制御部におけるクローズドループシステムの概念図。
図6】反射膜間の静電容量とピーク波長との関係を示すグラフ。
図7】第一実施形態の測定処理を示すフローチャート。
図8】第一実施形態の測定処理における反射膜間の距離の遷移図。
図9】第一実施形態の測定処理における波長可変フィルターの動作を示す図。
図10】本発明に係る第二実施形態のプリンターの外観の構成例を示す図。
図11】第二実施形態のプリンターの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態の分光測定装置1について、図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、本発明に係る第一実施形態の分光測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、本発明の電子機器であり、測定対象Xで反射された測定対象光における所定波長の光強度を分析し、分光スペクトルを測定する装置である。なお、本実施形態では、測定対象Xで反射した測定対象光を測定する例を示すが、測定対象Xとして、例えば液晶ディスプレイ等の発光体を用いる場合、当該発光体から発光された光を測定対象光としてもよい。
この分光測定装置1は、図1に示すように、光学モジュール10と、ディテクター11(検出部)と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、制御部20と、を備えている。また、光学モジュール10は、本発明の駆動装置に相当し、波長可変干渉フィルター5と、電圧制御部15とを備えて構成されている。
【0021】
ディテクター11は、光学モジュール10の波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光し、受光した光の光強度に応じた検出信号(電流)を出力する。
I−V変換器12は、ディテクター11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御部20に出力する。
電圧制御部15は、制御部20の制御に基づいて、波長可変干渉フィルター5を駆動させ、波長可変干渉フィルター5から所定の目的波長の光を透過させる。
【0022】
[光学モジュールの構成]
次に、光学モジュール10の構成について、以下に説明する。
図2は、光学モジュール10の概略構成を示すブロック図である。
光学モジュール10は、上記のように、波長可変干渉フィルター5と、電圧制御部15とを備えて構成される。
【0023】
[波長可変干渉フィルターの構成]
光学モジュール10の波長可変干渉フィルター5について、以下説明する。図3は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。図4は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図3及び図4に示すように、例えば矩形板状の光学部材であり、固定基板51(第一基板)及び可動基板52(第二基板)を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、例えば各種ガラスや水晶等の絶縁性素材により形成され、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53(図3参照)により接合されることで、一体的に構成されている。
【0024】
固定基板51には、固定反射膜54(第一ミラー)が設けられ、可動基板52には、可動反射膜55(第二ミラー)が設けられている。これらの固定反射膜54及び可動反射膜55は、ギャップG1(図3参照)を介して対向配置されている。すなわち、固定反射膜54及び可動反射膜55は、本発明の一対の対向部材に相当する。
また、固定基板51には、固定電極561が設けられ、可動基板52には、可動電極562が設けられている。これらの固定電極561及び可動電極562は、所定のギャップを介して対向配置されている。これらの固定電極561及び可動電極562は、本発明のギャップ変更部である静電アクチュエーター56を構成する。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51又は可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視をフィルター平面視と称する。また、本実施形態では、フィルター平面視において、固定反射膜54の中心点及び可動反射膜55の中心点は、一致し、平面視におけるこれらの反射膜の中心点をフィルター中心点Oと称し、これらの反射膜の中心点を通る直線を中心軸と称する。
【0025】
(固定基板の構成)
固定基板51は、図3に示すように、例えばエッチング等により形成された電極配置溝511及び反射膜設置部512を備える。また、固定基板51の一端側(図4における辺C1−C2)は、可動基板52の基板端縁(図4における辺C5−C6)よりも外側に突出しており、第一端子取出部514を構成している。
【0026】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、固定基板51のフィルター中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、フィルター平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成されている。この電極配置溝511の溝底面511Aには、静電アクチュエーター56の固定電極561、及び、ギャップG1の距離を基準距離に維持する距離維持部の一部を構成する第一ピラー部571が設けられている。また、反射膜設置部512の突出先端面には、固定反射膜54が設けられている。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の外周縁に向かって延出する電極引出溝(図示略)が設けられている。
【0027】
固定電極561は、例えば円弧状(略C字状)に形成されており、図4に示すように、辺C1−C2に近接する一部にC字開口部が設けられる。また、固定電極561上に、可動電極562との間の絶縁性を確保するための絶縁膜が積層される構成としてもよい。
そして、固定電極561は、電極引出溝に沿って第一端子取出部514まで延出する固定引出電極563を備えている。この固定引出電極563の延出先端部は、例えばリード線やFPC(Flexible printed circuits)等により電圧制御部15に接続されている。
【0028】
反射膜設置部512の突出先端面に設けられる固定反射膜54は、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等、導電性を有する反射膜素材により構成される。なお、固定反射膜54として、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよい。固定反射膜54として誘電体多層膜を用いる場合では、当該誘電体多層膜の最下層又は最上層(表層)に導電性膜を積層することで導電性を持たせる。この導電性膜として広波長域に対して高反射率特性を有する、例えばAg合金等の反射膜を用いてもよい。この場合、導電性膜により、波長可変干渉フィルター5の測定対象波長域を広げることができ、広い波長帯域に対して所望の目的波長を取り出すことが可能となり、かつ、誘電体多層膜により、高分解能で目的波長の光を取り出すことが可能となる。また、導電性膜と反射膜設置部512との間や、導電性膜と誘電体多層膜との間に、密着性を向上させるために透明接着層を更に介在させてもよい。
【0029】
そして、固定基板51には、図4に示すように、固定反射膜54の外周縁に接続され、固定電極561のC字開口部を通り、第一端子取出部514に向かって延出する第一ミラー電極541が設けられている。この第一ミラー電極541は、固定反射膜54の形成時に、同時に成膜されることで形成されている。
そして、第一ミラー電極541は、第一端子取出部514上で電圧制御部15に接続される。
【0030】
第一ピラー部571(本発明の突出部)は、フィルター平面視において、電極配置溝511における固定反射膜54の外で、固定電極561よりフィルター中心点O側に設けられており、フィルター中心点Oを中心とする仮想円の円周上で一定間隔に配置されている。なお、第一ピラー部571は、例えば、フィルター中心点Oを中心とした環状に設けられていてもよい。
そして、図3に示すように、第一ピラー部571の電極配置溝511の溝底面511Aからの高さ寸法は、反射膜設置部512及び固定反射膜54を合わせた厚み寸法よりも大きく形成されている。
第一ピラー部571の形成素材としては特に限定されず、例えば固定基板51と同じ材料や、SiO等により構成されていればよい。本実施形態では、第一ピラー部571の一部である基端部571Aは、固定基板51と一体形成され、残りの部分である先端部571Bは、SiO等により構成されている。この場合、固定基板51に対して2段階のエッチング処理を実施することで、電極配置溝511と、反射膜設置部512及び基端部571Aとを形成し、基端部571AにSiO等の層を形成して先端部571Bを設けることで、第一ピラー部571を形成できる。
【0031】
固定基板51のうち、電極配置溝511、反射膜設置部512、及び電極引出溝が形成されない領域は、接合膜53により、可動基板52に接合される。
【0032】
(可動基板の構成)
可動基板52は、図4に示すようなフィルター平面視において、フィルター中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
また、可動基板52では、図4に示すように、一端側(辺C7−C8)は、固定基板51の基板端縁(辺C3−C4)よりも外側に突出しており、第二端子取出部524を構成している。
【0033】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置部512の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521の固定基板51に対向する可動面521Aには、可動反射膜55、可動電極562、及び距離維持部の一部を構成する第二ピラー部572が設けられている。
【0034】
可動電極562は、フィルター平面視において、可動反射膜55の外周側に設けられ、固定電極561に対してギャップを介して対向配置されている。この可動電極562は、円弧状(略C字状)に形成されており、図4に示すように、辺C7−C8に近接する一部にC字開口部が設けられている。また、固定電極561と同様に、可動電極562上に絶縁膜が積層される構成としてもよい。
ここで、図4に示すように、フィルター平面視において、可動電極562と固定電極561とが重なる円弧領域(図4において右上がり斜線部で示される領域)により、静電アクチュエーター56が構成されている。この静電アクチュエーター56は、図4に示すように、フィルター平面視において、フィルター中心点Oに対して互いに点対称となる形状及び配置となる。したがって、静電アクチュエーター56に電圧を印加した際に発生する静電引力も、フィルター中心点Oに対して点対称となる位置に作用し、バランスよく可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。
【0035】
また、図4に示すように、可動電極562は、第二端子取出部524に向かって延出する可動引出電極564が設けられている。この可動引出電極564は、固定基板51に設けられた電極引出溝に対向する位置に沿って配置される。また、可動引出電極564の延出先端部は、例えばFPCやリード線等により電圧制御部15に接続されている。
【0036】
可動反射膜55は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜54とギャップG1を介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。なお、本実施形態では、反射膜54,55間のギャップG1は、電極561,562間のギャップよりも小さくなる。
また、可動基板52には、図4に示すように、可動反射膜55の外周縁に接続され、可動電極562のC字開口部を通り、第二端子取出部524に向かって延出する第二ミラー電極551が設けられている。
また、可動反射膜55として、誘電体多層膜及び導電性膜の積層体により構成される場合では、第二ミラー電極551は、導電性膜と同時に形成され、この導電性膜に接続される。
そして、この第二ミラー電極551は、第二端子取出部524上において例えばFPCやリード線等により電圧制御部15に接続されている。
【0037】
第二ピラー部572(本発明の突出部)は、フィルター平面視において、可動反射膜55の外で、可動電極562よりフィルター中心点O側に設けられ、第一ピラー部571と対向する。
第二ピラー部572は、第一ピラー部571と同様、フィルター平面視において、フィルター中心点Oを中心とした仮想円の円周上で等間隔に配置されている。なお、第二ピラー部572は、環状に形成されていてもよい。
そして、第二ピラー部572は、可動部521の固定基板51に対向する可動面521Aからの高さ寸法が、可動反射膜55の膜厚寸法よりも大きく形成されている。つまり、反射膜54,55間のギャップG1の寸法よりも、第一ピラー部571及び第二ピラー部572のギャップG2の寸法が小さくなる。
第二ピラー部572の形成素材としては、特に限定されず、例えば可動基板52と同じ材料や、SiO等により構成されていればよい。本実施形態では、第二ピラー部572は、SiOにより構成されている。
【0038】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。この際、可動部521が保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、保持部522が静電引力により固定基板51側に引っ張られた場合でも、可動部521の形状変化が抑制される。したがって、可動部521に設けられた可動反射膜55の撓みも発生しにくく、固定反射膜54及び可動反射膜55を常に平行状態に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、フィルター中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0039】
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられる。基板外周部525の固定基板51に対向する面は、接合膜53を介して固定基板51に接合される。
【0040】
[電圧制御部の構成]
電圧制御部15は、図2に示すように、ギャップ検出器151(本発明における容量検出部)と、フィルター駆動部152と、マイコン(マイクロコントローラー)16とを備えて構成されている。電圧制御部15は、制御部20からの制御信号に応じて静電アクチュエーター56に駆動電圧を印加し、反射膜間のギャップG1の寸法を所望の値に設定する。
以下、電圧制御部15の構成について、詳細に説明する。
【0041】
図5は、電圧制御部15を用いたフィードバックループの概念図である。
電圧制御部15は、図5に示すように、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56、ギャップ検出器151、及びフィルター駆動部152により、クローズドループシステム15L(フィードバックループ)を構成する。そして、本実施形態では、マイコン16は、静電アクチュエーター56の駆動特性に基づいて、このクローズドループシステム15Lのゲインを設定することで、フィードバック制御時の制御状態を好適に維持する。
【0042】
ギャップ検出器151は、波長可変干渉フィルター5の第一ミラー電極541及び第二ミラー電極551に接続されている。このギャップ検出器151は、静電アクチュエーター56の駆動により変動する、反射膜54,55間のギャップG1の寸法を検出し、検出信号を出力する。このギャップG1の寸法を検出することで、静電アクチュエーター56の駆動量も容易に算出できる。
このギャップ検出器151は、例えば、反射膜54,55間の静電容量を検出し、検出値(第一検出値)を電圧信号(検出信号)としてフィルター駆動部152及びマイコン16に出力する。
なお、ギャップ検出器151は、検出信号として、アナログ信号を出力してもよく、デジタル信号を出力してもよい。デジタル信号を出力する場合、検出信号(アナログ信号)をADC(Analog to Digital Converter)に入力し、デジタル値に変換する。
【0043】
フィルター駆動部152は、波長可変干渉フィルター5の固定引出電極563及び可動引出電極564に接続されている。そして、フィルター駆動部152は、マイコン16から入力されたギャップG1を所定の目標値に設定する旨の目標信号に基づき、静電アクチュエーター56に対して駆動電圧(入力信号)を印加する。
この際、フィルター駆動部152は、ギャップ検出器151から出力された静電容量を、静電容量とギャップG1の寸法との関係を示すギャップ相関データ(関係データ)を参照してギャップG1の寸法に変換する。ギャップ相関データは、後述するマイコン16のメモリー161に記憶されている。そして、フィルター駆動部152は、変換したギャップG1の寸法と、マイコン16から入力された目標信号が示すギャップG1の寸法との偏差が所定閾値以下となるように、静電アクチュエーター56に対する駆動電圧を増減して制御する。すなわち、フィルター駆動部152は、検出信号及び目標信号に基づいて、フィードバック制御を実施する。つまり、当該フィルター駆動部152と、検出信号を出力するギャップ検出器151と、目標信号を出力するマイコン16とにより、本発明のフィードバック制御部が構成される。
【0044】
図2に戻り、マイコン16は、記憶部としてのメモリー161を備え、当該メモリー161には、上述したようにギャップ検出器151で検出される静電容量とギャップG1の寸法との関係を示すギャップ相関データが記憶されている。
【0045】
ここで、例えば、反射膜54,55や反射膜54,55に接続された配線への異物の付着や、経時変化や、電源変動等により、反射膜54,55や反射膜54,55に接続された配線の寄生容量が変化し、ギャップ検出器151で検出される静電容量とギャップG1の寸法との関係が変化する場合がある。この場合、フィードバック制御が適切に行われず、波長可変干渉フィルター5が出力する光のピーク波長を、目的波長に設定できない場合がある。
図6は、寄生容量が基準値の場合と、寄生容量が基準値から変動した場合における、前記静電容量と前記ピーク波長との関係を示したグラフである。曲線P1は、寄生容量が基準値の場合の前記関係を示し、曲線P2は、寄生容量が基準値から変動した場合の前記関係を示す。図6に示すように、前記静電容量が同じでも、寄生容量が基準値から変動した場合は、寄生容量が基準値の場合と比べて、前記ピーク波長が長くなる。
このため、本実施形態では、マイコン16は、上記ギャップ相関データを補正する補正部162を備えている。なお、補正部162によるギャップ相関データの補正方法については後述する。
【0046】
また、マイコン16は、図2に示すように、駆動制御部163として機能する。
駆動制御部163は、制御部20から目的波長に関する波長設定指令が制御信号として入力されると、目的波長に対応するギャップG1の寸法(目標値)を算出し、フィルター駆動部152に目標信号を出力する。
【0047】
[制御部の構成]
図1に戻り、分光測定装置1の制御部20について、説明する。
制御部20は、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御部20は、図1に示すように、フィルター制御部21と、光量取得部22と、分光測定部23と、記憶部30と、を備えている。
記憶部30には、分光測定装置1を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。
【0048】
フィルター制御部21は、ギャップ相関データを補正させるための制御信号を電圧制御部15に出力する。
また、フィルター制御部21は、波長可変干渉フィルター5により取り出す光の目的波長を設定し、ギャップG1の寸法を、設定した目的波長に対応するギャップG1の寸法に設定させるための制御信号を、電圧制御部15に出力する。
【0049】
光量取得部22は、ディテクター11により取得された光量に基づいて、波長可変干渉フィルター5を透過した目的波長の光の光量を取得する。
分光測定部23は、光量取得部22により取得された光量に基づいて、測定対象光のスペクトル特性を測定する。
【0050】
[分光測定処理]
次に、本実施形態の分光測定装置1を用いた分光測定処理について、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態の分光測定処理を示すフローチャートである。図8は、本実施形態の分光測定処理におけるギャップG1の寸法の遷移図である。
例えば、測定者の操作により分光測定処理が開始されると、制御部20のフィルター制御部21は、ギャップ相関データを補正させるための制御信号をマイコン16に出力する。
【0051】
当該制御信号が入力されると、マイコン16の補正部162は、フィルター駆動部152を制御して、所定電圧を静電アクチュエーター56に印加させ、図9に示すように、第一ピラー部571に第二ピラー部572を当接させる。これにより、ギャップG1の距離が、基準距離に設定される(ステップS1)。つまり、本実施形態では、基準距離は、ギャップG1の最小距離に設定されている。
なお、本実施形態では、当該基準距離は、目的波長のうち最短の波長に対応するギャップG1の距離よりも小さい距離に設定されているが、例えば、基準距離は、前記最短の波長に対応するギャップG1の距離と同じであってもよい。
また、前記所定電圧が静電アクチュエーター56に印加された際、可動基板52が固定基板51に近づく方向に移動した後、第一ピラー部571に第二ピラー部572が当接することで、可動部521は振動することなく直ちに停止する。これにより、ギャップG1を基準距離に迅速に設定できる。
【0052】
次に、ギャップG1の距離が基準距離に維持された状態で、ギャップ検出器151が反射膜54,55間の静電容量を検出し、補正部162が検出された静電容量(第二検出値)を取得する(ステップS2)。そして、補正部162は、取得した第二検出値と、理想値との差を算出する(ステップS3)。理想値は、例えば出荷時などに測定された、ギャップG1の距離が基準距離の場合の静電容量の値(基準値)であり、例えばメモリー161に記憶されている。
【0053】
次に、補正部162は、第二検出値と理想値との差(第二検出値−理想値)に基づいて、メモリー161に記憶されているギャップ相関データを補正する(ステップS4)。具体的には、補正部162は、静電容量の初期値に、前記差を加えた値を算出し、算出した値で、ギャップ相関データにおける各静電容量を更新する。これにより、ギャップ相関データを、寄生容量の変化を反映した値に補正できる。
【0054】
次に、フィルター制御部21は、目的波長のうち、最短の波長(例えば400nm)を設定する指令を、マイコン16に出力する。これにより、駆動制御部163は、前記最短の波長に対応するギャップG1の寸法を目標値とした目標信号を、フィルター駆動部152に出力する。
そして、フィルター駆動部152は、ギャップ検出器151から出力された検出信号と、駆動制御部163から入力された目標信号との偏差が所定閾値以下となるように、静電アクチュエーター56に対する駆動電圧を増減して制御する。このとき、フィルター駆動部152は、ギャップ検出器151が検出した反射膜54,55間の静電容量(第一検出値)を、補正されたギャップ相関データを参照してギャップG1の寸法に変換し、目標信号と比較する。つまり、これによれば、寄生容量の変化量に基づいて第一検出値を補正して、フィードバック制御を実施できる。
これにより、ギャップG1が、前記最短の波長に対応した寸法に高い精度で設定され(ステップS5)、波長可変干渉フィルター5から前記最短の波長の光が透過され、ディテクター11で受光される。
【0055】
次に、制御部20の光量取得部22は、ディテクター11で受光された光の光量を測定光量として取得し、例えば記憶部30に記憶させる(ステップS6)。
この後、制御部20は、全ての目的波長の光の測定光量が取得されたか否かを判断する(ステップS7)。
【0056】
ステップS7でNOと判定された場合、フィルター制御部21は、目的波長のうち次に長い波長を設定する指令を、マイコン16に出力する。これにより、駆動制御部163及びフィルター駆動部152によって、ギャップG1が、次に長い波長に対応した寸法に設定され(ステップS8)、波長可変干渉フィルター5から次に長い波長の光が透過され、ディテクター11で受光される。
そして、処理がステップS6に戻され、光量取得部22は、ディテクター11で受光された光の光量を測定光量として取得し、記憶部30に記憶させる。
このようにして、ステップS6−S8の処理は、ステップS7で全ての目的波長の光の測定光量が取得されたと判定されるまで繰り返し実行される。すなわち、ギャップG1の寸法が順次増加され、ギャップG1の寸法が増加される毎に、波長可変干渉フィルター5から透過した光の光量が測定され、記憶部30に記憶される。
【0057】
そして、目的波長のうち最長の波長(例えば700nm)の測定が終了すると、ステップS7でYESと判定され、制御部20の分光測定部23は、光量取得部22により取得された光量に基づいて、測定対象光のスペクトル特性を測定する(ステップS9)。
【0058】
[第一実施形態の作用効果]
本実施形態では、補正部162が、ギャップG1の距離が基準距離となる場合の静電容量(第二検出値)と理想値との差により、ギャップ相関データを補正するため、ギャップ検出器151で検出される静電容量を、寄生容量の変化量に基づいて補正できる。このため、寄生容量が変化した場合でも、精度の高いフィードバック制御を実施でき、ギャップG1の寸法を目標値に精度良く合わせることができる。これにより、目的波長の光の光量を高精度に検出できる。
【0059】
本実施形態では、分光測定処理において、最初にギャップG1の距離を基準距離に設定した際に、寄生容量の変化量を検出し、以降、ギャップG1の距離を順次増加させて各目標値に設定する際は、寄生容量の変化量で第一検出値を補正し、補正した第一検出値に基づいてフィードバック制御を実施できる。このため、ギャップG1の寸法を各目標値に精度良く合わせることができる。
【0060】
本実施形態では、出力される光の波長を決める反射膜54,55間の距離であるギャップG1の寸法を直接検出して、フィードバック制御を実施するため、目的波長の光をより高精度で出力させることができる。
【0061】
本実施形態では、第一ピラー部571に第二ピラー部572が当接するまで、静電アクチュエーター56によってギャップG1の寸法を短くすることで、当該ギャップG1の距離を基準距離に容易に設定できる。
【0062】
[第二実施形態]
次に、第一実施形態の分光測定装置1を、プリンター6(インクジェットプリンター)に搭載した実施形態を、第二実施形態として以下説明する。
【0063】
[プリンターの概略構成]
図10は、本実施形態のプリンター6の外観の構成例を示す図である。図11は、本実施形態のプリンター6の概略構成を示すブロック図である。
図10図11に示すように、プリンター6は、供給ユニット61、搬送ユニット62と、キャリッジ63と、キャリッジ移動ユニット64と、制御ユニット65(図11参照)と、を備えている。このプリンター6は、例えばパーソナルコンピューター等の外部機器70から入力された印刷データに基づいて、各ユニット61,62,64、及びキャリッジ63を制御し、対象物としてのメディアAの一面(以降メディア面A1と称す)上に画像を印刷する。また、本実施形態のプリンター6は、予め設定された校正用印刷データに基づいてメディア面A1の所定位置に測色用のカラーパッチを形成し、かつ当該カラーパッチに対する分光測定を行う。これにより、プリンター6は、カラーパッチに対する実測値と、校正用印刷データとを比較して、印刷されたカラーに色ずれがあるか否か判定し、色ずれがある場合は、実測値に基づいて色補正を行う。
以下、プリンター6の各構成について具体的に説明する。
【0064】
供給ユニット61は、画像形成対象となるメディアA(本実施形態では、紙面を例示)を、画像形成位置に供給するユニットである。この供給ユニット61は、例えばメディアAが巻装されたロール体611(図10参照)、ロール駆動モーター(図示略)、及びロール駆動輪列(図示略)等を備える。そして、制御ユニット65からの指令に基づいて、ロール駆動モーターが回転駆動され、ロール駆動モーターの回転力がロール駆動輪列を介してロール体611に伝達される。これにより、ロール体611が回転し、ロール体611に巻装された紙面がY方向(副走査方向)における下流側(+Y方向)に供給される。
なお、本実施形態では、ロール体611に巻装された紙面を供給する例を示すがこれに限定されない。例えば、トレイ等に積載された紙面等のメディアAをローラー等によって例えば1枚ずつ供給する等、如何なる供給方法によってメディアAが供給されてもよい。
【0065】
搬送ユニット62は、供給ユニット61から供給されたメディアAを、Y方向に沿って搬送する。この搬送ユニット62は、搬送ローラー621と、搬送ローラー621とメディアAを挟んで配置され、搬送ローラー621に従動する従動ローラー(図示略)と、プラテン622と、を含んで構成されている。
搬送ローラー621は、図示略の搬送モーターからの駆動力が伝達され、制御ユニット65の制御により搬送モーターが駆動されると、その回転力により回転駆動されて、従動ローラーとの間にメディアAを挟み込んだ状態でY方向に沿って搬送する。また、搬送ローラー621のY方向の下流側(+Y側)には、キャリッジ63に対向するプラテン622が設けられている。このプラテン622は、副走査方向(Y方向)に搬送されたメディアAのメディア面A1とは反対側の面と当接し、メディアAを保持する。
【0066】
キャリッジ63は、メディアAのメディア面A1に対して画像を印刷する印刷部66と、メディア面A1の所定の測定位置の分光測定を行う分光測定装置1とを備えている。
このキャリッジ63は、キャリッジ移動ユニット64によって、Y方向と交差する主走査方向(X方向)に沿って移動可能に設けられている。
また、キャリッジ63は、フレキシブル回路631により制御ユニット65に接続され、制御ユニット65からの指令に基づいて、印刷部66による印刷処理(メディア面A1に対する画像形成処理)及び、分光測定装置1による分光測定を実施する。
なお、キャリッジ63の詳細な構成については後述する。
【0067】
キャリッジ移動ユニット64は、制御ユニット65からの指令に基づいて、キャリッジ63をX方向に沿って往復移動させる。
このキャリッジ移動ユニット64は、例えば、キャリッジガイド軸641と、キャリッジモーター642と、タイミングベルト643と、を含んで構成されている。
キャリッジガイド軸641は、X方向に沿って配置され、両端部がプリンター6の例えば筐体に固定されている。キャリッジモーター642は、タイミングベルト643を駆動させる。タイミングベルト643は、キャリッジガイド軸641と略平行に支持され、キャリッジ63の一部が固定されている。そして、制御ユニット65の指令に基づいてキャリッジモーター642が駆動されると、タイミングベルト643が正逆走行され、タイミングベルト643に固定されたキャリッジ63がキャリッジガイド軸641にガイドされて往復移動する。
【0068】
次に、キャリッジ63に設けられる印刷部66及び分光測定装置1について説明する。
印刷部66は、画像形成部であり、メディアAと対向して設けられ、複数色のインクをそれぞれ個別にメディア面A1に吐出して画像を形成する。
この印刷部66は、複数色のインクに対応したインクカートリッジ661が着脱自在に装着されており、各インクカートリッジ661からインクタンク(図示略)にチューブ(図示略)を介してインクが供給される。また、印刷部66の下面(メディア面A1に対向する位置)には、インク滴を吐出するノズル(図示略)が、各色に対応して設けられている。これらのノズルには、例えばピエゾ素子が配置されており、ピエゾ素子を駆動させることで、インクタンクから供給されたインク滴が吐出されてメディア面A1に着弾し、ドットが形成される。
【0069】
分光測定装置1は、第1実施形態と同様の構成である。
本実施形態では、カラーパッチはメディア面A1上に複数印刷され、分光測定装置1は、各カラーパッチに対して、分光測定処理を実行する。すなわち、分光測定装置1は、カラーパッチを測定する毎に、波長可変干渉フィルター5のギャップG1の距離を基準距離に設定し、寄生容量の変化量を検出した後に、ギャップG1を順次増加させて、各目的波長の光の光量を測定する。
なお、分光測定は、同じカラーパッチに対して複数回実施されてもよい。この場合、例えば測定値の平均値が、測定光量として記憶部30に記憶される。
【0070】
制御ユニット65は、図11に示すように、I/F651と、ユニット制御回路652と、メモリー653と、CPU654と、を含んで構成されている。
I/F651は、外部機器70から入力される印刷データをCPU654に入力する。
ユニット制御回路652は、供給ユニット61、搬送ユニット62、印刷部66、分光測定装置1、及びキャリッジ移動ユニット64をそれぞれ制御する制御回路を備えており、CPU654からの指令信号に基づいて、各ユニットの動作を制御する。なお、各ユニットの制御回路が、制御ユニット65とは別体に設けられ、制御ユニット65に接続されていてもよい。
メモリー653は、プリンター6の動作を制御する各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0071】
[第二実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、カラーパッチに対する分光測定を行う際、目的波長の光の光量を高精度に検出できるため、高精度で色補正を行うことができる。
また、本実施形態のように分光測定装置1が連続して測定処理を行う場合、電源変動等により波長可変干渉フィルター5に発生する寄生容量が測定中に変化する場合がある。本実施形態では、ギャップG1の寸法を、目的波長のうち最短の波長に対応する寸法から最長の波長に対応する寸法まで変化させる一連の駆動処理を行う毎に、寄生容量の変化量を検出するため、例えば電源投入時のみ寄生容量の変化量を検出する場合に比べて、ギャップG1の距離を各目的波長に対応する値(目標値)に精度良く合わせることができる。
【0072】
[その他の実施形態]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記各実施形態では、光学モジュール10は、ギャップ検出器151で反射膜54,55間の静電容量を検出して、フィードバック制御を実施しているが、これに限定されない。
例えば、ギャップ検出器151で固定電極561及び可動電極562間の静電容量を検出して、フィードバック制御を実施してもよい。この場合、固定電極561及び可動電極562が本発明の一対の対向部材を構成する。この構成では、固定電極561及び可動電極562間の距離が基準距離となる場合の静電容量と理想値との差により、ギャップ検出器151で検出される静電容量が補正される。
又は、固定基板51及び可動基板52に、互いに対向する容量検出用電極を設け、ギャップ検出器151で当該容量検出用電極間の静電容量を検出して、フィードバック制御を実施してもよい。
【0073】
上記各実施形態では、ギャップG1の距離を基準距離に維持する距離維持部は、第一ピラー部571及び第二ピラー部572により構成されているが、これに限定されない。
例えば、距離維持部は、固定基板51及び可動基板52のいずれか一方に設けられたピラーにより構成されていてもよい。この場合、当該ピラーの高さは、第一ピラー部571及び第二ピラー部572を合わせた高さ寸法に設定すればよい。
また、例えば、固定電極561及び可動電極562が、距離維持部としても機能する構成としてもよい。この場合、固定電極561及び可動電極562の少なくとも一方に絶縁層を設け、固定電極561及び可動電極562が当該絶縁層を介して当接した際、ギャップG1の距離が基準距離となるように構成する。
また、距離維持部は、例えば、モーター等が発生する駆動力により、可動部521を固定基板51側とは反対側から、一定量押し込んだり引き込んだりすることで、ギャップG1の寸法を基準距離に維持する機構によって構成されていてもよい。
【0074】
上記各実施形態において、波長可変干渉フィルター5は、電圧印加により反射膜54,55間のギャップ寸法を変動させる静電アクチュエーター56を備える構成としたが、これに限定されない。
例えば、固定電極561の代わりに、第一誘電コイルを配置し、可動電極562の代わりに第二誘電コイル又は永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
また、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、及び上部電極層を積層配置させ、下部電極層及び上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませることができる。
【0075】
上記各実施形態では、ギャップ相関データを補正する際に設定される基準距離は、ギャップG1の距離の最小距離に設定されているが、これに限定されない。
例えば、基準距離は、ギャップG1の距離の最大距離に設定されていてもよい。この場合、距離維持部は、例えば、モーター等が発生する駆動力により、可動部521を固定基板51側とは反対側から、一定量引き込むことで、ギャップG1の寸法を基準距離に維持する機構によって構成する。そして、ギャップG1の距離を基準距離に変更した後、当該距離を順次低減させて、各目的波長の光の光量を測定する。
【0076】
上記各実施形態では、分光測定処理において、補正部162が第二検出値と理想値との差に基づいてギャップ相関データを補正し、フィルター駆動部152が、ギャップ検出器151で検出された静電容量を、補正されたギャップ相関データを参照してギャップG1の寸法に変換しているが、これに限定されない。
例えば、ギャップ相関データは変更せず、前記差をメモリー161等に記憶させておき、フィルター駆動部152が、ギャップ検出器151により静電容量が検出される毎に、検出された静電容量に前記差を読み出して加算し、加算した値を、ギャップ相関データを参照してギャップG1の寸法に変換する構成としてもよい。
【0077】
上記各実施形態では、駆動制御部163は、目標信号としてギャップG1の寸法を出力し、フィルター駆動部152は、ギャップ検出器151で検出された静電容量を、ギャップ相関データを参照してギャップG1の寸法に変換し、目標信号と比較してフィードバック制御を行っているが、これに限定されない。
例えば、駆動制御部163が、ギャップG1の寸法と静電容量との関係を示す関係データを参照し、ギャップG1の寸法を静電容量に変換して目標信号として出力し、フィルター駆動部152が、ギャップ検出器151で検出された静電容量を、目標信号と比較してフィードバック制御を行ってもよい。この場合、補正部162が、第二検出値と理想値との差に基づいて、前記関係データを補正することで、寄生容量の変化量で目標信号を補正できる。すなわち、目標信号を補正することで、第一検出値の補正を行う。これにより、補正した第一検出値に基づいてフィードバック制御を実施できる。
【0078】
上記各実施形態では、波長可変干渉フィルター5を駆動して、反射膜54,55間の距離を目標値に設定する駆動装置を例示しているが、本発明は、これ以外の駆動装置にも適用できる。すなわち、一対の対向部材の間の距離を目標値に設定する駆動装置に広く適用できる。例えば、静電容量によってミラーの角度を変化させるミラーデバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1…分光測定装置、5…波長可変干渉フィルター、10…光学モジュール(駆動装置)、15…電圧制御部、16…マイコン、51…固定基板(第一基板)、52…可動基板(第二基板)、53…接合膜、54…固定反射膜(第一ミラー)、55…可動反射膜(第二ミラー)、56…静電アクチュエーター、151…ギャップ検出器(容量検出部)、152…フィルター駆動部、161…メモリー、162…補正部、163…駆動制御部、511…電極配置溝、511A…溝底面、512…反射膜設置部、521…可動部、521A…可動面、522…保持部、525…基板外周部、561…固定電極、562…可動電極、571…第一ピラー部(距離維持部の一部である突出部)、571A…基端部、571B…先端部、572…第二ピラー部(距離維持部の一部である突出部)、G1,G2…ギャップ。
図1
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図11