特許第6984220号(P6984220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984220
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
   H01F17/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-153336(P2017-153336)
(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-33179(P2019-33179A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 延也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将典
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−1715(JP,A)
【文献】 特開2013−120938(JP,A)
【文献】 特開2007−250891(JP,A)
【文献】 特開2004−221388(JP,A)
【文献】 特開2004−281668(JP,A)
【文献】 特開2010−78541(JP,A)
【文献】 特開2000−12736(JP,A)
【文献】 特開平9−199861(JP,A)
【文献】 特開平9−270323(JP,A)
【文献】 特開2015−76481(JP,A)
【文献】 特開2002−270429(JP,A)
【文献】 特開2005−142302(JP,A)
【文献】 特開2003−7559(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0006677(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−19/08、27/28、41/04
H05K 1/11、1/16、3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に沿って巻回された第1巻線部と、
前記第1巻線部を覆う第1絶縁部と、
前記第1絶縁部に対して積層された第2絶縁部と、
前記第2絶縁部に対して積層され、平面に沿って巻回された第2巻線部と、
前記第2巻線部を覆う第3絶縁部と、
前記第1絶縁部を貫通する第1貫通孔と、
前記第2絶縁部を貫通すると共に前記第1貫通孔に連続する第2貫通孔と、
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔内に設けられ、前記第1巻線部と前記第2巻線部とを電気的に接続するビア導体と、を含むコイル部を備えたコイル部品であって、
積層方向に交差する交差方向における前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の寸法は、前記第2巻線部側から前記第1巻線部側に向かうにつれて大きくなり、
前記交差方向における前記第2貫通孔の最小寸法は、前記交差方向における前記第1貫通孔の最小寸法より大きく、
前記ビア導体は、前記第2巻線部と一体に設けられている、コイル部品。
【請求項2】
前記コイル部を載置する磁性基板と、
前記磁性基板及び前記コイル部を被覆する、磁性フィラーを含む被覆部と、
前記被覆部上に設けられるカバー絶縁層と、
前記カバー絶縁層及び前記被覆部を貫通する導体ポストと、
前記カバー絶縁層上に設けられて、前記導体ポストと接続する外部端子と、をさらに備える、請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品が記載されている。この電子部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、絶縁体層と共に積層される複数のコイル導体層とを備えている。複数のコイル導体層の間には絶縁体層が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−207280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなコイル部品においては、配線抵抗の低下を図るために、巻線部の厚さを大きくすることが検討されている。しかしながら、コイル部品の大きさを維持したまま巻線部の厚さを大きくすると、巻線部の厚さに対する絶縁層の厚さの割合が小さくなる。このため、絶縁層を構成する樹脂材料の硬化に伴う収縮により、絶縁層の平坦性が低下する場合がある。このような場合、巻線部同士の短絡が懸念される。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、複数の巻線部の厚さを大きくした場合であっても、巻線部同士の短絡を抑制することが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一形態に係るコイル部品は、平面に沿って巻回された第1巻線部と、第1巻線部を覆う第1絶縁部と、第1絶縁部に対して積層された第2絶縁部と、第2絶縁部に対して積層され、平面に沿って巻回された第2巻線部と、第2巻線部を覆う第3絶縁部と、第1絶縁部及び第2絶縁部を貫通する貫通孔内に設けられ、第1巻線部と第2巻線部とを電気的に接続するビア導体と、を備える。
【0007】
このコイル部品は、第1巻線部を覆う第1絶縁部と、第1絶縁部に対して積層された第2絶縁部と、を備える。これにより、第1巻線部の厚さが大きく、第1絶縁部の平坦性が低下した場合であっても、第2絶縁部によって第1絶縁部の凹凸を埋め、第1絶縁部及び第2絶縁部の全体の平坦性を保つことができる。したがって、第1巻線部の厚さを大きくした場合であっても、第1巻線部と第2巻線部との短絡を抑制することが可能である。
【0008】
一形態に係るコイル部品において、第2絶縁部は、第1絶縁部とビア導体との間に介在し、第1巻線部に接触してもよい。この構成によれば、第2絶縁部とビア導体との接触面積が大きくなるので、第2絶縁部とビア導体との密着性の向上を図ることができる。また、第2絶縁部は第1巻線部に接触していることにより、第2絶縁部と第1巻線部とを接着することができる。したがって、コイル部品としての破損を抑制することが可能である。
【0009】
一形態に係るコイル部品において、貫通孔は、第1絶縁部に形成された第1貫通孔と、第2絶縁部に形成された第2貫通孔と、を含み、積層方向に交差する交差方向における第2貫通孔の寸法は、第2巻線部側から第1巻線部側に向かうにつれて大きくなってもよい。この構成によれば、第1貫通孔側における第2貫通孔の寸法が大きいので、積層方向から見て、第1貫通孔と第2貫通孔とが互いに重なる部分を形成しやすくなる。したがって、ビア導体により第1巻線部と第2巻線部とを確実に接続することができる。
【0010】
一形態に係るコイル部品において、貫通孔は、第1絶縁部に形成された第1貫通孔と、第2絶縁部に形成された第2貫通孔と、を含み、積層方向に交差する交差方向における第2貫通孔の最小寸法は、交差方向における第1貫通孔の最小寸法より大きくてもよい。この構成においても、積層方向から見て、第1貫通孔と第2貫通孔とが互いに重なる部分を形成しやすくなる。したがって、ビア導体により第1巻線部と第2巻線部とを確実に接続することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、巻線部の厚さを大きくした場合であっても、絶縁層の平坦性の低下を抑制することが可能なコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1のコイル部品の一部分解斜視図である。
図4図2のコイル部品のビア導体付近の構造を概略的に示す拡大図である。
図5図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
図6図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
図7図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
図8図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
図9】変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
図10図9のコイル部品のビア導体付近の構造を概略的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1図3を参照して、コイル部品1の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1のコイル部品1の一部分解斜視図である。なお、図3においては、後述の被覆部7の図示を省略している。
【0015】
図1に示されるコイル部品1は、例えば、直流電圧の電圧変換を行うスイッチング電源回路ユニット等に搭載される部品である。図1図3に示されるように、コイル部品1は、磁性基板10と、コイル部20と、被覆部7と、導体ポスト19A,19Bと、カバー絶縁層30と、外部端子40A,40Bとを有している。
【0016】
なお、本明細書中において「積層方向」とは、磁性基板10、コイル部20、被覆部7、カバー絶縁層30、外部端子40A,40Bというように、磁性基板10から外部端子40A,40Bに向けて各層が順次重なる方向である。また、以下の説明では、積層方向に沿って外部端子40A,40B側を「上」、積層方向に沿って磁性基板10側を「下」として説明する場合がある。
【0017】
コイル部20は被覆部7に覆われている。被覆部7は、直方体形状の外形を有している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされた直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められた直方体の形状が含まれる。被覆部7は、主面7aを有しており、主面7aは長辺及び短辺を有する矩形状をなしている。被覆部7は、磁性基板10に対して積層されており、コイル部20の周囲を覆っている。被覆部7は、磁性フィラー及びバインダ樹脂(樹脂)を含む混合物である。磁性フィラーの構成材料は、例えば鉄、カルボニル鉄、ケイ素、クロム、ニッケル、又はホウ素等である。バインダ樹脂の構成材料は、例えばエポキシ樹脂等である。被覆部7に含まれる磁性フィラーの割合は、例えば被覆部7の全体の80重量%以上である。磁性フィラーの平均粒径は、例えば1μm〜30μm程度である。
【0018】
磁性基板10は、例えばフェライト等の磁性材料によって構成された平板状の基板である。磁性基板10は、被覆部7の主面7aとは反対側(被覆部7の下側)に位置している。主面7a上には、カバー絶縁層30が積層されている。カバー絶縁層30上には、外部端子40A,40Bが設けられている。
【0019】
コイル部20は、下部絶縁層B1と、第1巻線部211及び第1絶縁部22を含む第1平面コイル21と、第2絶縁部23と、第2巻線部241及び第3絶縁部242を含む第2平面コイル24と、上部絶縁層B2と、第1巻線部211と第2巻線部241とを電気的に接続するビア導体25と、連結部26と、を備えている。
【0020】
下部絶縁層B1は、磁性基板10上に積層されている。下部絶縁層B1は、磁性基板10の全面に設けられている。下部絶縁層B1上には、第1平面コイル21が積層されている。
【0021】
第1平面コイル21は、磁性基板10及び被覆部7の主面7aに直交する軸線Aを有し、矩形環状を呈している。第1平面コイル21は、軸線Aを中心として矩形状に巻回された第1巻線部211と、第1巻線部211を覆う第1絶縁部22とを含む。ここで、第1絶縁部22が「第1巻線部211を覆う」とは、少なくとも第1巻線部211の一方側(上側、すなわち第2絶縁部23側)の主面211a、及び主面211aに連続する第1巻線部211の側面が第1絶縁部22に接触する状態をいう。第1巻線部211は、下部絶縁層B1に対して積層されており、第1巻線部211の下側(磁性基板10側)の主面は、下部絶縁層B1に接触している。第1巻線部211は、例えば銅(Cu)等の金属材料によって構成されている。
【0022】
第1絶縁部22は、2つの絶縁層221,222を含んでいる。絶縁層221は、第1巻線部211と同一層内において、第1巻線部211の周囲を埋めている。また、絶縁層221は、第1巻線部211の巻回部分同士の間を埋めている。絶縁層222は、第1巻線部211の一方側の主面211aに接触している。コイル部20の内径に対応する第1絶縁部22の領域には、積層方向に第1絶縁部22を貫通する貫通孔が形成されている。第1絶縁部22には、積層方向に第1絶縁部22を貫通する第1貫通孔22aが設けられている。第1貫通孔22aは、第1絶縁部22の絶縁層222に形成されている。なお、本実施形態では、絶縁層221,222は一体に設けられているが、絶縁層221と絶縁層222とは別の層として設けられていてもよい。また、第1絶縁部22は、下部絶縁層B1を含んでいてもよい。
【0023】
第2絶縁部23は、第1絶縁部22に対して積層された絶縁層である。第2絶縁部23には、積層方向に第2絶縁部23を貫通する第2貫通孔23aが設けられている。コイル部20の内径に対応する第1絶縁部22の領域には開口が形成されている。
【0024】
第2平面コイル24は、第2絶縁部23に対して積層されている。第2平面コイル24は、第1平面コイル21と同様に矩形環状を呈している。第2平面コイル24は、軸線Aを中心として矩形状に巻回された第2巻線部241と、第2巻線部241を覆う第3絶縁部242とを含む。ここで、第3絶縁部242が「第2巻線部241を覆う」とは、少なくとも第2巻線部241の一方側(上側、すなわち上部絶縁層B2側)の主面241a、及び主面241aに連続する第2巻線部241の側面が第3絶縁部242に接触する状態をいう。第2巻線部241は第2絶縁部23に対して積層されており、第2巻線部241の下側(第1絶縁部22側)の主面は、第2絶縁部23に接触している。第2巻線部241は、例えば銅(Cu)等の金属材料によって構成されている。
【0025】
第3絶縁部242は、2つの絶縁層242A,242Bを含んでいる。絶縁層242Aは、第2巻線部241と同一層内において、第2巻線部241の周囲を埋めている。また、絶縁層242Aは、第2巻線部241の巻回部分同士の間を埋めている。絶縁層242Bは、第2巻線部241の一方側(上側、すなわち上部絶縁層B2側)の主面241aを覆っている。コイル部20の内径に対応する第3絶縁部242の領域には、積層方向に第3絶縁部242を貫通する貫通孔が形成されている。なお、本実施形態では、絶縁層242A,242Bは一体に設けられているが、絶縁層242Aと絶縁層242Bとは別の層として設けられていてもよい。
【0026】
上部絶縁層B2は、第2平面コイル24に対して積層されている。コイル部20の内径に対応する上部絶縁層B2の領域には、積層方向に上部絶縁層B2を貫通する貫通孔が形成されている。
【0027】
下部絶縁層B1、第1絶縁部22、第2絶縁部23、第3絶縁部242、及び上部絶縁層B2は、絶縁性樹脂によって構成されている。絶縁性樹脂としては、例えばポリイミド、又はポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。なお、下部絶縁層B1、第1絶縁部22、第2絶縁部23、第3絶縁部242、及び上部絶縁層B2は、それぞれ同じ材料によって構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。
【0028】
ビア導体25は、第1絶縁部22及び第2絶縁部23を貫通する貫通孔(第1貫通孔22a及び第2貫通孔23a)内に設けられている。ビア導体25は、第1巻線部211の最も内側の巻回部分と、第2巻線部241の最も内側の巻回部分とを電気的に接続している。これにより、第1平面コイル21及び第2平面コイルによって1つのコイルが形成されている。なお、ビア導体25は、図2等に示されるように第2巻線部241と一体に設けられていてもよい。連結部26は、第1巻線部211の外側の端部から被覆部7の主面7a側に延び、第1巻線部211と導体ポスト19Bとを電気的に接続している。
【0029】
一対の導体ポスト19A,19Bは、例えば銅(Cu)で構成されており、積層方向に交差する交差方向におけるコイル部20の両端部から積層方向に沿って延びている。導体ポスト19Aは、第2巻線部241の外側の端部に接続されている。導体ポスト19Aは、上部絶縁層B2及び被覆部7を貫通するように第2巻線部241から被覆部7の主面7aまで延びて、主面7aに露出している。導体ポスト19Aの露出した部分に対応する位置には、外部端子40Aが設けられている。導体ポスト19Aは、カバー絶縁層30の貫通孔31a内の導体部31によって、外部端子40Aに接続されている。これにより、導体ポスト19A及び導体部31を介して、第2巻線部241の外側の端部(コイル部20の一端部)と外部端子40Aとが電気的に接続されている。
【0030】
導体ポスト19Bは、連結部26に接続されている。導体ポスト19Bは、上部絶縁層B2及び被覆部7を貫通するように連結部26から被覆部7の主面7aまで延びて、主面7aに露出している。導体ポスト19Bの露出した部分に対応する位置には、外部端子40Bが設けられている。導体ポスト19Bは、カバー絶縁層30の貫通孔32a内の導体部32によって、外部端子40Bに接続されている。これにより、連結部26、導体ポスト19B、及び導体部32を介して、第1巻線部211の外側の端部(コイル部20の他端部)と外部端子40Bとが電気的に接続されている。
【0031】
外部端子40Aは、主面7aにおける一方の短辺に沿っており、外部端子40Bは、主面7aにおける他方の短辺に沿っている。外部端子40A,40Bは、主面7aにおける長辺に沿った方向に互いに離間している。一対の外部端子40A,40Bはいずれも膜状であり、平面視で長方形状である。外部端子40A,40Bは、それぞれ、導体ポスト19A,19Bと電気的に接続されている。外部端子40A,40Bは、例えば銅(Cu)等の導電性材料によって構成されている。外部端子40A,40Bは、例えばめっきにより形成され得る。なお、外部端子40A,40Bは、単層構造であってもよいし、複数の層が積層された積層構造であってもよい。
【0032】
カバー絶縁層30は、被覆部7の主面7a上に設けられ、積層方向において導体ポスト19A,19Bと外部端子40A,40Bとの間に位置している。カバー絶縁層30は、導体ポスト19A,19Bに対応する位置に貫通孔31a,32aを有している。貫通孔31a,32a内には、銅(Cu)等の導電性材料よって構成された導体部31,32が設けられている。カバー絶縁層30は、絶縁性材料によって構成されており、例えば、ポリイミド、エポキシ等の絶縁性樹脂で構成されている。
【0033】
次に、図4を参照して、ビア導体25付近の構造について詳細に説明する。図4は、図2のコイル部品のビア導体25付近の構造を概略的に示す拡大図である。図4に示されるように、交差方向における第2貫通孔23aの寸法D23は、交差方向における第1貫通孔22aの寸法D22よりも小さい。また、積層方向から見て、第2貫通孔23aは第1貫通孔22aの内側に位置している。したがって、第2絶縁部23は、ビア導体25と第1絶縁部22との間において積層方向に沿って延びる部分を有している。このように、第2絶縁部23は、ビア導体25と第1絶縁部22との間に介在し、且つ、第1巻線部211の主面211aに接触している。すなわち、ビア導体25の周囲において、第2絶縁部23は第1絶縁部22にオーバーラップしている。換言すれば、第1絶縁部22とビア導体25との間に第2絶縁部23が配置され、第1絶縁部22とビア導体25とは互いに離間している。
【0034】
一例として、交差方向における第1貫通孔22aの寸法D22は、例えば100μm〜150μm程度であり、交差方向における第2貫通孔23aの寸法D23は、例えば80μm〜130μm程度である。また、第1巻線部211の厚さT211に対する第1絶縁部22、第2絶縁部23の合計の厚さTの割合は、例えば1.04〜1.4である。一例として、第1巻線部211の厚さT21は50μm〜100μm程度、第1絶縁部22の絶縁層222の厚さは2μm〜10μm程度、第2絶縁部23の厚さは2μm〜10μm程度、絶縁層221の厚さは50μm〜100μm程度である。
【0035】
次に、図5図8を参照して、コイル部品1の製造方法について説明する。図5図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための図である。
【0036】
まず、磁性基板10上にコイル部20を形成する。具体的には、図5(a)に示されるように、磁性基板10の上に絶縁性ペーストパターンを塗布して硬化させることにより下部絶縁層B1を形成する。続いて、図5(b)に示されるように、下部絶縁層B1の上に金属層14を形成する。金属層14は、例えばめっき又はスパッタリング等により形成することができる。その後、所定のマスクを用いてパターニングを行うことにより、第1巻線部211が形成される。続いて、図5(c)に示されるように、第1絶縁部22を形成する。第1絶縁部22は、金属層14上に絶縁性ペーストパターンを塗布して硬化させることにより形成することができる。このとき、第1絶縁部22の絶縁層221及び絶縁層222が一度に形成される。その後、第1絶縁部22(絶縁層222)をエッチングすることにより、第1貫通孔22aを形成する。これにより、第1平面コイル21が形成された状態となる。
【0037】
続いて、図6(a)に示されるように、第1絶縁部22の上に絶縁性樹脂ペーストパターンを塗布して硬化させることにより、第2絶縁部23を形成する。このとき、第1貫通孔22a内に絶縁成樹脂ペーストが充填される。次に、ビア導体25を形成するための第2貫通孔23a、及び連結部26の一部を形成するための開口16を形成する。第2貫通孔23aは、積層方向から見て第1貫通孔22aの内側に形成される。
【0038】
次に、図6(b)に示されるように、めっき又はスパッタリング等により、第2絶縁部23の上に再び金属層14を形成する。その後、所定のマスクを用いてパターニングを行うことにより、第2巻線部241が形成される。このとき、第2貫通孔23a内にはビア導体25が形成される。また、開口16に対応する位置に連結部26が形成される。
【0039】
続いて、図6(c)に示されるように、第3絶縁部242及び上部絶縁層B2を形成する。第3絶縁部は、金属層14(第2巻線部241)上に絶縁性ペーストパターンを塗布して硬化させることにより形成することができる。このとき、第3絶縁部242の絶縁層242A及び絶縁層242Bが一度に形成される。これにより、第2平面コイル24が形成された状態となる。その後、第3絶縁部242上に上部絶縁層B2を形成する。
【0040】
次に、図7(a)に示されるように、上部絶縁層B2及び第3絶縁部242をエッチングし、導体ポスト19A,19Bを形成するための開口19A’,19B’を形成する。以上の工程により、コイル部20が形成された状態となる。
【0041】
次に、図7(b)に示されるように、金属層14のうち、第1巻線部211及び第2巻線部241を構成していない部分(第1平面コイル21及び第2平面コイル24の内径部及び外周部に対応する部分)をエッチング処理等によって除去する。
【0042】
次に、図7(c)に示されるように、導体ポスト19A,19Bを形成する。具体的には、所定のマスクを用いてめっきやスパッタリング等により、絶縁部B4の開口19A’,19B’上にシード部を形成し、このシード部を用いて導体ポスト19A,19Bをめっき形成する。導体ポスト19A,19Bをめっき形成する際には、例えば絶縁性の犠牲層(二点鎖線で示される部分)を用いることができる。
【0043】
続いて、図8(a)に示されるように、磁性基板10の全面に磁性フィラー及び樹脂を含む磁性樹脂を塗布し、硬化処理を行うことにより被覆部7を形成する。これにより、導体ポスト19A,19Bの周りが被覆部7で覆われた状態となる。このとき、コイル部20の内径部分に被覆部7が充填される。
【0044】
次に、図8(b)に示されるように、被覆部7の主面7aの上に絶縁性樹脂ペースト等の絶縁性材料を塗布することにより、カバー絶縁層30を形成する。カバー絶縁層30を形成する際、主面7aの全体を覆うと共に、一対の導体ポスト19A、19Bに対応する位置に貫通孔31a、32aを形成し、カバー絶縁層30から一対の導体ポスト19A、19Bを露出させる。具体的には、主面7aの全領域に絶縁性材料を塗布し、その後、導体ポスト19A、19Bに対応する箇所のカバー絶縁層30を除去する。
【0045】
次に、所定のマスクを用いてめっきやスパッタリング等により、カバー絶縁層30上に外部端子40A,40Bに対応する領域にシード部を形成する。シード部は、カバー絶縁層30の貫通孔31a,32aから露出する導体ポスト19A,19B上に形成される。次に、シード部を用いて、無電解めっきにより外部端子40A,40Bを形成する。このとき、カバー絶縁層30の貫通孔31a,32aを埋めるようにめっきが成長して導体部31,32が形成される。以上の工程により、図2に示されるコイル部品1が形成される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るコイル部品1は、第1巻線部211を覆う第1絶縁部22と、第1絶縁部22に対して積層された第2絶縁部23と、を備える。一般的なコイル部品においては、コイル部品全体の大きさを維持したまま第1巻線部の厚さを大きくすると、第1巻線部の厚さに対する絶縁層の厚さの割合が小さくなり、絶縁層の平坦性が低下する可能性がある。これに対し、コイル部品1は、第1絶縁部22及び第2絶縁部23の2つの絶縁層を備えるので、第1巻線部211の厚さが大きく、第1絶縁部22の平坦性が低下した場合であっても、第2絶縁部23によって第1絶縁部22の凹凸を埋め、第1絶縁部22及び第2絶縁部23の全体の平坦性を保つことができる。したがって、第1巻線部211の厚さT211を大きくした場合であっても、コイル部品1の全体の大きさを維持しつつ、第1巻線部211と第2巻線部241との短絡を抑制することが可能である。
【0047】
また、コイル部品1において、第2絶縁部23は、第1絶縁部22とビア導体25との間に介在し、第1巻線部211に接触している。これにより、第2絶縁部23とビア導体25との接触面積が大きくなるので、第2絶縁部23とビア導体25との密着性の向上を図ることができる。また、第2絶縁部23は第1巻線部211に接触していることにより、第2絶縁部23と第1巻線部211とを接着することができる。このように第2絶縁部23と第1巻線部211とが互いに接着されることにより、第2絶縁部23と第1巻線部211との間に位置する第1絶縁部22(絶縁層222)が第2絶縁部23と分離することを抑制できる。したがって、コイル部品1としての破損を抑制することが可能である。
【0048】
次に、図9及び図10を参照して、変形例に係るコイル部品2について説明する。図9は、変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。図10は、図9のコイル部品のビア導体付近の構造を概略的に示す拡大図である。図9及び図10に示されるように、コイル部品2は、コイル部品1と同様に、第1巻線部211を覆う第1絶縁部22と、第1絶縁部22に対して積層された第2絶縁部23とを備えている。コイル部品2がコイル部品1と相違している点は、交差方向における第2貫通孔23aの最小寸法が、交差方向における第1貫通孔22aの最小寸法よりも大きく、ビア導体25と第1絶縁部22との間に第2絶縁部23が介在していない点である。第1貫通孔22aの寸法D22及び第2貫通孔23aの寸法D23は、第2巻線部241側から第1巻線部211側に向かうにつれて大きくなっている。
【0049】
次に、コイル部品2の製造方法について説明する。コイル部品2は、第1巻線部211が形成された状態(図5(b)に示される状態)までは、コイル部品1と同様の工程によって形成される。第1巻線部211を形成した後、第1巻線部211の上に第1絶縁部22を形成する。このとき、第2平面コイル24側から第1平面コイル21側に向かうにつれて寸法D22が大きくなる第1貫通孔22aを形成する。このような第1貫通孔22aは、例えば第1絶縁部22をエッチングする条件を調整することによって形成され得る。次に、めっきを行い、第1絶縁部22内にビア導体25の一部を形成する。次に、第1絶縁部22上に第2絶縁部23を形成する。このとき、第2巻線部241側から第1巻線部211側に向かうにつれて寸法D23が大きくなる第2貫通孔23aを形成する。その後、コイル部品1の製造方法と同様の工程により第2平面コイル24、導体ポスト19A,19B、被覆部7、カバー絶縁層30、及び外部端子40A,40Bを形成する。以上の工程により、図9に示されるコイル部品2が形成される。
【0050】
以上説明したように、コイル部品2も、第1巻線部211を覆う第1絶縁部22と、第1絶縁部22に対して積層された第2絶縁部23と、を備えている。これにより、コイル部品1と同様に、第1巻線部211の厚さが大きく、第1絶縁部22の平坦性が低下した場合であっても、第2絶縁部23によって第1絶縁部22の凹凸を埋め、第1絶縁部22及び第2絶縁部23の全体の平坦性を保つことができる。したがって、第1巻線部211の厚さT211を大きくした場合であっても、コイル部品1の全体の大きさを維持しつつ、第1巻線部211と第2巻線部241との短絡を抑制することが可能である。
【0051】
また、コイル部品2において、積層方向に交差する交差方向における第2貫通孔23aの寸法D23は、第2巻線部241側から第1巻線部211側に向かうにつれて大きくなっている。これにより、第1貫通孔22a側における第2貫通孔23aの寸法D23が大きいので、積層方向から見て、第1貫通孔22aと第2貫通孔23aとが互いに重なる部分を形成しやすくなる。すなわち、第1貫通孔22aに対して第2貫通孔23aをアライメントしやすくなる。したがって、ビア導体25により第1巻線部211と第2巻線部241とを確実に接続することができる。
【0052】
また、コイル部品2において、積層方向に交差する交差方向における第2貫通孔23aの最小寸法は、交差方向における第1貫通孔22aの最小寸法より大きい。この構造においても、積層方向から見て、第1貫通孔22aと第2貫通孔23aとが互いに重なる部分を形成しやすくなる。したがって、ビア導体25により第1巻線部211と第2巻線部241とを確実に接続することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態においては、コイル部20が2つの巻線部(第1巻線部211及び第2巻線部241)を有する例について説明したが、コイル部20は、3つ以上の巻線部を有していてもよい。例えば、コイル部20が第2巻線部241に対して積層された第3巻線部を更に備える場合、第2巻線部241と第3巻線部との間にも、第1絶縁部22の絶縁層222及び第2絶縁部23に相当する2つの絶縁層を設けてもよい。
【0054】
また、コイル部品1は、磁性基板10に代えて、被覆部7と同じ材質の磁性樹脂によって形成された磁性樹脂層を備えていてもよい。この場合、コイル部品1の磁性基板10を研磨又は機械的な剥離等によって除去した後、磁性基板10の除去によって露出した面に磁性樹脂を塗布することにより、磁性樹脂層を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…コイル部品、10…磁性基板、211…第1巻線部、22…第1絶縁部、22a…第1貫通孔、23…第2絶縁部、23a…第2貫通孔、241…第2巻線部、242…第3絶縁部、25…ビア導体、D22,D23…寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10