(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記周波数処理が実行される1周期でのデューティー比を、前記周波数処理が実行されなかった場合の1周期でのデューティー比に補正する、請求項1記載の画像形成装置。
前記制御部は、前記PWM制御での1周期に供給する電力量が小さい程、前記PWM制御の駆動周波数幅を小さい周波数幅とするための処理を前記周波数処理として実行する、請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ、発明を実施するための形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0012】
<実施形態1>
[画像形成装置の構成]
本実施形態の画像形成装置について説明する。
図1は、この画像形成装置1501を説明するための図である。実施の形態における画像形成装置1501は、その内部の略中央部にベルト部材として中間転写ベルト1502を備えている。
【0013】
中間転写ベルト1502の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応する4つの作像ユニット1506Y,1506M,1506C,1506Kが中間転写ベルト1502に沿って並んで配置されている。
【0014】
作像ユニット1506Y,1506M,1506C,1506Kは、感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kをそれぞれ有している。各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電器1508と、プリントヘッド部1509と、現像器1510と、中間転写ベルト1502を挟んで各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kと対向する1次転写ローラ1511Y,1511M,1511C,1511Kがそれぞれ配置されている。
【0015】
中間転写ベルト1502の中間転写ベルト駆動ローラ1505で支持された部分には、2次転写ローラ1503が圧接されており、2次転写ローラ1503と中間転写ベルト1502とのニップ部が、2次転写領域1530になっている。2次転写領域1530の後流側の搬送路1541の下流位置には、定着装置100が配置されている。
【0016】
画像形成装置1501の下部には、給紙カセット1517が着脱可能に配置されている。給紙カセット1517の内部に積載収容された用紙Pは、給紙ローラ1518の回転によって最上部のものから1枚ずつ搬送路1540に送り出されることになる。中間転写ベルト1502の最下流側の作像ユニット1506Kと2次転写領域1530との間には、レジストセンサを兼用する画像濃度(AIDC)センサ1519が設置されている。
【0017】
次に、以上の構成からなる画像形成装置1501の概略動作について説明する。外部装置(例えばパソコン)から画像形成装置1501の画像信号処理部(図示せず)に画像信号が入力される。画像信号が入力された画像信号処理部では、この画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成する。各作像ユニット1506Y,1506M,1506C,1506Kのプリントヘッド部1509は、それぞれデジタル画像信号に基づいて発光し、各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kに対して露光を行なう。
【0018】
各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kの上に形成された静電潜像は、各現像器1510によりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。各色のトナー画像は、各1次転写ローラ1511Y,1511M,1511C,1511Kの作用により、矢印A方向に移動する中間転写ベルト1502上に順次重ね合わされて1次転写される。
【0019】
中間転写ベルト1502上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト1502の移動にしたがって2次転写領域1530に達する。この2次転写領域1530において、重ね合わされた各色トナー画像は、2次転写ローラ1503の作用により、用紙Pに一括して2次転写される。
【0020】
トナー画像が2次転写された用紙P(未定着画像が形成された用紙P)は、搬送路1541を経由して搬送装置(
図2のCPU301)により、定着装置100に搬送される。この定着装置100において、トナー像は、用紙Pに定着される。
【0021】
図2は、画像形成装置1501のハードウェア構成を示した図である。
図2を参照して、画像形成装置1501は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)101と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)302と、データを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)303と、フラッシュメモリ304と、タッチスクリーン305と、スピーカ306とを備える。
【0022】
タッチスクリーン305は、表示装置としてのディスプレイ3051と、入力装置としてのタッチパネル3052とにより構成される。具体的には、タッチスクリーン305は、ディスプレイ3051(たとえば液晶ディスプレイ)上にタッチパネル3052を位置決めした上で固定することにより実現される。なお、タッチスクリーンは、タッチパネルディスプレイ、タッチパネル付きディスプレイ、あるいはタッチパネルモニタとも称される。なお、タッチスクリーン305においては、タッチ位置の検出方法として、たとえば抵抗膜方式または静電容量方式を用いることができる。
【0023】
フラッシュメモリ304は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュメモリ304は、CPU301が実行するオペレーティングシステムおよび各種のプログラム、各種のコンテンツおよびデータを格納している。また、フラッシュメモリ304は、画像形成装置1501が生成したデータ、画像形成装置1501の外部装置から取得したデータ等の各種データを揮発的に格納する。
【0024】
スピーカ306は、CPU301からの指令に応じて音を発生させる。CPU301は、タッチパネル3052からの出力に基づいて入力位置を特定し、当該特定した入力位置に基づいた画面表示を行なう。
【0025】
画像形成装置1501(定着装置100)における処理は、各ハードウェアおよびCPU301により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、フラッシュメモリ304に予め記憶されている場合がある。同図に示される画像形成装置1501を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、フラッシュメモリ304、メモリカードその他の記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、画像形成装置1501の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
[定着装置の構成]
次に、定着装置100の構成を説明する。
図3は、定着装置100を説明するための図である。定着装置100は、整流回路102、第1チョッパ回路104、第2チョッパ回路106、定着ユニット109、制御部114などを含む。定着ユニット109は、第1ヒータ108、第2ヒータ110、および温度センサ112を含む。また、第1ヒータ108および第2ヒータ110は共に、ハロゲンヒータである。なお、変形例として、第1ヒータ108および第2ヒータ110の少なくとも1は、他のヒータでもよい。たとえば、他のヒータとは、カーボンヒータ、セラミックヒータなどである。また、
図3の構成について、実際には、ノイズフィルタなども含まれる。また、制御部114は、画像形成装置1501の制御部としてもよく、定着装置100の専用の制御部としてもよい。
【0027】
整流回路102は、AC電源2からのAC(alternating current)電流をDC(Direct Current)電流に整流する。第1チョッパ回路104および第2チョッパ回路は、整流回路102の後段に配置される。第1チョッパ回路104および第2チョッパ回路は、リアクトル、還流素子、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子から構成される。以下では、第1チョッパ回路104および第2チョッパ回路をまとめて、「チョッパ回路」ともいう。
【0028】
第1チョッパ回路104は、第1ヒータ108に接続されている。第2チョッパ回路106は、第2ヒータ110に接続されている。温度センサ112は、定着ユニット109の温度を検出し、該検出した温度は、制御部114に対して送信される。制御部114は、該送信された温度に基づいて、定着ユニット109への供給電力を決定する。制御部114は、該決定された供給電力に基づいて、第1チョッパ回路104のDuty比、および第2チョッパ回路106のDuty比を決定する。制御部114は、第1チョッパ回路104のDuty比に基づいて、第1チョッパ回路104への第1PWM信号のON(送信)またはOFF(非送信)を繰り替えす。また、制御部114は、第2チョッパ回路106のDuty比に基づいて、第2チョッパ回路106への第2PWM信号のON(送信)またはOFF(非送信)を繰り替えす。制御部114からチョッパ回路に対してPWM信号が出力されると、チョッパ回路(スイッチング素子)は決定されたDuty比に応じた比率の時間ONとなる。これにより、チョッパ回路と接続されているヒータにはDuty比(とヒータ定格電力)に応じた電力が供給される。
【0029】
このように、制御部114は、第1ヒータ108に流れる電流をPWM制御することにより、第1ヒータ108に供給する電力量を制御する。また、制御部114は、第2ヒータ110に流れる電流をPWM制御することにより、第2ヒータ110に供給する電力量を制御する。
【0030】
本実施形態では、チョッパ回路を制御するPWM信号は、PWM周波数が20kHz以上で制御される。PWM周波数は、PWM信号のパルスの周波数であり、PWM信号のON時のチョッピング制御の周波数である。仮に、PWM周波数が20kHz以下では、人間の可聴周波数領域となるため製品動作音が大きくなりユーザーが該製品動作音に対して気になってしまうという問題がある。また、PWM周波数を上げ過ぎるとその分IGBTの動作回数が増えてスイッチングロスが大きくなってしまう。本実施形態では、これらの実情を鑑みて、本実施形態の画像形成装置は、PWM周波数を20kHz以上で、かつPWM周波数を上げ過ぎないようにしている。
【0031】
また、一般的に、20kHzのチョッパ回路(IGBT)のスイッチングノイズがEMC(electromagnetic compatibility:エミッション)を悪化させるため、ノイズ対策が必要となる。このノイズ対策として、IGBTのゲート抵抗値調整、スナバ回路の追加、フェライトビーズ追加といった対策が考えられる。また、このノイズ対策として、AC2電源と整流回路102との間に、ノーマルモードコイル、コモンモードチョークコイル、Xコンデンサ、Yコンデンサ、AC束線へのフェライトコアの追加といった入力部でのノイズフィルタによる対策も考えられる。しかしながら、これらの対策では、損失悪化、基板大型化、コストUPなどを引き起こすことから、有用な対策ではない。
【0032】
[ジッタ制御について]
本実施形態では、画像形成装置のノイズ対策として、ジッタ制御を実行する。ジッタ制御とは、PWM制御のPWM周波数幅(駆動周波数幅)を、PWM制御での1周期に供給する電力量(またはDuty比)に応じた周波数幅とするための制御である。また、このジッタ制御は、第1チョッパ回路104(第1ヒータ108)および第2チョッパ回路106(第2ヒータ110)それぞれに対して実行される。
【0033】
図4は、本実施形態のPWM制御によるPWM信号の波形を説明するための図である。
図4(A)〜
図4(C)について「ON」はチョッパ回路のON時間を示し、「OFF」はチョッパ回路のOFF時間を示す。また、
図4では、PWM周期のうち、第1周期、第2周期、および第3周期とともに、第4周期の途中部分を示す。
図4(A)は、ジッタ制御が実行されていない場合を示す図である。この場合のPWM周波数を20kHzであるとすることから、第1周期〜第4周期を含む全てのPWM周期は50μsecであるとする。
【0034】
図4(A)において、第1周期のDuty比は20%であるとする。この場合には、PWM信号が出力される時間(以下、ON時間という。)は、10μsecである。また、第2周期のDuty比は50%であるとする。この場合のON時間は、25μsecである。また、第3周期のDuty比は70%であるとする。この場合のON時間は、35μsecである。
【0035】
図4(B)は、ジッタ制御が実行された場合を示す図である。
図4(B)の第1周期に相当する箇所に示すように、Duty比が20%である場合には、本実施形態ではジッタ制御は実行されない。
図4(B)の第2周期に相当する箇所に示すように、Duty比が50%である場合には、20kHzのPWM周波数に1kHZを加算することにより、21kHzに変更する(変調する)。また、
図4(B)の第3周期に相当する箇所に示すように、Duty比が70%である場合には、20kHzのPWM周波数に3kHZを加算することにより、23kHzに変更する(変調する)。
【0036】
図5は、ジッタ制御で用いられるジッタ制御テーブルを模式的に示したものである。
図5のジッタ制御テーブルは、たとえば、ROM302に格納されている。
図5の左端の欄は、ジッタ制御が行われなかった場合の1周期(PWM周期)でのPWM比を示している。また、括弧書きは、該1周期においてヒータに供給された電力を示している。たとえば、Duty比が30%以下である場合には、供給される電力は0〜390Wであることを示している。また、
図5のジッタ制御テーブルは、第1ヒータ108についてのPWM制御、および第2ヒータ110についてのPWM制御それぞれについて適用される。
【0037】
また、右側の欄は、PWM周期のジッタ設定を示したものである。
図5のジッタ量とは、変更後のPWM周波数の幅をいう。換言すると、ジッタ量とは、変更後のPWM周波数の最大値と最小値との差分をいう。ジッタ量を変調度ともいう。
【0038】
たとえば、30%以下であるDuty比には、ジッタ量として「無し」が対応付けられている。したがって、Duty比が30%以下である場合には、PWM周期は変更されることなく、20kHzのままとなる(
図4(B)の第1周期の相当する箇所参照)。
【0039】
また、30%より大きく60%未満であるDuty比には、ジッタ量として「小」が対応付けられている。
図5の例では、小のジッタ量は「1kHz」とされる。これは、PWM周波数に対して、0〜1kHzのいずれかの周波数が付加されることを示す。したがって、Duty比が30%より大きく60%未満である場合には、変更後(周波数付加後)のPWM周波数は、20〜21kHzのいずれかとなる。
図4(C)の第2周期の相当する箇所では、変更後のPWM周波数が21kHzである場合が示されている。
【0040】
また、60%以上であるDuty比には、ジッタ量として「大」が対応付けられている。
図5の例では、大のジッタ量は「3kHz」とされる。これは、PWM周波数に対して、0〜3kHzのいずれかの周波数が付加されることを示す。したがって、Duty比が30%より大きく60%未満である場合には、変更後(周波数付加後)のPWM周波数は、20〜23kHzのいずれかとなる。
図4(C)の第3周期の相当する箇所では、変更後のPWM周波数が23kHzである場合が示されている。
【0041】
次に、ジッタ制御に関連する処理のフローチャートを説明する。この処理は、制御部114により、所定時間毎に実行されるタイマ割込処理である。
図6は、このフローチャートを示す図である。
【0042】
S2に示すように、制御部114は、カウンタ値nを1インクリメントする。ここで、カウンタ値nとは、PWM信号が送信された回数を示す値である。つまり、カウンタ値は、1のPWM周期経過毎に、1増加される値である。
【0043】
次に、S4において、制御部114は、Duty比を取得する。ここでは、制御部114は、温度センサ112により検出された定着ユニット109の温度に基づいて、Duty比を取得する。
【0044】
S6において、制御部114は、Duty比≦30%であるか否かが判断される。S6において、YESと判断された場合には、
図5でも説明したように、PWM周波数は変更されないことから、処理を終了する。
【0045】
S6においてNOと判断された場合には、S8に進む。S8において、30%<Duty比<60%であるか否かが判断される。S8においてYESと判断された場合には、S10に進む。S10において制御部114はカウンタ値を取得する。
【0046】
次に、S12において、第1正弦波およびS10で取得したカウンタ値に基づいてPWM周波数を特定する。そして、該特定されたPWM周波数に変更する。
図7(A)は、第1正弦波の一例を示した図である。
【0047】
図7(A)では、横軸はカウンタ値を示しており、縦軸はPWM周波数(変更後のPWM周波数)を示している。
図7(A)の第1正弦波は、正弦波の一部である。また、カウンタ値が0またはNである場合には、PWM周波数として20kHzが設定されており、カウンタ値がN/2である場合には、PWM周波数として23kHzが設定されている。
【0048】
ここで、Nとは、カウンタ値の最大値である。
図6のS2のインクリメント処理において、カウンタ値がNに到達した場合には、カウンタ値は初期化される(0にされる)。S12では、S10で取得したカウンタ値に対応する周波数を、
図7(A)の正弦波に基づいて特定する。たとえば、
図7(A)の正弦波を示す式(以下、第1正弦波式という。)であるY=AsinXを用いるようにすればよい。ここで、Xは、横軸のカウンタ値を示し、Yは、縦軸の周波数を示し、Aは定数を示す。制御部114は、この第1正弦波式のXに、取得したカウンタ値を代入してPWM周波数を特定する。そして、制御部114は、該特定したPWM周波数に変更する。制御部114は、該変更後のPWM周波数となるように、PWM制御を実行する。
【0049】
また、S12では、第1正弦波を用いずに、
図7(B)に示す三角波(以下、第1三角波)を用いて、制御部114は、周波数を特定するようにしてもよい。たとえば、制御部114は、
図7(B)の第1三角波を示す式(以下、三角波式という。)を用いて、PWM周波数を特定するようにしてもよい。
【0050】
また、S8でNOと判断された場合には、S14に進む。S14において制御部114はカウンタ値を取得する。
【0051】
次に、S16において、第1正弦波およびS14で取得したカウンタ値に基づいてPWM周波数を特定する。そして、該特定されたPWM周波数に変更する。
図8(A)は、第2正弦波の一例を示した図である。
【0052】
図8(A)では、横軸はカウンタ値を示しており、縦軸はPWM周波数(変更後のPWM周波数)を示している。
図8(A)の第2正弦波は、正弦波の一部である。また、カウンタ値が0またはNである場合には、PWM周波数として20kHzが設定されており、カウンタ値がN/2である場合には、PWM周波数として21kHzが設定されている。S16では、S14で取得したカウンタ値に対応する周波数を、
図8(A)の正弦波に基づいて特定する。たとえば、
図8(A)の正弦波を示す式(以下、第2正弦波式という。)であるY=BsinXを用いるようにすればよい。ここで、Xは、横軸のカウンタ値を示し、Yは、縦軸の周波数を示し、Bは定数を示す。制御部114は、この第2正弦波式のXに、取得したカウンタ値を代入してPWM周波数を特定する。そして、制御部114は、該特定したPWM周波数に変更する。制御部114は、該変更後のPWM周波数となるように、PWM制御を実行する。
【0053】
また、S16では、第2正弦波を用いずに、
図8(B)に示す三角波(以下、第2三角波)を用いて、制御部114は、周波数を特定するようにしてもよい。たとえば、制御部114は、
図7(B)の第2三角波を示す式(以下、三角波式という。)を用いて、PWM周波数を特定するようにしてもよい。
【0054】
また、変形例として、正弦波式または三角波式を用いずに、他の式を用いて、PWM周波数を特定するようにしてもよい。また、変形例として、S12およびS16において正弦波式または三角波式を用いずに、カウンタ値とPWM周波数とが対応付けられたテーブル表を用いるようにしてもよい。たとえば、S12で用いられる第1テーブルと、S16で用いられる第2テーブルとが予め作成されて、所定領域(たとえば、ROM302)に格納されている。制御部114は、S12において、第1テーブルを参照してPWM周波数を特定するようにしてもよい。また、制御部114は、S16において、第2テーブルを参照してPWM周波数を特定するようにしてもよい。
【0055】
[第1ヒータと第2ヒータ]
次に、第1ヒータ108および第2ヒータ110の加熱領域について説明する。
図9は、第1ヒータ108および第2ヒータ110の加熱領域を説明するための図である。
図9において、矢印αは、定着装置100の搬送方向を示す。また、
図9では、第1用紙と第2用紙とを示しており、第1用紙はA3サイズの用紙であり、第2用紙はA4サイズの用紙であるとする。
【0056】
第1ヒータ108は、搬送方向αにおいて、第1用紙の両端の領域Bを加熱する。第2ヒータ110は、搬送方向αにおいて、第2用紙の中央の領域Aを加熱する。領域Aと領域Bとは互いに異なる領域である。
【0057】
定着装置100は、第1ヒータ108および第2ヒータ110を有することにより、たとえば、A4用紙に対して定着処理を行う場合には、第1ヒータ108による加熱を実行せずに、第2ヒータ110による加熱を実行する。また、A3用紙に対して定着処理を行う場合には、第1ヒータ108による加熱および第2ヒータ110による加熱の双方を実行する。したがって、用紙のサイズに応じて、細やかな定着処理を実行できる。
【0058】
なお、第1ヒータ108および第2ヒータ110は、それぞれの加熱領域の面積や熱容量に比例するようなヒータが用いられる。
【0059】
[本実施形態の効果]
次に、本実施形態の効果について説明する。チョッパ回路による高周波チョッパ制御は、力率悪化や高調波の発生が少ない反面、EMCノイズ(電源ノイズ:雑音端子電圧)が大きく、大規模なノイズフィルタや損失の大きなスナバ回路が必要となり、基板大型化・損失悪化・コストUPを引き起こしていた。本実施形態では、Duty比が30%よりも大きい周期については、PWM周波数に意図的にジッタを与えるジッタ制御を実行する。これにより、装置サイズを増大させずかつ部品コストも低減できつつ、20kHzで発生するEMCノイズエネルギーをスペクトラム拡散させることでノイズレベルを低減させることができる。
【0060】
図10は、本実施形態の効果を説明するための図である。
図10(A)、
図10(B)それぞれの横軸は、PWM周波数に基づく周波数を示し、縦軸は規格値マージンを示す。
図10(A)は、ジッタ制御が実行されていない場合を示すものであり、
図10(B)は、ジッタ制御が実行された場合を示すものである。
図10(B)でのジッタ制御は、変調度(ジッタ量)が1kHzであり、PWM周波数を求める式として第1三角波式(
図7(B))を用いている。また、該第1三角波の周期(
図10(B)では、変長周期)は、1kHzであるとする。
【0061】
図10(A)および
図10(B)からも明らかなように、ジッタ制御が実行された場合には、ジッタ制御が実行されなかった場合と比較して、マージンQP値は約5dB改善され、マージンCISPR−AV値は約7dB改善された。
【0062】
また、制御部114は、PWM制御のPWM周波数の幅を、PWM制御での1周期に供給する電力量(Duty比)に応じた周波数幅とするための周波数処理(ジッタ処理)を実行する。ここで、
図5などにも示すように、PWM制御での1周期に供給する電力量(Duty比)が小さい程、PWM制御の駆動周波数幅を小さい周波数幅(ジッタ量)とするための処理が実行される。この処理の効果について説明する。
【0063】
PWM周波数は前述したとおり人の可聴周波数領域から外すために20kHzとしている。ジッタ量を付与する際は同じく可聴周波数領域から外すために周波数を20kHzより大きくする方向で制御される。PWM周波数を上げることはIGBT(チョッパ回路)のスイッチング回数を増やすことと同意となる。そうすると、IGBTでのスイッチングロスが増えて装置全体のエネルギー効率が低下する(以下、「スイッチング損失」という)。昨今の画像形成装置においてエネルギー効率の低下は商品競争力の低下を意味するため、ジッタ制御による製品エネルギー効率の低下は抑制する必要がある。
【0064】
EMCノイズエネルギーはヒータ投入電力と相関があり、ヒータ投入電力が小さいほどEMCノイズエネルギーも小さくなる。
図11は、この相関を説明するための図である。
図11は1300Wのヒータを示したものであり、横軸は該ヒータへの供給電力(Duty比)を示したものであり、縦軸は規格値マージンを示したものである。
図11に示すように、ヒータ供給電力を小さくする(Duty比を下げる)ほど、EMCノイズレベルが下がっている現象が存在することが分かる。
【0065】
この現象を鑑みて、本実施形態の画像形成装置は、
図5に示したテーブルに基づいたジッタ制御を実行する。
図5では、Duty比が60%以上ではEMCノイズも大きい為、ジッタ量を大きく(+3kHz)設定することでスペクトラム拡散を広くとりノイズ抑制効果を大きくすることができる。また、30%〜60%であるDuty比ではEMCノイズレベルも小さくなるため、ジッタ量を小さく(+1kHz)設定することでEMCノイズ抑制とスイッチング損失の抑制を両立させる設定としている。また、30%以下のDuty比ではEMCノイズレベルは更に小さくなるため、ジッタ制御を行わずにスイッチング損失を増加させない設定としている。
【0066】
このように、PWM周波数を、PWM制御での1周期に供給する電力量に応じた周波数幅とするためのジッタ処理を実行していることから、EMCノイズ抑制とスイッチング損失の抑制とを考慮した制御を実行することができる。
【0067】
<実施形態2>
次に、実施形態2を説明する。
図4(B)でも説明したように、PWM周波数にジッタを付与するとON時間が変動する。たとえば、PWM周波数を20kHz(PWM周期は50μsec)であるときにおいて、1周期のDuty比を50%で制御する際にはON時間は25μsecとなる。この20kHzのPWM周波数を21kHz(PWM周期は47μsec)に変更した場合には、Duty比は53%となり、該Duty比は変動することになる。該Duty比が変動すると、画像形成装置の生産性が低下する。
【0068】
図12は、画像形成装置の生産性が低下することを示す図である。
図12(A)および
図12(B)の上図は、PWM周波数を示したものであり、下図は電流波形を示したものである。上図のPWM周波数は、20kHzからの変化を示しており、下図の実線Duty比が100%であるときにヒータに流された電流を示し、破線が設定されたDuty比に応じてヒータに流された電流を示す。また、曲線内の縦線の太さは、PWM周波数を示す。つまり、太い縦線はPW周波数が大きいことを示し、細い縦線はPW周波数が小さいことを示す。
【0069】
図12(A)に示すように、PWM周波数が一定(たとえば、20kHz)である場合には、破線で示す電流波形に歪みがないことから、力率は良くなる。一方、
図12(B)に示すように、PWM周波数の変動が周期的に行われた場合には、破線で示す電流波形に歪みが生じることになり、力率は悪化する。
【0070】
このようにジッタ制御によるPWM周波数の変動が周期的に行われると
図12(B)に示すようにヒータに供給される電流レベルも周期的に変動するため、SIN波形状の電流波形に歪が生じて力率が悪化する。力率が悪化するとヒータ発熱量に対してより多くの電流が必要となり、画像形成装置の生産性を低下させる。
【0071】
そこで、本実施形態では、該生産性の低下を防止するために、ジッタ処理が実行される1周期でのDuty比を、ジッタ処理が実行されなかった場合の1周期でのDuty比に補正する。この補正処理は、補正部1142(
図3参照)が実行する。
【0072】
この補正処理を
図4(C)を用いて説明する。第1周期については、ジッタ制御は実行されないことから、補正部1142は、補正処理を実行しない。第2周期については、ジッタ制御が実行されていることから、補正部1142は、補正処理を実行する。
【0073】
補正部1142は、まず、ジッタ制御が実行されなかった場合の2周期でのDuty比を取得する。該Duty比は50%である。また、ジッタ制御後の第2周期は、47μsecであり、Duty比は53%である。補正部1142は、ジッタ制御後の第2周期について、53%であるDuty比を50%となるように、該Duty比を補正する。たとえば、補正部1142は、ON時間を23.5μsecと設定することにより、53%であるDuty比を50%に補正することができる。制御部114は、該設定されたON時間に基づいて、PWM信号を送信する。
【0074】
次に、第3周期について説明する。補正部1142は、まず、ジッタ制御が実行されなかった場合の3周期でのDuty比を取得する。該Duty比は70%である。ジッタ制御後の第3周期は、43μsecであり、Duty比は81%である。補正部1142は、ジッタ制御後の第3周期について、81%であるDuty比を70%となるように、該Duty比を補正する。たとえば、補正部1142は、ON時間を30μsecと設定することにより、81%であるDuty比を70%に補正することができる。制御部114は、該設定されたON時間に基づいて、PWM信号を送信する。
【0075】
図6の処理では、S12の処理の後に、破線で示すS13の処理として、補正部1142は、Duty比を補正する。また、S16の処理の後に、破線で示すS17の処理として、補正部1142は、Duty比を補正する。
【0076】
このように、補正部1142は、ジッタ制御が実行される1のPWM周期でのDuty比を、ジッタ制御が実行されなかった場合の1のPWM周期でのデューティー比に補正する。したがって、
図12(B)に示した電流の波形(破線の波形)を、
図12(A)に示す電流の波形(破線の波形)と同一の波形とする、または
図12(A)に示す電流の波形(破線の波形)に近い波形とすることができる。よって、電流の波形(破線の波形)生じる歪みを消失させる、または低減させることから、力率の悪化を防止できる。
【0077】
<実施形態3>
次に、実施形態3について説明する。
図13は、実施形態3の定着装置150を説明するための図である。
図13と、
図3とを比較すると、
図3では2つのチョッパ回路(第1チョッパ回路104および第2チョッパ回路106)を備えているのに対し、
図13では1つのチョッパ回路204と、遮断部206とを備えている点で両図面は異なる。遮断部206は、トライアックやサイリスタ等のスイッチング素子を用いて構成される。また、遮断部206の後段に、突入電流防止素子、および短絡手段を設置するようにしてもよい。突入電流防止素子は、たとえば、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタにより構成される。
【0078】
遮断部206は、チョッパ回路204は後段に設置されている。チョッパ回路204は、第2ヒータ110に接続されており、遮断部206は第1ヒータ108に接続されている。
【0079】
制御部124は、チョッパ回路204に対してPWM信号を送信することにより、PWM制御を実行できる。また、制御部124は、遮断部206に対して切替信号を送信することにより第1ヒータ108の加熱・非加熱を切替えることができる。また、第2ヒータ110に通電されており、かつ遮断部206がONにされているときに、第2ヒータ110へは通電される。
【0080】
図13の構成は2つのヒータに対して1つのチョッパ回路で電力供給を行うため、
図3の構成よりも定着装置のサイズを小さくでき、かつ部品コストも小さくできるというメリットがある。しかしながら、
図13の構成では、
図5記載のテーブルが適用できない。たとえば、Duty比を60%とした制御を実行する場合において、PWM制御により第1ヒータ108のみに電力供給している場合(以下、「第1の場合」という。)と、PWM制御により第1ヒータ108および第2ヒータ110の双方に電力供給している場合(以下、「第2の場合」という。)とで実際のヒータ供給電力が異なる。したがって、第1の場合と第2の場合とでEMCノイズレベルも異なり
図3のテーブルではEMCノイズ抑制とスイッチング損失抑制を両立できる設定が定まらない。
【0081】
そこで、本実施形態では、チョッパ回路204に接続されている第2ヒータ110に対して通電されているときにおいて、第1ヒータ108に通電されているか否か(通電であるか非通電であるか)によって、ジッタ量を異ならせるテーブルとする。
【0082】
図14は、本実施形態のジッタ制御テーブルを模式的に示したものである。
図14の例では、第2ヒータ110に対して通電され、かつ第1ヒータ108に対して通電されていないという条件を第1条件とする。また、第1ヒータ108および第2ヒータ110に対して通電されるという条件を第2条件とする。第1条件であるときには、1のPWM周期での第1ヒータ108の電力量(=通電されていないことから0W)と、Duty比が100%である第2ヒータ110の電力量との合計量は、870Wとなる。また、第1条件であるときにおいて、1のPWM周期での第1ヒータ108の電力量(=通電されていないことから0W)と、Duty比が70%である第2ヒータ110の電力量との合計量は、609Wとなる。
【0083】
また、第2条件であるときには、1のPWM周期でのDuty比が100%である第2ヒータ110の電力量と、1のPWM周期での第1ヒータ108の電力量との合計量は、1300Wとなる。また、第2条件であるときにおいて、1のPWM周期でのDuty比が70%である第2ヒータ110の電力量と、1のPWM周期での第1ヒータ108の電力量との合計量は、910Wとなる。
【0084】
そして、
図14の例では、2つのヒータの電力合計量が小さい方(つまり、第1条件であるとき)では、ジッタ量を「小(1kHz)」とする。また、2つのヒータの電力合計量が大きい方(つまり、第2条件であるとき)では、ジッタ量を「大(3kHz)」とする。
【0085】
また、制御部124は、実施形態2で説明した補正部1142の機能を備えるようにしてもよい。
【0086】
本実施形態3の構成によれば、2つのヒータ(第1ヒータ108および第2ヒータ110)を備える場合において、一方のヒータに対してはPWM制御を行い、他方のヒータに対してはPWM制御とは異なる制御(たとえば、スイッチング制御)を実行するようにできる。したがって、2つのヒータそれぞれについてPWM制御を実行する定着装置と比較して、定着装置のサイズを小さくでき、かつ部品コストも小さくできるというメリットがある。
【0087】
また、本実施形態3の構成であっても、PWM制御のPWM周波数の幅を、PWM制御での1周期に第1ヒータ108に供給する電力量と第2ヒータ110に
供給する電力量との合計量に応じた周波数幅(ジッタ量)とするためのジッタ処理を実行する。したがって、ノイズレベルを適切に低減させることができる。
【0088】
[その他]
実施形態1では、PWM制御の対象となるヒータの数は2つであるとして説明した。しかしながら、PWM制御の対象となるヒータの数は1つとしてもよく、3つとしてもよい。また、実施形態3では、PWM制御の対象となるヒータの数は1つであり、PWM制御とは異なる制御の対象となるヒータの数も1つであるとして説明した。しかしながら、PWM制御の対象となるヒータの数を2以上としてもよい。PWM制御の対象となるヒータの数が2以上となる場合には、たとえば、
図14のテーブルを、該2以上のヒータそれぞれのPWM制御に適用される。
【0089】
また、PWM制御とは異なる制御の対象となるヒータの数が2つ以上であるときには、ユーザから入力されたジョブなどに基づいて、通電するヒータを選択するようにしてもよい。
【0090】
また、今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。