(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2モーターの駆動力が制御されることによって、前記第2モーターの動力が前記第1モーターの回転を補助するアシスト制御、または、前記第2モーターの動力が前記第1モーターの回転を妨げるブレーキ制御が行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の駆動装置。
前記制御部は、制御対象である前記搬送ローラーと、用紙の搬送方向に沿って前記搬送ローラーに隣接する他の搬送ローラーとを同時に起動させる同期制御を行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。
図1に示すとおり、本実施形態の画像形成装置100は、制御部110、記憶部120、画像読取部130、画像形成部140、定着部150、給紙部160、および用紙搬送部170を備えている。
【0028】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)であり、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を行う。
【0029】
記憶部120は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等からなる。記憶部120には、用紙500を搬送するための搬送ローラーを駆動する2台のモーターの制御に用いられる制御テーブルと、DCブラシレスモーターの出力トルクを変更するために用いられる修正テーブルが格納されている。制御テーブルは、用紙500の種類別に複数記憶されている。
【0030】
画像読取部130は、蛍光ランプ等の光源およびCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー等の撮像素子を備えている。画像読取部130は、所定の読み取り位置にセットされた原稿に光源から光を当て、その反射光を撮像素子で光電変換して、その電気信号から画像データを生成する。
【0031】
画像形成部140は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の各色のトナーに対応した作像ユニット141Y〜141Kを備えている。各作像ユニット141Y〜141Kにより帯電、露光、および現像のプロセスを経て形成されたトナー画像は、中間転写ベルト142上に順次重ねられて、2次転写ローラー143により用紙500上に転写される。
【0032】
定着部150は、加熱ローラー151および加圧ローラー152を備えており、両ローラー151,152の定着ニップに搬送された用紙500を加熱および加圧して、用紙500上のトナー画像をその表面に溶融定着する。
【0033】
給紙部160は、複数の給紙トレイ161,162を備えており、給紙トレイ161,162に収容された用紙500を1枚ずつ下流側の搬送経路に送り出す。
【0034】
用紙搬送部170は、用紙500を搬送するための複数の搬送ローラー171を備えており、画像形成部140、定着部150、および給紙部160の各部間で用紙500を搬送する。本実施形態の画像形成装置100では、複数の搬送ローラー171のうち1つ以上の搬送ローラーが、2台のモーターを備えた駆動装置200(
図2参照)により駆動される。また、各搬送ローラー171の用紙搬送方向の上流側には、用紙500の有無を検知するためのフォトセンサー172が設けられている。
【0035】
次に、
図2および
図3を参照して、2台のモーターにより搬送ローラー171を駆動する駆動装置200について詳細に説明する。
【0036】
図2は、駆動装置200の概略構成を示す平面図であり、
図3は、駆動装置200の制御系を示すブロック図である。
【0037】
図2に示すとおり、駆動装置200は、ステッピングモーター210およびDCブラシレスモーター220を備えている。ステッピングモーター210は、複数のギア211,212を介して、搬送ローラー171の回転軸171aに対して動力を伝達可能に連結されている。また、DCブラシレスモーター220は、複数のギア221,222を介して、搬送ローラー171の回転軸171aに対して動力を伝達可能に連結されている。なお、ステッピングモーター210の出力トルクは、DCブラシレスモーター220の出力トルクよりも大きく、搬送ローラー171の回転速度は、ステッピングモーター210の回転速度により制御される。
【0038】
また、
図3に示すとおり、画像形成装置100の制御部110は、ステッピングモーター210およびDCブラシレスモーター220の動作を制御する。
【0039】
制御部110は、ステッピングモーター210用のドライバー215にクロック信号(CLK)を送信して、ステッピングモーター210の動作周波数を設定することにより、ステッピングモーター210の回転速度を制御する。また、制御部110は、ドライバー215に設定電流信号を送信して、ステッピングモーター210の電流値を設定することにより、ステッピングモーター210に発生するトルクを制御する。また、制御部110は、ステッピングモーター210に電気的に接続されており、ドライバー215からステッピングモーター210に実際に供給される電流の電流値(以下、「実効電流値」とも称する)を検出する。なお、ステッピングモーター210が高速回転する場合、ステッピングモーター210を定電流制御しても、ステッピングモーター210は定電圧制御の挙動を示し、ステッピングモーター210にかかる負荷に応じて実効電流値が変化する。
【0040】
また、制御部110は、DCブラシレスモーター220の内蔵ドライバー225にPWM(Pulse Width Modulation)信号を送信して、DCブラシレスモーター220の制御値(デューティ指令値)を設定することにより、DCブラシレスモーター220に発生するトルクを制御する。
【0041】
また、制御部110は、用紙500の搬送経路上に配置された複数のフォトセンサー172に電気的に接続され、フォトセンサー172の出力信号を取得する。
【0042】
なお、画像形成装置100は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上述した構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0043】
以上のとおり構成される画像形成装置100では、2台のモーター210,220により駆動される搬送ローラー171が用紙500を搬送する際、搬送ローラー171にかかる負荷が検出され、次の用紙500を搬送する際のDCブラシレスモーター220の駆動力が変更される。以下、
図4〜
図8を参照して、本実施形態に係る画像形成装置100の動作について詳細に説明する。
【0044】
図4および
図5は、画像形成装置100により実行される用紙搬送処理の手順を示すフローチャートである。なお、
図4および
図5のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、記憶部120にプログラムとして記憶されており、制御部110により実行される。また、以下では、複数枚の用紙500に対して同じ条件で連続的に画像を形成する印刷ジョブを画像形成装置100が実行する場合を例に挙げて説明する。
【0045】
まず、制御部110は、印刷に用いられる用紙に関する情報を取得して、用紙500の種類を認識する(ステップS101)。
【0046】
次に、制御部110は、用紙の種類別に記憶部120に記憶されている複数の制御テーブルの中から、用紙の種類に応じた一の制御テーブル300(
図6参照)を選択する(ステップS102)。
【0047】
図6は、制御テーブルの一例を示す図である。制御テーブル300は、イベント番号情報310、データ番号情報320、デューティ指令値情報330、および設定電流値情報340を有する。
【0048】
イベント番号情報310は、搬送ローラー171が用紙500を搬送する期間を複数のイベントに分けた場合の各イベントの識別情報である。イベント番号は、制御対象の搬送ローラー171の上流側に隣接する他の搬送ローラー171に用紙500が到達した時点で「0」であり、用紙の搬送状態が変化すれば「1」増加する。
【0049】
データ番号情報320は、各イベントを複数の単位期間に分けた場合の各単位期間の識別情報である。データ番号は、対応するイベントが発生した時点で「0」であり、単位期間が経過すれば「1」増加する。複数の単位期間は、互いに同じ長さの期間であり、各イベントにおけるデータ番号の数は、隣接する搬送ローラー間の用紙搬送に要する時間を上記単位期間で除算した値に相当する。
【0050】
デューティ指令値情報330は、イベント番号情報310およびデータ番号情報320により特定される単位期間におけるDCブラシレスモーター220のデューティ指令値を示す情報である。設定電流値情報340は、イベント番号情報310およびデータ番号情報320により特定される単位期間におけるステッピングモーター210の設定電流値を示す情報である。
【0051】
ステップS102に示す処理において、用紙の種類に応じた制御テーブル300を選択すれば、制御部110は、2台のモーター210,220の駆動を開始する(ステップS103)。より具体的には、制御部110は、ステッピングモーター210およびDCブラシレスモーター220が所定の回転速度で回転するように、ステッピングモーター210およびDCブラシレスモーター220を起動する。
【0052】
次に、制御部110は、制御対象の搬送ローラー171の上流側に隣接する他の搬送ローラー171に用紙500が到達したか否かを判断する(ステップS104)。より具体的には、制御部110は、上流側に隣接する他の搬送ローラー171の近傍のフォトセンサー172がOFF状態からON状態になったか否かを判断する。
【0053】
上流側に隣接する他の搬送ローラー171に用紙500が到達していないと判断する場合(ステップS104:NO)、制御部110は、上流側に隣接する他の搬送ローラー171に用紙500が到達するまで待機する。
【0054】
一方、上流側に隣接する他の搬送ローラー171に用紙500が到達したと判断する場合(ステップS104:YES)、制御部110は、制御テーブル300を参照し(ステップS105)、2台のモーター210,220の出力トルクを制御する(ステップS106)。より具体的には、制御部110は、制御テーブル300中の現在のイベント番号の現在のデータ番号に対応するデューティ指令値および設定電流値を読み出す。そして、制御部110は、読み出した設定電流値を単位期間だけ適用して、ステッピングモーター210の出力トルクを制御する。同様に、制御部110は、読み出したデューティ指令値を単位期間だけ適用して、DCブラシレスモーター220の出力トルクを制御する。
【0055】
次に、制御部110は、ステッピングモーター210の実効電流値を検出する(ステップS107)。より具体的には、制御部110は、現在の単位期間にステッピングモーター210に実際に供給された電流値を検出して、ステッピングモーター210にかかる負荷(つまり、搬送ローラー171にかかる負荷)を検出する。なお、高回転領域では、ステッピングモーター210の実効電流値は、負荷が大きければ増加し、負荷が小さければ減少する。また、ステッピングモーター210の実効電流値は、たとえば、ステッピングモーター210に供給される1相分の電流波形のRMS(Root Mean Square)値や平均値として算出される。
【0056】
次に、制御部110は、用紙500の搬送状態が変化したか否かを判断する(ステップS108)。本実施形態では、たとえば、用紙500が制御対象の搬送ローラー171に到達した場合、制御部110は、用紙500の搬送状態が変化したと判断する。あるいは、用紙500が制御対象の搬送ローラー171を通過中に用紙500の先端部が下流側に隣接する他の搬送ローラーに到達した場合、制御部110は、用紙500の搬送状態が変化したと判断する。あるいは、用紙500が制御対象の搬送ローラー171を通過中に用紙500の後端部が上流側に隣接する他の搬送ローラー171を抜けた場合、制御部110は、用紙500の搬送状態が変化したと判断する。あるいは、用紙500の後端部が制御対象の搬送ローラー171を抜けた場合、制御部110は、用紙500の搬送状態が変化したと判断する。搬送状態の変化は、用紙500の搬送経路上に配置されるフォトセンサー172のON/OFFの変化により認識される。用紙500の搬送状態が変化すれば、搬送ローラー171にかかる負荷も変化し得る。
【0057】
用紙500の搬送状態が変化していないと判断する場合(ステップS108:NO)、制御部110は、データ番号を「1」増加させ(ステップS109)、ステップS105の処理に戻る。そして、制御部110は、用紙500の搬送状態が変化するまで、ステップS105以下の処理を繰り返す。
【0058】
一方、用紙500の搬送状態が変化したと判断する場合(ステップS108:YES)、制御部110は、データ番号を「0」にリセットする(ステップS110)。
【0059】
次に、制御部110は、電流値を比較する(ステップS111)。より具体的には、制御部110は、たとえば、現在のイベント期間におけるステッピングモーター210の実効電流値の平均値(移動平均値)と所定の基準電流値の平均値とを比較する。基準電流値の詳細については後述する。
【0060】
次に、制御部110は、実効電流値と基準電流値との差が許容範囲内にあるか否かを判断する(ステップS112)。たとえば、制御部110は、実効電流値と基準電流値との差が、±10mAの範囲内にあるか否かを判断する。
【0061】
実効電流値と基準電流値との差が許容範囲内にあると判断する場合(ステップS112:YES)、制御部110は、ステップS115の処理に移る。一方、実効電流値と基準電流値との差が許容範囲内にないと判断する場合(ステップS112:NO)、制御部110は、修正テーブル400(
図7参照)を参照し(ステップS113)、制御テーブル300のデューティ指令値を変更する(ステップS114)。
【0062】
図7は、修正テーブルの一例を示す図である。修正テーブル400は、ステッピングモーター210の実効電流値と基準電流値との差と、DCブラシレスモーター220のデューティ指令値の変更量とを相互に関連付けた変換テーブルである。修正テーブル400では、ステッピングモーター210の実効電流値が大きいほどDCブラシレスモーターの出力トルクが大きくなるようにデューティ指令値の変更量が規定されている。制御部110は、修正テーブル400を参照して、ステッピングモーター210の実効電流値と基準電流値との差に対応するデューティ指令値の変更量を算出する。そして、制御部110は、制御テーブル300中の現在のイベントの全データ番号に対応するデューティ指令値に対して、算出した変更量の加算または減算を行って、制御テーブル300中のデューティ指令値を書き換える。
【0063】
次に、制御部110は、制御対象の搬送ローラー171を1枚の用紙500が通過し終えたか否かを判断する(ステップS115)。より具体的には、制御部110は、制御対象の搬送ローラー171の近傍に設けられたフォトセンサー172の出力信号から、用紙500の後端部が制御対象の搬送ローラー171を抜けたか否かを判断する。
【0064】
制御対象の搬送ローラー171を用紙500が通過し終えていないと判断する場合(ステップS115:NO)、制御部110は、イベント番号を「1」増加させ(ステップS116)、ステップS105の処理に戻る。そして、制御部110は、制御対象の搬送ローラー171を用紙500が通過し終えるまで、ステップS105以下の処理を繰り返す。一方、制御対象の搬送ローラー171を用紙500が通過し終えたと判断する場合(ステップS115:YES)、制御部110は、イベント番号を「0」にリセットする(ステップS117)。
【0065】
次に、制御部110は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する(ステップS118)。より具体的には、制御部110は、複数枚の用紙500に連続的に画像を形成する印刷ジョブについて、制御対象の搬送ローラー171をすべての用紙500が通過し終えたか否かを判断する。
【0066】
印刷ジョブが終了したと判断する場合(ステップS118:YES)、制御部110は、処理を終了する。
【0067】
一方、印刷ジョブが終了していないと判断する場合(ステップS118:NO)、制御部110は、ステップS104の処理に戻る。そして、制御部110は、印刷ジョブが終了するまで、ステップS104以下の処理を繰り返す。このとき、制御テーブル300のデューティ指令値が書き換えられていれば、書き換えられたデューティ指令値を適用して、DCブラシレスモーター220の出力トルクが制御される。
【0068】
以上のとおり、
図4および
図5に示すフローチャートの処理によれば、制御対象の搬送ローラー171が用紙500を搬送する際に搬送ローラー171にかかる負荷が検出される。そして、搬送ローラー171にかかる負荷に応じて、制御テーブル300のデューティ指令値が書き換えられる。具体的には、搬送ローラー171にかかる負荷が重ければ、DCブラシレスモーター220の出力トルクが増加するようにデューティ指令値が書き換えられる。一方、搬送ローラー171にかかる負荷が軽ければ、DCブラシレスモーター220の出力トルクが減少するようにデューティ指令値が書き換えられる。このような構成によれば、制御対象の搬送ローラー171が次の用紙500を搬送する際、搬送ローラー171にかかる負荷が調整され、ステッピングモーター210の脱調が防止される。つまり、2台のモーター210,220により搬送ローラー171の回転軸171aを駆動させる駆動機構について、負荷の変動に対して安定な動作を実現できる。
【0069】
次に、
図8を参照して、本実施形態の用紙搬送処理についてより具体的に説明する。
【0070】
図8は、用紙搬送処理を説明するための図である。
図8(a)は、制御対象の搬送ローラー171の上流側に隣接する他の搬送ローラー171の近傍に設けられたフォトセンサー172の出力を示す。
図8(b)は、制御対象の搬送ローラー171の近傍に設けられたフォトセンサー172の出力を示す。
図8(c)は、制御対象の搬送ローラー171の下流側に隣接するさらに他の搬送ローラー171の近傍に設けられたフォトセンサー172の出力を示す。
【0071】
画像形成装置100内部の搬送経路を用紙500が搬送される場合、用紙500は、まず、上流側の搬送ローラー171に到達し、その後、制御対象の搬送ローラー171および下流側の搬送ローラー171に順番に到達する。したがって、まず、
図8(a)に示すとおり、上流側の搬送ローラー171の近傍のフォトセンサー172がON状態になり、次に、
図8(b)に示すとおり、制御対象の搬送ローラー171の近傍のフォトセンサー172がON状態になる。それから、
図8(c)に示すとおり、下流側の搬送ローラー171の近傍のフォトセンサー172がON状態になる。その後、用紙500の搬送が進むに連れて、上流側の搬送ローラー171のフォトセンサー172、制御対象の搬送ローラー171のフォトセンサー172、および下流側の搬送ローラー171のフォトセンサー172の順にON状態からOFF状態に戻る。
【0072】
図8(d)は、用紙500の搬送期間中にステッピングモーター210に実際に供給される電流の基準値の一例を示し、
図8(e)は、用紙500の搬送期間中のDCブラシレスモーター220のデューティ指令値の一例を示す。
【0073】
本実施形態の用紙搬送処理では、搬送ローラー171が用紙500を搬送している間、制御テーブル300に記述された設定電流値を適用して、ステッピングモーター210の動作が制御される。このとき、
図8(d)に示すとおり、ステッピングモーター210に実際に供給される電流の電流値(実効電流値)の理想値が、基準電流値として予め求められる。また、本実施形態の用紙搬送処理では、
図8(e)に示すとおり、搬送ローラー171が用紙500を搬送している間、制御テーブル300に記述されたデューティ指令値を適用して、DCブラシレスモーター220の動作が制御される。なお、理想的な状態では、DCブラシレスモーターの動力がステッピングモーター210の回転を補助するように、DCブラシレスモーター220の動作が制御される。
【0074】
図8(f)は、ステッピングモーター210の実効電流値の一例を示し、
図8(g)は、次の用紙500を搬送する際のDCブラシレスモーター220のデューティ指令値の一例を示す。
【0075】
上述したとおり、ステッピングモーター210の実効電流値は、搬送ローラー171にかかる負荷に応じて変化する。
図8(f)では、
図8(b)のフォトセンサーがON状態になってから
図8(a)のフォトセンサーがOFF状態になるまでの第1期間T1の間、ステッピングモーター210の実効電流値が基準電流値よりも大きくなっている。一方、
図8(a)のフォトセンサーがOFF状態になってから
図8(b)のフォトセンサーがOFF状態になるまでの第2期間T2の間、ステッピングモーター210の実効電流値が基準電流値よりも小さくなっている。つまり、第1期間T1の間、搬送ローラー171にかかる負荷が重くなり、第2期間T2の間、搬送ローラー171にかかる負荷が軽くなっている。これらの負荷は、用紙500を挟持する複数対の搬送ローラー171の用紙搬送速度の差等に起因する。
【0076】
本実施形態の用紙搬送処理では、このような場合、
図8(g)に示すとおり、制御対象の搬送ローラー171が次の用紙500を搬送する際、第1期間T1の間、DCブラシレスモーター220のデューティ指令値が増加するように、制御テーブル300が書き換えられる。一方、第2期間T2の間、DCブラシレスモーター220のデューティ指令値が減少するように、制御テーブル300が書き換えられる。その結果、制御対象の搬送ローラー171が次の用紙500を搬送する際、第1期間T1の間、DCブラシレスモーター220の出力トルクが増大され、第2期間T2の間、DCブラシレスモーター220の出力トルクが低減される。
【0077】
以上のとおり、本実施形態の用紙搬送処理によれば、1枚の用紙500の搬送期間中に制御対象の搬送ローラー171にかかる負荷が検出され、負荷に応じて、次の用紙500の搬送期間中のDCブラシレスモーター220の出力トルクが変更される。具体的には、搬送ローラー171にかかる負荷が重ければ、DCブラシレスモーター220の出力トルクが増加され、搬送ローラー171にかかる負荷が軽ければ、DCブラシレスモーター220の出力トルクが減少される。このような構成によれば、次の用紙500を搬送する際に搬送ローラー171にかかる負荷が調整され、ステッピングモーター210の脱調が防止される。なお、DCブラシレスモーター220の出力トルクを調整すれば、DCブラシレスモーター220の動力がステッピングモーター210の回転を補助するアシスト制御、DCブラシレスモーター220の動力がステッピングモーター210の回転を妨げるブレーキ制御、または、DCブラシレスモーター220の動力がステッピングモーター210の回転に影響を与えない中立制御が行われる。
【0078】
(変形例)
上述した実施形態では、搬送ローラー171にかかる負荷が軽い場合、制御テーブル300が書き換えられ、DCブラシレスモーター220の出力トルクが低減された。しかしながら、搬送ローラー171にかかる負荷が軽い場合、DCブラシレスモーター220の出力トルクに加え、ステッピングモーター210の出力トルクが低減されてもよい。
【0079】
図9は、変形例に係る用紙搬送処理を説明するための図である。
図9(f)は、ステッピングモーター210の実効電流値の一例を示し、
図9(g)は、次の用紙500を搬送する際のDCブラシレスモーター220のデューティ指令値の一例を示す。
図9(h)は、次の用紙を搬送する際のステッピングモーター210の設定電流値の一例を示す。
【0080】
図9(f)では、用紙500の搬送期間中、搬送ローラー171にかかる負荷が軽くなっている。変形例に係る用紙搬送処理では、このような場合、
図9(g)および
図9(h)に示すとおり、DCブラシレスモーター220のデューティ指令値が低減され、かつ、ステッピングモーター210の設定電流値が低減されるように、制御テーブル300が書き換えられる。このような構成によれば、消費電力を抑制できる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、
図10および
図11を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、制御テーブル300が一時的または恒久的に変更される実施形態である。
【0082】
本実施形態に係る画像形成装置100の記憶部120には、制御テーブル300および修正テーブル400に加え、初期テーブルおよび履歴テーブル(不図示)が格納されている。制御テーブル300および初期テーブルは、用紙の種類別に複数記憶されている。初期テーブルは、制御テーブル300と同様のテーブルであり、たとえば、画像形成装置100の電源投入時、制御テーブル300として初期テーブルが用いられる。なお、本実施形態に係る画像形成装置100の構成自体は、第1実施形態と同様であるため、画像形成装置100についての詳細な説明は省略する。
【0083】
図10および
図11は、本実施形態に係る用紙搬送処理の手順を示すフローチャートである。
【0084】
まず、制御部110は、印刷に用いられる用紙に関する情報を取得して、用紙500の種類を認識する(ステップS201)。
【0085】
次に、制御部110は、用紙の種類別に記憶部120に記憶されている複数の制御テーブル300の中から、用紙の種類に応じた一の制御テーブル300を選択する(ステップS202)。本実施形態では、たとえば、画像形成装置100が実行する印刷ジョブが、画像形成装置100の電源投入後の最初の印刷ジョブの場合、初期テーブルが制御テーブル300として利用される。一方、画像形成装置100が実行する印刷ジョブが、画像形成装置100の電源投入後の2回目以降の印刷ジョブの場合、制御テーブルとして記憶部120に記憶されている制御テーブル300がそのまま利用される。
【0086】
ステップS203〜ステップS212の処理は、
図4のステップS103〜S112の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0087】
ステップS212に示す処理において、実効電流値と基準電流値との差が許容範囲内にあると判断する場合(ステップS212:YES)、制御部110は、ステップS216の処理に移る。
【0088】
一方、実効電流値と基準電流値との差が許容範囲内にないと判断する場合(ステップS212:NO)、制御部110は、修正テーブル400を参照し(ステップS213)、制御テーブル300のデューティ指令値を変更する(ステップS214)。
【0089】
次に、制御部110は、履歴テーブルを変更する(ステップS215)。本実施形態では、制御部110は、記憶部120に記憶されている履歴テーブルに、ステッピングモーター210の実効電流値を記述する。ここで、実効電流値は、搬送ローラー171の経時変化を反映するパラメーターとして用いられる。履歴テーブルには、搬送ローラーの経時変化を検出するために、たとえば、1月分の実効電流値のデータが記述されている。
【0090】
ステップS216〜S219の処理は、
図5のステップS115〜S118の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0091】
ステップS219に示す処理において、印刷ジョブが終了していないと判断する場合(ステップS219:NO)、制御部110は、ステップS204の処理に戻る。
【0092】
一方、印刷ジョブが終了したと判断する場合(ステップS219:YES)、制御部110は、経時変化があるか否かを判断する(ステップS220)。より具体的には、制御部110は、履歴テーブルに記述されている実効電流値の長期的な変化量(たとえば、1月分の変化量の平均値)が所定値よりも大きい場合、経時変化があると判断する。
【0093】
経時変化がないと判断する場合(ステップS220:NO)、制御部110は、処理を終了する。一方、経時変化があると判断する場合(ステップS220:YES)、制御部110は、初期テーブルを書き換え(ステップS221)、処理を終了する。より具体的には、制御部110は、制御テーブル300により初期テーブルを置換して、処理を終了する。その結果、たとえば、翌日、画像形成装置100の電源を起動して印刷ジョブを実行する場合、制御テーブル300により置換された初期テーブルを用いて、用紙搬送処理が実行される。
【0094】
以上のとおり、
図10および
図11に示すフローチャートの処理によれば、用紙500の搬送時に搬送ローラー171にかかる負荷が検出され、次の用紙500を搬送する際のDCブラシレスモーター220の出力トルクが変更される。そして、印刷ジョブが完了した場合、経時変化を反映するパラメーターの値が所定値を超えていれば、制御テーブル300により初期テーブルが置換され、制御テーブル300の内容が翌日以降も利用される。つまり、制御テーブル300が恒久的に書き換えられる。
【0095】
一方、経時変化を反映するパラメーターの値が所定値以下であれば、制御テーブル300により初期テーブルが置換されず、翌日は、初期テーブルが制御テーブルとして利用される。つまり、制御テーブル300は一時的に書き換えられ、現在の制御テーブル300は翌日以降利用されることはない。
【0096】
以上のとおり、本実施形態の用紙搬送処理によれば、経時変化がある場合、制御テーブル300が恒久的に書き換えられ、経時変化がない場合、制御テーブル300が一時的に書き換えられる。
【0097】
なお、上述した実施形態では、経時変化を反映するパラメーターに基づいて、制御テーブル300を一時的に書き換えるか、恒久的に書き換えるかが判断された。しかしながら、本実施形態とは異なり、画像形成装置100の内部または周囲の温度/湿度に基づいて、制御テーブル300を一時的に書き換えるか、恒久的に書き換えるかが判断されてもよい。この場合、たとえば、画像形成装置100の温度/湿度が所定値よりも高い場合には、制御テーブル300により初期テーブルが置換されず、制御テーブル300が一時的に書き換えられる。その後、画像形成装置100の温度/湿度が所定値よりも高い状況が解消されれば、制御テーブル300は破棄されて、新たな制御テーブルとして初期テーブルが利用される。
【0098】
本発明は、上述した第1および第2実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0099】
たとえば、上述した第1および第2実施形態では、制御テーブル300は、用紙の種類に応じて複数用意された。しかしながら、制御テーブル300は、画像形成装置100の温度/湿度に応じて複数用意されてもよい。この場合、画像形成装置100の温度/湿度情報が取得され、温度/湿度に応じて制御テーブル300が選択される。さらに、制御テーブル300は、用紙の種類と温度/湿度とを組み合わせて複数用意されてもよい。
【0100】
また、上述した第1および第2実施形態では、ステッピングモーター210の実効電流値が所定の許容範囲内にない場合、修正テーブル400を参照して、制御テーブル300のデューティ指令値が変更された。しかしながら、ステッピングモーター210の電流値が許容範囲内にあるか否かを判断することなく、修正テーブル400を参照して、制御テーブル300のデューティ指令値を変更してもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、1つのイベント単位で実効電流値の平均値と基準電流値の平均値とが比較され、比較結果に応じて、制御テーブル300のデューティ指令値が変更された。しかしながら、1つのイベント内の1つまたは複数のデータ単位で実効電流値と基準電流値とが比較され、比較結果に応じて、制御テーブル300のデューティ指令値が変更されてもよい。
【0102】
また、上述した第1および第2実施形態では、ステッピングモーター210の実効電流値を検出することによって、搬送ローラー171にかかる負荷を検出した。しかしながら、用紙の搬送経路上の複数のフォトセンサー172の検知タイミングから、各搬送ローラーの用紙搬送速度の速度差を算出して、搬送ローラー171にかかる負荷を予測してもよい。
【0103】
また、上述した第1および第2実施形態では、起動済みの搬送ローラー171が用紙500を搬送する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の駆動装置200は、制御対象の搬送ローラーと、制御対象の搬送ローラーに隣接する他の搬送ローラーとを同時に起動させて用紙500を搬送する同期制御にも適用される。
【0104】
また、上述した第1および第2実施形態では、本発明の駆動装置200が画像形成装置100に適用される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の駆動装置200は、画像形成装置に連結される後処理装置に適用され、後処理装置内部の搬送ローラーの回転軸を駆動してもよい。
【0105】
また、上述した第1および第2実施形態では、本発明の駆動装置200が、ステッピングモーター210とDCブラシレスモーター220を備える場合を例に挙げて説明した。しかしながら、駆動装置200が備えるモーターは、ステッピングモーターおよびDCブラシレスモーターに限定されるものではなく、2台のDCブラシレスモーターであってもよい。
【0106】
上述した第1および第2実施形態に係る画像形成装置100における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウエア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、画像形成装置の一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。