特許第6984370号(P6984370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984370生産支援システム、生産支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984370
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】生産支援システム、生産支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20211206BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20211206BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   G06Q50/04
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-234419(P2017-234419)
(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公開番号】特開2019-101923(P2019-101923A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年6月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵二
(72)【発明者】
【氏名】脇山 昇
(72)【発明者】
【氏名】檜物 亮一
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一郎
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−527057(JP,A)
【文献】 特開2016−122440(JP,A)
【文献】 特開平10−260702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料から加工して製品を生産する生産支援システムであって、
前記製品の生産要素に関する複数の要素値を取得する取得部と、
前記要素値が、前記製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、
少なくとも1つの前記要素値が前記許容範囲を超えると判定するとき、少なくとも1つの他の要素値の前記許容範囲を、前記製品の品質が前記所定品質を満たす許容範囲に再設定する解析部と、
再設定された前記許容範囲に関する情報を出力する出力処理部と、
を備え、
前記複数の要素値は、前記製品の原料に関する項目の要素値、前記製品の生産工程に関する項目の要素値、前記製品の生産設備に関する項目の要素値及び前記製品の生産に係る人に関する項目の要素値のうち、少なくとも2つを含み、
前記解析部は、前記要素値が項目毎に前記許容範囲に含まれるか否かに基づいて、各項目を前記生産要素の該当項目とする製品の品質の指標値を算出し、
前記出力処理部は、前記指標値を出力する、
生産支援システム。
【請求項2】
前記出力処理部は、前記他の要素値の前記許容範囲を表す表示データを生成する
請求項1に記載の生産支援システム。
【請求項3】
前記表示データは、前記他の要素値と前記許容範囲の値を表すレーダチャートを示すデータである
請求項2に記載の生産支援システム。
【請求項4】
前記許容範囲を超える要素値の項目と、当該要素値が前記許容範囲を超える原因となる事象又は前記製品の品質が前記所定品質を満たすための対策を示す通知情報とを関連付けて記憶した記憶部を備え、
前記出力処理部は、前記許容範囲を超えると判定された要素値の項目に関連付けられた通知情報を出力する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生産支援システム。
【請求項5】
前記許容範囲を超える要素値の項目と、前記製品の品質が前記所定品質を満たすための対策の実行を示す操作情報とを関連付けて記憶した記憶部を備え、
前記出力処理部は、前記記憶部に記憶された操作情報のうち、前記許容範囲を超えると判定された要素値の項目に関連付けられた操作情報を出力する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の生産支援システム。
【請求項6】
前記解析部は、前記製品の品質が前記所定品質を満たす複数項目の要素値からなるサンプルであって1項目の要素値が所定の値域内となる第1のサンプルからなる第1の集合と、
前記製品の品質が前記所定品質を満たさない複数項目の要素値からなるサンプルであって前記1項目の要素値が前記値域内となる第2のサンプルからなる第2の集合との間で、
前記1項目とは他の項目であって、要素値の代表値に有意差を有する他の項目を、前記許容範囲を超える原因に関する原因項目として特定する
請求項4又は請求項5に記載の生産支援システム。
【請求項7】
前記第2の集合における前記原因項目の要素値の代表値から前記第1の集合における前記原因項目の要素値の代表値に近づける処理を前記対策として定める
請求項6に記載の生産支援システム。
【請求項8】
前記解析部は、前記複数の要素値のもとで生産される前記製品の品質が、前記所定品質を満たすか否かを示す品質情報に基づいて、前記少なくとも1つの要素値から前記他の要素値の前記許容範囲を算出する関数のパラメータを算出する
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の生産支援システム。
【請求項9】
原料から加工して製品を生産する生産支援システムにおける方法であって、
前記製品の生産要素に関する複数の要素値を取得する取得過程と、
前記要素値が、前記製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、
少なくとも1つの前記要素値が前記許容範囲を超えると判定するとき、少なくとも1つの他の要素値の前記許容範囲を、前記製品の品質が前記所定品質を満たす許容範囲に再設定する解析過程と、
再設定された前記許容範囲に関する情報を出力する出力処理過程と、
を有し、
前記複数の要素値は、前記製品の原料に関する項目の要素値、前記製品の生産工程に関する項目の要素値、前記製品の生産設備に関する項目の要素値及び前記製品の生産に係る人に関する項目の要素値のうち、少なくとも2つを含み、
前記解析過程は、前記要素値が項目毎に前記許容範囲に含まれるか否かに基づいて、各項目を前記生産要素の該当項目とする製品の品質の指標値を算出し、
前記出力処理過程は、前記指標値を出力する、
生産支援方法。
【請求項10】
原料から加工して製品を生産する生産支援装置のコンピュータに、
前記製品の生産要素に関する複数の要素値を取得する取得手順と、
前記要素値が、前記製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、
少なくとも1つの前記要素値が前記許容範囲を超えると判定するとき、少なくとも1つの他の要素値の前記許容範囲を、前記製品の品質が前記所定品質を満たす許容範囲に再設定する解析手順と、
再設定された前記許容範囲に関する情報を出力する出力処理手順と、
を実行させ、
前記複数の要素値は、前記製品の原料に関する項目の要素値、前記製品の生産工程に関する項目の要素値、前記製品の生産設備に関する項目の要素値及び前記製品の生産に係る人に関する項目の要素値のうち、少なくとも2つを含み、
前記解析手順は、前記要素値が項目毎に前記許容範囲に含まれるか否かに基づいて、各項目を前記生産要素の該当項目とする製品の品質の指標値を算出し、
前記出力処理手順は、前記指標値を出力する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産支援システム、生産支援方法及びプログラム、例えば、所定の要求品質特性を満たす製品の生産を支援するための生産支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造業者は長い歴史の中で、技術を成熟させ安定した操業に努めてきた。従来の生産方法では、計画段階において研究所等での研究開発により確立された科学技術、生産技術に基づいて生産の4要素に対して予め生産条件を設定しておき、生産現場においてその生産条件を維持して製品の品質を担保することが通例であった。ここでいう生産の4要素とは、製造業におけるものづくりの基本となる4つの要素、つまり、原料(Material)、設備(Machine)、工程(Method)、人(Man)である。これらは、4Mと呼ばれることもある。
【0003】
従来の生産方法では、所定の品質を担保するため、予め設定された条件を遵守して製品の生産が行われていた。生産条件は、生産要素個別に設定されていた。生産の4要素のうち、原料として予め定められた一定の組成の原料が、工程として予め定められた工程条件が、設備として予め定められた稼働条件が、人として予め定められた作業条件が、それぞれ設定されていた。
【0004】
より具体的には、原料は、1つの製品について通例、複数の原料組成から構成され、それぞれの原料の特性を示す要素値には、所定の許容範囲が設けられる。設備については、保守、必要に応じて修理などを行って設定当初の性能を維持していた。工程については、それぞれの稼働条件、工程条件を維持するために、PID(Proportional−Integral−Differential)制御などの制御手法によるプロセス制御が実行されてきた。人については、設備に対する作業内容、個々人の特性や取り組みなどに依存した作業条件が定められていた。これは、人間が認知しているあいまいな表現を含む指示(暗黙知)に基づき、個々人の作業条件のもとで生産が行われることによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−177794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年サプライチェーンのグローバル化により、生産の4要素をなす諸条件のばらつきが顕著になっている。これらのばらつきにより、従来の生産方法では、製品品質への影響が抑えられなくなるケースが増している。例えば、エチレンプラントの原料である原油の産地は、従来は一定の産地に限られてきたが、グローバル経済の進展により世界各国に広がっている。調達される原油の組成が原油の産地毎に異なる結果、原料である原油の組成のばらつきが大きくなっている。
これに対し、製造業者は、ビジネスの維持、発展のために、工場等の事業所の経営指標の一つであるPQCDS(Productivity;生産性、Quality;品質、Cost;コスト、Delivery;納期、Safety;安全性)指標の向上と、生産の4要素の制御との両立が従来よりも困難になりつつある。
【0007】
さらに、生産の4要素のうち、1つの要素でもばらつき、即ちその要素値が所定の標準値からの著しい乖離が生じても、従来はその乖離をリアルタイムで評価できないことがあった。そのため、1つの要素でも著しい乖離が生じても、生産過程において他の要素について当初から設定された設定条件を即座に変更できずに維持されることがある。その結果、生産される製品が所定の品質を満たさなくなるおそれが生じる。言い換えれば、他の要素については、そのばらつき、つまり、その特性を示す要素値の変動を考慮せずに、1つの要素の要素値が所定の許容範囲内であることを前提としているためである。
他方、生産の4要素相互間のバランスのもとで最終的に生産される製品の品質が担保されることがある。言い換えれば、従来の生産方法では、個々に生産要素個々に条件が設定されていたので、1要素でもばらつきが発生して、4要素相互間のパランスを失っている場合には、製品の品質が所定の品質を満たせない場合があった。
【0008】
生産現場では、一般に生産要素にばらつき、つまり、そのいずれかの条件が所定の条件を満たさなくなるときの対処方法を示す情報は、様々な形式で存在する。それらの情報の一部は、文章、図表、数式等で説明もしくは表現可能な形式知化されている。他の一部は、文章等では説明されておらず、作業員が経験として把握しているに過ぎない暗黙知にとどまる。また、現場の作業員には、各自の業務にのみ関わる特定の情報(例えば、工程のみの情報)しか提供されないことがある。そのため、生産要素にばらつきが発生すると、不十分な情報から現場の作業員の判断のもとで対処方法を選択せざるを得ないことがある。このことは、所定の品質を満たすための対処方法が存在しても、必ずしも適切な対処方法が選択されない原因になりうる。例えば、製品の品質が所定品質を満たさない原因や対処方法が生産プラントのオペレータなどの作業員の暗黙知にとどまる場合や、ドキュメント化して保管されても、それらが体系化されていないと、生産要素のばらつきや経営指標の低下を招く事象が生じても十分に活用できないことがあった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、生産要素の特性を示す要素値が製品の品質が所定品質を満たす許容範囲を超えるとき、製品の品質が所定品質を満たすことを支援する生産支援システム、生産支援方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、原料から加工して製品を生産する生産システムであって、前記製品の生産要素に関する複数の要素値を取得する取得部と、前記要素値が、前記製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、少なくとも1つの前記要素値が前記許容範囲を超えると判定するとき、少なくとも1つの他の要素値の前記許容範囲を、前記製品の品質が前記所定品質を満たす許容範囲に再設定する解析部と、再設定された前記許容範囲に関する情報を出力する出力処理部とを備える生産支援システムである。
【0011】
(2)本発明の他の態様は、(1)の生産支援システムであって、前記出力処理部は、前記他の要素値の前記許容範囲を表す表示データを生成する。
【0012】
(3)本発明の他の態様は、(2)の生産支援システムであって、前記表示データは、前記他の要素値の前記許容範囲の値を表すレーダチャートを示すデータである。
【0013】
(4)本発明の他の態様は、(1)から(3)のいずれかの生産支援システムであって、前記許容範囲を超える要素値の項目と、当該要素値が前記許容範囲を超える原因となる事象又は前記製品の品質が前記所定品質を満たすための対策を示す通知情報とを関連付けて記憶した記憶部を備え、前記出力処理部は、前記許容範囲を超えると判定された要素値の項目に関連付けられた通知情報を出力する。
【0014】
(5)本発明の他の態様は、(1)から(4)のいずれかの生産システムであって、前記許容範囲を超える要素値の項目と、前記製品の品質が前記所定品質を満たすための対策の実行を示す操作情報とを関連付けて記憶した記憶部を備え、前記出力処理部は、前記記憶部に記憶された操作情報のうち、前記許容範囲を超えると判定された要素値の項目に関連付けられた操作情報を出力する。
【0015】
(6)本発明の他の態様は、(4)又は(5)のいずれかの生産支援システムであって、前記解析部は、前記製品の品質が前記所定品質を満たす複数項目の要素値からなるサンプルであって1項目の要素値が所定の値域内となる第1のサンプルからなる第1の集合と、
前記製品の品質が前記所定品質を満たさない複数項目の要素値からなるサンプルであって前記1項目の要素値が前記値域内となる第2のサンプルからなる第2の集合との間で、
前記1項目とは他の項目であって、要素値の代表値に有意差を有する他の項目を、前記許容範囲を超える原因に関する原因項目として特定する。
【0016】
(7)本発明の他の態様は、(6)の生産支援システムであって、前記第2の集合における前記原因項目の要素値の代表値から前記第1の集合における前記原因項目の要素値の代表値に近づける処理を前記対策として定める。
【0017】
(8)本発明の他の態様は、(1)から(7)のいずれかの生産支援システムであって、前記解析部は、前記複数の要素値のもとで生産される前記製品の品質が、前記所定品質を満たすか否かを示す品質情報に基づいて、前記少なくとも1つの要素値から前記他の要素値の前記許容範囲を算出する関数のパラメータを算出する。
【0018】
(9)本発明の他の態様は、(1)から(8)のいずれかの生産支援システムであって、前記解析部は、前記要素値が項目毎に前記許容範囲に含まれるか否かに基づいて前記品質の指標値を算出する。
【0019】
(10)本発明の他の態様は、(1)から(9)のいずれかの生産支援システムであって、前記複数の要素値は、前記製品の原料に関する項目の要素値、前記製品の生産工程に関する項目の要素値、前記製品の生産設備に関する項目の要素値及び前記製品の生産に係る人に関する項目の要素値のうち、少なくとも2つを含む。
【0020】
(11)本発明の他の態様は、原料から加工して製品を生産する生産支援システムにおける方法であって、前記製品の生産要素に関する複数の要素値を取得する取得過程と、前記要素値が、前記製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、少なくとも1つの前記要素値が前記許容範囲を超えると判定するとき、少なくとも1つの他の要素値の前記許容範囲を、前記製品の品質が前記所定品質を満たす許容範囲に再設定する解析過程と、再設定された前記許容範囲に関する情報を出力する出力処理過程と、を有する生産支援方法である。
【0021】
(12)本発明の他の態様は、原料から加工して製品を生産する生産支援装置のコンピュータに、前記製品の生産要素に関する複数の要素値を取得する取得手順と、前記要素値が、前記製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、少なくとも1つの前記要素値が前記許容範囲を超えると判定するとき、少なくとも1つの他の要素値の前記許容範囲を、前記製品の品質が前記所定品質を満たす許容範囲に再設定する解析手順と、再設定された前記許容範囲に関する情報を出力する出力処理手順と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、生産要素の特性を示す要素値が製品の品質が所定品質を満たす許容範囲を超えても、経営指標の向上と相反せずに製品の品質を製品の品質が所定品質を満たすことを支援することができる。
即ち、本発明の一態様によれば、生産要素として、例えば、原料、設備、工程、人それぞれの特性を示すいずれかの要素値が所定の許容範囲を超える場合、製品の品質が所定品質を満たすように再設定される他の要素値の許容範囲に関する情報が提供される。
また、本発明の一態様によれば、その時点における複数の要素値それぞれの所定の標準値からの相対値を総合して、製品の品質を定量化した指標値が提供される。
また、本発明の一態様によれば、所定品質を満たす許容範囲を超える要素値が生じるとき、許容範囲を超える要素値を生ずる原因となる事象もしくは要素値が許容範囲を超えることを原因とする事象、又は製品の品質が所定品質を満たすための対策を示す情報がユーザに提供される。
また、本発明の一態様によれば、所定品質を満たす許容範囲を超える要素値が生じるとき、製品の品質が所定品質を満たすための対策を示す情報が制御対象の機器に提供される。
そのため、製品の出荷前に生産要素を示す要素値を調整して製品の品質が所定品質を満たすための行動が促される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る生産支援システムの構成例を示すブロック図である。
図2】生産モデルの例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る生産要素の項目例を示す表である。
図4】第1の実施形態に係る要素値と許容範囲の表示例(1)を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る要素値と許容範囲の表示例(2)を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る要素値と許容範囲の表示例(3)を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る要素値と許容範囲の表示例(4)を示す図である。
図8】第1の実施形態に係る要素値と許容範囲の表示例(5)を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る再設定前の許容範囲の例を示す図である。
図10】第1の実施形態に係る再設定後の許容範囲の例を示す図である。
図11】第1の実施形態に係る再設定前後の許容範囲の表示例(1)を示す図である。
図12】第1の実施形態に係る再設定前後の許容範囲の表示例(2)を示す図である。
図13】第1の実施形態に係る再設定前後の許容範囲の表示例(3)を示す図である。
図14】第1の実施形態に係る再設定前後の許容範囲の表示例(4)を示す図である。
図15】第1の実施形態に係る品質指標値の算出例を説明するための説明図である。
図16】第1の実施形態に係る許容範囲を算出する関数の例を示す図である。
図17】第2の実施形態に係る生産支援システムの構成例を示すブロック図である。
図18】第2の実施形態に係る通知情報の画面表示例を示す図である。
図19】第2の実施形態に係る生産支援システムの他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明に係る生産支援システム、生産支援装置、生産支援方法及びプログラムの実施形態について説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る生産支援システムの構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る生産支援システムの構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る生産支援システムS1は、複数の要素値取得部10と、生産支援装置20と、表示部30と、操作部32と、を備える。図1に示す例では、要素値取得部10の数は、n(nは、2以上の整数)個である。n個の要素値取得部10は、それぞれ要素値取得部10−1等と呼んで区別される。
【0026】
要素値取得部10−1〜10−nは、それぞれ異なる項目の要素値を取得する。要素値とは、生産対象となる製品の生産要素の特性を示す値である。要素値取得部10−1〜10−nは、その要素値を取得するためのセンサ、計測器、演算装置、情報処理装置、などの機器である。要素値取得部10−1は、例えば、比重計である。比重計は、原料の要素値として原料の比重を計測する。要素値取得部10−2は、例えば、温度センサである。温度センサは、工程の要素値としてその工程が実施される生産設備における温度を計測する。要素値取得部10−3は、例えば、生産設備の動作を制御するためのコントローラ(制御装置)である。要素値取得部10−3は、工程の要素値の例としてコントローラの動作時間(例えば、昇温にかかる時間等)を取得してもよい。要素値取得部10−3は、生産設備の要素値として、生産設備の稼働環境(例えば、天候、稼働負荷状況、等)、稼働履歴(例えば、設備の累積動作時間、設備を構成するバルブの動作回数、モータの回転数)等を、生産設備から取得する。要素値取得部10−4は、例えば、操作端末装置である。操作端末装置は、作業員の操作入力を受け付け、受け付けた操作入力を示す操作情報を累積して形成される操作履歴を保存する。操作端末装置は、保存した操作履歴を解析して観測期間内における作業員の作業時間を要素値として導出する。要素値の例については、後述する。
要素値取得部10−1〜10−nは、取得した要素値を示す要素値データを生成し、生成した要素値データを制御部26に出力する。
【0027】
生産支援装置20には、要素値取得部10−1〜10−nからそれぞれ要素値データが入力される。生産支援装置20は、入力された要素値データが示す要素値がそれぞれの許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲とは、生産される製品の品質を予め定めた許容される所定品質を満たす要素値の範囲を意味する。許容範囲は、例えば、上限値と下限値で規定される。そして、生産支援装置20は、少なくとも1つの要素値が許容範囲を超えると判定するとき、他の要素値の許容範囲を、製品の品質が所定品質を満たす許容範囲に再設定する。生産支援装置20は、再設定した許容範囲の情報を表す表示データを表示部30に出力する。表示データは、例えば、再設定後の要素値の上限値と下限値を図示する表示画面を示すデータである。表示画面の例については、後述する。
生産支援装置20は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータ、ワークステーションとして構成されてもよいし、専用の業務用携帯端末装置(タブレット)、操作端末装置、運転支援装置などとして構成されてもよい。
【0028】
表示部30は、生産支援装置20から入力される各種の情報を視認可能に表示する。表示部30は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、OELD(Organic Electro Luminescence Display:有機発光ディスプレイ)などのディスプレイである。
【0029】
操作部32は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた操作信号を生成する。操作部32は、生成した操作信号を生産支援装置20に出力する。操作部32は、例えば、マウス、キーボード、タッチセンサなどの汎用の部材を含んで構成されてもよいし、ボタン、レバー、つまみ、などの専用の部材を含んで構成されてもよい。操作部32から入力される操作信号に応じて、生産支援装置20は、操作部32から入力される操作信号に応じて、その動作を制御する。生産支援装置20は、例えば、操作信号で指定される生産要素を特定し、特定した生産要素に係る要素値の許容範囲の情報を表す表示データを表示部30に出力する。
【0030】
次に、本実施形態に係る生産支援装置20の機能構成例について説明する。
生産支援装置20は、入力部22と、操作入力部23と、出力部24と、記憶部25と、制御部26と、を含んで構成される。
【0031】
入力部22は、要素値取得部10−1〜10−nからそれぞれ入力される要素値データを制御部26に出力する。
操作入力部23は、操作部32から入力される操作信号を制御部26に出力する。
出力部24は、制御部26から入力される表示データを表示部30に出力する。
入力部22、操作入力部23は、それぞれ入力インタフェースである。出力部24は、出力インタフェースである。操作入力部23は、出力部24と一体化して単一の入出力インタフェースとして構成されてもよい。
【0032】
記憶部25は、制御部26が実行する処理に用いるデータ、制御部26が取得したデータなど、各種のデータを記憶する。記憶部25は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。記憶部25には、記憶されるデータの例については、制御部26の機能の説明とともに述べる。
【0033】
制御部26は、生産支援装置20の各種の機能を制御する。制御部26は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算デバイスを備える。制御部26は、記憶部25に予め記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムに記述された各種の指令で指示される処理を行って、後述する各部の機能の一部又は全部を実現してもよい。以下の説明では本実施形態では、記述された指令で指示される処理を行うことを、単に「実行」と呼ぶことがある。また、「実行」を開始することを、単に「起動」と呼ぶことがある。
【0034】
制御部26は、データ取得部262と、データ解析部264と、出力処理部266と、を含んで構成される。
データ取得部262は、要素値取得部10−1〜10−nからそれぞれ入力部22を介して要素値データを取得する。データ取得部262は、n項目の要素値データを解析対象としてサンプリングする。サンプリングにおいて、データ取得部262は、例えば、1つの生産設備について所定期間(例えば、1〜10分)毎に取得したn項目の最新の要素値データを1セットの要素値データに集約する。従って、期間毎に集約されたn項目の要素値データが解析対象としてサンプリングされる。データ取得部262は、集約した1セットの要素値データをデータ解析部264に出力する。
なお、サンプリングは、時刻に限られず、生産設備、工程管理の単位であるロットを単位としてもよい。以下の説明では、サンプリングの単位が主に時刻である場合を例にする。サンプリングの単位を「サンプル」と呼び、サンプリングを行う時刻を「サンプリング時刻」と呼ぶ。
【0035】
データ解析部264は、記憶部25に記憶された許容範囲データを参照して、データ取得部262から入力される要素値データが示すn個の要素値が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲は、製品の品質が許容される所定品質を満たす要素値の範囲であって、要素値の項目毎に定められている。記憶部25には、項目毎の許容範囲の初期値と、項目毎の許容範囲を算出(後述)するためのパラメータを示す許容範囲データを予め記憶させておく。許容範囲は、例えば、その項目の要素値の上限と下限で特定される。
【0036】
データ解析部264は、少なくとも1項目の要素値でも許容範囲を超えると判定するとき、許容範囲内と判定される他の項目の要素値の許容範囲を、製品の品質が所定品質を満たす許容範囲に再設定する。ここで、データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たす許容範囲を超えると判定された項目の要素値についても、許容範囲内となるように、その許容範囲を変更(再設定)してもよい。以下の説明では、要素値が許容範囲を超える項目を「異常項目」、異常項目以外の要素値の項目を「他項目」と呼ぶことがある。また、許容範囲を超える要素値を「異常値」、許容範囲内となる要素値を「正常値」と呼ぶことがある。データ解析部264は、記憶部25に記憶された許容範囲データが示すパラメータと異常項目の要素値を用いて、所定の関数(経験式)に従って他項目の再設定後の許容範囲を算出する。再設定により、少なくとも1つの他項目の許容範囲が変更されうる。データ解析部264は、算出した他項目の許容範囲を示す許容範囲データを出力処理部266に出力する。許容範囲の算出例については、後述する。
【0037】
なお、データ解析部264は、許容範囲を再設定する都度、記憶部25に記憶された許容範囲データが示す許容範囲を、再設定により変更された許容範囲に更新してもよい。これにより、記憶部25には、その時点で最新の許容範囲を示す許容範囲データが保持される。データ解析部264は、要素値が許容範囲を超えない項目についても、出力処理部266に、その項目の要素値を示す要素値データを出力してもよいし、その時点における許容範囲を示す許容範囲データを出力してもよい。
【0038】
出力処理部266は、データ解析部264から入力される許容範囲データが示す許容範囲の情報を表すための表示データに変換する。出力処理部266は、例えば、項目毎の許容範囲として上限値と下限値を図示する表示データを生成する。出力処理部266は、生成した表示データを表示部30に出力する。表示部30は、出力処理部266から入力される表示データに基づいて項目毎の許容範囲を表す表示画面を表示する。
なお、出力処理部266は、手動入力に伴い操作部32から操作入力部23を介して入力される操作信号に基づいて許容範囲を表示させる生産要素の項目を定めてもよい。また、出力処理部266は、定めた項目の許容範囲と要素値を示す表示データを生成してもよい。許容範囲の表示例については、後述する。
【0039】
(生産要素)
次に、本実施形態に係る生産要素の例について説明する。生産要素とは、生産物である製品の品質に影響を与える要素である。生産要素は、図2に例示されるように、原料、工程、設備及び人の4要素に分類される。「原料」は、製品のもとになる材料を示す。「原料」の項目には、例えば、原料の組成条件を示す項目が含まれる。「工程」は、生産工程、つまり製品の生産を進める手順を示す。「工程」の項目には、例えば、生産設備における工程の条件を示す項目が含まれる。「設備」は、生産設備、つまり生産に用いられる器具、装置などを示す。「設備」の項目には、例えば、稼働条件を示す項目が含まれる。「人」は、生産人員、つまり生産に係る人員もしくは生産人員が行う作業の作業条件を示す。「人」の項目には、作業条件を示す項目が含まれる。
【0040】
本実施形態では、生産要素に関する項目のうち、いずれかの項目の要素値が所定の標準値からの差が顕著になるために所定の許容範囲を超えることを許容する。本実施形態に係る生産支援システムS1は、いずれかの項目の要素値が所定の許容範囲を超えても、生産者もしくは生産を監視する者に対して製品の品質が許容される所定品質を満たすことを支援するための機能を備える。
【0041】
次に、生産要素の項目の例について説明する。図3は、本実施形態に係る生産要素の項目の例を示す表である。図3には、エチレンプラントにおける生産要素の項目毎のその時点における許容範囲が例示されている。図3の、第1列、第2列、第3列は、それぞれ、生産要素、各要素の項目、その項目の許容範囲を示す。生産要素を「原料」とする項目には、製品であるエチレンの原料となる原油の属性として「粘度」、「比重」、「沸点」及び「硫黄量」が含まれる。粘度、比重、沸点、硫黄量は、要素値取得部10として、例えば、生産設備であるエチレンプラントへの原料流入部に設置された計測器により逐次に計測される。
【0042】
生産要素を「工程」とする項目には、原油からエチレンの生産工程の一つである水冷工程を担う蒸留器内の「温度」、原料の「流量」、「圧力」及び「濃度」が含まれる。「温度」、「流量」、「圧力」及び「濃度」は、要素値取得部10として、生産設備であるエチレンプラントの蒸留器に設置された計測器により逐次に計測される。
生産要素を「設備」とする項目には、例えば、生産設備であるポンプの軸振動振幅、ポンプの軸振動周波数、吐出しベントの振動振幅、熱交換器の総括伝熱係数、鉱油系作動油の動粘度、コンプレッサーの累積動作回数が含まれる。なお、以下の説明では、ポンプの軸振動振幅、ポンプの軸振動周波数、吐出しベントの振動振幅、熱交換器の総括伝熱係数、鉱油系作動油の動粘度、コンプレッサーの累積動作回数を、それぞれ単に「軸振動振幅」、「軸振動周波数」、「振動振幅」、「総括伝熱係数」、「動粘度」、「累積動作回数」と呼ぶことがある。
【0043】
「軸振動振幅」、「軸振動周波数」は、要素値取得部10として、例えば、コントローラ(図示せず)により、各時刻におけるポンプの振幅値を解析して取得される。「軸振動振幅」の単位[μm]に併記された(0−p)とは、所定の基準位置からの振幅のピーク値を示す。コントローラは、ポンプの振幅値として、ポンプに設置された振動センサにおいて検出された回転軸の振動による振幅値を取得する。「振動振幅」は、要素値取得部10として、例えば、コントローラにより、各時刻における吐出しベントの振幅値を解析して取得される。コントローラは、吐出しベントの振幅値として、吐出しベントに設置された振動センサにおいて検出された振動による振幅値を取得する。図3に例示される上限値12.5[μm]は、初期値である5.0[μm]の2.5倍に相当する。「総括伝熱係数」とは、熱交換元の第1の対象物から熱交換先の第2の対象物に対する熱の伝わりやすさを示す指標値である。「総括伝熱係数」は、要素値取得部10として、例えば、コントローラにより、熱交換器へのエチレンの入口温度と冷却水の入口温度との第1の温度差と、エチレンの出口温度と冷却水の出口温度との第2の温度差と、熱交換器の伝熱面積と交換熱量に基づいて算出される。コントローラは、冷却水の流量、入口温度、出口温度、エチレンの流量、入口温度、出口温度とから交換熱量を算出することができる。コントローラは、例えば、熱交換器に冷却水を供給する配管に設置された温度センサから冷却水の入口温度を取得し、熱交換器から冷却水を排出する配管に設置された温度センサ、流量センサから冷却水の出口温度、流量を取得する。また、コントローラは、例えば、熱交換器にエチレンを供給する配管に設置された温度センサからエチレンの入口温度を取得し、熱交換器からエチレンを排出する配管に設置された温度センサ、流量センサからエチレンの出口温度、流量を取得する。「動粘度」は、ポンプのモータなどの機械に用いられる油の動粘度である。「動粘度」は、要素値取得部10として、例えば、コントローラによりモータに設置された動粘度計において検出された動粘度を取得される。図3に例示される「動粘度」の値は、所定の動粘度の基準値を100[%]として正規化された値である。「累積動作回数」は、その時点までに動作させた動作回数の累積値である。「累積動作回数」は、要素値取得部10として、例えば、制御対象とするコンプレッサーの稼働履歴を解析して取得される。
【0044】
生産要素を「人」とする項目には、所定の観測期間内における作業員の作業時間、作業回数、作業準備時間及び作業時間間隔が含まれる。「作業時間」、「作業回数」は、それぞれ作業員が生産設備の監視、操作などに係る時間、回数である。「作業準備時間」は、それらの作業、主にエンジニアリングの準備に要した時間である。「作業時間間隔」は、観測期間内において作業員が作業を行っていない時間、つまり時間的に隣接する作業時間帯の間隔に相当する。「作業時間」、「作業回数」、「作業準備時間」及び「作業時間間隔」は、要素値取得部10として、例えば、操作端末装置(図示せず)が生成した操作履歴を解析して取得される。
【0045】
「作業時間」、「作業回数」、「作業準備時間」及び「作業時間間隔」は、サンプリング時刻毎に逐次に取得できるとは限られない。そこで、データ取得部262は、例えば、手動入力、即ち、ユーザの操作に応じて操作部32から操作入力部23を介して入力される操作信号で指示される値を、これらの項目の要素値として取得してもよいし、予め設定された要素値を用いてもよい。なお、以下の説明では、手動入力に伴い「操作に応じて操作部32から入力される操作信号で指示される」ことを、単に「操作で指示される」と呼ぶことがある。
また、操作端末装置は、所定の観測期間の開始からその時点まで経過時間内の操作履歴を解析して、経過時間内のそれぞれの項目の要素値を取得してもよい。操作端末装置は、取得した要素値を経過時間に対する観測期間の比を乗じることによって正規化し、各サンプリング時刻における各項目の要素値を予測してもよい。なお、生産支援装置20が、運転支援装置もしくは操作端末装置の機能を有する場合には、取得した操作履歴から「作業時間」、「作業回数」、「作業準備時間」及び「作業時間間隔」の各項目の要素値を算出する処理を行ってもよい。操作履歴は、操作で指示される操作情報が記憶部25に累積して形成される。
【0046】
許容範囲は、例えば、項目毎の下限値と上限値の一方又は両方で表される。より具体的には、生産要素「原料」に属する項目である「粘度」には、下限値、上限値の例として、それぞれ80[VI:Viscosity Index;粘度係数]、100[VI]が掲げられている。生産要素「工程」に属する項目である「流量」には、下限値、上限値の例として、それぞれ、150[m/h]、250[m/h]が掲げられている。なお、項目によっては、下限値だけが設定され、上限値が設定されない項目や、上限値だけが設定され、下限値が設定されない項目がありうる。例えば、生産要素「設備」に属する項目である「軸振動振幅」には、上限値として10[μm]が掲げられているが、下限値は設けられていない。また、「振動振幅」には、上限値として12.5[μm]が掲げられているが、下限値は設けられていない。
【0047】
図3は、生産要素の要素数が4種類である場合を例にするが、これには限られない。生産要素の要素数は5種類以上であってもよいし、3種類以下であってもよい。また、各生産要素に係る項目数が4種類もしくは6種類である場合を例にしたが、項目数は5種類または7種類以上であってもよいし、3種類以下であってもよい。また、製品はエチレンなどの素材に限らず、他の製品、例えば、携帯電話機、タブレット端末装置などの電子機器、ボールペン、ノートなどの文房具、シャツ、ズボンなど衣料であってもよい。製品の種別により、生産要素やその項目は異なりうる。また、個々の項目は、1つの生産要素として扱われてもよい。但し、以下の説明では、理解を容易にするために、主に図3に示すエチレンプラントにおける生産要素とその項目を例にする。
【0048】
(要素値と許容範囲の表示例)
次に、要素値と許容範囲の表示例について説明する。
図4図8は、それぞれ本実施形態に係る要素値と許容範囲の表示例を示す図である。要素値データが所定時間毎に取得される場合には、要素値と許容範囲の表示により最新の時点における要素値のばらつきの状況が逐次にユーザに通知される。言い換えれば、生産設備を監視するユーザに各項目の要素値と許容範囲を正しく認識させることができる。そのため、一時的に要素値が許容範囲を超える項目が生じても、製品の出荷前に製品の品質が所定品質を満たすための機会が得られる。
【0049】
図4は、生産要素「原料」に属する各項目の要素値、下限値、上限値を示すレーダチャートの例を示す。図4に示す例では、レーダチャートは、その中心点からそれぞれ異なる方向に90°間隔で4つの座標軸を有する。個々の座標軸は、1つの項目の要素値、下限値、上限値を示す。それらの値を示す座標点は、値が大きいほど、中心点からの距離が大きい表示位置に示される。各要素値を示す頂点同士が線分で結ばれ、下限値、上限値の表示位置において、それぞれの項目の座標軸に交差する線分が表される。
この表示により、「粘度」の要素値、下限値、上限値がそれぞれ92、80、100[VI]であることが通知される。「沸点」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ220、150、250[°C]であることが通知される。「比重」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ0.82、0.8、0.9であることが通知される。「硫黄量」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ0.007、0.005、0.01[%]であることが通知される。従って、ユーザは、「粘度」、「沸点」、「比重」、「硫黄量」それぞれの要素値が、いずれも許容範囲内にあることを把握することができる。
【0050】
図5は、生産要素「工程」に属する各項目の要素値、下限値、上限値を示すレーダチャートの例を示す。図5に示す例では、「温度」の要素値、下限値、上限値がそれぞれ17、10、20[°C]であることが通知される。「流量」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ150、220、250[m/h]であることが通知される。「濃度」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ4.2、3、5[%]であることが通知される。「圧力」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ0.33、0.1、0.5[MPa]であることが通知される。従って、ユーザは、「温度」、「流量」、「濃度」、「圧力」それぞれの要素値が、いずれも許容範囲内にあることを把握することができる。
【0051】
図6は、生産要素「設備」に属する各項目の要素値、下限値(該当項目のみ)、上限値(該当項目のみ)を示すレーダチャートの例を示す。図6に示す例では、「軸振動振幅」の要素値、上限値がそれぞれ7、10[μm]であることが通知される。「軸振動周波数」の要素値、下限値、上限値がそれぞれ18、15、25[Hz]であることが通知される。「振動振幅」の要素値、上限値がそれぞれ8、12.5[μm]であることが通知される。「総括伝熱係数」の要素値、下限値がそれぞれ650、600[W/m/K]であることが通知される。「動粘度」の要素値、下限値、上限値がそれぞれ90、104、110[%]であることが通知される。「累積動作回数」の要素値、上限値が、それぞれ7.8×10、10であることが通知される。従って、ユーザは、「軸振動振幅」、「軸振動周波数」、「振動振幅」、「総括伝熱係数」、「動粘度」、「累積動作回数」それぞれの要素値が、いずれも許容範囲内にあることを把握することができる。
【0052】
図7は、生産要素「人」に属する各項目の要素値、下限値、上限値を示すレーダチャートの例を示す。図7に示す例では、「作業時間」の要素値、下限値、上限値がそれぞれ53、50、60[分]であることが通知される。「作業時間間隔」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ8.3、5、10[分]であることが通知される。「作業回数」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ8、7、9[回]であることが通知される。「作業準備回数」の要素値、下限値、上限値が、それぞれ18、15、20[分]であることが通知される。従って、ユーザは、「作業時間」、「作業時間間隔」、「作業回数」、「作業準備時間」それぞれの要素値が、いずれも許容範囲内にあることを把握することができる。
【0053】
表示画面を表示させるために、記憶部25には、座標軸を示すレーダチャートを示す表示テンプレートを予め記憶しておく。出力処理部266は、記憶部25から表示テンプレートを読み出し、現時点までに取得された最新の要素値データと許容範囲データから、操作で指示される生産要素の項目の要素値データと許容範囲データを特定する。出力処理部266は、特定した要素値データが示す項目の要素値と、許容範囲データが示す項目の下限値と要素値から、それぞれの表示位置を定める。表示位置は、各項目に対応する座標軸であって、その値が大きいほど中心点からの距離が大きい位置となる。そして、出力処理部266は、各項目の要素値について定めた表示位置に基づく線分の描画を行ってレーダチャートを示す表示データを生成する。出力処理部266は、生成した表示データを、出力部24を介して表示部30に出力する。従って、取得された最新の各項目の要素値とその許容範囲との関係がサンプリング時刻毎に逐次に通知される。
【0054】
図4図7は、各項目の要素値として、取得された要素値自体を示す場合を例示するが、これには限られない。要素値に代え、所定の標準値を基準とする相対値が表されてもよい。データ解析部264は、例えば、その項目の要素値が所定の標準値よりも大きい場合には、要素値の標準値に対する比から1を差し引いて得られる値を相対値として定める。他方、その項目の要素値が所定の標準値よりも小さい場合には、データ解析部264は、標準値の要素値に対する比から1を差し引いて得られる値を相対値とする。従って、要素値と標準値とが等しい場合、相対値は0となる。要素値が標準値の2倍の場合、要素値が標準値の0.5倍の場合には、ともに相対値は100%となる。許容範囲は、相対限界値で指示されてもよい。相対限界値は、製品の品質が許容される所定品質を満たすか否かの基準となる相対値の閾値である。また、データ解析部264は、例えば、その時点で設定されている上限値と下限値の算術平均値もしくは相乗平均値を標準値として定めてもよい。
【0055】
図8は、生産要素「原料」に属する各項目の相対値、相対限界値を示すレーダチャートの例を示す。図8に示す例では、個々の座標軸は、1つの項目の相対値、相対限界値を示す。それらの値を示す座標点は、値が小さいほど、中心点からの距離が小さい表示位置に示される。各相対値を示す頂点同士が線分で結ばれ、0%、相対限界値の表示位置において、それぞれの項目の座標軸に交差する線分が表される。相対値0%は、標準値に対応する相対値である。
この表示により、各項目とも標準値に対応する相対値が0%であり、相対限界値が10%であることが通知される。また、「粘度」、「沸点」、「比重」、「硫黄量」それぞれの相対値が、3%、2%、2%、3%であることが通知される。従って、ユーザは、「粘度」、「沸点」、「比重」、「硫黄量」それぞれの要素値が、いずれも許容範囲内にあることを把握することができる。
【0056】
なお、データ解析部264は、各項目の要素値の標準値からの偏差の絶対値を、標準偏差又は値域幅で除算することにより正規化して得られる値を相対値としてもよい。データ解析部264は、過去にサンプル毎に収集された項目毎の要素値から標準偏差を算出してもよいし、項目毎の要素値のとりうる最大値から最小値の差分を値域幅として算出してもよい。
【0057】
なお、データ解析部264は、少なくとも1項目の要素値が許容範囲を超えると判定するとき、いずれかの要素値が許容範囲を超えることを示す異常通知情報(アラーム)を出力処理部266に出力してもよい。そこで、データ解析部264は、異常通知情報に要素値が許容範囲を超える異常項目を示す異常項目情報を含めてもよい。
出力処理部266は、データ解析部264から異常通知情報が入力されるとき、異常通知情報を表す表示データを生成し、生成した表示データを表示部30に出力してもよい。
表示部30は、出力処理部266から入力される表示データに含まれる異常通知情報を表示してもよい。異常通知情報は、その旨を示す文字、記号、又は模様で表現されてもよいし、さらに他の情報とは異なる態様(例えば、色、明るさ、点滅など)で表現されてもよい。また、表示される異常通知情報には、要素値が許容範囲を超えた異常項目の情報が含まれてもよい。従って、ユーザに製品の品質が所定品質を満たすための行動が促される。
【0058】
(許容範囲の再設定)
次に、許容範囲の再設定例について説明する。データ解析部264は、少なくとも1項目の要素値が所定の許容範囲を超えるとき、製品の品質が所定品質を満たすように、他の項目の許容範囲を再設定する。併せて、データ解析部264は、異常項目について、その要素値が含まれるように許容範囲を再設定する。例えば、データ解析部264は、項目1の許容範囲がその時点における要素値を含むように再設定することに伴い、項目2−4のそれぞれの許容範囲を再設定する。そして、出力処理部266は、再設定した許容範囲を示す表示データを表示部30に出力する。いずれの項目の要素値も所定の許容範囲内である場合には、データ解析部264は、必ずしも表示データを出力しなくてもよい。表示部30は、要素値が所定の許容範囲を超える異常項目が生じるとき、再設定された許容範囲を示す表示画面を表示する。従って、表示部30を視認するユーザは、要素値が所定の許容範囲を超える異常項目が生じるとき、他項目について再設定した許容範囲と、異常項目の要素値が再設定した許容範囲内となることを認識することができる。そのため、ユーザには他項目に係る要素値を操作して、製品の品質が所定品質を満たすための行動が促される。
【0059】
図9図10は、それぞれ再設定前、再設定後の許容範囲の例を示す図である。但し、各項目の要素値は、それぞれとりうる値の最大値、最小値を100%、0%として正規化されている。
図9に示す例では、あるサンプルにおいて項目1の下限値、上限値がそれぞれ5%、20%であり、項目2の下限値、上限値がそれぞれ10%、45%であり、項目3の下限値、上限値がそれぞれ15%、55%、項目4の下限値、上限値がそれぞれ5%、50%である場合を仮定する。この観測期間において項目1、項目2、項目3、項目4の要素値が、それぞれ30%、35%、25%、30%であるとき、データ解析部264は、項目2、項目3、項目4の要素値がそれぞれ許容範囲内であると判定するのに対し、項目1の要素値が許容範囲を超えると判定する。そして、データ解析部264は、少なくとも項目1の要素値に基づいて、許容範囲データを参照して項目1−項目4の許容範囲をそれぞれ再設定する。
【0060】
図10に示す例では、再設定後の項目1の下限値、上限値は、それぞれ20%、50%であり、項目2の下限値、上限値は、それぞれ25%、40%であり、項目3の下限値、上限値は、それぞれ40%、50%であり、項目4の下限値、上限値は、それぞれ20%、45%である。従って、各要素値の再設定後の許容範囲内であれば製品の品質が所定品質を満たすことがユーザに認識させることができる。再設定後の許容範囲によれば、項目1、項目2、項目4の要素値は、それぞれ許容範囲内となるが、項目3の要素値25%は許容範囲40%−50%を下回る。従って、出力処理部266は、再設定後の許容範囲を示す画面を表示部30に表示させることで、項目3の要素値が許容範囲40%−50%内に含まれるように調整することにより、製品の品質が所定品質を満たすことをユーザに促すことができる。
【0061】
(要素値の表示例)
次に、異常項目の要素値の表示例について説明する。出力処理部266は、図4図8に例示されるように、その時点で最新の項目毎の要素値を表示部30に逐次に表示させてもよいが、許容範囲を超えた異常項目の要素値と、その直前の許容範囲内の要素値とを重畳した表示画面を表示部30に表示させてもよい。
【0062】
図11は、「原料」を生産要素とする各項目の変化前後の要素値を表すレーダチャートの例を示す。図11は、「粘度」の要素値が、あるサンプリング時刻において92[VI]から105[VI]に変化し、他の項目「沸点」、「比重」、「硫黄量」の要素値がそれぞれ一定に保たれる場合を例にしている。変化後の要素値105[VI]は、上限値[VI]よりも大きい。このとき、出力処理部266は、「粘度」の要素値が上限値よりも大きくなったサンプリング時刻、その直前のサンプリング時刻のそれぞれにおける各項目の要素値を表す表示データを生成する。図11に示すように、最新の要素値を表す頂点間の線分と、直前の要素値を表す頂点間の線分とで、異なる態様で要素値の変化が表現されてもよい。また、最新の要素値の方を、直前の要素値よりも色、明るさ、線種などの点で目立つ態様で表現されてもよい。これにより、要素値が許容範囲を超えることに対する訴求性が高くなる。また、図4図7に示す例と同様に、各項目に対応する座標軸に上限値、下限値を示す線分が表されている。これにより、ユーザは「粘度」の要素値が上限値を超えたことを容易に把握することができる。なお、図11に示す例では、「粘度」、「沸点」、「比重」、「硫黄量」ともに許容範囲が変化していない。
また、要素値の項目によっては、直接要素値をコントロールできる項目と、コントロールできない項目とがある。そこで、出力処理部266は、直接コントロールできる項目の要素値を、直接コントロールできない項目の要素値よりも目立つ態様で表現し、直接コントロールできない項目の要素値の表示態様を直前の要素値と同様とした表示データを生成してもよい。
【0063】
(再設定した許容範囲の表示例)
次に、他項目に係る再設定した許容範囲の表示例について説明する。出力処理部266は、再設定直前の許容範囲と再設定後の最新の再設定された許容範囲とを重畳した表示画面を表示部30に表示させてもよい。
図12図14は、「粘度」の要素値が92[VI]から105[VI]に変化した場合における(図11参照)、生産要素「設備」、「工程」、「人」それぞれについて各項目の要素値、下限値、上限値を示すレーダチャートの例を示す。下限値、上限値は、再設定前と再設定後のそれぞれについて、各項目に対応する座標軸に交差する線分で表されている。再設定後の線分の態様は、再設定前の下限値、上限値とで異なる態様を用いて、下限値と上限値の変化が表現されてもよい。図12−14に示す例では、再設定後の要素値、下限値、上限値がそれぞれ実線で示され、再設定前の要素値、下限値、上限値がそれぞれ破線で示される。より具体的には、「軸振動振幅」の上限値は、再設定前の10[μm]が再設定後に9[μm]に変化する。「軸振動周波数」の下限値、上限値が、それぞれ15、25[Hz]から12、23[Hz]に変化する。「振動振幅」の上限値が、12.5[μm]から14[μm]に変化する。「総括伝熱係数」の下限値が600[W/m/K]から620[W/m/K]に変化する。但し、「動粘度」の下限値、上限値は、それぞれ90、110[%]のまま変化しない。「累積動作回数」の上限値は、10のまま変化しない。従って、「粘度」の要素値が上限値を上回ったとき、ユーザは、異常項目と判定された「粘度」の要素値において、製品の品質が所定品質を満たすように再設定された他の項目である「軸振動振幅」の要素値を9[μm]以下の範囲内に、「軸振動周波数」の要素値を12−23[Hz]範囲内に、「振幅振動」の要素値を14[μm]以下の範囲内に、「総括伝熱係数」の要素値を620[W/m/K]以上の範囲内にすることが促される。
もっとも、図12に示す例では、「軸振動振幅」、「軸振動周波数」、「振動振幅」、「総括伝熱係数」、「動粘度」、「累積動作回数」の最新の要素値は、それぞれ許容範囲内の値となる。そのため、ユーザは、「軸振動振幅」、「軸振動周波数」、「振動振幅」、「総括伝熱係数」、「動粘度」、「累積動作回数」に関して、特段の対処を要しないことを直ちに把握することができる。
【0064】
図13に示す例では、「温度」の下限値、上限値が、それぞれ10、20[°C]から13、22[°C]に変化する。「流量」の下限値、上限値は、それぞれ、150、250[m/h]から130、200[m/h]に変化する。「濃度」の下限値、上限値は、それぞれ3、5[%]から4、6[%]に変化する。「圧力」の下限値、上限値は、それぞれ0.1、0.5[MPa]から0.2、0.6[MPa]に変化する。従って、「粘度」の要素値が上限値を上回ったとき、ユーザは、異常項目と判定された「粘度」の要素値において、製品の品質が所定品質を満たすように再設定された他の項目である「温度」の要素値を13−22[°C]の範囲内に、「流量」の要素値を130−200[m/h]の範囲内に、「濃度」の要素値を4−6[%]の範囲内に、「圧力」の要素値を0.2−0.6[MPa]の範囲内にすることが促される。
もっとも、図13に示す例では、「温度」、「流量」、「濃度」、「圧力」の最新の要素値は、それぞれ許容範囲内の値となる。そのため、ユーザは、「温度」、「流量」、「濃度」、「圧力」に関して、特段の対処を要しないことを直ちに把握することができる。
【0065】
図14に示す例では、「作業時間」の下限値、上限値が、それぞれ50、60[分]から52、62[分]に変化する。「作業時間間隔」の下限値、上限値は、それぞれ、4、7[分]から5、10[分]に変化する。「作業回数」の下限値、上限値は、それぞれ7、10[回]から8、11[回]に変化する。「作業準備時間」の下限値、上限値は、それぞれ15、20[分]から12、17[分]に変化する。従って、「粘度」の要素値が上限値を上回ったとき、ユーザは、異常項目と判定された「粘度」の要素値において、製品の品質が所定品質を満たすように再設定された他の項目である「作業時間」の要素値を52−62[分]の範囲内に、「作業時間間隔」の要素値を5−10[分]の範囲内に、「作業回数」の要素値を8−11[回]の範囲内に、「作業準備時間」の要素値を12−17[分]の範囲内にすることが促される。
もっとも、図14に示す例では、「作業時間」、「作業時間間隔」、「作業回数」、「作業準備時間」の最新の要素値は、それぞれ許容範囲内の値となる。そのため、ユーザは、「作業時間」、「作業時間間隔」、「作業回数」、「作業準備時間」に関して、特段の対処を要しないことを直ちに把握することができる。
よって、ユーザは、許容範囲を超えた異常項目に気づき、他項目の要素値を表示されたそれぞれの許容範囲内への調整の要否を判断するとともに、必要に応じて調整を行うことで、出荷前に製品の品質が所定品質を満たすようにする機会を得ることができる。
【0066】
(品質指標値)
データ解析部264は、n項目の要素値とそれぞれの許容範囲に基づいて、各項目を生産要素の該当項目とする製品の品質を示す品質指標値を定めてもよい。他の観点では、品質指標値は、その製品の生産の4要素もしくはn項目それぞれの要素値の標準値からの偏差を総合した評価尺度とみなすこともできる。
図15は、品質指標値の算出例を説明するための説明図である。図15は、左方から右方へ順に、生産要素、各要素の項目、許容範囲、要素値、要素値別評価、総合評価を示す。要素値は、評価対象とするサンプルについて項目毎に取得された要素値である。要素値別評価は、要素値が許容範囲内に含まれるか否かを示す。○、×は、それぞれ要素値が許容範囲内に含まれること、許容範囲外になることを示す。例えば、図15の第2行に示す「粘度」の要素値は75[VI]であるのに対し、許容範囲は80−100[VI]であるので、データ解析部264は、要素値は許容範囲外と判定する。図15の第3行に示す「比重」の要素値は0.85であるのに対し、許容範囲は0.8−0.9[kg/m]であるので、データ解析部264は、要素値は許容範囲内と判定する。
生産要素別評価は、各生産要素について要素値を許容範囲外とする項目が1項目でも存在するか、いずれの要素値も許容範囲内であるかを示す。○は、いずれの要素値も許容範囲内にあること、×は、要素値が1項目でも許容範囲外にあることを示す。図15に示す生産要素「原料」については、「粘度」の要素値が許容範囲外であり、「比重」、「沸点」、「硫黄量」それぞれの要素値がいずれも許容範囲内であるので、データ解析部264は、要素値が許容範囲外となる項目が存在すると判定する。生産要素「工程」については、「温度」、「流量」、「圧力」、「濃度」のいずれも要素値が所定の許容範囲内であるため、データ解析部264は、要素値がいずれも許容範囲内にあると判定する。同様にして、生産要素「設備」、「人」についても、データ解析部264は、要素値がいずれも許容範囲内にあると判定する。
【0067】
総合評価は、全生産要素を総合して得られる品質指標値に相当する。データ解析部264は、いずれの項目も要素値が許容範囲内にある生産要素の数の、全生産要素の数に対する割合が多いほど高くなるように総合評価を定める。より具体的には、いずれの項目も要素値が許容範囲内にある生産要素の数が0、1、2、3、4である場合、それぞれの総合評価は0、25、50、75、100点となる。図15に示す例では、データ解析部264は、いずれの項目も要素値が許容範囲内にある生産要素は、「工程」、「設備」、「人」の3要素であるため、総合評価として品質指標値を75点と定める。データ解析部264は、定めた品質指標値を出力処理部266に出力する。出力処理部266は、データ解析部264から入力された品質指標値の情報を表示データに含めて表示部30に出力し、表示部30にその情報を表示させてもよい。
なお、データ解析部264は、要素値が許容範囲内にある項目数の全項目数に対する割合が多いほど高くなるように総合評価を定めてもよい。
【0068】
(許容範囲の算出)
次に、許容範囲の算出例について説明する。
データ解析部264は、許容範囲を超えたと判定した異常項目の要素値と、許容範囲データが示すパラメータを用いて、所定の関数に従って、他項目の許容範囲を算出する。図16は、異常項目である項目1の要素値から他項目である項目2の上限値、下限値をそれぞれ算出するための一次関数UL、DLを示す。この例では、一次関数のパラメータとして、各項目の上限値、下限値それぞれの傾きと切片の値が許容範囲データに含まれる。そこで、データ解析部264は、項目1の要素値毎に製品の品質が所定品質を満たす項目2の上限値(△印)から、一次関数に従って算出される関数値との差が小さくなるように、項目1の任意の要素値から上限値を算出するためのパラメータを算出することができる。また、データ解析部264は、項目1の要素値毎に製品の品質が所定品質を満たす項目2の下限値(●印)から、一次関数に従って算出される関数値との差が小さくなるように、任意の項目1の要素値から下限値を算出するためのパラメータを算出することができる。パラメータの算出において、例えば、最小二乗法が利用可能である。但し、データ解析部264は、項目1の要素値毎に、項目2の上限値と下限値を予め定めておく。データ解析部264は、n項目の要素値からなるサンプル毎に製品の品質が所定品質を満たすか否かを示す品質情報に基づいて、後述するように項目1の要素値毎に、項目2の上限値と下限値を定めてもよい。
データ解析部264は、異常項目と他項目との別個の組み合わせについても、同様にして異常項目から他項目の許容範囲を算出するためのパラメータを算出することができる。なお、相対値の許容範囲を与える相対限界値を算出するためのパラメータについても、異常項目の相対値と他項目の相対限界値について、上記の手法を適用して算出することができる。
【0069】
なお、異常項目の要素値から他項目の許容範囲を算出するための関数は、必ずしも一次関数には限られず、2次以上の高次の関数であってもよい。関数の種別と異常項目の要素値によっては、許容範囲を与える上限値、下限値が存在しない項目が生じる場合がある。データ解析部264は、その項目の許容範囲の不存在を示す異常情報を出力処理部266に出力してもよい。出力処理部266は、データ解析部264から異常情報が入力されるとき、その項目の有効な許容範囲の不存在を示す異常情報を表示部30に出力してもよい。
また、異常項目の項目数は1項に限られず複数項になるために、他項目について複数通りの許容範囲が定められる場合がある。その場合には、データ解析部264は、複数通りの許容範囲のうち、最も狭い許容範囲を出力処理部266に出力すべき許容範囲として採用してもよいし、複数通りの許容範囲がいずれも重複する範囲を出力すべき許容範囲として採用してもよい。その結果、出力すべき許容範囲が存在しなくなる場合も、データ解析部264は、異常情報を出力処理部266に出力してもよい。
【0070】
なお、データ解析部264は、n項目の要素値の組(n次元ベクトル)であるサンプル毎に製品の品質が所定品質を満たすか否かを示す品質情報に基づいて、n次元空間内において製品の品質が所定品質を満たす許容範囲を算出してもよい。データ解析部264は、例えば、所定品質を満たす品質に対応するn項目の要素値の組から統計モデルで算出される確率を1に近似し、所定品質を満たさない品質に対応するn項目の要素値の組から統計モデルで算出される確率を0に近似するように統計モデルのモデルパラメータを算出しておいてもよい。統計モデルとして、例えば、混合ガウシアンモデルを用いることができる。混合ガウシアンモデルとは、n次元ベクトルに関連付けられた確率を、それぞれ平均値、分散が異なるn次元正規分布の重み付け和で表す確率モデルである。混合ガウシアンモデルでは、モデルパラメータが、個々のn次元正規分布の平均値、分散、重み係数がモデルパラメータとなる。データ解析部264は、算出したモデルパラメータを用いて得られる確率が所定の確率値(例えば、0.9)以上となるn次元空間の領域を許容領域として定めてもよい。データ解析部264は、許容領域の外縁となる境界面を、所定の関数(例えば、n次元の楕円面の方程式)にあてはめ、その関数のパラメータを許容範囲データの一部として記憶部25に記憶してもよい。
【0071】
データ解析部264は、許容領域の外縁となる境界面と、1つの次元(注目次元)の要素値を一定とする直線又は平面との交点における他の次元(他次元)の要素値のうち、大きい方、小さい方を、他次元の許容範囲の上限値、下限値として定める。そして、データ解析部264は、定めた注目次元の要素値、他次元の上限値ならびに下限値を、それぞれ異常項目の要素値、他項目の上限値ならびに下限値として定めることができる。
また、データ解析部264は注目次元の要素値を一定とする直線又は平面と、許容領域の外縁となる境界面の交点が存在するとき、それらの交点における注目次元の要素値のうち、大きい方、小さい方を、それぞれ注目次元の許容範囲の上限値、下限値として定める。そして、データ解析部264は、注目次元の許容範囲の上限値、下限値を、それぞれ異常項目の許容範囲の上限値、下限値として定めることができる。なお、上限値、下限値の一方の限界値が設定されない項目については、データ解析部264は、その一方の限界値を定める必要はなく、他方の限界値を定めればよい。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の説明では、第1の実施形態との差異点を主とする。第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を援用する。
図17は、本実施形態に係る生産支援システムS1の構成例を示すブロック図である。
本実施形態では、記憶部25に通知データを予め記憶させておく。通知データは、要素値の項目毎に通知情報を対応付けて構成される。個々の通知情報には、原因情報と対策情報の一方又は両方が含まれる。原因情報は、異常項目の要素値が許容範囲を超える原因となる事象又は異常項目の要素値が許容範囲を超えることを原因として発生する事象を示す情報である。対策情報は、異常項目の要素値が許容範囲を超えるとき製品の品質が所定品質を満たすための対策を示す情報である。その対策は、他項目の要素値を変更後の許容範囲内とする対策になってもよいし、異常項目の要素値が許容範囲を超える原因となる事象又は異常項目の要素値が許容範囲を超えることを原因とする事象を解消もしくは緩和する対策であってもよい。
【0073】
データ解析部264は、少なくとも1項目の要素値が許容範囲を超えると判定するとき、要素値が許容範囲を超える異常項目を示す判定結果情報を生成し、生成した判定結果情報を出力処理部266に出力する。
出力処理部266は、データ解析部264から入力される判定結果情報が示す異常項目を特定し、記憶部25に予め記憶された通知データから、特定した項目に対応する通知情報を読み出す。出力処理部266は、読み出した通知情報を表す表示データを、出力部24を介して表示部30に出力する。表示部30は、出力処理部266から入力される通知情報が示す通知情報を表示する。
【0074】
図18は、通知情報の画面表示例を示す図である。図18は、生産要素を「工程」とする項目の要素値が、許容範囲を超える場合に表示される通知情報の表示例である。
「バラつき異常発生」のブロックを起点とする矢印の終点に配置される「人」、「設備」、「工程」及び「原料」のブロックは、それぞれ生産要素を示すブロックである。「工程」のブロックを起点とする矢印は、「工程」に属する異常項目の発生を示す。その矢印の終点に示す「反応遅延」の以降のブロックにおいて、発生した異常項目である「温度」が下限値よりも低い場合を原因とする現象や、その現象を解消又は緩和するための対策が階層的に表わされている。
【0075】
「反応遅延」のブロックは、「温度」が下限値よりも低い場合を原因とする現象を示す原因情報である。「反応遅延」のブロックを起点とする矢印で指示される「反応速度が上がらない」、「発熱量不足」、「発熱量過剰」のブロックは、それぞれ「反応速度が上がらない」ことの原因を示す原因情報を示す。「反応速度が上がらない」のブロックを起点とする矢印で指示される「生産量を減らす」、「触媒を増やす」のブロックは、それぞれ「反応速度が上がらない」ことに対する対策情報を示す。「生産量を減らす」は、他の生産要素である「設備」の項目である「動作時間」、「動作回数」などの減少を示す。「触媒を増やす」は、他の生産要素である原料の項目である「粘度」の低下を示す。
「発熱量不足」のブロックを起点とする矢印で指示される「攪拌機回転数UP」、「熱媒温度確認」のブロックは、それぞれ「発熱量不足」に対する対策を示す対策情報を示す。「攪拌機回転数UP」は、他の生産要素である「設備」の項目である「攪拌機回転数」の増加を示す。「熱媒温度確認」は、異常項目が発生した生産要素である「工程」の項目に関するが「熱媒温度」の確認を示す。
【0076】
データ解析部264は、例えば、次に説明する原因と対策の解析を行って通知情報を生成してもよい。
データ解析部264は、既に収集されたn項目からなる要素値からなるサンプル毎の品質を示す品質情報から、製品の品質が所定品質を満たすサンプルであって解析対象とする1項目の要素値が所定の値域内となるサンプルからなる集合Aと、製品の品質が所定品質を満たさないサンプルであってその1項目の要素値がその値域内となるサンプルからなる集合Bを分類する。以下、解析対象とする1項目を解析項目と呼ぶ。
【0077】
データ解析部264は、集合Aと集合Bとの間で、要素値の代表値(例えば、平均値)に有意差を有する項目であって、解析項目とは別個の項目を原因項目として検出する。原因項目は、対象項目の要素値を許容範囲外にする原因となる事象、又は対象項目の要素値が許容範囲外となることを原因として発生する事象に関する。有意差の有無を判断する際、データ解析部264は、例えば、t検定などの統計的手法を用いることができる。t検定とは、2つの値を要素とする集合間で、各集合の要素である値の要素間の差の分散よりも集合毎の平均値の差が十分に大きい場合を有意差があると判定する手法である。
そして、データ解析部264は、集合Bに含まれるサンプルの原因項目の要素値の代表値bから、集合Aに含まれるサンプルの原因項目の要素値の代表値aに近づける処理を、製品の品質が所定品質を満たすための対策として特定する。例えば、集合Aの代表値である温度Taが集合Bの代表値である温度Tbよりも低いとき、データ解析部264は、温度Tを低下させるための処理(熱媒温度低下、等)を対策として特定する。
【0078】
データ解析部264は、特定した原因項目を示す原因情報と、特定した対策を示す対策情報を示す通知情報を、その対象項目と値域の組毎に含む通知情報を記憶部25に保存する。
データ解析部264は、上述の処理を対象項目及びその値域の組毎に実行する。データ解析部264には、値域として、その対象項目の要素値としてとりうる最大値と最小値との間を、予め複数段階(例えば、3段階以上)に区分して得られる要素値の範囲を予め設定しておく。
【0079】
そこで、データ解析部264は、異常項目を示す判定結果情報に、その異常項目の要素値を示す情報を含めて出力処理部266に出力する。出力処理部266は、データ解析部264から入力された判定結果情報が示す異常項目と要素値を特定し、特定した要素値が含まれる値域を特定する。出力処理部266は、特定した異常項目と値域の組と同一の項目と値域の組に対応付けられた通知情報を記憶部25に記憶された通知データから読み出し、読み出した通知情報を表す表示データを表示部30に出力する。
【0080】
次に、通知情報の生成に伴う原因項目、対策情報の解析例について説明する。但し、次の説明では、値域に関する説明を割愛する。まず、生産要素を「原料」とする対象項目「粘度」について原因項目を分析する場合を例にする。データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たす要素値のサンプルの集合と、製品の品質が所定品質を満たさない要素値のサンプルの集合との間で、生産要素を「工程」とする項目である「温度」、「流量」などのそれぞれの要素値の代表値について有意差の有無を判定する。「温度」に有意差があり、「流量」に有意差がないとき、データ解析部264は、「温度」を原因項目として定める。そして、データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たさないサンプルの集合に含まれる「温度」の代表値と、製品の品質が所定品質を満たすサンプルの集合に含まれる「温度」の代表値とを比較し、前者よりも後者の方が高い場合、「温度」の上昇を対策情報として定める。これにより、観測される「粘度」が所定の許容範囲よりも高い場合、「温度」を上昇させることが製品の品質が所定品質を満たすための対策として示される。
【0081】
データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たす要素値のサンプルの集合と、製品の品質が所定品質を満たさない要素値のサンプルの集合との間で、生産要素を「設備」とする項目である「動粘度」、「軸振動振幅」などのそれぞれの要素値の代表値について有意差の有無を判定する。「動粘度」に有意差があり、「軸振動振幅」に有意差がないとき、データ解析部264は、「動粘度」を原因項目として定める。そして、データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たさないサンプルに含まれる「動粘度」の要素値の代表値と、製品の品質が所定品質を満たすサンプルに含まれる「動粘度」の要素値の代表値とを比較し、前者よりも後者の方が低い場合、「動粘度」の低下を対策情報として定める。これにより、観測される「粘度」が所定の許容範囲よりも高い場合、動粘度の低下が製品の品質が所定品質を満たすための対策として示される。
【0082】
次に、生産要素を「工程」とする対象項目「温度」について原因項目を分析する場合を例にする。データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たす要素値のサンプルと、製品の品質が所定品質を満たす要素値のサンプルとの間で、生産要素を「原料」とする項目である「粘度」、「比重」などのそれぞれの要素値の代表値について有意差の有無を判定する。「粘度」に有意差があり、「比重」に有意差がないとき、データ解析部264は、「粘度」を原因項目として定める。そして、データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たさないサンプルに含まれる「粘度」の要素値の代表値と、製品の品質が所定品質を満たすサンプルに含まれる「粘度」の要素値の代表値とを比較し、前者よりも後者の方が低い場合、「粘度」の低下を対策情報として定める。データ解析部264は、「粘度」の低下を目的とする対策情報として、触媒の量の増加を通知情報に含めてもよい。
【0083】
生産要素を「設備」とする対象項目「振動振幅」について原因項目を分析する場合を例にする。データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たす要素値のサンプルと、製品の品質が所定品質を満たさない要素値のサンプルとの間で、生産要素を「人」とする項目である「作業時間」、「作業回数」などのそれぞれの要素値の代表値について有意差の有無を判定する。「作業時間」、「作業回数」に有意差があるとき、データ解析部264は、「作業時間」、「作業回数」を原因項目として定める。そして、データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たさないサンプルに含まれる「作業時間」、「作業回数」それぞれの要素値の代表値と、製品の品質が所定品質を満たすサンプルに含まれる「作業時間」、「作業回数」の要素値をそれぞれ比較し、それぞれ前者よりも後者の方が少ない場合、「作業時間」、「作業回数」の減少を対策情報として定める。また、このような現象の原因として、作業員による設備に対する操作の不慣れが推定される。データ解析部264は、操作に応じて作業員に対する操作の訓練などを示す対策情報を通知情報に含めてもよい。
【0084】
(操作情報の提供)
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。図19は、本実施形態に係る生産支援システムS1の他の構成例を示すブロック図である。本構成例に係る生産支援システムS1は、さらに運転支援装置40を含む。運転支援装置40は、ユーザである運転員が操作により生産設備の運転を支援するための装置である。運転支援において、生産設備をなす機器の動作の開始、停止、各種のパラメータの設定、変更、削除などの指令(コマンド)が操作により指示される。
【0085】
記憶部25には操作データを予め記憶させておく。操作データは、要素値の項目毎に操作情報を対応付けて構成される。操作情報には、その項目の要素値が許容範囲を超えるとき、他項目の要素値を変更後の許容範囲内とするための指令が含まれる。言い換えれば、操作情報は、上記の対策情報が示す対策を、運転支援装置40を介して指令対象の対象機器に実行させるための1又は複数件の指令を示す情報である。操作情報は、運転支援装置40が備える機器制御部(図示せず)が解釈(パーズ)可能とする言語で記述されたファイルとして構成されてもよい。言語は、例えば、XML(Extensible Markup Language)などのマークアップ言語が利用可能である。指令には、対象機器の識別情報の記述、その動作の実行に係るパラメータの記述が含まれてもよい。操作情報は、if文などの条件分岐文を含み、指令と、その指令が示す処理の実行条件を関連付けて記述されてもよい。
【0086】
出力処理部266は、データ解析部264から入力される判定結果情報が示す異常項目を特定し、記憶部25に予め記憶された操作データから、特定した項目に対応する操作情報を読み出す。出力処理部266は、読み出した操作情報を、出力部24を介して運転支援装置40に出力する。
【0087】
また、記憶部25に記憶される操作データは、上記の原因と対策の解析により、要素値の項目と値域の組毎に解析により得られた対策を実行させるための指令を示す操作情報を含んで構成されてもよい。その場合には、データ解析部264は、異常項目を示す判定結果情報に、その異常項目の要素値を示す情報を含めて出力処理部266に出力する。出力処理部266は、データ解析部264から入力された判定結果情報が示す異常項目と要素値を特定し、特定した要素値が含まれる値域を特定する。出力処理部266は、特定した異常項目と値域の組と同一の項目と値域の組に対応付けられた操作情報を操作データから読み出し、読み出した操作情報を運転支援装置40に出力する。
【0088】
運転支援装置40の機器制御部は、出力処理部266から入力される操作情報が示す指令を対象機器に送信する。指令に対象機器の識別情報が含まれている場合には、出力処理部266は、識別情報が示す対象機器を送信先として特定する。指令にパラメータの記述が含まれている場合には、出力処理部266は、その記述を含む指令を対象機器に送信する。対象機器は、指令で指示される動作を関連付けられたパラメータに基づいて実行する。指令に実行条件が関連付けられている場合には、出力処理部266は、その時点における関連付けられた実行条件を満たすか否かを判定し、満たすと判定する場合に、その指令を対象機器に送信する。
【0089】
なお、データ解析部264は、要素値が許容範囲を超えることの判定において、許容範囲が上限値と下限値とで指示されている項目について、要素値が下限値よりも小さいか、上限値よりも大きいかを区別してもよい。即ち、データ解析部264は、要素値が下限値よりも小さいか、上限値より大きいか、又は許容範囲内であるかを示す判定結果情報を出力処理部266に出力してもよい。以下、許容範囲外となる状態を許容範囲外状態と総称し、許容範囲外状態のうち、下限値よりも小さい状態を「未満状態」、上限値よりも大きい状態を「超過状態」と呼ぶ。
【0090】
また、通知データと操作データは、各項目の許容範囲外状態毎、つまり「未満状態」、「超過状態」のそれぞれについて通知情報を独立に関連付けて構成されてもよい。
出力処理部266は、記憶部25に予め記憶された通知データから、データ解析部264から判定結果情報が示す異常値の項目の許容範囲外状態に対応する通知情報を読み出す。出力処理部266は、読み出した通知情報を表す表示データを表示部30に出力する。
これにより、要素値が上限値よりも大きくなる場合、下限値よりも小さくなる場合とで、その原因や、その要素値を異常値とするときの他項目の要素値を許容範囲内とする対策が異なる場合、それぞれの場合に応じた通知情報が表示部30に表示される。
【0091】
出力処理部266は、記憶部25に予め記憶された操作データから、データ解析部264から判定結果情報が示す異常値の項目の許容範囲外状態に対応する操作情報を読み出す。出力処理部266は、読み出した操作情報を運転支援装置40に出力する。運転支援装置40は、出力処理部266から入力される操作情報に含まれる指令を特定し、特定した指令の対象機器に、その指令を出力する。
これにより、異常項目の要素値が上限値よりも大きくなる場合、下限値よりも小さくなる場合とで、その異常項目の発生に対して他項目の要素値を許容範囲内とする対策が異なる場合、それぞれの場合に応じた指令が運転支援装置40、ひいては対象機器に提供される。
【0092】
以上、説明したように本実施形態に係る生産支援システムS1は、製品の生産要素に関する複数の要素値を取得するデータ取得部262を備える。また、生産支援装置20は、要素値が、製品の品質が許容される所定品質を満たす許容範囲内であるか否かを判定し、少なくとも1つの要素値が許容範囲を超えると判定するとき、他の要素値の許容範囲を、製品の品質が所定品質を満たす許容範囲に再設定するデータ解析部264を備える。また、生産支援システムS1は、再設定された許容範囲に関する情報を出力する出力処理部266を備える。
この構成により、複数の項目の要素値のうち許容範囲を超えると判定される異常項目が存在する場合、異常項目とは他の項目である他項目の要素値の許容範囲が所定品質を満たす許容範囲に再設定される。再設定された許容範囲に関する情報に接したユーザに、他項目の要素値を通知された許容範囲内にする行動を促し、ひいては経営指標の向上と相反せずに製品の品質を所定の品質を満たすことを促すことができる。
【0093】
また、出力処理部266は、他項目の要素値の許容範囲を表す表示データを生成してもよい。この構成により、他項目の要素値の許容範囲がユーザに視認できるように通知される。
【0094】
また、出力処理部266が出力する表示データは、他項目の要素値の許容範囲の値を表すレーダチャートを示すデータであってもよい。
この構成により、生産管理に習熟していないユーザであっても、再設定された複数の他項目の要素値の許容範囲を一度に直感的に把握させることができる。
【0095】
また、生産支援システムS1は、許容範囲を超える要素値の項目と、当該要素値が前記許容範囲を超える原因となる事象、当該要素値が前記許容範囲を超えることを原因とする事象、又は製品の品質が所定品質を満たすための対策を示す通知情報とを関連付けて記憶した記憶部25を備えてもよい。出力処理部266は、記憶部25に記憶された通知情報のうち、許容範囲を超えると判定された要素値の項目に関連付けられた通知情報を出力してもよい。
この構成により、許容範囲を越えると判定された異常項目が存在するとき、当該異常項目が生じる原因となる事象もしくは当該異常項目が生じることを原因とする事象を示す原因情報、又は製品の品質が所定品質を満たすための対策を示す対策情報が通知される。そのため、通知情報に接したユーザに、通知された事象による影響の把握や、通知された対策の実行が促される。
【0096】
また、生産支援システムS1は、許容範囲を超える要素値の項目と、製品の品質が所定品質を満たすための対策の実行を示す操作情報とを関連付けて記憶した記憶部25を備えてもよい。出力処理部266は、記憶部25に記憶された操作情報のうち、許容範囲を超えると判定された要素値の項目に関連付けられた製品の品質が所定品質を満たすための対策の実行を示す指令を含む操作情報を出力してもよい。
この構成により、許容範囲を越えると判定された異常項目が存在するとき、対象機器は出力処理部266から操作情報が示す指令を、運転支援装置40を介して受信し、その指令で指示される対策となる処理を実行する。そのため、ユーザが操作を行わなくても生産される製品の品質が所定品質を満たすように生産設備が制御される。
【0097】
また、データ解析部264は、製品の品質が所定品質を満たす複数項目の要素値からなるサンプルであって1項目の要素値が所定の値域内となる第1のサンプルからなる第1の集合と、製品の品質が所定品質を満たさない複数項目の要素値からなるサンプルであって1項目の要素値が値域内となる第2のサンプルからなる第2の集合との間で、当該1項目とは他の項目であって、要素値の代表値に有意差を有する他の項目を、許容範囲を超える原因に関する原因項目として特定する。
この構成により、既に収集され、複数項目の要素値からなる多数のサンプルから、要素値の変更により製品の品質を所定の品質を満たす可能性がある項目であって、対象項目とは別個の項目が原因項目として特定される。そのため、対象項目がその要素値が許容範囲を超える異常項目として判定されるとき、特定された原因項目に関する通知情報として製品の品質を所定の品質を満たすために有効な情報が提供される。
【0098】
また、データ解析部264は、第2の集合における原因項目の要素値の代表値から第1の集合における原因項目の要素値の代表値に近づける処理を製品の品質を所定の品質を満たすための対策として定める。
この構成により、第2の集合における原因項目の要素値の代表値から第1の集合の要素値の代表値に近づけるための処理が、製品の品質が所定の品質を満たすための対策として特定される。そのため、対象項目が、その要素値が許容範囲を超える異常項目として判定されるとき、第2の集合における原因項目の要素値の代表値から第1の集合における原因項目の要素値の代表値に近づける処理を示す通知情報又は操作情報が提供される。ユーザの経験や習熟に関わらず、製品の品質を所定の品質を満たすために有効な対策の実行がさらに促される。
【0099】
また、データ解析部264は、前記複数の要素値のもとで生産される前記製品の品質が、前記所定品質を満たすか否かを示す品質情報に基づいて、前記少なくとも1つの要素値から前記他の要素値の前記許容範囲を算出する関数のパラメータを算出してもよい。
この構成により、既に収集された品質情報に基づいて、異常項目の要素値から他項目の許容範囲を算出するための関数を経験式とするパラメータが得られる。パラメータの算出において、生産活動により収集された品質情報を用いることで、設備、人など現実に用いられる生産要素に適合した許容範囲が得られる。
【0100】
また、データ解析部264は、取得した要素値が項目毎に許容範囲に含まれるか否かに基づいて生産される製品の品質の指標値を算出してもよい。
この構成により、既に取得された要素値と許容範囲との関係に基づいて、簡素な処理により複数項目の要素値を総合した製品の品質を定量化することができる。得られる指標値により、複数項目の要素値全体として要素値が許容範囲に含まれる度合いが把握される。
【0101】
また、データ解析部264は、項目毎の要素値の所定の標準値を基準とした相対値に基づいて生産される製品の品質の指標値を算出してもよい。
この構成により、取得した要素値の所定の標準値からのずれの大きさを考慮して、複数項目の要素値を総合した製品の品質の指標値が得られる。得られる指標値により、複数項目の要素値全体として要素値の標準値からのずれの度合いが把握される。
【0102】
また、複数の要素値は、製品の原料に関する項目の要素値、製品の生産工程に関する項目の要素値、製品の生産設備に関する項目の要素値及び製品の生産に係る人に関する項目の要素値のうち、少なくとも2つを含む。
この構成により、生産の4要素のうちの複数の生産要素間の相補関係に基づく許容範囲の再設定がなされる。即ち、許容範囲を超えると判定される異常項目が生じるとき、異常項目とは異なる生産要素に属する他項目の要素値の許容範囲が再設定される。そのため、1項目の要素値でも許容範囲を超える生産要素が生じても、その生産要素とは異なる生産要素の項目の要素値を調整して、製品の品質が所定品質を満たすための行動が促される。
【0103】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計等をすることが可能である。
例えば、生産支援装置20は、表示部30と、操作部32の一方又は両方と一体化した生産支援装置として構成されてもよい。
操作部32は、表示部30と一体化して単一のタッチパネルとして構成されてもよい。
出力処理部266は、通知情報の特定ならびに特定した通知情報を示す表示データの出力と、操作情報の特定ならびに特定した操作情報の出力との一方を実行可能としてもよいし、両方を実行可能としてもよい。出力処理部266は、操作情報の出力を実行可能とする一方で、要素値もしくは許容範囲を示す表示データの生成ならびに出力を実行可能としなくてもよい。
また、生産支援システムS1において、運転支援装置40又は上記の操作端末装置が、出力処理部266と同様の機能ならびに構成を有する出力処理部466’(図示せず)を備えてもよい。出力処理部466’は、生産支援装置20のデータ解析部264から入力される許容範囲データと要素値データに基づいて、表示データを生成する。出力処理部466’は、生成した表示データを表示部に出力する。表示データの出力先となる表示部は、上記の表示部30であってもよいし、表示部30とは別個の表示部(図示せず)であってもよい。出力処理部466’を備える場合には、生産支援装置20において出力処理部266が省略されてもよい。
生産支援装置20は、運転支援装置40と一体化し、生産支援システムS1の1つの構成要素として単一の生産支援装置20として構成されてもよい。運転支援装置40は、生産支援装置20の一部である運転支援部として機能する。その場合、記憶部25には、必ずしも通知データ又は操作データを記憶させておかなくてもよい。
【0104】
また、上記の実施形態では、個々の要素値取得部10が、各1項目の要素値を取得し、生産支援システムS1全体としてn項目の要素値を取得する場合を例示したが、これには限られない(図1図19図21)。生産支援システムS1において、一部の要素値取得部は、複数項目の要素値を取得可能としてもよい。例えば、作業時間を計測するために設けられる要素値取得部10−4は、要素値取得部10−3(図1)と同様の構成を備え、さらに工程に関する要素値を取得し、取得した要素値を生産支援装置20に送信してもよい。その場合には、要素値取得部10−3が省略されてもよい。よって、要素値取得部10の個数は、nよりも少なくなることがある。
また、生産支援システムS1は、生産設備と一体化した生産システムとして構成されてもよい。
【0105】
生産支援装置20は、コンピュータで実現されてもよい。その場合、それぞれの制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPU等の1個又は複数の演算処理回路により実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、各装置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上述したコンピュータシステムは、ネットワークを介して相互に各種のデータを送受信可能とするクラウドコンピューティングシステムの構成要素であるコンピューティングリソースとして構成されていてもよい。
また、上各装置の一部、又は全部は、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現されてもよい。各装置の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0106】
S1…生産支援システム、10(10−1〜10−n)…要素値取得部、20…生産支援装置、22…入力部、23…操作入力部、24…出力部、25…記憶部、26…制御部、262…データ取得部、264…データ解析部、266…出力処理部、30…表示部、32…操作部、40…運転支援装置
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