(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記積層体は、上記電子部品と該電子部品と一体化されると共に上記積層部流路の一部を構成する部品一体流路(411、421)とを有する部品モジュール(410、420)を、複数個積層してなる、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
上記筐体は、上記壁部流路が形成された上記対向壁部以外の部位に、上記壁部流路と接続された付属冷媒流路(301)を有し、該付属冷媒流路に、上記電子部品とは異なる発熱部品(5)が熱的に接触するよう配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
電力変換装置に係る実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。
本実施形態の電力変換装置1は、
図1、
図2に示すごとく、積層体2と、積層体2を収容する筐体3と、を有する。
積層体2は、複数の電子部品を、冷媒を流通させる積層部流路21とともに積層してなる。本実施形態において、積層体2は、半導体部品41及びリアクトル42を電子部品として有する。
【0012】
筐体3は、積層体2に対して積層方向Xにおける一端側から対向する対向壁部32に、冷媒を流通させる壁部流路31を有する。壁部流路31は、積層部流路21に接続されている。
【0013】
積層体2の積層方向Xにおける一端側の面は、壁部流路31の内面の一部を構成している。なお、本明細書において、積層体2の積層方向を、適宜、X方向ともいう。また、便宜的に、X方向において、積層体2に対して対向壁部32が存在する側を、後側、その反対側を、前側という。ただし、これらの表現は便宜的なものであり、特に電力変換装置1の配置の向きを限定するものではない。
積層体2と対向壁部32とは、互いに接合されている。
【0014】
積層体2は、部品モジュール410、420を、複数個積層してなる。部品モジュール410、420は、電子部品と、該電子部品と一体化されると共に積層部流路21の一部を構成する部品一体流路411、421と、を有する。本実施形態において、積層体2は、部品モジュールとして、半導体部品41を備えた半導体モジュール410と、リアクトル42を備えたリアクトルモジュール420とを有する。
【0015】
半導体モジュール410は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタの略)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタの略)等の半導体部品41と、部品一体流路411とを有する。
図3に示すごとく、半導体モジュール410は、半導体部品41を樹脂によってモールドしている。この半導体部品41をモールドした樹脂部と一体的に形成された樹脂の枠体414によって、部品一体流路411を形成している。部品一体流路411は、半導体部品41に隣接する位置に形成されている。
【0016】
部品一体流路411は、半導体部品41を、X方向の両側から挟む正面流路部412と、X方向と直交するY方向の両側から挟む側面流路部413とを有する。なお、本明細書において、Y方向とは、X方向に直交する方向であって、半導体部品41と側面流路部413とが並ぶ方向をいうものとする。また、X方向とY方向との双方に直交する方向を、Z方向というものとする。
【0017】
図4に示すごとく、リアクトルモジュール420は、リアクトル42と、部品一体流路421とを有する。リアクトルモジュール420は、リアクトル42を樹脂によってモールドしている。このリアクトル42をモールドした樹脂部と一体的に形成された枠体424によって、部品一体流路421を形成している。部品一体流路421は、リアクトル42に隣接する位置に形成されている。部品一体流路421は、リアクトル42を、X方向の両側から挟む正面流路部422と、Y方向の両側から挟む側面流路部423とを有する。
【0018】
図1、
図2に示すごとく、積層体2は、複数の部品モジュール410、420を互いに接合してなる。具体的には、複数の半導体モジュール410と、複数のリアクトルモジュール420とを、X方向に積層して、これらを互いに接合して、積層体2が構成されている。積層体2は、複数の半導体モジュール410を積層配置した半導体積層部201と、複数のリアクトルモジュール420を積層配置したリアクトル積層部202とを有する。リアクトル積層部202は、半導体積層部201に対して、X方向の後側の位置に配されている。
【0019】
また、積層体2は、部品モジュール410、420と連結されて積層される、中間ブロック43及び後端ブロック44を有する。中間ブロック43は、半導体積層部201とリアクトル積層部202との間に介在する。後端ブロック44は、積層体2の後端に配され、リアクトル積層部202と対向壁部32との間に介在する。
【0020】
中間ブロック43及び後端ブロック44は、それぞれ積層部流路21の一部を構成する連結流路431、441を有する。中間ブロック43の連結流路431は、半導体モジュール410の部品一体流路411と、リアクトルモジュール420の部品一体流路421とを連結する。後端ブロック44の連結流路441は、リアクトルモジュール420の部品一体流路421と、壁部流路31とを連結する。
中間ブロック43及び後端ブロック44と、複数の半導体モジュール410の部品一体流路411と、複数のリアクトルモジュール420とによって、積層部流路21が形成されている。
【0021】
図1に示すごとく、筐体3は、略直方体形状を有する。そして、
図2に示すごとく、X方向の後方から積層体2に対向する壁部として、対向壁部32を有する。また、X方向の前方から積層体2に対向する壁部として、前方壁部33を有する。また、
図5〜
図9に示すごとく、筐体3は、Z方向の一端側に、底壁部34を有する。
【0022】
なお、筐体3は、必ずしも一体成形品である必要はなく、例えば、複数の部材を接合してなるものであってもよい。例えば、対向壁部32を、底壁部34等、他の部分を含む本体部分と別体の部材にて形成してもよい。この場合、例えば、対向壁部32を構成する部材を、本体部分に接合して、筐体3を構成することもできる。
【0023】
積層体2は、X方向の前端において、筐体3の前方壁部33に当接している。また、積層体2は、X方向の後端において、筐体3の対向壁部32に当接している。積層体2の前端の半導体モジュール410と前方壁部33とは、互いに接合されている。また、積層体2の後端の後端ブロック44と対向壁部32とは、互いに接合されている。また、後端ブロック44とリアクトルモジュール420とは、互いに接合されている。中間ブロック43とその後側に隣接するリアクトルモジュール420とは、互いに接合されている。中間ブロック43とその前側に隣接する半導体モジュール410とは、互いに接合されている。
【0024】
また、半導体積層部201において、互いに隣接する半導体モジュール410同士は、互いに接合されている。また、リアクトル積層部202において、互いに隣接するリアクトルモジュール420同士は、互いに接合されている。
【0025】
積層体2及び筐体3は、壁部流路31の外周において、互いに当接した外周当接部11を有する。そして、積層体2及び筐体3は、少なくとも外周当接部11を樹脂にて構成してある。積層体2及び筐体3は、外周当接部11において、互いに溶着されている。
【0026】
本実施形態においては、筐体3は、その略全体が熱可塑性樹脂からなる。そして、積層体2と筐体3とは、外周当接部11において互いに溶着されている。また、積層体2を構成する各部品モジュール410、420、中間ブロック43及び後端ブロック44も、少なくともX方向の両端部を、熱可塑性樹脂によって構成してある。そして、X方向に隣接する他の部品との接合部は、溶着によって接合されている。
【0027】
図6、
図7、
図9に示すごとく、筐体3は、壁部流路31が形成された対向壁部32以外の部位に、壁部流路31と接続された付属冷媒流路301を有する。付属冷媒流路301に、半導体部品41及びリアクトル42とは異なる発熱部品が熱的に接触するよう配置されている。本実施形態においては、発熱部品として、コンデンサ5を配置してある。コンデンサ5は、図示を省略する複数のコンデンサ素子を内蔵してなる。
【0028】
コンデンサ5は、
図2に示すごとく、積層体2に対して、Y方向に並ぶ位置に配置されている。そして、
図6、
図7、
図9に示すごとく、付属冷媒流路301は、Z方向において、コンデンサ5に対向するように、配置されている。
図2、
図9に示すごとく、コンデンサ5は、X方向に長尺な形状に配置されている。そして、X方向において、筐体3の略全体にわたり、コンデンサ5が配置されている。
【0029】
付属冷媒流路301は、筐体3の底壁部34に形成されている。付属冷媒流路301の後端部は、壁部流路31と連結されている。壁部流路31は、
図2、
図5に示すごとく、積層体2に対向する位置に形成された本体流路部310と、本体流路部310と付属冷媒流路301とを連通させる連通流路部311とを有する。
【0030】
また、
図8、
図9に示すごとく、付属冷媒流路301の前端部は、前方壁部33に形成された前方流路331と接続されている。前方流路331は、付属冷媒流路301の前端部から、Z方向における底壁部34側と反対側へ延びるように形成されている。前方流路331は、Z方向において、コンデンサ5と対向する位置に形成されている。
【0031】
そして、前方流路331に、冷媒排出路131が接続されている。冷媒排出路131は、筐体3の前方壁部33から前方へ突出した排出管132の内側に形成されている。
また、
図2に示すごとく、積層部流路21は、前端部において、冷媒導入路121と接続されている。冷媒導入路121は、筐体3の前方壁部33から前方へ突出した導入管122の内側に形成されている。
【0032】
冷媒導入路121から導入された冷媒は、積層体2における積層部流路21を通り、壁部流路31へ向かう。なお、
図2において、矢印wは、冷媒の流れを示す。冷媒は、積層部流路21において、半導体部品41及びリアクトル42を冷却する。冷媒は、半導体積層部201の積層部流路21を通過した後、リアクトル積層部202の積層部流路21に導入される。
【0033】
半導体積層部201の積層部流路21においては、Y方向における2箇所に形成された側面流路部413を、それぞれX方向に沿って、前側から後側へ向かって冷媒が流れる。そして、複数の正面流路部412には、それぞれY方向の一方側から他方側へ向かって、冷媒が流れる。具体的には、各正面流路部412には、Y方向における、コンデンサ5と反対側の側面流路部413からコンデンサ5側の側面流路部413に向って、冷媒が流れる。
【0034】
半導体積層部201を通過した冷媒は、中間ブロック43の連結流路431を通って、リアクトル積層部202の積層部流路21に導入される。このとき、Y方向の一端側から、リアクトル積層部202の積層部流路21へ冷媒が導入されるよう構成されている。具体的には、Y方向におけるコンデンサ5側の端部から、リアクトル積層部202の積層部流路21へ冷媒が導入される。
【0035】
リアクトル積層部202の積層部流路21においても、Y方向における2箇所の側面流路部423を、それぞれX方向に沿って、前側から後側へ向かって冷媒が流れる。そして、複数の正面流路部422には、Y方向における、コンデンサ5側の側面流路部423からコンデンサ5と反対側の側面流路部423に向って、冷媒が流れる。
【0036】
リアクトル積層部202を通過した冷媒は、後端ブロック44の連結流路441を介して、Y方向におけるコンデンサ5と反対側の端部から、壁部流路31へ移動する。壁部流路31に到達した冷媒は、連通流路部311を介して、付属冷媒流路301へ導入される。
【0037】
付属冷媒流路301においては、X方向における後側から前側へ向かって、冷媒が流れる。この間において、冷媒は、コンデンサ5を冷却する。そして、付属冷媒流路301を通過した冷媒は、前方流路331を介して、冷媒排出路131へ排出される。
【0038】
このようにして、冷媒は、冷媒導入路121から冷媒排出路131まで、電力変換装置1内の冷媒流路を循環する。この間において、冷媒は、半導体部品41、リアクトル42、コンデンサ5と、この順にて熱交換する。これにより、最も発熱量が大きくなりやすい半導体部品41を、最も温度の低い状態の冷媒によって冷却するよう構成されている。
【0039】
なお、冷媒としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート(登録商標)等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等を用いることができる。
【0040】
また、本実施形態の電力変換装置1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される車両用の電力変換装置とすることができる。
【0041】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1において、筐体3は、対向壁部32に壁部流路31を有する。そして、壁部流路31は、積層部流路21に接続されている。これにより、積層部流路21と壁部流路31とを筐体3内において簡素な構成にて接続することができる。その結果、積層部流路21と壁部流路31とを連結するために、筐体3の外部に連結管を設ける必要がなく、電力変換装置1の小型化を容易にすることができる。
【0042】
また、上述のように筐体3の外側に連結管を設ける必要がないため、車両等に電力変換装置1を配置する際、連結管が周辺部材に干渉するという懸念もない。それゆえ、電力変換装置1の設置作業等を容易に行うことができる。また、連結管を設ける場合に必要となる、連結管の接続部位におけるシール性を懸念する必要もなくなる。さらに言えば、連結管を省略できる分、部品点数を低減することもできる。
【0043】
積層体2のX方向における一端側の面は、壁部流路31の内面の一部を構成している。これにより、部品点数を低減することができると共に、電力変換装置1の小型化を一層容易にすることができる。
【0044】
積層体2と対向壁部32とは、互いに接合されている。これにより、壁部流路31のシール性を容易に確保することができる。
【0045】
積層体2は、電子部品と部品一体流路411、421とを有する部品モジュール410、420を、複数個積層してなる。これにより、積層部流路21を有する積層体2を、容易に形成することができる。
【0046】
積層体2は、複数の部品モジュール410、420を互いに接合してなる。これにより、複数の部品一体流路411、421を、容易かつ確実に接続することができる。すなわち、複数の部品一体流路411、421の間に、隙間等を生じさせることなく、シール性に優れた積層部流路21を容易かつ確実に形成することができる。
【0047】
積層体2及び筐体3は、少なくとも外周当接部11を樹脂にて構成してある。これにより、壁部流路31のシール性を向上させやすい。
積層体2及び筐体3は、外周当接部11において、互いに溶着されている。それゆえ、外周当接部11に隙間が生じることを容易かつ確実に防ぐことができる。
【0048】
筐体3は、付属冷媒流路301を有し、付属冷媒流路301に、発熱部品(本実施形態においては、コンデンサ5)が熱的に接触するよう配置されている。これにより、積層体2の電子部品(本実施形態においては、半導体部品41及びリアクトル42)を冷却する冷媒によって、コンデンサ5をも冷却することができる。それゆえ、電力変換装置1の小型化を図りつつ、コンデンサ5の冷却を行うことができる。
【0049】
付属冷媒流路301によって冷却する発熱部品をコンデンサ5とすることにより、コンデンサ5の温度上昇を抑制する必要のある電力変換装置1を、小型化しやすくすることができる。
【0050】
積層体2は、半導体部品41を有するため、積層部流路21を流れる冷媒によって、効果的に半導体部品41の温度上昇を抑制することができる。
積層体2は、リアクトル42をさらに有するため、積層部流路21を流れる冷媒によって、効果的にリアクトル42の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
以上のごとく、本実施形態によれば、小型化が容易な電力変換装置を提供することができる。
【0052】
なお、上記実施形態においては、付属冷媒流路301を備えた電力変換装置1を示したが、付属冷媒流路301のない電力変換装置1とすることもできる。すなわち、積層部流路に接続された壁部流路を備えた構成とし、壁部流路に、積層体の構成部品とは異なる電子部品(例えば、コンデンサ、DC−DCコンバータ等)を、熱的に接触させて配置することもできる。
【0053】
また、積層体と対向壁部との間を接合する場合、その接合方法は、必ずしも溶着に限定されるものではなく、例えば、摩擦拡散接合等、他の手段によるものとすることもできる。また、部品モジュール同士の接合や、積層体と前方壁部との間の接合等においても、溶着以外の接合方法を用いることもできる。
【0054】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。