(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両前後方向に延びる一対の側面部と前記一対の側面部の各端部に位置する4つの角部とを有し、電力変換装置を収容する筐体を備え、車両のエンジンコンパートメント内に配置されるパワーコントロールユニットにおいて、
前記筐体は、接合面同士を突き合わせた状態で車両上下方向に重ねられ、前記4つの角部及び前記一対の側面部に配置された複数の締結部でボルトにて締結された第1筐体部及び第2筐体部を有しており、
前記複数の締結部の少なくとも一つには、前記接合面よりも車両上下方向に突出する突出部と、前記接合面同士を突き合わせた状態で前記突出部と噛み合って車両前後方向に関する前記接合面同士の相対移動を阻止する噛み合い部と、前記ボルトの締結によって互いに接触する締結面とが設けられ、前記突出部は前記締結面上にて前記車両上下方向に突出するように設けられ、前記接合面と前記締結面とは溝部によって分断されている、パワーコントロールユニット。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び
図2に示したパワーコントロールユニット(以下、PCUという。)1は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両の動力源が搭載されるエンジンコンパートメント(不図示)内に配置されて車両の電力制御に使用される。PCU1は、例えばインバータ及びコンバータとして機能する電力変換装置(不図示)を収容し概略的に矩形状に形成された筐体2を備えている。なお、
図1及び他の図において、矢印Frは車両前方、矢印Rrは車両後方、矢印Rは車両右側、矢印Lは車両左側、矢印Uは車両上方、矢印Dは車両下方をそれぞれ示している。筐体2は、概略的に矩形状に形成されているため、車両前後方向に延びる一対の側面部2aと、各側面部2aの両端部に位置する4つの角部2bとを有する。
【0009】
図2に示したように、筐体2は、車両上下方向の下側に位置しコンバータ回路を収めるためのコンバータケース3と、車両上下方向の上側に位置しインバータ回路を収めるためのインバータケース4とを備えている。
図3にも示したように、コンバータケース3とインバータケース4とは、それぞれ車両上下方向に開口しており、コンバータケース3の上方の開口部を一巡する接合面5とインバータケース4の下方の開口部を一巡する接合面6とが互いに突き合わされた状態で車両上下方向に重ねられている。そして、それぞれの接合面5、6が突き合わされた状態で、
図1に示したように7本のボルト9にて締結されている。
【0010】
図2に示すように、コンバータケース3の下方の開口部はロアカバー10にて、インバータケース4の上方の開口部はアッパーカバー11にてそれぞれ塞がれている。ロアカバー10及びアッパーカバー11は複数のボルト12にて締結されている。筐体2はそのコンバータケース3が不図示のトランスアクスルの上部に取り付けられることによりエンジンコンパートメントに配置されている。トランスアクスルはエンジンコンパートメント内において不図示の車体構成部材に固定されている。コンバータケース3は上記態様の第1筐体部の一例に相当し、インバータケース4は上記態様の第2筐体部の一例に相当する。
【0011】
なお、筐体2の電磁シールド性を確保するため、筐体2の各構成要素はいずれも金属材料で構成されている。コンバータケース3及びインバータケース4は、アルミ系材料を鋳造することにより構成されており、ロアカバー10及びアッパーカバー11は鋼板材料がプレス加工されることにより構成されている。また、筐体2のシール性を確保するため、筐体2の各構成要素は、液状のシール材の一種であるフォームドインプレイスガスケット(FIPG)が接合面に塗布された状態で接合されている。
【0012】
図3にも示したように、ボルト9にて締結される締結部15A〜15Gは、筐体2の各角部2b、各側面部2a、及び車両前方側の前面部2cにそれぞれ配置されている。以下、締結部15A〜15Gを互いに区別する必要がない場合は締結部15と称する場合がある。各締結部15は、コンバータケース3の接合面5と一体の締結面16と、インバータケース4の接合面6と一体の締結面17とが重ね合わされて構成されている。なお、
図3にはコンバータケース3の接合面5と締結面16との配置が示されているが、インバータケース4の側の配置も
図3と同様である。
【0013】
一対の側面部2aに配置された締結部15E及び締結部15Fのうち、車両右側の締結部15Eは締結部15Aと締結部15Dとの中間に、車両左側の締結部15Fは締結部15Bと締結部15Cとの中間にそれぞれ配置されている。各締結部15には、インバータケース4側にボルト9が挿入されるボルト挿入孔18(
図1参照)が形成され、コンバータケース3側にボルト9と噛み合う雌ねじ19(
図3参照)が形成されている。
【0014】
図1及び
図4に示すように、車両右側の締結部15Eには、コンバータケース3側の締結面16においてボルト9よりも車両後方側に位置しかつ接合面5よりも車両上側に突出する突出部20と、インバータケース4側において突出部20と噛み合う噛み合い部21とが設けられている。
図4に示したように、噛み合い部21は突出部20が嵌り込むように車幅方向内側に後退し、かつ車幅方向外側に開口する凹形状に構成されている。突出部20と噛み合い部21とが噛み合うことにより、互いに突き合わされた接合面5、6同士の車両前後方向に関する相対移動が阻止される。
【0015】
(本形態の効果)
図1及び
図2に示したように、車両前方衝突時において、エンジンコンパートメント内におけるPCU1の配置及び周辺装置の配置によって車両前方からの衝突荷重FがPCU1のインバータケース4の右側に偏って入力される。そして、衝突荷重Fが入力された場合には、筐体2の構造上、剛性が他よりも高い箇所である右側の締結部15Eに荷重が集中する。その荷重は締結部15Eに装着されたボルト9と突出部20とに分散される。このため、突出部20及び噛み合い部21がなく締結部にボルトのみが装着された形態と比較して、ボルト9に対するせん断荷重を緩和できる。したがって、車両前方衝突時におけるPCU1の耐荷重が向上する。
【0016】
衝突荷重Fに対する締結部15Eに装着されたボルト9に作用するせん断荷重の変化を比較例とともに
図5に示す。なお、
図5の比較例は、突出部20及び噛み合い部21が省略されて締結部15Eにボルト9のみが装着された例である。
図5に示したように、本形態のPCU1は、突出部20及び噛み合い部21にて締結部15Eに働くせん断荷重の一部が負担されるためボルト9に作用するせん断荷重が比較例よりも低下傾向となる。したがって、ボルト9のせん断耐荷重Tsに達するPCU1の耐荷重Lsは、比較例の耐荷重Ls′よりも向上する。
【0017】
(変形例)
次に、
図6を参照しながら変形例を説明する。この変形例は、締結部15Eに関するものであり、コンバータケース3の接合面5と締結面16とがハッチングで示した溝部30にて分断されている。溝部30は接合面5及び締結面16よりも後退するように形成されている。上述したように、コンバータケース3の接合面5は、FIPGが塗布された状態でインバータケース4の接合面6(
図4参照)と突き合わされる。この変形例の場合、コンバータケース3の接合面5と締結面16とが溝部30にて分断されるため、接合面5と接合面6とを突き合わせた際に接合面5に塗布されたFIPGが外方にはみ出しても締結面16までFIPGが浸入することを回避できる。これにより、コンバータケース3側の締結面16とインバータケース4側の締結面17とが直接接触して電気的導通が補償される。したがって、この変形例に係る締結部15Eがメタルタッチ部としても機能する。
【0018】
上記形態及び上記変形例は、コンバータケース3及びインバータケース4が7箇所の締結部15A〜Gで締結されているが一例にすぎない。例えば、車両前方の締結部15Gを省略して6箇所の締結部15A〜15
Fで締結する形態に変更できる。また、締結部15A〜15
Fを含み、さらに2以上の締結部を追加した形態に変更することもできる。さらに、各角部に2つずつ締結部を配置する形態に変更することもできる。
【0019】
上記形態では、接合面5、6と締結面16、17とが同一高さであって、かつそれぞれ平坦であるが一例である。例えば、接合面5、6と締結面16、17との間に高低差が設けられた形態に変更することもできる。
【0020】
上記形態では、締結部15Eにおいて、コンバータケース3側に突出部20が、インバータケース4側に噛み合い部21がそれぞれ設けられているが一例である。例えば、これらを入れ替えて、インバータケース4側に突出部20が、コンバータケース3側に噛み合い部21がそれぞれ設けられた形態に変更できる。
【0021】
上記形態では、一対の側面部2aのうち、右側の締結部15Eに突出部20及び噛み合い部21が設けられているが一例である。PCU1の場合、エンジンコンパートメント内への配置及びPCU1の周囲に配置された周辺装置(不図示)との関係で、車両右側に偏って衝突荷重Fが入力される傾向があり、かつ、筐体2の肉厚や剛性等を含めた構造との関係で右側の締結部15Eに荷重が集中し、その荷重が他の締結部15A等に作用する荷重と比べて最大であった。そこで、上記形態では、右側の締結部15Eに突出部20及び噛み合い部21が設けられている。
【0022】
例えば、PCUの配置、前方衝突時の衝突荷重の入力位置、筐体の構造を考慮した結果、車両前方衝突時に締結部に働く荷重が最大となる箇所が上記形態とは異なる箇所であれば、当該箇所に突出部及び噛み合い部を設けることができる。また、例えば、締結部が3箇所以上ある場合において、荷重が2番目に大きい締結部及び3番目に大きい締結部のそれぞれに突出部及び噛み合い部を設け、荷重が最大となる締結部にはこれらを設けない形態とすることもできる。この場合は、荷重が2番目に大きい締結部と3番目に大きい締結部とによって衝突荷重が分散されるため、最大荷重が作用する締結部の荷重が相対的に低下してPCUの耐荷重が向上する。
【0023】
上記形態又は上記変形例では、突出部20はコンバータケース3又はインバータケース4に一体的に形成されているが一例である。例えば、ピン等の部材をコンバータケース3又はインバータケース4の所定位置に打ち込んで、その部材を突出部として機能させることもできる。
【0024】
上記形態及び上記変形例と上記態様との対応関係をまとめて示すと次の通りとなる。すなわち、上記形態及び上記変形例において、コンバータケース3が第1筐体部の一例に相当し、インバータケース4が第2筐体部の一例に相当する。
【0025】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の態様を以下に記載する。
【0026】
本発明の一態様に係るパワーコントロールユニットは、車両前後方向に延びる一対の側面部(2a)と前記一対の側面部の各端部に位置する4つの角部(2b)とを有し、電力変換装置を収容する筐体(2)を備え、車両のエンジンコンパートメント内に配置されるパワーコントロールユニット(1)において、前記筐体は、接合面(5、6)同士を突き合わせた状態で車両上下方向に重ねられ、前記4つの角部及び前記一対の側面部に配置された複数の締結部(15A〜15F)でボルト(9)にて締結された第1筐体部(3)及び第2筐体部(4)を有しており、前記複数の締結部の少なくとも一つには、前記接合面よりも車両上下方向に突出する突出部(20)と、前記接合面同士を突き合わせた状態で前記突出部と噛み合って車両前後方向に関する前記接合面同士の相対移動を阻止する噛み合い部(21)とが設けられているものである。なお、上記形態に係る参照符号を括弧書きにて付記したが、上記各形態に限定する趣旨ではない。
【0027】
この態様のパワーコントロールユニットによれば、車両前方衝突時において、車両前方からの衝突荷重が第1筐体部又は第2筐体部のいずれかに入力された場合、複数の締結部のボルトにはせん断荷重が作用する。複数の締結部の少なくとも一つには突出部とその突出部に噛み合う噛み合い部とが設けられているため、締結部に入力された荷重はボルトと突出部とに分散される。このため、突出部及び噛み合い部がなく締結部にボルトのみが装着された形態と比較して、ボルトに対するせん断荷重を緩和できる。したがって、車両前方衝突時におけるパワーコントロールユニットの耐荷重が向上する。