(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
150℃で5分間加熱した場合のイオン粘度計で測定される前記熱硬化性樹脂(a)のキュアインデックスが85%以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記成型機構が片面型を有し、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォームを該片面型に配置し、さらにカバーフィルムでパックして成型することを特徴とする請求項1〜8のうち、いずれか1項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記成型機構が中空型を有し、中空部に前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォームを配置し、該中空部を加圧することを特徴とする請求項1〜9のうち、いずれか1項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記工程(II)において、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)が長尺状であり、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)とを連続的に前記成型機構に供することを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか1項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記工程(II)において、前記強化繊維基材(A)が成形機構に接触するように成形機構に供され、さらに、前記熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも一部が当該強化繊維基材(A)に覆われていることを特徴とする請求項1〜14のうち、いずれか1項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記多孔質シート状基材(b)は、40℃における引張強度σrt2が0.5MPa以上であり、かつ次式で表される引張強度比σr2が0.5以上である特性を有することを特徴とする請求項1〜18のうち、いずれか1項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
σr2=σT2/σrt2
σT2:温度T(℃)における多孔質シート状基材(b)の引張強度
T:熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際に、熱硬化性樹脂(a)が最低粘度を示す温度
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の第1及び第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法について説明する。
【0029】
〔第1の態様〕
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を含浸させ、さらに硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法であって、以下に示す工程(II)〜(IV)を含む繊維強化複合材料の製造方法である。
【0030】
工程(II):強化繊維基材(A)、並びに、熱硬化性樹脂(a)と不織布状基材を含む熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する。
【0031】
工程(III):成型機構による加圧によって、熱硬化性樹脂基材(B)から強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、含浸させる。
【0032】
工程(IV):成型機構による加熱によって、熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。
【0033】
なお、強化繊維基材(A)に供給された熱硬化性樹脂(a)、及び、熱硬化性樹脂基材(B)中に残留した熱硬化性樹脂(a)は、成型工程(工程(IV))において硬化し、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂となる。
【0034】
<強化繊維基材(A)>
強化繊維基材(A)としては、強化繊維を含む基材であれば特に限定されないが、織物基材、一方向基材、及びマット基材から選択される少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、強化繊維束単体、強化繊維束を一方向に配列させてステッチ糸により縫合一体化した物、連続繊維からなる織物基布を単独又は積層したもの、連続繊維からなる織物基布をステッチ糸により縫合一体化した物、立体織物や編組物などの繊維構造物、不連続繊維を不織布形態としたものなどが好ましく用いられる。なお、連続繊維とは、強化繊維を短繊維の状態に切断することなく、強化繊維束を連続した状態で引き揃えた強化繊維を意味する。
【0035】
本態様において、強化繊維基材(A)に用いられる強化繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えられた長繊維、織物、ロービングなどの連続繊維の形態から適宜選択できる。
【0036】
また、強化繊維基材(A)は、強化繊維を含み、さらに少なくとも一部に樹脂を含まない未含浸部を有するものであれば、他の物質、例えば種々の添加剤などを含んでいても構わない。しかし、成型時の賦形性の観点から、強化繊維基材(A)は樹脂を含んでいない状態、すなわちドライ状態のものが好ましい。つまり強化繊維基材(A)は強化繊維のみで構成されたものが好ましい。
【0037】
高力学特性の繊維強化複合材料を得る目的からは、強化繊維基材(A)としては連続繊維で構成された織物基材又は一方向基材を用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂基材(B)から供給される熱硬化性樹脂(a)の含浸速度を速め、繊維強化複合材料の生産性を高める目的からは、強化繊維基材(A)としては不連続繊維で構成されたマット基材を用いることが好ましい。
【0038】
強化繊維の種類としては特に限定されず、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などが好適に用いられるが、炭素繊維であることがより好ましい。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が、力学特性の向上、繊維強化複合材料の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種又は2種以上を併用しても良い。炭素繊維の中でも、得られる繊維強化複合材料の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は、3.0GPa以上が好ましく、4.0GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は、200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度とストランド弾性率を好ましい範囲内で使用することで、得られる繊維強化複合材料の力学特性をより高めることができる。
【0039】
<熱硬化性樹脂基材(B)>
熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)と不織布状基材を含む基材である。つまり熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)を不織布状基材に担持させたものである。なお、熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)と不織布状基材を含みさえすれば、他の物質、例えば種々の添加剤などを含んでいても構わない。
【0040】
熱硬化性樹脂基材(B)の形態としては、シート状であることが好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)の厚みは、樹脂供給性や力学特性の観点から0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、取扱性、成型性の観点から、熱硬化性樹脂基材(B)の厚みは100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。
【0041】
熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の質量含有率Wb1は、取扱性の観点から0.5%(質量基準)以上が好ましく、1.0%(質量基準)以上がより好ましく、1.5%(質量基準)以上がさらに好ましい。また、樹脂供給性の観点から前記質量含有率Wb1は30%(質量基準)以下が好ましく、22%(質量基準)以下がより好ましく、15%(質量基準)以下がさらに好ましい。
熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の質量含有率Wb1を0.5%(質量基準)以上30%(質量基準)以下とすることで、室温での取扱性と成型時の樹脂供給性を両立することができる。
【0042】
なお、熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の質量含有率Wb1は、下記式により求められる。
【0043】
Wb1=W11/(W11+W12)×100(%)
W11:熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の質量(g)
W12:熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂の質量(g)
【0044】
ここで、熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の質量含有率Wb1は、後述する条件で切り出したサンプルにおいて熱硬化性樹脂(a)のみを除去する前後の質量差から求めることができる。熱硬化性樹脂基材(B)から熱硬化性樹脂(a)のみを除去する方法としては、熱硬化性樹脂基材(B)を加熱条件下に置いて熱硬化性樹脂(a)を焼き飛ばす方法や、不織布状基材は溶解せずに、熱硬化性樹脂(a)を溶解させる溶剤中に浸漬させる方法が例示できる。
【0045】
熱硬化性樹脂基材(B)を切り出す方法としては、熱硬化性樹脂(a)が室温で固体の場合、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、熱硬化性樹脂(a)が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた熱硬化性樹脂(a)の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0046】
本態様における、熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の体積含有率Vb1は、取扱性の観点から0.3%(体積基準)以上が好ましく、0.6%(体積基準)以上がより好ましく、1.0%(体積基準)以上がさらに好ましい。また、樹脂供給性の観点から前記体積含有率Vb1は20%(体積基準)以下が好ましく、15%(体積基準)以下がより好ましく、10%(体積基準)以下がさらに好ましい。
熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の体積含有率Vb1を0.3%(体積基準)以上20%(体積基準)以下とすることで、室温での取扱性と成型時の樹脂供給性を両立することができる。
【0047】
なお、熱硬化性樹脂基材(B)中の不織布状基材の体積含有率Vb1は、下記式により求められる。
【0048】
Vb1=Faw1/(ρ1×Tb1×10)(%)
Faw1:不織布状基材の目付(g/m
2)
ρ1:不織布状基材の構成材料の密度(g/cm
3)
Tb1:熱硬化性樹脂基材(B)の厚さ(mm)
【0049】
熱硬化性樹脂基材(B)を切り出す方法としては、熱硬化性樹脂(a)が室温で固体の場合、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、熱硬化性樹脂(a)が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた熱硬化性樹脂(a)の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0050】
また、厚さTb1(単位:mm)と不織布状基材の目付Faw1(単位:g/m
2)、不織布状基材の構成材料の密度ρ1(単位:g/cm
3)を用いて上式により不織布状基材の体積含有率Vb1を求めることができる。厚さTb1は、顕微鏡により熱硬化性樹脂基材(B)の縦50mm、横50mmの範囲内における任意の10点の厚さ平均から求められる。
【0051】
<熱硬化性樹脂(a)>
熱硬化性樹脂(a)としては、熱硬化性を有する樹脂でありさえすれば特に限定されないが、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びビスマレイミド樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性樹脂基材(B)の経時安定性と得られる繊維強化複合材料の力学特性のバランスから、熱硬化性樹脂(a)としてはエポキシ樹脂がとりわけ好ましい。エポキシ樹脂は単体での使用の他、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性樹脂との共重合体、変性体及び2種類以上ブレンドした熱硬化性樹脂なども用いることができる。
【0052】
本態様における熱硬化性樹脂(a)は、40℃における粘度が1000Pa・s以上で、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度が10Pa・s以下である特性を示すことが好ましい。熱硬化性樹脂(a)について、40℃における粘度を1000Pa・s以上として、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度を10Pa・s以下とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する際の取扱性と、成型機構において加圧及び加熱することで繊維強化複合材料を製造する際の熱硬化性樹脂(a)の強化繊維基材(A)への含浸性を両立できる。
【0053】
取扱性の観点から、40℃における熱硬化性樹脂(a)の粘度は、1000Pa・s以上が好ましく、熱硬化性樹脂基材(B)を調製する際の熱硬化性樹脂(a)の加工性の観点から、10kPa・s以下が好ましい。また、成型時の強化繊維基材(A)への含浸性の観点から、熱硬化性樹脂(a)は、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度は、10Pa・s以下が好ましく、熱硬化性樹脂(a)の硬化物の力学特性の観点から、1mPa・s以上が好ましい。
【0054】
熱硬化性樹脂(a)の40℃における粘度を1000Pa・s以上とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)として成型機構に供する際に、熱硬化性樹脂(a)が熱硬化性樹脂基材(B)から垂れて流出することを防止することができる。熱硬化性樹脂基材(B)から熱硬化性樹脂(a)が垂れることは、成型機構周辺を汚染するだけでなく、あらかじめ調製して供する強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)の投入量が乱れるため、所望の構成で繊維強化複合材料を製造することが困難となる。
【0055】
一方で、熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度を10Pa・s以下とすることで、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供して加熱及び加圧して繊維強化複合材料を製造する際に、熱硬化性樹脂(a)を強化繊維基材(A)に即座に供給することができ、良好な含浸性を発現する。含浸性が良好となることで、得られる繊維強化複合材料中に生成されるボイドを抑制することに加え、製造プロセスの設計自由度が高くなる。
【0056】
さらに、本態様における熱硬化性樹脂(a)は、150℃で5分間加熱した場合のイオン粘度計で測定されるキュアインデックスが85%以上であることが好ましい。キュアインデックスとは熱硬化性樹脂(a)の硬化反応度合いを示す指標であり、キュアインデックスが高くなることで、得られる繊維強化複合材料の成型機構からの脱型が容易となるため、熱硬化性樹脂(a)を加熱して硬化させて繊維強化複合材料とする時間を短時間で行うことが可能となる。そのため、熱硬化性樹脂基材(B)と強化繊維基材(A)を成型機構に供して製造する工程の加熱時間が短縮し、生産性を向上することができる。熱硬化性樹脂(a)を、150℃で5分間加熱した場合のイオン粘度計で測定されるキュアインデックスは、100%以下が好ましい。
【0057】
本態様における、熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂(a)の後述する成型工程における予備加熱温度及び成型温度における粘度は、いずれの温度においても1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂(a)の予備加熱温度及び成型温度における粘度を1000Pa・s以下とすることで、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)が十分に含浸して、得られる繊維強化複合材料に発生するボイドを抑制することができる。
【0058】
<不織布状基材>
本態様における、不織布状基材は特に限定されないが、不連続繊維から構成されており、束形状もしくは短繊維形状で不連続繊維が分散し、繊維間に熱硬化性樹脂の含浸する空隙を有する構造であることが好ましい。不織布状基材に好適な不連続繊維としては、天然繊維、合成繊維などの有機繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維が挙げられる。なかでも不織布状基材に好適な不連続繊維としては、比強度、比弾性率に優れる炭素繊維が好ましい。不織布状基材の形態や形状に制限はなく、例えば、2種類以上の繊維を混合したり、有機化合物や無機化合物が混合されていたり、繊維同士が他の成分で目留めされていたり、繊維が樹脂成分と接着されていたりしても良い。繊維が分散した構造を容易に製造する観点から、不織布状基材としては乾式法や湿式法で得られる不織布形態で、繊維が十分に開繊され、かつ繊維同士が有機化合物からなるバインダーで接着された不織布状基材が好ましい形状として例示できる。
【0059】
また、本態様における不織布状基材は、熱硬化性樹脂基材(B)の取扱性を向上させることを目的として、40℃における不織布状基材の引張強度σrt1が0.5MPa以上であり、かつ下記する引張強度比σr1が0.5以上であることが好ましい。
【0060】
40℃における不織布状基材の引張強度σrt1は、JIS−L1913(2010)「一般不織布試験方法」に規定される引張強さの測定方法に準拠して評価を行った際の、不織布状基材の力学特性を示す1つの指標である。また、ここで言う「引張強度比σr1」とは、下記する温度T(℃)における不織布状基材の引張強度σT1と40℃における引張強度σrt1の比であり、次式で表すことができる。
【0061】
σr1=σT1/σrt1
σrt1:40℃における不織布状基材の引張強度
σT1:温度T(℃)における不織布状基材の引張強度
T:熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際に、熱硬化性樹脂(a)が最低粘度を示す温度
【0062】
ここで、温度Tとは、熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で加熱したときに、熱硬化性樹脂(a)の粘度が最小となる温度で、熱硬化性樹脂(a)の粘度が最小となる温度が複数ある場合は、その中で最も低い温度を温度Tとする。
【0063】
本態様における不織布状基材の引張強度σrt1は、0.5MPa以上であることが好ましく、例えば、不織布状基材の両端をクランプで把持して運搬する際に、張力や自重により不織布状基材が破断することを防ぐ観点から、1MPa以上であることがより好ましく、3MPa以上1000MPa以下であることがさらに好ましい。このような不織布状基材を用いることで、把持する際に高い張力をかけることが可能であり、熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する際に、切断させることなく搬送が可能となるため、成型機構の設計自由度を高めることができる。
【0064】
一方、温度T(℃)における引張強度σT1は、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供し、加圧及び加熱することで繊維強化複合材料を製造する際の、不織布状基材の力学特性を表しており、これらの比である引張強度比σr1(=σT1/σrt1)が0.5以上であることが好ましく、0.5以上0.99以下であることが好ましい。このような不織布状基材を用いて熱硬化性樹脂基材(B)を調製することで、搬送、積層時は取扱性が良く、成型機構に供し、加圧及び加熱することで繊維強化複合材料を製造する際には、不織布状基材の切断や破れなどを発生することなく、繊維強化複合材料を製造することが可能となるため、製造プロセスが安定する。
【0065】
不織布状基材を構成する繊維の平均繊維長は、0.1mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。また、前記繊維の平均繊維長は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
【0066】
平均繊維長の測定方法としては、例えば、不織布状基材から直接繊維を摘出する方法や、熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂(a)のみを溶解する溶剤を用いて溶解させ、残った繊維を濾別して顕微鏡観察により測定する方法がある(溶解法)。熱硬化性樹脂を溶解する溶剤がない場合には、繊維が酸化減量しない温度範囲において熱硬化性樹脂(a)のみを焼き飛ばし、繊維を分別して顕微鏡観察により測定する方法(焼き飛ばし法)などがある。測定は、繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長とその割合を算出することによって行うことができる。なお、不織布状基材から直接繊維を摘出する方法と、焼き飛ばし法や溶解法で繊維を摘出する方法とを比較した場合、条件を適切に選定することで、得られる結果に特別な差異を生じることはない。
【0067】
不織布状基材のX−Y面(基材面内を意味し、本態様における不織布状基材面内のある軸(X軸)と直交する軸をY軸、基材厚さ方向(すなわち、基材面と垂直な方向)をZ軸とする。)の繊維配向は等方性が好ましい。後述の測定法で測定される、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上がさらに好ましい。理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。不織布状基材のX−Y面の繊維二次元配向角の平均値を5度以上とすることで、不織布状基材の力学特性が等方性に近づくため、熱硬化性樹脂基材(B)として成型機構へ供する際の積層構成を容易に設定することができる。
【0068】
熱硬化性樹脂基材(B)における熱硬化性樹脂(a)の担持性が向上するように、後述の測定法で測定される、不織布状基材のX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上がさらに好ましい。また、不織布状基材のX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、85度以下が好ましく、80度以下がより好ましく、75度以下がさらに好ましい。不織布状基材のX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値を5度以上85度以下とすることで、熱硬化性樹脂(a)の担持性が向上するため、成型時の強化繊維基材(A)への樹脂供給を好適に実施できる。
【0069】
本態様で好ましく用いられる不織布状基材の単位面積当たりの質量は、1g/m
2以上が好ましく、10g/m
2以上がより好ましく、30g/m
2以上がさらに好ましい。不織布状基材の単位面積当たりの質量を1g/m
2以上とすることで、熱硬化性樹脂(a)の担持性と熱硬化性樹脂基材(B)を調製する際の取扱性が向上する。
【0070】
本態様において好ましく用いられる不織布状基材内の繊維同士は、バインダーで接着されてなることが好ましい。これにより、取扱性や生産性、作業性が向上し、かつ、不織布状基材のネットワーク構造を保持することができる。バインダーとしては特に制限されないが、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が好ましく使用される。得られる繊維強化複合材料の力学特性の観点から、不織布状基材のバインダーは、エポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、アミド基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、イミン基から選択される少なくとも1つの官能基を有する樹脂が好ましく用いられる。これらのバインダーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用しても良い。不織布状基材の質量を100質量%としたときに、バインダーの付着量は、取扱性に関する不織布状基材の形態安定性の観点から0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、バインダーの付着量は、不織布状基材の生産性の観点から20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。バインダーの付着量を0.01質量%以上20質量%以下とすることで、取扱性が良好な不織布状基材を効率よく生産することができる。
【0071】
<X−Y面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面の繊維二次元配向角の平均値とは、以下の手順I、IIで測定する。なお、上述のとおり、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交しており、X−Y面は基材面内、Z軸は基材厚さ方向である。
【0072】
I.X−Y面で無作為に選択した不織布状基材中の単繊維に対して交差している全ての単繊維との二次元配向角の平均値を測定する。単繊維に交差する単繊維が多数の場合には、交差する単繊維を無作為に20本選び測定した平均値を代用しても良い。
【0073】
II.上記Iの測定を別の単繊維に着目して合計5回繰り返し、その平均値を繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0074】
熱硬化性樹脂基材(B)から、不織布状基材の繊維二次元配向角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、熱硬化性樹脂基材(B)の表面から繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、熱硬化性樹脂基材(B)の表面を研磨して繊維を露出させることで、より繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、熱硬化性樹脂基材(B)に透過光を利用して繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、熱硬化性樹脂基材(B)を薄くスライスすることで、より繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、熱硬化性樹脂基材(B)をX線CT透過観察して繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い繊維の場合には、繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0075】
また、上記方法で測定が困難な場合には、繊維の構造を崩さないように熱硬化性樹脂を除去した後に繊維の配向を観察する方法が例示できる。例えば、熱硬化性樹脂基材(B)を2枚のステンレス製メッシュに挟み、熱硬化性樹脂基材(B)が動かないようにネジなどで固定してから熱硬化性樹脂成分を焼き飛ばし、得られる繊維基材を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察して測定することができる。
【0076】
<X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値とは、以下の手順I、IIで測定する。
【0077】
I.X−Y面と直交する面で無作為に選択した単繊維の繊維二次元配向角を測定する。繊維二次元配向角はZ軸に平行な場合を0度、Z軸に直角な場合を90度とする。よって、繊維二次元配向角の範囲は0〜90度となる。
【0078】
II.上記Iの測定を合計50本の単繊維で実施し、その平均値をX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0079】
熱硬化性樹脂基材(B)から繊維
二次元配向角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、熱硬化性樹脂基材(B)のY−Z面(Z−X面)から繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、熱硬化性樹脂基材(B)の断面を研磨して繊維を露出させることで、より繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、熱硬化性樹脂基材(B)に透過光を利用して繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、熱硬化性樹脂基材(B)を薄くスライスすることで、より繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、熱硬化性樹脂基材(B)をX線CT透過観察して繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い繊維の場合には、繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0080】
また、上記方法で測定が困難な場合には、繊維の構造を崩さないように熱硬化性樹脂を除去した後に繊維の配向を観察する方法が例示できる。例えば、熱硬化性樹脂基材(B)を2枚のステンレス製メッシュに挟み、熱硬化性樹脂基材(B)が動かないようにネジなどで固定してから熱硬化性樹脂成分を焼き飛ばし、得られる繊維基材を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察して測定することができる。
【0081】
<製造方法>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を含浸させ、さらに硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法であって、後述する工程(II)〜(IV)を含む点を特徴としている。そしてより好ましい態様としては、後述する工程(I)を有する。以下では、このような本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法について説明する。
【0082】
<工程(I)>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、工程(II)の前に、熱硬化性樹脂(a)を不織布状基材に担持させて、熱硬化性樹脂基材(B)を調製する工程(I)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂(a)を不織布状基材に担持させて熱硬化性樹脂基材(B)を調製する方法としては、例えば、熱硬化性樹脂(a)を指定の目付に合わせたフィルム形状として、不織布状基材の少なくとも片面に貼付し、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応が進行しない温度で加熱加圧し、不織布状基材に熱硬化性樹脂(a)を担持させ、巻き取る方法を例示できる。また熱硬化性樹脂(a)の粘度が低くフィルム形状への加工が困難である場合は、不織布状基材上に直接熱硬化性樹脂(a)を塗工する、又は熱硬化性樹脂(a)に不織布状基材を浸漬させることにより、不織布状基材に熱硬化性樹脂(a)を担持させる方法を挙げることもできる。
【0083】
不織布状基材に熱硬化性樹脂(a)を担持させる際の加熱加圧方法としては、ヒータなどの熱源を有した多段ロール、ダブルベルトプレスなどを用いる方法が挙げられる。これらの方法は、連続的に加熱加圧機構に熱硬化性樹脂(a)と不織布状基材を搬送できるため、長尺の熱硬化性樹脂基材(B)が得られる利点がある。
【0084】
また、分割方式で熱硬化性樹脂基材(B)を調製する方法も例示できる。所定のサイズに裁断した不織布状基材とあらかじめ秤量した熱硬化性樹脂(a)を閉空間内に配置して、該閉空間内を減圧し、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応が進行しない温度で所定時間加熱することによって、不織布状基材内に存在する空気を熱硬化性樹脂(a)に置換して不織布状基材に熱硬化性樹脂(a)を担持させる、真空バック方法などが挙げられる。
【0085】
工程(I)にて、熱硬化性樹脂(a)を不織布状基材に担持させるときには、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応が進行しない温度まで熱硬化性樹脂(a)を加熱することが好ましい。加熱することにより熱硬化性樹脂(a)の粘度が低下して、不織布状基材への熱硬化性樹脂(a)の浸透を促進する効果がある。また、硬化反応が進行しない温度における熱硬化性樹脂(a)の粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。硬化反応が進行しない温度における熱硬化性樹脂(a)の粘度を1000Pa・s以下とすることで、不織布状基材に熱硬化性樹脂(a)が十分に浸透して、得られる熱硬化性樹脂基材(B)の樹脂含有ムラや厚さムラを小さくすることができ、これを用いて製造される繊維強化複合材料は、強化繊維基材(A)への熱硬化性樹脂(a)の供給ムラが少なく、ボイドが少ない高品質の繊維強化複合材料となるために好ましい。
【0086】
工程(I)にて、熱硬化性樹脂(a)を不織布状基材に担持させるときには、加圧することがさらに好ましい。加圧することにより不織布状基材への熱硬化性樹脂(a)の浸透が促進される。加圧する圧力の範囲としては、0.1MPa以上10MPa以下の範囲が好ましい。かかる範囲とすることで、加圧による浸透促進効果が十分に得られ、熱硬化性樹脂(a)を効率よく不織布状基材に浸透させることができるために好ましい。
【0087】
<工程(II)>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維基材(A)、並びに、熱硬化性樹脂(a)と不織布状基材を含む熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する工程(II)を含む。強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する形態として、分割方式としては、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を所望の形状・サイズに裁断し、積層して形成したプリフォームとして成型機構に供する方法を例示できる。成型機構としては、プリフォームを投入して形状を付与する機構であれば限定されないが、雌雄一対の両面型を具備したプレス機や、片面に形状を有する賦形型などの成型機構が挙げられる。
【0088】
また、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)が長尺状であり、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを連続的に成型機構に供することが好ましい。ここで長尺状とは、基材の長手方向の長さが10m以上であることを意味する。連続的に供する方法としては、長尺状の強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を、それぞれをクリールに掛けて送り出し、ワインダーなどの巻き取り機構にて張力を掛けながら巻き取る工程内に配置し、この工程内の送り出し−巻き取り機構間に成型機構を具備する方法が例示できる。前記方法では、連続的に強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供することができるという利点を有する。成型機構としては、形状を付与する機構であれば限定されないが、多段ロールやダブルベルトプレスなどの連続的な成型が可能である機構が挙げられる。
【0089】
また、工程(II)では、熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも1つの側面を強化繊維基材(A)で封止するよう成型機構に供することで、熱硬化性樹脂基材(B)の流動を堰き止めて、熱硬化性樹脂(a)を効率的に強化繊維基材(A)に供給することができる。ここで、熱硬化性樹脂基材(B)の側面とは、熱硬化性樹脂基材(B)の厚み方向に平行な面を意味する。得られる繊維強化複合材料の形状や金型の形状にもよるが、熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも1つの側面を封止しておくことが好ましく、全ての側面を封止しておくことがより好ましい。強化繊維基材(A)によって熱硬化性樹脂基材(B)を封止する方法は特に制限はないが、例えば、強化繊維基材(A)で熱硬化性樹脂基材(B)を包み込む方法や、2枚の強化繊維基材(A)で熱硬化性樹脂基材(B)を挟んで継ぎ目をクランプする方法が例示できる。また、封止する強化繊維基材(A)は熱硬化性樹脂基材(B)の側面に密着していても、空間を有していてもよい。
【0090】
<予備加熱工程>
また、本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法では、工程(II)の前に、熱硬化性樹脂基材(B)を予め加熱(予備加熱)する工程を有することが好ましい。成型機構に供する前に予備加熱することで、熱硬化性樹脂基材(B)が軟化した状態で成型機構に供されるため、室温状態で成型機構に供する場合と比較して形状追従性が向上する。
【0091】
予備加熱の温度は、後述する工程(IV)における熱硬化性樹脂(a)を硬化させる温度と同じであっても異なっても構わない。予備加熱の温度が、硬化させる温度と同じ場合は、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応に伴う粘度上昇の観点から、予備加熱時間は10分以内が好ましい。
【0092】
また、予備加熱の温度は、樹脂流動と形状追従性の観点から、熱硬化性樹脂(a)を1.5℃/分の昇温速度で加熱したときの最低粘度を示す温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。予備加熱の温度を、熱硬化性樹脂(a)を1.5℃/分の昇温速度で加熱したときの最低粘度を示す温度よりも10℃以上低い温度とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)が良好に所望の形状に追従して賦形性が向上するため、複雑形状の繊維強化複合材料を容易に得ることができるために好ましい。
【0093】
予備加熱する方法としては、ヒータなどを具備した熱板と直接接触させる方法や熱風により温調された空間で加熱する雰囲気加熱方法などが例示できる。
【0094】
<工程(III)>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構による加圧によって、熱硬化性樹脂基材(B)から強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、含浸させる工程(III)を含む。工程(III)における加圧する方法としては、連続方式と分割方式が挙げられる。
【0095】
連続方式としては、成型機構に供された強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)自体を搬送しながら、加圧する多段ロールやダブルベルトプレスなどで加圧する方法を例示できる。
【0096】
分割方式としては、あらかじめ強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)からプリフォームを形成して加圧する方法が例示できる。分割方式において加圧する方法としては、両面型をプレス機に取り付け、該両面型を型締めして加圧する方法や、片面の賦形型と可撓性を有するフィルムで構成された閉空間内に強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォームを配置して該閉空間を減圧する方法が挙げられる。後者の場合、成型空間である閉空間が外部よりも減圧であるため、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)の積層体(プリフォーム)が加圧された状態となる。
【0097】
また、工程(III)において、加圧による熱硬化性樹脂基材(B)の下記式で表される面内伸長比が1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。
【0098】
面内伸長比=(加圧後の投影面積)/(加圧前の投影面積)
【0099】
ここで、投影面積とは、工程(II)において成形機構に供する前の、最も広い面の投影面積であり、一般的には加圧することで増大する。加圧後の投影面積は、得られる繊維強化複合材料を分解ないし断面観察等から容易に測定することができる。熱硬化性樹脂基材(B)の面内伸張比を1.2以下になるように加圧力を制御することで、熱硬化性樹脂基材(B)の流動を抑制し、樹脂を効率的に強化繊維基材(A)に供給することができる。面内伸張比の下限は特に限定されないが、好ましくは0.7以上で、さらに好ましくは1.0以上である。
【0100】
<工程(IV)>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構による加熱によって、熱硬化性樹脂(a)を硬化させる工程(IV)を含む。加熱温度は、熱硬化性樹脂(a)の硬化速度と、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)が成型機構に投入されてから取り出される時間(成型時間)から設定できるが、100℃以上300℃以下の範囲が好ましい。加熱温度をかかる範囲とすることで、成型サイクルを短縮することができ、繊維強化複合材料の生産性を向上させることができるために好ましい。
【0101】
<工程(III)と工程(IV)の同時進行>
また、本態様では、工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱とを同時に進行させることが好ましい。ここで、工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱とを同時に進行させるとは、工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱の両方が行われている時間に重なりがあること、つまり両方を同時に実施している時間が存在することを意味する。そのため、工程(III)の開始時間及び終了時間と、工程(IV)の開始時間及び終了時間に差があっても構わない。つまり、加圧と加熱とを同時に開始して、加圧と加熱とを同時に終了させる態様も含めば、加圧を開始した後に加熱を開始して、その後加圧を終了して、最後に加熱を終了させる態様や、加圧を開始した後に加熱を開始して、その後加熱を終了して、最後に加圧を終了させる態様や、加圧と加熱とを同時に開始して、その後加圧を終了して、最後に加熱を終了させる態様などを含む。
【0102】
工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱の両方を同時に実施している時間が存在することで、工程(III)の加圧による形状賦形効果及び熱硬化性樹脂(a)の強化繊維基材(A)への含浸を促す効果、並びに、工程(IV)の加熱による熱硬化性樹脂基材(B)の軟化による形状追従性向上の効果及び熱硬化性樹脂(a)の粘度低下に伴う強化繊維への含浸性向上の効果の双方を利用できるため好ましい。
【0103】
<両面型によるプレス成型>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が一対の両面型を有し、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォームを該両面型内で成型する方法(以下、この方法をプレス成型方法という)であることが好ましい(
図2)。かかる成型方法の一例として、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォーム3をあらかじめ作製し、金型(両面型4A、4B)内に配置し、両面型にて型締めを行うことで加圧して賦形し、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給して含浸させる。その後、前記金型を加熱して熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。金型は、プリフォーム3を配置する前に成型温度まで加熱していても構わないし、プリフォーム3が軟化する温度に加熱した金型を加圧後に、成型温度まで昇温しても構わない。前者は、金型の冷却・加熱を必要としないため、成型サイクルを短縮する効果があり、後者は、形状追従性が向上するので、得られる繊維強化複合材料の表面品位が向上する効果がある。
【0104】
プリフォーム3は、両面型に配置する前(工程(II)の前)に予備加熱して、熱硬化性樹脂基材(B)を軟化させておくと、形状追従性が向上するため、さらに好ましい。
【0105】
両面型上にプリフォーム3を配置する際には、プリフォーム3を保持するためにブランクホルダー5を用いることが好ましい(
図3)。ブランクホルダー5でプリフォーム3の端部を挟み込むことによってプリフォーム3の端部を固定することができるため、熱硬化性樹脂基材1から排出される熱硬化性樹脂(a)の横漏れを防ぎ、熱硬化性樹脂(a)を無駄なく強化繊維基材2に含浸させることができる。加えて、プリフォーム3の金型へのセット、取り出しを補助できるといった利点も有する。
【0106】
また、工程(III)において、面圧P1(MPa)で型締めを開始した後、面圧P1よりも高い面圧P2(MPa)で型締めを完了することが好ましく、面圧P2が面圧P1の2倍以上であることがより好ましく、面圧P2が面圧P1の3倍以上であることがさらに好ましい。すなわち、型締め開始時には樹脂の粘度が高いため、より低圧でプリフォームの賦形を優先的に実施し、型締め完了時には賦形したプリフォームに、より高圧で樹脂の供給を実施することで、複雑形状の成形と樹脂の安定した含浸を両立することができる。本実施態様においては、型締め開始時の面圧P1と型締め完了時の面圧P2の関係が条件:P2>P1を満たしさえすれば、途中段階の面圧の値や大小関係は特に限定されないが、好ましくは、型締め開始の面圧P1で保持してプリフォームの賦形をした後、型締め完了の面圧P2まで圧力を上げる方法が好ましい。
【0107】
<片面型とカバーフィルムによる成型>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が片面型6を有し、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォーム3を該片面型6に配置し、さらにカバーフィルム7でパックして成型することが好ましい(
図4)。かかる成型方法の一例として、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォーム3を作製し、片面型6に配置する。該プリフォーム3をカバーフィルム7と片面型6の間に設置し、シール材を用いてプリフォーム3より大きいサイズのカバーフィルム7の端部を片面型に密着させる。カバーフィルム7と片面型6の密着面の一部に、吸引口8を設置し、真空ポンプを用いて吸引口8から、成型空間(プリフォーム3を配置した片面型6とカバーフィルム7より構成される空間)内に存在する空気を吸引して、該成型空間内を減圧する。このとき、成型空間が外部よりも減圧状態となるため、プリフォーム3が加圧された状態となる。その後、熱風オーブンなどに投入して、加熱することで、熱硬化性樹脂(a)が溶融して、強化繊維基材(A)に含浸するとともに、硬化反応が進行して繊維強化複合材料を得ることができる。かかる成型方法では、成型空間に存在する気体を吸引して減圧するため、強化繊維基材(A)に含まれている空気なども除去されるため、得られる繊維強化複合材料中のボイド形成が抑制され、良好な力学特性、表面品位を有する効果がある。
【0108】
真空ポンプによる減圧は、加熱時には止めていても、連続して減圧していても構わないが、得られる繊維強化複合材料のボイドを抑制する観点から、加熱中も連続して減圧しておくことが好ましい。また、前記カバーフィルム7には可撓性を有するフィルムを用いることで、片面型への追従性が良好となるため好ましい。
【0109】
<中空型による成型>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が中空型を有し、中空部に前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォームを配置し、該中空部を加圧することが好ましい。かかる成型方法の一例として、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォームを作製し、中空型内の成型面に貼付するように配置する。中空部を加圧することによりプリフォームを賦形するとともに、強化繊維基材(A)へ熱硬化性樹脂(a)を供給し、中空型内を加熱して熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。中空型は、プリフォームを配置する前に成型温度まで加熱していても構わないし、プリフォームが軟化する温度に加熱した中空型の中空部にプリフォームを配置し、中空部を加圧後に成型温度まで昇温しても構わない。前者は、中空型の冷却・加熱を必要としないため、成型サイクルを短縮する効果があり、後者は、形状追従性が向上して得られる繊維強化複合材料の表面品位が向上する効果がある。また、中空型は中空部を有する一つの剛体からなる一体型であっても、複数の剛体を組み合わせて中空部を構成する分割型であっても構わない。中空部を加圧する方法としては、圧縮空気を前記中空部に流入させる方法などが例示できる。
【0110】
<中子型による成型>
さらに好ましくは、成型機構がさらに中子型を有するのが良い(
図5)。かかる成型方法では、前記中空型(9A、9B)に加えて成型機構が中子型10を有する。中空型(9A、9B)の中空部に前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォーム3を配置し、中子型10を挿入しても構わないし、中子型10の表面に前記プリフォーム3を配置したものを中空型(9A、9B)より形成される中空部に挿入しても構わない。加圧方法としては、中子型10に気体を導入し膨張させることが好ましい。中子型10としては、高温においても均一に圧力を負荷することが可能である熱可塑性樹脂性のブラダーが好ましく用いられる。かかる成型方法では、プリフォーム3の外表面を型に押し当てるため、中空形状の繊維強化複合材料を容易に製造できる効果がある。
【0111】
<引き取り機構による成型>
本発明の第1の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を加圧しながら引き取る機構を有するのが好ましい。かかる成型方法の一例として、長尺状の強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16(
図1参照)を、成型機構に連続的に供給するとともに、加圧して賦形し、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、加熱して成型機構内で熱硬化性樹脂(a)を硬化させ、連続的に一定断面の繊維強化複合材料を製造する。連続成型サイクルの観点から、成型は工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱を同時に進行させることが好ましい。かかる成型方法では、長尺かつ一定断面の繊維強化複合材料を容易に製造できる効果がある。成型機構としては、貫通穴が開いている貫通型でも、剛体の表面に賦形面を持つ押当型でも構わなく、ヒータなどの加熱機構を具備した型とすることで、加圧と加熱を同時に行うことができる。
【0112】
貫通型11としては、
図6に示されるように貫通穴を有する剛体で、片面に強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16を供給する供給口を有し、供給口と反対の面に得られる繊維強化複合材料を引き抜く引抜口を有するものが挙げられる。成型の際には強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16を供給口から連続的に送り込み、貫通穴を通して引抜口から引抜くことによって貫通型11内で加圧して賦形するとともに、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、加熱することで熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。貫通型11の形状としては、供給口が引抜口より大きく、貫通穴がテーパー状になっている形状が圧力を付与しやすいため好ましい。かかる成型機構では、加熱を炉内で行う雰囲気加熱のほか、貫通型11自体にヒータなどの加熱機構を具することで直接加熱することが例示できる。
【0113】
また、押当型12としては、
図7に示されるような剛体からなり、成型時に強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16を均一に加圧できる加圧面を有する型を用いるのも良い。成型の際には強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16に張力をかけた状態で連続的に搬送し、押当型12の成型面に押し当てることによって加圧して賦形するとともに、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、加熱することで熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。押当型12の形状としては、型面が供される強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16の表面と接する角度θ13が、15°〜45°の範囲内であることが好ましく、25°〜40°の範囲内であることがさらに好ましい。角度が小さいと十分な圧力が付与されないため、強化繊維基材(A)への熱硬化性樹脂(a)の供給が不十分となるばかりか、所望の形状に成型できないという問題が生じることがある。一方、角度θ13が大きい場合は、過剰な応力が付加されるため成型の際には強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16が成型中に切断されることがある。かかる成型機構では、加熱を炉内で行う雰囲気加熱のほか、押当型12自体にヒータなどの加熱機構を具することで直接加熱することが例示できる。
【0114】
また、加圧しながら引き取る機構においては、加圧機構にダブルベルトプレス(14A,14B)を好適に用いることができる(
図8)。かかる加圧機構とすることで、連続的な繊維強化複合材料の成型を容易に行うことができるため、繊維強化複合材料の生産性を向上させる効果を有する。
【0115】
また、加熱用と冷却用との2機以上を並列した間欠式プレスシステムとすることも好ましい。加熱用と冷却用の成型機構を分割したプレスシステムとすることで、成型機構内の温度を昇温、降温させる工程が不要となるため、繊維強化複合材料の生産性を向上させることができるため好ましい。
【0116】
<工程(II)における強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)の好適な態様>
本態様においては、工程(II)において、熱硬化性樹脂基材(B)が強化繊維基材(A)に覆われていることが好ましく、より好ましくは、熱硬化性樹脂基材(B)が完全に強化繊維基材(A)によって覆われており、熱硬化性樹脂基材(B)が露出している部分がない形態である。かかる形態では、熱硬化性樹脂基材(B)から排出される熱硬化性樹脂(a)の成型領域外への漏れを防ぐ効果の他、無駄なく強化繊維基材(A)に樹脂を供給することができる効果がある。
図9、10に示されるように、熱硬化性樹脂基材(B)を強化繊維基材(A)で覆う際には、強化繊維基材(A)を熱硬化性樹脂基材(B)に捲回する形態や、複数枚の強化繊維基材(A)を熱硬化性樹脂基材(B)に被せる形態を例示できる。
【0117】
連続方式による成型においては、強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体を成型機構へ搬送する方向に対して直交方向の断面が
図9、10に示されるような構成とすることで、前記効果を発現することができる。
【0118】
一方、分割方式による成型においては、プリフォームの任意の断面が
図9、10に示されるような構成とすることで、前記効果を発現することができる。
【0119】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)が成形機構に接触するように成形機構に供され、さらに、熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも一部が強化繊維基材(A)に覆われていることが好ましい。成型機構と強化繊維基材(A)が接触する形態とすることで、成型機構との摩擦が低減して、形状追従性が向上するため好ましい。強化繊維基材(A)が成型機構に接触するように成型機構に供する方法として、成型機構が上下で挟むプレス機構の場合には、成型機構中の最下面や最上面に強化繊維基材(A)を配置する方法が挙げられる。
【0120】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させて、成型機構に供することが好ましい。強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させて成型機構に供することにより、工程(III)において熱硬化性樹脂(a)を供給する際に、接触面で熱硬化性樹脂(a)の供給がなされる面注入の形態となる。そのため、含浸性が向上して、成型サイクルを短縮することができる。
【0121】
強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させる形態としては、それぞれを一枚ずつ積層しても、複数枚積層しても構わない。
【0122】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を合計で4層以上積層して成型機構に供することが好ましい。その中でも熱硬化性樹脂(a)の含浸性の観点から、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を交互に4層以上積層(
図11)することが好ましく、繊維強化複合材料の厚さの設計自由度を向上させる効果がある。積層枚数の上限は特に限定されないが、得られる繊維強化複合材料の品質の観点から、積層数が100層以下であることが好ましい。強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)をかかる形態として成型機構に供することで、良好な品質の繊維強化複合材料を任意の厚さで製造することができるために好ましい。
【0123】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)に加えて、さらに芯材(C)(芯材15)も成型機構に供することが好ましい。かかる構成で成型機構に供することで、得られる繊維強化複合材料の厚み増加、剛性向上、軽量化などを容易に制御することができる(
図12)。
【0124】
好ましくは、芯材(C)の表面には強化繊維基材(A)を積層し、芯材(C)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させない構成とするのがよい。かかる構成とすることで、芯材(C)への熱硬化性樹脂(a)の含浸が抑制されて、軽量で高品質の繊維強化複合材料を得ることができる。
【0125】
なお、芯材(C)としては、発泡フォームが好適に用いられる。芯材(C)として好適な発泡フォームは、独立気泡を有する発泡フォームであっても連続気泡を有する発泡フォームであっても構わないが、熱硬化性樹脂(a)の発泡フォームへの含浸抑制の観点からは、独立気泡を有する発泡フォームが好ましい。発泡フォームとしては、硬質ウレタンフォームや硬質アクリルフォームのほか、強化繊維表面を起毛させて形成したネットワーク構造に樹脂をコーティングさせたフォーム材が例示できる。
【0126】
[実施例]
以下に実施例を示し、本態様をさらに具体的に説明する。
【0127】
<使用した材料>
[熱硬化性樹脂(a−1)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を30質量部、“jER(登録商標)”1001を35質量部、“jER(登録商標)”154を35質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を3.7質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を3質量部、粒子として“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−1)を作製した。
【0128】
さらに、50g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を1層と100g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を7層積層して、合計8層からなる750g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を作製した。
【0129】
[不織布状基材]
以下の手順で強化繊維からなる不織布状基材を準備した。
【0130】
(手順1)PANを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面処理を行い、総単繊維数12,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
【0131】
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
密度:1.8g/
cm
3
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
【0132】
(手順2)上記(手順1)で得られた連続炭素繊維をカートリッジカッターで長さ6mmにカットし、チョップド繊維を得た。水と界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名)、ナカライテクス(株)製)からなる分散液を作製し、この分散液と上記チョップド繊維とを用いて、抄紙基材の製造装置で抄紙基材を製造した。抄紙は分散液中の繊維濃度を調整することで、単位面積当たりの質量を調整した。抄紙基材に、バインダーとしてポリビニルアルコール水溶液(クラレポバール、(株)クラレ製)を5質量%ほど付着させ、140℃の乾燥炉で1時間乾燥し、単位面積当たりの質量が100g/m
2の不織布状基材を作製した。
【0133】
[強化繊維基材(A−1)]
東レ(株)社製の“トレカ”クロス、CO6343B(平織、繊維目付け198g/m
2)を強化繊維基材(A−1)とした。
【0134】
[熱硬化性樹脂基材(B−1)]
不織布状基材及び750g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を、熱硬化性樹脂(a−1)/不織布状基材/熱硬化性樹脂(a−1)となるように積層し、70℃に温調したプレス機において、面圧0.1MPaの加圧下で1.5時間加熱し、熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−1)中の不織布状基材の質量含有率Wb1は6.3%(質量基準)、体積含有率Vb1は4.3%(体積基準)であった。
【0135】
(実施例1)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。該積層体を、プレス機に取り付けた両面型内に配置し、両面型を型締めして面圧1MPaの圧力を加えた。プレス機に具備されている熱盤を温調し、両面型を1.5℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温させ、150℃に到達後から10分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。10分間のホールド後に両面型の加圧を開放して、繊維強化複合材料(1)を脱型した。
【0136】
繊維強化複合材料(1)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、熱硬化性樹脂基材(B)の面内伸長比は1.10であった。
【0137】
(実施例2)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。成型面の一部に凹凸形状を備えた両面型をプレス機に取り付けて、該プレス機に具備されている熱盤を温調することで、両面型を70℃に温調した。前記積層体を、70℃に温調した前記両面型内に配置し、両面型を型締めして面圧ゼロ圧で10分間予熱した。10分後に、両面型を昇降して面圧1MPaの圧力を加えるとともに、両面型を1.5℃/分の昇温速度で150℃まで昇温させ、150℃に到達後から10分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。10分間のホールド後に両面型の加圧を開放して、繊維強化複合材料(2)を脱型した。
【0138】
繊維強化複合材料(2)の表面品位は良好で、両面型の凹凸形状に追従した形状をなしていた。断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、熱硬化性樹脂基材(B)の面内伸長比は1.05であった。
【0139】
(実施例3)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。該積層体を片面型に配置し、片面型の周囲をシール材(カバーフィルムと型を密着させ、型内を密閉する)で覆った後、前記積層体の外周部に厚手の不織布からなるブリーダー(空気や樹脂の通り道となるスペーサーの役割を果たす)を配置した。ブリーダー上に吸引口としてチューブを配置した後、カバーフィルムで片面型を覆うようにシール材とカバーフィルムを密着させた。カバーフィルムには可撓性を有するものを用いた。真空ポンプを吸引口であるチューブに接続して、成型空間(片面型とカバーフィルムより構成される積層体を含む空間)内の空気を吸引して成型空間内を減圧することで、積層体が加圧された。その後、片面型を150℃に温調されたオーブン内に投入して、30分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。30分間のホールド後に、片面型を取り出し、繊維強化複合材料(3)を脱型した。
【0140】
繊維強化複合材料(3)の表面品位は良好で、表面を顕微鏡にて観察したが、ボイドは確認されなかった。また、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、熱硬化性樹脂基材(B)の面内伸長比は1.01であった。
【0141】
(実施例4)
中空の中子型としてポリプロピレン製のブラダーを準備するとともに、前記ブラダーの外周全面に、(ブラダー)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/(外表面)となるように積層して仮止めし、プリフォームを作製した。風車ブレードの形状を模したキャビティ部を形成する分割中空型を開放し、前記プリフォームをキャビティ部に供して型締めした後、圧縮空気をブラダーの中空部に流入させてブラダーを膨張させることで、中空型の中空部を加圧した。その後、中空型を130℃に温調されたオーブン内に投入して、30分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。30分間のホールド後に、中空型を取り出し、繊維強化複合材料(4)を脱型し、繊維強化複合材料(4)からブラダーを取り除いた。
【0142】
繊維強化複合材料(4)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、繊維強化複合材料
(4)は中空構造を有していた。また、熱硬化性樹脂基材(B)の面内伸長比は1.12であった。
【0143】
(実施例5)
強化繊維基材(A−1)は、熱硬化性樹脂基材(B−1)より大きいサイズで準備し、熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層し、
図10に示されるような端部構成の積層体とした以外は実施例1と同様の方法にて繊維強化複合材料(5)を製造した。
【0144】
繊維強化複合材料(5)の表面品位は良好で、端部を覆った強化繊維基材(A−1)にも熱硬化性樹脂(a−1)が含浸し、成型過程で熱硬化性樹脂(a−1)が漏れ出た様子は確認されなかった。断面観察を行ったが、強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、熱硬化性樹脂基材(B)の面内伸長比は1.05であった。
【0145】
(実施例6)
強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂基材(B−1)を、強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)となるように交互に合計5層積層して積層体とした以外は、実施例1と同様の方法にて繊維強化複合材料(6)を製造した。
【0146】
繊維強化複合材料(6)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが、強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる最外層及び中間層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、熱硬化性樹脂基材(B)各層の面内伸長比の平均は1.13であった。
【0147】
(実施例7)
強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂基材(B−1)に加えて、芯材(C)としてアキレス(株)社製の“アキレスボード(登録商標)”を用い、強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/芯材(C)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。該積層体を片面型に配置し、片面型の周囲をシール材(カバーフィルムと型を密着させ、型内を密閉する)で覆った後、前記積層体の外周部に厚手の不織布からなるブリーダー(空気や樹脂の通り道となるスペーサーの役割を果たす)を配置した。ブリーダー上に吸引口としてチューブを配置した後、カバーフィルムで片面型を覆うようにシール材とカバーフィルムを密着させた。カバーフィルムには可撓性を有するものを用いた。真空ポンプを吸引口であるチューブに接続して、成型空間(片面型とカバーフィルムより構成される積層体を含む空間)内の空気を吸引して成型空間内を減圧することで、積層体が加圧された。その後、片面型を130℃に温調されたオーブン内に投入して、60分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。60分間のホールド後に、片面型を取り出し、繊維強化複合材料(7)を脱型した。
【0148】
繊維強化複合材料(7)の表面品位は良好で、空隙部を含んでおり厚物形状で軽量であった。断面観察を行ったが、強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、熱硬化性樹脂基材(B)各層の面内伸長比は1.02であった。
【0149】
(比較例1)
750g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−1)及び強化繊維基材(A−1)を、強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂(a−1)/熱硬化性樹脂(a−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層した。積層時には、熱硬化性樹脂(a−1)が体温で軟化して伸び、部分的に目付が小さくなってしまった。該積層体を、プレス機に取り付けた両面型内に配置し、両面型を昇降して面圧1MPaの圧力を加えた。プレス機に具備されている熱盤を温調し、両面型を1.5℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温させ、150℃に到達後から10分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。10分間のホールド後に両面型の加圧を開放して、繊維強化複合材料(8)を脱型した。
【0150】
繊維強化複合材料(8)の表面は、強化繊維基材(A−1)が乱れて樹脂リッチ部を形成しており、また、表面の一部は未含浸部を有していた。
【0151】
〔第2の態様〕
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を含浸させ、さらに硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法であって、40℃における熱硬化性樹脂(a)の粘度が1,000Pa・s以上であり、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の熱硬化性樹脂(a)の最低粘度が10Pa・s以下であり、以下に示す工程(II)〜(IV)を含む繊維強化複合材料の製造方法である。
【0152】
工程(II):強化繊維基材(A)、並びに、熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する。ここで、熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)、並びに、多孔質シート状基材(b)又はフィルム状基材(c)を含む基材である。
【0153】
工程(III):成型機構による加圧によって、熱硬化性樹脂基材(B)から強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、含浸させる。
【0154】
工程(IV):成型機構による加熱によって、熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。
【0155】
なお、強化繊維基材(A)に供給された熱硬化性樹脂(a)、及び、熱硬化性樹脂基材(B)中に残留した熱硬化性樹脂(a)は、成型工程(工程(IV))において硬化し、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂となる。
【0156】
<強化繊維基材(A)>
強化繊維基材(A)としては、強化繊維を含む基材であれば特に限定されないが、織物基材、一方向基材、及びマット基材から選択される少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、強化繊維束単体、強化繊維束を一方向に配列させてステッチ糸により縫合一体化した物、連続繊維からなる織物基布を単独又は積層したもの、連続繊維からなる織物基布をステッチ糸により縫合一体化した物、立体織物や編組物などの繊維構造物、不連続繊維を不織布形態としたものなどが好ましく用いられる。なお、連続繊維とは、強化繊維を短繊維の状態に切断することなく、強化繊維束を連続した状態で引き揃えた強化繊維を意味する。
【0157】
本態様において、強化繊維基材(A)に用いられる強化繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えられた長繊維、織物、ロービングなどの連続繊維の形態から適宜選択できる。
【0158】
また、強化繊維基材(A)は、強化繊維を含み、さらに少なくとも一部に樹脂を含まない未含浸部を有するものであれば、他の物質、例えば種々の添加剤などを含んでいても構わない。しかし、成型時の賦形性の観点から、強化繊維基材(A)は樹脂を含んでいない状態、すなわちドライ状態のものが好ましい。つまり強化繊維基材(A)は強化繊維のみで構成されたものが好ましい。
【0159】
高力学特性の繊維強化複合材料を得る目的からは、強化繊維基材(A)としては連続繊維で構成された織物基材又は一方向基材を用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂基材(B)から供給される熱硬化性樹脂(a)の含浸速度を速め、繊維強化複合材料の生産性を高める目的からは、強化繊維基材(A)としては不連続繊維で構成されたマット基材を用いることが好ましい。
【0160】
強化繊維の種類としては特に限定されず、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などが好適に用いられるが、炭素繊維であることがより好ましい。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が、力学特性の向上、繊維強化複合材料の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種又は2種以上を併用しても良い。炭素繊維の中でも、得られる繊維強化複合材料の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は、3.0GPa以上が好ましく、4.0GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は、200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度とストランド弾性率を好ましい範囲内で使用することで、得られる繊維強化複合材料の力学特性をより高めることができる。
【0161】
<熱硬化性樹脂基材(B) 態様1>
以下では、熱硬化性樹脂基材(B)が、熱硬化性樹脂(a)と多孔質シート状基材(b)を含む基材の態様について記述する。
【0162】
熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)と多孔質シート状基材(b)を含む基材である。つまり熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)を多孔質シート状基材(b)に担持させたものである。なお、熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)と多孔質シート状基材(b)を含みさえすれば、他の物質、例えば種々の添加剤などを含んでいても構わない。
【0163】
熱硬化性樹脂基材(B)の形態としては、シート状であることが好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)の厚みは、樹脂供給性や力学特性の観点から0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、取扱性、成型性の観点から、熱硬化性樹脂基材(B)の厚みは100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。
【0164】
熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の質量含有率Wb2は、取扱性の観点から0.5%(質量基準)以上が好ましく、1.0%(質量基準)以上がより好ましく、1.5%(質量基準)以上がさらに好ましい。また、樹脂供給性の観点から前記質量含有率Wb2は30%(質量基準)以下が好ましく、22%(質量基準)以下がより好ましく、15%(質量基準)以下がさらに好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の質量含有率Wb2を0.5%(質量基準)以上30%(質量基準)以下とすることで、室温での取扱性と成型時の樹脂供給性を両立することができる。
【0165】
なお、熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の質量含有率Wb2は、下記式により求められる。
【0166】
Wb2=W21/(W21+W22)×100(%)
W21:熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の質量(g)
W22:熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂の質量(g)
【0167】
ここで、熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の質量含有率Wb2は、後述する条件で切り出したサンプルにおいて熱硬化性樹脂(a)のみを除去する前後の質量差から求めることができる。熱硬化性樹脂基材(B)から熱硬化性樹脂(a)のみを除去する方法としては、熱硬化性樹脂基材(B)を加熱条件下に置いて熱硬化性樹脂(a)を焼き飛ばす方法や、多孔質シート状基材(b)は溶解せずに、熱硬化性樹脂(a)を溶解させる溶剤中に浸漬させる方法が例示できる。
【0168】
熱硬化性樹脂基材(B)を切り出す方法としては、熱硬化性樹脂(a)が室温で固体の場合、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、熱硬化性樹脂(a)が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた熱硬化性樹脂(a)の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0169】
本態様における、熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の体積含有率Vb2は、取扱性の観点から0.3%(体積基準)以上が好ましく、0.6%(体積基準)以上がより好ましく、1.0%(体積基準)以上がさらに好ましい。また、樹脂供給性の観点から前記体積含有率Vb2は20%(体積基準)以下が好ましく、15%(体積基準)以下がより好ましく、10%(体積基準)以下がさらに好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の体積含有率Vb2を0.3%(体積基準)以上20%(体積基準)以下とすることで、室温での取扱性と成型時の樹脂供給性を両立することができる。
【0170】
なお、熱硬化性樹脂基材(B)中の多孔質シート状基材(b)の体積含有率Vb2は、下記式により求められる。
【0171】
Vb2=Faw2/(ρ2×Tb2×10)(%)
Faw2:多孔質シート状基材(b)の目付(g/m
2)
ρ2:多孔質シート状基材(b)の構成材料の密度(g/cm
3)
Tb2:熱硬化性樹脂基材(B)の厚さ(mm)
【0172】
熱硬化性樹脂基材(B)を切り出す方法としては、熱硬化性樹脂(a)が室温で固体の場合、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、熱硬化性樹脂(a)が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた熱硬化性樹脂(a)の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0173】
また、厚さTb2(単位:mm)と多孔質シート状基材(b)の目付Faw2(単位:g/m
2)、多孔質シート状基材(b)の構成材料の密度ρ2(単位:g/cm
3)を用いて上式により多孔質シート状基材(b)の体積含有率Vb2を求めることができる。厚さTb2は、顕微鏡により熱硬化性樹脂基材(B)の縦50mm、横50mmの範囲内における任意の10点の厚さ平均から求められる。
【0174】
<多孔質シート状基材(b)>
本態様における多孔質シート状基材(b)は、熱硬化性樹脂フォーム、熱可塑性樹脂フォームなどを例示でき、特に限定されないが、熱硬化性樹脂基材(B)の取扱性を向上させることを目的として、40℃における多孔質シート状基材(b)の引張強度σrt2が0.5MPa以上であり、かつ下記する引張強度比σr2が0.5以上であることが好ましい。
【0175】
40℃における多孔質シート状基材(b)の引張強度σrt2は、JIS−L1913(2010)「一般不織布試験方法」に規定される引張強さの測定方法に準拠して評価を行った際の、多孔質シート状基材の力学特性を示す1つの指標である。また、ここで言う「引張強度比σr2」とは、下記する温度T(℃)における多孔質シート状基材(b)の引張強度σT2と40℃における引張強度σrt2の比であり、次式で表すことができる。
【0176】
σr2=σT2/σrt2
σrt2:40℃における多孔質シート状基材(b)の引張強度
σT2:温度T(℃)における多孔質シート状基材(b)の引張強度
T:熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際に、熱硬化性樹脂(a)が最低粘度を示す温度
【0177】
ここで、温度Tとは熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で加熱したときに、熱硬化性樹脂(a)の粘度が最小となる温度で、熱硬化性樹脂(a)の粘度が最小となる温度が複数ある場合は、その中で最も低い温度を温度Tとする。
【0178】
本態様における多孔質シート状基材(b)の引張強度σrt2は、0.5MPa以上であることが好ましく、例えば、
図13(i)に示すように多孔質シート状基材17の両端をクランプ18で把持して運搬する際に、張力や自重により多孔質シート状基材17が破断すること(
図13(iii))を防ぐ観点から、1MPa以上であることがより好ましく、3MPa以上1000MPa以下であることがさらに好ましい。このような多孔質シート状基材(b)を用いることで、把持する際に高い張力をかけることが可能であり、熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する際に、切断させることなく搬送が可能(
図13(ii))となるため、成型機構の設計自由度を高めることができる。
【0179】
一方、温度T(℃)における引張強度σT2は、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供し、加圧及び加熱することで繊維強化複合材料を製造する際の、多孔質シート状基材(b)の力学特性を表しており、これらの比である引張強度比σr2(=σT2/σrt2)が0.5以上であることが好ましく、0.5以上0.99以下であることが好ましい。このような多孔質シート状基材(b)を用いて熱硬化性樹脂基材(B)を調製することで、搬送、積層時は取扱性が良く、成型機構に供し、加圧及び加熱することで繊維強化複合材料を製造する際には、多孔質シート状基材(b)の切断や破れなどを発生することなく、繊維強化複合材料を製造することが可能となるため、製造プロセスが安定する。
【0180】
<熱硬化性樹脂基材(B) 態様2>
以下では、熱硬化性樹脂基材(B)が、熱硬化性樹脂(a)とフィルム状基材(c)を含む基材である態様について記述する。
【0181】
熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)とフィルム状基材(c)を含む基材である。つまり熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)をフィルム状基材(c)に担持させたものである。なお、熱硬化性樹脂基材(B)は、熱硬化性樹脂(a)とフィルム状基材(c)を含みさえすれば、他の物質、例えば種々の添加剤などを含んでいても構わない。
【0182】
本態様の熱硬化性樹脂基材(B)は、フィルム状基材(c)と熱硬化性樹脂(a)から構成されてなるシート状であることが好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)のシート厚みは、樹脂供給性や力学特性の観点から0.5mm以上が好ましい。また、取扱い性、賦形性の観点から、熱硬化性樹脂基材(B)のシート厚みは、100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。
【0183】
<フィルム状基材(c)>
フィルム状基材(c)の形態は、特に限定されるものではないが、フィルム、多孔質膜などが好ましい。フィルム状基材(c)として、多孔質膜を用いる場合、使用する熱硬化性樹脂(a)の25℃における粘度にあわせ、熱硬化性樹脂(a)が透過しない孔サイズを有する多孔質膜が好ましく用いられる。
【0184】
フィルム状基材(c)の主成分は、通常の熱可塑性樹脂で良く、特に限定されるわけではないが、賦形性や柔軟性の観点からポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルが好ましく用いられる。ここでいう主成分とは、フィルム状基材(c)100質量%に占める割合が70質量%以上100質量%以下である成分のことをいう。フィルム状基材(c)の柔軟性が高いと熱硬化性樹脂(a)をフィルム状基材(c)で覆う加工がしやすく、形成された閉空間に占める熱硬化性樹脂(a)の割合を高くすることが容易である。
【0185】
フィルム状基材(c)の引張試験(JIS K 7127(1999))で測定される降伏点における引張荷重Fを試験片の幅Wで除した値Xは、25℃において、1N/mm以上であることが好ましく、2N/mm以上であることがより好ましい。25℃における値Xを1N/mm以上とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)の搬送時や積層時などに被膜が破れることなく容易に取り扱うことができる。
【0186】
また、温度Tにおいて、値Xは、1N/mm未満であることが好ましく、0.5N/mm未満であることがより好ましい。温度Tにおける値Xを1N/mm未満とすることで、フィルム状基材(c)が成型中に破れやすくなり、強化繊維基材(A)へ熱硬化性樹脂(a)を効率的に供給することができる。
【0187】
フィルム状基材(c)の厚みは、1μm以上300μm以下が好ましく、1μm以上150μm以下がさらに好ましく、1μm以上100μm以下がとりわけ好ましい。フィルム状基材(c)の厚みを1μm以上300μm以下とすることで、取扱性が良好となる。さらに、フィルム状基材(c)の厚みが薄いほど、熱硬化性樹脂基材(B)の厚みあたりの熱硬化性樹脂(a)の保有量を向上させることができる。すなわち、熱硬化性樹脂基材(B)の厚みあたりの供給可能な熱硬化性樹脂(a)の量が多くなるため、フィルム状基材(c)の厚みは薄いことが好ましい。また、フィルム状基材(c)の厚みが薄いほど、温度Tにおける値Xが小さく、フィルム状基材(c)が破れやすくなるため好ましい。
【0188】
さらに、本態様では通常、前記フィルム状基材(c)が閉空間を形成してなる。それにより、成型前にフィルム状基材(c)に孔をあける必要がなく、熱硬化性樹脂(a)が存在する領域を外界に対してフィルム状基材(c)を隔てた閉空間とすることができるため、未硬化樹脂の漏れ出しもなく、低粘度の熱硬化性樹脂(a)も使用可能である。なお、閉空間とは、熱硬化性樹脂(a)が25℃、大気圧下で透過しないフィルム状基材(c)で囲まれた空間を意味し、空間を形成するフィルム状基材(c)に25℃、大気圧下で熱硬化性樹脂(a)が透過しない程度の孔があいていても構わない。
【0189】
<熱硬化性樹脂(a)>
本態様における熱硬化性樹脂(a)は、40℃における粘度が1000Pa・s以上で、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度が10Pa・s以下である特性を示す。熱硬化性樹脂(a)について、40℃における粘度を1000Pa・s以上として、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度を10Pa・s以下とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する際の取扱性と、成型機構において加圧及び加熱することで繊維強化複合材料を製造する際の熱硬化性樹脂(a)の強化繊維基材(A)への含浸性を両立できる。
【0190】
取扱性の観点から、40℃における熱硬化性樹脂(a)の粘度は、1000Pa・s以上が好ましく、熱硬化性樹脂基材(B)を調製する際の熱硬化性樹脂(a)の加工性の観点から、10kPa・s以下が好ましい。また、成型時の強化繊維基材(A)への含浸性の観点から、熱硬化性樹脂(a)は、30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度は、10Pa・s以下が好ましく、熱硬化性樹脂(a)の硬化物の力学特性の観点から、1mPa・s以上が好ましい。
【0191】
熱硬化性樹脂(a)の40℃における粘度を1000Pa・s以上とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)として成型機構に供する際に、熱硬化性樹脂(a)が熱硬化性樹脂基材(B)から垂れて流出することを防止することができる。熱硬化性樹脂基材(B)から熱硬化性樹脂(a)が垂れることは、成型機構周辺を汚染するだけでなく、あらかじめ調製して供する強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)の投入量が乱れるため、所望の構成で繊維強化複合材料を製造することが困難となる。
【0192】
一方で、熱硬化性樹脂(a)を30℃から1.5℃/分の昇温速度で昇温した際の最低粘度を10Pa・s以下とすることで、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供して加熱加圧して繊維強化複合材料を製造する際に、熱硬化性樹脂(a)を強化繊維基材(A)に即座に供給することができ、良好な含浸性を発現する。含浸性が良好となることで、得られる繊維強化複合材料中に生成されるボイドを抑制することに加え、製造プロセスの設計自由度が高くなる。
【0193】
本態様における熱硬化性樹脂(a)としては、熱硬化性を有して前記粘度特性を有する樹脂でありさえすれば特に限定されないが、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びビスマレイミド樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性樹脂基材(B)の経時安定性と得られる繊維強化複合材料の力学特性のバランスから、熱硬化性樹脂(a)としてはエポキシ樹脂がとりわけ好ましい。エポキシ樹脂は単体での使用の他、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性樹脂との共重合体、変性体及び2種類以上ブレンドした熱硬化性樹脂なども用いることができる。
【0194】
さらに、本態様における熱硬化性樹脂(a)は、150℃で5分間加熱した場合のイオン粘度計で測定されるキュアインデックスが85%以上であることが好ましい。キュアインデックスとは熱硬化性樹脂(a)の硬化反応度合いを示す指標であり、キュアインデックスが高くなることで、得られる繊維強化複合材料の成型機構からの脱型が容易となるため、熱硬化性樹脂(a)を加熱して硬化させて繊維強化複合材料とする時間を短時間で行うことが可能となる。そのため、熱硬化性樹脂基材(B)と強化繊維基材(A)を成型機構に供して製造する工程の加熱時間が短縮し、生産性を向上することができる。熱硬化性樹脂(a)を、150℃で5分間加熱した場合のイオン粘度計で測定されるキュアインデックスは、100%以下が好ましい。
【0195】
本態様における、熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂(a)の後述する成型工程における予備加熱温度及び成型温度における粘度は、いずれの温度においても1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。熱硬化性樹脂基材(B)中の熱硬化性樹脂(a)の予備加熱温度及び成型温度における粘度を1000Pa・s以下とすることで、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)が十分に含浸して、得られる繊維強化複合材料に発生するボイドを抑制することができる。
【0196】
<製造方法>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を含浸させ、さらに硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法であって、後述する工程(II)〜(IV)を含む点を特徴としている。そしてより好ましい態様としては、後述する工程(I)を有する。以下では、このような本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法について説明する。
【0197】
<工程(I)>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、工程(II)の前に、熱硬化性樹脂(a)を多孔質シート状基材(b)又はフィルム状基材(c)に担持させて、熱硬化性樹脂基材(B)を調製する工程(I)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂(a)を多孔質シート状基材(b)又はフィルム状基材(c)に担持させて熱硬化性樹脂基材(B)を調製する方法としては、例えば、多孔質シート状基材(b)を用いる場合は、熱硬化性樹脂(a)を指定の目付に合わせたフィルム形状として、多孔質シート状基材(b)の少なくとも片面に貼付し、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応が進行しない温度で加熱加圧し、多孔質シート状基材(b)に熱硬化性樹脂(a)を担持させ、巻き取る方法を例示できる。また、熱硬化性樹脂(a)の粘度が低くフィルム形状への加工が困難である場合は、多孔質シート状基材(b)上に直接熱硬化性樹脂(a)を塗工する、又は熱硬化性樹脂(a)に多孔質シート状基材(b)を浸漬させることにより、多孔質シート状基材(b)に熱硬化性樹脂(a)を担持させる方法を挙げることもできる。
【0198】
多孔質シート状基材(b)に熱硬化性樹脂(a)を担持させる際の加熱加圧方法としては、ヒータなどの熱源を有した多段ロール、ダブルベルトプレスなどを用いる方法が挙げられる。これらの方法は、連続的に加熱加圧機構に熱硬化性樹脂(a)と多孔質シート状基材(b)を搬送できるため、長尺の熱硬化性樹脂基材(B)が得られる利点がある。
【0199】
また、分割方式で熱硬化性樹脂基材(B)を調製する方法も例示できる。所定のサイズに裁断した多孔質シート状基材(b)とあらかじめ秤量した熱硬化性樹脂(a)を閉空間内に配置して、該閉空間内を減圧し、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応が進行しない温度で所定時間加熱することによって、多孔質シート状基材(b)内に存在する空気を熱硬化性樹脂(a)に置換して多孔質シート状基材(b)に熱硬化性樹脂(a)を担持させる、真空バック方法などが挙げられる。
【0200】
工程(I)にて、熱硬化性樹脂(a)を多孔質シート状基材(b)に担持させるときには、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応が進行しない温度まで熱硬化性樹脂(a)を加熱することが好ましい。加熱することにより熱硬化性樹脂(a)の粘度が低下して、多孔質シート状基材(b)への熱硬化性樹脂(a)の浸透を促進する効果がある。また、硬化反応が進行しない温度における熱硬化性樹脂(a)の粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。硬化反応が進行しない温度における熱硬化性樹脂(a)の粘度を1000Pa・s以下とすることで、多孔質シート状基材(b)に熱硬化性樹脂(a)が十分に浸透して、得られる熱硬化性樹脂基材(B)の樹脂含有ムラや厚さムラを小さくすることができ、これを用いて製造される繊維強化複合材料は、強化繊維基材(A)への熱硬化性樹脂(a)の供給ムラが少なく、ボイドが少ない高品質の繊維強化複合材料となるために好ましい。
【0201】
工程(I)にて、熱硬化性樹脂(a)を多孔質シート状基材(b)に担持させるときには、加圧することがさらに好ましい。加圧することにより多孔質シート状基材(b)への熱硬化性樹脂(a)の浸透が促進される。加圧する圧力の範囲としては、0.1MPa以上10MPa以下の範囲が好ましい。かかる範囲とすることで、加圧による浸透促進効果が十分に得られ、熱硬化性樹脂(a)を効率よく多孔質シート状基材(b)に浸透させることができるために好ましい。
【0202】
また、熱硬化性樹脂(a)をフィルム状基材(c)に担持させて熱硬化性樹脂基材(B)を調製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。インフレーション法によりチューブ状としたフィルム状基材(c)の一辺を接合することで、三辺が閉じられた袋を製造する。他に、2枚のフィルム状基材(c)を重ね、熱硬化性樹脂(a)を入れる口を残して、残りを接合する方法や、1枚のフィルム状基材(c)を折り返し、熱硬化性樹脂(a)を入れる口を残して残りを接合する方法でも袋を製造できる。得られた袋に熱硬化性樹脂(a)を入れ、開いている口を接合することで、熱硬化性樹脂基材(B)が調製できる。熱硬化性樹脂(a)をフィルム状とすることが可能な場合は、フィルム状とした熱硬化性樹脂(a)をフィルム状基材(c)で挟み、端部を接合することでも調製できる。
【0203】
<工程(II)>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維基材(A)、並びに、熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する工程(II)を含む。強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供する形態として、分割方式としては、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を所望の形状・サイズに裁断し、積層して形成したプリフォームとして成型機構に供する方法を例示できる。成型機構としては、プリフォームを投入して形状を付与する機構であれば限定されないが、雌雄一対の両面型を具備したプレス機や、片面に形状を有する賦形型などの成型機構が挙げられる。
【0204】
また、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)が長尺状であり、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを連続的に成型機構に供することが好ましい。ここで長尺状とは、基材の長手方向の長さが10m以上であることを意味する。連続的に供する方法としては、長尺状の強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を、それぞれをクリールに掛けて送り出し、ワインダーなどの巻き取り機構にて張力を掛けながら巻き取る工程内に配置し、この工程内の送り出し−巻き取り機構間に成型機構を具備する方法が例示できる。前記方法では、連続的に強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を成型機構に供することができるという利点を有する。成型機構としては、形状を付与する機構であれば限定されないが、多段ロールやダブルベルトプレスなどの連続的な成型が可能である機構が挙げられる。
【0205】
また、工程(II)では、熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも1つの側面を強化繊維基材(A)で封止するよう成型機構に供することで、熱硬化性樹脂基材(B)の流動を堰き止めて、熱硬化性樹脂(a)を効率的に強化繊維基材(A)に供給することができる。ここで、熱硬化性樹脂基材(B)の側面とは、熱硬化性樹脂基材(B)の厚み方向に平行な面を意味する。得られる繊維強化複合材料の形状や金型の形状にもよるが、熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも1つの側面を封止しておくことが好ましく、全ての側面を封止しておくことがより好ましい。強化繊維基材(A)によって熱硬化性樹脂基材(B)を封止する方法は特に制限はないが、例えば、強化繊維基材(A)で熱硬化性樹脂基材(B)を包み込む方法や、2枚の強化繊維基材(A)で熱硬化性樹脂基材(B)を挟んで継ぎ目をクランプする方法が例示できる。また、封止する強化繊維基材(A)は熱硬化性樹脂基材(B)の側面に密着していても、空間を有していてもよい。
【0206】
<予備加熱工程>
また、本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法では、工程(II)の前に、熱硬化性樹脂基材(B)を予め加熱(予備加熱)する工程を有することが好ましい。成型機構に供する前に予備加熱することで、熱硬化性樹脂基材(B)が軟化した状態で成型機構に供されるため、室温状態で成型機構に供する場合と比較して形状追従性が向上する。
【0207】
予備加熱の温度は、後述する工程(IV)における熱硬化性樹脂(a)を硬化させる温度と同じであっても異なっても構わない。予備加熱の温度が、硬化させる温度と同じ場合は、熱硬化性樹脂(a)の硬化反応に伴う粘度上昇の観点から、予備加熱時間は10分以内が好ましい。
【0208】
また、予備加熱の温度は、樹脂流動と形状追従性の観点から、熱硬化性樹脂(a)を1.5℃/分の昇温速度で加熱したときの最低粘度を示す温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。予備加熱の温度を、熱硬化性樹脂(a)を1.5℃/分の昇温速度で加熱したときの最低粘度を示す温度よりも10℃以上低い温度とすることで、熱硬化性樹脂基材(B)が良好に所望の形状に追従して賦形性が向上するため、複雑形状の繊維強化複合材料を容易に得ることができるために好ましい。
【0209】
予備加熱する方法としては、ヒータなどを具備した熱板と直接接触させる方法や熱風により温調された空間で加熱する雰囲気加熱方法などが例示できる。
【0210】
<工程(III)>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構による加圧によって、熱硬化性樹脂基材(B)から強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、含浸させる工程(III)を含む。工程(III)における加圧する方法としては、連続方式と分割方式が挙げられる。
【0211】
連続方式としては、成型機構に供された強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)自体を搬送しながら、加圧する多段ロールやダブルベルトプレスなどで加圧する方法を例示できる。
【0212】
分割方式としては、あらかじめ強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)からプリフォームを形成して加圧する方法が例示できる。分割方式において加圧する方法としては、両面型をプレス機に取り付け、該両面型を型締めして加圧する方法や、片面の賦形型と可撓性を有するフィルムで構成された閉空間内に強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォームを配置して該閉空間を減圧する方法が挙げられる。後者の場合、成型空間である閉空間が外部よりも減圧であるため、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)の積層体(プリフォーム)が加圧された状態となる。
【0213】
<工程(IV)>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構による加熱によって、熱硬化性樹脂(a)を硬化させる工程(IV)を含む。加熱温度は、熱硬化性樹脂(a)の硬化速度と、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)が成型機構に投入されてから取り出される時間(成型時間)から設定できるが、100℃以上300℃以下の範囲が好ましい。加熱温度をかかる範囲とすることで、成型サイクルを短縮することができ、繊維強化複合材料の生産性を向上させることができるために好ましい。
【0214】
<工程(III)と工程(IV)の同時進行>
また、本態様では、工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱とを同時に進行させることが好ましい。ここで、工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱とを同時に進行させるとは、工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱の両方が行われている時間に重なりがあること、つまり両方を同時に実施している時間が存在することを意味する。そのため、工程(III)の開始時間及び終了時間と、工程(IV)の開始時間及び終了時間に差があっても構わない。つまり、加圧と加熱とを同時に開始して、加圧と加熱とを同時に終了させる態様も含めば、加圧を開始した後に加熱を開始して、その後加圧を終了して、最後に加熱を終了させる態様や、加圧を開始した後に加熱を開始して、その後加熱を終了して、最後に加圧を終了させる態様や、加圧と加熱とを同時に開始して、その後加圧を終了して、最後に加熱を終了させる態様などを含む。
【0215】
工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱の両方を同時に実施している時間が存在することで、工程(III)の加圧による形状賦形効果及び熱硬化性樹脂(a)の強化繊維基材(A)への含浸を促す効果、並びに、工程(IV)の加熱による熱硬化性樹脂基材(B)の軟化による形状追従性向上の効果及び熱硬化性樹脂(a)の粘度低下に伴う強化繊維への含浸性向上の効果の双方を利用できるため好ましい。
【0216】
<両面型によるプレス成型>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が一対の両面型を有し、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォームを該両面型内で成型する方法(以下、この方法をプレス成型方法という)であることが好ましい(
図2)。かかる成型方法の一例として、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォーム3をあらかじめ作製し、金型(両面型4A、4B)内に配置し、両面型にて型締めを行うことで加圧して賦形し、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給して含浸させる。その後、前記金型を加熱して熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。金型は、プリフォーム3を配置する前に成型温度まで加熱していても構わないし、プリフォーム3が軟化する温度に加熱した金型を加圧後に、成型温度まで昇温しても構わない。前者は、金型の冷却・加熱を必要としないため、成型サイクルを短縮する効果があり、後者は、形状追従性が向上するので、得られる繊維強化複合材料の表面品位が向上する効果がある。
【0217】
プリフォーム3は、両面型に配置する前(工程(II)の前)に予備加熱して、熱硬化性樹脂基材(B)を軟化させておくと、形状追従性が向上するため、さらに好ましい。
【0218】
両面型上にプリフォーム3を配置する際には、プリフォーム3を保持するためにブランクホルダー5を用いることが好ましい(
図3)。ブランクホルダー5でプリフォーム3の端部を挟み込むことによってプリフォーム3の端部を固定することができるため、熱硬化性樹脂基材1から排出される熱硬化性樹脂(a)の横漏れを防ぎ、熱硬化性樹脂(a)を無駄なく強化繊維基材2に含浸させることができる。加えて、プリフォーム3の金型へのセット、取り出しを補助できるといった利点も有する。
【0219】
また、工程(III)において、面圧P1(MPa)で型締めを開始した後、面圧P1よりも高い面圧P2(MPa)で型締めを完了することが好ましく、面圧P2が面圧P1の2倍以上であることがより好ましく、面圧P2が面圧P1の3倍以上であることがさらに好ましい。すなわち、型締め開始時には樹脂の粘度が高いため、より低圧でプリフォームの賦形を優先的に実施し、型締め完了時には賦形したプリフォームに、より高圧で樹脂の供給を実施することで、複雑形状の成形と樹脂の安定した含浸を両立することができる。本実施態様においては、型締め開始時の面圧P1と型締め完了時の面圧P2の関係が条件:P2>P1を満たしさえすれば、途中段階の面圧の値や大小関係は特に限定されないが、好ましくは、型締め開始の面圧P1で保持してプリフォームの賦形をした後、型締め完了の面圧P2まで圧力を上げる方法が好ましい。
【0220】
<片面型とカバーフィルムによる成型>
本発明の第2の態様に係る製造方法は、成型機構が片面型6を有し、前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォーム3を該片面型6に配置し、さらにカバーフィルム7でパックして成型することが好ましい(
図4)。かかる成型方法の一例として、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォーム3を作製し、片面型6に配置する。該プリフォーム3をカバーフィルム7と片面型6の間に設置し、シール材を用いてプリフォーム3より大きいサイズのカバーフィルム7の端部を片面型6に密着させる。カバーフィルム7と片面型6の密着面の一部に、吸引口8を設置し、真空ポンプを用いて吸引口から、成型空間(プリフォーム3を配置した片面型6とカバーフィルム7より構成される空間)内に存在する空気を吸引して、該成型空間内を減圧する。このとき、成型空間が外部よりも減圧状態となるため、プリフォーム3が加圧された状態となる。その後、熱風オーブンなどに投入して、加熱することで、熱硬化性樹脂(a)が溶融して、強化繊維基材(A)に含浸するとともに、硬化反応が進行して繊維強化複合材料を得ることができる。かかる成型方法では、成型空間に存在する気体を吸引して減圧するため、強化繊維基材(A)に含まれている空気なども除去されるため、得られる繊維強化複合材料中のボイド形成が抑制され、良好な力学特性、表面品位を有する効果がある。
【0221】
真空ポンプによる減圧は、加熱時には止めていても、連続して減圧していても構わないが、得られる繊維強化複合材料のボイドを抑制する観点から、加熱中も連続して減圧しておくことが好ましい。また、前記カバーフィルム7には可撓性を有するフィルムを用いることで、片面型への追従性が良好となるため好ましい。
【0222】
<中空型による成型>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が中空型を有し、中空部に前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォームを配置し、該中空部を加圧することが好ましい。かかる成型方法の一例として、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を含むプリフォームを作製し、中空型内の成型面に貼付するように配置する。中空部を加圧することによりプリフォームを賦形するとともに、強化繊維基材(A)へ熱硬化性樹脂(a)を供給し、中空型内を加熱して熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。中空型は、プリフォームを配置する前に成型温度まで加熱していても構わないし、プリフォームが軟化する温度に加熱した中空型の中空部にプリフォームを配置し、中空部を加圧後に成型温度まで昇温しても構わない。前者は、中空型の冷却・加熱を必要としないため、成型サイクルを短縮する効果があり、後者は、形状追従性が向上して得られる繊維強化複合材料の表面品位が向上する効果がある。また、中空型は中空部を有する一つの剛体からなる一体型であっても、複数の剛体を組み合わせて中空部を構成する分割型であっても構わない。中空部を加圧する方法としては、圧縮空気を前記中空部に流入させる方法などが例示できる。
【0223】
<中子型による成型>
さらに好ましくは、成型機構がさらに中子型を有するのが良い(
図5)。かかる成型方法では、前記中空型(9A、9B)に加えて成型機構が中子型10を有する。中空型(9A、9B)の中空部に前記強化繊維基材(A)と前記熱硬化性樹脂基材(B)からなるプリフォーム3を配置し、中子型10を挿入しても構わないし、中子型10の表面に前記プリフォーム3を配置したものを中空型(9A、9B)より形成される中空部に挿入しても構わない。加圧方法としては、中子型10に気体を導入し膨張させることが好ましい。中子型10としては、高温においても均一に圧力を負荷することが可能である熱可塑性樹脂性のブラダーが好ましく用いられる。かかる成型方法では、プリフォーム3の外表面を型に押し当てるため、中空形状の繊維強化複合材料を容易に製造できる効果がある。
【0224】
<引き取り機構による成型>
本発明の第2の態様に係る繊維強化複合材料の製造方法は、成型機構が、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を加圧しながら引き取る機構を有するのが好ましい。かかる成型方法の一例として、長尺状の強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16(
図1参照)を、成型機構に連続的に供給するとともに、加圧して賦形し、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、加熱して成型機構内で熱硬化性樹脂(a)を硬化させ、連続的に一定断面の繊維強化複合材料を製造する。連続成型サイクルの観点から、成型は工程(III)の加圧と工程(IV)の加熱を同時に進行させることが好ましい。かかる成型方法では、長尺かつ一定断面の繊維強化複合材料を容易に製造できる効果がある。成型機構としては、貫通穴が開いている貫通型でも、剛体の表面に賦形面を持つ押当型でも構わなく、ヒータなどの加熱機構を具備した型とすることで、加圧と加熱を同時に行うことができる。
【0225】
貫通型11としては、
図6に示されるように貫通穴を有する剛体で、片面に強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16を供給する供給口を有し、供給口と反対の面に得られる繊維強化複合材料を引き抜く引抜口を有するものが挙げられる。成型の際には強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16を供給口から連続的に送り込み、貫通穴を通して引抜口から引抜くことによって貫通型11内で加圧して賦形するとともに、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、加熱することで熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。貫通型11の形状としては、供給口が引抜口より大きく、貫通穴がテーパー状になっている形状が圧力を付与しやすいため好ましい。かかる成型機構では、加熱を炉内で行う雰囲気加熱のほか、貫通型11自体にヒータなどの加熱機構を具することで直接加熱することが例示できる。
【0226】
また、押当型12としては、
図7に示されるような剛体からなり、成型時に強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16を均一に加圧できる加圧面を有する型を用いるのも良い。成型の際には強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16に張力をかけた状態で連続的に搬送し、押当型12の成型面に押し当てることによって加圧して賦形するとともに、強化繊維基材(A)に熱硬化性樹脂(a)を供給し、加熱することで熱硬化性樹脂(a)を硬化させる。押当型12の形状としては、型面が供される強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16の表面と接する角度θ13が、15°〜45°の範囲内であることが好ましく、25°〜40°の範囲内であることがさらに好ましい。角度が小さいと十分な圧力が付与されないため、強化繊維基材(A)への熱硬化性樹脂(a)の供給が不十分となるばかりか、所望の形状に成型できないという問題が生じることがある。一方、角度θ13が大きい場合は、過剰な応力が付加されるため成型の際には強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体16が成型中に切断されることがある。かかる成型機構では、加熱を炉内で行う雰囲気加熱のほか、押当型12自体にヒータなどの加熱機構を具することで直接加熱することが例示できる。
【0227】
また、加圧しながら引き取る機構においては、加圧機構にダブルベルトプレス(14A,14B)を好適に用いることができる(
図8)。かかる加圧機構とすることで、連続的な繊維強化複合材料の成型を容易に行うことができるため、繊維強化複合材料の生産性を向上させる効果を有する。
【0228】
また、加熱用と冷却用との2機以上を並列した間欠式プレスシステムとすることも好ましい。加熱用と冷却用の成型機構を分割したプレスシステムとすることで、成型機構内の温度を昇温、降温させる工程が不要となるため、繊維強化複合材料の生産性を向上させることができるため好ましい。
【0229】
<工程(II)における強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)の好適な態様>
本態様においては、工程(II)において、熱硬化性樹脂基材(B)が強化繊維基材(A)に覆われていることが好ましく、より好ましくは、熱硬化性樹脂基材(B)が完全に強化繊維基材(A)によって覆われており、熱硬化性樹脂基材(B)が露出している部分がない形態である。かかる形態では、熱硬化性樹脂基材(B)から排出される熱硬化性樹脂(a)の成型領域外への漏れを防ぐ効果の他、無駄なく強化繊維基材(A)に樹脂を供給することができる効果がある。
図9、10に示されるように、熱硬化性樹脂基材(B)を強化繊維基材(A)で覆う際には、強化繊維基材(A)を熱硬化性樹脂基材(B)に捲回する形態や、複数枚の強化繊維基材(A)を熱硬化性樹脂基材(B)に被せる形態を例示できる。
【0230】
連続方式による成型においては、強化繊維基材(A)及び熱硬化性樹脂基材(B)を含む積層体を成型機構へ搬送する方向に対して直交方向の断面が
図9、10に示されるような構成とすることで、前記効果を発現することができる。
【0231】
一方、分割方式による成型においては、プリフォームの任意の断面が
図9、10に示されるような構成とすることで、前記効果を発現することができる。
【0232】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)が成形機構に接触するように成形機構に供され、さらに、熱硬化性樹脂基材(B)の少なくとも一部が強化繊維基材(A)に覆われていることが好ましい。成型機構と強化繊維基材(A)が接触する形態とすることで、成型機構との摩擦が低減して、形状追従性が向上するため好ましい。強化繊維基材(A)が成型機構に接触するように成型機構に供する方法として、成型機構が上下で挟むプレス機構の場合には、成型機構中の最下面や最上面に強化繊維基材(A)を配置する方法が挙げられる。
【0233】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させて、成型機構に供することが好ましい。強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させて成型機構に供することにより、工程(III)において熱硬化性樹脂(a)を供給する際に、接触面で熱硬化性樹脂(a)の供給がなされる面注入の形態となる。そのため、含浸性が向上して、成型サイクルを短縮することができる。
【0234】
強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させる形態としては、それぞれを一枚ずつ積層しても、複数枚積層しても構わない。
【0235】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を合計で4層以上積層して成型機構に供することが好ましい。その中でも熱硬化性樹脂(a)の含浸性の観点から、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)を交互に4層以上積層(
図11)することが好ましく、繊維強化複合材料の厚さの設計自由度を向上させる効果がある。積層枚数の上限は特に限定されないが、得られる繊維強化複合材料の品質の観点から、積層数が100層以下であることが好ましい。強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)をかかる形態として成型機構に供することで、良好な品質の繊維強化複合材料を任意の厚さで製造することができるために好ましい。
【0236】
本態様においては、工程(II)において、強化繊維基材(A)と熱硬化性樹脂基材(B)に加えて、さらに芯材(C)(芯材15)も成型機構に供することが好ましい。かかる構成で成型機構に供することで、得られる繊維強化複合材料の厚み増加、剛性向上、軽量化などを容易に制御することができる(
図12)。
【0237】
好ましくは、芯材(C)の表面には強化繊維基材(A)を積層し、芯材(C)と熱硬化性樹脂基材(B)とを直接接触させない構成とするのがよい。かかる構成とすることで、芯材(C)への熱硬化性樹脂(a)の含浸が抑制されて、軽量で高品質の繊維強化複合材料を得ることができる。
【0238】
なお、芯材(C)としては、発泡フォームが好適に用いられる。芯材(C)として好適な発泡フォームは、独立気泡を有する発泡フォームであっても連続気泡を有する発泡フォームであっても構わないが、熱硬化性樹脂(a)の発泡フォームへの含浸抑制の観点からは、独立気泡を有する発泡フォームが好ましい。発泡フォームとしては、硬質ウレタンフォームや硬質アクリルフォームのほか、強化繊維表面を起毛させて形成したネットワーク構造に樹脂をコーティングさせたフォーム材が例示できる。
【0239】
[実施例]
以下に実施例を示し、本態様をさらに具体的に説明する。まず、本発明に使用した評価方法を下記する。
【0240】
(評価方法1)熱硬化性樹脂の粘度測定
熱硬化性樹脂の粘度は、動的粘弾性装置ARES−2KFRTN1−FCO−STD(ティー・エイ・インスツルメント(株)製)を用い、上下部測定治具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の治具間が1mmとなるように、熱硬化性樹脂をセット後、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で、測定開始温度を30℃、昇温速度1.5℃/分で測定した。得られたデータから、温度40℃における粘度及び測定した樹脂粘度が最小となる温度をT(℃)として温度T(℃)における粘度を求めた。
【0241】
(評価方法2)熱硬化性樹脂のキュアインデックス
イオン粘度計として、誘電測定装置(Holometrix−Micromet社製、MDE−10キュアモニター)を使用した。TMS−1インチ型センサーを下面に埋め込んだプログラマブルミニプレスMP2000の下面に内径32mm、厚さ3mmのバイトン製Oリングを設置し、プレスの温度を150℃に設定し、Oリングの内側に熱硬化性樹脂を注ぎ、プレスを閉じ、熱硬化性樹脂のイオン粘度の時間変化を追跡した。測定は10、100、1,000、及び10,000Hzの各周波数で行い、付属のソフトウェアを用いて、周波数非依存のイオン粘度の対数Logαを得た。ここで、150℃で5分間加熱した場合のキュアインデックス(%)を次式より算出した。
【0242】
キュアインデックス=
(Logαt−Logαmin)/(Logαmax−Logαmin)×100
αt:5分経過時におけるイオン粘度(単位:Ω・cm)
αmin:イオン粘度の最小値(単位:Ω・cm)
αmax:イオン粘度の最大値(単位:Ω・cm)
【0243】
(評価方法3)多孔質シート状基材の引張強度σrt2
多孔質シート状基材を用いて、ある方向を0°の基準とし、+45°、+90°、−45°の方向で幅50mm、長さ280mmの試験片を切り出し、JIS−L1913(2010)「一般不織布試験方法」に規定の引張強さの測定方法に準拠して、40℃における引張強度を評価した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機(インストロン社製)を用いた。本発明において、引張強度とは、破断点の荷重を断面積で除したものを指す。各試験片における引張強度の平均値をσθ(θ=0°、+45°、+90°、−45°)とし、これらの平均値を多孔質シート状基材の引張強度σrt2とした。
【0244】
(評価方法4)温度T(℃)における多孔質シート状基材の引張強度σT2
評価方法
3で得られた引張強度σrt2と同じ方向の試験片を用い、槽内温度が評価方法1で得られた温度T(℃)となるように温度調整された恒温槽内で、評価方法3と同様の引張評価を行った。このときの引張強度を、温度T(℃)における引張強度σT2とした。
【0245】
(評価方法5)フィルム状基材の引張試験方法
JIS K 7127(1999)に準拠して引張試験機(5565床置き型万能試験システム、インストロン製)を用いて引張試験を実施した。引張試験は25℃、及び評価方法1で得られた温度T(℃)で実施した。温度T(℃)で実施する場合は、槽内温度を温度T(℃)とした恒温槽内に試験片をセットしてから5分間放置した後、引張試験を行い、降伏点における引張荷重Fを試験片の幅Wで除して値Xを得た。引張荷重Fが試験機の検出限界以下の場合は測定不可とし、値Xを0.01N/mm未満と判定した。
【0246】
<使用した材料>
[熱硬化性樹脂(a−1)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を30質量部、“jER(登録商標)”1001を35質量部、“jER(登録商標)”154を35質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を3.7質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を3質量部、粒子として“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−1)を作製した。熱硬化性樹脂(a−1)の特性は表1に示す通りであった。
【0247】
[熱硬化性樹脂(a−2)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を30質量部、“jER(登録商標)”1001を35質量部、“jER(登録商標)”154を35質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を3.7質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を3質量部、粒子として“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)を10質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−2)を作製した。熱硬化性樹脂(a−2)の特性は表1に示す通りであった。
【0248】
[熱硬化性樹脂(a−3)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を30質量部、“jER(登録商標)”1001を20質量部、“jER(登録商標)”1007を15質量部、“jER(登録商標)”154を35質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を3.5質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を3質量部、粒子として“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−3)を作製した。熱硬化性樹脂(a−3)の特性は表1に示す通りであった。
【0249】
[熱硬化性樹脂(a−4)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を30質量部、“jER(登録商標)”1001を35質量部、“jER(登録商標)”154を35質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を3.7質量部、硬化促進剤としてオミキュア24(ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)を3質量部、粒子として“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−4)を作製した。熱硬化性樹脂(a−4)の特性は表1に示す通りであった。
【0250】
[熱硬化性樹脂(a−5)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を20質量部、“jER(登録商標)”1001を40質量部、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434を40質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を4.8質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を2質量部、粒子として“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−5)を作製した。熱硬化性樹脂(a−5)の特性は表1に示す通りであった。
【0251】
[熱硬化性樹脂(a−6)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を100質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を4.2質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−6)を作製した。熱硬化性樹脂(a−6)の特性は表1に示す通りであった。
【0252】
[熱硬化性樹脂(a−7)]
“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)を20質量部、“jER(登録商標)”1007を40質量部、“jER(登録商標)”154を40質量部、ニーダー中に投入し、混練しながら150℃まで昇温し、150℃において1時間混練することで透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで混練しながら降温させた後、硬化剤としてDYCY7(三菱化学(株)製)を3.3質量部、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を3質量部配合し、60℃において30分間混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して、単位面積当たりの質量が50g/m
2と100g/m
2のフィルム状の熱硬化性樹脂(a−7)を作製した。熱硬化性樹脂(a−7)の特性は表1に示す通りであった。
【0253】
[多孔質シート状基材(b−1)]
(株)イノアックコーポレーション製のウレタンフォーム“モルトプレン(登録商標)”ER−1を多孔質シート状基材(b−1)として準備した。多孔質シート状基材(b−1)の特性は表2に示す通りであった。
【0254】
[多孔質シート状基材(b−2)]
(株)ロジャースイノアック製のシリコンフォーム“NanNex(登録商標)”HT−800を多孔質シート状基材(b−2)として準備した。多孔質シート状基材(b−2)の特性は表2に示す通りであった。
【0255】
[フィルム状基材(c−1)]
熱可塑性樹脂(J106MG((株)プライムポリマー製、ポリプロピレンペレット、融点165℃))のペレットを用い、プレス機によりフィルムを製造し、フィルム状基材(c−1)を得た。フィルム状基材(c−1)の厚みは93μmであった。
【0256】
[強化繊維基材(A−1)]
東レ(株)社製の“トレカ”クロス、CO6343B(平織、繊維目付け198g/m
2)を強化繊維基材(A−1)とした。
【0257】
[熱硬化性樹脂基材(B−1)]
50g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を1層と100g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を7層積層して、合計8層からなる750g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を作製した。多孔質シート状基材(b−1)及び前記750g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を、熱硬化性樹脂(a−1)/多孔質シート状基材(b−1)/熱硬化性樹脂(a−1)となるように積層し、70℃に温調したプレス機において、面圧0.1MPaの加圧下で1.5時間加熱し、熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−1)に関する特性を表3にまとめた。
【0258】
[熱硬化性樹脂基材(B−2)]
熱硬化性樹脂(a−1)の代わりに熱硬化性樹脂(a−2)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−2)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−2)に関する特性を表3にまとめた。
【0259】
[熱硬化性樹脂基材(B−3)]
熱硬化性樹脂(a−1)の代わりに熱硬化性樹脂(a−3)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−3)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−3)に関する特性を表3にまとめた。
【0260】
[熱硬化性樹脂基材(B−4)]
熱硬化性樹脂(a−1)の代わりに熱硬化性樹脂(a−4)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−4)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−4)に関する特性を表3にまとめた。
【0261】
[熱硬化性樹脂基材(B−5)]
熱硬化性樹脂(a−1)の代わりに熱硬化性樹脂(a−5)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−5)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−5)に関する特性を表3にまとめた。
【0262】
[熱硬化性樹脂基材(B−6)]
熱硬化性樹脂(a−1)の代わりに熱硬化性樹脂(a−6)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−6)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−6)に関する特性を表4にまとめた。
【0263】
[熱硬化性樹脂基材(B−7)]
熱硬化性樹脂(a−1)の代わりに熱硬化性樹脂(a−7)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−7)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−7)に関する特性を表4にまとめた。
【0264】
[熱硬化性樹脂基材(B−8)]
多孔質シート状基材(b−1)の代わりに多孔質シート状基材(b−2)を用いた以外は、前記熱硬化性樹脂基材(B−1)を作製する方法と同様とし、熱硬化性樹脂基材(B−8)を作製した。この熱硬化性樹脂基材(B−8)に関する特性を表4にまとめた。
【0265】
[熱硬化性樹脂基材(B−9)]
50g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を1層と100g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を7層積層して、合計8層からなる750g/m
2の熱硬化性樹脂(a−1)を作製した。得られた熱硬化性樹脂(a−1)を2枚のフィルム状基材(c−1)で挟み、フィルム状基材の4辺について、端から1cmの箇所でヒートシールすることで、熱硬化性樹脂基材(B−9)を得た。この熱硬化性樹脂基材(B−9)に関する特性を表4にまとめた。
【0270】
(実施例11)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。該積層体を、プレス機に取り付けた両面型内に配置し、両面型を型締めして面圧1MPaの圧力を加えた。プレス機に具備されている熱盤を温調し、両面型を1.5℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温させ、150℃に到達後から10分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。10分間のホールド後に両面型の加圧を開放して、繊維強化複合材料(11)を脱型した。このとき、繊維強化複合材料(11)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0271】
繊維強化複合材料(11)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0272】
(実施例12)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の代わりに熱硬化性樹脂
基材(B−2)を用いる以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(12)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(12)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0273】
繊維強化複合材料(12)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−2)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0274】
(実施例13)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の代わりに熱硬化性樹脂
基材(B−3)を用いる以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(13)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(13)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0275】
繊維強化複合材料(13)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−3)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0276】
(実施例14)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の代わりに熱硬化性樹脂
基材(B−4)を用い、150℃におけるホールド時間を5分とする以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(14)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(14)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0277】
繊維強化複合材料(14)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−4)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0278】
(実施例15)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の代わりに熱硬化性樹脂
基材(B−5)を用い、150℃におけるホールド時間を5分とする以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(15)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(15)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0279】
繊維強化複合材料(15)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−5)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0280】
(実施例16)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の代わりに熱硬化性樹脂
基材(B−8)を用いる以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(16)を製造した。熱硬化性樹脂基材(B−8)は積層、搬送工程において、良好な取扱性を有していた。このとき、繊維強化複合材料(16)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0281】
繊維強化複合材料(16)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0282】
(実施例17)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の代わりに熱硬化性樹脂
基材(B−9)を用いる以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(17)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(17)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0283】
繊維強化複合材料(17)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0284】
(実施例18)
熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。該積層体を片面型に配置し、片面型の周囲をシール材(カバーフィルムと型を密着させ、型内を密閉する)で覆った後、前記積層体の外周部に厚手の不織布からなるブリーダー(空気や樹脂の通り道となるスペーサーの役割を果たす)を配置した。ブリーダー上に吸引口としてチューブを配置した後、カバーフィルムで片面型を覆うようにシール材とカバーフィルムを密着させた。カバーフィルムには可撓性を有するものを用いた。真空ポンプを吸引口であるチューブに接続して、成型空間(片面型とカバーフィルムより構成される積層体を含む空間)内の空気を吸引して成型空間内を減圧することで、積層体が加圧された。その後、片面型を150℃に温調されたオーブン内に投入して、30分間ホールドして繊維強化複合材料(18)を製造した。30分間のホールド後に、片面型を取り出し、繊維強化複合材料(18)を脱型した。
【0285】
繊維強化複合材料(18)の表面品位は良好で、表面を顕微鏡にて観察したが、ボイドは確認されなかった。また、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0286】
(実施例19)
中空の中子型としてポリプロピレン製のブラダーを準備するとともに、前記ブラダーの外周全面に、(ブラダー)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/(外表面)となるように積層して仮止めし、プリフォームを作製した。風車ブレードの形状を模したキャビティ部を形成する分割中空型を開放し、前記プリフォームをキャビティ部に供して型締めした後、圧縮空気をブラダーの中空部に流入させてブラダーを膨張させることで、中空型の中空部を加圧した。その後、中空型を150℃に温調されたオーブン内に投入して、30分間ホールドして繊維強化複合材料(19)を製造した。30分間のホールド後に、中空型を取り出し、繊維強化複合材料(19)を脱型し、繊維強化複合材料
(19)からブラダーを取り除いた。
【0287】
繊維強化複合材料(19)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。また、繊維強化複合材料(19)は中空構造を有していた。
【0288】
(実施例20)
強化繊維基材(A−1)は、熱硬化性樹脂基材(B−1)より大きいサイズで準備し、熱硬化性樹脂基材(B−1)の表と裏に、
強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層し、
図10に示されるような端部構成の積層体とした以外は実施例1と同様の方法にて繊維強化複合材料(20)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(20)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0289】
繊維強化複合材料(20)の表面品位は良好で、端部を覆った強化繊維基材(A−1)にも熱硬化性樹脂(a−1)が含浸し、成型過程で熱硬化性樹脂(a−1)が漏れ出た様子は確認されなかった。断面観察を行ったが、強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0290】
(実施例21)
強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂基材(B−1)を、強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)となるように交互に合計5層積層して積層体とした以外は、実施例11と同様の方法にて繊維強化複合材料(21)を製造した。このとき、繊維強化複合材料(21)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0291】
繊維強化複合材料(21)の表面品位は良好で、断面観察を行ったが、強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる最外層及び中間層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0292】
(実施例22)
強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂基材(B−1)に加えて、芯材(C)としてアキレス(株)社製の“アキレスボード(登録商標)”を用い、強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/芯材(C)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした該積層体を片面型に配置し、片面型の周囲をシール材(カバーフィルムと型を密着させ、型内を密閉する)で覆った後、前記積層体の外周部に厚手の不織布からなるブリーダー(空気や樹脂の通り道となるスペーサーの役割を果たす)を配置した。ブリーダー上に吸引口としてチューブを配置した後、カバーフィルムで片面型を覆うようにシール材とカバーフィルムを密着させた。カバーフィルムには可撓性を有するものを用いた。真空ポンプを吸引口であるチューブに接続して、成型空間(片面型とカバーフィルムより構成される積層体を含む空間)内の空気を吸引して成型空間内を減圧することで、積層体が加圧された。その後、片面型を130℃に温調されたオーブン内に投入して、60分間ホールドして繊維強化複合材料(22)を製造した。60分間のホールド後に、片面型を取り出し、繊維強化複合材料(22)を脱型した。
【0293】
繊維強化複合材料(22)の表面品位は良好で、空隙部を含んでおり厚物形状で軽量であった。断面観察を行ったが、強化繊維基材(A−1)と熱硬化性樹脂(a−1)からなる層にボイドは確認されなかった。なお、本実施例においてボイドの有無は、顕微鏡観察画像において5μm以上の直径を有する空隙の有無により判定した。
【0294】
(比較例11)
熱硬化性樹脂基材(B−6)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−6)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体を作製しようとしたが、搬送時に熱硬化性樹脂基材(B−6)から熱硬化性樹脂(a−6)が垂れ落ちてしまい、作業場が汚れたことに加え、目的の積層体を作製することはできなかった。
【0295】
(比較例12)
熱硬化性樹脂基材(B−7)の表と裏に、強化繊維基材(A−1)を2層ずつ、つまり強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)/熱硬化性樹脂基材(B−7)/強化繊維基材(A−1)/強化繊維基材(A−1)となるように積層して積層体とした。該積層体を、プレス機に取り付けた両面型内に配置し、両面型を昇降して面圧1MPaの圧力を加えた。プレス機に具備されている熱盤を温調し、両面型を1.5℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温させ、150℃に到達後から10分間ホールドして繊維強化複合材料を製造した。10分間のホールド後に両面型の加圧を開放して、繊維強化複合材料(23)を脱型した。このとき、繊維強化複合材料(23)中の熱硬化性樹脂の硬化は十分になされており、脱型可能であった。
【0296】
繊維強化複合材料(23)の表面は未含浸領域を多く含んでおり、ドライの強化繊維基材(A−1)が露出している領域も確認された。