特許第6984415号(P6984415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984415
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20211213BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20211213BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20211213BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K31/7088ZNA
   A61K48/00
   A61P35/00
   A61K45/00
   A61K35/76
   A61K35/761
   A61K9/127
   A61K9/14
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-548231(P2017-548231)
(86)(22)【出願日】2017年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2017028866
(87)【国際公開番号】WO2018030450
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2020年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-156375(P2016-156375)
(32)【優先日】2016年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 敦子
(72)【発明者】
【氏名】高山 愛子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大河
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/203189(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/071205(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/109604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7088
A61K 48/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
hsa−miR−4454で表されるマイクロRNAのアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分として含む、癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項2】
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、RNA又はDNAである、請求項1に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項3】
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列を含む、請求項1又は2に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項4】
前記アンチセンスポリヌクレオチドの塩基配列長が、8から60塩基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項5】
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、配列番号2又は3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項6】
前記癌が、hsa−miR−4454を発現していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項7】
前記癌が、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌、膵臓癌、血液癌、腎癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、線維肉腫、肥満細胞腫、又はメラノーマである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項8】
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、RNA又はDNAの形態でベクターに発現可能に挿入されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項9】
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、非カチオン性ポリマー担体、リポソーム担体、樹枝状担体、ナノ材料担体、ミクロ粒子担体、生体構造担体、ミセル担体、高分子微粒子及び磁気微粒子からなる群から選択される担体中に内包されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物、並びに抗腫瘍剤を有効成分として含む、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロRNAのアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分とする、癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNA(miRNA)は16〜28塩基のタンパク質非翻訳RNAであり、miRBase release 21(http://www.mirbase.org/)によるとヒトには現在2590種類存在することが知られている。近年、miRNAは生体内でさまざまな遺伝子の発現抑制を行う分子として注目されている。ゲノム上には各miRNA遺伝子の領域が存在し、RNAポリメラーゼIIによりヘアピン構造のRNA前駆体として転写され、核内でDrosha、細胞質内でDicerと呼ばれる2種類のRNaseIII切断活性を有するdsRNA切断酵素により切断され、成熟miRNAが形成される。この成熟miRNAはRISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、相補的配列をもつ複数のターゲット遺伝子のmRNAと相互作用し、遺伝子の発現を抑制することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
ある種のmiRNAは、癌を含めたヒト疾患との関連が示唆されており、特に癌では、例えばhsa−miR−8073、hsa−miR−6893−5p、hsa−miR−4454など多くのmiRNAが血液中の膵臓癌特異的マーカーとなることが知られている(非特許文献1、特許文献1)。
【0004】
また、癌細胞の増殖に関与するmiRNAだけでなく、癌細胞を抑制する方向に働くmiRNAの存在が報告されており、miRNAの発現パターンを利用した癌の治療法が示唆されている。具体例として、hsa−Let−7aなど153個のmiRNAを含む活性化血清を投与してmiRNAを上方調節することにより癌などの疾患を治療する方法(特許文献2)、体内の循環エキソソームに含まれるmiR−1321など多くのmiRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与して血液癌を治療する方法(特許文献3)が知られている。
【0005】
また、hsa−Let−7aやhsa−miR−4454など30種のmiRNAを用いて膵癌前駆病変を診断及び治療する方法についての報告がある(特許文献4)。しかしながら特許文献4で実験的に確認できているのは血漿中の各miRNAの発現量の組み合わせによる健常と膵癌前駆病変との判別のみであり、これらmiRNAを実際に膵癌前駆病変の治療法として利用できることについては記載されていないのに等しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/182781号
【特許文献2】国際公開第2011/029903号
【特許文献3】国際公開第2014/071205号
【特許文献4】国際公開第2015/153679号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kojima M PLoS One.10(2)(2015)“MicroRNA markers for the diagnosis of pancreatic and biliary−tract cancers.”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、癌と関連する様々なmiRNAから様々な癌種に共通して治療及び/又は予防に関与するmiRNAを特定し、当該miRNAを標的とした新たな癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、癌患者の体液もしくは組織中で発現が上昇又は減少しているmiRNAより癌細胞の増殖に関与するmiRNAとしてhsa−miR−4454を特定するとともに、当該miRNAのアンチセンスポリヌクレオチドが癌の治療/予防に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(11)を含む。
(1)hsa−miR−4454で表されるマイクロRNAのアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分として含む、癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物
(2)前記アンチセンスポリヌクレオチドが、RNA又はDNAである(1)に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(3)前記アンチセンスポリヌクレオチドが、配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列を含む、(1)又は(2)に記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(4)前記アンチセンスポリヌクレオチドの塩基配列長が、8から60塩基である、(1)〜(3)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(5)前記アンチセンスポリヌクレオチドが、配列番号2又は3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである、(1)〜(4)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(6)前記癌が、hsa−miR−4454を発現していることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(7)前記癌が、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌、膵臓癌、血液癌、腎癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、線維肉腫、肥満細胞腫、又はメラノーマである、(1)〜(6)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(8)前記アンチセンスポリヌクレオチドが、RNA又はDNAの形態でベクターに発現可能に挿入されている、(1)〜(7)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(9)前記アンチセンスポリヌクレオチドが、非カチオン性ポリマー担体、リポソーム担体、樹枝状担体、ナノ材料担体、ミクロ粒子担体、生体構造担体、ミセル担体、高分子微粒子及び磁気微粒子からなる群から選択される担体中に内包されている、あるいは、該担体に結合されている、(1)〜(8)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物、並びに抗腫瘍剤を有効成分として含む、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品。
(11)(1)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物、又は(10)に記載の組み合わせ医薬品を、癌に罹患した、又は癌に罹患したことのある被験体に投与することを含む、前記被験体において癌を治療及び/又は予防する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物は、癌細胞の増殖を効果的に抑制することから、癌の治療や予防に有用である。
【0012】
本願は、2016年8月9日に出願された日本国特許出願2016−156375号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した膵癌細胞株Panc−1の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した膵癌細胞株Panc−1の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図2図2は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した膵癌細胞株Panc10.05の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した膵癌細胞株Panc10.05の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図3図3は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した乳癌細胞株MCF−7の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した乳癌細胞株MCF−7の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図4図4は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した肺癌細胞株A549の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した肺癌細胞株A549の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図5図5は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した肝癌細胞株HEPG2の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した肝癌細胞株HEPG2の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図6図6は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した血液癌細胞株JURKATの生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した血液癌細胞株JURKATの生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図7図7は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)を遺伝子導入した大腸癌細胞株HCT116の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した大腸癌細胞株HCT116の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図8図8は、配列番号1で表されるhsa−miR−4454のアンチセンスRNA(配列番号2)、配列番号1で表されるhsa−miR−4454と同じ塩基配列を有する合成RNAを遺伝子導入した大腸癌細胞株HCT116の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した大腸癌細胞株HCT116の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図9図9は、配列番号4で表されるhsa−miR−4294、配列番号5で表されるhsa−miR−6799−5p、又は配列番号6で表されるhsa−miR−125a−3pのアンチセンスRNAを遺伝子導入した膵癌細胞株Panc−1の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した膵癌細胞株Panc−1の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図10図10は、配列番号4で表されるhsa−miR−4294、配列番号5で表されるhsa−miR−6799−5p、又は配列番号6で表されるhsa−miR−125a−3pのアンチセンスRNAを遺伝子導入した乳癌細胞株MCF−7の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した乳癌細胞株MCF−7の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図11図11は、配列番号4で表されるhsa−miR−4294、配列番号5で表されるhsa−miR−6799−5p、又は配列番号6で表されるhsa−miR−125a−3pのアンチセンスRNAを遺伝子導入した大腸癌細胞株HCT116の生存細胞数の、ネガティブコントロールオリゴの合成RNAを遺伝子導入した大腸癌細胞株HCT116の生存細胞数(100%)に対する割合(細胞生存比率)を示す。
図12A図12Aは、配列番号1で表されるhsa−miR−4454の大腸癌組織、大腸正常組織、乳正常組織、肝臓正常組織、肺正常組織、及び膵正常組織のDNAチップにおけるシグナル発現量を示す。
図12B図12Bは、配列番号1で表されるhsa−miR−4454の大腸癌細胞、乳癌細胞、肝癌細胞、肺癌細胞、及び膵癌細胞のDNAチップにおけるシグナル発現量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<有効成分となるアンチセンスポリヌクレオチド>
本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物は、hsa−miR−4454(配列番号1)で表されるマイクロRNA(以下、「miRNA」という。)のアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分とすることを特徴とする。以下、本発明において有効成分となるアンチセンスポリヌクレオチドについて説明する。
【0015】
hsa−miR−4454で表されるmiRNA(miRBase Accession No.MIMAT0018976)は、ヒトのmiRNAとして同定された塩基配列であり、膵臓癌の特異的マーカーとなるmiRNAの一部であることが知られている(Kojima M PLoS One.10(2)(2015)“MicroRNA markers for the diagnosis of pancreatic and biliary−tract cancers.”)が、該アンチセンスポリヌクレオチドが膵臓癌やそれ以外の癌細胞の増殖を抑制することは本発明者らが新規に見出した知見である。
【0016】
従って、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、配列番号1で表されるhsa−miR−4454に相補的な塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上又は99.5%以上の配列同一性を有する塩基配列を含んでいれば特に制限はない。すなわち、hsa−miR−4454に特異的に結合するポリヌクレオチドであっても、あるいは、hsa−miR−4454が結合する塩基配列に特異的に結合するポリヌクレオチドであってもよいが、好ましくは、hsa−miR−4454に特異的に結合するポリヌクレオチドである。
【0017】
配列番号1で表されるhsa−miR−4454に特異的に結合するポリヌクレオチドとしては、好ましくは配列番号2又は配列番号3で表される塩基配列と少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上又は99.5%以上同一である塩基配列を含むポリヌクレオチドであり、さらに好ましくは、配列番号2又は配列番号3で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
【0018】
配列番号1、2又は3の塩基配列は表1に記載の通りである。
【0019】
【表1】
【0020】
配列番号2で表される塩基配列を有するアンチセンスポリヌクレオチド、あるいは配列番号3で表される塩基配列を有するアンチセンスポリヌクレオチドは、これまでに遺伝子又はその転写産物の配列を用いた化合物が腫瘍細胞を抑制しうるという報告はない。
【0021】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、癌の治療及び/又は予防の効果を発揮しうる限りにおいてはいかなる構造をとってもよく、例えば、一本鎖、二本鎖、又は三本以上の多重構造をとってもよいが、好ましくは一本鎖又は二本鎖構造であり、より好ましくは一本鎖構造である。
【0022】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、癌の治療及び/又は予防の効果を発揮しうる限りにおいては、RNA、DNA、又はRNA/DNA(キメラ)であってもよい。なお、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドについて、配列表に記載の配列番号に該当する塩基配列の全部又は一部がDNAに相当する場合、配列表に記載のその塩基配列中のDNAに相当する領域のU(ウラシル)はT(チミン)に読み替えるものとする。
【0023】
DNAの形態としては、cDNA等の形態が挙げられる。また、RNAの形態としては、天然由来のRNAや合成RNA等の形態が挙げられる。
【0024】
本発明で使用可能なアンチセンスポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド類似体を含むことができる。修飾ヌクレオチド類似体は、例えば、RNA分子の5’末端、3’末端及び/又は分子内部に配置することができる。特に、修飾ヌクレオチド類似体を組み込むことにより、アンチセンスポリヌクレオチドをより安定化させることができる。
【0025】
好ましい修飾ヌクレオチド類似体の例は、糖又は骨格鎖修飾リボヌクレオチドであり、さらに好ましくは核酸塩基が修飾されたリボヌクレオチド、すなわち、天然に存在しない核酸塩基を含むリボヌクレオチドである。天然に存在しない核酸塩基としては、例えば、5位で修飾されたウリジン、又はシチジン、例えば、5−メチルウリジン、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−メチル−2−チオウリジン、あるいは5−ブロモウリジン、6−アゾウリジン、8位で修飾されたアデノシン及びグアノシン、例えば、8−ブロモグアノシン、デアザヌクレオチド、7−デアザーアデノシン;O−及びN−アルキル化ヌクレオチド、N6−メチルアデノシン、ユニバーサル塩基などが挙げられる。
【0026】
好ましい糖修飾リボヌクレオチドとしては、例えば、H、OR、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、CNからなる群より選択される基で糖部分の2’−OH基が置換されたリボヌクレオチドであってもよいし、あるいは2’−O、4’−Cメチレン架橋やエチレン架橋を含有(例えば、LNAやENAなど)するリボヌクレオチドであってもよい。ここで、Rは、C1〜C6アルキル、アルケニル又はアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br又はIである。また糖修飾リボヌクレオチドにおける修飾された糖部分は、マンノース、アラビノース、グルコピラノース、ガラクトピラノース、4’−チオリボース及び他の糖、ヘテロ環又は炭素環であってもよい。
【0027】
好ましい骨格鎖修飾リボヌクレオチドとしては、例えば、隣接するリボヌクレオチドと結合するホスホエステル基を、例えば、ホスホチオエート基の修飾基やボラノホスフェート、3’−(又は5’)デオキシ−3’−(又は5’)アミノホスホルアミデート、水素ホスホネート、ボラノリン酸エステル、ホルホルアミデート、アルキル又はアリールホスホネート及びホスホトリエステルで置換したものであってよい。また、上記の修飾の2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
<有効成分であるアンチセンスポリヌクレオチドに付加する担体>
本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに加えて薬学的に許容しうる担体を含んでいてもよい。薬学的に許容しうる担体は、標的細胞又は組織への本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの輸送を容易にする物質であって、生物体を刺激せず、また、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの活性及び特性を阻害しないものが好ましく、また、それ自体が組成物を投与された個体に有害な抗体の生産を誘導することがないことが好ましい。担体のサイズについて、正常な血管壁を透過しないが、癌組織内の新生血管壁を透過することができるサイズが好ましい。担体が略球状体であるとした場合、好ましくは、担体の直径は例えば約1nm以上100nm未満のナノサイズであってよい。
【0029】
担体は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを内包していてもよく、本発明のアンチポリヌクレオチドと可動的に結合していてもよい。「可動的に結合している」とは、担体と1又は2以上の剤との間の電子的相互作用を指す。かかる相互作用は、限定されずに、共有結合、極性共有結合、イオン結合、静電結合、配位共有結合、芳香族結合、水素結合、双極子又はファンデルワールス相互作用を含む任意の化学結合の形をとってもよい。
【0030】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドと担体の結合部分としては、好ましくは5’末端側又は3’末端側であり、より好ましくは5’末端側である。
【0031】
本発明の担体の具体例としては、非カチオン性ポリマー担体、リポソーム担体、樹枝状(デンドリマー)担体、ナノ材料(ナノマテリアル)担体、ミクロ粒子担体、生体構造(バイオストラクチュアル)担体、ミセル担体、高分子微粒子及び磁気微粒子が挙げられる。
【0032】
非カチオン性ポリマー担体は、1又は2以上の剤を内包し得る、及び/又はその剤と可動的に結合し得る、例えば、アニオン性(すなわち、負に荷電した)ポリマー又は電子的に中性の綿状あるいは分枝したポリマーをさす。形態はミクロ粒子であってもナノ粒子であってもよく、水溶性あるいは水不溶性であってもよく、生分解性あるいは非生分解性であってもよい。好適な非カチオン性ポリマー担体は当業者に知られている。非カチオン性ポリマー担体は、例えば、ポリ−L−グルタミン酸(PGA)、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)(PGGA)、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)(PGAA)、ポリ−(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含んでもよく、少なくとも2種のポリマーの混合物を含んでもよい。
【0033】
リポソーム担体は、水性媒体中で、1又は2以上の剤を内包し得る、及び/又はその剤と可動的に結合し得る実質的に閉鎖された構造を形成する、極性の親水性基に付着した脂質を含む、脂質二重層構造を表し、単一の脂質二重層(すなわちユニラメラ)を含んでもよく、あるいは、2層又は3層以上の同心の脂質二重層(すなわちマルチラメラ)を含んでもよい。リポソーム担体は、略球状又は略楕円状の形状であってもよい。好適なリポソーム担体は当業者に知られており、種々の特性、例えば脂質二重層の剛性、脂質二重層の電子電荷及び/又は剤の一方もしくは両方とリポソーム担体との適合性などに基づいて選択することができる。リポソーム担体は、例えば、天然リン脂質、例えば卵ホスファチジルコリン、卵ホスファチジルエタノールアミン、大豆ホスファチジルコリン、レシチン及びスフィンゴミエリン、合成ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、N−1−2、3−ジオレイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、2,3−ジオレキシオロキシ−N−2スペルミンカルボキシアミドエチルN,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセトアミド、ホスファチジルセリン及びこれらの誘導体、PEG化リン脂質などである。
【0034】
樹枝状担体は、1種又は2種以上の剤を内包し得る、及び/又は可動的に結合し得る、デンドリマー、デンドロン又はこれらの誘導体を指す。デンドリマーは、コアを有し、かつ、コアから広がる分枝構造の複数のシェルを有する巨大分子を指す。デンドロンは、焦点から広がる分枝を有するタイプのデンドリマーである。樹枝状担体は商業的に入手可能であるか、又は当業者に既知の方法によって合成することができる。樹枝状担体の少なくとも一部分は疎水性であってもよく、親水性であってもよい。樹枝状担体はカチオン性であってもよく、電子的に中性であってもアニオン性であってもよい。樹枝状担体は、コア分子を含んでもよく、例えば、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン及び1,12−ジアミノデカンなどアルキルジアミン、アンモニアなどアミン、シスタミン、ポリエチレンイミン(PEI)などのアルキルイミン、又はシクロトリホスファゼン及びチオホスホリルなどの塩素化リン分子を含んでもよい。また、樹枝状担体は、ポリプロピレンイミン(PPI)などのアルキルイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)などの第三級アミン、ポリリジンなどのポリアミノ酸、及び/又はフェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)(PMMH)を含んでもよい。
【0035】
ナノ材料担体は、約1nm〜約100nmの範囲の最長寸法を有し、1又は2以上の剤を内包し得る、及び/又はその剤と可動的に結合し得る材料を指す。好適なナノ材料担体は、当業者に知られており、例えば、ナノ粒子、ナノパウダー、ナノクラスター、ナノ結晶、ナノスフェア、ナノファイバー、ナノチューブ、ナノクラスター、ナノ結晶、ナノスフェア、ナノファイバー、ナノチューブ、ナノゲル及び/又はナノロッドを含んでもよい。また、ナノ材料担体を構成する物質としては、ポリ−(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)、ポリイプシロン−カプロラクトン(PCL)及びポリ乳酸(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ−N−ビニルカプロラクタムアクリル酸ナトリウム、ポリ−N−イロプロピルアクリルアミド及びポリ酢酸ビニルなどが例示される。また、一部の態様においてナノ材料担体はフラーレンであってもよく、フラーレンは球状フラーレン(例えばC60)、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体を含んでもよい。
【0036】
ミクロ粒子担体は、約100nm〜約1000μmの範囲の最長寸法を有する粒子を指す。ミクロ粒子は、あらゆる形状及びあらゆる形態を有してもよい。ミクロ粒子担体を構成する物質としては、ポリ−(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)、ポリイプシロン−カプロラクトン(PCL)及びポリ乳酸(PLA)、PLGA及びポリエチレングリコール(PEG)などが例示される
【0037】
生体構造担体は、生体構造担体の多数の単位がアミノ酸及び/又はサッカリドであり、かつ、1又は2以上の剤を内包し得る、及び/又はその剤に可動的に結合しているポリマー又は化合物を指す。好適な生体構造担体は当業者に知られており、糖、単糖、オリゴ糖、多糖、環状多糖、非環状多糖、線状多糖、分枝多糖、アミノ酸、タンパク質及びペプチド、並びにこれらの半合成誘導体の任意のものを含んでもよく、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキストリン、メチルβ−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、トリ−O−メチル−β−シクロデキストリン、及びグルコシル−β−シクロデキストリン、β1、3Dグルカン、β1、6グルカン、C反応性タンパク質、コンアルブミン、ラクトアルブミン、オボアルブミン、パルブアルブミン、血清アルブミン及びテクネチウムTC99m凝集アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)及びウシ血清アルブミン(BSA)組換えヒト血清アルブミン(rHSA)、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトース、キシロース、リボース、スクロース、セルロース、シクロデキストリン及びデンプンなどの任意のものを含んでいてもよい。
【0038】
ミセル担体は、脂質、任意の脂溶性(すなわち、親油性)分子、油、ワックス、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質等がミセル構造をとったものである。ポリエチレングリコール(PEG)などポリアルキレングリコール、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸(PGA)などポリアミノ酸、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)(PGGA)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)及びジブロックコポリマーなどの任意のものを含んでもよい。
【0039】
また、担体は、コンジュゲートであってもよく、核酸のセンス領域とアンチセンス領域とを連結する、ヌクレオチドリンカー、非ヌクレオチドリンカー、又はヌクレオチド/非ヌクレオチド複合リンカー、ポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミン又は細胞取り込みを誘導することができる細胞レセプターに対するリガンドなどを含んでもよい。また、ヌクレオチドリンカーは、長さが2ヌクレオチド以上のリンカーであってもよく、核酸アプタマーであってもよい。
【0040】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含む癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤、医薬担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤及び/又はそれらの混合物を付加的に添加して、注射用剤形などの非経口用剤型に、又は、直腸内投与、鼻腔内投与、局所投与、皮下投与、経膣投与又は他の非経口投与に適した形態、又は、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤などの経口用剤型に、又は吸入若しくは注入による投与に適した形態を含む任意の剤形で製剤化することができる。
【0041】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを液状製剤として使用する場合、担体は滅菌及び生体に適したものが好ましく、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加してもよい。添加剤は、以下に限定されないが、好ましくは、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳糖、ポリグリコール酸、ポリマー状アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体、ハイドロジェル及び不活性ウイルス粒子、コラーゲン類である。また、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含む液状製剤は、水、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール及びエタノールのような液体を含んでいてもよく、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝化物質等の補助物質も含んでいてもよい。
【0042】
本発明において、投与とは、いずれの適切な方法で被験体に本発明のアンチセンスポリヌクレオチド又はそれを有効成分として含む癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物を導入することを意味し、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドのウイルス性又は非ウイルス性技術による運搬、あるいは本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを発現する細胞の移植を含む。
【0043】
投与経路は、目的組織に到達することができる限り、経口又は非経口の多様な経路を介して投与できる。例えば、口腔内、直腸内、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻腔内、吸入、眼球内又は皮内経路によって投与できる。
【0044】
投与量は、投与の目的、投与方法、腫瘍の種類、大きさ、投与対象者(被験体)の状況(性別、年齢、体重など)によって異なる。典型的には、投薬量はより低いレベルで投与され、所望の効果が達成されるまで増量する。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの好適な投与量は、例えば、体重1キログラムにつき1pmolから100nmolの範囲にあってもよく、体重1キログラムにつき0.001から0.25mgの範囲、体重1kgにつき0.01から20μgの範囲、体重1kgにつき0.10から5μgの範囲にあってもよいが、これらに限定されない。かかる投与量は1〜10回、より好ましくは5〜10回投与することが望ましい。
【0045】
<アンチセンスポリヌクレオチドによる癌の抑制>
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは細胞に導入された形態で提供してもよい。「細胞に導入させる」とは、形質感染(transfection)又は形質導入(transduction)によって外来のアンチセンスポリヌクレオチドを細胞に流入させることを意味する。形質感染は、例えば、リン酸カルシウム−DNA共沈法、DEAE−デキストラン−媒介形質感染法、ポリブレン媒介形質感染法、エレクトロポレーション法、微細注射法、リポソーム融合法、リポフェクタミントランスフェクション、及び原形質体融合法などを意味し、また、形質導入は、感染(infection)を手段としてウイルス又はウイルスベクター粒子(例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、センダイウイルス、レトロウイルス(レンチウイルスなど)などのベクター)を用いて、あるいはプラスミドベクターを用いて、他の細胞内に遺伝子を伝達させることを意味する。ベクターは、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを発現可能とするために必要な要素(例えばプロモーターなど)を含むことができるし、公知の手法で作製可能である(例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning A Laboratory Manual (4th Ed., 2001), Cold Spring Harbor Laboratory Press、特開2016−153403号公報、特開2016−025853号公報など)。このような方法によって本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを導入された細胞は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを高い水準で発現することができるため、このような細胞を癌組織に移植することにより癌の増殖を抑制させる細胞治療剤として利用することができる。
【0046】
<癌の種類>
本発明において用語「腫瘍」及び「癌」は、悪性新生物を意味し、互換的に使用される。対象となる癌としては特に制限はないが、具体例として膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、消化管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頚部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、血液、又は子宮の又はそれに由来する癌及び癌細胞を含む。好ましくは、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌、膵臓癌、血液癌、腎癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、線維肉腫、肥満細胞腫、及びメラノーマが挙げられる。なお、これらの特定の癌には、例えば、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、肺腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、神経上皮組織性腫瘍である神経膠腫、脳質上衣腫、神経細胞性腫瘍、胎児型神経外胚葉性腫瘍、神経鞘腫、神経線維腫、髄膜腫、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、盲腸癌、上行結腸癌、下行結腸癌、横行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌、卵巣上皮癌、胚細胞腫瘍、間質細胞腫瘍、膵管癌、浸潤性膵管癌、膵臓癌の腺癌、腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、巨細胞腫、膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、膵芽腫、漿液性嚢胞腺癌、固体乳頭状癌、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、インスリノーマ、多発性内分泌腺腫症、非機能性島細胞腫、ソマトスタチノーマ、VIP産生腫瘍が包含されるが、これらに限定されない。
【0047】
また、本発明において対象となる好ましい被験体は、哺乳動物であり、例えばヒトなどの霊長類、牛、豚、羊、馬などの家畜類、犬猫などのペット動物、動物園で飼育される哺乳動物を含み、好ましくはヒトである。本発明では、癌の治療及び/又は予防のために、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、又は本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物を被験体に投与することができる。
【0048】
<抗腫瘍剤の種類>
本発明において、前記アンチセンスポリヌクレオチドを有効成分とする癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物と、(典型的には公知の)他の抗腫瘍剤又は他の抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを組み合わせた医薬品(「組み合わせ医薬品」という)被験体に併用投与することができ、それにより好ましくは抗腫瘍効果を増大させることができる。本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物と他の抗腫瘍剤(又は他の抗腫瘍剤を含む医薬組成物)は、同時に、又は、別々に被験体に投与されうる。別々に投与する場合には、いずれの投与が先であっても又は後であってもよく、それらの投与間隔、投与量、投与経路及び投与回数は専門医によって適宜選択されうる。同時に投与するための別の医薬剤型には、例えば、本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物と抗腫瘍剤を、薬学的に許容される担体(又は媒体)中で混合し製剤化して得られる医薬組成物(「混合医薬品」ともいう)も包含されるものとする。
【0049】
抗腫瘍剤の例としては、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤が挙げられる。
【0050】
チオテパやシクロスファミドのようなアルキル化剤として、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのような(すなわち、「などの」)アルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパのようなアジリジン;アルトレタアミン、トリエチレンアミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロールアミン等のエチレンイミン;ブラタシン及びブラタシノンのようなアセトゲニン;カンプトテシン;ブリオスタチン;カリスタチン;クリプトフィシン1、クリプトフィシン8;ドラスタチン;ドゥオカルマイシン;エロイスロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチンのようなナイトロジェンマスタード;イホスファミド、メクロルエタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、テモゾロミド、ノベンビシン;フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ベンダムスチン、カルムスチン、クロロゾトシン、ストレプトゾシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニンヌスチンのようなニトロスウレア類が挙げられる。
【0051】
抗癌性抗生物質として、例えば、カリケアマイシン、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ブレオマイシン、アクラルビシン、アムルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン、マイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンが挙げられる。
【0052】
代謝拮抗物質として、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、メソトレキサート、トリメトレキセート、ペメトレキセドのような葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、クラドリビン、クロファラビンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、トリフルリジン、カペシタビン、5−FU、ゲムシタビン、S−1、テガフールのようなピリミジン類似体;ヒドロキシカルバミド、ネララビンが挙げられる。
【0053】
ホルモン製剤として、例えば、アナストロゾール、ビカルタミド、デガレリクス、エストラムスチン、エキセメスタン、フルタミド、フルベストラント、ゴセレリン、レトロゾール、リュープリン、メドロキシプロゲステロン、メピチオスタン、オクトレオチド、タモキシフェン、トレミフェンがあり、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン、エンザルタミドのようなアンドロゲン製剤;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎性製剤;フロリン酸、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキセート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジクオン、エルフォルミチン 、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、レンチナン、ロニダミン、メイタンシン、アンサミトシン、アビラテロン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テニュアゾン酸、トリアジコン、ロリジンA、アングイジン、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド、BCG、クレスチン、ピシバニールなどが挙げられる。
【0054】
植物由来などその他の抗癌剤として、例えば、ドセタキセル、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ノギテカン、パクリタキセル、カバジタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、カルボプラチン、シスプラチン、ダカルバジン、エリブリン、L−アスパラキナーゼ、ミリプラチン、ミトキサントロン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ペントスタチン、プロカルバジン、三酸化ヒ素、ソブゾキサン、タミバロテン、マイトキサントロン、ノバントロン、エダトレキセート、イバンドロナート、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸などが挙げられる。
【0055】
分子標的薬として、例えば、アファチニブ、アキシチニブ、アレクチニブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ラムシルマブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、レゴラフェニブ、レンバチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テミシロリムス、トラスツズマブ並びにそれらの薬学的に許容可能な塩又は誘導体が挙げられる。
【0056】
さらには、抗腫瘍剤は、文献等で公知の、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153SM、212Bi、32P、175Lu、176Luなどの放射性同位体であってもよい。なお、放射性同位体は、腫瘍の治療や診断のために有効なものが望ましく、このような放射性同位体も、本発明における癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物に含まれてもよい。
【0057】
<治療及び予防法>
さらにまた本発明は、本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物、あるいは本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物と前記の他の抗腫瘍剤(又はその抗腫瘍剤を含む医薬組成物)とを含む組み合わせ医薬品を、癌に罹患した(又は癌に罹患したことのある)被験体に投与することを含む、被験体において癌を治療及び/又は予防する方法も提供する。
【0058】
本明細書における「癌の治療」及び「抗腫瘍効果」なる用語は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド又は本発明の癌の治療用及び/若しくは予防用医薬組成物で処置しない陰性対照と比較した癌細胞及び腫瘍に対する効果を指し、癌細胞の増殖の完全な阻止や、腫瘍の退縮又は消失だけでなく、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド又は本発明の癌の治療用及び/又は予防用医薬組成物で処置しない陰性対照と比較して癌細胞の増加を遅らせる(癌細胞の増加量をより少なくする)こと及び腫瘍成長を遅らせることも含む。
【0059】
本明細書における「予防」なる用語は、外科手術、化学療法、放射線療法、免疫療法などの癌療法における癌処置後の再発のリスクを低減するための癌再発の予防を含む。
【0060】
上記の医薬組成物、組み合わせ医薬品、有効成分であるアンチセンスポリヌクレオチド、用量、用法、製剤形態、対象となる癌の種類などについては、上で説明した内容をこの節でも同様に適用する。
【実施例】
【0061】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、この実施例によって制限されないものとする。
【0062】
[実施例1]hsa−miR−4454のアンチセンスRNAの膵癌細胞への有効性
hsa−miR−4454のアンチセンスRNAである配列番号2で表される塩基配列を有する合成RNA(以下、「アンチセンスRNA」という。)の膵癌細胞への有効性を評価した。膵癌細胞としてPanc−1細胞株(ATCC(R)CRL−1469TM)を10%FBSを含んだDMEM培地(ナカライテスク社)に、また、Panc10.05細胞株(ATCC(R)CRL−2547TM)を10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に播いて、それぞれ37℃、5%CO条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり各6×10個の細胞を播いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitor,Negative Control)を、リポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて膵癌細胞に遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、ネガティブコントロールオリゴを導入した膵癌細胞(ネガティブコントロール細胞)とアンチセンスRNAを導入した膵癌細胞(アンチセンスRNA導入細胞)のそれぞれについて細胞数を5日間測定した。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定することにより行い、得られた測定値を生存細胞数の指標とした。測定はn=3で行い、ネガティブコントロール細胞の生存細胞数(100%)に対するアンチセンスRNA導入細胞の生存細胞数の割合を膵癌細胞の生存比率(%)とし、結果を平均±標準偏差で示した。図1及び図2に評価結果を示す。図1に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入したPanc−1細胞株では、ネガティブコントロールオリゴを導入したPanc−1細胞株に比べて細胞生存比率は68%であった。また、図2に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入したPanc10.05細胞株では、ネガティブコントロールオリゴを導入したPanc10.05細胞株に比べて細胞生存比率は11%であった。
【0063】
[実施例2]hsa−miR−4454のアンチセンスRNAの乳癌細胞への有効性
実施例1のアンチセンスRNAの乳癌細胞への有効性を評価した。乳癌細胞としてMCF−7細胞株(ATCC(R)HTB−22TM)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に播いて37℃、5%CO条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10個の細胞を播いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitor,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて乳癌細胞に遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、ネガティブコントロールオリゴを導入した乳癌細胞(ネガティブコントロール細胞)とアンチセンスRNAを導入した乳癌細胞(アンチセンスRNA導入細胞)のそれぞれについて細胞数を5日間測定した。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定することにより行い、得られた測定値を生存細胞数の指標とした。測定はn=3で行い、ネガティブコントロール細胞の生存細胞数(100%)に対するアンチセンスRNA導入細胞の生存細胞数の割合を乳癌細胞の生存比率(%)とし、結果を平均±標準偏差で示した。図3に評価結果を示す。図3に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入した乳癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した乳癌細胞に比べて細胞生存比率は61%であった。
【0064】
[実施例3]hsa−miR−4454のアンチセンスRNAの肺癌細胞への有効性
実施例1のアンチセンスRNAの肺癌細胞への有効性を評価した。肺癌細胞としてA549細胞株(ATCC(R)CCL−185TM)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に播いて37℃、5%CO条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり2×10個の細胞を播いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitor,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて肺癌細胞に遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、ネガティブコントロールオリゴを導入した肺癌細胞(ネガティブコントロール細胞)とアンチセンスRNAを導入した肺癌細胞(アンチセンスRNA導入細胞)のそれぞれについて細胞数を5日間測定した。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定することにより行い、得られた測定値を生存細胞数の指標とした。測定はn=3で行い、ネガティブコントロール細胞の生存細胞数(100%)に対するアンチセンスRNA導入細胞の生存細胞数の割合を肺癌細胞の生存比率(%)とし、結果を平均±標準偏差で示した。図4に評価結果を示す。図4に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入した肺癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した肺癌細胞に比べて細胞生存比率は17%であった。
【0065】
[実施例4]hsa−miR−4454のアンチセンスRNAの肝癌細胞への有効性
実施例1のアンチセンスRNAの肝癌細胞への有効性を評価した。肝癌細胞としてHEPG2細胞株(ATCC(R)HB−8065TM)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に播いて37℃、5%CO条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10個の細胞を播いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitor,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて肝癌細胞に遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、ネガティブコントロールオリゴを導入した肝癌細胞(ネガティブコントロール細胞)とアンチセンスRNAを導入した肝癌細胞(アンチセンスRNA導入細胞)のそれぞれについて細胞数を5日間測定した。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定することにより行い、得られた測定値を生存細胞数の指標とした。測定はn=3で行い、ネガティブコントロール細胞の生存細胞数(100%)に対するアンチセンスRNA導入細胞の生存細胞数の割合を肝癌細胞の生存比率(%)とし、結果を平均±標準偏差で示した。図5に評価結果を示す。図5に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入した肝癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した肝癌細胞に比べて細胞生存比率は1%であった。
【0066】
[実施例5]hsa−miR−4454のアンチセンスRNAの血液癌細胞への有効性
実施例1のアンチセンスRNAの血液癌細胞への有効性を評価した。血液癌細胞としてJURKAT細胞株(ATCC(R)TIB−152TM)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に播いて37℃、5%CO条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり4×10個の細胞を播いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitor,Negative Control)をヴァイロマー(Lipocalyx社)を用いて血液癌細胞に遺伝子導入し、ネガティブコントロールオリゴを導入した血液癌細胞(ネガティブコントロール細胞)とアンチセンスRNAを導入した血液癌細胞(アンチセンスRNA導入細胞)のそれぞれについて細胞数を5日間測定した。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定することにより行い、得られた測定値を生存細胞数の指標とした。測定はn=3で行い、ネガティブコントロール細胞の生存細胞数(100%)に対するアンチセンスRNA導入細胞の生存細胞数の割合を血液癌細胞の生存比率(%)とし、結果を平均±標準偏差で示した。図6に評価結果を示す。図6に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入した血液癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した血液癌細胞に比べて細胞生存比率は30%であった。
【0067】
[実施例6]hsa−miR−4454のアンチセンスRNAの大腸癌細胞への有効性
実施例1のアンチセンスRNAの大腸癌細胞への有効性を評価した。大腸癌細胞としてHCT116細胞株(ATCC(R)CCL−247TM)を、10%FBSを含んだMcCoy’s培地(ナカライテスク社)に播いて37℃、5%CO条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10個の細胞を播いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて大腸癌細胞に遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、ネガティブコントロールオリゴを導入した大腸癌細胞(ネガティブコントロール細胞)とアンチセンスRNAを導入した大腸癌細胞(アンチセンスRNA導入細胞)のそれぞれについて細胞数を5日間測定した。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定することにより行い、得られた測定値を生存細胞数の指標とした。測定はn=3で行い、ネガティブコントロール細胞の生存細胞数(100%)に対するアンチセンスRNA導入細胞の生存細胞数の割合を大腸癌細胞の生存比率(%)とし、結果を平均±標準偏差で示した。図7に評価結果を示す。図7に示されるように、アンチセンスRNAを遺伝子導入した大腸癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した大腸癌細胞に比べて細胞生存比率は0.4%であった。
【0068】
[比較例1]hsa−miR−4454の合成RNAの大腸癌細胞への有効性
配列番号1で表されるhsa−miR−4454と同じ塩基配列を有する合成RNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Mimics)の大腸癌への有効性を実施例6に記載の方法に準じて評価した。図8に評価結果を示す。図8に示すように、hsa−miR−4454のアンチセンスRNAを遺伝子導入した大腸癌細胞の細胞生存比率は0.4%であったのに対して、配列番号1で表される塩基配列を有する合成RNAを遺伝子導入した大腸癌細胞の生存比率は103%であった。
【0069】
[比較例2]癌マーカーとして公知のmiRNAのアンチセンスRNAの有効性
hsa−miR−4454と同様に膵臓癌マーカーとして公知である、配列番号4で表されるhsa−miR−4294(miRBase Accession No.MIMAT0016849)、配列番号5で表されるhsa−miR−6799−5p(miRBase Accession No.MIMAT0027498)、又は配列番号6で表されるhsa−miR−125a−3p(miRBase Accession No.MIMAT0004602)(Kojima M PLoS One.10(2)(2015)“MicroRNA markers for the diagnosis of pancreatic and biliary−tract cancers.”)(配列番号4、5及び6の塩基配列は表2を参照のこと。)のアンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVanaTM miRNA Inhibitors)の、膵臓癌細胞、乳癌細胞及び大腸癌細胞への有効性についてそれぞれ実施例1、2、6に記載の方法に準じて評価した。評価結果をそれぞれ図9、10及び11に示す。hsa−miR−4294、hsa−miR−6799−5p及びhsa−miR−125a−3pのアンチセンスRNAを遺伝子導入した膵臓癌細胞の細胞生存比率はそれぞれ100%、98%及び110%(図9)、乳癌細胞の細胞生存比率はそれぞれ101%、109%及び95%(図10)、大腸癌細胞の細胞生存比率はそれぞれ109%、93%及び117%(図11)であり、いずれのアンチセンスRNAも抗腫瘍効果は見られなかった。
【0070】
【表2】
【0071】
[実施例7]癌組織、癌細胞、及び正常組織におけるhsa−miR−4454の発現量
<totalRNAの抽出>
組織由来のtotalRNAとして、大腸癌組織、大腸正常組織、乳正常組織、肺正常組織、肝正常組織、及び膵正常組織由来のtotalRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いた。また、細胞由来のtotalRNAとして、大腸癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、肝癌細胞、及び膵癌細胞それぞれ10個から、miRNeasyminikit(Qiagen社)を用いて同社の定めるプロトコールに従ってtotal RNAを得た。
【0072】
<遺伝子発現量の測定>
上記のtotal RNAに対して、3D−Gene(登録商標) miRNA Labeling kit(東レ株式会社)を用いて同社が定めるプロトコールに基づいてmiRNAを蛍光標識した。オリゴDNAチップとして、miRBase release 21に登録されているmiRNAの中で、2、565種のmiRNAと相補的な配列を有するプローブを搭載した3D−Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)を用い、同社が定めるプロトコールに基づいてストリンジェントな条件でハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション後の洗浄を行った。DNAチップを3D−Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)を用いてスキャンし、画像を取得して3D−Gene(登録商標)Extraction(東レ株式会社)にて蛍光強度を数値化した。数値化された蛍光強度を、底が2の対数値に変換して遺伝子発現量とし、ブランク値の減算を行い、欠損値はシグナル値0.1で置換した。その結果、上記の細胞、組織に対する、網羅的なmiRNAの遺伝子発現量を得た。組織(癌、正常)の結果を図12Aに、細胞(癌)の結果を図12Bに示す。この結果から、各種癌細胞、癌組織、正常組織において配列番号1で表されるhsa−miR−4454は発現しており、正常組織に比べて癌組織及び癌細胞では発現量が多いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の癌治療用医薬組成物は、癌の治療及び/又は予防において有用である。
【0074】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]