(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路は、前記可変出力スイッチング電源をスイッチング制御する際に、スイッチング周波数を変化させる方向を、前記アクチュエーターの動作波形の周期毎に変化させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波探触子ユニット。
前記制御回路は、前記電圧指令値の変化速度が所定のしきい値より大きい場合に、前記変化速度に基づいて決定した係数を前記デューティ比に乗算した補正デューティ比を用いて前記可変出力スイッチング電源に対するスイッチング制御を行う、
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子ユニット。
超音波探触子ユニットと、前記超音波探触子ユニットから被検体に対して超音波送信信号を送信させ、前記被検体からの反射波を受信した前記超音波探触子ユニットが生成した超音波受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置本体と、を有する超音波診断装置であって、
前記超音波探触子ユニットは、音響素子アレイと、前記音響素子アレイを走査方向に垂直に揺動させるアクチュエーターを含む揺動機構と、を有する超音波探触子と、前記超音波探触子とケーブルで接続され、前記超音波診断装置本体に接続されるコネクタハウジングと、を有し、
前記超音波診断装置本体は、前記アクチュエーターを駆動する駆動回路と、前記駆動回路を制御する制御回路と、を有し、
前記駆動回路は、可変出力スイッチング電源と、前記可変出力スイッチング電源の出力電圧が入力され、前記出力電圧に基づいて駆動電圧を前記アクチュエーターに出力するリニアアンプと、を有し、
前記制御回路は、所定の電圧指令値と、前記電圧指令値に基づいて決定したデューティ比とを用いて前記可変出力スイッチング電源に対するスイッチング制御を行う、
超音波診断装置。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を被検体内部に照射し、その反射波を受信して解析することにより被検体内部の検査を行う超音波診断装置が普及している。超音波診断装置は、被検体を非破壊、非侵襲で調べることができるので、医療目的の検査や建築構造物内部の検査、種々の用途に広く用いられている。
【0003】
超音波診断装置では、電圧信号と超音波振動との間で変換を行う音響素子(変換器)が複数個、所定の方向(走査方向)に配列されており、これらの音響素子が、駆動電圧の印加により超音波を出射する。そして、超音波診断装置は、超音波の反射波の入射による電圧変化を検出する音響素子を時間的に変化させる(走査する)ことにより、2次元的なデータをほぼリアルタイムで取得することができる。
【0004】
さらに、超音波の出入射面内で、これらの音響素子の配列を走査方向に垂直に往復移動(揺動)させることで、3次元的な画像をほぼリアルタイムで取得する技術が存在する。このような技術を用いて3次元画像を取得することで、2次元画像では分かりづらかった検査対象の立体形状や位置関係を、操作者がより容易に知得できる。
【0005】
このように音響素子の配列を走査方向に垂直に揺動させる超音波探触子(プローブ)の一例として、例えば特許文献1に記載されたものがある。
図1は、特許文献1に記載されているような、従来の超音波探触子ユニット800の構成例を示す図である。
図1に示すように、超音波探触子ユニット800は、超音波探触子810と、超音波探触子810を超音波診断装置(図示せず)に接続するコネクタであるコネクタハウジング820と、を有する。
【0006】
図1に示すように、3次元走査可能な超音波探触子810は、複数の音響素子からなる音響素子アレイ811と、音響素子アレイを機械的に揺動して走査する揺動機構812とを有する。また、
図1に示すように、コネクタハウジング820は、揺動機構812が有するステッピングモーターを駆動する駆動回路821と、駆動回路821を制御する制御回路822と、を有する。
【0007】
このような構成を有する従来の超音波探触子ユニット800では、超音波診断装置からの揺動指令信号に基づく制御回路822の制御により、コネクタハウジング820に設置された駆動回路821が超音波探触子810の揺動機構812を制御して、3次元走査を行なっていた。このような構成では、コネクタハウジング820に駆動回路821を設けているため、音響素子アレイ811の揺動制御を超音波診断装置本体側ではなく、超音波探触子ユニット800側で行うことができる。これにより、例えば超音波探触子ユニット800を種々の超音波診断装置本体に付け替えて使用する場合でも、問題なく音響素子アレイ811の揺動制御を行うことができるようになる。
【0008】
ここで、一般的には、換言すれば超音波診断装置以外では、ステッピングモーター、3相DCモーターやACモーター等、各種モーターの駆動回路において、高効率なスイッチングアンプ(D級アンプ)がよく用いられる。スイッチングアンプとは、例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式のパルス等を使用したスイッチング動作により増幅を行うデジタルアンプである。
【0009】
しかしながら、超音波診断装置のステッピングモーターの駆動回路にD級アンプを用いると、PWMパルス信号により高調波が発生することがある。上記したように、駆動回路821は超音波診断装置本体との接続部分であるコネクタハウジング820内に設けられているため、超音波探触子810が生成した超音波受信信号にD級アンプが発した高調波が重畳されてしまう事態が生じうる。このような事態が生じると、高調波が重畳された超音波受信信号に基づいて超音波診断装置本体側で画像処理を行って超音波画像を生成した場合に、高調波成分がノイズとなって画像に現れ、正確な診断を行うことが困難となる。このような事態を回避するために、超音波診断装置における揺動機構(ステッピングモーター)の駆動回路としては、リニアアンプ(例えばAB級アンプ)が使用されることが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニットについて、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示した例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能および構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を例示した図である。
図2に示すように、超音波診断装置1は、超音波探触子ユニット100と、超音波診断装置本体11と、操作部12と、表示部13と、を有する。また、超音波探触子ユニット100は、超音波探触子110と、コネクタハウジング120と、ケーブル130と、を有する。
【0021】
超音波探触子110は、図示しない生体等の被検体内に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体内で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。
【0022】
超音波診断装置本体11は、超音波探触子110とケーブル130およびコネクタハウジング120を介して接続され、超音波探触子110に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子110に被検体に対して超音波送信信号を送信させる。そして、被検体内からの反射波を受信した超音波探触子110が生成した超音波受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。操作部12は例えばスイッチ、ボタン、キーボード、マウス、タッチパネル等の操作デバイスであり、超音波診断装置1のユーザである医師や検査技師等の操作を受け付ける。表示部13は、LCD(液晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイ等の表示デバイスであり、超音波診断装置本体11が生成した超音波画像を表示したり、超音波診断装置1の状態に応じた種々の表示画面を表示したりする。
【0023】
<超音波探触子ユニット100の構成>
図3は、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニット100の構成を例示した図である。
図3に示すように、超音波探触子ユニット100は、超音波探触子110と、コネクタハウジング120と、ケーブル130と、を有する。超音波探触子ユニット100は、コネクタハウジング120によって超音波診断装置本体11(
図2参照)に接続される。
【0024】
超音波探触子110は、超音波診断の際に被検体に当接されて超音波信号を送信し、反射波信号を受信して受信信号を生成する。超音波信号の生成は、コネクタハウジング120およびケーブル130を介して超音波診断装置本体11から送信された制御信号に基づいて行われる。また、超音波探触子110において受信された受信信号は、ケーブル130およびコネクタハウジング120を介して超音波診断装置本体11に送信される。これにより、超音波診断装置本体11において超音波画像が生成され、表示部13に表示される。
【0025】
図3に示すように、超音波探触子110は、音響素子アレイ111と、揺動機構112と、を有する。音響素子アレイ111は、電気信号と超音波を相互に変換して超音波を生成する音響素子を例えば走査方向に沿って直線状に配列させたものである。揺動機構112は、音響素子アレイ111を揺動させて超音波形成面を移動させ、3次元走査を実現するための機構である。揺動機構112は、例えば後述する2相ステッピングモーター200と、プーリやベルト等の伝達部材(図示せず)と、によって構成され、伝達部材を介したステッピングモーターの駆動力により、音響素子アレイ111が設けられた土台部(図示せず)を、走査方向に対して垂直に揺動させる。なお、2相ステッピングモーター200は本発明のアクチュエーターの一例である。
【0026】
なお、
図3では図示を省略するが、超音波探触子110は、音響素子アレイ111を内包して超音波を透過する音響ウィンドウや、音響素子アレイ111を揺動可能に保持するフレーム等を有していてもよい。
【0027】
図4は、揺動機構112が有する2相ステッピングモーター200の構造の一例を示した図である。
図4に示すように、2相ステッピングモーター200は、2つのコイル201,202とロータ203とを有している。2つのコイル201,202は、電気角が互いに90°ずれるように配置される。このため、2つのコイル201,202のロータ203に対する磁界の方向も、ロータ203の中心角について電気角が互いに90°ずれている。
図4では、コイル201をA相側、コイル202をB相側として図示する。
【0028】
ロータ203は、例えば永久磁石等の磁石を有し、A相コイル201およびB相コイル202からの磁界に応じた位置で安定するように構成される。従って、互いに90°位相の異なる交流電流をA相コイル201およびB相コイル202に供給することで、その電流位相によりロータ203が回転する。また、特定の電流位相のタイミングで電流位相の変化を停止することで、その時の電流位相に応じた位置にロータ203を停止することができる。このような構成により、2相ステッピングモーター200の回転が制御される。
【0029】
<コネクタハウジング120の構成>
図3に示すように、コネクタハウジング120は、駆動回路121、制御回路122、コネクタ123を有する。駆動回路121は、揺動機構112が有する2相ステッピングモーター200の駆動制御を行う。制御回路122は、例えば超音波診断装置本体11からの指示信号に基づいて駆動回路121を制御する。
【0030】
図5は、駆動回路121および制御回路122の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、駆動回路121は、A相駆動回路310Aと、B相駆動回路310Bと、を有する。
【0031】
制御回路122は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路である。制御回路122は、例えば超音波診断装置本体11からの指示信号に基づいて駆動回路121(A相駆動回路310AとB相駆動回路310B)の可変出力スイッチング電源313,314をスイッチング制御するための電圧指令値V
Cとデューティ比とを決定し、これらに基づいて可変出力スイッチング電源313,314をスイッチング制御する。制御回路122の動作の詳細については後述する。
【0032】
図5に示すように、A相駆動回路310Aは、リニアアンプ311,312、可変出力スイッチング電源313,314、電流検知部315、および電流/電圧変換アンプ316を有する。なお、B相駆動回路310BもA相駆動回路310Aとほぼ同様の構成を有するため、図示および説明を省略する。
【0033】
リニアアンプ311,312は、例えばAB級のリニアアンプである。本発明において、リニアアンプとは、入力と出力との関係が一次式で表される増幅器を意味している。
【0034】
リニアアンプ311は、差動アンプ3111と電力増幅アンプ3112とを有する。差動アンプ3111は、後述する制御回路122から入力される電流指令値I
Cと、後述する電流検知部315が検知した、2相ステッピングモーター200のA相コイル201を流れる電流値である電流検知値I
dと、の差分を検出する。電力増幅アンプ3112は、入力された電流を増幅するアナログアンプである。
【0035】
リニアアンプ312は、反転回路3121と電力増幅アンプ3122とを有する。反転回路3121は例えばオペアンプ等の反転回路である。電力増幅アンプ3122は、入力された電流を増幅するアナログアンプである。
【0036】
リニアアンプ311の出力端子は2相ステッピングモーター200のA相コイル201の+側端子に接続される。すなわち、リニアアンプ311は2相ステッピングモーター200の+側のアンプである。一方、リニアアンプ312の出力端子はA相コイル201の−側端子に接続される。すなわち、リニアアンプ312は2相ステッピングモーター200の−側のアンプである。従って、2相ステッピングモーター200は、リニアアンプ311,312の出力電圧を駆動電圧として動作する。リニアアンプ311の電力増幅アンプ3112は、可変出力スイッチング電源313の出力電圧に基づいて動作する。また、リニアアンプ312の電力増幅アンプ3122は、可変出力スイッチング電源314の出力電圧に基づいて動作する。
【0037】
可変出力スイッチング電源313,314は、2相ステッピングモーター200を駆動するための駆動電圧を、リニアアンプ311,312を介して2相ステッピングモーター200に供給する。可変出力スイッチング電源313は2相ステッピングモーター200のA相コイル201の+側にリニアアンプ311を介して接続される。また、可変出力スイッチング電源314はA相コイル201の−側にリニアアンプ312を介して接続される。可変出力スイッチング電源313は、リニアアンプ311(電力増幅アンプ3112),リニアアンプ312(電力増幅アンプ3122)のハイサイド(+側)に接続され、可変出力スイッチング電源314は、リニアアンプ311(電力増幅アンプ3112),リニアアンプ312(電力増幅アンプ3122)のローサイド(−側)に接続される。
【0038】
このように、リニアアンプ311,312のハイサイド電源は可変出力スイッチング電源313に、ローサイド電源は可変出力スイッチング電源314に、それぞれ共通化されている。このような構成により、2相ステッピングモーター200の駆動電圧が正である場合の電源制御を可変出力スイッチング電源313が、駆動電圧が負である場合の電源制御を可変出力スイッチング電源314が、それぞれ共通して行うことができる。なお、以下の説明において、可変出力スイッチング電源313の出力電圧をV
out+、可変出力スイッチング電源314の出力電圧をV
out−と記載する。
【0039】
なお、本発明の実施の形態において、「正の駆動電圧」とは、必ずしも駆動電圧の電圧値が正である場合に限定されず、「負の駆動電圧」とは、必ずしも駆動電圧の電圧値が負である場合に限定されない。本発明の実施の形態においては、例えば、所定の基準電圧と駆動電圧とを比較したとき、基準電圧より大きい駆動電圧を「正の駆動電圧」、基準電圧より小さい駆動電圧を「負の駆動電圧」と称する。所定の基準電圧とは、例えば超音波診断装置1の設計者が任意に設定した電圧である。駆動電圧だけではなく、可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧についても同様である。
【0040】
電流検知部315は、2相ステッピングモーター200のA相コイル201を流れる電流値を検知する。電流検知部315で検知された電流値は、電流/電圧変換アンプ316によって適宜増幅され電流検知値I
dとしてリニアアンプ311に入力される。電流/電圧変換アンプ316は、入力された電流値を電圧値に変換する。
【0041】
<可変出力スイッチング電源313,314の構成>
次に、可変出力スイッチング電源313,314の構成について説明する。
図6は、可変出力スイッチング電源313の回路構成を例示した図である。
図6に示すように、可変出力スイッチング電源313は、制御回路401、スイッチング素子402を有する。なお、可変出力スイッチング電源314の回路構成も
図6に示す可変出力スイッチング電源313と同様であるため、図示と説明を省略する。
【0042】
制御回路401は、制御回路122によるスイッチング制御に基づいて、出力電圧の絶対値|V
out+|が電圧指令値の絶対値|V
C|を下回らないようにスイッチング素子402を制御する。制御回路122によるスイッチング制御の詳細については、後述する。ここで、出力電圧の絶対値とは、ハイサイド側とローサイド側との中間電位V
m(後述の
図8Aを参照)を0Vとした場合の絶対値である。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係る超音波診断装置1では、超音波探触子ユニット100が超音波診断装置本体11に接続された状態で、2相ステッピングモーター200による音響素子アレイ111の揺動動作を行うことができる。2相ステッピングモーター200の揺動動作は、駆動回路121が出力する2相ステッピングモーター200の駆動電圧が制御回路122によって制御されることで行われる。以下では、制御回路122による駆動回路121の出力電圧制御について詳細に説明する。
【0044】
<制御回路122による駆動回路121の出力電圧制御>
以下では、
図5を参照しながら、制御回路122による、A相駆動回路310Aのスイッチング制御について説明する。なお、B相駆動回路310Bの制御については、A相駆動回路310Aの制御とほぼ同様であるため説明を省略する。
【0045】
例えば超音波診断装置本体11(
図2参照)からコネクタ123を介して音響素子アレイ111の揺動が制御回路122に対して指示されると、制御回路122は、この指示に基づいて以下のような制御を行う。すなわち、制御回路122は、指示に対応する2相ステッピングモーター200の回転角(電気角)に基づいて、A相駆動回路310Aに対するA相位相データ(正弦波データ)と、A相位相データに対して90度の位相差を有するB相位相データ(正弦波データ)とを生成する。また、制御回路122は、生成したA相位相データおよびB相位相データに基づいてA相駆動回路310AとB相駆動回路310Bのそれぞれに対する電流指令値I
Cを生成する。制御回路122は、生成した電流指令値I
Cを、リニアアンプ311の差動アンプ3111に入力する。
【0046】
ここで、制御回路122は、2相ステッピングモーター200のA相コイル201を流れる電流が常に電流指令値I
Cとなるような定電流制御を行う。具体的には、制御回路122は、リニアアンプ311の差動アンプ3111において検出される、電流指令値I
Cと2相ステッピングモーター200のA相コイル201を流れる電流値I
dとの差分が0になるように、A相駆動回路310Aに入力する電流指令値I
Cを調整する。これにより、A相駆動回路310AにおいてA相コイル201を流れる電流を用いたフィードバック制御が行われ、2相ステッピングモーター200の安定した制御が可能となる。
【0047】
また、制御回路122は、音響素子アレイ111の揺動指示に対応する2相ステッピングモーター200の回転角に基づいて、2相ステッピングモーター200を駆動制御するための電圧指令値V
Cを生成する。そして、制御回路122は、可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧の絶対値|V
out+|,|V
out−|が、電圧指令値の絶対値|V
C|を下回らないようにスイッチング制御を行う。
【0048】
このようなスイッチング制御の実現方法として、例えば、予め電圧指令値V
Cとデューティ比とが対応付けられたテーブル等を参照して、生成した電圧指令値V
Cに対応するデューティ比を決定し、決定したデューティ比を用いてスイッチング制御を行う方法がある。
【0049】
図7は、電圧指令値V
Cに対してデューティ比を一意に決定するために使用されるテーブルの一例を示す図である。
図7では、電圧指令値V
Cが大きくなるほどデューティ比が大きくなるようなテーブルが例示されている。制御回路122は、例えば
図7に示すようなテーブルを用いて、電圧指令値V
Cに基づきデューティ比を決定すればよい。
【0050】
また、
図8Aは、電圧指令値V
Cと、決定したデューティ比を用いてスイッチング制御された可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧V
out+,V
out−と、の関係を示す図である。
図8Aに示すように、制御回路122のスイッチング制御によって、可変出力スイッチング電源313の出力電圧V
out+は、電圧指令値V
C(V
C>0)を下回らないように制御される。また、
図8Aに示すように、可変出力スイッチング電源314の出力電圧V
out−は、電圧指令値V
C(V
C<0)を上回らないように制御される。ここで、電圧指令値V
Cの正負は、ハイサイドとローサイドの中間電位V
m(
図8Aを参照)を0Vとした場合の正負である。
【0051】
上記したように、可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧V
out+,V
out−は、リニアアンプ311,312への入力電圧であり、2相ステッピングモーター200の駆動電圧は、リニアアンプ311,312の出力電圧である。一般に、リニアアンプ311,312の発熱は、リニアアンプ311,312への入力電力と出力電力との差が大きいほど大きくなる。なお、
図8Aにおいて、リニアアンプ311,312への入力電力と出力電力との差は、出力電圧V
out+,V
out−と電圧指令値V
Cとに囲まれた部位の面積に相当する。本発明の実施の形態に係る超音波診断装置1においては、制御回路122が
図8Aに示すような電圧制御を行うことにより、リニアアンプ311,312への入力電力と出力電力との差が比較的小さくなり、リニア増幅アンプ311,312からの発熱を抑えることができるようになる。
【0052】
比較例として、リニアアンプへの入力電圧を制御しない場合の、リニアアンプの入力電圧と出力電圧との関係を
図8Bに示す。
図8Bに示すように、例えば入力電圧を制御しない従来のリニアアンプでは、同じ駆動電圧の場合でも、入力電力と出力電力との差(
図8Bの斜線部分)が本発明の実施の形態に係る超音波診断装置1と比較して非常に大きい。このため、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置1では、従来と比較して、リニアアンプ311,312からの発熱を大きく低減させることができる。
【0053】
なお、制御回路122による可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御としては、PWM(パルス幅変調)制御とPFM(パルス周波数変調)制御のどちらを用いてもよい。PWM制御とは周期一定でオン/オフ時間比が変動する制御であり、PFM制御とはオン/オフ時間比が一定でスイッチング周波数が変動する制御である。PWM制御とPFM制御のどちらを用いるかについては、要求される負荷や効率等に基づいて決定されることが望ましい。
【0054】
制御回路122による可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御にPWM制御を用いる場合、可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング周波数を音響素子アレイ111の送信周期と同期してもよい。これにより、可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御がカラーモードやドップラーモードにおける受信周波数と干渉しないようにすることができる。
【0055】
制御回路122による可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御にPFM制御を用いる場合、スイッチング周波数を徐々に低くなるように変化させてもよいし、スイッチング周波数を徐々に高くなるように変化させてもよい。また、例えば2相ステッピングモーター200の駆動波形の周期毎に、スイッチング周波数を変化させる方向を変更するようにしてもよい。
【0056】
なお、PFM制御の場合、制御回路122は、超音波探触子110の周波数帯域と重ならないようにスイッチング周波数を変化させることが望ましい。具体的には、制御回路122は、例えば超音波探触子110の周波数帯域が1MHzであった場合に、スイッチング周波数を例えば100KHz以上1MHz未満で変化させるようにすればよい。
【0057】
PFM制御を採用した場合、スイッチング周波数を変化させる制御により、スイッチング周波数が分散されるので、可変出力スイッチング電源313(および可変出力スイッチング電源314)から発生するスイッチングノイズのピークをより低減することができる。
【0058】
また、制御回路122は、2相ステッピングモーター200の回転数に応じて、可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御のデューティ比を調節するようにしてもよい。
【0059】
一般に、2相ステッピングモーター200が比較的低速で回転させる場合は、制御回路122は、上記説明したような制御方法で可変出力スイッチング電源313を好適にスイッチング制御することができる。
図9は、2相ステッピングモーター200の回転数と制御回路122のスイッチング制御による可変出力スイッチング電源313,314の出力電力V
out+,V
out−との関係を示す図である。
図9Aは、低速回転時を示している。
【0060】
しかしながら、2相ステッピングモーター200を高速で回転させる場合、電圧指令値V
Cの変化速度が大きくなるため、制御回路122による可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御が間に合わなくなり、出力電圧V
out+,V
out−が電圧指令値V
Cに追従しきれなくなる場合がある。
図9Bは、高速回転時を示している。なお、本実施の形態において、高速回転時とは、例えば2相ステッピングモーター200の最大回転速度が600rpmである場合に、回転数が400rpmを超える場合を想定している。
【0061】
可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧V
out+,V
out−が電圧指令値V
Cに追従しきれなくなると、2相ステッピングモーター200の回転制御が好適には行われないが、本発明では以下のような方法によってこれを回避することができる。
【0062】
すなわち、制御回路122は、2相ステッピングモーター200の回転数が所定の回転数(例えば上記した400rpm)を超える場合には、上記したようにテーブルによって決定したデューティ比に、所定の係数を乗算した補正デューティ比を用いて可変出力スイッチング電源313,314のスイッチング制御を行う。なお、制御回路122は、2相ステッピングモーター200の回転数が所定の回転数を超えたか否かを、例えば電圧指令値V
Cの変化速度が所定速度を超えたか否かによって判定すればよい。
【0063】
ここで、デューティ比に乗算する所定の係数は、時間あたりの電圧指令値V
Cの変化量(変化速度)に対して一意に決定されればよい。
図10は、時間あたりの電圧指令値V
Cの変化量に対してデューティ比に乗算する係数を一意に決定するために使用されるテーブルの一例を示す図である。
【0064】
このような制御により、電圧指令値V
Cの変化速度が大きい場合には、デューティ比を大きくすることができるので、可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧V
out+,V
out−が電圧指令値V
Cに追従しきれなくなる事態を回避することができる。
【0065】
また、制御回路122は、電圧指令値V
Cの立ち上がり時と立ち下がり時とでデューティ比を変化させるようにしてもよい。具体的には、例えば電圧指令値V
Cの立ち下がり時に応答時間の関係で立ち上がり時と比較して電圧指令値V
Cに対する追従性が悪くなるような場合、立ち下がり時には、より電圧指令値V
Cに追従するように、立ち上がり時と立ち下がり時とで異なる値となるように予め作成されたテーブルを用いてデューティ比を決定してもよい。このようにすることで、コネクタハウジング120の発熱をより低減することができる。
【0066】
<作用・効果>
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニット100は、音響素子アレイ111、および音響素子アレイ111を走査方向に交差する方向に移動させる2相ステッピングモーター200(アクチュエーター)を含む揺動機構112を備えた超音波探触子110と、2相ステッピングモーター200を駆動する駆動回路121と、駆動回路121を制御する制御回路122と、を有し、駆動回路121は、可変出力スイッチング電源313,314、および可変出力スイッチング電源313,314の出力電圧が入力され、出力電圧に基づいて駆動電圧を2相ステッピングモーター200に出力するリニアアンプ311,312を備え、制御回路122は、所定の電圧指令値V
Cと、電圧指令値V
Cに基づいて決定したデューティ比とを用いて可変出力スイッチング電源313,314に対するスイッチング制御を行う。
【0067】
このような構成により、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニット100は、2相ステッピングモーター200の制御電流を増幅するリニアアンプ311,312への入力電力と出力電力との差を小さくすることができるので、リニアアンプ311,312から発生する熱を抑えることができるようになる。このため、駆動回路121および制御回路122を有するコネクタハウジング120の筐体温度上昇を防止することができる。
【0068】
また、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニット100では、制御回路122が可変出力スイッチング電源313,314に対して可変周波数でスイッチング制御を行う。この場合、スイッチング周波数が分散されるので、スイッチングノイズを低減することができる。また、制御回路122は、スイッチング周波数を音響素子アレイの周波数帯域と重ならないように制御する。この場合、超音波探触子110からコネクタハウジング120を通って超音波診断装置本体へ送信される超音波受信信号に重畳されるスイッチングノイズの影響を低減することができる。
【0069】
また、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニット100において、制御回路122は、2相ステッピングモーター200の回転数が比較的高速である場合、すなわち、電圧指令値V
Cの時間あたりの変化量が所定のしきい値より大きい場合には、変化量に基づいて決定した係数をデューティ比に乗算した補正デューティ比を用いて可変出力スイッチング電源313,314に対するスイッチング制御を行う。このため、2相ステッピングモーター200が低速回転から高速回転に移行する場合等の過渡応答時等に、電圧指令値V
Cの変化にスイッチング制御が追従できない事態の発生を回避することができる。
【0070】
また、本発明の実施の形態に係る超音波探触子ユニット100において、可変出力スイッチング電源313は、2相ステッピングモーター200のA相コイル201のプラス側端子に接続され、また、プラス側アンプであるリニアアンプ311のハイサイド電源と、マイナス側アンプであるリニアアンプ312のハイサイド電源と、が可変出力スイッチング電源313に共通化されている。そして、可変出力スイッチング電源314は、2相ステッピングモーター200のA相コイル201のマイナス側端子に接続され、また、プラス側アンプであるリニアアンプ311のローサイド電源と、マイナス側アンプであるリニアアンプ312のローサイド電源とが、可変出力スイッチング電源314に共通化されている。
【0071】
このような構成により、2相ステッピングモーター200の駆動電圧が正である場合の電源制御を可変出力スイッチング電源313が、駆動電圧が負である場合の電源制御を可変出力スイッチング電源314が、それぞれ共通化して行うことができる。このため、それぞれ別々に電源を用意する場合と比較して、電源の数を少なくすることができるので、駆動回路121の回路規模を縮小することができる。このため、コネクタハウジング120を小型化することができ、駆動回路121の消費電力を低減することができる。
【0072】
<変形例>
以上、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。特許請求の範囲の記載範囲内において、当業者が想到できる各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0073】
上記した実施の形態では、揺動機構112が有する2相ステッピングモーター200として、2相のステッピングモーターを例示したが、本発明はこれには限定されない。揺動機構112は、例えば3相や5相等、他の相数のステッピングモーターを有していてもよい。揺動機構112が他の相数のステッピングモーターを有している場合、駆動回路121はステッピングモーターの相数に合わせた数の駆動回路を有するように構成されればよい。
【0074】
また、上述した実施の形態では、2相ステッピングモーター200を制御する駆動回路121と制御回路122とが超音波探触子ユニット100のコネクタハウジング120内に設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、モーターを制御する駆動回路および制御回路が、超音波探触子内に設けられていてもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様に、駆動回路(リニアアンプ)の発熱の低減や、超音波探触子から超音波診断装置本体へ送信される超音波受信信号へのスイッチングノイズの低減、駆動回路の消費電力の低減等の効果を得ることができる。
【0075】
さらに、本発明では、例えば駆動回路および制御回路が、超音波診断装置本体内に設けられていてもよい。この場合、超音波診断装置本体の筐体がコネクタハウジングより大きいため、駆動回路の発熱は問題となりにくく、また、超音波探触子と超音波診断装置本体とを接続するケーブルと駆動回路および制御回路との距離とが大きくなるように駆動回路および制御回路を配置すれば、超音波受信信号にスイッチングノイズが重畳される事態を回避することができる。また、駆動回路の消費電力を低減することができる。