(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の導出手段は、最初の時刻ステップにおいて、前記磁性材料における磁束密度の面内方向成分の値を前記第2の小領域ごとに数値解析により導出する際には、前記第1の導出手段により当該第2の小領域を含む前記第1の小領域に対して導出された前記磁性材料における磁束密度の面内方向成分の値に対応する前記磁性材料の透磁率の面内方向成分の値を、当該第2の小領域における前記磁性材料の透磁率の面内方向成分の値として用いることを特徴とする請求項1に記載の電磁場解析装置。
前記第2の導出手段は、前記第1の導出手段により前記第1の小領域に対して或る時刻ステップにおいて導出された前記磁束密度の面内方向成分の値に基づく磁束が、当該第1の小領域を分割した前記第2の小領域における当該時刻ステップでの磁束の総量と等しくなるように、前記磁性材料における磁束密度の面内方向成分の値を前記第2の小領域ごとに数値解析により導出することを、各時刻ステップにおいて実行することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁場解析装置。
前記第2の導出手段は、或る時刻ステップにおいて、前記磁性材料における磁束密度の面内方向成分の値を前記第2の小領域ごとに数値解析により導出する際に、当該時刻ステップよりも1つ前の時刻ステップにおいて、前記第3の導出手段により当該第2の小領域に対して導出された、前記磁性材料の透磁率の面内方向成分の値を、当該第2の小領域における前記磁性材料の透磁率の面内方向成分の値として用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電磁場解析装置。
前記第2の導出手段により導出された前記磁性材料における磁束密度の面内方向成分の前記第2の小領域ごとの値に基づいて、前記磁性材料の損失を導出する第4の導出手段を更に有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電磁場解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、数値解析として有限要素法を用いる場合を例に挙げて説明する。また、数値解析の対象となる磁性材料が、軟磁性材料の一種である電磁鋼板である場合を例に挙げて説明する。また、単板磁気特性試験器により励磁された単板(一枚の電磁鋼板)の磁気特性を有限要素法により求める場合を例に挙げて説明する。ただし、数値解析は有限要素法に限定されず、例えば、差分法であってもよい。また、解析の対象となる磁性材料は、電磁鋼板に限定されず、例えば、パーマロイであってもよい。また、解析の対象となる磁性材料の構成は、単板に限定されず複数枚であってもよく、例えば、回転電機(モータ、発電機)のステータコアであってもよい。また、本実施形態では、電磁鋼板の面内方向成分がx−y−z直交座標系におけるx成分およびy成分で表され、厚み方向成分がz軸成分で表される場合を例に挙げて説明するが、電磁鋼板の面内方向成分は円座標(動径成分および角度成分)で表されてもよい。
【0013】
<電磁場解析装置100の構成>
図1は、電磁場解析装置100の機能的な構成の一例を示す図である。電磁場解析装置100は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを有する情報処理装置、または、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
【0014】
[データ記憶部101]
データ記憶部101は、二次元解析部102および一次元解析部103で使用する各種の既知のデータを記憶する。データ記憶部101は、例えば、励磁条件データと、電磁鋼板の導電率σと、磁気特性データと、を記憶する。
励磁条件データは、一周期の各時刻における励磁電流密度J
0を特定するデータである。
電磁鋼板の導電率σは、電磁鋼板の材料特性である。電磁鋼板の導電率σは、電磁鋼板の材質(鋼種)毎に定められる。
【0015】
磁気特性データは、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yと、透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yとの関係を周波数毎、材質毎に示すデータである。本実施形態では、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yと、磁界強度H(のx成分およびy成分)H
x、H
yとの関係を示すデータとして、初磁化特性のデータを用いる場合を例に挙げて説明する。このような磁気特性データは、例えば、電磁鋼板に対する(実際の)磁気特性試験の結果から、電磁鋼板の初磁化特性(初磁化特性を示す曲線)をx成分およびy成分のそれぞれについて個別に作成し、当該初磁化特性から、各磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yにおける透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを求めることにより得られる。尚、透磁率は、磁束密度と磁界強度との関係を示す曲線(本実施形態では初磁化特性を示す曲線)における原点と、当該曲線上の、磁束密度に応じて定まる点とを結ぶ直線の傾きで表される。
【0016】
本実施形態では、磁気特性データは、電磁鋼板の磁束密度のx成分B
xと、透磁率のx成分μ
xとを相互に関連付けて記憶するテーブルと、電磁鋼板の磁束密度のy成分B
yと、透磁率のy成分μ
yとを相互に関連付けて記憶するテーブルとを有する。
尚、このテーブルに記憶されていない値については、例えば、このテーブルに記憶されている値を用いた補間処理や補外処理により導出することができる。また、テーブルを用いずに、前述した関係を示す関係式を磁気特性データとしてもよい。
この他、データ記憶部101は、二次元解析部102および一次元解析部103で使用する各種のデータを記憶する。
【0017】
[二次元解析部102]
二次元解析部102は、非線形非定常二次元有限要素法を用いた電磁場解析を行うことにより、第1の要素のそれぞれにおいて、励磁条件データに従って励磁された場合の電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを導出する。
図2は、電磁鋼板に設定される要素の一例を概念的に示す図である。本実施形態では、
図2(a)に示すように、電磁鋼板の厚み方向については分割せず、面内方向(x軸方向およびy軸方向)で電磁鋼板を分割したそれぞれの三次元領域を第1の要素とする。
【0018】
また、本実施形態では、有限要素法を用いた電磁場解析の手法としてA−φ法を用いる場合を例に挙げて説明する。この場合、電磁場解析を行うための基礎方程式は、マクスウェル方程式に基づき以下の(1)式〜(4)式で与えられる。尚、各式において、→は、ベクトルであることを表す。尚、電磁場解析を行う手法は、非特許文献2等に記載されているように一般的な手法であるので、その詳細な説明を省略する。
【0020】
(1)式〜(4)式において、μは、透磁率であり、Aは、ベクトルポテンシャルであり、σは、導電率であり、J
0は、励磁電流密度であり、Jeは、渦電流密度であり、Bは、磁束密度である。(1)式〜(4)式において、ベクトルポテンシャルのx成分A
xおよびy成分A
yと、∂/∂zをそれぞれ0(ゼロ)とし(A
x=A
y=0、∂/∂z=0)、(1)式および(2)式を連立して解いて、ベクトルポテンシャルのz成分A
zとスカラーポテンシャルφを求めた後、(3)式および(4)式から磁束密度のx成分B
xおよびy成分B
yと、渦電流密度のx成分Je
xおよびy成分Je
yとを第1の要素のそれぞれに対して求める。尚、(1)式では、表記を簡素化するため、透磁率のx成分μ
x、y成分μ
y、z成分μ
zが等しい場合(μ
x=μ
y=μ
zの場合)の式を示す。
【0021】
このとき、二次元解析部102は、励磁条件データにより特定される励磁周波数と電磁鋼板の材質とに対応する磁気特性データから、透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを読み出す。二次元解析部102による電磁場解析では、1つの第1の要素内の透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yは同じ値になる。
【0022】
二次元解析部102は、以上のようにして、第1の要素のそれぞれにおける電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを導出することを、データ記憶部101に記憶されている励磁条件データにおける一周期の各時刻ステップtにおいて行う。尚、本実施形態では、励磁条件データにおける一周期の始期の時刻ステップtの値を0(ゼロ)とし、終期の時刻ステップtの値をt
maxとする。また、時間的に隣り合う時刻ステップtの間隔をΔtとする。
【0023】
[一次元解析部103]
一次元解析部103は、非線形非定常一次元有限要素法を用いた電磁場解析を行うことにより、第1の要素のそれぞれにおいて、励磁条件データに従って励磁された場合の電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのz軸方向の分布を導出する。以下に一次元解析部103の処理の具体例を説明する。
【0024】
まず、
図2(b)に示すように一次元解析部103は、
図2(a)に示す第1の要素のそれぞれをz軸方向において複数に分割し、複数の第2の要素を生成する。このように1つの第1の要素内に複数の第2の要素が含まれる。
図2(b)では、1つの第1の要素内に9つの第2の要素が含まれる場合を例に挙げて示す。一次元解析部103は、以下の(5a)式および(5b)式に基づいて、第2の要素のそれぞれにおいて、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを導出することにより、磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのz軸方向の分布を導出する。
【0026】
(5a)式および(5b)式は、(1)式において、透磁率μをx成分、y成分、z成分毎に表記した上で、ベクトルポテンシャルのz成分A
z、∂/∂x、∂/∂yをそれぞれ0(ゼロ)とする(A
z=0、∂/∂x=0、∂/∂y=0)ことにより得られる。
【0027】
(5a)式および(5b)式は、磁束密度の拡散方程式であり、電磁鋼板の磁束密度の面内方向の分布(磁束密度のx成分およびy成分)B
x、B
y)が、z軸方向(厚み方向)にどのように分布(拡散)するのかを、電磁鋼板の導電率σおよび透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを用いて表現した拡散方程式である。
【0028】
(5a)式および(5b)式を解く際には、第1の要素の境界面であって、法線方向がx軸方向を向く境界面における磁束の総量が、当該第1の要素に対し二次元解析部102で導出された磁束密度(のx成分)B
xと、当該境界面の面積との積で表される磁束と等しくなることを示す境界条件を用いる。また、第1の要素の境界面であって、法線方向がy軸方向を向く境界面における磁束の総量が、当該第1の要素に対し二次元解析部102で導出された磁束密度(のy成分)B
yと、当該境界面の面積との積で表される磁束と等しくなることを示す境界条件を用いる。具体的に本実施形態では、以下の(6a)式〜(6d)式を第1の要素の境界条件として用いる。
【0030】
(6a)式〜(6d)式において、hは、電磁鋼板の板厚である。(6a)式および(6c)式は、第1の要素の表面における第1の要素の境界条件である。(6b)式および(6d)式は、第1の要素の電磁鋼板の板厚方向(z軸方向)の中央における第1の要素の境界条件である。B
x(t)、B
y(t)は、時刻ステップtにおいて二次元解析部102で導出された第1の要素の磁束密度のx成分、y成分である(B
x(t)、B
y(t)は、時刻ステップt毎、第1の要素毎の値である)。
【0031】
一次元解析部103は、以上の境界条件の下、(5a)式および(5b)式を非線形非定常一次元有限要素法により解くことにより、第2の要素のそれぞれにおいてベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yを導出する。そして、一次元解析部103は、第2の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yを、(4)式においてA
z=0、∂/∂x=0、∂/∂y=0とした式に与えることにより、当該第2の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを導出する。一次元解析部103は、このような磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yの導出を第2の要素のそれぞれにおいて行う。尚、初期条件および電磁鋼板の境界条件については、公知の技術と同様に適宜設定することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0032】
図3は、第1の要素における磁束と、第2の要素のそれぞれにおける磁束との一例を概念的に示す図である。
図3の左図は、第1の要素における磁束(のx成分およびy成分)を概念的に表す。二次元解析部102は、1つの第1の要素に対し、磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを1つずつ導出する。従って、
図3の左図に示す例では、第1の要素におけるx軸方向の磁束の総量は、当該第1の要素の磁束密度(のx成分)B
xに、当該第1の要素のx軸に垂直な断面の面積を掛けた値となる。同様に、第1の要素におけるy軸方向の磁束の総量は、当該第1の要素の磁束密度(のy成分)B
yに、当該第1の要素のy軸に垂直な断面の面積を掛けた値となる。
図3の左図の矢印線は、第1の要素におけるx軸方向、y軸方向の磁束の総量を表す。
【0033】
一次元解析部103は、(6a)式〜(6d)式の境界条件により(5a)式および(5b)式を解くことで、第1の要素に含まれる第2の要素のそれぞれにおける磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを導出する。そうすると、
図3の左図に示す矢印線(第1の要素におけるx軸方向、y軸方向の磁束の総量)は、当該第1の要素に含まれる第2の要素のそれぞれに分配され、
図3の右図に示す矢印線(第1の要素に含まれる第2の要素のそれぞれにおけるx軸方向、y軸方向の磁束)のようになる。このようにすることで、導電率の制限を設けずに且つ細かい要素として非線形非定常三次元有限要素法により電磁場解析を行う場合に比べて格段に短い時間で表皮効果を考慮した電磁場解析を行うことができる。
【0034】
図2の説明に戻り、一次元解析部103は、第2の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yと、データ記憶部101に記憶されている電磁鋼板の導電率σと、x成分、y成分毎に表した(3)式とに基づいて、渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yを導出することを第2の要素のそれぞれにおいて行う。尚、このときに用いる(3)式のgradφは0(ゼロ)になる。
【0035】
また、一次元解析部103は、データ記憶部101に記憶されている励磁条件データにより特定される励磁周波数と電磁鋼板の材質とに対応する磁気特性データから、第2の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yに対応する透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを読み出す。前述したように、磁気特性データに所望のデータが記憶されていない場合、一次元解析部103は、補間処理や補外処理を行うことにより当該データを導出することができる。
【0036】
一次元解析部103は、以上のようにして第1の要素のそれぞれに対し、第2の要素のそれぞれにおける、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
y、渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
y、および透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを導出することを、データ記憶部101に記憶されている励磁条件データにおける一周期の各時刻ステップt(t=0〜t
max)において行う。
【0037】
これにより、第1の要素のそれぞれについて、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのz軸方向の分布、渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yのz軸方向の分布、および透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布が導出される。
【0038】
ここで、一次元解析部103は、時刻ステップtにおいて、第1の要素に含まれる第2の要素のそれぞれにおける電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを(5a)式および(5b)式に基づいて導出する際に、当該時刻ステップtの1つ前の時刻ステップt−Δtにおいて当該第1の要素に対して導出した透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を用いる。ただし、一次元解析部103は、最初の時刻ステップt(=0)においては、第1の要素に含まれる第2の要素のそれぞれにおける電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを(5a)式および(5b)式に基づいて導出する際に、二次元解析部102で導出された当該第1の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yに対応する透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを、データ記憶部101に記憶されている励磁条件データにより特定される励磁周波数と電磁鋼板の材質とに対応する磁気特性データから読み出して用いる。
【0039】
このように、最初の時刻ステップt(=0)においては、(5a)式および(5b)式に与える透磁率μ(第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
y)は、z軸方向に分布を持たず、1つの第1の要素内で同じ値になる。これに対し、2回目以降の時刻ステップtにおいては、(5a)式および(5b)式に与える透磁率μ(第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
y)は、z軸方向に分布を有する。
【0040】
図4は、透磁率の一例を概念的に示す図である。
図4では、電磁鋼板の磁束密度Bと磁界強度Hとの関係として、初磁化特性(初磁化曲線)を示す。透磁率μは、磁化曲線(
図4では初磁化曲線)の原点と、磁化曲線上の一点とを通る直線の傾きで定義される(μは、BをHで割った値(B=μHの関係)で表される)。そのため、磁束密度Bが変化すると、磁化曲線上の位置が移動するため、透磁率μも変化する。
【0041】
従って、本実施形態のように、電磁鋼板の厚み方向(z軸方向)において要素(第1の要素)を分割して、分割した要素(第2の要素)のそれぞれにおける磁束密度を導出して、電磁鋼板の厚み方向における磁束密度の分布を導出すると、電磁鋼板の透磁率も厚み方向において分布を持つ。
【0042】
磁束密度が低い場合には電磁鋼板は磁気飽和しないため(磁化曲線の傾きは一定であるため)、磁束密度が異なっても透磁率があまり変化しない。また、励磁周波数が低い場合には、電磁鋼板において表皮効果による磁束密度の減衰が小さいため、電磁鋼板の透磁率の分布は一様に近い。これらの場合には、電磁鋼板の透磁率の厚み方向における分布を無視し、電磁鋼板の厚み方向において、透磁率が一定であるとして計算しても(例えば、
図4(a)に示すように、初磁化曲線401の原点と初磁化曲線401上の低磁束密度領域の或る一点402とを通る直線403の傾きで表される透磁率を代表値として用いて計算しても)、計算精度が大きく低下することはないと考えられる。
【0043】
しかしながら、高周波数、高磁束密度といった励磁条件下では、表皮効果によって、電磁鋼板における磁束密度の減衰の程度が大きくなり、板表面と内部とで磁束密度が大きく変化する。また、電磁鋼板が磁気飽和の状態または磁気飽和に近い状態になると、磁気特性の非線形性によって、僅かな磁束密度Bの変化で透磁率が急激に変化する。従って、電磁鋼板の厚み方向において透磁率が一定であると仮定すると、実現象を正確に再現することができず、計算精度が低下する虞がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、(5a)式および(5b)式に与える透磁率μ(第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
y)がz軸方向に分布を持つようにすることで、
図4(b)に示すように、それぞれの磁束密度(初磁化曲線401の各点402、404、405、406)に対応する透磁率を採用することができ、高周波数、高磁束密度といった励磁条件下でも、計算精度が低下することを抑制することができるようにする。
【0045】
[損失導出部104]
損失導出部104は、データ記憶部101に記憶されている励磁条件データにおける一周期の各時刻ステップt(t=0〜t
max)において、一次元解析部103により、第2の要素のそれぞれにおける、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yおよび渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yが導出されると、第2の要素のそれぞれにおける、ヒステリシス損および渦電流損を導出する。
【0046】
例えば、損失導出部104は、第2の要素の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yから磁束密度ベクトルを導出し、当該磁束密度ベクトルの大きさを導出することを、励磁条件データにおける一周期の各時刻ステップt(t=0〜t
max)のそれぞれにおいて行う。損失導出部104は、その結果から、磁束密度ベクトルの大きさと時間との関係を示す波形の最大値と最小値の差B
mを導出し、以下の(7)式により、当該第2の要素におけるヒステリシス損Whを導出する。
【0048】
(7)式において、fは、励磁周波数であり、Khは、ヒステリシス損係数であり、βは定数(例えば、1.6または2)である。ヒステリシス損係数Khは、例えば、二周波法により予め求められるものである。
損失導出部104は、以上のヒステリシス損Whの導出を全ての第2の要素に対して行い、全ての第2の要素におけるヒステリシス損Whの総和を電磁鋼板のヒステリシス損として導出する。尚、ヒステリシス損は、公知の方法で導出することができ、第2の要素の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを用いて導出する方法であれば、どのような方法で導出してもよい。
【0049】
また、損失導出部104は、第2の要素の渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yから渦電流密度ベクトルを導出し、当該渦電流密度ベクトルの大きさJeを導出することを、励磁条件データにおける一周期の各時刻ステップt(t=0〜t
max)のそれぞれにおいて行う。そして、損失導出部104は、以下の(8)式により、当該第2の要素における渦電流損We(古典的渦電流損)を導出する。
【0051】
(8)式において、vは、第2の要素の体積であり、Tは、励磁条件データにおける一周期に相当する時間である。
損失導出部104は、以上の渦電流損Weの導出を全ての第2の要素に対して行い、全ての第2の要素における渦電流損Weの総和を電磁鋼板の渦電流損として導出する。尚、渦電流損は、公知の方法で導出することができ、第2の要素の渦電流密度(のx成分およびy成分)Je
x、Je
yを用いて導出する方法であれば、どのような方法で導出してもよい。
そして、損失導出部104は、電磁鋼板のヒステリシス損と渦電流損の和を電磁鋼板の鉄損として導出する。
【0052】
[出力部105]
出力部105は、損失導出部104により導出された、電磁鋼板のヒステリシス損、渦電流損、および鉄損を含む情報を出力する。出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、電磁場解析装置100の内部または/および外部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信の少なくとも何れか1つを採用することができる。
【0053】
<電磁場解析方法>
図5は、本実施形態の電磁場解析装置100を用いた電磁場解析方法の一例を説明するフローチャートである。
ステップS501において、二次元解析部102は、(1)式〜(4)式を非定常二次元有限要素法により解くことで、第1の要素のそれぞれにおける磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを導出する。
次に、ステップS502において、一次元解析部103は、第1の要素のうち未選択の第1の要素を1つ選択する。
【0054】
次に、ステップS503において、一次元解析部103は、ステップS502で選択した第1の要素をz軸方向において複数に分割し、複数の第2の要素を生成する。
次に、ステップS504において、一次元解析部103は、時刻ステップtを初期値である0(ゼロ)に設定する。時刻ステップtの初期値(=0)は、励磁条件データにおける一周期の始期のタイミングである。
次に、ステップS505において、一次元解析部103は、時刻ステップtの初期値(=0)における境界条件((6a)式〜(6d)式を参照)の下で、(5a)式および(5b)式を非定常一次元有限要素法により解くことで、ステップS503で生成された第2の要素のそれぞれにおけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yを導出する。このステップS505において、(6a)式〜(6d)式のB
x(t)、B
y(t)は、ステップS502で選択された第1の要素に対してステップS501で導出されたB
x(0)、B
y(0)になる。
【0055】
これにより、ステップS502で選択した第1の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yの、時刻ステップtの初期値におけるz軸方向の分布が導出される。このステップS505では、ステップS502で選択された第1の要素において共通の透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを用いて(5a)式および(5b)式を解く。
【0056】
次に、ステップS506において、一次元解析部103は、ステップS505で導出された第1の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yのz軸方向の分布に基づいて、ステップS503で生成された第2の要素のそれぞれにおける磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yおよび渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yを導出する。これにより、当該第1の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yの、時刻ステップtの初期値におけるz軸方向の分布と、渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yの、時刻ステップtの初期値におけるz軸方向の分布とが導出される。
【0057】
次に、ステップS507において、一次元解析部103は、データ記憶部101に記憶されている磁気特性データから、ステップS506で導出された第2の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのそれぞれに対応する透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを読み出す。これにより、当該第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yの、時刻ステップtの初期値におけるz軸方向の分布が得られる。そして、一次元解析部103は、当該第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を記憶する。
【0058】
次に、ステップS508において、一次元解析部103は、時刻ステップtに時間Δtを加算して時刻ステップtを更新する。
次に、ステップS509において、一次元解析部103は、ステップS502で選択された第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布(の最新の値)を読み出す。
【0059】
次に、ステップS510において、一次元解析部103は、ステップS508で更新された時刻ステップtにおける境界条件((6a)式〜(6d)式を参照)の下で、(5a)式および(5b)式を非定常一次元有限要素法により解くことで、ステップS503で生成された第2の要素のそれぞれにおけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yを導出する。このステップS510において、(6a)式〜(6d)式のB
x(t)、B
y(t)は、ステップS502で選択された第1の要素に対してステップS501で導出されたB
x(t)、B
y(t)になる(tは、ステップS508で更新された時刻ステップtである)。
【0060】
これにより、ステップS502で選択した第1の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yの、ステップS508で更新された時刻ステップtにおけるz軸方向の分布が導出される。このステップS510では、ステップS509で読み出した第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布(の最新の値)を用いて(5a)式および(5b)式を解く。
【0061】
次に、ステップS511において、一次元解析部103は、ステップS510で導出された第1の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yのz軸方向の分布に基づいて、ステップS503で生成された第2の要素のそれぞれにおける磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yおよび渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yを導出する。これにより、当該第1の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yの、ステップS508で更新された時刻ステップtにおけるz軸方向の分布と、渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yの、ステップS508で更新された時刻ステップtにおけるz軸方向の分布とが導出される。
【0062】
次に、ステップS512において、一次元解析部103は、データ記憶部101に記憶されている磁気特性データから、ステップS511で導出された第2の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのそれぞれに対応する透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを読み出す。これにより、当該第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yの、ステップS508で更新された時刻ステップtにおけるz軸方向の分布が得られる。そして、一次元解析部103は、既に記憶している当該第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を、このステップS512で読み出した当該第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布に書き換えて、当該第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を更新する。
【0063】
次に、ステップS513において、一次元解析部103は、現在の時刻ステップの値が最終値(=t
max)であるか否かを判定する。時刻ステップtの最終値(=t
max)は、励磁条件データにおける一周期の終期のタイミングである。この判定の結果、現在の時刻ステップの値が最終値(=t
max)でない場合には、励磁条件データにおける一周期分の計算が終了していないので、処理は、ステップS508に戻る。そして、現在の時刻ステップの値が最終値(=t
max)になるまで、ステップS508〜S513の処理が繰り返し実行される。
【0064】
そして、現在の時刻ステップの値が最終値(=t
max)になると、処理は、ステップS514に進む。ステップS514において、一次元解析部103は、ステップS502で全ての第1の要素を選択したか否かを判定する。この判定の結果、全ての第1の要素を選択していない場合には、全ての第1の要素に対する計算が終了していないので、処理は、ステップS502に戻る。そして、ステップS502で全ての第1の要素が選択されるまで、ステップS502〜S514の処理が繰り返し実行される。
【0065】
ステップS502で全ての第1の要素が選択されると、処理は、ステップS515に進む。ステップS515において、損失導出部104は、第1の要素のそれぞれに含まれる第2の要素のそれぞれにおける、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yおよび渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yに基づいて、電磁鋼板のヒステリシス損、渦電流損、および鉄損を導出する。
最後に、ステップS516において、出力部105は、電磁鋼板のヒステリシス損、渦電流損、および鉄損を含む情報を出力する。
【0066】
<計算例>
次に、本実施形態の計算例を説明する。本計算例では、JIS C2556(2015)「単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法」に記載の単板磁気試験器により、35A360の電磁鋼板を励磁した場合の当該電磁鋼板のヒステリシス損、渦電流損、および鉄損を計算した。
本実施形態で説明した手法(
図5のフローチャートで説明した手法)を発明例とする。また、
図5のフローチャートにおいて、ステップS507、S509、S512の処理を行わず、ステップS510においても、ステップS505と同様に、第1の要素において共通の透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yを用いる(透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yをz軸方向に分布を持たないように一定とする)手法を比較例とする。また、導電率の制限を設けずに且つ電磁鋼板の板厚よりも細かく要素を設定して非線形非定常三次元有限要素法を用いた電磁場解析を行う手法を基準例とする。発明例および比較例に比べ、基準例の手法の方が正確に電磁場解析を行うことができるが計算時間はかかる。
【0067】
発明例および比較例のそれぞれの手法で導出した電磁鋼板のヒステリシス損、渦電流損、および鉄損と、基準例の手法で導出した電磁鋼板のヒステリシス損、渦電流損、および鉄損とを比較した。また、本計算例では、電磁鋼板の磁束密度の最大値が1.5Tになるように励磁周波数が1kHzの正弦波の励磁電流を印加するという第1の励磁条件と、電磁鋼板の磁束密度の最大値が1.5Tになるように周波数が1.5kHzの変調波と周波数が5kHzの搬送波(キャリア波)とを用いて変調率mを0.5としてインバータにより生成される励磁電流を印加するという第2の励磁条件とのそれぞれおいて前述した計算を行った。その結果を
図6に示す。
【0068】
図6(a)および
図6(b)において、差は、発明例1、発明例2、比較例1、比較例2の値から基準例の値を引いた値と、発明例1、発明例2、比較例1、比較例2の値から基準例の値を引いた値の基準例の値に対する比を百分率で表した値と、を示す。
第1の励磁条件、第2の励磁条件は、高磁束密度、高周波数の条件であるので、
図6(a)および
図6(b)に示すように、ヒステリシス損に比べ渦電流損が大きくなる。
図6(a)および
図6(b)を比較すると、第1の励磁条件、第2の励磁条件の何れの条件においても、発明例1、2では、比較例1、2に比べ、基準例の結果に近づけることができることが分かる。このように、本実施形態の手法では、高磁束密度、高周波数の励磁条件下においても、計算負荷を低減することと計算精度の低下を抑制することとの双方を実現することができる。これにより、例えば、永久磁石同期モータや、誘導モータといった交流モータのうち、電気自動車やハイブリッド自動車等、インバータ等を用いて高速回転するモータにおける損失を短時間で高精度に導出することが可能になる。
【0069】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、電磁場解析装置100は、各時刻ステップtにおいて、透磁率μを用いて表現される磁束密度の拡散方程式を解くことによって、電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのz軸方向の分布を求めることと、当該電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのz軸方向の分布を用いて、電磁鋼板の透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を導出することとを行う。このとき、電磁場解析装置100は、1つ前の時刻ステップtにおいて導出した電磁鋼板の透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を用いて、今回の時刻ステップtにおける磁束密度の拡散方程式を解く。従って、電磁鋼板の透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を考慮することができる。よって、励磁された磁性材料の磁束密度を含む磁気特性を数値解析により求めるに際し、計算負荷を低減することと計算精度の低下を抑制することとの双方を実現することができる。
【0070】
<変形例>
本実施形態では、二次元解析部102において、非線形非定常二次元有限要素法を用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしも二次元有限要素法を用いる必要はなく、z軸方向の導電率を0(ゼロ)とし且つ第1の要素を電磁鋼板の厚みよりも大きくした非線形非定常三次元有限要素法を用いるようにしてもよい。このようにする場合も、非線形非定常三次元有限要素法で使用する要素が第1の要素になる。
【0071】
また、本実施形態では、2回目以降の時刻ステップtにおいて、第1の要素に含まれる第2の要素のそれぞれにおける電磁鋼板の磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yを(5a)式および(5b)式に基づいて導出する際に、当該時刻ステップtの1つ前の時刻ステップt−Δtにおいて当該第1の要素に対して導出した透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしも、当該時刻ステップtの1つ前の時刻ステップt−Δtにおいて当該第1の要素に対して導出した透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布を用いる必要はない。
【0072】
例えば、ステップS512とステップS513との間に、ステップS512において導出した第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布の収束判定を行うステップを追加してもよい。この場合、この収束判定において、ステップS512において導出した第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布が収束していない場合、処理は、ステップS510に戻る。
【0073】
ステップS510に処理が戻ると、一次元解析部103は、ステップS512において得られた第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布の最新値を用いて、第1の要素におけるベクトルポテンシャル(のx成分、y成分)A
x、A
yのz軸方向の分布を導出し直す。そして、ステップS511において、一次元解析部103は、第1の要素における磁束密度(のx成分およびy成分)B
x、B
yのz軸方向の分布と、第1の要素における渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yのz軸方向の分布とを導出し直す。
【0074】
以上の収束判定と、ステップS510〜S512の処理とを、収束判定において、ステップS512において得られた第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布が収束すると判定されるまで繰り返し行う。収束判定は、例えば、ステップS512において導出した第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布の前回値と今回値との差を表す値が所定の値以下であるか否かを判定することにより行うことができる。このとき、例えば、z軸方向の位置毎、方向(x軸方向およびy軸方向)毎に、第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yの今回値から前回値を引いた値を求め、求めた値の総和を、第1の要素における透磁率(のx成分およびy成分)μ
x、μ
yのz軸方向の分布の前回値と今回値との差を表す値として採用することができる。
【0075】
また、本実施形態では、磁束密度の面内方向成分の値が、電磁鋼板の板面方向成分の値であり、面内方向に垂直な方向が電磁鋼板の板厚方向である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。面内方向成分の面は、2次元平面であれば、どの面であってもよい。例えば、磁束密度の面内方向成分の値が、電磁鋼板の板厚方向成分の値であってもよい。例えば、回転電機のステータコアの外周端付近では、電磁鋼板の板厚方向に磁束が流れる。このような場合には、磁束密度の面内方向成分の値を、電磁鋼板の板厚方向成分の値とし、面内方向に垂直な方向を、ステータコアの径方向とするのが好ましい。
【0076】
また、本実施形態のように電磁鋼板の渦電流損を導出すれば、電磁鋼板の詳細な損失を得ることができるので好ましい。しかしながら、電磁鋼板の渦電流損を導出せずにヒステリシス損だけを導出してもよい。このようにする場合、必ずしも渦電流密度(のx成分、y成分)Je
x、Je
yを導出する必要はない。
【0077】
その他、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。