特許第6984434号(P6984434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6984434車両用開閉体制御装置及び車両用開閉体制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984434
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置及び車両用開閉体制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/611 20150101AFI20211213BHJP
   E05F 15/41 20150101ALI20211213BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   E05F15/611
   E05F15/41
   B60J5/10 K
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-8865(P2018-8865)
(22)【出願日】2018年1月23日
(65)【公開番号】特開2019-127715(P2019-127715A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坪井 智也
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023867(JP,A)
【文献】 特開2015−123808(JP,A)
【文献】 特開2006−265983(JP,A)
【文献】 特開2009−035976(JP,A)
【文献】 特開2017−172179(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0070167(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/005759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/611
E05F 15/41
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開閉体を駆動する駆動装置の作動を制御して前記開閉体を上方に開作動させる開駆動制御部と、
上方に開作動した前記開閉体の自重による降下を検出する自重降下検出部と、
前記自重による降下が検出された前記開閉体に対して制動力を付与する制動力付与部と、
前記自重による降下が検出された前記開閉体の前記駆動装置による開駆動を禁止する開駆動禁止部と、を備える車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開駆動が禁止された開閉体について前記自重による降下が検出されない場合に、前記開駆動の禁止を解除する駆動禁止解除部を備えること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開駆動が禁止された開閉体について前記自重による降下が検出された場合に、前記開閉体のロック解除を禁止して、前記開閉体を全閉位置に保持するロック解除禁止部を備えること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記制動力付与部は、前記開閉体に制動力を付与することにより前記自重による降下の速度を抑えつつ前記開閉体を全閉位置に移動させること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記駆動装置の作動を制御することにより前記開駆動制御部及び前記制動力付与部として機能する開閉体制御部と、
前記開閉体制御部に対する電力供給を管理する電源管理部と、を備え、
前記電源管理部は、前記開駆動の終了により前記開閉体制御部に対する電力供給を停止して該開閉体制御部をスリープ状態に移行させるとともに、
前記開閉体の前記自重による降下が検出されることにより前記開閉体制御部に対する電力供給を開始して該開閉体制御部を前記スリープ状態から起動させること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項6】
車両の開閉体を開駆動することにより該開閉体を開作動させる工程と、
上方に開作動した開閉体の自重による降下を検出する工程と、
前記自重による降下が検出された前記開閉体に対して制動力を付与する工程と、
前記自重による降下が検出された前記開閉体の前記開駆動を禁止する工程と、
を備える車両用開閉体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置及び車両用開閉体制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の開閉体には、例えば、所謂跳ね上げ式のバックドアのように、上方移動することにより開作動するものがある。また、モータ等を駆動源として、このような開閉体を開作動させることが可能な開閉体制御装置がある。更に、例えば、特許文献1に記載の開閉体制御装置は、駆動源となるモータの発電、つまりは、このモータが回生状態となることにより生ずる起電圧を検出することで、その上方に開作動した開閉体(バックドア)が自重により降下(落下)する状態を検出する。そして、このような開閉体の開作動不良が検出された場合には、モータの作動を制御して、その開閉体に制動力を付与することにより、この開閉体が急落しないように構成されている。
【0003】
尚、この従来例において、その駆動源となるモータの制御部は、開閉体が停止状態となることによりスリープ状態に移行する。更に、この制御部は、上記のような自重による開閉体の降下が検出されることによりスリープ状態から起動して、その制動制御を実行する。そして、これにより、その消費電力の低減を図る構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−172179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の構成では、その制動制御の実行によって、上記のような開作動不良が生じた後も、特に不都合を感じないまま、利用者が、その開閉体を利用し続ける可能性がある。そして、これにより、例えば、支持装置の故障等、その自重による降下の発生要因が放置されるおそれがあることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、自重による開閉体の降下を抑えて高い安全性を確保するとともに、その開閉体に生じた開作動不良の修理を利用者に促すことのできる車両用開閉体制御装置及び車両用開閉体制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、車両の開閉体を駆動する駆動装置の作動を制御して前記開閉体を上方に開作動させる開駆動制御部と、上方に開作動した前記開閉体の自重による降下を検出する自重降下検出部と、前記自重による降下が検出された前記開閉体に対して制動力を付与する制動力付与部と、前記自重による降下が検出された前記開閉体の前記駆動装置による開駆動を禁止する開駆動禁止部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、例えば、支持装置の故障等、開閉体が自重により降下する状態になった場合でも、その開閉体の急落を防いで高い安全性を確保することができる。更に、以降、この開閉体を駆動装置により開作動させることができなくなる。そして、これにより、この開閉体に生じた開作動不良を利用者に知らしめることで、その修理を促すことができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、前記開駆動が禁止された開閉体について前記自重による降下が検出されない場合に、前記開駆動の禁止を解除する駆動禁止解除部を備えることが好ましい。
【0010】
即ち、自重による開閉体の降下が検出された場合であっても、次回、この開閉体が手動により上方に開作動したとき、その自重による降下が検出されない場合には、前回の開駆動時に生じた開作動不良の発生原因が解消したものとみなすことができる。そして、これにより、再び、この開閉体を駆動装置により開作動させることができるようになることで、その利便性の向上を図ることができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、前記開駆動が禁止された開閉体について前記自重による降下が検出された場合に、前記開閉体のロック解除を禁止して、前記開閉体を全閉位置に保持するロック解除禁止部を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、以降、その全閉位置に保持された開閉体を開作動させることができなくなる。そして、これにより、高い安全性を確保するとともに、より効果的に、その開閉体に生じた開作動不良の修理を利用者に促すことができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記制動力付与部は、前記開閉体に制動力を付与することにより前記自重による降下の速度を抑えつつ前記開閉体を全閉位置に移動させることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、所謂挟み込みの発生を防止して高い安全性を確保することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、前記駆動装置の作動を制御することにより前記開駆動制御部及び前記制動力付与部として機能する開閉体制御部と、前記開閉体制御部に対する電力供給を管理する電源管理部と、を備え、前記電源管理部は、前記開駆動の終了により前記開閉体制御部に対する電力供給を停止して該開閉体制御部をスリープ状態に移行させるとともに、前記開閉体の前記自重による降下が検出されることにより前記開閉体制御部に対する電力供給を開始して該開閉体制御部を前記スリープ状態から起動させることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、消費電力の低減を図ることができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御方法は、車両の開閉体を開駆動することにより該開閉体を開作動させる工程と、上方に開作動した開閉体の自重による降下を検出する工程と、前記自重による降下が検出された前記開閉体に対して制動力を付与する工程と、前記自重による降下が検出された前記開閉体の前記開駆動を禁止する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自重による開閉体の降下を抑えて高い安全性を確保するとともに、その開閉体に生じた開作動不良の修理を利用者に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】パワーバックドア装置の概略構成図。
図2】開駆動要求に基づいたバックドア制御の態様を示すフローチャート。
図3】自重降下の検出に基づいたバックドア開駆動禁止制御の態様を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両用開閉体制御装置をパワーバックドア装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1において、車体2の後端部2rに形成されたドア開口部5には、所謂跳ね上げ式のバックドア10が設けられている。即ち、このバックドア10は、ドア開口部5の上端部分を回動支点として上方に開作動(図1中、反時計回り方向に回動)する。更に、ドア開口部5の幅方向両端部分には、伸縮可能な軸形状を有するとともに、その軸方向端部が車体2側及びバックドア10側に対して回動可能に連結された一対の支持装置(例えばダンパ)20が設けられている。そして、本実施形態の車両1は、これらの各支持装置20がバックドア10を支えることにより、その全閉位置X0から上方に開作動した当該バックドア10の作動位置(例えば、図1中、二点鎖線に示す全開位置X1)が保持される構成になっている。
【0019】
また、本実施形態の車両1には、モータ25を駆動源として、その開閉体としてのバックドア10を駆動する駆動装置30が設けられている。具体的には、この駆動装置30は、上記各支持装置20と一体に設けられている。即ち、この駆動装置30は、モータ25の回転を支持装置20の伸縮動作に変換する。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのモータ25の駆動力に基づいてバックドア10を開閉動作させることが可能なパワーバックドア装置40が形成されている。尚、駆動装置30は、上記各支持装置20と別体に設けられていてもよい。
【0020】
詳述すると、本実施形態の駆動装置30は、制御装置50によって、その作動が制御されている。具体的には、本実施形態の制御装置50は、駆動装置30に対し、車載電源51の電源電圧Vbに基づく駆動電力の供給を通じて、そのモータ25の回転を制御する。また、本実施形態の駆動装置30は、モータ25の回転に同期したパルス信号Spを出力する。そして、制御装置50は、このパルス信号Sp(のパルスエッジ)をカウントすることにより、そのバックドア10の作動位置Xを検出する構成になっている。
【0021】
また、制御装置50には、バックドア10に設けられた操作入力部52や図示しない携帯機等が操作されたことを示す操作入力信号Scrが入力される。尚、本実施形態の車両1において、その操作入力部52には、例えば、静電容量センサ等の非接触センサが用いられる。そして、本実施形態の制御装置50は、この操作入力信号Scrに示される作動要求に基づいて、バックドア10を開閉動作させるべく、その駆動装置30の作動を制御する構成になっている。
【0022】
具体的には、本実施形態の制御装置50は、バックドア10が全閉位置X0にある場合において、そのバックドア10に設けられた操作入力部52が操作された場合には、このバックドア10を上方に駆動することにより全開位置X1まで開作動させる。尚、このとき、制御装置50は、例えば、正規の携帯機(を所持する利用者)がバックドア10の近傍に設定された認証エリア内に存在する等、所定の解除条件を満たすことを条件として、このバックドア10に設けられたドアロック装置55を開作動させる(ドアロック解除)。そして、本実施形態の制御装置50は、バックドア10が開作動した状態にある場合において、そのバックドア10に設けられた操作入力部52が操作された場合には、このバックドア10を全閉位置X0まで閉作動させる構成になっている。
【0023】
さらに詳述すると、本実施形態の制御装置50は、上記のように、その駆動装置30及びドアロック装置55の作動制御を実行するバックドア制御部61と、このバックドア制御部61に対する電力供給を管理する電源管理部62と、を備えている。本実施形態の制御装置50において、電源管理部62は、バックドア10の作動を制御する必要が生じた場合に、そのバックドア制御部61に対する電力供給を実行する。また、電源管理部62は、バックドア10の作動制御が完了することにより、そのバックドア制御部61に対する電力供給を停止する。そして、本実施形態の制御装置50は、これにより、バックドア制御部61をスリープ状態に移行させることで、その消費電力を低減する構成になっている。
【0024】
即ち、図2のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置50は、例えば、バックドア10が全閉位置X0にある場合、操作入力信号Scrに基づき当該バックドア10の開作動要求を検出することにより(ステップ101:YES)、その電源管理部62がバックドア制御部61に対する電力供給を開始する。そして、これにより、バックドア制御部61がスリープ状態から起動することにより、そのバックドア10の開駆動制御を実行可能な状態となる(ウェイクアップ、ステップ102)。
【0025】
次に、本実施形態の制御装置50は、ドアロック解除の実行許可があるか否かを判定し(ステップ103)、実行許可がある場合(ステップ103:YES)に、バックドア10に設けられたドアロック装置55の作動を制御して、そのドアロックを解除する(ドアロック解除制御、ステップ104)。更に、制御装置50は、バックドア10について、駆動装置30による開駆動の実行許可があるか否かを判定する(ステップ105)。そして、その実行許可がある場合(ステップ105:YES)に、駆動装置30の作動を制御して、そのバックドア10の開駆動を実行する(バックドア開駆動制御、ステップ106)。
【0026】
また、本実施形態の制御装置50は、この場合、上記のようにバックドア10の作動位置Xが全開位置X1に到達するまで、上記ステップ106のバックドア開駆動制御を実行する(ステップ107:NO)。更に、制御装置50は、バックドア10が全開位置X1に到達し(ステップ107:YES)、そのバックドア開駆動制御を終了することにより、電源管理部62がバックドア制御部61に対する電力供給を停止する。そして、本実施形態の制御装置50は、これにより、再び、そのバックドア制御部61がスリープ状態に移行する構成になっている(ステップ108)。
【0027】
尚、上記ステップ105において、駆動装置30による開駆動の実行許可がない場合(ステップ105:NO)、制御装置50は、上記ステップ106及びステップ107の処理を実行しない。そして、上記ステップ103において、ドアロック解除の実行許可がない場合(ステップ103:NO)、制御装置50は、上記ステップ104〜ステップ107の処理を実行しない。
【0028】
また、本実施形態の制御装置50は、その支持装置20の故障等によって、上記のように上方に開作動したバックドア10が自重により降下する開作動不良の発生を検出する機能を有している。具体的には、制御装置50は、開駆動制御の終了後、バックドア制御部61をスリープ状態に維持したまま、その駆動装置30が出力するパルス信号Spの変化を監視する。また、本実施形態の制御装置50は、バックドア10の自重による降下を検出した場合、その電源管理部62がバックドア制御部61に対する電力供給を開始する。更に、これによりスリープ状態から起動したバックドア制御部61が、駆動装置30の作動を制御することにより、そのバックドア10に制動力(ブレーキ力)を付与する。そして、本実施形態のパワーバックドア装置40は、これにより、その支持装置20に故障が生じた場合であっても、バックドア10が急落しないように構成されている。
【0029】
詳述すると、図3のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置50は、上方に開作動したバックドア10が自重により降下する状態を検出することにより(ステップ201:YES)、そのバックドア制御部61がスリープ状態から起動する(ウェイクアップ、ステップ202)。また、制御装置50は、このとき、このバックドア10について、その駆動装置30による開駆動を禁止する開駆動禁止フラグがセットされているか否かを判定する(ステップ203)。そして、開駆動禁止フラグがセットされていない場合(ステップ203:NO)には、開駆動禁止フラグをセットして(ステップ204)、その自重により降下するバックドア10の制動制御を実行する(ステップ205)。
【0030】
具体的には、本実施形態の制御装置50は、バックドア10の制動制御として、そのバックドア10の降下に同期したモータ25の回転を抑制する制御を実行する。そして、これによりバックドア10に制動力を付与することで、その自重による降下の速度を抑えつつバックドア10を閉作動させる構成になっている(低速閉作動制御)。
【0031】
また、本実施形態の制御装置50は、そのバックドア10の作動位置Xが全閉位置X0に到達するまで、上記ステップ205のバックドア開駆動制御を実行する(ステップ206:NO)。更に、バックドア10が全閉位置X0に到達し(ステップ206:YES)、そのバックドア制動駆動制御を終了することにより、電源管理部62がバックドア制御部61に対する電力供給を停止する。そして、これにより、再び、そのバックドア制御部61がスリープ状態に移行する構成になっている(ステップ207)。
【0032】
一方、上記ステップ203において、既に開駆動禁止フラグがセットされていると判定した場合(ステップ203:YES)、制御装置50は、バックドア10について、そのドアロック解除を禁止する旨を示すロック解除禁止フラグをセットする(ステップ208)。そして、上記ステップ204において開駆動禁止フラグをセットした場合と同様、ステップ205以降の処理を実行することにより、その自重により降下するバックドア10に制動力を付与する。
【0033】
即ち、上記ステップ204において開駆動禁止フラグがセットされることにより、駆動装置30によるバックドア10の開駆動(図2参照、ステップ106)については、その実行許可がないものと判定される(同図中、ステップ105:NO)。そして、本実施形態のパワーバックドア装置40は、これにより、バックドア10の自重による降下が検知された場合には、その後、例えば、バックドア10に設けられた操作入力部52を操作することによっても、そのバックドア10を駆動装置30により開駆動することができない構成となっている。
【0034】
また、本実施形態のパワーバックドア装置40は、このような駆動装置30によるバックドア10の開駆動が禁止された状態においても、このバックドア10を手動により開作動させることが可能となっている。しかしながら、この場合もまた、上記ステップ208においてロック解除禁止フラグがセットされることにより、このバックドア10については、そのドアロック解除(図2参照、ステップ104)の実行許可がないものと判定される(同図中、ステップ103:NO)。
【0035】
つまり、本実施形態のパワーバックドア装置40は、駆動装置30に駆動されることにより開作動したバックドア10の自重による降下が検知された後、このバックドア10が全閉状態となった場合であっても、一度は、そのドアロック解除を行い、手動によって、このバックドア10を開作動させることが可能となっている。そして、この手動により開作動したバックドア10に再び自重による降下が検出された場合には、その後、このバックドア10が全閉位置X0に移動した以降、そのロック解除ができないようにすることで、当該バックドア10の全閉状態を保持する。即ち、その自重による降下の発生原因が解消、例えば、支持装置20の故障が修理されるまで、このバックドア10が開かない構成となっている。
【0036】
また、本実施形態の制御装置50は、その開作動したバックドア10の自重による降下が、所定時間以上検出されない場合(ステップ201:NO及びステップ209:YES)、このバックドア10について、開駆動禁止フラグがセットされているか否かを判定する(ステップ210)。そして、開駆動禁止フラグがセットされている場合(ステップ210:YES)には、その開駆動禁止フラグをクリアする構成になっている(ステップ211)。
【0037】
即ち、駆動装置30による開駆動が禁止されたバックドア10が開作動した状態にある場合、このバックドア10は手動により開作動されたものと推定される。更に、本実施形態の制御装置50は、このバックドア10について、自重による降下が検出されない場合には、その自重による降下の発生原因が解消したものとみなす。そして、本実施形態のパワーバックドア装置40は、これにより、その駆動装置30によって、バックドア10の開駆動を行うことが可能な状態に復帰する構成になっている。
【0038】
尚、開作動したバックドア10の自重による降下が所定時間以上検出されない場合以外にも、例えば、外部装置との通信により解除信号を検出する等によって、そのセットされた開駆動禁止フラグを制御装置50がクリアする等、特殊操作に基づいた解除手段を設定してもよい。これにより、例えば、修理工場で故障の修理を行う際、その利便性を高めることができる。
【0039】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)開駆動制御部70aとしての制御装置50は、駆動装置30の作動を制御することにより車両1の開閉体を構成するバックドア10を上方に開作動させる。また、自重降下検出部70bとしての制御装置50は、上方に開作動したバックドア10が自重により降下する状態にあることを検出する(ステップ201:YES)。更に、制動力付与部70cとしての制御装置50は、その自重による降下が検出されたバックドア10に対して制動力を付与する(ステップ205)。そして、開駆動禁止部70dとしての制御装置50は、この自重による降下が検出されたバックドア10について、その駆動装置30による開駆動を禁止する(ステップ204)。
【0040】
上記構成によれば、例えば、支持装置20の故障等、バックドア10が自重により降下する状態になった場合でも、そのバックドア10の急落を防いで高い安全性を確保することができる。更に、以降、このバックドア10を駆動装置30により開作動させることができなくなる。そして、これにより、このバックドア10に生じた開作動不良を利用者に知らしめることで、その修理を促すことができる。
【0041】
(2)駆動禁止解除部70eとしての制御装置50は、駆動装置30による開駆動が禁止されたバックドア10について、その自重による降下が検出されない場合(ステップ201:NO、ステップ209:YES及びステップ210:YES)、このバックドア10に設定した開駆動の禁止を解除する(ステップ211)。
【0042】
即ち、自重によるバックドア10の降下が検出された場合であっても、次回、このバックドア10が手動により上方に開作動したとき、その自重による降下が検出されない場合には、前回の開駆動時に生じた開作動不良の発生原因が解消したものとみなすことができる。そして、これにより、再び、このバックドア10を駆動装置30により開作動させることができるようになることで、その利便性の向上を図ることができる。
【0043】
(3)ロック解除禁止部70fとしての制御装置50は、駆動装置30による開駆動が禁止されたバックドア10について、再度、その自重による降下が検出された場合(ステップ201:YES及びステップ203:YES)には、このバックドア10について、そのドアロック解除を禁止する(ステップ208)。
【0044】
上記構成によれば、以降、その全閉位置X0に保持されたバックドア10を開作動させることができなくなる。そして、これにより、高い安全性を確保するとともに、より効果的に、そのバックドア10に生じた開作動不良の修理を利用者に促すことができる。
【0045】
(4)制御装置50は、駆動装置30を制御してバックドア10に制動力を付与することにより、その自重による降下の速度を抑えつつ、このバックドア10を全閉位置X0に移動させる。これにより、所謂挟み込みの発生を防止して、高い安全性を確保することができる。
【0046】
(5)制御装置50は、駆動装置30の作動を制御することにより、その開駆動制御部70a及び制動力付与部70cとして機能する開閉体制御部としてのバックドア制御部61と、このバックドア制御部61に対する電力供給を管理する電源管理部62と、を備える。電源管理部62は、駆動装置30によるバックドア10の開駆動が終了することによりバックドア制御部61に対する電力供給を停止して、このバックドア制御部61をスリープ状態に移行させる。そして、電源管理部62は、バックドア10の自重による降下が検出されることにより、このバックドア制御部61をスリープ状態から起動させる。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0047】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・上記実施形態では、車体2の後端部2rに設けられた開閉体としてのバックドア10を開閉動作させるパワーバックドア装置40に具体化した。しかし、これに限らず、上方に開作動する車両1の開閉体を制御対象とするものであれば、例えば、所謂ガルウィング式のサイドドアやトランクリッド等、その開閉体はどのようなものであってもよい。
【0049】
・上記実施形態では、自重によるバックドア10の降下を検出した場合には、駆動装置30を制御して、このバックドア10に制動力を付与することにより、その自重による降下の速度を抑えつつ、当該バックドア10を全閉位置X0に移動させることとした。しかし、これに限らず、制動力の付与によって、その開作動したバックドア10の作動位置Xを保持する構成であってもよい。また、実質的に制動力を付与するものであれば、例えば、バックドア10の低速閉駆動制御を行う構成であってもよい。更に、そのバックドア10を保持する作動位置Xは、必ずしも全開位置X1でなくともよい。そして、駆動装置30とは別体に設けられたブレーキ装置の作動を制御することにより、そのバックドア10に制動力を付与する構成としてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、駆動装置30の駆動源であるモータ25の回転に同期したパルス信号Spの変化を監視することにより、その自重によるバックドア10の降下を検出することとした。しかし、これに限らず、例えば、モータ25が回生状態となることにより生ずる起電力(発電状態)を監視する等、自重によるバックドア10の降下を検出する方法については、任意に変更してもよい。
【0051】
・上記実施形態では、バックドア制御部61のスリープ制御を実行することで、その制御装置50の消費電力を低減することとしたが、このようなスリープ制御を行わない構成に具体化してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、駆動装置30は、バックドア10を開閉駆動可能であることとしたが、開駆動のみを行うものに適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…車両、2…車体、2r…後端部、5…ドア開口部、10…バックドア(開閉体)、20…支持装置、25…モータ、30…駆動装置、40…パワーバックドア装置、50…制御装置、51…車載電源、52…操作入力部、55…ドアロック装置、61…バックドア制御部(開閉体制御部)、62…電源管理部、70a…開駆動制御部、70b…自重降下検出部、70c…制動力付与部、70d…開駆動禁止部、70e…駆動禁止解除部、70f…ロック解除禁止部、Sp…パルス信号、X…作動位置、X0…全閉位置、X1…全開位置、Scr…操作入力信号、Vb…電源電圧。
図1
図2
図3