(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記並列系統のそれぞれは、冷却器(31a、32a、3na)、および、前記冷却器における冷媒の流量を制御する流量調節弁(31b、32b、3nb、631d、632d)を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池冷却用冷凍サイクル装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
第1実施形態
図1において、電池冷却用冷凍サイクル装置1は、乗り物用冷凍サイクル装置を提供する。乗り物の語は、広義に解釈されるべきであり、車両、航空機、船舶などの移動体、およびアミューズメント機器など固定物を含む。電池冷却用冷凍サイクル装置1は、乗り物に利用されている電池を冷却することにより、電池の温度を調節する。なお、以下の説明において、電池の温度を制御することは、冷却の語で代表的に説明されている。この実施形態における電池は、車両の走行用モータに電力を供給する比較的大型の電池である。
【0013】
電池冷却用冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備える。同時に、冷凍サイクル10は、空調用冷凍サイクル装置を提供する。冷凍サイクル10は、冷媒11を有する。冷凍サイクル10は、冷媒11が循環するサイクルを構成している。冷凍サイクル10は、コンプレッサ12を備える。コンプレッサ12は、冷媒を吸入し、冷媒を圧縮する。コンプレッサ12は、電動である。冷凍サイクル10は、コンプレッサ12によって圧縮された冷媒から放熱する放熱器13を備える。放熱器13は、コンデンサとも呼ばれる。コンプレッサ12および放熱器13は、冷凍サイクル10における高圧系統を主として提供している。冷凍サイクル10は、コンプレッサ12を潤滑し、冷媒11とともに流れるオイル14とを有している。さらに、冷凍サイクル10は、制御装置15(ECU)を有する。
【0014】
冷凍サイクル10は、冷媒を蒸発させる低圧系統を有する。冷凍サイクル10は、空調系統20、および、電池冷却系統30を備える。空調系統20および電池冷却系統30は、低圧系統を主として提供している。
【0015】
空調系統20は、冷却器21および減圧器としての電気膨張弁22を含む。冷却器21は、空気を冷却する熱交換器である。冷却器21は、蒸発器とも呼ばれる。空調系統20は、冷却器21の出口近傍における冷媒の過熱度を検出するために、センサ23を有する。センサ23は、温度センサによって提供できる。センサ23は、圧力センサ、過熱度センサなど多様なセンサによって提供されてもよい。センサ23は、冷却器21の冷却度合いを示す信号を出力する。センサ23の信号は、電気膨張弁22を制御するために利用される。制御装置15は、センサ23の信号に基づいて、電気膨張弁22を制御する。
【0016】
電池冷却系統30は、複数の並列系統31、32を有する。複数の並列系統31、32は、それぞれが低圧系統を提供している。この実施形態では、電池冷却系統30は、2つの並列系統31、32を有する。第1の並列系統31と第2の並列系統32とは、相似である。
【0017】
並列系統31、32は、冷却器31a、32aおよび減圧器としての電気膨張弁31b、32bを有する。電気膨張弁31b、32bは、冷却器31a、32aにおける冷媒の流量を制御する流量調節弁を提供する。冷却器31a、32aは、電池を冷却する熱交換器である。冷却器31a、32aは、蒸発器とも呼ばれる。並列系統31、32は、冷却器31a、32aの出口近傍における冷媒の過熱度を検出するために、センサ31c、32cを有する。センサ31c、32cは、温度センサによって提供できる。センサ31c、32cは、圧力センサ、過熱度センサなど多様なセンサによって提供されてもよい。センサ31c、32cは、冷却器31a、32aの冷却度合いを示す信号を出力する。センサ31c、32cの信号は、電気膨張弁31b、32bを制御するために利用される。制御装置15は、センサ31c、32cの信号に基づいて、電気膨張弁31b、32bを制御する。
【0018】
電気膨張弁22、31b、32bは、冷媒流量を調節する流量調節部を提供する。流量調節部は、冷却負荷に応じて冷媒流量を調節でき、かつ、滞留オイルを押し流す冷媒流量を流すことができる。流量調節部は、冷却負荷に応じて冷媒流量を調節する状態と、滞留オイルを押し流す冷媒流量を流す状態とに切り換え可能である。冷却負荷に応じて冷媒流量を調節する状態は、フィードバック制御状態とも呼ばれる。滞留オイルを押し流す冷媒流量を流す状態は、大開度状態、またはオイル戻し制御状態と呼ばれる。
【0019】
電気膨張弁22、31b、32bは、電磁的なモータなどのアクチュエータを備える。電気膨張弁22、31b、32bは、減圧器としての絞り開度を連続的に調節する。電気膨張弁22、31b、32bは、電子式膨張弁とも呼ばれる。電気膨張弁22、31b、32bは、減圧器と電磁弁との並列回路、または感温式膨張弁と電磁弁との並列回路など多様な機器によって提供可能である。
【0020】
制御装置15は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置15は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置(MMR)とを有する。制御装置15は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置15は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置15によって実行されることによって、制御装置15をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置15を機能させる。
【0021】
制御装置15を含む制御システムは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するためのブロックと呼ぶことができる。別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成として解釈されるモジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、その機能を実現する手段ともよぶことができる。
【0022】
制御システムが提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
【0023】
図2において、電池冷却系統30によって冷却される電池40は、複数のセル電池45を有する。ひとつのセル電池45は、電解質を共有するひとつの容器である。ひとつのセル電池45は、少なくとも正極と負極とを有する最小の電池単位でもある。複数のセル電池45は、直列および/または並列に接続されている。電池40は、複数の群電池41、42を有する。群電池41、42のそれぞれは、複数のセル電池45を含んでいる。図示の例では、電池40は、2つの群電池41、42を含む。ひとつの群電池41は、4つのセル電池45を含む。
【0024】
複数の冷却器31a、32aは、電池40に直接的に接触して電池40の熱を奪っている。複数の冷却器31a、32aは、それらからの複数の冷却能力を、ひとつのセル電池45に与えるように配置されている。複数の冷却器31a、32aは、それらからの複数の冷却能力を、ひとつの群電池41に与えるように配置されている。複数の冷却器31a、32aは、それらからの複数の冷却能力を、ひとつの群電池42に与えるように配置されている。複数の冷却器31a、32aは、それらからの複数の冷却能力を、ひとつの電池40に与えるように配置されている。冷却対象は、図示以外にもあってもよい。
【0025】
言い換えると、複数の並列系統31、32に属する複数の冷却器31a、32aは、ひとつのセル電池45または一群の群電池41および/または群電池42を冷却する。この結果、複数の冷却器31a、32aのうちの一部の冷却器の冷却能力が低下しても、または、冷却能力が失われても、残部の冷却器によって電池の冷却が可能である。よって、電池40の全体、群電池41の全体、群電池42の全体、ひとつのセル電池45の全体に対する冷却能力のすべてが失われる可能性が抑制される。
【0026】
図3において、制御装置15によるオイル戻し制御処理150が図示されている。ステップ151において、制御装置15は、冷却器21、31a、32aが求められる冷却能力を発揮するように冷却運転を実施する。冷却運転において、コンプレッサ12が運転され、電気膨張弁22、31b、32bが制御される。制御装置15は、冷却器21の冷却負荷に応じて、効率的な過熱度が得られるように電気膨張弁22を制御する。制御装置15は、冷却器31a、32aの冷却負荷に応じて、効率的な過熱度が得られるように電気膨張弁31b、32bを制御する。これにより空調系統20は、除湿または冷房が提供される。電池冷却系統30では、電池40が冷却される。制御装置15は、センサ31c、32cの出力信号に応じて、電気膨張弁31b、32bをフィードバック制御する。
【0027】
冷凍サイクル10が冷却負荷に応じて制御されると、冷却器21、31a、32aにオイルが滞留する場合がある。特に、冷却負荷が小さい場合、電気膨張弁22、31b、32bの開度が絞られる。このため、冷媒流量が減り、オイルが滞留する。このような滞留オイルは、コンプレッサ12へのオイル戻りを低下させ、コンプレッサ12の潤滑、および/または冷却を悪化させる。また、滞留オイルは、冷却器21、31a、32aにおける熱交換を妨げる場合がある。
【0028】
ステップ152では、制御装置15は、冷凍サイクル10がオイル戻し運転されるように、オイル戻し制御を実施する。ステップ152は、オイル戻し制御部を提供する。オイル戻し制御は、複数の並列系統31、32の冷媒流量に差を与え、いずれか一方の並列系統の冷媒流量を滞留オイルを押し流すほどに大流量にする。この大流量は、電池を冷却するために必要な冷却流量より多い。ステップ152は、オイル戻し制御部を提供する。
【0029】
オイル戻し制御は、複数の並列系統31、32のうち、一部の並列系統における冷媒流量だけを冷却負荷に応じた流量から増加させることによって提供される。オイル戻し制御において、残部の並列回路における冷媒流量は、冷却負荷に応じた流量に維持される。オイル戻し制御において、残部の並列回路における冷媒流量は、冷却負荷に応じた流量より少なく制限されてもよい。ステップ152におけるオイル戻し制御は、複数の並列系統31、32のなかで、一部の並列系統を順に変更する。電池冷却系統30が、2つの並列系統31、32を含む場合、オイル戻し制御部は、2つの並列系統31、32のなかで、オイル戻し制御が実施される一部の並列系統を交互に変更する。
【0030】
オイル戻し制御処理150は、ステップ151とステップ152とを繰り返す。これにより、冷却器31a、32aにおける滞留オイルが抑制される。
【0031】
図4は、オイル戻し制御による波形図を示す。横軸は、時間t(秒)の経過を示す。縦軸は、電気膨張弁31b、32bの開度(%)、センサ31c、32cの検出温度(℃)、および、電池40の温度(℃)を示す。
【0032】
電気膨張弁31b、32bは、冷却負荷に応じた開度Pfbに制御されている。電気膨張弁31b、32bは、間欠的に、オイル戻し制御される。よって、オイル戻し制御部による制御は間欠的である。オイル戻し制御において、電気膨張弁31b、32bは、滞留オイルを押し流す冷媒流量を供給できる開度Ptに制御される。センサ31c、32cの検出温度は、電池40を目標温度に維持できる温度Tfbにフィードバック制御されている。このとき、電池40の温度も、温度Bfbにフィードバック制御されている。
【0033】
時刻t1と時刻t2との間において、並列系統31がオイル戻し制御される。時刻t3と時刻t4との間において、並列系統32がオイル戻し制御される。複数の並列系統31、32におけるオイル戻し制御は、順に、実施されている。複数の並列系統31、32におけるオイル戻し制御は、同時に実施されない。複数の並列系統31、32におけるオイル戻し制御は、交互に実施されている。
【0034】
複数の並列系統31、32におけるオイル戻し制御の実施時期、間隔、および期間は、タイマー制御、またはスケジュール制御によって提供することができる。
【0035】
時刻t1と時刻t2との期間において、第1の並列系統31がオイル戻し制御の対象となる。この期間において、第2の並列系統32は冷却負荷に応じて制御されている。この期間において、電気膨張弁31bの開度が開度Ptに制御される。冷却器31aに供給される冷媒流量が、大流量となる。開度Ptが提供する大流量は、開度Pfbが提供する流量より大きい。つまり、温度制御部は、流量調節弁の開度を第1開度Pfbに制御し、オイル戻し制御部は、流量調節弁の開度を第1開度より大きい第2開度(Pt)に制御する。この結果、センサ31cの検出温度が上昇する。やがて、検出温度が、電池40を目標温度に維持するための限界温度Chに到達すると、オイル戻し制御が終了する。このとき、電池40の温度は、限界温度Bhより低く維持される。この期間において、第1の並列系統31に流れる大流量の冷媒は、滞留オイルを押し流す。この結果、第1の並列系統31における滞留オイルが抑制され、コンプレッサ12へのオイル戻りが改善される。
【0036】
時刻t2と時刻t3との間において、再び冷却負荷に応じたフィードバック制御が行われる。これにより、電池40の温度は、再び温度Bfbにフィードバック制御される。
【0037】
時刻t3と時刻t4との期間において、第2の並列系統32がオイル戻し制御の対象となる。この期間において、第1の並列系統31は冷却負荷に応じて制御されている。この期間において、電気膨張弁32bの開度が開度Ptに制御される。冷却器32aに供給される冷媒流量が、大流量となる。開度Ptが提供する大流量は、開度Pfbが提供する流量より大きい。この結果、センサ32cの検出温度が上昇する。やがて、検出温度が、電池40を目標温度に維持するための限界温度Chに到達すると、オイル戻し制御が終了する。このとき、電池40の温度は、限界温度Bhより低く維持される。この期間において、第2の並列系統32に流れる大流量の冷媒は、滞留オイルを押し流す。この結果、第2の並列系統32における滞留オイルが抑制され、コンプレッサ12へのオイル戻りが改善される。
【0038】
制御装置15は、上述の間欠的な、かつ、並列系統31、32において互いに重ならないオイル戻し制御を提供する。これにより、コンプレッサ12における冷媒流量が小さいときでも、滞留オイルが押し流される。
【0039】
以上に述べた実施形態によると、電池40を冷却するための冷却器31a、32aを備える冷凍サイクルにおいて、コンプレッサ12へのオイル戻りを確保できる。このため、コンプレッサ12を含む冷凍サイクルの品質低下を抑制できる。また、電池40を冷却するための冷却器31a、32aにおける滞留オイルが抑制されるから、滞留オイルに起因する冷却性能の低下を抑制できる。さらに、コンプレッサ12へのオイル戻りを確保できるから、冷凍サイクルの省動力が図られる。
【0040】
電気膨張弁31b、32bの開度を制御することにより、冷却器31a、32aの温度を目標温度にフィードバック制御している。この目標温度を、電池40を安定的に機能させるための第1温度Tfbから、第1温度Tfbより高い第2温度Chに切り換えることで、電気膨張弁31b、32bの開度を増加させている。しかも、第2温度Chは、電池の機能を損なわないように温度および/または継続時間が設定されている。例えば、第2温度Chと、第2温度Chの継続時間は、電池40の推奨利用温度範囲の中において、短時間に設定されている。このため、電池40の性能低下を抑制しながら、冷却効率を高めることができる。
【0041】
さらに、複数の冷却器31a、32aの電気膨張弁31b、32bは、互いに重ならないように交互にオイル戻し制御される。よって、オイル戻し制御の対象となっている冷却器における冷媒流量を、オイルを押し流すように大流量にすることができる。しかも、共通のコンプレッサ12における冷媒流量を過剰に大きくすることがない。
【0042】
さらに、電池40に起因する冷凍サイクルの冷凍負荷が比較的低い低負荷時において、電気膨張弁31b、32bの開度が比較的小さいときでも、オイル戻りが確保される。低負荷は、外気温度が低く電池40の温度が比較的低い冬季、または、電池40の充電負荷、放電負荷が小さく電池40の温度が比較的低い低電気負荷のときに生じる。オイルの滞留が生じやすい低負荷時に、オイル戻り制御が実施されるから、オイルの滞留に起因する不具合が顕著に抑制される。
【0043】
さらに、冷却器31a、32aは、電池40に直接的に接触して電池40の熱を奪っている。このような直接方式の冷却器31a、32aは、水または空気など二次媒体を介して電池40を冷却する間接方式の冷却器より、高い圧力損失を生じる。この結果、直接方式の冷却器は、オイルの滞留を生じやすい。この実施形態では、直接方式の冷却器に対してオイル戻り制御を適用するから、冷凍サイクルに使用されるオイルの多くを戻すことができる。
【0044】
電池冷却用冷凍サイクル装置は、電池40を冷却する複数の並列系統31、32を含む冷凍サイクル10を備える。さらに、温度制御部としてのステップ151は、電池40の温度を調節するように複数の並列系統31、32に流れる冷媒流量を制御する。さらに、オイル戻し制御部としてのステップ152は、複数の並列系統のうちの一部に流れる冷媒流量を、ステップ151によって流される冷媒流量より増加させる。このステップ152は、同時に、複数の並列系統31、32のうちの残部に流れる冷媒流量を維持するか減少させる。これにより、複数の並列系統31、32のうちの一部に滞留したオイルが押し流される。
【0045】
よって、電池冷却用冷凍サイクル装置によると、温度制御部によって、電池40の温度を調節することができる。しかも、複数の並列系統31、32のうちの一部にオイルが滞留しても、滞留したオイルを押し流すことができる。このため、冷凍サイクル10を循環する全体の冷媒流量を増加させることなく、一部の並列系統31(または32)におけるオイルを押し流すことができる。よって、冷凍サイクルの動力消費を増大させずに、滞留したオイルに起因する不具合を抑制することができる。
【0046】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、複数の冷却器は、ひとつまたは一群の電池を冷却する。これに代えて、この実施形態では、ひとつの冷却器は、ひとつまたは一群の電池を冷却する。
【0047】
図5において、冷却器231aは、冷却器31aに相当する。冷却器232aは、冷却器32aに相当する。よって、並列系統31は、冷却器231aを有する。並列系統32は、冷却器231aを有する。
【0048】
冷却器231aは、一群の電池41を冷却する。冷却器231aは、他群の電池42を冷却しない。ひとつの冷却器231aは、ひとつのセル電池45または1群の群電池41を冷却する。
【0049】
冷却器232aは、一群の電池42を冷却する。冷却器232aは、他群の電池41を冷却しない。ひとつの冷却器232aは、ひとつのセル電池45または1群の群電池42を冷却する。
【0050】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、冷凍サイクル10が運転されている間中にわたってオイル戻し制御が提供される。これに代えて、オイル戻し制御は、実施条件が満足された場合にだけ実施されてもよい。
【0051】
図6において、冷凍サイクル10を制御する制御装置15のための制御処理350が図示されている。制御処理350は、制御装置15によって実行される。制御処理350は、実施条件が成立したか否かを判定するステップ353を有する。ステップ353は、実施条件が成立したか否かを判定する判定部を提供する。制御装置15は、ステップ353において、実施条件が成立した場合、ステップ152に分岐する。制御装置15は、ステップ353において、実施条件が成立していない場合、ステップ151に分岐する。
【0052】
実施条件は、多様な条件を利用できる。実施条件は、例えば、冷却器31a、32aに滞留オイルを生じやすい運転状態においてのみ、オイル戻り運転を実施するように設定することができる。実施条件は、例えば、外気温度が低い低熱負荷、または電池40の充放電が少ない低電池負荷においては、冷媒流量が絞られるから、滞留オイルが生じやすい。よって、低熱負荷、および/または低電池負荷において、オイル戻り運転を実施してもよい。
【0053】
実施条件は、例えば、所定期間または所定時間にわたって冷凍サイクル10が継続運転された場合に成立するように設定することができる。実施条件は、例えば、冷凍サイクル10の継続運転時間が所定の閾値時間を上回った場合に成立するように設定することができる。実施条件は、例えば、所定の冷凍サイクル10の運転状態が発生した場合に成立するように設定することができる。
【0054】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、1種類のオイル戻し運転が提供される。これに代えて、電池冷却用冷凍サイクル装置は、第1オイル戻し運転と、第2オイル戻し運転とを提供してもよい。第1オイル戻し運転と、第2オイル戻し運転とは、予定されたオイル戻し量の差によって特徴付けられる。第1オイル戻し運転は、例えば、オイル戻しの効果に関して、第2オイル戻し運転より弱い。つまり、第2オイル戻し運転によるオイル戻し量は、第1オイル戻し運転によるオイル戻し量より少ない。よって、第1オイル戻し制御は、弱制御とも呼ばれる。第2オイル戻し制御は、強制御とも呼ばれる。複数の電気膨張弁は、それぞれを異なる任意の開度に制御できる。第1オイル戻し制御と、第2オイル戻し制御との差は、複数の電気膨張弁のそれぞれの開度が、互いに異なり、しかも温度フィードバックで与えられる開度とは異なる開度に強制的に制御されることによって与えられる。
【0055】
図7において、制御処理450が図示されている。この処理では、強いオイル戻し制御を実施するための第2実施条件が成立していると、第2オイル戻し運転が実施される。弱いオイル戻し制御を実施するための第1実施条件が成立していると、第2オイル戻し運転が実施される。
【0056】
ステップ453aでは、制御装置15は、第2実施条件が成立しているか否かを判定する。第2実施条件が成立している場合、ステップ452aに進む。第2実施条件が成立していない場合、ステップ453bに進む。ステップ453bでは、制御装置15は、第1実施条件が成立しているか否かを判定する。第1実施条件が成立している場合、ステップ452bに進む。第1実施条件が成立していない場合、151に進む。ステップ453aとステップ453bとは、判定部を提供している。
【0057】
ステップ452aでは、制御装置15は、第2オイル戻し制御を実施し、相対的に強いオイル戻し運転を実施する。ステップ452bでは、制御装置15は、第1オイル戻し制御を実施し、相対的に弱いオイル戻し運転を実施する。ステップ452aとステップ452bとは、オイル戻し制御を実施するオイル戻し部を提供している。
【0058】
第1オイル戻し制御では、上述の実施形態と同じオイル戻し制御が実施される。第2オイル戻し制御では、第1オイル戻し制御より強く滞留オイルを押し流すオイル戻し制御が実施される。第2オイル戻し制御において、例えば、一方の並列系統にだけ冷媒を流すように流量調節部である電気膨張弁31a、32aが制御される。
【0059】
この実施形態によると、ステップ453aと、ステップ453bとによって判定部が提供される。判定部は、第1オイル戻し制御だけを実施できるか、第1オイル戻し制御より強くオイルを戻す第2オイル戻し制御を実施できるか、または、第1オイル戻し制御および第2オイル戻し制御を実施できないかを判定する。さらに、ステップ452aとステップ452bとによって、オイル戻し制御部が提供される。ステップ452bは、判定部によって第1オイル戻し制御だけを実施できると判定した場合に、第1オイル戻し制御を実施する第1オイル戻し制御部を有する。さらに、ステップ452aは、判定部によって第2オイル戻し制御を実施できると判定した場合に、第2オイル戻し制御を実施する第2オイル戻し制御部を有する。
【0060】
図8において、第1オイル戻し運転は、例えば、複数の並列系統31、32に冷媒流量の差を与える。第1オイル戻し運転は、先行する実施形態のオイル戻し運転と同じである。よって、第1の並列系統31が通常の温度フィードバック制御されているときに、第2の並列系統32は冷媒流量を増やすように強制制御される。温度フィードバック制御と、強制制御とは、交互に実行される。
【0061】
第2オイル戻し運転は、例えば、第1オイル戻し運転における冷媒流量の差よりも大きい冷媒流量の差を与える。この大きい差は、複数の電気膨張弁の開度を、それぞれ異なる開度に制御することによって提供される。または、第2オイル戻し運転は、例えば、電池冷却系統30の全体を対象に実施される。これにより、電池冷却系統30の全体から滞留オイルがコンプレッサへ向けて押し流される。例えば、複数の並列系統31、32の合流部において、第1オイル戻し運転で逆流した滞留オイルも、第2オイル戻し運転で、押し流される。
【0062】
具体的に、第1オイル戻し運転は、複数の並列系統31、32の一方だけを温度制御を停止してオイル戻しのために制御する。第2オイル戻し運転は、複数の並列系統31、32のすべての温度制御を停止して、複数の並列系統31、32のひとつだけにオイル戻しのために冷媒を流す。オイル戻しの対象となるひとつの並列系統は、複数の並列系統の中で順に切り換えられる。
【0063】
第2オイル戻し運転は、例えば、一方の並列系統31への冷媒流量を増加させるように電気膨張弁31bを開度Ptに開き、他方の並列系統32への冷媒流量を減少または停止させるように電気膨張弁32bを0(ゼロ)に閉じる。この場合、冷媒は、オイル戻しの対象となっている一方の並列系統31だけに集中する。この結果、一方の並列系統31の冷媒流量が、第1オイル戻し制御で得られる冷媒流量より多くなる。よって、一方の並列系統31の滞留オイルが強力に押し流される。このような第2オイル戻し運転は、冷却能力の大幅な低下を生じる。しかし、電池冷却用冷凍サイクルの場合、空気を対象とする空調と比べて、電池40の熱容量が大きく、温度変化が比較的遅いから、利用することができる。
【0064】
この第2オイル戻し運転は、コンプレッサ12の大流量を要することなく、電池冷却系統30の滞留オイルを抑制することができる。また、第1および第2のオイル戻し制御は、温度制御の中間期間(t2−t3、t42−t43)を介在させて反復される。よって、電池40の温度が過剰に上昇する事態が抑制される。第2オイル戻し運転は、他の実施形態におけるオイル戻し運転として提供されてもよい。
【0065】
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、冷凍サイクル10によって、空調系統20と、電池冷却系統30とを提供している。これに代えて、冷凍サイクル10は、電池冷却系統30だけを提供してもよい。追加的に、または、代替的に、並列系統31、32の数は、3以上のn個でもよい。
【0066】
図9において、冷凍サイクル10は、電池冷却系統30だけを提供する。電池冷却系統30のための専用の冷凍サイクル10は、電池の温度制御の精度を高めるために貢献する。
【0067】
乗り物用冷凍サイクル装置1は、空調用冷凍サイクル520(REF)を有する。空調用冷凍サイクル520は、空調系統を提供するため専用である。これにより、電池冷却系統30は、空調との相互関係を抑制して、電池40の温度を調節することができる。特に、空調系統におけるオイル戻りへの配慮を抑制できる。この実施形態によると、電池冷却系統30における複数の並列系統のためのオイル戻り運転を実施できる。例えば、空調のための空気温度制御に影響を与えることなく、オイル戻り運転を実施できる。
【0068】
電池冷却系統30は、2つの並列系統31、32に加えて、さらに、すくなくともひとつの並列系統3nを有する。すなわち、並列系統は、3個以上の並列系統31、32、・・・3nを備えることができる。
【0069】
第6実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、複数の電気膨張弁31b、32bだけで、オイル戻しのための冷媒流量を提供している。これに加えて、複数の並列系統31、32に冷媒流量の差を与えるために、開閉弁631d、632dを有するバイパス通路を設けてもよい。開閉弁631d、632dは、電磁弁によって提供することができる。
【0070】
図10において、電池冷却系統30は、複数の並列系統31、32を有する。第1の並列系統31は、電気膨張弁31bをバイパスする開閉弁631dを有する。開閉弁631dは、電気膨張弁31bをバイパスするバイパス通路を提供する。開閉弁631dは、電気膨張弁31bの最大開度と等しいか、より大きい全開開度を提供する。開閉弁631dは、電気膨張弁31bの最小開度より小さい全閉開度を提供する。よって、開閉弁631dが全閉であるとき、電気膨張弁31bは、フィードバック制御される。第1の並列系統31がオイル戻し運転されるとき、電気膨張弁31bの開度にかかわらず、開閉弁631dは、全開される。これにより、滞留オイルを押し流す冷媒が流される。
【0071】
第2の並列系統32は、電気膨張弁32bをバイパスする開閉弁632dを有する。開閉弁632dは、電気膨張弁32bをバイパスするバイパス通路を提供する。開閉弁632dは、電気膨張弁32bの最大開度と等しいか、より大きい全開開度を提供する。開閉弁632dは、電気膨張弁32bの最小開度より小さい全閉開度を提供する。よって、開閉弁632dが全閉であるとき、電気膨張弁32bは、フィードバック制御される。第2の並列系統32がオイル戻し運転されるとき、電気膨張弁32bの開度にかかわらず、開閉弁632dは、全開される。これにより、滞留オイルを押し流す冷媒が流される。
【0072】
複数の開閉弁631d、632dは、複数の並列系統31、32の少なくともひとつの通路を開き、残る少なくともひとつの通路を閉じるか、絞るように制御される。よって、前者の通路の冷媒流量が増え、後者の通路の冷媒流量が減る。複数の並列系統31、32の少なくともひとつに流れる冷媒量が増える。これにより、滞留オイルが押し流される。冷媒流量が増える通路は、滞留オイルの偏りを抑制するように、交互に、または順に入れ替えられる。よって、流量調節弁は、電気膨張弁31b、32bを含む。さらに、流量調節弁は、開閉弁631d、632dを含む場合がある。
【0073】
この実施形態でも、電池冷却系統30における滞留オイルが抑制される。この結果、コンプレッサ12におけるオイル戻りが改善される。また、滞留オイルに起因する冷却器31a、32aの性能低下が抑制される。さらに、複数の並列系統31、32における電気式膨張弁31b、32bの制御を変えることなく、追加的な開閉弁631d、632dによって、オイル戻し運転を提供できる。
【0074】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、電池冷却系統30における複数の冷却器31a、32a、3naは、電池40を直接的に冷却している。これに代えて、複数の冷却器31a、32a、3naと電池40との間に、二次的な熱伝達系統を介在させてもよい。二次的な熱伝達系統は、例えば、水、不凍液、オイルなどの二次媒体と、二次媒体を循環させる循環系統とによって提供される。さらに、循環系統は、冷却器31a、32a、3naと二次媒体とを熱交換させる熱交換器と、電池と二次媒体とを熱交換させる熱交換器とを有する。このような二次的な熱伝達系統を備える場合にも、コンプレッサ12における動力消費を過度に増加させることなく、滞留オイルを抑制することができる。