特許第6984442号(P6984442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984442基板、電子装置、及び基板の設計支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984442
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】基板、電子装置、及び基板の設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20211213BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H05K3/46 N
   H05K3/46 Z
   H05K3/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-10921(P2018-10921)
(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公開番号】特開2019-129262(P2019-129262A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹本 貴仁
【審査官】 黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−076564(JP,A)
【文献】 特開2010−062530(JP,A)
【文献】 特開平01−100947(JP,A)
【文献】 特開平09−162516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/00
H05K 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線層を有する基板において、
前記第1の配線層は、
複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方のビアの接続部が、前記第1の配線層の本体と前記少なくとも一方のビアの接続部の周囲に開口部を設けることにより形成された導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、基板。
【請求項2】
第1の配線層を有する基板において、
前記第1の配線層は、
複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と複数の導体部を介して接続されるとともに、前記複数の導体部の断面積の総和が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、基板。
【請求項3】
第1の配線層と第2の配線層を有する基板において、
前記第1の配線層は、
複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さく、
前記第2の配線層は、
前記2つのビア以外のビアの少なくとも1つと接続され、前記2つのビアの少なくとも一方が接続されずに挿通する挿通孔が設けられている、基板。
【請求項4】
前記第1の配線層はさらに、
電力供給部にビアを介して接続される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
前記第2の配線層はさらに、
電力供給部にビアを介して接続される、請求項記載の基板。
【請求項6】
前記第1の配線層は、電力供給部から電流が供給される電源層又は前記電流が流れ込むグランド層である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
前記基板は、他の基板に接続され、
前記複数のビアは、前記他の基板に向かって延びる、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板。
【請求項8】
第1の配線層を有する第1の基板と、前記第1の基板に接続される第2の基板とを有する電子装置において、
前記第1の配線層は、
前記第2の基板に向かう複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方のビアの接続部が、前記第1の配線層の本体と前記少なくとも一方のビアの接続部の周囲に開口部を設けることにより形成された導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、電子装置。
【請求項9】
第1の配線層を有し、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方のビアの接続部が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続される基板の設計情報を修正する基板の設計支援方法において、
コンピュータを用いて、
前記第1の配線層から前記複数のビアに流れる電流の大きさを求め、
前記複数のビアのうち、前記電流の大きさが所定値を超えるビアがある場合、前記少なくとも一方のビアの接続部の周囲に設けた開口部により形成される前記導体部の断面積について、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さくすることにより、前記電流の大きさが前記所定値以下になるように前記設計情報を修正する、基板の設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板、電子装置、及び基板の設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のビアが接続された配線層を有する基板において、配線層から複数のビアに向かって電流が流れた場合に、特定のビアに電流が集中して流れることにより、エレクトロマイグレーションによる破断が発生することがある。そこで、特定のビアに電流が集中して流れることを抑制する方法が提案されている。例として、複数のビアのうちの両端のビアとその隣のビアとの間の領域の配線層の電気抵抗を他の領域よりも大きくすることで、両端のビアに電流が集中して流れることを抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、プリント基板に設けられた電源層又はアース層の厚さを信号線である導体回路層よりも厚くすることで、電源の供給能力を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献2)。プリント基板のうちの半導体素子を実装する領域の直下に位置するスルーホール導体のピッチを他の領域に位置するスルーホール導体のピッチよりも小さくすることで、電源供給の遅延を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−62530号公報
【特許文献2】特開2005−167140号公報
【特許文献3】特開2007−180076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば、両端のビアに電流が集中して流れることを抑制できる。しかしながら、配線層の幅を狭めているため電圧降下が問題となること及び両端のビアの隣のビアに電流が集中して流れてしまい複数のビアに電流を分散させることが難しいことが生じる。したがって、別の方法によって、電流が集中して流れるビアの発生を抑制することが好ましい。
【0006】
1つの側面では、電流が集中して流れるビアの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、第1の配線層を有する基板において、前記第1の配線層は、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方のビアの接続部が、前記第1の配線層の本体と前記少なくとも一方のビアの接続部の周囲に開口部を設けることにより形成された導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、基板である。また、1つの態様では、第1の配線層を有する基板において、前記第1の配線層は、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と複数の導体部を介して接続されるとともに、前記複数の導体部の断面積の総和が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、基板である。また、1つの態様では、第1の配線層と第2の配線層を有する基板において、前記第1の配線層は、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さく、前記第2の配線層は、前記2つのビア以外のビアの少なくとも1つと接続され、前記2つのビアの少なくとも一方が接続されずに挿通する挿通孔が設けられている、基板である。
【0008】
1つの態様では、第1の配線層を有する第1の基板と、前記第1の基板に接続される第2の基板とを有する電子装置において、前記第1の配線層は、前記第2の基板に向かう複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方のビアの接続部が、前記第1の配線層の本体と前記少なくとも一方のビアの接続部の周囲に開口部を設けることにより形成された導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、電子装置である。
【0009】
1つの態様では、第1の配線層を有し、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方のビアの接続部が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続される基板の設計情報を修正する基板の設計支援方法において、コンピュータを用いて、前記第1の配線層から前記複数のビアに流れる電流の大きさを求め、前記複数のビアのうち、前記電流の大きさが所定値を超えるビアがある場合、前記少なくとも一方のビアの接続部の周囲に設けた開口部により形成される前記導体部の断面積について、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さくすることにより、前記電流の大きさが前記所定値以下になるように前記設計情報を修正する、基板の設計支援方法である。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面として、電流が集中して流れるビアの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は、実施例1に係る基板の断面図、図1(b)及び図1(c)は、配線層の平面図である。
図2図2(a)は、配線層の一部を拡大した平面図、図2(b)は、図2(a)のA−A間及びB−B間の断面図、図2(c)は、接続部が配線層本体に接する部分の配線層本体の断面図である。
図3図3(a)は、配線層の一部を拡大した平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A間及びB−B間の断面図、図3(c)は、接続部が配線層本体に接する部分の配線層本体の断面図である。
図4図4(a)は、比較例1に係る基板の断面図、図4(b)及び図4(c)は、配線層の平面図である。
図5図5は、比較例1に係る基板のビアを流れる電流を説明するための図である。
図6図6(a)から図6(c)は、比較例1に係る基板の両端のビアに電流が集中して流れる理由を説明するための回路図である。
図7図7(a)は、比較例2に係る基板の断面図、図7(b)及び図7(c)は、配線層の平面図である。
図8図8は、実施例1に係る基板のビアを流れる電流を説明するための図である。
図9図9(a)から図9(c)は、実施例1に係る基板の両端のビアに電流が集中することが抑制される理由を説明するための回路図である。
図10図10(a)は、実施例2に係る基板の断面図、図10(b)から図10(d)は、配線層の平面図である。
図11図11は、配線層の他の例を示す平面図である。
図12図12(a)は、実施例3に係る基板の断面図、図12(b)から図12(d)は、配線層の平面図である。
図13図13は、基板設計支援装置を示すブロック図である。
図14図14は、基板設計支援装置をコンピュータで実現する場合のブロック図である。
図15図15は、実施例4に係る基板の設計支援方法の一例を示すフローチャートである。
図16図16(a)は、実施例5に係る電子装置の断面図、図16(b)及び図16(c)は、配線層の平面図である。
図17図17(a)は、比較例3に係る電子装置の断面図、図17(b)及び図17(c)は、配線層の平面図である。
図18図18(a)は、実施例6に係る電子装置の断面図、図18(b)及び図18(c)は、配線層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(a)は、実施例1に係る基板100の断面図、図1(b)は、配線層11の平面図、図1(c)は、配線層12の平面図である。図1(a)のように、実施例1の基板100は、絶縁膜に複数の配線層が形成されたプリント基板であり、絶縁膜10と、配線層11及び12と、ビア13a〜13d、14、及び15と、を備える。絶縁膜10は、例えばエポキシ又はポリイミドなどの樹脂材料或いは酸化アルミニウムなどのセラミック材料で形成されている。配線層11及び12とビア13a〜13d、14、及び15とは、例えば金又は銅などの金属で形成されている。
【0014】
配線層11は、一端側がビア14を介して、基板100に設けられた電力供給部1に電気的に接続されている。電力供給部1は、例えばDC−DCコンバータであるが、その他の場合でもよい。配線層12は、一端側がビア15を介して、基板100に設けられた電子部品2に電気的に接続されている。電子部品2は、例えばLSI(Large Scale Integration)などの半導体部品であるが、その他の場合でもよい。
【0015】
配線層11の他端側と配線層12の他端側とは、配線層11及び12の積層方向で絶縁膜10を介して重なっている。すなわち、配線層11の他端側の端16から所定の長さの部分と配線層12の他端側の端17から所定の長さの部分とは、配線層11及び12の積層方向で絶縁膜10を介して重なって重複領域18となっている。配線層11及び12は、重複領域18から互いに反対方向に延びている。
【0016】
ビア13a〜13dは、重複領域18で配線層11及び12の間の絶縁膜10を貫通して設けられている。ビア13a〜13dは、配線層11の配線方向に沿って配線層11の端16から一直線上に並び且つ配線層12の配線方向に沿って配線層12の端17から一直線上に並んで設けられている。配線層11が電力供給部1に接続されていることから、電流は、配線層11からビア13a〜13dを介して配線層12へと流れて、配線層12に接続された電子部品2に供給される。ビア13a〜13dのうちのビア13aが電流の流れの最も上流側に位置し、ビア13b、13c、13dの順に下流側に位置している。
【0017】
図1(b)のように、ビア13a〜13dが配線層11に接続する部分をそれぞれ接続部21a〜21dとする。ビア14が配線層11に接続する部分を接続部25とする。配線層11は、配線層本体22と導体部23とを含む。導体部23は、接続部21a及び21dの周囲の配線層本体22に開口部24が設けられることで形成されている。開口部24は、例えば配線層本体22を貫通して設けられている。したがって、接続部21a及び21dは、導体部23を介して配線層本体22に接続されている。一方、接続部21b及び21cの周囲には開口部24が設けられていない。したがって、接続部21b及び21cは、その周囲全体が配線層本体22に直接接続されている。
【0018】
図1(c)のように、ビア13a〜13dが配線層12に接続する部分をそれぞれ接続部26a〜26dとする。配線層12は、配線層本体27と導体部28とを含む。導体部28は、接続部26a及び26dの周囲の配線層本体27に開口部29が設けられることで形成されている。開口部29は、例えば配線層本体27を貫通して設けられている。したがって、接続部26a及び26dは、導体部28を介して配線層本体27に接続されている。一方、接続部26b及び26cの周囲には開口部29が設けられていない。したがって、接続部26b及び26cは、その周囲全体が配線層本体27に直接接続されている。
【0019】
図2(a)は、配線層11の一部を拡大した平面図、図2(b)は、図2(a)のA−A間及びB−B間の断面図、図2(c)は、接続部21b及び21cが配線層本体22に接する部分の配線層本体22の断面図である。ここで、接続部21a〜21dの半径をrとする。配線層11の厚さ、すなわち配線層本体22の厚さ及び導体部23の厚さをt1とする。導体部23の幅をw1とする。この場合、図2(a)から図2(c)のように、導体部23の断面積はw1×t1となる。接続部21b及び21cが配線層本体22に接する部分の配線層本体22の断面積は2πr×t1となる。導体部23の幅w1は、接続部21a〜21dの外周の長さ2πrよりも小さいことから、導体部23の断面積は、接続部21b及び21cが配線層本体22に接する部分の配線層本体22の断面積よりも小さい。接続部21a及び21dは、その周りに位置する4つの導体部23によって完全に囲まれなく、一部が開口部24に接していることから、配線層11とビア13a及び13dとの間の電気抵抗は、配線層11とビア13b及び13cとの間の電気抵抗に比べて高くなっている。
【0020】
図3(a)は、配線層12の一部を拡大した平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A間及びB−B間の断面図、図3(c)は、接続部26b及び26cが配線層本体27に接する部分の配線層本体27の断面図である。ここで、接続部26a〜26dの半径をrとする。配線層12の厚さ、すなわち配線層本体27の厚さ及び導体部28の厚さをt2とする。導体部28の幅をw2とする。この場合、図3(a)から図3(c)のように、導体部28の断面積はw2×t2となる。接続部26b及び26cが配線層本体27に接する部分の配線層本体27の断面積は2πr×t2となる。導体部28の幅w2は、接続部26a〜26dの外周の長さ2πrよりも小さいことから、導体部28の断面積は、接続部26b及び26cが配線層本体27に接する部分の配線層本体27の断面積よりも小さい。接続部26a及び26dは、その周りに位置する4つの導体部28によって完全に囲まれてなく、一部が開口部29に接していることから、配線層12とビア13a及び13dとの間の電気抵抗は、配線層12とビア13b及び13cとの間の電気抵抗に比べて高くなっている。
【0021】
ここで、実施例1の基板の効果を説明するにあたり、比較例の基板について説明する。図4(a)は、比較例1に係る基板1000の断面図、図4(b)は、配線層11の平面図、図4(c)は、配線層12の平面図である。図4(a)から図4(c)のように、比較例1の基板1000では、配線層11には接続部21a及び21dの周囲に開口部24が設けられていない。したがって、接続部21a〜21dは、その周囲全体が配線層本体22に直接接続されている。同様に、配線層12には接続部26a及び26dの周囲に開口部29が設けられていない。したがって、接続部26a〜26dは、その周囲全体が配線層本体27に直接接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0022】
図5は、比較例1に係る基板1000のビア13a〜13dを流れる電流を説明するための図である。図5のように、比較例1の基板1000では、ビア13a〜13dのうちの両端のビア13a及び13dに電流が集中して流れる。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0023】
すなわち、図4(a)のように、電力供給部1からの電流が流れる配線層11に、ビア13a〜13dを介して配線層12が接続されることで、電流が流れる経路として配線層12が追加されることになる。配線層12に電流を流すために、配線層11での電流の流れの最上流側に位置するビア13aに電流が集中して流れるようになると考えられる。配線層11での電流の流れの最下流側に位置するビア13dでは、配線層11がなくなることで電流の流れる経路が減少するため、ビア13dに電流が集中して流れるようになると考えられる。また、別の観点によれば、ビア13aは、電流の経路が配線層11の1経路から並列に接続された配線層11及び12の2経路に変化する変化点である。ビア13dは、電流の経路が並列に接続された配線層11及び12の2経路から配線層12の1経路に変化する変化点である。このような変化点では、電流経路全体での抵抗が大きく変化する。このために、ビア13a及び13dに電流が集中して流れるようになると考えられる。ビア13a及び13dに電流が集中して流れることで、ビア13a及び13dの電流密度が高くなってエレクトロマイグレーションによる破断が生じることがある。
【0024】
図6(a)から図6(c)は、比較例1に係る基板1000の両端のビア13a及び13dに電流が集中して流れる理由を説明するための回路図である。なお、図6(a)から図6(c)では、説明の簡略化のために、配線層11と配線層12は3つのビア13a、13c及び13dで接続されているとする。図6(a)のように、配線層11の電気抵抗をR、配線層12の電気抵抗をR、ビア13a、13c、及び13dの電気抵抗をRとする。配線層11を流れていた電流Iが、ビア13aの接続点で電流Iと電流Iに分かれて流れるようになるとする。ビア13cを流れる電流をIとする。図6(b)のように、配線層11の電気抵抗Rとビア13dの電気抵抗R、及び、配線層12の電気抵抗Rとビア13aの電気抵抗Rを合成するとブリッジ回路となる。図6(b)の破線よりも左側の部分を書き換えると図6(c)のようになる。
【0025】
この場合、電流I及び電流Iは数1のようになる。
【数1】
【0026】
ビア13cの両端の電圧V、Vは数2のようになる。
【数2】
【0027】
したがって、ビア13cを流れる電流Iは数3のようになる。
【数3】
【0028】
ここで、複数のビアが並列に接続されていることから、ビア3a、13c、及び13dの電気抵抗Rは、配線層11及び12の電気抵抗R及びRに比べて十分に小さいとする。この場合、電流I、I、及びIは数4のようになる。
【数4】
【0029】
数4のように、電流I及びIは、電気抵抗Rと電気抵抗Rとの間の比率で決まるのに対し、電流Iは、電気抵抗Rと電気抵抗R及びRとの間の比率で決まる。上述したように、電気抵抗Rは電気抵抗R及びRに比べて十分に小さいことから、ビア13cを流れる電流Iは、ビア13aを流れる電流Iよりも小さくなる。また、同様のことが、ビア13dに対しても起こり、ビア13cを流れる電流Iは、ビア13dを流れる電流よりも小さくなる。このようなことから、配線層11を流れる電流の最上流側のビア13aと最下流側のビア13dとに電流が集中して流れるようになると考えられる。
【0030】
図7(a)は、比較例2に係る基板1100の断面図、図7(b)は、配線層11の平面図、図7(c)は、配線層12の平面図である。図7(a)から図7(c)のように、比較例2の基板1100では、配線層11には接続部21a及び21dの周囲に開口部24が設けられていなく、且つ、配線層12には接続部26a及び26dの周囲に開口部29が設けられていない。その代わりに、配線層11は、接続部21cと接続部21dの間の領域の配線層本体22の幅がその他の領域の配線層本体22の幅に比べて狭くなっている。配線層12は、接続部26aと接続部26bの間の領域の配線層本体27の幅がその他の領域の配線層本体27の幅に比べて狭くなっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0031】
比較例2では、接続部21cと接続部21dの間の配線層本体22の幅が狭くなり、接続部26aと接続部26bの間の配線層本体27の幅が狭くなっている。これにより、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることを抑制できる。しかしながら、配線層本体22及び27の幅を狭めているため電圧降下が問題となることがある。
【0032】
なお、配線層を厚くしたり、配線層間を接続する複数のビアのうちの両端以外のビアの径を大きくしたり、配線層間を接続するビアの数を増やしたりしても、両端のビアに電流が集中して流れることを抑制するのは難しい。
【0033】
図8は、実施例1に係る基板100のビア13a〜13dを流れる電流を説明するための図である。図8のように、実施例1の基板100では、ビア13a〜13dに電流が分散して流れ、両端のビア13a及び13dに電流が集中して流れることが抑制される。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0034】
すなわち、図1(b)のように、接続部21a〜21dのうちの両端の接続部21a及び21dは導体部23を介して配線層本体22に接続され、両端以外の接続部21b及び21cはその全周が配線層本体22に直接接続されている。図2(a)から図2(c)のように、導体部23の断面積は、接続部21b及び21cが配線層本体22に接する部分の配線層本体22の断面積よりも小さくなっている。これにより、配線層11とビア13a及び13dとの間の電気抵抗が高くなり、ビア13a及び13dに電流が流れ込み難くなると考えられる。よって、ビア13a及び13dを流れる電流が減少し、ビア13b及び13cを流れる電流が増加すると考えられる。したがって、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることが抑制され、ビア13a〜13dに電流が分散して流れるようになると考えられる。
【0035】
また、図1(c)のように、接続部26a〜26dのうちの両端の接続部26a及び26dは導体部28を介して配線層本体27に接続され、両端以外の接続部26b及び26cはその全周が配線層本体27に直接接続されている。図3(a)から図3(c)のように、導体部28の断面積は、接続部26b及び26cが配線層本体27に接する部分の配線層本体27の断面積よりも小さくなっている。これにより、配線層12とビア13a及び13dとの間の電気抵抗が高くなり、ビア13a及び13dに電流が更に流れ込み難くなると考えられる。よって、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることを更に抑制できると考えられる。
【0036】
図9(a)から図9(c)は、実施例1に係る基板100の両端のビア13a及び13dに電流が集中することが抑制される理由を説明するための回路図である。なお、図9(a)から図9(c)では、説明の簡略化のために、配線層11と配線層12は3つのビア13a、13c、及び13dで接続されているとする。図9(a)のように、配線層11の電気抵抗をR、配線層12の電気抵抗をR、ビア13cの電気抵抗をR、ビア13a及び13dの電気抵抗をRよりも高いRV1(RV1=R+R)とする。なお、Rは、接続部21a及び21dが導体部23を介して配線層本体22に接続されることによって配線層11とビア13a及び13dとの間で増加した抵抗分である。配線層11を流れていた電流Iが、ビア13aの接続点で電流Iと電流Iに分かれて流れるようになるとする。ビア13cを流れる電流をIとする。図9(b)のように、配線層11の電気抵抗Rとビア13dの電気抵抗RV1、及び、配線層12の電気抵抗Rとビア13aの電気抵抗RV1を合成するとブリッジ回路となる。図9(b)の破線よりも左側の部分を書き換えると図9(c)のようになる。
【0037】
この場合、電流I及びIは数5のようになる。
【数5】
【0038】
ここで、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることが抑制されて、数5のI=Iとなる場合を考えると、ビア13a及び13dの電気抵抗RV1は数6のようになる。
【数6】
【0039】
したがって、数6の式を満たすように、接続部21a及び21bと配線層本体22との間を接続する導体部23の断面積を調整する。これにより、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることが抑制され、複数のビアに電流が分散するようになると考えられる。
【0040】
実施例1によれば、図1(b)のように、接続部21a〜21dのうちの配線層11の両端部側に位置する接続部21a及び21dが導体部23を介して配線層本体22に接続されている。図2(a)から図2(c)のように、配線層11は、導体部23の断面積(w1×t1)が両端以外の接続部21b及び21cが配線層11に接する部分の断面積(2πr×t1)よりも小さくなっている。これにより、図8及び図9で説明したように、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることを抑制できる。つまり、電流が集中して流れるビアの発生を抑制できる。また、比較例2では配線層11の幅を狭めていたため電圧降下が大きくなることがあるが、実施例1では配線層11の幅を狭めていないため、電圧降下が大きくなることも抑制できる。
【0041】
また、図1(b)のように、配線層11において、両端の接続部21a及び21dはそれぞれ、複数の導体部23を介して配線層本体22に接続されている。この場合、接続部21a及び21dそれぞれにおける複数の導体部23の断面積の総和は、接続部21b及び21cが配線層11に接する部分の断面積よりも小さくなっていればよい。なお、両端の接続部21a及び21dは、1つの導体部23を介して配線層本体22に接続されている場合でもよい。
【0042】
また、図1(c)のように、接続部26a〜26dのうちの配線層12の両端部側に位置する接続部26a及び26dが導体部28を介して配線層本体27に接続されている。図3(a)から図3(c)のように、配線層12は、導体部28の断面積(w2×t2)が両端以外の接続部26b及び26cが配線層12に接する部分の断面積(2πr×t2)よりも小さくなっている。これにより、図8で説明したように、ビア13a及び13dに電流が集中して流れることを更に抑制できる。
【0043】
また、図1(c)のように、配線層12において、両端の接続部26a及び26dはそれぞれ、複数の導体部28を介して配線層本体27に接続されている。この場合、接続部26a及び26dそれぞれにおける複数の導体部28の断面積の総和は、接続部26b及び26cが配線層12に接する部分の断面積よりも小さくなっていればよい。なお、両端の接続部26a及び26dは、1つの導体部28を介して配線層本体27に接続されている場合でもよい。
【0044】
図1(b)のように、導体部23は、接続部21a及び21dの周囲に開口部24を設けることで形成されている。これにより、両端の接続部21a及び21dに接続する導体部23の断面積が、両端以外の接続部21b及び21cが配線層11に接する部分の断面積よりも小さい配線層11を容易に得ることができる。同様に、図1(c)のように、導体部28は、接続部26a及び26dの周囲に開口部29を設けることで形成されている。これにより、両端の接続部26a及び26dに接続する導体部28の断面積が、両端以外の接続部26b及び26cが配線層12に接する部分の断面積よりも小さい配線層12を容易に得ることができる。
【0045】
図1(a)のように、配線層11は、ビア14を介して電力供給部1に接続されている。すなわち、配線層11及び12は、電力供給部1から電流が供給される電源層である。配線層11及び12が電源層である場合、配線層11及び12に大きな電流が流れるため、両端のビア13a及び13dに電流が集中して流れると破断が起こり易い。したがって、配線層11が電源層である場合に、接続部21a及び21dを配線層本体22に導体部23を介して接続させることが好ましい。なお、配線層11及び12は、電子部品2から接地電位が与えられ、グランドに向かって電流が流れ込むグランド層の場合でもよい。
【0046】
実施例1では、図1(b)のように、両端の接続部21a及び21dの両方が導体部23を介して配線層本体22に接続されている場合を例に示した。しかしながら、接続部21a及び21dの少なくとも一方が導体部23を介して配線層本体22に接続されている場合でもよい。これにより、ビア13a及び13dの少なくとも一方において電流が集中して流れることを抑制できる。同様に、図1(c)のように、両端の接続部26a及び26dの両方が導体部28を介して配線層本体27に接続されている場合を例に示したが、接続部26a及び26dの少なくとも一方が導体部28を介して配線層本体27に接続されている場合でもよい。これにより、ビア13a及び13dの少なくとも一方において電流が集中して流れることを更に抑制できる。
【実施例2】
【0047】
図10(a)は、実施例2に係る基板200の断面図、図10(b)は、配線層11の平面図、図10(c)は、配線層31の平面図、図10(d)は、配線層12の平面図である。図10(a)から図10(d)のように、実施例2の基板200では、絶縁膜10内に配線層11及び12に加えて、配線層31が設けられている。配線層31は、ビア14からビア13dを越えて延びて設けられている。配線層31は、ビア13a及び13dが接続されずに挿通する挿通孔33が設けられている。また、ビア13b及び13cが配線層31に接続する接続部32b及び32cの周囲には開口部が設けられてなく、接続部32b及び32cはその周囲全体が配線層31に接続されている。なお、ビア14が配線層31に接続する部分を接続部35とする。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0048】
実施例2によれば、ビア13a〜13dのうちのビア13b及び13cと接続され、且つ、両端のビア13a及び13dが接続されずに挿通する挿通孔33が設けられた配線層31を有する。これにより、電流が流れ難いビア13b及び13cに流れる電流を増加させることができる。ビア13a〜13dを流れる電流の総量は変わらないことから、ビア13b及び13cを流れる電流が増えることで、電流が集中して流れ易いビア13a及び13dを流れる電流を効果的に減少させることができる。
【0049】
また、図10(a)のように、配線層31はビア14を介して電力供給部1に接続されている。上述したように、配線層11が電源層である場合、両端のビア13a及び13dに電流が集中すると破断が起こり易い。しかしながら、配線層31を設けることでビア13a及び13dを流れる電流を効果的に減少させることができるため、配線層11が電源層である場合でも、ビア13a及び13dに破断が生じることを効果的に抑制できる。
【0050】
なお、配線層31は、両端以外のビア13b及び13cの両方に接続されている場合を例に示したが、少なくとも一方と接続されていればよい。また、配線層31は、両端のビア13a及び13dの両方が接続されずに挿通する2つの挿通孔33が設けられている場合を例に示したが、ビア13a及び13dの少なくとも一方が接続されずに挿通する挿通孔33が設けられていればよい。図11は、配線層31の他の例を示す平面図である。図11のように、配線層31は、ビア14からビア13bと13cの間まで延びて設けられ、ビア13bに接続部32bで接続するとともに、ビア13aが接続されずに挿通する挿通孔33が設けられている場合でもよい。
【実施例3】
【0051】
図12(a)は、実施例3に係る基板300の断面図、図12(b)は、配線層41の平面図、図12(c)は、配線層11の平面図、図12(d)は、配線層12の平面図である。図12(a)から図12(d)のように、実施例3の基板300では、絶縁膜10内に配線層11及び12に加えて、配線層41が設けられている。配線層41は、ビア13a及び13bに接続され、且つ、ビア13c、13d、及び14などの絶縁膜10に設けられたその他のビアには接続されていない。ビア13a及び13bが配線層41に接続する部分を接続部42a及び42bとすると、接続部42a及び42bはその周囲全体が配線層41に接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0052】
実施例3によれば、両端のビアのうちの電流の流れの上流側に位置するビア13aと両端以外のビア13b及び13cのうちの少なくとも1つのビア13bとに接続され且つその他のビアには接続されていない配線層41を有する。配線層41にビア13bが接続する接続部42bはビア13aが接続する接続部42aよりも下流側に位置するため、接続部42bは接続部42aよりも電位が低い。このため、配線層41を設けることで、ビア13aを流れる電流の一部がビア13bに流れるようになる。よって、電流が集中するビアの発生を効果的に抑制することができる。
【実施例4】
【0053】
実施例4では、基板の設計支援方法について説明する。図13は、基板設計支援装置を示すブロック図である。図13のように、基板設計支援装置400にはCADシステムなどの図形処理システムから基板の設計情報402が入力される。基板設計支援装置400は、解析部404、判定部406、修正部408、及び表示部410を備える。
【0054】
図14は、基板設計支援装置をコンピュータで実現する場合のブロック図である。コンピュータ420は、CPU422、メモリ424、及び不揮発性の記憶部426を備える。CPU422、メモリ424、及び記憶部426は、バス428を介して互いに接続されている。また、コンピュータ420は、ディスプレイ430、キーボード432、及びマウス434を備え、ディスプレイ430、キーボード432、及びマウス434はバス428を介して互いに接続されている。また、コンピュータ420は、コンピュータネットワークなどに接続するためのインターフェース(I/O)438、及び記憶媒体が挿入され、挿入された記憶媒体に対して読み書きするための装置(R/W)436がバス428に接続されている。なお、記憶部426は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリなどである。
【0055】
記憶部426には、コンピュータ420を基板設計支援装置400として機能させるための基板設計支援プログラム440が記憶されている。基板設計支援プログラム440は、解析プロセス442、判定プロセス444、及び修正プロセス446を含んでいる。CPU422が、基板設計支援プログラム440を記憶部426から読み出してメモリ424に展開し、基板設計支援プログラム440が有するプロセスを実行することで、コンピュータ420は図13に示す基板設計支援装置400として動作する。また、CPU422が解析プロセス442を実行することで、コンピュータ420は図13に示す解析部404として動作し、CPU422が判定プロセス444を実行することで、コンピュータ420は図13に示す判定部406として動作する。また、CPU422が修正プロセス446を実行することで、コンピュータ420は図13に示す修正部408として動作する。
【0056】
記憶部426には、コンピュータ420を、プリント基板などを設計する際に使用されるCADシステムなどの図形処理システムとして機能させるためのCADプログラムが記憶されている。また、記憶部426は、コンピュータ420を図形処理システムとして機能させて作成された設計情報としてのCADファイルを記憶することができる。
【0057】
図15は、実施例4に係る基板の設計支援方法の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、実施例1の基板100を設計する場合を例に説明する。図15のように、まず、CPU422は、ステップS10において、基板の設計情報を含むCADファイルを取得し、基板の配線について初期状態の配線の設計情報を取得する。初期状態の配線の設計情報とは、例えば、図1(a)から図1(c)における配線層11及び12並びにビア13a〜13dの設計情報である。
【0058】
次いで、CPU422は、ステップS12に移行して、配線層11からビア13a〜13dに向かって流れる電流値を求める。ビア13a〜13dを流れる電流値の算出は、例えば節点解析法などを用いてもよい。配線層11からビア13a〜13dに流れる電流の総量としては、例えば基板100の使用状態において流れる電流の最大総量を用いてもよい。
【0059】
次いで、CPU422は、ステップS14に移行して、ビア13a〜13dにおいて電流値が所定値を超えるビアがあるか否かを判定する。所定値とは、例えばビアにエレクトロマイグレーションが発生するか否かの閾値となる電流値であり、記憶部426に記憶されている。なお、実施例1で説明したように、両端のビア13a及び13dに電流が集中することから、両端のビア13a及び13dの電流値が所定値を超えることが想定される。
【0060】
電流値が所定値を超えるビアがある場合(ステップS14:Yes)、ステップS16に進む。ステップS16では、CPU422は、配線層11において接続部21a及び21dに接続する導体部23の断面積が小さくなるように、配線層11の設計情報を修正する。例えば、CPU422は、導体部23の幅を狭めることで導体部23の断面積が小さくなるように、配線層11の設計情報を修正する。なお、配線層11の設計情報を修正することに加えて、配線層12において接続部26a及び26dに接続する導体部28の断面積が小さくなるように、配線層12の設計情報を修正してもよい。
【0061】
ステップS16を行った後、CPU422は、ステップS12に移行して、ビア13a〜13dを流れる電流値を再び求める。電流値が所定値を超えるビアの存在が解消できていない場合(ステップS14:Yes)、再度ステップS16に進む。ステップS16において、CPU422は、導体部23の断面積が更に小さくなるように、配線層11の設計情報を修正する。ビア13a〜13dの全ての電流値が所定値以下に収まるまで、ステップS12〜S16を繰り返し行う。
【0062】
ビア13a〜13dの全ての電流値が所定値以下になったと判定した場合(ステップS14:No)、CPU422は、ステップS18に移行し、このときの配線の設計情報を記憶部426に記憶すると共にディスプレイ430に表示して、本処理を終了する。
【0063】
実施例4によれば、図15のように、配線層11からビア13a〜13dに流れる電流の大きさを求める(ステップS12)そして、ビア13a〜13dのうち電流の大きさが所定値を超えるビアがある場合(ステップS14:Yes)、ビア13a〜13dを流れる電流の大きさが所定値以下になるように基板100の設計情報を修正する(ステップS16)。具体的には、接続部21a及び21dが接続する導体部23の断面積を接続部21b及び21cが配線層11に接する部分の断面積よりも小さくすることで、ビア13a〜13dを流れる電流の大きさが所定値以下になるように基板100の設計情報を修正する。これにより、電流が集中して流れるビアの発生を抑制することができる。
【0064】
なお、実施例5において、ビア13a〜13dを流れる電流の大きさが所定値以下になるように、実施例2で説明した配線層31及び実施例3で説明した配線層41の少なくとも一方を追加するように基板の設計情報を修正してもよい。
【0065】
なお、図15のフローチャートにおける基板の設計支援方法をコンピュータ420により実現する場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。上記で説明した要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行ってもよい。また、上記では、プログラムが記憶部426に予め記憶されている場合を例に示したが、この場合に限られず、CD−ROM又はDVD−ROMなどの記憶媒体に記憶されている形態で提供することも可能である。
【実施例5】
【0066】
図16(a)は、実施例5に係る電子装置500の断面図、図16(b)は、基板510の配線層51の平面図、図16(c)は、基板520の配線層61の平面図である。図16(a)のように、実施例5の電子装置500は、基板520が接続部材70a〜70dによって基板510に実装されている。接続部材70a〜70dは、例えば半田などのバンプである。
【0067】
基板510は、絶縁膜に1又は複数の配線層が形成されたプリント基板であり、絶縁膜50と、配線層51と、ビア52a〜52d及び53と、を備える。配線層51とビア52a〜52d及び53とは、絶縁膜50内に設けられている。配線層51は、一端側はビア53に接続され、他端側はビア52dを越えて延びている。配線層51は、ビア53を介して基板510に設けられた電力供給部1に電気的に接続されている。ビア52a〜52dは、配線層51の配線方向に沿って一直線上に並んで設けられている。絶縁膜50は、例えばエポキシ又はポリイミドなどの樹脂材料或いは酸化アルミニウムなどのセラミック材料で形成されている。配線層51とビア52a〜52d及び53とは、例えば金又は銅などの金属で形成されている。
【0068】
図16(b)のように、ビア52a〜52dが配線層51に接続する部分をそれぞれ接続部54a〜54dとする。配線層51は、配線層本体55と導体部56とを含む。導体部56は、接続部54a及び54dの周囲の配線層本体55に開口部57が設けられることで形成されている。開口部57は、例えば配線層本体55を貫通して設けられている。したがって、接続部54a及び54dは、導体部56を介して配線層本体55に接続されている。一方、接続部54b及び54cの周囲には開口部57が設けられていない。したがって、接続部54b及び54cは、その周囲全体が配線層本体55に直接接続されている。実施例1の配線層11及び12と同様に、導体部56の断面積は、接続部54b及び54cが配線層本体55に接する部分の配線層本体55の断面積よりも小さくなっている。したがって、配線層51とビア52a及び52dとの間の電気抵抗は、配線層51とビア52b及び52cとの間の電気抵抗に比べて高くなっている。なお、ビア53が配線層51に接続する部分を接続部58としている。
【0069】
図16(a)のように、基板520は、絶縁膜に1又は複数の配線層が形成されたプリント基板であり、絶縁膜60と、配線層61と、ビア62a〜62d及び63と、を備える。配線層61とビア62a〜62d及び63とは、絶縁膜60内に設けられている。配線層61は、ビア63を介して基板520に設けられた電子部品2に電気的に接続されている。ビア62a〜62dは、配線層61の配線方向に沿って一直線上に並んで設けられている。絶縁膜60は、例えばエポキシ又はポリイミドなどの樹脂材料或いは酸化アルミニウムなどのセラミック材料で形成されている。配線層61とビア62a〜62d及び63とは、例えば金又は銅などの金属で形成されている。なお、基板520は、プリント基板の場合に限られず、例えばトランジスタなどの半導体素子が形成された半導体基板であってもよい。
【0070】
図16(c)のように、ビア62a〜62dが配線層61に接続する部分をそれぞれ接続部64a〜64dとする。配線層61は、配線層本体65と導体部66とを含む。導体部66は、接続部64a及び64dの周囲の配線層本体65に開口部67が設けられることで形成されている。開口部67は、例えば配線層本体65を貫通して設けられている。したがって、接続部64a及び64dは、導体部66を介して配線層本体65に接続されている。一方、接続部64b及び64cの周囲には開口部67が設けられていない。したがって、接続部64b及び64cは、その周囲全体が配線層本体65に直接接続されている。実施例1の配線層11及び12と同様に、導体部66の断面積は、接続部64b及び64cが配線層本体65に接する部分の配線層本体65の断面積よりも小さくなっている。したがって、配線層61とビア62a及び62dとの間の電気抵抗は、配線層61とビア62b及び62cとの間の電気抵抗に比べて高くなっている。
【0071】
図16(a)のように、基板510のビア52a〜52dと基板520のビア62a〜62dとが接続部材70a〜70dによって接続されている。これにより、基板520が基板510に実装されている。接続部材70a〜70dは、配線層51及び配線層61の配線方向に沿って一直線上に並んでいる。配線層51が電力供給部1に接続されていることから、電流は、配線層51からビア52a〜52d、接続部材70a〜70d、及びビア62a〜62dに向かって流れる。ビア52a〜52d、接続部材70a〜70d、及びビア62a〜62dを流れる電流は配線層61へと流れ、配線層61に接続された電子部品2に供給される。
【0072】
図17(a)は、比較例3に係る電子装置1300の断面図、図17(b)は、基板510の配線層51の平面図、図17(c)は、基板520の配線層61の平面図である。図17(a)から図17(c)のように、比較例3の電子装置1300では、基板510の配線層51には接続部54a及び54dの周囲に開口部57が設けられてなく、基板520の配線層61には接続部64a及び64dの周囲に開口部67が設けられていない。その他の構成は、実施例6と同じであるため説明を省略する。
【0073】
比較例3の電子装置1300では、比較例1の基板1000と同様の理由から、端のビア52aから接続部材70aを介してビア62aに流れる電流、及び、端のビア52dから接続部材70dを介してビア62dに流れる電流が大きくなる。
【0074】
一方、実施例5によれば、図16(b)のように、接続部54a〜54dのうちの配線層51の両端部側に位置する接続部54a及び54dが導体部56を介して配線層本体55に接続されている。配線層51は、導体部56の断面積が両端以外の接続部54b及び54cが配線層51に接する部分の断面積よりも小さくなっている。これにより、実施例1で説明した理由と同様の理由から、配線層51からビア52a及び52dに電流が流れ込み難くなる。よって、電流が集中して流れるビア及び接続部材の発生を抑制できる。したがって、ビア及び接続部材にエレクトロマイグレーションによる破断が生じることを抑制できる。
【0075】
実施例5において、実施例2のように、基板510に配線層31が形成されていてもよい。実施例3のように、基板510に配線層41が形成されていてもよい。これにより、電流が集中して流れるビアの発生を効果的に抑制することができる。
【0076】
実施例5では、図16(b)のように、両端の接続部54a及び54dの両方が導体部56を介して配線層本体55に接続されている場合を例に示した。しかしながら、接続部54a及び54dの少なくとも一方が導体部56を介して配線層本体55に接続されていればよい。これにより、電流が集中して流れるビア及び接続部材の発生を抑制できる。同様に、図16(c)のように、両端の接続部64a及び64dの両方が導体部66を介して配線層本体65に接続されている場合を例に示したが、接続部64a及び64dの少なくとも一方が導体部66を介して配線層本体65に接続されていればよい。これにより、電流が集中して流れるビア及び接続部材の発生を更に抑制できる。
【実施例6】
【0077】
図18(a)は、実施例6に係る電子装置600の断面図、図18(b)は、基板510の配線層51a、51b、及び71の平面図、図18(c)は、基板520の配線層81及び61aの平面図である。図18(a)から図18(c)のように、実施例6の電子装置600では、基板510は絶縁膜50内に配線層51a、51b、及び71が積層され、基板520は絶縁膜60内に配線層61a及び81が積層されている。
【0078】
基板510の配線層51aでは、ビア52a、52b、52d、52eが接続する接続部54a、54b、54d、54eは導体部56を介して配線層本体55に接続されている。ビア52cが接続する接続部54cは周囲全体が配線層本体55に直接接続されている。配線層51bでは、ビア52a及び52eが接続する接続部54a及び54eは導体部56を介して配線層本体55に接続されている。ビア52b〜52dが接続する接続部54b〜54dは周囲全体が配線層本体55に直接接続されている。配線層71では、ビア52a〜52eが接続する接続部74a〜74eの全ては周囲全体が配線層本体75に直接接続されている。なお、ビア53が配線層71に接続する部分を接続部78とする。
【0079】
基板520の配線層81では、ビア62a〜62eが接続する接続部84a〜84eの全ては周囲全体が配線層本体85に直接接続されている。配線層61aでは、ビア62a及び62eが接続する接続部64a及び64eは導体部66を介して配線層本体65に接続されている。ビア62b〜62dが接続する接続部64b〜64dは周囲全体が配線層本体65に直接接続されている。
【0080】
実施例6によれば、基板510のビア52a〜52eは、両端のビア52a及び52eから内側のビアに向かって配線層51a、51b、及び71との接続面積の合計が段々と大きくなっている。これにより、ビア52a〜52eに電流が効果的に分散されて流れるようにすることができる。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0082】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)第1の配線層を有する基板において、前記第1の配線層は、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、基板。
(付記2)前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する前記2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と複数の前記導体部を介して接続されるとともに、前記複数の導体部の断面積の総和が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、付記1記載の基板。
(付記3)前記導体部は、対応するビアの接続部の周囲に開口部を設けることにより形成される、付記1又は2に記載の基板。
(付記4)前記第1の配線層はさらに、電力供給部にビアを介して接続される、付記1〜3のいずれか一項に記載の基板。
(付記5)前記基板はさらに、前記2つのビア以外のビアの少なくとも1つと接続され、前記2つのビアの少なくとも一方が接続されずに挿通する挿通孔が設けられた第2の配線層を有する、付記1〜4のいずれか一項に記載の基板。
(付記6)前記第2の配線層はさらに、電力供給部にビアを介して接続される、付記5記載の基板。
(付記7)前記第1の配線層は、電力供給部から電流が供給される電源層又は前記電流が流れ込むグランド層である、付記1〜6のいずれか一項に記載の基板。
(付記8)前記基板は、他の基板に接続され、前記複数のビアは、前記他の基板に向かって延びる、付記1〜7のいずれか一項に記載の基板。
(付記9)前記基板はさらに、前記2つのビアのうちの電流の流れの上流側に位置するビアと前記2つのビア以外のビアの少なくとも1つとに接続され且つその他のビアには接続されていない第3の配線層を有する、付記1から8のいずれか一項に記載の基板。
(付記10)前記基板はさらに、前記複数のビアを介して前記第1の配線層に接続される第4の配線層を有し、前記第4の配線層は、前記複数のビアが前記第4の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第4の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第4の配線層の本体と導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第4の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、付記1から9のいずれか一項に記載の基板。
(付記11)第1の配線層を有する第1の基板と、前記第1の基板に接続される第2の基板とを有する電子装置において、前記第1の配線層は、前記第2の基板に向かう複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続されるとともに、前記導体部の断面積が、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さい、電子装置。
(付記12)第1の配線層を有し、複数のビアが前記第1の配線層にそれぞれ接続する複数の接続部のうち、前記第1の配線層の両端部側にそれぞれ位置する2つのビアの接続部の少なくとも一方が、前記第1の配線層の本体と導体部を介して接続される基板の設計情報を修正する基板の設計支援方法において、コンピュータを用いて、前記第1の配線層から前記複数のビアに流れる電流の大きさを求め、前記複数のビアのうち、前記電流の大きさが所定値を超えるビアがある場合、前記導体部の断面積について、前記2つのビアの接続部以外のビアの接続部が前記第1の配線層に接する部分の断面積よりも小さくすることにより、前記電流の大きさが前記所定値以下になるように前記設計情報を修正する、基板の設計支援方法。
【符号の説明】
【0083】
1 電力供給部
2 電子部品
10 絶縁膜
11、12 配線層
13a〜13d、14、15 ビア
16、17 端
18 重複領域
21a〜21d、25 接続部
22 配線層本体
23 導体部
24 開口部
26a〜26d 接続部
27 配線層本体
28 導体部
29 開口部
31 配線層
32b、32c、35 接続部
33 挿通孔
41 配線層
42a、42b 接続部
50 絶縁膜
51〜51b 配線層
52a〜52e、53 ビア
54a〜54e、58 接続部
55 配線層本体
56 導体部
57 開口部
60 絶縁膜
61、61a 配線層
62a〜62e、63 ビア
64a〜64e 接続部
65 配線層本体
66 導体部
67 開口部
70a〜70e 接続部材
71 配線層
74a〜74e、78 接続部
75 配線層本体
81 配線層
84a〜84e 接続部
85 配線層本体
100〜300 基板
400 基板設計支援装置
420 コンピュータ
500 電子装置
510、520 基板
1000、1100 基板
1300 電子装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図18