(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者が上記ダブルコートについて実験・研究を進めた結果、第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗し、その水洗用の洗浄水が一部残ったまま、第1電着塗膜を熱フローさせると、以下の問題が発生することがわかった。
【0006】
図13(A)は、被塗物101の上の第1電着塗膜102に洗浄水103が付着した状態を示す。この状態で、第1電着塗膜102を熱フローさせると、
図13(B)に示すように、第1電着塗膜102の洗浄水103で濡れた部分と洗浄水が付着していない乾いた部分との境界に凹部104を生ずる。これは、第1電着塗膜102の乾いた部分は熱フロー時の加熱によって速やかに温度が上昇していくが、洗浄水103で濡れた部分は、その洗浄水103が蒸発するまで温度上昇が遅れるためである。つまり、濡れた部分と乾いた部分とに温度差を生じ、その結果、当該両部分の体積収縮量に差を生ずる。乾いた部分の体積収縮量が濡れた部分よりも大きいため、上記境界の位置がほとんど移動しないときは、上記境界部分の第1電着塗膜が乾いた部分の方へ引っ張られ、
図13(C)に示すように、当該境界に対応する部位に比較的深い凹部104を生ずるものである。
【0007】
このような凹部104を生じた状態で2回目の電着塗装が行なわれると、凹部104になった部分は電気抵抗がその周囲よりも低いため、電着塗料が付着しやすくなる。その結果、
図13(D)に示すように、上記濡れた部分と乾いた部分の境界に対応部分の第2電着塗膜105が局部的に厚くなる。つまり、凸部106を生ずる。
【0008】
そうして、自動車ボディのルーフのように、被塗物の略水平になった面では特に、洗浄水が流下せずに表面張力によって部分的に停滞した状態になり易く、上記凹凸の問題が顕著になる。
【0009】
また、上記ダブルコートによって、被塗物の外部に露出している部分の塗膜厚の増大を抑えながら、被塗物の外部に露出していない部分に所望の厚さの電着塗膜を形成することができるようになった反面、従来よりも電着塗膜が薄く形成されるため、前処理である脱脂工程において洗浄仕切れなかった、被塗物の表面に残った汚れや油脂分の上に電着塗膜が形成されるため、該電着塗膜の表面に凹凸が生じやすくなる。
【0010】
このようになると、中塗り及び上塗りが行なわれても、塗装面に平滑性が得られず、或いは、下塗りである電着塗膜の凹凸が中塗り及び上塗りを通して外観に現れ、見映えが悪くなる。
【0011】
さらに、上記ダブルコートでは、電着塗料を2回に分けて被塗物に付着させるため、電着塗装工程の長さが従来の1回電着塗装するものよりも長くなってしまい、電着塗装ライン全体の工程長が長くなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダブルコートにおいて、電着塗膜層に生じる凹凸を抑制しつつ、電着塗装ライン全体の工程長を従来のものと同程度にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、第1の発明では、被塗物における表面の汚れ又は油脂分を除去する脱脂洗浄工程と、上記脱脂洗浄工程後に汚れ又は油脂分が除去された被塗物の表面に化成処理層を形成する化成処理工程と、上記化成処理工程後に上記化成処理層が形成された被塗物の表面に電着塗膜層を形成する電着塗装工程とを備える電着塗装方法であって、上記脱脂洗浄工程は、脱脂溶液を貯留した脱脂槽が予め設けられ、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の被塗物を該脱脂溶液に浸漬させ、該脱脂槽の下部に配置した超音波振動子によって該脱脂溶液を超音波振動させることで該被塗物を脱脂洗浄する脱脂工程を含み、上記電着塗装工程は、第1電着槽において、上記化成処理層が形成された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第1電着塗膜を形成する第1電着工程と、上記第1電着工程後に上記第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗する第1水洗工程と、上記第1水洗工程後に水洗用の洗浄水が停滞する、被塗
物の洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させる洗浄水除去低減工程と、上記洗浄水除去低減工程後に上記洗浄水停滞面上の洗浄水が除去又は低減された被塗物の上記対極に近い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗が、上記対極から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、該第1電着塗膜の熱フローを行う熱フロー工程と、上記熱フロー工程後に第2電着槽において、上記第1電着塗膜に熱フローが施された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第2電着塗膜を形成する第2電着工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、電着塗装工程において、第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗する第1水洗工程と熱フロー工程との間で、水洗用の洗浄水が停滞する、被塗物
の洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させるので、その後に被塗物外表面の第1電着塗膜を熱フローさせたときに、第1電着塗膜の表面に凹部が生ずることを抑制することができる。また、洗浄水停滞面上の洗浄水が完全に除去されずに、一部残る状態であっても、その洗浄水の残存量が少ないから、続く熱フロー工程では、該熱フローのための加熱によって、その洗浄水が速やかに蒸発する。すなわち、熱フロー時において、第1電着塗膜の濡れた部分と乾いた部分との間の体積収縮差が大きい状態が長く続くことはないので、該濡れた部分と乾いた部分との境界に凹部を生ずることが避けられる。仮に凹部が生じたとしても、その凹部は浅いので、熱フロー後に第2電着塗膜が形成されても第2電着塗膜上に大きな凹凸部が生じることを抑制することができる。
【0015】
また、脱脂洗浄工程において、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の被塗物を脱脂溶液に浸漬させ、該脱脂溶液が貯留された脱脂槽の下部に配置した超音波振動子によって該脱脂溶液を超音波振動させることで該被塗物を脱脂洗浄するので、スプレーによる水圧等を用いた洗浄に比べ、例えば被塗物の袋状になった部分の内側等の外部に露出していない部分も、短時間で十分に脱脂洗浄することができる。これによって、後工程の電着塗装工程において、汚れや油脂分により電着塗膜層に生じる凹凸を抑制することができるとともに、脱脂工程の工程長を短縮することができ、ひいてはダブルコートを採用しても電着塗装ライン全体の工程長を従来の電着塗装をするものと同程度にすることができる。
【0016】
第2の発明では、第1の発明において、上記洗浄水除去低減工程は、上記洗浄水停滞面から洗浄水が排除されるように該洗浄水停滞面に気体を吹き付ける工程であることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、被塗物の洗浄水停滞面への気体の吹付けによって洗浄水停滞面の洗浄水を除去又は低減させることができるので、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0018】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記第1水洗工程は、上記第1電着塗膜が形成された被塗物をディップ水洗槽に貯留された洗浄水に浸漬するディップ水洗工程と、上記ディップ水洗工程の前又は後に、上記第1電着塗膜が形成された被塗物に対して洗浄水を吹き付けるスプレー水洗工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ディップ水洗工程及びスプレー水洗工程により第1電着塗膜が形成された被塗物を十分に洗浄するので、次の洗浄水除去低減工程の効果を高め、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0020】
第4の発明では、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、上記熱フロー工程の熱フローは、上記第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を上記被塗物に吹き付けることによって行うことを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、熱フロー工程の熱フローは、第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を被塗物に吹き付けるので、輻射による加熱ではなく、温風による加熱であるから、第1電着塗膜の表面に洗浄水が残っていたとしても、その洗浄水が速やかに除去される。よって、第1電着塗膜の表面に凹部が生ずることを抑制でき、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0022】
第5の発明では、第4の発明において、上記熱フロー工程の熱フローは、上記第1電着槽における上記被塗物の上記対極に近い部位に形成された第1電着塗膜が70℃から100℃に数分間加熱された状態になるように行うことを特徴とする。
【0023】
ところで、熱フローの加熱温度が低い場合、或いは加熱時間が短い場合には、被塗物の対極に近い部位の第1電着塗膜の熱フローが不十分になって、その電気抵抗が十分に上昇しないため、被塗物の対極から遠い部位に所望の厚さの第2電着塗膜を形成する上で不利になる。一方、上記加熱温度が高い場合、或いは加熱時間が長い場合は、被塗物の対極から遠い部位に薄く形成されている第1電着塗膜が熱フローして緻密な塗膜となり、すなわち、電気抵抗が高くなり、この遠い部位への第2電着塗膜の形成に不利になる。
【0024】
上記の構成によれば、熱フロー工程の熱フローは、第1電着槽における被塗物の対極に近い部位に形成された第1電着塗膜が70℃から100℃に数分間加熱された状態になるように行うので、所望の厚さの第2電着塗膜を形成できる。よって、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0025】
第6の発明では、第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、上記電着塗装工程は、上記第2電着工程後に上記第2電着塗膜が形成された被塗物を水洗する第2水洗工程を含み、上記第2水洗工程の後に上記電着塗膜層の表面が洗浄水によって濡れた被塗物を除湿炉に搬入し、該除湿炉内において、該洗浄水を滴下水として滴下しつつ、該除湿炉内に入ってきた空気を取り出して該空気の湿度を下げ、該湿度の下がった空気を除湿炉内に戻すことによって、該除湿炉内の湿度を下げて、該被塗物の表面における洗浄水を乾燥させる除湿工程とを含むことを特徴とする。
【0026】
ところで、電着塗装工程は、第2電着工程の後に第2電着塗膜が形成された被塗物を水洗する第2水洗工程を含んでいて、第2水洗工程の後には、電着塗膜層が形成された被塗物の表面に付着した洗浄水を重力により自然滴下する滴下工程が設けられている。洗浄水が残留した状態の被塗物を次工程の焼付乾燥工程に搬入してしまうと、被塗物の表面に洗浄水が残ったまま電着塗膜層の焼付乾燥が行われるため、該電着塗膜層の表面に凹凸が生じ、結果的に外観不良を発生させてしまう。このため、上記滴下工程では洗浄水を除去するのに十分な工程長を確保して、電着塗膜層の表面に洗浄水を残さないようにする必要があった。
【0027】
上記構成によれば、電着塗膜層が形成された後、洗浄して表面が濡れた被塗物を除湿炉に搬入し、除湿炉内で洗浄水を重力により自然滴下することで、残留した洗浄水の多くを除去できるとともに、除湿炉内に入ってきた空気を取り出して該空気の湿度を下げ、湿度の下がった空気を除湿炉内に戻して除湿炉内の湿度を下げることで、被塗物の表面温度を過度に上昇させることなく、被塗物の表面に付着した水分を緩やかに乾燥させることができる。これにより、残留した洗浄水の跡によって電着塗膜層の表面に生じる凹凸を抑制することができる。
【0028】
また、重力による自然滴下に加えて、除湿炉内の湿度を下げることで被塗物の表面に残留した洗浄水を乾燥させるので、重力による自然滴下のみで洗浄水を除去する場合と比べ、残留した洗浄水を早く除去することができる。よって、滴下工程の工程長を短縮することができ、ひいては電着塗装ライン全体の工程長を従来のものと同程度にすることができる。
【0029】
第7の発明では、第6の発明において、上記除湿炉から取り出した空気を吸熱源とし、上記冷却後の空気を放熱源とするヒートポンプを予め設けておき、上記除湿炉から炉内空気を取り出し、該取り出した空気中の水分の一部が結露水として凝縮されるように、上記ヒートポンプを用いて、該取り出した空気を冷却する工程と、上記ヒートポンプを用いて、上記冷却後の空気を加熱して、上記除湿炉に戻す工程とをさらに含み、上記除湿炉内の空気の冷却及び加熱を行うことを特徴とする。
【0030】
ここで、除湿炉内の空気を外気と交換することで湿度を下げる方法があるが、高温の空気を外部に排出するため、エネルギーのロスが生じてしまう。
【0031】
上記の構成によれば、除湿炉内の空気の冷却及び加熱にヒートポンプを利用して除湿を行うので、エネルギーロスを少なくすることができる。
【0032】
第8の発明では、第7の発明において、上記除湿炉内から排出される上記滴下水及び上記結露水を上記電着塗装工程で用いられる洗浄水に戻すことを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、被塗物に付着した滴下水及び結露水は、外部と遮断された除湿炉内に排出されるので、排出された滴下水及び結露水には、外部から混入するゴミや汚れが含まれておらず、排出された滴下水及び結露水を前工程である電着塗装工程に用いられる洗浄水に戻すことができる。これにより、除湿炉から排出される滴下水及び結露水を再利用することができる。
【0034】
第9の発明では、被塗物における表面の汚れ又は油脂分を除去する脱脂洗浄手段と、上記汚れ又は油脂分が除去された被塗物の表面に化成処理層を形成する化成処理手段と、上記化成処理層が形成された被塗物の表面に電着塗膜層を形成する電着塗装手段とを備える電着塗装装置であって、上記脱脂洗浄手段は、脱脂溶液が貯留された脱脂槽を有し、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の被塗物を該脱脂溶液に浸漬させ、該脱脂槽の下部に配置された超音波振動子によって該脱脂溶液を超音波振動させることで該被塗物を脱脂洗浄する脱脂手段を備え、上記電着塗装手段は、第1電着槽を有し、上記化成処理層が形成された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第1電着塗膜を形成する第1電着手段と、上記第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗する第1水洗手段と、上記第1水洗手段における水洗用の洗浄水が停滞する、被塗物
の洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させる洗浄水除去低減手段と、上記洗浄水停滞面上の洗浄水が除去又は低減された被塗物の上記対極に近い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗が、上記対極から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、該第1電着塗膜の熱フローを行う熱フロー手段と、第2電着槽を有し、上記第1電着塗膜に熱フローが施された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第2電着塗膜を形成する第2電着手段とを備えることを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
第10の発明では、第9の発明において、上記洗浄水除去低減手段は、上記洗浄水停滞面から洗浄水が排除されるように該洗浄水停滞面に気体を吹き付けるブローノズルを備えることを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、第2の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
第11の発明では、第9又は第10の発明において、上記第1水洗手段は、上記第1電着塗膜が形成された被塗物を浸漬する洗浄水を貯留したディップ水洗槽と、上記ディップ水洗槽の前又は後に、上記第1電着塗膜が形成された被塗物に対して洗浄水を吹き付けるスプレーノズルとを備えることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、第3の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
第12の発明では、第9〜第11の発明のいずれか1つにおいて、上記熱フロー手段は、上記洗浄水が除去又は低減された被塗物に上記第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を吹き付ける熱フロー装置を備えることを特徴とする。
【0041】
上記構成によれば、第4の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
第13の発明では、第9〜第12の発明のいずれか1つにおいて、上記電着塗装手段は、上記第2電着塗膜が形成された被塗物を水洗する第2水洗手段をさらに備え、上記第2水洗手段の後に、上記第2水洗手段に設けられた水洗槽から搬出された被塗物に付着した洗浄水を滴下水として滴下しつつ、内部に導入された空気を取り出して、該空気の湿度を下げ、該湿度の下がった空気を内部に戻すことによって内部の湿度を下げて、該被塗物の表面における洗浄水を乾燥させる除湿炉とを備えることを特徴とする。
【0043】
上記構成によれば、第6の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
第14の発明では、第13の発明において、上記除湿炉から空気が導入され、該導入された空気中の水分の一部が結露水として凝縮されるように、該導入された空気を冷却する冷却器と、上記冷却器によって冷却された空気が導入され、該導入された空気を加熱する加熱器と、上記除湿炉内の空気を上記冷却器から上記加熱器を経て上記除湿炉に戻るように循環させる循環路と、上記冷却器と上記加熱器を連絡し、上記冷却器に上記空気を冷却する冷熱を熱交換によって供給し、上記加熱器に上記炉内空気を加熱する温熱を熱交換によって供給するヒートポンプとを備えることを特徴とする。
【0045】
上記構成によれば、第7の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
第15の発明では、第13又は第14の発明において、上記除湿炉から排水された上記滴下水及び上記結露水の汚れを除去するフィルタと、上記第2電着手段に設けられ、上記フィルタを通過した上記滴下水及び上記結露水が上記第2水洗手段に戻された後、上記滴下水及び上記結露水が上記第2水洗手段から上記第2電着手段を経由して導入され、上記滴下水及び上記結露水を含む第2電着手段内の溶液の電着塗料を回収するための限外ろ過装置とを備えることを特徴とする。
【0047】
上記構成によれば、除湿炉から排出された滴下水及び結露水は、外部から混入するゴミや汚れが含まれていないため、滴下水及び結露水に含まれた汚れをフィルタで簡単に除去することができる。そして、フィルタを通過した滴下水及び結露水が第2水洗手段に戻された後、第2水洗手段のオーバーフロー水が第2電着手段に回収され、第2電着手段に設けられた限外ろ過装置により、滴下水及び結露水に含まれる電着塗料を回収し、再利用することができる。
【発明の効果】
【0048】
以上のように、本発明によれば、ダブルコートにおいて、電着塗膜層に生じる凹凸を抑制しつつ、電着塗装ライン全体の工程長を従来のものと同程度にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0051】
図1は、本実施形態に係る電着塗装方法を用いた工程の流れを示す図である。電着塗装装置Eにより電着塗装される被塗物は自動車ボディ1(
図2等参照)である。この電着塗装装置Eは、電着塗装ラインLを備える。この電着塗装ラインLは、上流側から順に、脱脂洗浄エリアAと、化成処理エリアBと、電着塗装エリアCと、焼付乾燥エリアDとを含む。自動車ボディ1は、後述するハンガー式搬送装置によって搬送される。具体的には、自動車ボディ1は、ハンガー45(
図5,
図6,
図8,
図9及び
図12参照)に搭載されて各エリアA,B,C,Dの順に送られる。
【0052】
<脱脂洗浄エリアA>
脱脂洗浄エリアAは、自動車ボディ1の表面の汚れ又は油脂分を除去するためのエリアである。脱脂洗浄エリアAには、
図1に示すように、電着塗装ラインLの上流側から順に、第1水洗ステーションA1、脱脂洗浄ステーションA2、第2水洗ステーションA3が配置されている。
【0053】
第1水洗ステーションA1では、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の自動車ボディ1の水洗が行われる。そのために、第1水洗ステーションA1には、ディップ水洗槽又はスプレーノズル(スプレー水洗装置)が設けられている。自動車ボディ1は、ディップ水洗槽に貯留された洗浄水に浸漬することや、スプレーノズルを用いて洗浄水を吹き付けることによって洗浄される。ディップ水洗槽内又はスプレーノズルから放出される洗浄水の温度は、40℃〜50℃である。このように、常温よりも高い水温で水洗することで、自動車ボディ1の表面に付着した油脂分が除去されやすくなる。
【0054】
脱脂洗浄ステーションA2には、
図2に示すように、第1水洗ステーションA1で水洗された自動車ボディ1が浸漬される、脱脂溶液A12を貯留した脱脂槽A13が設けられている。脱脂槽A13の下部には、複数の超音波振動子A14が配設されている。この超音波振動子A14の超音波振動によって、脱脂溶液A12が振動する。このとき、脱脂溶液A12中に小さな気泡が無数に発生し、この発生した気泡が自動車ボディ1に衝突して破裂する。この際に生じる衝撃波によって自動車ボディ1の表面に付着した汚れや油脂分が引きはがされることで脱脂洗浄が行われる。脱脂槽A13内の脱脂溶液A12の温度は、40℃〜50℃である。超音波振動子A14による脱脂洗浄処理は、1〜2分程度行われる。これにより、自動車ボディ1全体の面積の90%以上の部分の汚れ又は油脂分が洗浄される。なお、本実施形態では、脱脂槽A13及び脱脂槽A13の下部に配設された超音波振動子A14が本発明の脱脂手段に相当する。
【0055】
脱脂溶液A12としては、脱脂槽A13のろ過装置A15で得られるろ液が使用される。そのため、脱脂槽A13には、上流側から順に、ろ過装置A15と、ポンプA16と、スプレーノズルA17とが連結されていて、スプレーノズルA17は、脱脂槽A13内に設けられている。ろ過装置A15では、脱脂溶液A12を遠心分離し、さらにフィルタを通過させて溶液中の油脂分や鉄粉等を除去している。つまり、脱脂溶液A12の無駄を減らすべく、脱脂洗浄に使用された脱脂溶液A12は、ろ過装置A15を通過し油分や鉄粉等が除去され、油分等が除去されたろ液はポンプA16により、スプレーノズルA17を介して脱脂槽A13に供給されている。
【0056】
脱脂槽A13の下流側には、脱脂槽A13で脱脂洗浄された自動車ボディ1に残留する油分や鉄粉等をさらに除去するための傾斜部A18が設けられている。傾斜部A18は、上流側から下流側に向かって上方に傾斜している。傾斜部A18における自動車ボディ1の両側側方には、スプレーノズルA19が配置されている。スプレーノズルA19からは、脱脂溶液A12が供給され、自動車ボディ1に吹き付けられる。なお、自動車ボディ1は、ハンガー45と共に脱脂溶液中に浸漬されるが、
図2では、搬送装置の図示を省略している。
【0057】
第2水洗ステーションA3では、後述する第5水洗ステーションC6と同様に、脱脂洗浄ステーションA2で脱脂洗浄された自動車ボディ1のディップ水洗、スプレー水洗、ディップ水洗、スプレー水洗が順に行われる。そのために、第1ディップ水洗槽、第1スプレーノズル、第2ディップ水洗槽、第2スプレーノズルが設けられている。
【0058】
<化成処理エリアB>
化成処理エリアBは、汚れ又は油脂分が除去された自動車ボディ1の表面に化成処理層を形成するためのエリアである。化成処理エリアBには、電着塗装ラインLの上流側から順に、表面調整ステーションB1、化成処理ステーションB2、第3水洗ステーションB3が配置されている。
【0059】
表面調整ステーションB1では、次工程における化成処理のための下地調整が行われる。表面調整を行うことによって結晶を緻密にし、耐食性を向上させることができるとともに、化成処理時間も短くすることができる。表面調整ステーションB1には、脱脂洗浄によって汚れ又は油脂分が除去された自動車ボディ1が浸漬される、表面調整溶液を貯留した表面調整槽が設けられている。
【0060】
化成処理ステーションB2では、表面調整された自動車ボディ1の表面に化成処理層が形成される。化成処理ステーションB2には、表面調整された自動車ボディ1が浸漬される、化成溶液を貯留した化成槽(化成手段)が設けられている。化成槽には、化成溶液としてリン酸亜鉛を含む処理液が貯留されている。化成溶液の温度は、約40℃である。自動車ボディ1を化成槽に浸漬してから化成処理層を形成するまでの処理時間は、2〜3分程度である。この化成処理により、自動車ボディ1の表面には、2μm程度の化成処理層が形成される。
【0061】
化成槽には、上流側から順に、ろ過装置と、ポンプとスプレーノズルが連結されていて、スプレーノズルは化成槽内に設けられている。ろ過装置では、重力による沈降もしくは、化成溶液を遠心分離し、さらにフィルタを通過させて溶液中の化成スラッジを除去している。つまり、化成溶液を効率的に利用するべく、化成処理に使用された化成溶液は、ろ過装置を通過し化成スラッジが除去され、化成スラッジが除去されたろ液はポンプにより、スプレーノズルを介して化成槽に供給される。
【0062】
第3水洗ステーションB3には、化成処理層が形成された自動車ボディ1のスプレー水洗とこれに続くディップ水洗とが行われる。そのために、スプレーノズル及びディップ水洗槽が設けられている。自動車ボディ1は、スプレーノズルによって水洗水が吹き付けられることによって洗浄され、次いで、ディップ水洗槽に貯留された洗浄水に浸漬されることによって洗浄される。
【0063】
<電着塗装エリアC>
電着塗装エリアCは、化成処理層が形成された自動車ボディ1の表面に電着塗膜層を形成するためのエリアである。
図3に示す電着塗装エリアCには、電着塗装ラインLの上流側から順に、第1電着ステーションC1、第4水洗ステーションC2、洗浄水除去ステーションC3、熱フローステーションC4、第2電着ステーションC5及び第5水洗ステーションC6が配置されている。
【0064】
第1電着ステーションC1には、化成処理された自動車ボディ1が浸漬される電着塗料9を貯留した第1電着槽11が設けられている。第1電着ステーションC1において、
図4に示すように、第1電着槽11内に浸漬された自動車ボディ1を陰極とし、第1電着槽11内において自動車ボディ1の両側側方及び下側に設けられた対極10を陽極としてカチオン電着塗装が行なわれる。なお、自動車ボディ1は、ハンガー45と共に電着塗料9中に浸漬されるが、
図4では、搬送装置の図示を省略している。また、本実施形態では、自動車ボディ1を陰極とし、対極10を陽極とする第1電着槽11が本発明の第1電着手段に相当する。
【0065】
第4水洗ステーションC2では、第1電着槽11の塗料が電着した自動車ボディ1のディップ水洗とこれに続くスプレー水洗が行なわれる。そのために、ディップ水洗槽12及びスプレーノズル13が設けられている。自動車ボディ1は、ディップ水洗槽12に貯留された洗浄水に浸漬することによって洗浄され、次いで、スプレーノズル13によって洗浄水が吹き付けられて洗浄される。なお、本実施形態では、ディップ水洗槽12及びスプレーノズル13が本発明の第1水洗手段に相当する。
【0066】
上記ディップ水洗及びスプレー水洗の洗浄水としては、第1電着槽11の電着塗料の限外ろ過(以下、「UF」という場合がある。)で得られるUFろ液が使用される。そのために、UF装置14及び該UF装置14で得られるUFろ液を貯留するろ液タンク15が設けられている。電着塗料の損失を減らすべく、ろ液タンク15のUFろ液がスプレーノズル13に供給され、スプレー済みの洗浄液がディップ水洗槽12に回収され、ディップ水洗槽12からのオーバーフロー水が第1電着槽11に回収される。
【0067】
洗浄水除去ステーションC3では、自動車ボディ1の水洗用の洗浄水が停滞する略水平になった洗浄水停滞面であるルーフ1a(
図5〜
図9参照)の洗浄水が非加熱で強制的に除去又は低減される。この洗浄水の除去又低減のために洗浄水除去促進装置8(洗浄水除去低減手段)が設けられている。当該ステーションについては後に詳述する。
【0068】
熱フローステーションC4では、自動車ボディ1の外表面における第1電着槽11の対極10に近い部位に形成された第1電着塗膜が熱フローし、該近い部位の第1電着塗膜の電気抵抗が、自動車ボディ1の内板部など第1電着槽11の対極10から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、自動車ボディ1を加熱する。そのために、塗膜熱フロー装置16(熱フロー手段)が設けられている。塗膜熱フロー装置16は、ヒーター18による温風が供給される温風加熱炉17を備えている。自動車ボディ1が温風加熱炉17を通過する間に、第1電着塗膜を熱フローさせる。塗膜熱フロー装置16の具体的な構成は後に詳述する。
【0069】
第2電着ステーションC5には、熱フローステーションC4を経た自動車ボディ1が浸漬される電着塗料を貯留した、第1電着槽11と同様の第2電着槽21が設けられている。第2電着ステーションC5においても、第1電着ステーションC1と同様に、第2電着槽21内に浸漬された自動車ボディ1を陰極とし、第2電着槽21内に設けられた対極(図示省略)を陽極とするカチオン電着塗装が行なわれる。本実施形態の第2電着槽21の電着塗料は、その成分構成が第1電着槽11の電着塗料と同じであるが、両電着槽11,21の塗料成分が異なるものであってもよい。なお、本実施形態では、自動車ボディ1を陰極とし、対極を陽極とする第2電着槽21が第2電着手段に相当する。
【0070】
第5水洗ステーションC6では、第2電着槽21の塗料が電着した自動車ボディ1に対してスプレー水洗、ディップ水洗、スプレー水洗、ディップ水洗及びスプレー水洗が順に行なわれる。そのために、電着塗装ラインLの上流側から順に、第1〜第3のスプレーノズル22〜24、第1ディップ水洗槽25、第4スプレーノズル26、第2ディップ水洗槽27及び第5スプレーノズル28が設けられている。なお、本実施形態では、第1〜第3のスプレーノズル22〜24、第1ディップ水洗槽25、第4スプレーノズル26、第2ディップ水洗槽27及び第5スプレーノズル28が本発明の第2水洗手段に相当する。
【0071】
第1〜第4のスプレーノズル22〜24,26によるスプレー水洗及び第1ディップ水洗槽25によるディップ水洗では、洗浄水として、第2電着槽21の電着塗料の限外ろ過で得られるUFろ液が使用される。そのために、UF装置31及び該UF装置31で得られるUFろ液を貯留するろ液タンク32が設けられている。また、第2スプレーノズル23及び第3スプレーノズル24各々によるスプレー済みの洗浄液を回収する洗浄液回収タンク33,34が設けられている。一方、第2ディップ水洗槽27によるディップ水洗及び第5スプレーノズル28によるスプレー水洗には工業用水が使用される。
【0072】
電着塗料の損失を減らすべく、ろ液タンク32のUFろ液が第1及び第4の各スプレーノズル22,26に供給される。第4スプレーノズル26によるスプレー済みの洗浄液が第1ディップ水洗槽25に回収される。第1ディップ水洗槽25からのオーバーフロー水は第3スプレーノズル24用の洗浄液回収タンク34に回収される。第3スプレーノズル24には洗浄液回収タンク34の洗浄液が供給され、洗浄液回収タンク34からのオーバーフロー水が第2スプレーノズル23用の洗浄液回収タンク33に回収される。第2スプレーノズル23には洗浄液回収タンク33の洗浄液が供給され、洗浄液回収タンク33からのオーバーフロー水が第2電着槽21に回収される。
【0073】
<洗浄水除去ステーションC3>
自動車ボディ1は、洗浄水除去ステーションC3を含めて全電着塗装装置E内を電着塗装ラインLに沿ってオーバーヘッドコンベア(ハンガー式搬送装置)によって搬送される。この搬送装置は、
図5及び
図6に簡略化して示すように、電着塗装装置Eに沿って延びるガイドレール41と、このガイドレール41にローラ42によって係合し該ガイドレール41に沿って移動する前後のトロリー43,44と、トロリー43,44に吊り下げられ、自動車ボディ1が搭載されるハンガー45とを備えている。
図5において、49はオイルパンである。
【0074】
ハンガー45は、自動車ボディ1を両側から支持するための、前後のトロリー43,44各々にCネック46を介して吊り下げられた前後の門型フレーム47,48を備えている。前後の門型フレーム47,48は連結バー51,52によって連結されている。前後の門型フレーム47,48の下端部には自動車ボディ1を受ける受け部53,54が設けられている。
【0075】
本実施形態では、洗浄水除去ステーションC3の洗浄水除去促進装置8は、気体としてのエアをルーフ1aに向かって吹き付けるエアブロー装置によって構成されている。
図7に示すように、このエアブロー装置は、2つが1組となった3組の、すなわち、計6つのノズル取付管55を備えている。すなわち、自動車ボディ1の搬送方向と直交する水平方向に間隔をおいて配置された左右2つのノズル取付管55が1組となっており、その3組が互いに該搬送方向の前側、中間及び後側に間隔をおいて並んでいる。左右のノズル取付管55に取り付けたノズル(ブローノズル)60がルーフ1aの左部及び右部の洗浄水の除去をそれぞれ担う。
【0076】
ノズル取付管55は、自動車ボディ1がハンガー45の受け部53,54に搭載されて通る場所の上方に配置されている。各ノズル取付管55は、3つのノズル取付部を備え、本実施形態では、
図5に示すように、そのうちの1つのノズル取付部に銅管60aを介してノズル60が取付けられている。各ノズル60は、エアが自動車ボディ1のルーフ1aに吹き付けられるように、エア吹出口が下向きに開口している。
図6に矢符で示すように、本実施形態では、ノズル60が吹き出すエアが、ハンガー45の門型フレーム47,48よりも上側からエアがルーフ1aに向かって吹き付けられる。ルーフ1aに対するエアの吹付け速度はおよそ20m/秒〜25m/秒である。なお、この場合の吹付け速度は、自動車ボディ1を設けない状態で気体を送ったときの、自動車ボディ1が設けられている場合にルーフ1aが存すると想定される位置の気体の流速である。
【0077】
次に、ノズル60にエアを供給するエア配管について説明する。エア源としてのエアコンプレッサー(図示省略)から、洗浄水除去ステーションC3における自動車ボディ搬送路の傍らに第1エア供給管56が延びている。第1エア供給管56は、上記3組のノズル取付管55にエアを供給すべく、3本の第2エア供給管57〜59に分岐している。各第2エア供給管57〜59は、左右のノズル取付管55にエアを供給すべく、第3エア供給管57a〜59a,57b〜59bに分岐している。
【0078】
第1エア供給管56には、手動開閉弁61及び空圧メーター62が設けられている。3本の第2エア供給管57〜59各々には、当該管路の手動開閉弁63、ノズル60へのエアの供給及びその停止を制御する電磁弁64及び空圧メーター65が設けられている。
【0079】
そうして、洗浄水除去促進装置8としてのエアブロー装置は、自動車ボディ1のルーフ1aがノズル60のエア吹出口の前方を通過する間にエアがノズル60に供給され、且つハンガー45の門型フレーム47,48がノズル60のエア吹出口の前方を横切るときにはエアの供給が停止するように、自動車ボディ1の搬送位置に応じて、電磁弁64の作動を制御する制御装置66を備えている。この制御のために、ノズル60のエア吹出口の前方を自動車ボディ1のルーフ1aが通過しているか否かを検出する光学センサ(図示省略)が設けられ、該光学センサの検出信号が上記制御装置66に与えられる。
【0080】
<塗膜熱フロー装置16>
熱フローステーションC4に設けられた塗膜熱フロー装置16は、
図8に示すように、温風加熱炉17の相対する側壁が、内側壁71と外側壁72とよりなる二重壁構造になっている。内側壁71と天井壁73と底壁74とで囲まれたトンネル炉が形成され、該トンネル炉の上部をハンガー式搬送装置のガイドレール41がトンネル炉長手方向に通っている。自動車ボディ1はハンガー45に搭載されてトンネル炉を通過する。
【0081】
トンネル炉の内側壁71と外側壁72との間にヒーター、ブロアモーター及び送風ファンを備えた温風吹出手段76が設けられている。そうして、相対する内側壁71には、ハンガー45に搭載された自動車ボディ1に向けて温風を吹き出すための上段、中段及び下段の各ノズルボックス77,78,79が設けられている。
【0082】
図9に示すように、中段及び下段の各ノズルボックス78,79は、自動車ボディ1の側面に向かって温風を吹き出す複数の縦長スロット状の第1温風吹出口81をトンネル炉長手方向に間隔をおいて備えている。上段のノズルボックス77は、自動車ボディ1の洗浄水停滞面であるルーフ1aを指向して温風を吹き出す筒孔状の第2温風吹出口82を備えている。
【0083】
ここに、第2温風吹出口82からルーフ1aまでの距離は、第1温風吹出口81から自動車ボディ1の側面までの距離よりも遠い。そこで、温風がルーフ1aに確実に到達するように、第2温風吹出口82の温風吹出速度は第1温風吹出口81の温風吹出速度よりも大きく設定されている。また、温風の指向性を高めるべく、第2温風吹出口82は筒孔状に形成されている。第1温風吹出口81及び第2温風吹出口82各々のボディ側面及びルーフ1aに対する温風の吹付け速度は、およそ5m/秒〜15m/秒程度である。
【0084】
内側壁71の上部には、トンネル炉内の加熱されたエアを吸い込んで温風吹出手段76に循環させるためのエア吸込口83が開口している。
【0085】
<焼付乾燥エリアD>
焼付乾燥エリアDは、電着塗膜層が形成された後洗浄された自動車ボディ1の表面に残留した洗浄水を除去し、該自動車ボディ1の表面を加熱して電着塗装膜を硬化させるためのエリアである。焼付乾燥エリアDには、電着塗装ラインLの上流から順に、除湿ステーションD1及び焼付乾燥ステーションD2が配置されている。
【0086】
除湿ステーションD1には、電着塗膜層が形成された後洗浄された自動車ボディ1が搬入される除湿炉D11が設けられている。除湿炉D11では、搬入された自動車ボディ1に付着した洗浄水を滴下水として重力により滴下しつつ、除湿炉D11の外部に設けられた除湿装置を用いて、除湿炉D11内部の湿度を下げることによって自動車ボディ1の表面における洗浄水を乾燥させている。除湿炉D11の具体的構成については、後に詳述する。
【0087】
除湿装置では、外部から除湿炉D11に導入された空気を取り出して、該空気の湿度を下げ、該湿度の下がった空気を除湿炉D11内に戻すことを行っている。具体的には、除湿装置は、
図10に示すように、除湿炉D11から取り出した空気を冷却する前置冷却器D12、前置冷却器D12から取り出した空気をさらに冷却した後、加熱するためのヒートポンプD13、ヒートポンプD13で加熱された空気を加熱する後置加熱器D14、並びに循環用ファンD15が設けられている。除湿炉D11、前置冷却器D12、ヒートポンプD13、後置加熱器D14及び循環用ファンD15は、除湿炉D11から取り出した空気を、前置冷却器D12、ヒートポンプD13、後置加熱器D14及び循環用ファンD15を順に通して除湿炉D11に戻す循環路D16によって接続されている。除湿装置は、温湿度制御システムMを備えている。当該温湿度制御システムMについては、後に詳述する。
【0088】
焼付乾燥ステーションD2には、除湿炉D11において表面に付着した洗浄水が除去された自動車ボディ1が搬入される焼付乾燥炉D21が設けられている。焼付乾燥ステーションD2は、自動車ボディ1の表面に形成された電着塗膜層を硬化乾燥させるためのものである。焼付乾燥炉D21は、除湿炉D11と連結されている。
【0089】
<温湿度制御システムM>
前置冷却器D12では、
図11に示すように、除湿炉D11から導入された空気を屋外冷却塔91で得られる冷水との熱交換によって冷却する。この前置冷却器D12は、除湿炉D11から導入された空気の温度をコントロールするためのものである。
【0090】
ヒートポンプD13は、圧縮機→凝縮器→膨張弁→蒸発器の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式であり、CO2を冷媒とする。ヒートポンプD13の蒸発器が、除湿炉D11から取り出した空気を、該空気中の水分の一部が結露水として凝縮されるように、熱交換によって冷却する冷却器93を構成している。また、ヒートポンプD13の凝縮器が、上記蒸発器で冷却された空気を熱交換によって加熱する加熱器94を構成している。換言すれば、ヒートポンプD13は、除湿炉D11から取り出した空気を吸熱源とし、上記冷却後の空気を放熱源とするヒートポンプになっている。つまり、ヒートポンプD13を用いて、除湿炉D11内の空気の冷却及び加熱が行われている。具体的には、
図11に示すように、ヒートポンプD13の蒸発器で加熱された冷水は送水ポンプ(図示省略)によって冷水タンク92に供給される。冷却器93は、前置冷却器D12から送られる空気を、冷水タンク92から送水ポンプ(図示省略)によって送られる冷水との熱交換によって冷却する。空気の冷却によって生じた結露水は、自動車ボディ1から滴下した滴下水とともに、貯留水として、除湿炉D11内の貯留部96(
図12参照)に排水される。また、ヒートポンプD13の凝縮器で冷却された冷水は、送水ポンプ(図示省略)によって冷水タンク92に供給される。加熱器94は、冷却器93から送られる空気を、冷水タンク92から送水ポンプ(図示省略)によって送られる冷水との熱交換によって加熱する。
【0091】
後置加熱器D14としてはガスバーナーが用いられており、該後置加熱器D14にガス燃料及び外気が供給される。この後置加熱器D14は、操業開始時の除湿炉D11内の空気の早期昇温や除湿炉D11内の温度調整等の必要に応じて利用される。
【0092】
上記構成において、除湿炉D11から取り出された空気は、前置冷却器D12及びヒートポンプD13を用いた冷却器93によって段階的に冷却される。
【0093】
すなわち、除湿炉D11から取り出された空気は、前置冷却器D12により、屋外冷却塔91によって冷却された空気の冷熱を用いて冷却される。例えば、除湿炉D11から取り出された空気の温度が60℃であるとき、その空気が前置冷却器D12によって55.9℃程度まで冷却される。
【0094】
前置冷却器D12で冷却された空気は、ヒートポンプD13を用いた冷却器93によって、該空気中の水分が凝縮する温度、例えば22.8℃程度まで冷却される。この冷却によって空気中の水分の一部が凝縮して除去されることにより、除湿炉D11から取り出されたときに例えば22g/kgであった空気の重量絶対湿度が17.5g/kg程度まで下がる。
【0095】
冷却器93で冷却された空気は、ヒートポンプD13を用いた加熱器94及び後置加熱器D14により段階的に加熱される。すなわち、加熱器94によって73℃程度にまで加熱され、後置加熱器D14によって80℃程度にまで加熱されて除湿炉D11に戻される。この除湿炉D11に戻される空気は、先の冷却・凝縮によって絶対湿度が17.5g/kg程度まで下がっているので、除湿炉D11には乾燥した温風が供給されることになる。
【0096】
本実施形態の除湿炉D11内の温度は、100℃未満であることが好ましい。つまり、除湿炉D11の内部温度が、除湿炉D11内に搬入された自動車ボディ1の表面温度が100℃未満となるように管理されている。自動車ボディ1表面の温度が100℃以上であると、表面に付着した洗浄水が沸騰し、その際生じる気泡により洗浄水の跡が残ってしまうため、好ましくない。よって、除湿炉内に戻される空気の温度は、100℃未満であることが好ましく、78℃〜82℃であることがより好ましい。また、本実施形態の除湿炉内に戻される空気の絶対重量湿度は、25g/kg未満であることが好ましく、22g/kg未満であることがより好ましい。
【0097】
<除湿炉D11>
図12に示すように、除湿ステーションD1で用いられる除湿炉D11の相対する内側壁97には、循環路D16から供給される温風をハンガー45に搭載された自動車ボディ1に向けて吹き出すノズルボックス98が設けられている。内側壁97の上部には、除湿炉D11内の空気を循環路D16に排出するエア吸込口99が開口している。除湿炉D11の壁には断熱材100が設けられている。
【0098】
上記構成において、塗装された自動車ボディ1はハンガー45に搭載されて除湿炉D11に搬入される。除湿炉D11において、自動車ボディ1を搬送しながら、自動車ボディ1の塗膜の乾燥を行なう。除湿炉D11内の空気は、循環用ファンD15の作動により、エア吸込口99から前置冷却器D12を経由してヒートポンプD13の蒸発器(冷却器)に導かれ、該蒸発器によって冷却される。
【0099】
これにより、除湿炉D11から取り出された空気中の水分の一部が凝縮する。この空気の冷却によって生じた結露水が、自動車ボディ1から滴下した滴下水とともに、貯留水として、除湿炉D11の床に設けられた貯留部96に排出される。
【0100】
水分が除去された冷却後の空気は、ヒートポンプD13の凝縮器(加熱器)に導かれ、該凝縮器で加熱される。凝縮器で加熱された空気は、必要に応じて後置加熱器D14でさらに加熱されて、除湿炉D11のノズルボックス98から除湿炉D11内に戻される。すなわち、温風が除湿炉D11内に吹き出す。
【0101】
上記貯留部96に貯留された貯留水は、
図3に示すように、除湿炉D11の外部に設けられたフィルタD17を通過し、第1ディップ水洗槽25に回収される。その後、貯留水は第1ディップ水洗槽25で洗浄液と混合され、洗浄液とともにオーバーフロー水として第2電着槽21に導入されて、UF装置31によって、電着塗料が回収される。
【0102】
<電着塗装方法>
第1水洗ステーションA1において、自動車ボディ1は、ディップ水洗槽の洗浄水中に浸漬された後引き上げられることによりディップ水洗が行われる又は、スプレーノズルから放出するスプレー水を吹き付けられることによりスプレー水洗が行われる。
【0103】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第1水洗ステーションA1から脱脂洗浄ステーションA2に搬送される。脱脂洗浄ステーションA2において、自動車ボディ1が脱脂槽A13の脱脂溶液A12中に浸漬される。脱脂槽A13の下部に配置した超音波振動子A14の超音波によって脱脂溶液A12が振動し、この振動で生じた気泡が自動車ボディ1に衝突して破裂することで、自動車ボディ1を脱脂洗浄する(脱脂工程)。超音波の振動によって自動車ボディ1を脱脂洗浄するので、スプレーによる水圧等を用いた洗浄に比べ、自動車ボディ1の外部に露出していない部分も十分に脱脂洗浄することができる。
【0104】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で脱脂洗浄ステーションA2から第2水洗ステーションA3に搬送される。第2水洗ステーションA3において、自動車ボディ1は、第1ディップ水洗槽の洗浄水中に浸漬して引き上げられることにより、ディップ水洗が行われ、次いで第1スプレーノズルによる洗浄水の吹付けによってスプレー水洗が行われ、次いで第2ディップ水洗槽によるディップ水洗、第2スプレーノズルによるスプレー水洗が順に行われる。
【0105】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第2水洗ステーションA3から表面調整ステーションB1に搬送される。表面調整ステーションB1において、自動車ボディ1は、表面調整槽の表面調整溶液中に浸漬される。これにより、次工程の化成処理のための下地調整が行われる(表面調整工程)。
【0106】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で表面調整ステーションB1から化成処理ステーションB2に搬送される。化成処理ステーションB2において、自動車ボディ1は、化成槽の化成処理溶液中に浸漬される。これによって、自動車ボディ1の表面に化成処理層が形成される(化成工程)。
【0107】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で化成処理ステーションB2から第3水洗ステーションB3に搬送される。第3水洗ステーションB3において、自動車ボディ1は、ディップ水洗槽の洗浄水中に浸漬して引き上げられることにより、ディップ水洗が行われ、次いでスプレーノズルによる洗浄水の吹付けによってスプレー水洗が行われる。
【0108】
第1電着ステーションC1において、
図4に示すように、自動車ボディ1が第1電着槽11の電着塗料9中に浸漬され、自動車ボディ1と対極10との間に直流電圧が印加される(第1電着工程)。これにより、自動車ボディ1の外板部及び内板部に第1電着塗膜が形成される。第1電着塗膜は、外板部のように対極10に近く電流密度が高くなる部位に厚く形成され、内板部のように対極10から遠く電流密度が低くなる部位には薄く形成される。
【0109】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第1電着ステーションC1から第4水洗ステーションC2に搬送される。第4水洗ステーションC2において、自動車ボディ1は、ディップ水洗槽12の洗浄水中に浸漬して引き上げられることにより、ディップ水洗(ディップ水洗工程)が行なわれ、次いでスプレーノズル13による洗浄水の吹付けによってスプレー水洗(スプレー水洗工程)が行なわれる(第1水洗工程)。
【0110】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第4水洗ステーションC2から洗浄水除去ステーションC3に搬送される。洗浄水除去ステーションC3では、自動車ボディ1のルーフ1aが各ノズル60のエア吹出口の前方を通過するときに、当該ノズル60に係る電磁弁64が開となってエアがルーフ1aに吹き付けられる(洗浄水除去低減工程)。このエア吹付けによって、ルーフ1aに停滞している洗浄水の殆どが吹き飛ばされて除去される。従って、続く熱フロー工程において第1電着塗膜に凹部を生ずることを防止する上で有利になる。洗浄水の除去又は低減は、第1電着塗膜の意図しない熱フローを招くことがないように、非加熱で又は低雰囲気で行うことが好ましい。また、ハンガー45のフレーム47,48がノズル60のエア吹出口の前方を通過するときは、エアの吹出が停止する。従って、ハンガー45に付着している油やごみがエアで飛ばされて第1電着塗膜に付着することは避けられる。
【0111】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で洗浄水除去ステーションC3から熱フローステーションC4に搬送され、温風加熱炉17に、すなわち、トンネル炉に搬入される。自動車ボディ1の外板部の第1電着塗膜は、トンネル炉を通過する間に、第1温風吹出口81及び第2温風吹出口82から吹き出される温風によって加熱されて熱フローされる(熱フロー工程)。
【0112】
第1電着塗膜の熱フローは、該第1電着塗膜の焼付け温度(150℃〜180℃)よりも低い温度の温風を自動車ボディ1に吹き付けることによって行う。輻射による加熱ではなく、温風による加熱であるから、第1電着塗膜の表面に洗浄水が残っていたとしても、その洗浄水が速やかに除去されるため、第1電着塗膜の表面に凹部を生じることを防止する上で有利になる。
【0113】
また、第1電着塗膜の熱フローは、例えば、第1電着槽11における自動車ボディ1の対極10に近い部位に形成された第1電着塗膜が70℃から110℃の温度に数分間加熱された状態となるように行うことが好ましい。加熱温度が低い場合、或いは加熱時間が短い場合には、自動車ボディ1の対極10に近い部位の第1電着塗膜の熱フローが不十分になって、その電気抵抗が十分に上昇しないため、自動車ボディ1の対極10から遠い部位に所望の厚さの第2電着塗膜を形成する上で不利になる。一方、上記加熱温度が高い場合、或いは加熱時間が長い場合は、自動車ボディ1の対極10から遠い部位に薄く形成されている第1電着塗膜が熱フローして緻密な塗膜となり、すなわち、電気抵抗が高くなり、この遠い部位への第2電着塗膜の形成に不利になる。
【0114】
第2温風吹出口82の温風はルーフ1aを指向するから、ルーフ1aに洗浄水が残っていても、その洗浄水は速やかに蒸発する。すなわち、ルーフ1aの洗浄水で濡れた部分と乾いた部分との境界が速やかに消失する。従って、ルーフ1aの全面にわたって第1電着塗膜の温度が略均一に上昇していく。そのため、第1電着塗膜に部分的に体積収縮量が異なる部分を生じて局部的な凹部を生ずることが避けられる。
【0115】
第1及び第2温風吹出口81,82の温風は自動車ボディ1の外板部に当てられるから、外板部の第1電着塗膜は熱フローするものの、内板部の第1電着塗膜が受ける熱量は少ない。そのため、内板部の第1電着塗膜は、外板部の第1電着塗膜に比べて、熱フローの程度が軽くなる。外板部からみて内板部の奥まった箇所では殆ど熱フローしない。従って、外板部の第1電着塗膜の電気抵抗が内板部の第1電着塗膜の電気抵抗に比べて高くなる。
【0116】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で熱フローステーションC4から第2電着ステーションC5に搬送される。第2電着ステーションC5では、自動車ボディ1が第2電着槽21の電着塗料中に浸漬され、自動車ボディ1と対極との間に直流電圧が印加される(第2電着工程)。これにより、自動車ボディ1の外板部及び内板部に第2電着塗膜が形成される。この場合、先の熱フローによって、外板部の第1電着塗膜は内板部の第1電着塗膜に比べて電気抵抗が高くなっているから、外板部に比べて内板部の方に第2電着槽21の電着塗料が多く付着する。従って、第2電着槽21の電着塗料中への自動車ボディ1の浸漬時間の調整等により、外板部及び内板部の電着塗膜の厚さ(第1電着塗膜と第2電着塗膜とを合わせた厚さ)を所望の膜厚にコントロールすることが容易になる。
【0117】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第2電着ステーションC5から第5水洗ステーションC6に搬送される。第5水洗ステーションC6において、自動車ボディ1に対して、第1〜第3のスプレーノズル22〜24によるスプレー水洗、第1ディップ水洗槽25によるディップ水洗、第4スプレーノズル26によるスプレー水洗、第2ディップ水洗槽27によるディップ水洗、及び第5スプレーノズル28によるスプレー水洗が順に行なわれる(第2水洗工程)。
【0118】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で、第5水洗ステーションC6から除湿ステーションD1に搬送される。除湿ステーションD1の除湿炉D11内において、自動車ボディ1は搬送されながら、表面に付着した洗浄水が滴下水として重力により滴下される。合わせて除湿炉D11内の空気を取り出して、該取り出した空気を温度湿度制御システムMによって温度を80℃程度且つ重量絶対湿度を22g/kg未満に調整し、該調整した空気を乾燥した温風として自動車ボディ1に当てるよう除湿炉2内に戻す。このように、乾燥した温風を自動車ボディ1に当てながら除湿炉2内の湿度を下げることで、自動車ボディ1の表面に残留した水洗水を緩やかに乾燥除去させている(除湿工程)。
【0119】
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で、除湿ステーションD1から焼付乾燥ステーションD2に搬送される。焼付乾燥ステーションD2の焼付乾燥炉D21内において、自動車ボディ1を100℃以上の焼付温度に加熱することで、自動車ボディ1の表面に形成された第1電薄塗膜及び第2電着塗膜が積層して構成される電着塗膜層を硬化乾燥させる(焼付乾燥工程)。
【0120】
−効果−
電着塗装工程において、第1電着塗膜が形成された自動車ボディ1を水洗する第1水洗工程と熱フロー工程との間で、水洗用の洗浄水が停滞する、被塗物の略水平になった洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させるので、その後に自動車ボディ1外表面の第1電着塗膜を熱フローさせたときに、第1電着塗膜の表面に凹部が生ずることを抑制することができる。また、洗浄水停滞面上の洗浄水が完全に除去されずに、一部残る状態であっても、その洗浄水の残存量が少ないから、続く熱フロー工程では、該熱フローのための加熱によって、その洗浄水が速やかに蒸発する。すなわち、熱フロー時において、第1電着塗膜の濡れた部分と乾いた部分との間の体積収縮差が大きい状態が長く続くことはないので、該濡れた部分と乾いた部分との境界に凹部を生ずることが避けられる。仮に凹部が生じたとしても、その凹部は浅いので、熱フロー後に第2電着塗膜が形成されても第2電着塗膜上に大きな凹凸部が生じることを抑制することができる。
【0121】
また、脱脂洗浄工程において、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の自動車ボディ1を水洗し、該水洗された自動車ボディ1を脱脂溶液A12に浸漬させ、脱脂溶液A12が貯留された脱脂槽A13の下部に配置した超音波振動示A14によって脱脂溶液A12を超音波振動させることで自動車ボディ1を脱脂洗浄するので、スプレーによる水圧等を用いた洗浄に比べ、自動車ボディ1の内板部も、短時間で十分に脱脂洗浄することができる。これによって、後工程の電着塗装工程において、汚れや油脂分により電着塗膜層に生じる凹凸を抑制することができるとともに、 脱脂工程の工程長を短縮することができ、ひいてはダブルコートを採用しても電着塗装ラインL全体の工程長を従来の電着塗装をするものと同程度にすることができる。
【0122】
また、自動車ボディ1のルーフ1aへの気体の吹付けによってルーフ1aの洗浄水を除去又は低減させることができるので、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0123】
また、ディップ水洗工程及びスプレー水洗工程により第1電着塗膜が形成された自動車ボディ1を十分に洗浄するので、次の洗浄水除去低減工程の効果を高め、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0124】
また、熱フロー工程の熱フローは、第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を自動車ボディ1に吹き付けるので、輻射による加熱ではなく、温風による加熱であるから、第1電着塗膜の表面に洗浄水が残っていたとしても、その洗浄水が速やかに除去される。よって、第1電着塗膜の表面に凹部が生ずることを抑制でき、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0125】
ところで、熱フローの加熱温度が低い場合、或いは加熱時間が短い場合には、自動車ボディ1の対極10に近い部位の第1電着塗膜の熱フローが不十分になって、その電気抵抗が十分に上昇しないため、自動車ボディ1の対極10から遠い部位に所望の厚さの第2電着塗膜を形成する上で不利になる。一方、上記加熱温度が高い場合、或いは加熱時間が長い場合は、自動車ボディ1の対極10から遠い部位に薄く形成されている第1電着塗膜が熱フローして緻密な塗膜となり、すなわち、電気抵抗が高くなり、この遠い部位への第2電着塗膜の形成に不利になる。
【0126】
また、熱フロー工程の熱フローは、第1電着槽における自動車ボディ1の対極10に近い部位に形成された第1電着塗膜が70℃から100℃に数分間加熱された状態になるように行うので、所望の厚さの第2電着塗膜を形成できる。よって、電着塗膜層に生じる凹凸をより一層抑制することができる。
【0127】
ところで、第2水洗工程の後には、電着塗膜層が形成された自動車ボディ1の表面に付着した洗浄水を重力により自然滴下する滴下工程が設けられている。洗浄水が残留した状態の自動車ボディ1を次工程の焼付乾燥工程に搬入してしまうと、自動車ボディ1の表面に洗浄水が残ったまま電着塗膜層の焼付乾燥が行われるため、該電着塗膜層の表面に凹凸が生じ、結果的に外観不良を発生させてしまう。このため、上記滴下工程では洗浄水を除去するのに十分な工程長を確保して、電着塗膜層の表面に洗浄水を残さないようにする必要があった。
【0128】
上記によれば、電着塗膜層が形成された後、洗浄して表面が濡れた自動車ボディ1を除湿炉D11に搬入し、除湿炉D11内で洗浄水を重力により自然滴下することで、残留した洗浄水の多くを除去できるとともに、除湿炉D11内に入ってきた空気を取り出して該空気の湿度を下げ、湿度の下がった空気を除湿炉D11内に戻して除湿炉D11内の湿度を下げることで、自動車ボディ1の表面温度を過度に上昇させることなく、自動車ボディ1の表面に付着した水分を緩やかに乾燥させることができる。これにより、残留した洗浄水の跡によって電着塗膜層の表面に生じる凹凸を抑制することができる。
【0129】
また、重力による自然滴下に加えて、除湿炉D11内の湿度を下げることで自動車ボディ1の表面に残留した洗浄水を乾燥させるので、重力による自然滴下のみで洗浄水を除去する場合と比べ、残留した洗浄水を早く除去することができる。よって、滴下工程の工程長を短縮することができ、ひいては電着塗装ラインL全体の工程長を従来のものと同程度にすることができる。
【0130】
ここで、除湿炉D11内の空気を外気と交換することで湿度を下げる方法があるが、高温の空気を外部に排出するため、エネルギーのロスが生じてしまう。
【0131】
上記によれば、除湿炉D11内の空気の冷却及び加熱にヒートポンプを利用して除湿を行うので、エネルギーロスを少なくすることができる。
【0132】
また、自動車ボディ1に付着した滴下水及び結露水は、外部と遮断された除湿炉D11内に排出されるので、排出された滴下水及び結露水には、外部から混入するゴミや汚れが含まれておらず、排出された滴下水及び結露水を前工程である電着塗装工程に用いられる洗浄水に戻すことができる。これにより、除湿炉D11から排出される滴下水及び結露水を再利用することができる。
【0133】
また、除湿炉D11から排出された滴下水及び結露水は、外部から混入するゴミや汚れが含まれていないため、滴下水及び結露水に含まれた汚れをフィルタD17で簡単に除去することができる。そして、フィルタD17を通過した滴下水及び結露水が第1ディップ水洗槽25に戻された後、第1ディップ水洗槽25及び洗浄液回収タンク33,34からのオーバーフロー水が第2電着槽21に回収され、第2電着槽に設けられたUF装置31により、滴下水及び結露水に含まれる電着塗料を回収し、再利用することができる。
【0134】
<その他の実施形態>
自動車ボディ搬送用のハンガーとしては、自動車ボディ1をその片側から支持するC型ハンガーを採用することもできる。この場合、洗浄水除去ステーションC3では、自動車ボディ1を挟んでC型ハンガーの反対側に第2エア供給管57〜59を配置し、該第2エア供給管57〜59から、C型ハンガーの上部フレームが通過する位置と自動車ボディ1のルーフ1aが通過する位置との間の中間位置に向けてエア供給管を延ばし、該中間位置にノズル60を配置することができる。これにより、ノズル60の下をハンガーの上部フレームが通過することがないため、ノズル60の下をルーフ1aが通過するときに、エアをルーフ1aに対して連続的に吹き付けることができる。
【0135】
C型ハンガーを採用するときは、熱フローステーションC4においても、自動車ボディ1を挟んでC型ハンガーの反対側から、C型ハンガーの上部フレームが通過する位置と自動車ボディ1のルーフ1aが通過する位置との間の中間位置に温風吹出管を延設することができる。これにより、ルーフ1aが通過する位置の直上に第2温風吹出口82を下方へ向けて配置することができるから、ルーフ1aに残る洗浄水を速やかに蒸発除去する上で有利になる。
【0136】
また、上記実施形態では、第1電着塗料及び第2電着塗料はその組成が同じであるが、第2電着塗料として第1電着塗料とは異なる組成の電着塗料を採用することもできる。
【0137】
また、上記実施形態では、第1水洗ステーションA1において、ディップ水洗が行われるが、スプレー水洗を採用することもできる。
【0138】
また、上記実施形態では、脱脂洗浄ステーションA2において、複数の超音波振動子A14が配設された脱脂槽A13を用いて脱脂洗浄が行われるが、超音波振動子を備えない脱脂槽を採用することもできる。
【0139】
また、上記実施形態では、洗浄水除去ステーションC3において、エアがルーフ1aに吹き付けられるが、ルーフ1aから洗浄水が除去されればよく、エアを吹き付ける以外の方法を採用することもできる。
【0140】
また、上記実施形態では、洗浄水除去促進装置8における各ノズル取付管55のノズル取付部の1つにノズル60が取り付けられるが、複数のノズル取付部にノズルを取り付けることもできる。
【0141】
また、上記実施形態では、表面調整ステーションB1を設けたが、必要に応じて設けなくてもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、化成処理ステーションB2において、化成溶液としてリン酸亜鉛系の処理液を用いたが、その他の溶液、例えば酸化ジルコニウム系の処理液を採用することもできる。
【0143】
また、上記実施形態では、前置冷却器D12及び後置加熱器D14を設けたが、どちらか一方又はどちらも設けなくてもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、除湿炉D11から排出される貯留水が第1ディップ水洗槽25に回収されたが、回収されなくてもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、自動車ボディの電着塗膜層の乾燥に用いたが、他の塗装品に適用してもよい。