特許第6984465号(P6984465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984465
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】コネクタカバー
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6581 20110101AFI20211213BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20211213BHJP
   H01R 13/73 20060101ALI20211213BHJP
   H01R 13/52 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
   H01R13/6581
   B60R16/02 621J
   H01R13/73 Z
   !H01R13/52 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-20787(P2018-20787)
(22)【出願日】2018年2月8日
(65)【公開番号】特開2019-139898(P2019-139898A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 僚介
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−015124(JP,A)
【文献】 特開2001−309528(JP,A)
【文献】 特開平07−127623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/73
H01R 13/648−13/6597
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに結合される第1コネクタと第2コネクタを含む電力ケーブルコネクタのコネクタカバーであって、
前記電力ケーブルコネクタの少なくとも一部を覆い、電磁ノイズを遮蔽するカバー本体と、
カバー本体に装着されたクリップであって、前記電力ケーブルコネクタを取り付けるために取付対象位置に立設された取付用ボルトに係止して当該コネクタカバーを仮止めする係止爪を有するクリップと、
を有し、
前記クリップは、当該コネクタカバーの仮止め前に前記取付用ボルトに結合して前記電力ケーブルコネクタの前記第1コネクタを固定しているナットを収容する窪みを有する、コネクタカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載された電動機に電力を供給する電力ケーブルのコネクタの少なくとも一部を覆うコネクタカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両駆動用の電動機を備えた電動自動車において、電動機には電力ケーブルを介してバッテリから電力が供給される。電動機およびバッテリの搭載位置や配置によっては、1本の電力ケーブルで両者を接続することができない場合があり、そのようなときには、2本以上の電力ケーブルを中継点で接続する構成が採用される。中継点において2本の電力ケーブルは電力ケーブルコネクタにより接続される。電力ケーブルコネクタは車体等に固定される。電力ケーブルコネクタからの電磁ノイズを遮蔽するために、電力ケーブルコネクタの少なくとも一部を覆うコネクタカバーが採用される場合がある。
【0003】
下記特許文献1には、パネル状取付部(P)に取り付けられるコネクタ(C)が示されている。コネクタ(C)は、クリップ(13)を有する雄側コネクタハウジング(10)と、割り込み部(34)を有する雌側コネクタハウジング(30)を含む。クリップ(13)は、1対の撓み係止片(14)からなる。コネクタ(C)を取り付ける際には、まず、クリップ(13)をパネル取付部材(P)の取付孔(H)に差し込み、雄側コネクタハウジング(10)を仮組みする。次に、雄側コネクタハウジング(10)に雌側コネクタハウジング(30)を嵌合させる。このとき、雌側コネクタハウジング(30)の割り込み部(34)がクリップ(13)の1対の撓み係止片(14)の間に割り込み、1対の撓み係止片(14)を拡開し、コネクタ(C)のパネル取付部材(P)からの離脱が阻止される。なお、上記の( )内の符号は、下記特許文献1で用いられている符号であり、本発明の実施の形態で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−184510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1においては、コネクタを取り付ける箇所に取付孔を設ける必要があり、加工工程が増加する。
【0006】
本発明は、コネクタカバーを取り付けるに際し、あらかじめ取付位置に取付孔をあけることなく、仮止め可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力ケーブルコネクタのコネクタカバーは、互いに結合される第1コネクタと第2コネクタを含む電力ケーブルコネクタの少なくとも一部を覆い、電磁ノイズを遮蔽するカバー本体と、カバー本体に装着されたクリップであって、前記電力ケーブルコネクタを取り付けるために取付対象位置に立設された取付用ボルトに係止して当該コネクタカバーを仮止めする係止爪を有するクリップと、を有し、クリップは、当該コネクタカバーの仮止め前に取付用ボルトに結合して電力ケーブルコネクタの第1コネクタを固定しているナットを収容する窪みを有する。
【発明の効果】
【0008】
電力ケーブルコネクタを取り付けるために設けられている取付用ボルトを利用してコネクタカバーを仮止めでき、取付孔をあける工程が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】後部に車両駆動用の電動機を搭載した車両の概略構成を示す図である。
図2】フロア下面に取り付けられた電力ケーブルコネクタを示す図である。
図3】コネクタカバーのカバー本体を示す図である。
図4】コネクタカバーのクリップを示す斜視図である。
図5】コネクタカバーのクリップを示す側面、断面組合せ図である。
図6】コネクタカバーのクリップを示す断面図である。
図7】電力ケーブルコネクタの取り付け工程(第1コネクタを台座に固定)の説明図である。
図8】電力ケーブルコネクタの取り付け工程(第2コネクタを第1コネクタに結合)の説明図である。
図9】電力ケーブルコネクタの取り付け工程(コネクタカバーを取り付け)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、後部に車両駆動用の電動機を搭載した車両10の概略構成を示す図である。電動機は、減速歯車列および差動装置を一体としたトランスアクスル12内に設けられている。電動機の動力が左右の後輪14に伝達され、車両を駆動する。トランスアクスル12の前方においては、フロア16の下方に、ガソリンや水素などの燃料のタンクまたはバッテリ、およびこれらに関連する機器18が配置されている。トランスアクスル12内の電動機には、前方に配置されたバッテリ等の電源から電力を供給するための電力ケーブル20が接続されている。電力ケーブル20は、電動機に三相交流電力を供給するために3本の導線を含む。トランスアクスル12内に配置される電動機と外部の電源を接続するためにトランスアクスル12の表面には端子台22が設けられている。端子台22に電力ケーブル20を接続することで、電動機への電力供給が可能となる。端子台22は、上方に向けて配置される必要がある。一方トランスアクスル12の上方にはフロア16が存在し、電力ケーブル20を端子台22に接続する際の障害になる。この車両10では、電力ケーブル20を主ケーブル24と延長ケーブル26に分け、接続作業可能な位置にこれらを接続するための電力ケーブルコネクタ28を配置している。電力ケーブルコネクタ28は、トランスアクスル12とその前方に位置する機器18の間の空間に面するフロア16の下面に固定されている。
【0011】
図2は、電力ケーブルコネクタ28がフロア16の下面に固定されている状態を示す図である。フロア16の下面に台座30が設けられ、台座30に立設された取付用ボルト32,34,36,38(第2コネクタ44およびコネクタカバー46を外した図7参照)に電力ケーブルコネクタ28がナット40(図7,9参照)を用いて締結されている。取付用ボルト32,34,36,38は、溶接等の手法により台座30に固定することができる。主ケーブル24は、フロア16の下面に沿って前方から延び、その端に設けられた第1コネクタ42が台座30に固定されている。延長ケーブル26は、下方から台座30に向けて延び、その端に設けられた第2コネクタ44(図8参照)が、すでに固定されている第1コネクタ42に結合され、台座30に固定されている。第1コネクタ42は、3本の導線にそれぞれ結合された3個のコネクタ端子48(図7参照)を含む。これらのコネクタ端子48を第1コネクタ端子48と記す。第2コネクタ44も、3本の導線にそれぞれ接続された3個のコネクタ端子(不図示)を含む。第2コネクタ44のコネクタ端子を第2コネクタ端子と記す。第1コネクタ42と第2コネクタ44を結合することにより、第1コネクタ端子48と第2コネクタ端子が接続する。これらの端子同士はボルトおよびナットを用いて締結されてもよい。
【0012】
さらに、電力ケーブルコネクタ28の少なくとも一部を覆うようにコネクタカバー46が取付用ボルト36,38を用いて台座30に固定されている。コネクタカバー46は、カバー本体50と、カバー本体50に装着されたクリップ52を含む。カバー本体50は、金属製、例えばアルミニウム製であり、第1コネクタ端子48と第2コネクタ端子の周囲を囲むように覆って、これらの端子およびその周囲から放射される電磁ノイズを遮蔽する。クリップ52は、コネクタカバー46を取り付ける際、仮止めに利用される。クリップ52の機能については後述する。
【0013】
図3は、カバー本体50を示す斜視図であり、カバー本体50が電力ケーブルコネクタ28に装着されたとき、上方から見た状態でカバー本体50を示している。カバー本体50は、第2コネクタ44に被り、接続されている第1コネクタ端子と第2コネクタ端子を覆うドーム部54を有する。ドーム部54の周縁から外側に延びるように2個のカバー固定片56が設けられ、カバー固定片56には、取付用ボルト36,38を通すための貫通孔が設けられている。ドーム部54の周縁にはさらにクリップ受け部58が外側に延びるように設けられている。クリップ受け部58は、略長方形の開口58aを有し、開口58aにクリップ52が嵌まって固定される。
【0014】
図4〜6は、クリップ52を示す図であり、図4は斜視図、図5は断面と側面を組み合わせて示した図、図6図5と直交する断面図である。クリップ52は、合成樹脂製であり、基部60と係止部62を有する。基部60は、角筒形状を有している。基部60は、カバー本体50のクリップ受け部の開口58a内に挿入され、反対側の2側面に備えられた固定爪64により固定される。固定爪64は、図5によく示されるように、くさび形状である。基部60をクリップ受け部の開口58aに挿入する過程でクリップ受け部58から受ける力で固定爪64が内側に撓み、クリップ受け部58の位置を過ぎると撓みが解放される。そして、固定爪64と係止部62の張り出した下面62aとの間でクリップ受け部58を保持し、クリップ52がカバー本体50に装着、固定される。クリップ52の係止部62は、基部60と反対側の面に窪み62bが形成され、その底部には、貫通孔62cが設けられている。窪み62bは、半球面状、球冠状、すり鉢状など、開口が広く奥に向かって狭くなる形状とすることができる。貫通孔62cは、角筒形状の基部60の内部の空間につながっている。貫通孔62cの対面する側面には、対向するように延びる2つの係止爪66が立設されている。係止爪66は、取付用ボルト32,34のねじ部に係止し、これによりコネクタカバー46が仮止めされる。
【0015】
図7〜9は、電力ケーブルコネクタ28の取付工程の説明図である。図7は、第1コネクタ42が台座30に固定された状態を示している。第1コネクタ42は、内側に第1コネクタ端子48が配置された長円断面の筒形状の受容部68と、受容部68の側面に設けられた導線保持部70を有する。導線保持部70は、3本の導線の端部と、この導線端部に結合された第1コネクタ端子48の一端を保持する。受容部68の周縁には、例えば断面の長径方向に沿って互いに反対向きに延びるように設けられた2個の受容部固定片72,74が設けられている。導線保持部70にも、互いに反対向きに延びるように設けられた2個の導線保持部固定片76,78が設けられている。各固定片72,74,76,78には、取付用ボルト32,38,36,34が通るための貫通孔が設けられている。第1コネクタ42は、4個の固定片72,74,76,78の貫通孔に、それぞれ取付用ボルト32,38,36,34を通し、始めに4本の取付用ボルトの内の2本の取付用ボルト32,34にナット40を締結することにより台座30に固定される。第1コネクタ42は、トランスアクスル12を搭載する前に固定することができるので、この固定作業は、両手で行える。
【0016】
図8は、さらに第2コネクタ44を第1コネクタ42に結合した状態を示す図である。第2コネクタ44は、第1コネクタ42の受容部68の内側に挿入されて嵌まる挿入部80と、挿入部80から延びる導線保持部82を有する。挿入部80の中央には、開口が設けられているが、図8では、開口はキャップ84で塞がれている。挿入部80の内部には、第1コネクタ端子48に対向するように第2コネクタ端子が配置され、キャップ84が外れた状態で、第1コネクタ端子48と第2コネクタ端子がボルトにより結合される。挿入部80の周囲にはゴム製のシールリング(不図示)が設けられ、シールリングにより第1コネクタ42の楕円筒形状の受容部68の内壁面と隙間が封止される。導線保持部82は、3本の導線の端部と、この導線端部に結合された第2コネクタ端子の一端を保持する。第2コネクタ44は、さらに固定板86(図2参照)を有しているが、図8においては、他の部品を示すために省略されている。第2コネクタ44は、トランスアクスル12に結合された延長ケーブル26の端に設けられているので、第2コネクタ44を第1コネクタ42に結合する作業は、トランスアクスル12を搭載した後、狭い空間での作業となる。挿入部80を受容部に差し込めば、挿入部80の周囲に設けられたシールリングにより仮止めされるので、片手で作業が可能である。また、キャップ84も、可撓性を利用して、押し込めば挿入部に装着されるようにすることで、片手での装着作業が可能となる。
【0017】
図9は、コネクタカバー46の取り付けに関する説明図である。カバー本体50には、クリップ52が装着されている。コネクタカバー46を下方から台座30に取り付ける。このとき、2個のクリップ52の貫通孔62cに、すでにナット40が結合されている取付用ボルト32,34を通し、2個のカバー固定片56の貫通孔に、まだナット40が結合されていない取付用ボルト36,38を通す。取付用ボルト32,34に結合しているナット40は、クリップ52の窪み62bに収まる。また、クリップ52の係止爪66が取付用ボルト32,34のねじ山に掛かり、コネクタカバー46が仮止めされる。この状態で、コネクタカバー46は、支えなしでも、第1コネクタ42および第2コネクタ44に被さった状態に維持される。コネクタカバー46が仮止めされた状態で、ナット40を取付用ボルト36,38に締結する。これにより、取付用ボルト36が貫通する第1コネクタ42の一方の導線保持部固定片76とコネクタカバー46の一方のカバー固定片56とが共締めされ、また、取付用ボルト38が貫通する第1コネクタ42の一方の受容部固定片74とコネクタカバー46の他方のカバー固定片56とが共締めされ、コネクタカバー46が台座30に固定される。ナット40を取付用ボルト36,38に近づけ、初期のねじ込みを行うことは、片手で作業できる。
【0018】
最後に、固定用ボルト88(図2参照)を用いて、第2コネクタ44の固定板86をコネクタカバー46のねじ穴90にねじ結合して第2コネクタ44をコネクタカバー46を介して台座30に対して固定する。
【0019】
整備などでトランスアクスル12を降ろすときには、上述の搭載時と逆の工程で電力ケーブルコネクタ28を外すことができる。このとき、取付用ボルト36,38に結合しているナット40を外しても、コネクタカバー46は、クリップ52によって仮止め状態にあるので、支えていなくても落下しない。ナット40を取付用ボルト36,38から外した後、コネクタカバー46を下方に引くことで、クリップ52の係止爪66が取付用ボルト36,38のねじ山上をすべり、コネクタカバー46を取り外すことができる。
【0020】
以上のように、コネクタカバー46を着脱する際、これを止めるナット40が取付用ボルト36,38から外れた状態であっても、コネクタカバー46は仮止めされている。このため、コネクタカバー46を支える必要がなく、ナット40を回す片手だけでコネクタカバー46の着脱作業が可能である。また、電力ケーブルコネクタを取り付けるための取付用ボルト36,38を仮止めに利用することで、仮止めのための構成、例えば取付孔をフロア16やその台座30に設ける必要がない。
【符号の説明】
【0021】
10 車両、12 トランスアクスル、14 後輪、16 フロア、18 機器、20 電力ケーブル、22 端子台、24 主ケーブル、26 延長ケーブル、28 電力ケーブルコネクタ、30 台座、32,34 取付用ボルト(第1取付用ボルト)、36,38 取付用ボルト(第2取付用ボルト)、40 ナット、42 第1コネクタ、44 第2コネクタ、46 コネクタカバー、48 第1コネクタ端子、50 カバー本体、52 クリップ、54 ドーム部、56 カバー固定片、58 クリップ受け部、58a 開口、60 基部、62 係止部、62a 下面、62b 窪み、62c 貫通孔、64 固定爪、66 係止爪、68 受容部、70 導線保持部、72,74 受容部固定片、76,78 導線保持部固定片、80 挿入部、82 導線保持部、84 キャップ、86 固定板、88 固定用ボルト、90 ねじ穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9