特許第6984469号(P6984469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984469
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】異種金属板の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/20 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B23K11/20
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-21780(P2018-21780)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-136737(P2019-136737A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 哲弘
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−019569(JP,A)
【文献】 特開2008−073728(JP,A)
【文献】 上田俶完、新家光雄,鉄合金と溶融Alとの反応によって生成する合金層について,日本金属学会誌,1978年,42巻/6号,543-549 ,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinstmet1952/42/6/42_6_543/_article/-char/ja
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの異種金属板同士の接合方法であって、
前記異種金属板として、第1金属からなる第1金属板と、前記第1金属よりも体積抵抗率が高く、かつ、前記第1金属よりも融点が高い第2金属からなる第2金属板と前記第2金属板が載置台に載置された状態で重ね合わせ、前記第2金属板のうち、前記第1金属板に重ね合わせた部分の表面に、一対の電極を接触させる工程と、
前記一対の電極の間に、前記第2金属板を介して電流を通電することにより、前記第2金属の融点よりも低くかつ前記第1金属の融点よりも高い温度に、前記電流が通電する通電領域の前記第2金属を固相状態で抵抗発熱させて、抵抗発熱させた前記第2金属からの熱で、前記第1金属板の表面のうち前記第2金属板側の表面から、前記載置台側に向かって前記第1金属板の一部を溶融し、前記第1金属板と前記第2金属板との間に、前記第1金属と前記第2金属との金属間化合物を生成し、生成した前記金属間化合物を介して前記第1および第2金属板を接合する工程と、を含むことを特徴とする異種金属板の接合方法。
【請求項2】
前記一対の電極を接触させる工程において、前記一対の電極の間に、非導電性材料からなる加圧用部材を配置し、
前記第1および第2金属板を接合する工程において、前記一対の電極の間に配置された前記加圧用部材で前記第2金属板を前記第1金属板に向かって加圧しながら、前記一対の電極間への通電を行うことにより、前記金属化合物の一部を押し出しながら前記第1および第2金属板を接合することを特徴とする請求項1に記載の異種金属板の接合方法。
【請求項3】
前記第1金属板は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板であり、前記第2金属板は、鋼板であることを特徴とする請求項1または2に記載の異種金属板の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積抵抗率の異なる2つの異種金属板同士の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルミニウム合金板と鋼板とを接合する際には、スポット溶接などにより接合することがある。この種のスポット溶接として、例えば、特許文献1には、アルミニウム合金板と鋼板とを重ね合わせて、この重ね合わせた部分に一対の電極を挟み込んで、これらを加圧し、この加圧状態を保持しながら、電極間に電流を通電することにより抵抗スポット溶接を行う、異種金属板の接合方法が提案されている。この接合方法によれば、電極間に電流が通電された際に、アルミニウム合金板と鋼板のうち電流が流れる部分が、これらの電気抵抗により発熱して溶融し、これらが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−152786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す接合方法で、アルミニウム合金板と鋼板のような異種金属板同士を接合する場合、一方の金属板よりも体積抵抗率の低い他方の金属板は、一方の金属板に比べて、通電により発熱し難い。このため、一方の金属板を溶融させるに必要とされる電流値よりも高い電流を通電しなければならない。
【0005】
これにより、これらの異種金属板同士を接合する際には、体積抵抗率の高い一方の金属板に溶融させるに必要とされる電流値よりも大きい電流を通電しなければ、他方の金属板を溶融することができないため、一方の金属板に過剰な電流が通電されることになる。このような結果、過剰な電流が通電された一方の金属板において、この電流により溶融した部分にはボイド等が生成されるおそれがあり、異種金属板同士の接合強度が十分に得られないことが想定される。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、体積抵抗率の異なる2つの異種金属板同士の接合強度を高めることができる異種金属板の接合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を鑑みて、本発明に係る異種金属板の接合方法は、2つの異種金属板同士の接合方法であって、前記異種金属板として、第1金属からなる第1金属板と、前記第1金属よりも体積抵抗率が高く、かつ、前記第1金属よりも融点が高い第2金属からなる第2金属板とを重ね合わせ、前記第2金属板のうち、前記第1金属板に重ね合わせた部分の表面に、一対の電極を接触させる工程と、前記一対の電極の間に電流を通電することにより、前記第2金属の融点よりも低くかつ前記第1金属の融点よりも高い温度に、前記電流が通電する通電領域の前記第2金属を抵抗発熱させて、抵抗発熱させた前記第2金属からの熱で前記第1金属板の一部を溶融し、前記第1金属板と前記第2金属板との間に、前記第1金属と前記第2金属との金属間化合物を生成し、生成した前記金属間化合物を介して前記第1および第2金属板を接合する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
なお、本発明でいう「第1金属からなる第1金属板」は、第1金属のみで構成される第1金属板、第1金属のみで構成される板状の母材に金属メッキ皮膜が形成されているものを含み、実質的に、第1金属を主材として構成されるものをいう。同様に、本発明でいう「第2金属からなる第2金属板」は、第2金属のみで構成される第2金属板または第2金属のみで構成される板状の母材に金属メッキ皮膜が形成されているものを含み、実質的に、第2金属を主材として構成されるものをいう。さらに、本発明でいう、「第1金属および第2金属」は、その金属元素で構成される金属のみであってもよく、他の金属が添加された合金であってもよい。
【0009】
本発明によれば、第2金属板のうち、第1金属板に重ね合わせた部分の表面に、一対の電極を接触させ、これらの電極間に電流を通電する。この際、第2金属の融点よりも低くかつ第1金属の融点よりも高い温度に、通電領域の第2金属を抵抗発熱させる。これにより、第2金属板は溶融せず、通電領域を含む部分が固相状態で昇温され、この昇温された部分の第2金属の熱が、これに隣接した第1金属板に伝達される。この結果、第1金属板は、抵抗発熱で昇温された第2金属からの熱により溶融する。この際、第1金属板の溶融した部分に接触する第2金属板の第2金属は、第1金属側に拡散し、第1金属板と第2金属板との間に、第1金属と第2金属とにより構成された金属間化合物が生成される。このような結果、この金属間化合物が接合材となって、第1金属板と第2金属板とを接合することができる。
【0010】
さらに、第2金属板の表面に含まれる不純物を、第2金属板を溶融することなく、第1金属板の溶融した部分に拡散させることができる。このため、第2金属板の表面には、第2金属からなる新生面が形成され、この新生面と第1金属板の溶融した部分が接触し、この新生面に金属間化合物を生成することができる。このような結果、第1金属板と第2金属板の接合強度を高めることができる。
【0011】
本発明によれば、これまでの接合方法のように、第1金属板に比べて体積抵抗率の高い第2金属板に、第2金属を溶融する過剰な電流を通電する必要がなく、第2金属を固相の状態で、第1金属のみを溶融し、第1および第2金属板を接合することができる。したがって、過剰加熱に起因したボイドが、第2金属板およびその接合部分にも生成され難い。さらに、過剰加熱により、高温となった接合部分を放冷すると、接合部分の組織は、粗大化し易いが、本発明では、このような過剰加熱を抑制することができるので、接合部分の組織の粗大化を回避し、接合部分の強度を確保することができる。
【0012】
さらに、電極間の通電により、第1および第2金属板の接合が確保されていれば、第1および第2金属同士を押圧しなくても良いが、より好ましい態様としては、前記一対の電極を接触させる工程において、前記一対の電極の間に、非導電性材料からなる加圧用部材を配置し、前記第1および第2金属板を接合する工程において、前記一対の電極の間に配置された前記加圧用部材で前記第2金属板を前記第1金属板に向かって加圧しながら、前記一対の電極間への通電を行う。
【0013】
この態様によれば、一対の電極間に配置された加圧用部材で、第2金属板を第1金属板に向かって加圧しながら、一対の電極間に通電を行うので、第1金属板と第2金属板との間に生成された余剰な金属間化合物を、その周りに押し出すことができる。これにより、接合部分の余剰な金属間化合物を低減し、金属間化合物の厚さを薄く保つことができるため、接合部分の強度を高めることができる。
【0014】
さらに、第2金属が、第1金属よりも体積抵抗率が高く、かつ融点が高ければ、第1および第2金属の種類は特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記第1金属板は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板であり、前記第2金属板は、鋼板である。
【0015】
ここで、第1金属板を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金は、融点が600℃程度であり、第2金属板を構成する鋼は、1500℃程度である。したがって、この態様によれば、電極間の通電により、第2金属板を溶融させずに、これを構成する第2金属を抵抗発熱させ、この抵抗発熱させた熱で、第1金属であるアルミニウムまたはアルミニウム合金を溶融することができる。この際、第1金属板のうち、アルミニウムまたはアルミニウム合金が溶融した部分(液相部分)に、第2金属板である鋼板(固相)の鉄等が拡散する。この結果、第1金属板と第2金属板との間に、アルミニウムおよび鉄を少なくとも含む金属間化合物が生成される。この金属化間化合物が、第1金属板と第2金属板の接合材となる。
【0016】
また、亜鉛めっき鋼板等のめっき皮膜がされた鋼板は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板に十分な接合強度で接合し難い。しかしながら、この態様では、鋼板の表面に形成されためっき皮膜の金属は、溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金に拡散されるため、鋼板の新生面が生成されるため、これらの接合強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異なる金属材料からなる2つの異種金属板同士の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置の正面図である。
図2図1に示す抵抗溶接装置の左側面図である。
図3A図1に示す抵抗溶接装置を用いた接合方法による、第2金属板の加熱状態を説明するための模式的断面図である。
図3B図3Aに示す状態から、前記第1金属板を溶融し、第1金属板と第2金属板との間に生成された金属間化合物を加圧によりその周りに押し出した状態を説明するための模式的断面図である。
図4】各実施例と各比較例の通電時間を電流との関係を示したグラフである。
図5】実施例1−1に係る試験体の断面写真である。
図6A】実施例1−1の試験体の接合部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した断面写真である。
図6B図6Aの接合部分を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で分析した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る異種金属板の接合方法を説明する。
【0020】
1.抵抗溶接装置1について
まず、図1および図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る異種金属板の接合方法を行うのに好適な抵抗溶接装置1を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置1の正面図である。図2は、図1に示す抵抗溶接装置1の左側面図である。
【0021】
図1および図2に示すように、抵抗溶接装置1は、体積抵抗率および融点が異なる金属からなる異種金属板を、抵抗溶接により接合するための装置である。具体的には、抵抗溶接装置1では、後述する第1金属からなる第1金属板11と、第1金属よりも体積抵抗率が高く、かつ第1金属よりも融点が高い第2金属からなる第2金属板12と、を溶接する。
【0022】
抵抗溶接装置1は、装置本体4と、第1および第2金属板11、12を支持する支持部5と、第1および第2金属板11、12を溶接する溶接部6と、溶接部6を昇降させる昇降部7と、溶接部6に電流を供給する電流供給部8と、昇降部7と電流供給部8とを制御する制御部9と、を備えている。
【0023】
装置本体4は、図2に示すように、ハウジング41と、ハウジング41の上部から水平方向に延在した上アーム42と、上アーム42に対向するように、ハウジング41の下部から水平方向に延在した下アーム43と、を備えている。上アーム42には、昇降部7を介して溶接部6が取り付けられており、下アーム43には、支持部5が取り付けられている。
【0024】
支持部5は、支持ブロック51と、第1および第2支持アーム52、53と、載置台54と、を備えている。支持ブロック51は、一対の上下ブロック51a、51bからなり、下ブロック51aは、下アーム43に固定されている。上ブロック51bは、第1支持アーム52を挟持するように、下ブロック51aに取り付けられている。
【0025】
第1支持アーム52は、支持ブロック51から水平方向に延在しており、支持ブロック51に取り付けられたアーム本体52aと、アーム本体52aの先端において、第2支持アーム53を把持するようにアーム本体52aに取り付けられる固定部材52bと、を備えている。第2支持アーム53は、支持ブロック51から上方に延在しており、その先端には、載置台54が取り付けられている。この載置台54に、被溶接材である第1金属板11および第2金属板12が載置される。
【0026】
溶接部6は、昇降部7を介して、上アーム42に取り付けられている。昇降部7は、シリンダ71と、シリンダ71の内部を摺動するピストン72と、シリンダ71内に所定の作動エアを供給する空気圧回路(エア回路)73と、を備えている。空気圧回路73は、圧縮された空気を供給するコンプレッサ74に接続されており、制御部9からの制御信号に基づいて、シリンダ71内において、ピストン72の上昇側または下降側のいずれかのポートに、所定の圧力の作動エアを供給するよう制御される。なお、昇降部7は、モータの回転により直動する機構を有した電動加圧装置であってもよい。電動加圧装置を用いた場合であっても、後述する第1および第2金属板11、12の接合を行うことができる。
【0027】
このようにして、ピストン72が上下方向に昇降し、その結果、後述する溶接部6の一対の電極66、67、および加圧用部材68を、載置台54(すなわち、第1金属板11)側に移動することができる。
【0028】
溶接部6は、シリンダ71の先端に取り付けられた保持ブロック61と、保持ブロック61から水平方向に延在した一対の第3支持アーム62、63と、各第3支持アーム62、63から下方に延在した一対の第4支持アーム64、65を備えている。さらに、溶接部6は、第4支持アーム64、65の先端に、一対の電極66、67と、これらの間に配置された加圧用部材68と、を備えている。
【0029】
保持ブロック61は、固定用ブロック61aと、一対の把持用ブロック61b、61bとを備えている。固定用ブロック61aは、樹脂またはセラミックス等の非導電性材料からなる。各把持用ブロック61bは、電流供給部8の正極側または負極側に接続されている。各把持用ブロック61bは、導電性を有した材料であり、例えば、鋼合金などの金属材料からなり、溶接される第2金属板12を構成する第2金属の体積抵抗率よりも低い材料からなることが好ましい。これにより、溶接時における把持用ブロック61bの発熱を抑えることができる。
【0030】
固定用ブロック61aには、各第3支持アーム62、63の一部を収容する一対の凹部が形成されており、各把持用ブロック61bは、各第3支持アーム62、63を把持するように、固定用ブロック61aに取り付けられている。さらに、各把持用ブロック61bは、離間しており、相互に接触していない。これにより、第3支持アーム62、63同士は、直接的には、非導通状態になっている。
【0031】
各第3支持アーム62(63)は、把持用ブロック61bで例示した金属材料などの導電性材料からなり、アーム本体62a(63a)と、アーム本体62a(63a)の先端において、第4支持アーム64(65)を挟持するように、アーム本体62a(63a)に取り付けられた固定部材62b(63b)と、を備えている。
【0032】
第4支持アーム64(65)は、把持用ブロック61bで例示した金属材料などの導電性材料からなり、第3支持アーム62(63)から下方に延在しており、その先端には、電極66(67)が取り付けられている。本実施形態では、各電極66、67の内部には、冷却水が流れる冷却流路(図示せず)が形成されており、冷却流路に、冷却水を流すことにより、溶接時に、各電極66、67を冷却することができる。
【0033】
一対の電極66、67は、クロム銅(Cu−Cr)、クロム・ジルコニウム銅(Cu−Cr−Zr)、ベリリウム銅(Cu−Be)、タングステン銅(Cu−W)などの銅合金からなり、これらは、離間した状態で対向して配置されている。このような配置状態で、一対の電極66、67の間には、加圧用部材68を収容する空間が形成され、この空間に、加圧用部材68が収容されている。本実施形態では、加圧用部材68は、一対の電極66、67に挟持されている。加圧用部材68は、セラミックスまたは熱硬化性樹脂などの非導電性材料からなる。これにより、加圧用部材68には、一対の電極66、67間の電流は流れない。
【0034】
このように構成することにより、本実施形態では、加圧用部材68は、昇降部7の昇降により、一対の電極66、67とともに上下方向に移動する。なお、本実施形態では、一対の電極66、67と、加圧用部材68とは、1つの昇降部7により一体的に移動するため、一対の電極66、67と、加圧用部材68とにより、同時に加圧されるが、例えば、加圧用部材68を、上述した昇降部7とは別の昇降部をさらに設けてもよい。これにより、一対の電極66、67と異なるタイミングで加圧用部材68を昇降し、かつ、一対の電極66、67が第1金属板11と接触する接触圧に依存しない加圧力(例えば、一対の電極66、67より高い加圧力)で、加圧用部材68を第1金属板11に加圧することができる。
【0035】
電流供給部8は、一対の電極66、67間に、電流を供給するものであり、電源84に接続された電気回路83と、電気回路83に接続された一次コイル81と、一次コイル81に通電された電流を増大させる二次コイル82と、を備えている。二次コイル82は、一対の把持用ブロック61b、61bに電気的に接続されている。溶接を行う際には、制御部9からの制御信号が、電気回路83に入力され、電源84からの電流が一次コイル81に流れることにより、一次コイル81が励磁され、これにより生成された磁束が、コア内を流れ、二次コイル82に電流が流れる。これにより、一対の電極66、67が第1金属板11に接触した状態で、一対の電極66、67間に電流を通電することができる。
【0036】
2.異種金属板の接合方法について
以下に、図1および図2に加え、図3Aおよび図3Bをさらに参照しながら、抵抗溶接装置1を用いた2つの異種金属板同士の接合方法について説明する。図3Aは、図1に示す抵抗溶接装置を用いた接合方法による、第2金属板の加熱状態を説明するための模式的断面図である。図3Bは、図3Aに示す状態から、前記第1金属板を溶融し、第1金属板と第2金属板との間に生成された金属間化合物を加圧によりその周りに押し出した状態を説明するための模式的断面図である。
【0037】
2−1.異種金属板を準備する工程について
まず、本実施形態では、溶接される2つの異種金属板として、体積抵抗率および融点が異なる金属からなる第1金属板11と、第2金属板12を準備する。第1金属板11は、第1金属からなり、第2金属板12は、第1金属とは異なる第2金属からなり、第2金属の体積抵抗率は、第1金属の体積抵抗率よりも高く、かつ、第2金属の融点は、第1金属の融点よりも高い。なお、第1金属板11または第2金属板12の間にメッキ皮膜などの金属皮膜が形成されていてもよい。また、第1金属板11の板厚は、0.5〜5.0mmであることが好ましく、第2金属板12の板厚は、0.5〜5.0mmであることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、その一例として、第1金属板11は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板であり、第1金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。第2金属板12は、鋼板であり、第2金属は、鋼である。例えば、20℃において、アルミニウムまたはアルミニウム合金の体積抵抗率は、2〜6×10−8Ω・mであり、鋼の体積抵抗率は、10〜20×10−8Ω・mであり、アルミニウムまたはアルミニウム合金が溶融する温度帯においても、アルミニウムまたはアルミニウム合金の体積抵抗率に対して、鋼の体積抵抗率は高い。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金の融点は、600℃程度であり、鋼の融点は、1500℃程度であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金の融点に対して、鋼の融点は高い。
【0039】
なお、後述するような接合を好適に行うためには、第1金属板11の第1金属の融点において、第1金属板を構成する第1金属の体積抵抗率に対して、第2金属を構成する第2金属の体積抵抗率が、5×10−8Ω・m以上大きいことが好ましく、さらに、第1金属の融点に対して、第2金属の融点は、400℃以上大きいことが好ましい。これにより、第2金属板12に通電される電流が第1金属板11に電流が流れることを低減し、第2金属の抵抗発熱により、第1金属板11を溶融することを好適に行うことができる。このような組み合わせとしては、第1金属板がアルミニウム板またはアルミニウム合金板であり、第2金属板が鋼板である場合の他に、例えば、第1金属板がマグネシウム板であり、第2金属板が鋼板である場合を挙げることができる。
【0040】
2−2.接触工程について
次に、図1および図3A等に示すように、第1金属板11と、第2金属板12とを重ね合わせ、第2金属板12のうち、第1金属板に重ね合わせた重なり部分12aの表面に、一対の電極66、67を接触させる。
【0041】
具体的には、図1に示すように、第1金属板11、第2金属板12の順に、載置台54に載置する。これにより、一対の電極66、67に対向する位置に、第2金属板12が配置される。この状態で、制御部9からの制御信号に基づいて、空気圧回路73を制御し、シリンダ71に、作動エアを供給し、ピストン72を降下させる。これに伴い、溶接部6が降下し、一対の電極66、67で、第2金属板12の重なり部分12aが、所定の圧力で加圧される。さらに、これと同時に、一対の電極66、67の間に配置された加圧用部材68で、第2金属板12の重なり部分12aが所定の圧力で押圧される。
【0042】
なお、本実施形態では、一対の電極66、67と、加圧用部材68とで、第2金属板12の重なり部分12aを加圧したが、例えば、加圧用部材68のみで、所定の圧力で第2金属板12の重なり部分12aを加圧し、一対の電極66、67は、それよりも低い加圧力で接触させてもよい。このような接触状態は、加圧用部材68の上面と、この上面に接触する各電極66、67の下面との間に、例えばバネ材などの弾性部材を配置することにより、実現することができる。すなわち、電極66、67を第2金属板12の重なり部分12aに接触する位置まで下降させた際に、加圧用部材68は、弾性部材の圧縮変形により、第2金属板12の重なり部分12aに向かって付勢される。この付勢された力により、加圧用部材68を第2金属板12の重なり部分12aに押圧することができる。
【0043】
2−3.接合工程について
接合工程では、一対の電極66、67の間に電流を通電することにより、第2金属の融点よりも低くかつ第1金属の融点よりも高い温度に、電流が通電する通電領域12bの第2金属を抵抗発熱させる。ここで、通電領域12bが抵抗発熱するが、抵抗発熱する温度は、第2金属の融点よりも低いため、第2金属は溶融しない。しかしながら、通電領域12bは、第1金属の融点以上に加熱されているため、この抵抗発熱させた第2金属からの熱で、第1金属板11の一部が溶融する。これにより、第1金属板11と第2金属板12との間に、第1金属と第2金属との金属間化合物13を生成し、金属間化合物13を介して、第1および第2金属板11、12を接合する。
【0044】
より具体的には、制御部9からの制御信号に基づいて、電気回路83を制御し、一次コイル81に電流を通電することにより、二次コイル82で電流を生成し、一対の電極66、67に電流を通電する。本実施形態では、一対の電極66、67の間に配置された加圧用部材68で、第1金属板11を第2金属板12に向かって加圧しながら、一対の電極66、67間への通電を行う。
【0045】
この際、制御部9が電気回路83を制御することにより、予め設定された電流の大きさおよび通電時間となるように、一対の電極66、67間に通電される電流の大きさおよび通電時間を制御する。この予め設定された電流の大きさおよび通電時間の条件は、第2金属の融点よりも低くかつ第1金属の融点よりも高い温度に、通電領域12bの第2金属を抵抗発熱させることができる条件であり、事前に実験等を行うことにより求めることができる。
【0046】
これにより、第2金属板12は溶融せず、通電領域を含む部分が固相状態で昇温され(図3A参照)、この昇温された部分の第2金属の熱が、これに隣接した第1金属板11に伝達される。この結果、第1金属板11の一部(具体的には、通電領域12b近傍の第2金属板12と接触する第1金属板11の部分)は、抵抗発熱で昇温された第2金属からの熱により溶融する。なお、第2金属板12は、第1金属板11の第1金属よりも体積抵抗率が高く、かつ第1金属よりも融点が高い第2金属からなるので、第1金属板11には、溶接時の電流が流れ難く、この電流により第1金属板11が抵抗発熱により溶融しない。
【0047】
さらに、この時、第1金属板11の溶融した部分11aに接触する第2金属板12の第2金属は、第1金属板11側(具体的には溶融した部分11a)に拡散し、第1金属板11と第2金属板12との間に、第1金属と第2金属とにより構成された金属間化合物13が生成される。このような結果、この金属間化合物13が接合材となって、第1金属板11と第2金属板12とを接合することができる。
【0048】
さらに、第2金属板12の表面の含まれる不純物を、第2金属板12を溶融することなく、第1金属板11の溶融した部分11aに拡散させることができる。このため、第2金属板12の表面には、第2金属からなる新生面が形成され、この新生面と第1金属板11の溶融した部分が接触し、この新生面に金属間化合物13を生成することができる。このような結果、第1金属板11と第2金属板12の接合強度を高めることができる。
【0049】
このようにして、第2金属を固相の状態で、第1金属のみを溶融し、第1および第2金属板11、12を接合することができる。したがって、過剰加熱に起因したボイドが、第2金属板12およびその接合部分にも生成され難く、接合部分の組織の粗大化を回避し、接合部分の強度を確保することができる。
【0050】
なお、溶接時には、各々の電極66、67は内部を流れる冷却水により冷却されており、第1金属板11の表層は、電極66、67により冷却される。このため、電極66、67に接触する第2金属板12の表面は、溶接時に電流が流れるその他の通電領域12bに比べて昇温され難い。これにより、電極66、67が接触する第2金属板12の表面が局所的に加熱することを低減することができる。
【0051】
ここで、例えば、金属間化合物13は、第1金属および第2金属よりも脆いため、数μm以上成長すると、第1金属板11と第2金属板12との接合部分の強度が低下することがある。しかしながら、本実施形態では、上述した如く、図3Bに示すように、加圧用部材68で、第2金属板12を第1金属板11に向かって加圧しながら、一対の電極66、67間に通電を行うので、第1金属板11と第2金属板12との間に生成された余剰な金属間化合物13を、加圧用部材68により、その周り(加圧範囲外)に押し出すことができる。これにより、接合部分の余剰な金属間化合物13を低減し、金属間化合物13の厚さを薄く保つことができるため、接合部分の強度を高めることができる。
【実施例】
【0052】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0053】
[実施例1−1]
図1に示す抵抗溶接装置を用いて、第1金属板と第2金属板を接合した。まず、第1金属板に、板厚1.0mmの6000系アルミニウム合金を準備し、第2金属板に、板厚0.7mmの合金化亜鉛メッキの超張力鋼板を準備した。次に、これらを重ね合わせて、表1に示すように、一対の電極および加圧用部材による加圧力を3.5kNとし、通電時間を0.42msecとし、溶接電流を8.4kAとして、一対の電極を第2金属板に接触させて、第1金属板と第2金属板を接合した試験体を作製した。
【0054】
[実施例1−2〜1−8]
実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−8に係る試験体を作製した。実施例1−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値の条件である。なお、実施例1−8の場合、溶接時に第2金属板が過剰に発熱したために第1金属板が過剰に加熱され、第1金属板と第2金属板の間から溶融した第1金属が飛散した。なお、実施例1−1〜1−7の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散はなかった。これらの結果を表1に示す。なお、表1に示す、溶接時の第2金属板の溶融の有無は、電極の融着および後述する組織観察により確認した結果である。
【0055】
[比較例1−1、1−2]
実施例1−1と同様にして、比較例1−1、1−2に係る試験体を作製した。実施例1−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値の条件である。なお、比較例1−1、1−2では、実施例1−1〜1−8のいずれの電流値よりも、溶接時の電流値が小さい。なお、比較例1−1、1−2の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これらの結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2−1〜2−6]
実施例1−1と同様にして、実施例2−1〜2−6に係る試験体を作製した。実施例1−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値および通電時間の条件である。なお、実施例2−1〜2−6の通電時間は、すべて0.50msecである。また、実施例2−6の場合、実施例1−8と同様に、溶接時に第1金属板の第1金属が過剰に加熱され、第1金属板と第2金属板の間から溶融した第1金属が飛散した。一方、実施例2−1〜2−5の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これら結果を表1に示す。
【0057】
[比較例2−1〜2−5]
実施例2−1と同様にして、比較例2−1〜2−5に係る試験体を作製した。実施例2−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値の条件である。比較例2−1〜2−5では、実施例2−1〜2−6のいずれの電流値よりも、溶接時の電流値が小さい。なお、比較例2−1〜2−5の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これらの結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3−1〜3−5]
実施例1−1と同様にして、実施例3−1〜3−5に係る試験体を作製した。実施例1−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値および通電時間の条件である。なお、実施例3−1〜3−5の通電時間は、すべて0.58msecである。また、実施例3−4、3−5の場合、実施例1−8と同様に、溶接時に第1金属板の第1金属が過剰に加熱され、第1金属板と第2金属板の間から溶融した第1金属が飛散した。なお、実施例3−1〜3−3の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これらの結果を表1に示す。
【0059】
[比較例3−1〜3−5]
実施例3−1と同様にして、比較例3−1〜3−5に係る試験体を作製した。実施例3−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値の条件である。比較例3−1〜3−5では、実施例3−1〜3−3のいずれの電流値よりも、溶接時の電流値が小さい。なお、比較例3−1〜3−5の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これらの結果を表1に示す。
【0060】
[実施例4−1〜4−5]
実施例1−1と同様にして、実施例4−1〜4−5に係る試験体を作製した。実施例1−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値および通電時間の条件である。実施例4−1〜4−5の通電時間は、すべて0.33msecである。なお、実施例4−1〜4−5の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これらの結果を表1に示す。
【0061】
[比較例4−1〜4−5]
実施例4−1と同様にして、比較例4−1〜4−5に係る試験体を作製した。実施例4−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値の条件である。比較例4−1〜4−4では、実施例4−1〜4−5のいずれの電流値よりも、溶接時の電流値が小さく、比較例4−5は、実施例4−1〜3−5のいずれの電流値よりも、溶接時の電流値が大きい。なお、比較例4−5の場合、第1金属が過剰に加熱され、溶融した第1金属が飛散したことに加え、溶接時に第2金属板が溶融し、電極に第2金属板が溶着していた。比較例4−1〜4−4の場合、溶接時に溶融した第1金属の飛散は無かった。これらの結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5−1]
実施例1−1と同様にして、実施例5−1に係る試験体を作製した。実施例1−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値および通電時間の条件である。なお、実施例5−1の通電時間は、0.25msecである。
【0063】
[比較例5−1〜5−8]
実施例5−1と同様にして、比較例5−1〜5−8に係る試験体を作製した。実施例5−1と相違する点は、表1および図4に示すように溶接時に通電する電流値の条件である。比較例5−1〜5−6では、実施例5−1の電流値よりも、溶接時の電流値が小さく、比較例5−7、5−8は、実施例5−1のいずれの電流値よりも、溶接時の電流値が大きい。なお、比較例5−7、5−8の場合、第1金属が過剰に加熱され、溶融した第1金属が飛散したことに加え、溶接時に第2金属板が溶融し、電極に第2金属板が溶着していた。
【0064】
(せん断強度試験)
上述したすべての試験体に対して、一方側に第1金属板を把持し、他方側に第2金属板を把持し、これらが離れる方向に荷重を作用させた。この時の試験体がせん断破壊した強度を、せん断強度とした。この結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(顕微鏡観察等)
上述したすべての試験体を厚さ方向に切断し、その断面を、顕微鏡で観察するとともに、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で分析した。図5は、実施例1−1に係る試験体の断面写真である。図6Aは、実施例1−1の試験体の接合部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した断面写真である。図6Bは、図6Aの接合部分を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で分析した画像である。なお、表1には、すべての試験体に対して、第1金属板と第2金属板との間の金属間化合物の有無を記載した。
【0067】
(結果および考察)
表1に示すように、実施例1−1〜1−8、実施例2−1〜2−6、実施例3−1〜3−5、実施例4−1〜4−5、実施例5−1に係る試験体では、せん断強度が、1.4kNを超えていた。しかしながら、比較例1−1、1−2、比較例2−1〜2−5、比較例3−1〜3−5、比較例4−1〜4−4、比較例5−1〜5−6に係る試験体では、せん断強度が、1.0kNを下回っていた。
【0068】
さらに、図5に示すように、実施例1−1に係る試験体では、第1金属板のアルミニウム合金が溶接により溶融していたが、第2金属である鋼は、溶融していなかった。さらに、図6Aおよび図6Bに示すように、第1金属板と第2金属板との間には、Fe−Alによる金属間化合物が生成されていた。なお、その他の実施例に係る試験体も同様に、第1金属であるアルミニウム合金は溶接により溶融し、第2金属板の鋼は溶融せず、第1金属板と第2金属板との間に金属間化合物が生成されていた。一方、せん断強度が1.0kNを下回った比較例1−1、1−2、比較例2−1〜2−5、比較例3−1〜3−5、比較例4−1〜4−4、比較例5−1〜5−6に係る試験体では、第1金属板と第2金属板との間には、金属間化合物が生成されていなかった。
【0069】
これらの結果から、上述した実施例では、溶接時に、第2金属板が通電により加熱され(抵抗発熱し)、この熱により、第1金属板の一部が溶融したと考えられる。この第1金属板の第1金属の溶融により、第2金属板の第2金属が、第1金属の溶融した部分に拡散し、第1金属板と第2金属板との間に、金属間化合物が生成されたと考えられる。この結果、第1金属板と第2金属板との接合強度が向上したと考えられる。なお、第2金属板から第1金属板を押圧した部分の金属間化合物の厚さは、その周りの金属間化合物の厚さよりも薄くなっていた。
【0070】
一方、比較例1−1、1−2、比較例2−1〜2−5、比較例3−1〜3−5、比較例4−1〜4−4、比較例5−1〜5−6の場合、溶接時に通電される電流値、または、通電時間が十分でないため、第1金属板と第2金属板との間に、金属間化合物が生成されなかったと考えられる。
【0071】
なお、実施例1−8、実施例2−6、実施例3−4、3−5の場合、溶融した第1金属が飛散したが、第2金属板は溶融していなかったため、第1および第2金属板の加熱が過剰な加熱とならず、せん断強度が確保されたと考えられる。また、比較例4−5、比較例5−7、5−8の場合、第1金属板と第2金属板との間に、金属間化合物が形成されているのでせん断強度が1.4kNを超えている。しかしながら、これらの場合には、溶融した第1金属の飛散だけでなく、第2金属板が溶融したため、第1および第2金属板にボイド等が生成されている可能性が高く、せん断強度も安定せず、せん断強度以外の強度が、上述したすべての実施例のものよりも低くなるおそれがある。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0073】
1:抵抗溶接装置、11:第1金属板、12:第2金属板、12a:重なり部分、12b:通電領域、13:金属間化合物、66,67:電極、69:加圧用部材
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B