(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インナパネルの第1フランジと、該インナパネルの外側に配置されるアウタパネルの第2フランジとが少なくともスポット溶接の打点部で接合されたフランジ部を有する車両用構造部材であって、
前記フランジ部は、前記第1フランジの先端部の接合方向における厚さが、前記第1フランジの根元部の該接合方向における厚さに比べて厚く、かつ、前記第2フランジの先端部の接合方向における厚さが、前記第2フランジの根元部の該接合方向における厚さに比べて厚い車両用構造部材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る車両用構造部材の一例としてのロッカ20について説明する。
【0013】
図1には、車両10の車体(骨格部材)の一部を構成するロッカ20が示されている。なお、各図に適宜示す矢印FRは車両前方(進行方向)を示しており、矢印UPは車両上方を示しており、OUTは車幅方向外側を示している。車両前後方向、車両上下方向、車幅方向は、互いに直交する方向である。また、車両前後方向は、長手方向の一例である。車両上下方向は、張出方向及び短手方向の一例である。車幅方向は、接合方向の一例である。
【0014】
以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の車幅方向の左右を示すものとする。また、車両10では、車体の左側部と右側部の構成がほぼ左右対称とされているため、以下、左側部の構成について説明し、右側部の構成についての説明を省略する。
【0015】
ロッカ20は、車両10の車体左側部の下部において、車両前後方向に延びている。ロッカ20の前端部は、車両10の前部を構成する図示しない骨格部材に接合されている。ロッカ20の後端部は、車両10の後部を構成する図示しない骨格部材に接合されている。これにより、例えば、車両10が前面衝突した場合には、車両10の前部の骨格部材を介して、ロッカ20に荷重(衝突荷重)が入力される。
【0016】
また、ロッカ20は、インナパネルの一例としてのロッカインナパネル22と、アウタパネルの一例としてのロッカアウタパネル24とを有する。ロッカアウタパネル24は、ロッカインナパネル22に対して車幅方向外側に配置されている。ロッカインナパネル22とロッカアウタパネル24は、車両上下方向に同程度の大きさとされており、後述する接合方法によって、車幅方向に接合されている。これにより、ロッカ20では、車両前後方向から見た場合に、ロッカインナパネル22とロッカアウタパネル24とで略六角形状の閉断面が形成されている。
【0017】
<ロッカインナパネル>
ロッカインナパネル22は、板金製であり、車両前後方向を長手方向とする長尺状に形成されると共に、車両正面視で車幅方向外側へ開口した断面ハット形状を成している。具体的には、ロッカインナパネル22は、側壁部22A、上壁部22B、下壁部22C、上フランジ22D及び下フランジ22Eを含んで構成されている。上フランジ22D及び下フランジ22Eは、第1フランジの一例である。
【0018】
側壁部22Aは、車幅方向から見た場合に略矩形状に形成されており、板厚方向を車幅方向にして配置されている。上壁部22Bは、側壁部22Aの上端から車幅方向外側へ延出されている。下壁部22Cは、側壁部22Aの下端から車幅方向外側へ延出されている。上フランジ22Dは、上壁部22Bの車幅方向外端から車両上下方向に沿って車両上方側へ張出されている。下フランジ22Eは、下壁部22Cの車幅方向外端から車両上下方向に沿って車両下方側へ張出されている。上フランジ22Dと下フランジ22Eは、車両上下方向に並んでいる。
【0019】
<ロッカアウタパネル>
ロッカアウタパネル24は、板金製であり、車両前後方向を長手方向とする長尺状に形成されると共に、車両正面視で車幅方向内側へ開口した断面ハット形状を成している。具体的には、ロッカアウタパネル24は、側壁部24A、上壁部24B、下壁部24C、上フランジ24D及び下フランジ24Eを含んで構成されている。上フランジ24D及び下フランジ24Eは、第2フランジの一例である。
【0020】
側壁部24Aは、車幅方向から見た場合に略矩形状に形成されており、板厚方向を車幅方向にして配置されている。上壁部24Bは、側壁部24Aの上端から車幅方向内側へ延出されている。下壁部24Cは、側壁部24Aの下端から車幅方向内側へ延出されている。上フランジ24Dは、上壁部24Bの車幅方向内端から車両上下方向に沿って車両上方側へ張出されている。下フランジ24Eは、下壁部24Cの車幅方向内端から車両上下方向に沿って車両下方側へ張出されている。上フランジ24Dと下フランジ24Eは、車両上下方向に並んでいる。
【0021】
ここで、側壁部22A、上壁部22B、下壁部22C、側壁部24A、上壁部24B及び下壁部24Cをまとめて、ロッカ本体部26と称する。また、上フランジ22Dと上フランジ24Dとをまとめて、上フランジ部28と称する。さらに、下フランジ22Eと下フランジ24Eとをまとめて、下フランジ部32と称する。上フランジ部28は、フランジ部の一例である。下フランジ部32は、フランジ部の一例である。換言すると、ロッカ20は、ロッカ本体部26と、ロッカ本体部26から車両上下方向の上側へ張出された上フランジ部28と、ロッカ本体部26から車両上下方向の下側へ張出された下フランジ部32とを有する。
【0022】
なお、本実施形態では、一例として、上フランジ部28と下フランジ部32とが同様の形状及び大きさを有している。また、上フランジ部28と下フランジ部32とは、一例として、ロッカ20の車両上下方向の中央に対して対称配置されている。このため、上フランジ部28と下フランジ部32とは、同様の作用が得られると考えられるので、以後は、上フランジ部28について説明し、下フランジ部32の説明を省略する。
【0023】
<上フランジ部>
図2(B)に示す上フランジ部28において、上フランジ22Dと上フランジ24Dは、車両前後方向及び車両上下方向の長さがほぼ同じ長さとされており、車幅方向に重ねられて接合されている。上フランジ22Dと上フランジ24Dとの接合は、一例として、接着剤と、スポット溶接とを用いて行われている。つまり、上フランジ22Dと上フランジ24Dは、接合部として、接着剤を介して接合された接着部35と、スポット溶接により接合された打点部36とを有する。接着部35は、接着後に上フランジ部28から外側へ接着剤がはみ出さないように、上フランジ部28の上端よりも低い高さまで設定されている。
【0024】
(打点部)
打点部36は、一例として、上フランジ部28における車両上下方向の中央C(一点鎖線Cで示す)よりも下側(ロッカ本体部26側)で、且つ上フランジ部28の下端よりも上側に形成されている。
【0025】
図2(A)に示すように、打点部36は、上フランジ部28において、車両前後方向に間隔をあけて形成されている。なお、打点部36は、模式的に円形部で図示されているが、円形部に限らず、他の形状であってもよい。ここで、上フランジ部28において、車幅方向から見た場合に、打点部36を車両上下方向に投影した領域を、第1領域SAと称する。また、上フランジ部28において、車両前後方向に隣り合う2つの第1領域SAの間の領域を、第2領域SBと称する。換言すると、第1領域SAは、スポット溶接及び接着剤により接合され、接着部35及び打点部36を有する領域である。第2領域SBは、スポット溶接されておらず、接着部35のみを有する領域である。
【0026】
(根元部)
図2(B)に示す上フランジ部28における打点部36よりも車両上下方向の下側(根元側であり基端側)で、且つ上フランジ部28の下端を含む部位を根元部38と称する。根元部38は、ロッカ本体部26と共に稜線K1及び稜線K2を形成している。稜線K1は、上壁部22Bと上フランジ22Dとの間に形成されており、車両前後方向に延びている。稜線K2は、上壁部24Bと上フランジ24Dとの間に形成されており、車両前後方向に延びている。換言すると、根元部38は、稜線K1及び稜線K2を形成することで、車両前後方向に作用する(入力される)荷重に対する剛性の低下が抑制されている。
【0027】
ロッカ本体部26におけるロッカインナパネル22の板厚(平均値)をt1〔mm〕とする。また、ロッカ本体部26におけるロッカアウタパネル24の板厚(平均値)をt2〔mm〕とする。板厚t1と板厚t2は、同じ厚さ、異なる厚さのいずれであってもよい。ここで、接着部35の車幅方向の厚さt3〔mm〕は、板厚t1、t2に比べて非常に薄いため、t3=0〔mm〕とみなす。これにより、根元部38の車幅方向の厚さをT1〔mm〕とすると、近似的に、T1=t1+t2となる。
【0028】
(先端部)
上フランジ部28における打点部36よりも車両上下方向の上側で、中央Cよりも上側であり、且つ上フランジ部28の上端面28Aを含む部位を先端部42と称する。先端部42は、鋼板差厚成形技術を用いて上端面28A側が根元側よりも厚肉とされている。つまり、ロッカインナパネル22及びロッカアウタパネル24は、差厚鋼板により構成されている。
【0029】
また、先端部42は、一例として、上端面28Aを含む厚肉部44と、厚肉部44よりも打点部36側に形成されたテーパ部45と、テーパ部45よりも打点部36側の平板部46とを有する。上端面28Aは、一例として、車両前後方向及び車幅方向を含む面に平行な平面とされている。なお、先端部42は、第1領域SA及び第2領域SB(
図2(A)参照)に跨って(連続して)形成されている。
【0030】
厚肉部44は、車両前後方向から見た場合に、車幅方向の厚さT2〔mm〕が、既述の厚さT1に比べて厚肉とされた部位である。具体的には、上フランジ22Dにおける厚肉部44の板厚をt4とすると、t4>t1となっている。また、上フランジ24Dにおける厚肉部44の板厚をt5とすると、t5>t2となっている。つまり、t3=0とみなして、T2=(t4+t5)>(t1+t2)となっている。
【0031】
テーパ部45は、車幅方向の厚さがT2からT1へ連続して減少された部位である。また、テーパ部45は、車両前後方向から見た場合に、車両上下方向に対して交差する斜め方向に沿ったテーパ面45Aを有する。テーパ部45の車両上下方向の高さは、厚肉部44の車両上下方向の高さよりも低い。平板部46は、車幅方向の厚さがT1で平板状に形成された部位である。また、平板部46は、稜線K1、K2を有していない点が、根元部38とは異なる。
【0032】
以上、説明したように、先端部42は、車幅方向における厚さT2が、根元部38の厚さT1に比べて厚い部位とされている。そして、先端部42は、根元部38よりも厚肉とされることで、車両前後方向に作用する(入力される)荷重に対する剛性の低下が抑制されている。なお、本実施形態では、車両前後方向に作用する荷重に対して、先端部42の剛性が根元部38の剛性に近づくように(剛性のバランスをとるように)、厚さT1及び厚さT2が予め設定されている。
【0033】
<比較例>
図5(A)には、比較例としてのロッカ200が示されている。なお、本実施形態のロッカ20(
図2(A)参照)と同様の構成については、本実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0034】
ロッカ200は、ロッカインナパネル202とロッカアウタパネル204とが車幅方向に接合され、車両前後方向に延在された構成とされている。また、ロッカ200は、ロッカ本体部26と、上フランジ部206と、図示しない下フランジ部とを有する。この下フランジ部は、上フランジ部206と同様の構成であり、ロッカ200の車両上下方向の中央に対して対称配置されているため、説明を省略する。
【0035】
上フランジ部206は、打点部36と、根元部38と、先端部208とを有する。具体的には、上フランジ部206は、車幅方向の厚さが車両上下方向においてほぼ一定とされた上フランジ206A及び上フランジ206Bを有し、これらが接着剤A(塗布領域をドットで示す)及びスポット溶接によって、車幅方向に接合された構成とされている。先端部208の車幅方向の厚さTAは、根元部38の車幅方向の厚さT1(
図2(B)参照)と同じ厚さに設定されている。打点部36は、車両前後方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0036】
図6(A)に示す上フランジ部206では、ロッカ200に対して、車両前後方向に荷重(衝突荷重)が入力される前の状態において、上フランジ206Aと上フランジ206Bとが車幅方向に接合されている。なお、ロッカ200では、車幅方向において、先端部208の厚さと根元部38の厚さとが等しい。このため、ロッカ200では、稜線K1、K2が形成されない先端部208の方が、稜線K1、K2が形成される根元部38に比べて、車両前後方向(上フランジ206A、206Bの面内方向)に作用する荷重(圧縮力)に対する剛性が低く、変形し易い。
【0037】
ここで、
図5(B)に示すロッカ200に対して、例えば前面衝突により、車両前後方向に衝突荷重Fが入力されたものとする。この場合には、根元部38側が衝突荷重Fに対して抵抗するのに対し、先端部208側が衝突荷重Fに対して抵抗しきれなくなる。つまり、上フランジ部206の打点部36間において、拘束されていない上フランジ206Aの先端と上フランジ206Bの先端とが、互いに車幅方向に離れる、いわゆる「口開き変形」が生じることになる。
【0038】
図6(B)及び
図6(C)に示すように、ロッカ200では、口開き変形が生じることにより、打点部36に剥離方向(車幅方向の両外側に向かう方向)の荷重が作用して、打点部36が破断される可能性がある。また、ロッカ200の打点部36の間では、接着剤Aが根元部38まで破断される可能性がある。
【0039】
〔作用及び効果〕
次に、本実施形態のロッカ20の作用及び効果について説明する。
【0040】
図1に示す車両10の前面衝突時において、車両10の前部からロッカ20へ衝突荷重Fが伝達されたものとする。ここで、
図2(B)に示すロッカ20では、上フランジ部28の先端部42の厚さT2が、根元部38の厚さT1に比べて厚い。そして、上フランジ部28において、根元部38と先端部42とで剛性の高低バランスがとれている。このため、
図2(A)に示す上フランジ部28の長手方向に衝突荷重Fが入力された場合には、打点部36間の第2領域SBにおいて、根元部38及び先端部42が衝突荷重Fに対してほぼ均等に抵抗することになる。これにより、上フランジ22Dと上フランジ24Dとが互いに離れる方向に変形すること(口開き変形)を抑制することができる。
【0041】
以上、説明したように、上フランジ部28が少なくともスポット溶接により接合されたロッカ20では、上フランジ部28の長手方向に衝突荷重が入力された場合に、既述のロッカ200(
図5(A)参照)に比べて、打点部36の剥離を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0043】
<変形例>
車両用構造部材は、ロッカ20に限らず、他のインナパネル及びアウタパネルを有する部材であってもよい。他の一例として、インナパネルとアウタパネルとを有するルーフサイドレールであってもよい。車両用構造部材の接合方向は、上フランジ22Dと上フランジ24Dとが接合される方向である車幅方向に限らず、車両正面視で車幅方向と交差する交差方向であってもよい。
【0044】
上フランジ22Dと上フランジ24Dとの接合は、接着剤及びスポット溶接による接合に限らず、接着剤を用いずにスポット溶接のみによる接合であってもよい。また、上フランジ22Dと上フランジ24Dとの接合は、少なくともスポット溶接を用いた接合であればよく、例えば、ボルト及びナットといった、締結部材を用いた接合とスポット溶接とを行ってもよい。
【0045】
先端部42は、テーパ部45が形成されていなくてもよい。なお、下フランジ22E及び下フランジ24Eについても同様である。板厚t4と板厚t5は、同じ厚さ、異なる厚さのいずれであってもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態及び変形例に係る車両用構造部材について説明したが、これらの実施形態及び変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0047】
<第1参考例>
図3(A)、(B)には、第1参考例としてのロッカ50が示されている。なお、ロッカ20(
図2(A)参照)と同様の構成については、ロッカ20と同一の符号を付与してその説明を省略する。また、ロッカ50の車両上下方向の上側と下側は、中央に対してほぼ対称に構成されている。このため、ロッカ50の車両上下方向の上側について図示及び説明をし、下側の説明を省略する。
【0048】
ロッカ50は、既述のロッカ20において、上フランジ部28(
図2(A)参照)に替えて、上フランジ部52が形成された構成とされており、他の構成はロッカ20と同様とされている。上フランジ部52は、車幅方向内側に配置された上フランジ52Aと、上フランジ52Aに対して車幅方向外側から接合された上フランジ52Bとを有する。さらに、上フランジ部52は、上フランジ部52において、先端部42(
図2(A)参照)に替えて、先端部54が形成された構成とされており、他の構成は先端部42と同様とされている。
【0049】
図3(B)に示す先端部54は、上フランジ部52における打点部36よりも車両上下方向の上側で中央Cよりも上側であり、且つ上フランジ部52の上端面52Cを含む部位である。具体的には、先端部54は、厚肉部44及びテーパ部45(
図2(B)参照)に替えて屈曲部62が形成されており、平板部46を有している。また、先端部54は、第1領域SA及び第2領域SB(
図3(A)参照)に連続して形成されている。
【0050】
屈曲部62は、車両前後方向から見た場合に、上フランジ52Aの車両上下方向の上端が、曲げ加工により車幅方向内側へほぼ直角に屈曲され、上フランジ52Bの上端が、曲げ加工により車幅方向外側へほぼ直角に屈曲された部位である。換言すると、屈曲部62は、平板部46と同じ厚さの板材で構成されているが、車幅方向において、平板部46の幅(厚さT1)よりも広い幅T3〔mm〕を有している点が異なる部位である。
【0051】
このように、先端部54は、車幅方向における幅T3(最大幅)が、根元部38の車幅方向における厚さT1に比べて広い部位とされている。そして、先端部54は、根元部38よりも広幅とされることで、車両前後方向に作用する(入力される)荷重に対する剛性の低下が抑制されている。なお、車両前後方向に作用する荷重に対して、先端部54の剛性が根元部38の剛性に近づくように(剛性のバランスをとるように)、幅T3が予め設定されている。
【0052】
ここで、車両10の前面衝突時において、車両10の前部からロッカ50へ衝突荷重が伝達されたものとする。ロッカ50では、先端部54の幅T3が、根元部38の厚さT1に相当する幅に比べて広い。さらに、上フランジ部52において、根元部38と先端部54とで剛性の高低バランスがとれている。これにより、
図3(A)に示すロッカ50では、上フランジ部52の長手方向に衝突荷重が入力された場合に、打点部36間において、上フランジ52Aと上フランジ52Bとが互いに離れる方向に変形すること(口開き変形)を抑制することができる。つまり、ロッカ50では、上フランジ部52の長手方向に衝突荷重が入力された場合に、既述のロッカ200(
図5(A)参照)に比べて、打点部36の剥離(破断)を抑制することができる。
【0053】
なお、ロッカ50は、第1領域SA及び第2領域SBに連続して屈曲部62が形成された構成に限らない。つまり、ロッカ50は、第1領域SAに屈曲部62が形成されずに、第2領域SBのみに屈曲部62が形成された構成とされてもよい。
【0054】
<第2参考例>
図4には、第2参考例としてのロッカ70の上フランジ部72の一部を車幅方向の外側から見た状態が示されている。なお、ロッカ20(
図2(A)参照)と同様の構成については、ロッカ20と同一の符号を付与してその説明を省略する。また、ロッカ70の車両上下方向の上側と下側は、中央に対してほぼ対称に構成されている。このため、ロッカ70の車両上下方向の上側について図示及び説明をし、下側の説明を省略する。
【0055】
ロッカ70は、既述のロッカ20において、上フランジ部28(
図2(A)参照)に替えて、上フランジ部72が形成された構成とされており、他の構成はロッカ20と同様とされている。上フランジ部72は、車幅方向内側に配置された上フランジ72Aと、上フランジ72Aに対して車幅方向外側から接合された上フランジ72Bとを有する。また、上フランジ部72は、スポット溶接により接合された打点部36と、接着剤を用いて接合された接着部76と、接着されず且つスポット溶接もされていない非接合部78とを有する。
【0056】
打点部36は、上フランジ部72において、車両前後方向に間隔をあけて、上フランジ部72の車両上下方向の中央部に形成されている。上フランジ部72において、車幅方向から見た場合に、打点部36を車両上下方向に投影した領域を、第1領域SCと称する。また、上フランジ部72において、車両前後方向に隣り合う2つの第1領域SCの間の領域を、第2領域SDと称する。換言すると、第1領域SCは、スポット溶接及び接着剤により接合された領域である。第2領域SDは、スポット溶接されておらず、接着剤により接合された領域である。
【0057】
接着部76は、一例として、打点部36を含んでおり、上フランジ部72における車両上下方向の下側(根元側)から4/5程度の範囲で設定されている。非接合部78は、上フランジ部72における接着部76に対する上側の部位であり、且つ上端側から車両上下方向の1/5程度の範囲で設定されている。なお、非接合部78を形成しているのは、上フランジ部72の上端から接着剤がはみ出すのを抑制するためである。
【0058】
上フランジ72Aは、車両上下方向の下側(根元側)から上側(先端側)まで、車幅方向の厚さがほぼ同じ平板状に形成されており、車両前後方向に延在されている。また、上フランジ72Aには、先端側から根元側に向けて切り欠かれた切欠部82が形成されている。
【0059】
切欠部82は、第2領域SD内の車両前後方向中央に対して前側となる部位に形成されている。換言すると、切欠部82は、第2領域SD内において、前面衝突時に衝突荷重が入力される場合の入力側に形成されている。また、切欠部82は、車幅方向から見た場合に、上フランジ72Aの上端(先端)から下側へ向けて、車両前後方向の切欠き幅が減少する略V字状に形成されている。切欠部82の底部は、下側に凸状となる曲面で構成されている。さらに、切欠部82は、一例として、それぞれの第2領域SD内に1箇所形成されている。切欠部82の底部は、一例として、接着部76と非接合部78との境界付近に位置している。
【0060】
上フランジ72Bは、車両上下方向の下側(根元側)から上側(先端側)まで、車幅方向の厚さがほぼ同じ平板状に形成されており、車両前後方向に延在されている。上フランジ72Bの大きさは、一例として、上フランジ72Aの大きさとほぼ同じとされている。さらに、上フランジ72Bには、先端側から根元側に向けて切り欠かれた切欠部84が形成されている。
【0061】
切欠部84は、少なくとも一部が第2領域SD内に位置するように、第2領域SD内の車両前後方向中央に対して前側となる部位に形成されている。換言すると、切欠部84の少なくとも一部は、第2領域SD内において、前面衝突時に衝突荷重が入力される場合の入力側に形成されている。また、切欠部84は、車幅方向から見た場合に、上フランジ72Bの上端(先端)から下側へ向けて、車両前後方向の切欠き幅が減少する略V字状に形成されている。切欠部84の底面は、下側に凸状となる曲面で構成されている。
【0062】
切欠部84は、一例として、それぞれの第2領域SDに1箇所形成されている。切欠部84の底面は、第2領域SD内に位置している。なお、切欠部84の他の部分は、第1領域SC内に位置している。また、切欠部84の大きさ及び形状は、一例として、切欠部82の大きさ及び形状とほぼ同じとされている。さらに、切欠部84は、一例として、車幅方向から見た場合に、上フランジ部72において、切欠部82に対する前側(前面衝突時に衝突荷重が入力される場合の入力側で且つ打点部36に近い側)にずらして(オフセットさせて)形成されている。切欠部84の底部は、一例として、接着部76と非接合部78との境界付近に位置している。なお、切欠部82及び切欠部84を車幅方向から見た場合の形状は、略V字状に限らず、略U字状、スリット状(矩形状)であってもよい。
【0063】
ここで、車両10の前面衝突時において、車両10の前部からロッカ70へ衝突荷重が伝達されたものとする。ロッカ70では、上フランジ部72の長手方向に入力された衝突荷重について、切欠部82及び切欠部84における車両後方側への伝達が遮断される。これにより、スポット溶接されていない第2領域SDにおいて、上フランジ72Aと上フランジ72Bとが互いに離れる方向に変形すること(口開き変形)が抑制される。つまり、ロッカ70では、上フランジ部72の長手方向に衝突荷重が入力された場合に、既述のロッカ200(
図5(A)参照)に比べて、接着部76の剥離及び打点部36の剥離(破断)を抑制することができる。
【0064】
なお、ロッカ70では、既述の通り、切欠部82と切欠部84とが車両前後方向にオフセットして形成されている。ここで、切欠部82及び切欠部84は、上フランジ部72の他の部位に比べて、作用する荷重に対する強度が低い。このため、切欠部82及び切欠部84が車幅方向に並ぶ構成では、強度が低い部分が集まることになり、他の部位との強度差が大きくなって、破断し易くなる可能性がある。しかし、ロッカ70では、切欠部82と切欠部84とが車両前後方向にオフセットして形成されていることで、強度が低い部分が上フランジ部72において分散されるので、荷重が作用した場合に、上フランジ部72が破断するのを抑制することができる。