特許第6984480号(P6984480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984480
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/16 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   G06F3/16 650
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-28223(P2018-28223)
(22)【出願日】2018年2月20日
(65)【公開番号】特開2019-144831(P2019-144831A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】久保 智景
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【審査官】 星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−147925(JP,A)
【文献】 特開2017−157117(JP,A)
【文献】 特開2014−191030(JP,A)
【文献】 特開2017−107078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0206531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/16
G06F 16/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問の入力を受け付ける受付部と、
前記受付部で受け付けられた前記質問に対する応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留し、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を行う旨および前記応答内容を出力する出力部と、
を備え、
応答を行う旨は、前記質問が行われたタイミングに関する情報を含み、
前記質問がユーザの目的地付近の渋滞状況の質問である場合、前記応答内容を出力するために必要なデータは、目的地付近の車両から取得される目的地付近の画像データであり、
前記出力部は、前記応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答までの予測時間を出力し、
前記質問が目的地付近の渋滞状況の質問である場合、応答までの予測時間は、目的地付近に向かっている画像データを取得可能な車両のうち最も目的地に近い車両が目的地付近に到達するまでの予測時間である、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留する旨を出力することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記応答内容を出力するために必要なデータは、前記応答内容に含まれるべきデータであることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、応答を保留した場合に所定の応答中止条件が満たされると、前記応答内容の出力を中止し、
前記質問が目的地付近の渋滞状況の質問である場合、前記応答中止条件は、ユーザが乗車する車両の位置が、目的地から所定距離の位置、渋滞中の道路上の位置、または、渋滞を迂回する道路上の位置になったことである、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、不足しているデータを特定する情報を出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を保留した質問を特定する情報を出力することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
質問の入力を受け付けるステップと、
受け付けられた前記質問に対する応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留し、応答までの予測時間を出力するステップと、
応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を行う旨および前記応答内容を出力するステップと、
を備え、
応答を行う旨は、前記質問が行われたタイミングに関する情報を含み、
前記質問がユーザの目的地付近の渋滞状況の質問である場合、前記応答内容を出力するために必要なデータは、目的地付近の車両から取得される目的地付近の画像データであり、
前記質問が目的地付近の渋滞状況の質問である場合、応答までの予測時間は、目的地付近に向かっている画像データを取得可能な車両のうち最も目的地に近い車両が目的地付近に到達するまでの予測時間である、ことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの質問に対する応答内容を出力する情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの発話に対して定型的な第1の応答文を生成して出力し、第1の応答文の出力と並行して当該発話に対する実質的な回答である第2の応答文を生成し、第1の応答文の出力が完了した後、第2の応答文を出力する音声対話装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−107078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、第1の応答文と第2の応答文は続けて出力されることが前提であるため、第1の応答文が出力されるとすぐに第2の応答文が出力されることをユーザに期待させる。そのため、第2の応答文を生成するために長時間を要する場合には、第2の応答文が出力されるまでに長時間を要し、ユーザに違和感を与える可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザの質問に対する応答内容を出力するときに、ユーザに違和感を与え難い情報処理装置および情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の情報処理装置は、質問の入力を受け付ける受付部と、前記受付部で受け付けられた前記質問に対する応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留し、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を行う旨および前記応答内容を出力する出力部と、を備える。応答を行う旨は、前記質問が行われたタイミングに関する情報を含む。前記質問がユーザの目的地付近の渋滞状況の質問である場合、前記応答内容を出力するために必要なデータは、目的地付近の車両から取得される目的地付近の画像データである。前記出力部は、前記応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答までの予測時間を出力する。前記質問が目的地付近の渋滞状況の質問である場合、応答までの予測時間は、目的地付近に向かっている画像データを取得可能な車両のうち最も目的地に近い車両が目的地付近に到達するまでの予測時間である。
【0007】
この態様によると、必要なデータが不足している場合、応答を保留し、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を行う旨および応答内容を出力するので、応答内容を出力するまでに長時間を要する場合にも、応答が行われることをユーザに認識させた上で応答内容を出力できる。したがって、ユーザに違和感を与え難くできる。
【0008】
前記出力部は、前記応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留する旨を出力してもよい。
【0009】
前記応答内容を出力するために必要なデータは、前記応答内容に含まれるべきデータであってもよい。
【0010】
前記出力部は、応答を保留した場合に所定の応答中止条件が満たされると、前記応答内容の出力を中止してもよい。前記質問が目的地付近の渋滞状況の質問である場合、前記応答中止条件は、ユーザが乗車する車両の位置が、目的地から所定距離の位置、渋滞中の道路上の位置、または、渋滞を迂回する道路上の位置になったことであってもよい。
【0011】
前記出力部は、前記応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、不足しているデータを特定する情報を出力してもよい。
【0013】
前記出力部は、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を保留した質問を特定する情報を出力してもよい。
【0014】
本発明の別の態様は、情報処理方法である。この方法は、質問の入力を受け付けるステップと、受け付けられた前記質問に対する応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留し、応答までの予測時間を出力するステップと、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を行う旨および前記応答内容を出力するステップと、を備える。応答を行う旨は、前記質問が行われたタイミングに関する情報を含む。前記質問がユーザの目的地付近の渋滞状況の質問である場合、前記応答内容を出力するために必要なデータは、目的地付近の車両から取得される目的地付近の画像データである。前記質問が目的地付近の渋滞状況の質問である場合、応答までの予測時間は、目的地付近に向かっている画像データを取得可能な車両のうち最も目的地に近い車両が目的地付近に到達するまでの予測時間である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザの質問に対する応答内容を出力するときに、ユーザに違和感を与え難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る車両システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の車載装置の構成を示すブロック図である。
図3図1の処理部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、実施の形態に係る車両システム1の構成を示すブロック図である。車両システム1は、車載装置10と、サーバ装置12とを備える。車両システム1は、情報処理システムと呼ぶこともできる。図1では、説明を明確化するために1台の車載装置10を図示しているが、車両システム1は、複数の車載装置10を備えることができる。
【0018】
車載装置10は、自動車である車両14に搭載されている。車載装置10は、サーバ装置12と無線通信を行う。無線通信の規格は特に限定されないが、例えば、3G(第3世代移動通信システム)、4G(第4世代移動通信システム)または5G(第5世代移動通信システム)を含む。車載装置10は、図示しない基地局を介してサーバ装置12と無線通信を行ってもよい。サーバ装置12は、例えばデータセンターに設置される。
【0019】
図2は、図1の車載装置10の構成を示すブロック図である。車載装置10は、通信部20と、処理部22と、マイク24と、GPS受信部26と、センサ28と、スピーカ30と、表示部32と、ナビゲーション部34とを備える。
【0020】
マイク24は、車両14の車室内に設けられ、車室内の音声を取得する。この音声は、ユーザである車両14の乗員による質問の発話を含む。マイク24は、取得した音声のデータを処理部22に出力する。
【0021】
GPS受信部26は、GPS衛星から信号を受信し、車両14の位置を導出する。車両14の位置は、緯度と経度を含む。GPS受信部26は、車両14の位置情報を処理部22に出力する。
【0022】
センサ28は、車両14の各種の車両情報を検出する。車両情報は、例えば、イグニッションスイッチがオンであるかオフであるかの情報を含む。センサ28は、検出した車両情報を処理部22に出力する。
【0023】
スピーカ30は、車両14の車室内に設けられ、音声を出力する音声出力装置である。表示部32は、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、車両14のセンターコンソールやダッシュボードに設けられる。ナビゲーション部34は、設定された目的地までの案内経路に従い走行案内を行う。ナビゲーション部34は、目的地情報、案内経路情報を処理部22に出力する。
【0024】
処理部22は、取得部40と、受付部42と、音声認識部44と、作成部46と、出力部48とを備える。処理部22は、情報処理装置として機能する。処理部22は、ユーザの音声の質問に対する応答内容を出力するエージェント(対話装置)と呼ぶこともできる。
【0025】
取得部40は、センサ28から自車両の車両情報を定期的に取得する。取得部40は、GPS受信部26から自車両の位置情報を定期的に取得する。取得部40は、ナビゲーション部34から目的地情報、案内経路情報を取得する。取得部40は、車両情報、位置情報、目的地情報、案内経路情報を作成部46へ出力する。
【0026】
受付部42は、マイク24から音声データを受け付ける。これは、受付部42が、ユーザの質問の入力を受け付けることに相当する。受付部42は、音声データを音声認識部44に出力する。
【0027】
音声認識部44は、受付部42から出力された音声データに基づいて、ユーザにより発話された音声を音声認識する。音声認識は、周知の技術を用いて実行できる。音声認識部44は、音声認識結果を作成部46に出力する。音声認識結果は、テキストデータを含む。
【0028】
作成部46は、音声認識部44による音声認識結果をもとに、ユーザにより発話された音声に対する応答内容を作成する。例えば、作成部46は、音声認識結果のテキストデータを構文解析して、文字列情報の意味解釈を行う。作成部46は、文字列情報の解析結果と、取得部40から出力された情報とに基づいて、受付部42で受け付けられた質問に対する応答内容を作成するために必要なデータ(以下、応答に必要なデータとも呼ぶ)を特定する。応答に必要なデータは、応答内容に含まれるべきデータである。作成部46は、応答内容の作成にデータが不要である場合には、応答内容を作成する。応答内容の作成は、周知の技術を用いて実行できる。
【0029】
作成部46は、応答に必要なデータを記憶部50から取得する。記憶部50は、予め定められた種類のデータを記憶しており、例えば、ナビゲーション部34が用いる地図データ、取得部40で取得された各種情報などを記憶している。地図データは、記憶部50に記憶されておらず、サーバ装置12に記憶されていてもよい。
【0030】
応答に必要なデータが記憶部50に存在しない場合、作成部46は、応答に必要なデータの記憶部50からの取得に失敗する。作成部46は、応答に必要なデータの記憶部50からの取得に失敗した場合、応答に必要なデータの要求を通信部20へ出力し、応答に必要なデータをサーバ装置12から取得する。
【0031】
例えば、ユーザの質問が「目的地付近の渋滞状況を見たい」である場合、作成部46は、応答に必要なデータが、ナビゲーション部34に設定されている案内経路上の目的地付近の現在の画像データであることを特定する。この画像データを記憶部50から取得できないため、作成部46は、案内経路上の目的地付近の画像データのデータ要求を通信部20へ出力する。
【0032】
通信部20は、サーバ装置12と無線通信を行う。通信部20は、作成部46から出力されたデータ要求をサーバ装置12に送信する。データ要求には、送信元になる車両14を識別するための情報が添付される。
【0033】
サーバ装置12は、車載装置10の通信部20と無線通信を行う。サーバ装置12は、車載装置10の通信部20からデータ要求を受信する。サーバ装置12は、受信したデータ要求に応じたデータを、自身のデータベース、複数の車両の車載装置、他のサーバ装置などから取得する。サーバ装置12は、データ要求に応じたデータが存在しないこと、または、車両の車載装置などと通信できないことにより、データ要求に応じたデータの取得に失敗する場合もある。
【0034】
上記の質問の例では、サーバ装置12は、データ要求に応じて、案内経路上の目的地付近の画像データを、データを取得可能な目的地付近の車両から取得する。データを取得可能な車両が目的地付近に存在しない場合、サーバ装置12は目的地付近の画像データを取得できない。
【0035】
サーバ装置12は、データ要求に応じたデータを取得した場合、取得したデータを車載装置10に送信する。このデータには、送信先になる車両14を識別するための情報が添付される。
【0036】
通信部20は、サーバ装置12から自車両宛に送信されたデータを受信する。通信部20は、受信したデータを作成部46に出力する。
【0037】
作成部46は、応答内容を作成するために必要なデータが揃った場合、記憶部50から取得したデータ、または、通信部20から出力されたデータに基づいて質問に対する応答内容を作成し、作成された応答内容を出力部48に供給する。応答内容は、文字情報を含む。応答内容は、画像情報を含んでもよい。
【0038】
出力部48は、作成部46から供給された応答内容を、スピーカ30および表示部32を介して出力する。具体的には、出力部48は、供給された応答内容の文字情報を音声信号に変換してスピーカ30に出力する。出力部48は、供給された応答内容の文字情報と画像情報から画像信号を生成して、表示部32に出力する。
【0039】
スピーカ30は、出力部48から出力された音声信号に基づいて、応答内容を音声で出力する。表示部32は、出力部48から出力された画像信号に基づいて、応答内容を文字や画像で表示する。
【0040】
一方、作成部46が応答に必要なデータの記憶部50およびサーバ装置12からの取得に失敗した場合、応答に必要なデータが不足している。作成部46は、応答に必要なデータが不足している場合、応答保留の情報を出力部48に供給する。
【0041】
出力部48は、作成部46から応答保留の情報が供給された場合、即ち応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留する旨を、スピーカ30および表示部32を介して出力し、応答を保留する。応答を保留する旨として、例えば、「応答のためのデータが足りないため、応答を保留します」などの所定の文字情報が挙げられる。
【0042】
作成部46は、応答に必要なデータが不足している場合、データ取得のタスクを記憶しておき、定期的に、応答に必要なデータを記憶部50またはサーバ装置12から取得する。作成部46がデータ取得のタスクに従い定期的に応答に必要なデータを取得する間にも、受付部42は、ユーザの新たな質問の入力を受け付けることができ、出力部48は、新たな質問に対する応答内容を出力することができる。作成部46は、データ取得のタスクを複数記憶することもできる。
【0043】
作成部46は、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、記憶部50から取得したデータ、または、通信部20から出力されたデータに基づいて応答内容を作成し、応答再開の情報および作成された応答内容を出力部48に供給する。
【0044】
出力部48は、作成部46から応答再開の情報および応答内容が供給された場合、即ち応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を保留していた質問に関して応答を行う旨および応答内容を、スピーカ30および表示部32を介して出力する。応答を行う旨として、例えば、「先ほどの質問に回答します」、「昨日の質問に回答します」などの応答を保留していた質問が行われたタイミングに関する情報を含む所定の文字情報が挙げられる。
【0045】
質問が「目的地付近の渋滞状況を見たい」である前述の例では、データを取得可能な車両が目的地付近に存在しない状況から時間が経過して、データを取得可能な車両が目的地付近に存在するようになった場合、サーバ装置12は、データ要求に応じて、その車両から目的地付近の画像データを取得できる。作成部46は、サーバ装置12から目的地付近の画像データを取得し、「目的地付近の道路状況をディスプレイに表示しました」などの文字情報および目的地付近の画像情報を含む応答内容を作成する。出力部48は、応答を行う旨を出力し、続いて応答内容を出力する。
【0046】
次に、別の例について説明する。ユーザの質問が「近くのイタリアンレストランを教えて」である場合、作成部46は、応答に必要なデータが、現在位置から所定距離以内のイタリアンレストランのデータであることを特定する。所定距離は、例えば、10キロメートルなどである。
【0047】
現在位置から所定距離以内にイタリアンレストランが存在しない場合、作成部46は、現在位置から所定距離以内のイタリアンレストランのデータを記憶部50およびサーバ装置12から取得できない。そこで、出力部48は、応答を保留する旨を出力し、応答を保留する。
【0048】
車両14が移動して、現在位置から所定距離以内にイタリアンレストランが存在するようになった場合、作成部46は、現在位置から所定距離以内のイタリアンレストランのデータを記憶部50から取得できる。このようなデータは、記憶部50に記憶された地図データに含まれている。出力部48は、応答を行う旨を出力し、続いて「約10キロメートル先にABCDというイタリアンレストランがあります」などの応答内容を出力する。
【0049】
次に、さらに別の例について説明する。通信環境に起因して車載装置10とサーバ装置12の間で通信できず、作成部46がデータの取得に失敗した場合にも、出力部48は、応答を保留する旨を出力し、応答を保留する。その後、車載装置10とサーバ装置12の間で通信可能になり、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、出力部48は、応答を行う旨を出力し、続いて応答内容を出力する。
【0050】
次に、応答内容の作成の中止処理について説明する。作成部46は、出力部48が応答を保留した場合に所定の応答中止条件が満たされると、データ取得のタスクを消去し、記憶部50からのデータの取得を中止し、サーバ装置12へのデータ要求の送信を中止し、応答内容の作成を中止する。出力部48は、応答を保留した場合に応答中止条件が満たされると、応答内容の出力を中止する。
【0051】
応答中止条件は、(1)受付部42がユーザの質問取り下げの入力を受け付けたこと、または、(2)受付部42がユーザの質問変更の入力を受け付けたことである。これらは、質問によらず共通である。
【0052】
また、応答中止条件は、質問毎に異なる条件をさらに含んでもよい。この場合、作成部46が質問の文字列情報の解析結果に基づいて応答中止条件を設定してもよいし、応答中止条件は、想定される質問の種類毎に予め用意されていてもよい。
【0053】
例えば、ユーザの質問が前述の「目的地付近の渋滞状況を見たい」である場合、応答中止条件は、前述の条件(1)、前述の条件(2)、または、(3)自車両の位置が所定位置になったことである。所定位置は、目的地の近くの位置、渋滞中の道路上の位置、または、渋滞を迂回する道路上の位置である。自車両の位置がこのような位置になった場合、応答は不要な可能性がある。
【0054】
また、ユーザの質問が「近くのイタリアンレストランを教えて」である場合、応答中止条件は、前述の条件(1)、前述の条件(2)、(3)受付部42が質問の入力を受け付けてから所定の第1期間が経過したこと、または、(4)自車両の位置が質問の施設と同種の施設の位置にあり、イグニッションスイッチが所定の第2期間オフになったことである。第1期間と第2期間は、実験などにより適宜定めることができる。例えば、第1期間は3時間前後である。質問から第1期間が経過した場合、ユーザは既に食事を終えている可能性があり、応答は不要な可能性がある。第2期間は、飲食を行うために要する時間である。例えば、質問のイタリアンレストランと同種の飲食可能な施設の位置において、イグニッションスイッチが第2期間オフになった場合、ユーザは、この施設で飲食を行った可能性があり、応答は不要な可能性がある。
【0055】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0056】
次に、以上の構成による車両システム1の全体的な動作を説明する。図3は、図1の処理部22の処理を示すフローチャートである。図3の処理は、応答内容の作成にデータが必要な場合の処理であり、定期的に繰り返される。
【0057】
受付部42が質問の入力を受け付けていない場合(S10のN)、処理を終了する。受付部42が質問の入力を受け付けた場合(S10のY)、音声認識部44は、音声を音声認識し(S12)、作成部46は、音声認識結果をもとに、応答に必要なデータを取得する(S14)。応答に必要なデータが不足していない場合(S16のN)、作成部46は、応答内容を作成し(S18)、出力部48は、応答内容を出力する(S20)。
【0058】
応答に必要なデータが不足している場合(S16のY)、出力部48は、応答を保留する旨を出力し(S22)、応答中止条件が満たされた場合(S24のY)、処理を終了する。応答中止条件が満たされていない場合(S24のN)、作成部46は、応答に必要なデータを取得し(S26)、応答に必要なデータが不足している場合(S28のY)、ステップS24に戻る。応答に必要なデータが不足していない場合(S28のN)、作成部46は、応答内容を作成し(S30)、出力部48は、応答を行う旨を出力し(S32)、ステップS20に移行する。
【0059】
このように本実施の形態によれば、応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留し、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を行う旨および応答内容を出力するので、応答内容を出力するまでに長時間を要する場合にも、応答が行われることをユーザに認識させた上で応答内容を出力できる。したがって、ユーザに違和感を与え難くできる。
【0060】
また、応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留する旨を出力するので、応答を保留していることをユーザに容易に認識させることができる。よって、応答内容がすぐに出力されない場合にも、質問は受け付けられていることをユーザに認識させることができ、ユーザに再質問させ難くできる。
【0061】
ユーザの質問の数時間後、翌日または数日後などにデータが揃い、応答内容が出力される場合、ユーザはデータが揃うまで何度も同じ質問を行うことなく応答内容を得ることができる。また、ユーザは、質問したことを忘れていたとしても、質問の時点で興味を持っていた情報を取得でき、便利である。
【0062】
また、応答を保留した場合に応答中止条件が満たされると、応答内容の出力を中止するので、ユーザにとって不要になった可能性のある応答内容を出力しないようにできる。よって、ユーザに煩わしさを感じさせ難くできる。
【0063】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態はあくまでも例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0064】
(第1の変形例)
例えば、出力部48は、応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答を保留する旨を出力せずに、応答を保留してもよい。この変形例では、応答内容を出力するために必要なデータが揃わないまま応答中止条件が満たされて応答が中止される状況で、応答が行われることをユーザに期待させすぎないようにできる。
【0065】
(第2の変形例)
作成部46は、応答に必要なデータが不足している場合、不足しているデータを特定する情報を出力部48に供給してもよい。出力部48は、応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、作成部46から供給された不足しているデータを特定する情報を出力してもよい。この変形例では、応答内容がすぐに出力されない場合にも、質問は受け付けられていること、および、質問が正しく受け付けられているか否かをユーザに認識させることができる。
【0066】
(第3の変形例)
作成部46は、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を保留した質問を特定する情報を出力部48に供給してもよい。出力部48は、応答を保留した状態で不足しているデータが揃った場合、応答を保留した質問を特定する情報を出力してもよい。応答を保留した質問を特定する情報は、応答を行う旨に含まれてもよい。この変形例では、質問から応答までの時間が比較的長くなった場合にも、どのような質問に対する応答内容が出力されたかユーザに容易に認識させることができる。
【0067】
(第4の変形例)
作成部46は、応答に必要なデータが不足している場合、応答までの予測時間を出力部48に供給してもよい。出力部48は、応答内容を出力するために必要なデータが不足している場合、応答までの予測時間を出力してもよい。例えば、ユーザの質問が「目的地付近の渋滞状況を見たい」である場合、作成部46は、目的地付近に向かっているデータを取得可能な車両のうち最も目的地に近い車両が目的地付近に到達するまでの予測時間をサーバ装置12から取得し、取得した予測時間を、応答までの予測時間とする。この変形例では、応答内容が出力されるまでの時間の目安をユーザに認識させることができる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
【0068】
(第5の変形例)
出力部48は、応答を保留した場合に応答中止条件が満たされると、応答の中止を確認する情報を出力してもよい。そして、出力部48は、受付部42がユーザの応答中止を承認する入力を受け付けた場合に、応答内容の出力を中止してもよい。この変形例では、ユーザの意図と異なる応答の中止を抑制できる。
【0069】
また、第1の変形例から第5の変形例のうちの少なくとも2つを組み合わせてもよい。
【0070】
また、一例として車載装置10について説明したが、車載装置10は、車両に搭載されないスマートフォン、パーソナルコンピュータなどとして構成されてもよい。
【0071】
また、通信部20は、他車両と車車間通信を行い、応答に必要なデータを他車両のエージェントから取得してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…車両システム、10…車載装置、12…サーバ装置、22…処理部、40…取得部、42…受付部、44…音声認識部、46…作成部、48…出力部。
図1
図2
図3