(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984481
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】鋳鋼部材の溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20211213BHJP
B23P 6/04 20060101ALI20211213BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
B23K31/00 D
B23P6/04
B23K9/04 V
B23K9/04 N
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-28728(P2018-28728)
(22)【出願日】2018年2月21日
(65)【公開番号】特開2019-141885(P2019-141885A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 啓司
(72)【発明者】
【氏名】吉光 昭典
(72)【発明者】
【氏名】片岡 敏明
(72)【発明者】
【氏名】船越 健太
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6217889(JP,B1)
【文献】
特開昭52−97325(JP,A)
【文献】
特開昭52−53742(JP,A)
【文献】
米国特許第3142114(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B23P 6/04
B23K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鋼部材に発生した亀裂を除去し、前記亀裂の深さに応じた形状の開先を形成する第1工程と、
前記開先の底面よりも高く前記鋳鋼部材の表面よりも低い第1位置まで、前記開先に溶接材を供給して第1肉盛を形成する第2工程と、
前記開先の底面よりも高く前記第1肉盛の表面よりも低い第2位置まで、前記第1肉盛に前記開先の底面に向かう方向に嵌入孔を穿設する第3工程と、
前記第1肉盛の表面よりも高い第3位置まで、前記嵌入孔に前記溶接材と実質的に同一の材料で形成される嵌入ピンを嵌入する第4工程と、
前記嵌入ピンを覆うように、前記開先に前記溶接材を供給して第2肉盛を形成する第5工程と、
を含むことを特徴とする鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項2】
前記開先は、前記鋳鋼部材の深さ方向に向かうにつれて径が小さくなる四角錐台の形状を呈する
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項3】
前記嵌入孔は、前記第1肉盛が完全に冷却する前に穿設される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項4】
前記嵌入孔の径は、前記開先の底面の径よりも小さい
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項5】
前記嵌入ピンは、前記嵌入孔に嵌入されたとき、前記鋳鋼部材の表面の位置まで突出する長さを有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項6】
前記嵌入孔は、前記開先の底面の真上に穿設される第1嵌入孔と、前記第1嵌入孔に並んで第1方向に沿って穿設される第2嵌入孔と、を含み、
前記嵌入ピンは、前記第1嵌入孔に嵌入される第1嵌入ピンと、前記第2嵌入孔に嵌入される第2嵌入ピンと、を含む
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項7】
前記嵌入孔は、前記第1嵌入孔に並んで前記第1方向とは直交する第2方向に沿って穿設される第3嵌入孔を更に含み、
前記嵌入ピンは、前記第3嵌入孔に嵌入される第3嵌入ピンを更に含む
ことを特徴とする請求項6に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項8】
前記第1嵌入孔、前記第2嵌入孔、前記第3嵌入孔は、それぞれ同一の径を有し、
前記第1嵌入ピン、前記第2嵌入ピン、前記第3嵌入ピンは、それぞれ同一の径を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項9】
前記溶接材は、ニッケル合金を含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【請求項10】
前記嵌入ピンは、ニッケル合金を含んで形成される
ことを特徴とする請求項9に記載の鋳鋼部材の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳鋼部材の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所の施設内には、発電機を発電させるための蒸気タービン車室や弁等の鋳鋼製の設備が設置されている。しかし、これらの鋳鋼製の設備は、高温の環境下で運転されるため、起動と停止が繰り返されると、熱応力による影響を受けて亀裂が発生することとなる。
【0003】
そこで、鋳鋼製の設備に亀裂が発生した場合、例えば以下の対処方法が適宜実施されている。
【0004】
先ず、第1の対処方法として、亀裂を研削等で除去し、亀裂を除去した後の肉厚が予め定められた最小肉厚に達したときに設備を新たな設備に交換する方法が挙げられる。
【0005】
又、第2の対処方法として、亀裂を研削等で除去して開先を形成し、開先に溶接材を供給して肉盛を形成し、溶接後熱処理を行って設備の肉厚を回復する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−112574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、第1の対処方法の場合、蒸気タービン車室や弁等の大型の鋳鋼製の設備を新たな設備に交換するに際して、長期の時間を要する虞があった。
【0008】
又、第2の対処方法の場合、鋳鋼製の設備を工場まで運搬して溶接後熱処理を行う方法と、発電所の施設内(現場)で溶接後熱処理を行う方法と、がある。前者の場合、鋳鋼製の設備を工場に持ち帰らなければならないが、工場の炉内で鋳鋼製の設備全体に対して溶接後熱処理を行うため、溶接残留応力を効果的に低減することができる。一方、後者の場合、現場で溶接後熱処理を行えるが、当該溶接後熱処理は鋳鋼製の設備における溶接個所をヒータ等で部分的に加熱する処理であるため、前者と同様に溶接残留応力を低減することはできない。特に、亀裂が深く溶接材の使用量が多くなった場合、溶接後熱処理が更に不十分となって、溶接残留応力に起因して溶接変形を生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、鋳鋼製の設備が設置されている施設内において、溶接残留応力を効果的に低減するための鋳鋼部材の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決する主たる本発明は、鋳鋼部材の溶接方法として、鋳鋼部材に発生した亀裂を除去し、前記亀裂の深さに応じた形状の開先を形成する第1工程と、前記開先の底面よりも高く前記鋳鋼部材の表面よりも低い第1位置まで、前記開先に溶接材を供給して第1肉盛を形成する第2工程と、前記開先の底面よりも高く前記第1肉盛の表面よりも低い第2位置まで、前記第1肉盛に前記開先の底面に向かう方向に嵌入孔を穿設する第3工程と、前記第1肉盛の表面よりも高い第3位置まで、前記嵌入孔に前記溶接材と実質的に同一の材料で形成される嵌入ピンを嵌入する第4工程と、前記嵌入ピンを覆うように、前記開先に前記溶接材を供給して第2肉盛を形成する第5工程と、を含む。
【0011】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋳鋼製の設備が設置されている施設内において、溶接残留応力を効果的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、蒸気タービン車室に亀裂が発生した様子を示す側断面図である。
【
図1B】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、亀裂の発生個所に開先を形成した様子を示す側断面図である。
【
図1C】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、開先に第1肉盛を形成した様子を示す側断面図である。
【
図1D】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、第1肉盛に嵌入孔を穿設した様子を示す側断面図である。
【
図1E】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、第1肉盛に嵌入孔を穿設した様子を示す上面図である。
【
図1F】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、嵌入孔に嵌入ピンを打ち込んだ様子を示す側断面図である。
【
図1G】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、嵌入孔に嵌入ピンを打ち込んだ様子を示す嵌入孔に嵌入ピンを打ち込んだ様子を示す上面図である。
【
図1H】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子のうち、開先に第2肉盛を形成した様子を示す側断面図である。
【
図2】本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0015】
===溶接方法===
図1A〜
図1Hは、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を用いて鋳鋼部材の亀裂を補修する際の様子を段階的に示す図である。以下、
図1A〜
図1Hを具体的に説明する。
図1Aは、蒸気タービン車室に亀裂が発生した様子を示す側断面図である。
図1Bは、亀裂の発生個所に開先を形成した様子を示す側断面図である。
図1Cは、開先に第1肉盛を形成した様子を示す側断面図である。
図1Dは、第1肉盛に嵌入孔を穿設した様子を示す側断面図であり、
図1Eは、第1肉盛に嵌入孔を穿設した様子を示す上面図である。
図1Fは、嵌入孔に嵌入ピンを打ち込んだ様子を示す側断面図であり、
図1Gは、嵌入孔に嵌入ピンを打ち込んだ様子を示す上面図である。
図1Hは、開先に第2肉盛を形成した様子を示す側断面図である。又、
図2は、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を示すフローチャートである。尚、本実施形態において、鋳鋼部材は例えば火力発電所の施設内において高温の環境下に設置された鋳鋼製の蒸気タービン車室であることとし、蒸気タービンの起動及び停止が繰り返されることによって発生した亀裂を補修する場合の溶接方法について説明する。
【0016】
<第1工程>
図1A、
図1B、
図2のステップS1〜S3を参照して、第1工程を説明する。
【0017】
先ず、蒸気タービン車室1に亀裂2が発生しているか否かを判断する(ステップS1)。尚、亀裂2の有無を判断する場合、例えば、開放点検の際に非破壊検査のひとつである浸透探傷検査等を行うことによって判断すればよい。
【0018】
次に、蒸気タービン車室1に亀裂2が発生している場合(ステップS1:YES)、例えば亀裂進展予測プログラムによって、蒸気タービン車室1の板厚方向(深さ方向)における亀裂2の進行の度合を解析し、亀裂2が蒸気タービン車室1の必要最小肉厚まで到達することが懸念されるときに亀裂2の深さに応じて開先3の形状を決定する(ステップS2)。尚、本実施形態において、開先3は、例えば蒸気タービン車室1の板厚方向に向かうにつれて径が小さくなる四角錐台の形状を呈することとする。一方、蒸気タービン車室1に亀裂2が発生していない場合(ステップS1:NO)、蒸気タービン車室1に亀裂2が発生しているか否かの判断を繰り返す。
【0019】
次に、亀裂2を研削して除去しつつ四角錘台の形状を呈する開先3を形成する(ステップS3)。尚、開先3を形成する場合、例えばグラインダー(不図示)を用いればよい。
【0020】
<第2工程>
図1C及び
図2のステップS4を参照して、第2工程を説明する。
【0021】
開先3の底面31よりも高く蒸気タービン車室1の表面11よりも低い第1位置P1まで、開先3に溶融状態の溶接材を供給し、アーク溶接によって第1肉盛4を形成する(ステップS4)。尚、第1肉盛4は、溶接材が固化することによって形成され、更に、複数の小肉盛41が隣り合うとともに層状に重なり合うことによって形成されている。又、溶接材はニッケル及びクロムを含有するものとする。そして、溶接材がニッケルを含有することによって、溶接個所が急冷に対して硬化しにくくなり、溶接材がクロムを含有することによって、溶接個所が高温下で酸化しにくくなる利点が得られる。
【0022】
<第3工程>
図1D、
図1E、
図2のステップS5を参照して、第3工程を説明する。
【0023】
第1肉盛4が完全に冷却する前に、開先3の底面31よりも高く第1肉盛4の表面42よりも低い第2位置P2まで、第1肉盛4に開先3の底面31に向かう方向に嵌入孔5を穿設する(ステップS5)。尚、嵌入孔5を穿設する場合、周知のドリル(不図示)を用いればよい。当該ドリルには、開先3の底面31の径よりも僅かに小さい径を有するドリル刃を装着し、これによって、嵌入孔5は、開先3の底面31の径よりも僅かに小さい径を有することとする。
【0024】
嵌入孔5は、第1嵌入孔51、第2嵌入孔52、第3嵌入孔53からなる。第1嵌入孔51は、例えば円柱形状を呈する孔であって、開先3の底面31の真上に穿設される。第1嵌入孔51を穿設するときの第2位置P2は、開先3の底面31に当たらない位置であって開先3の底面31の僅かに上の位置とされる(位置P21と称する)。又、第2嵌入孔52は、例えば円柱形状を呈する孔であって、第1嵌入孔51の両側に並ぶように複数穿設され、更に、開先3の開口32を形成する4本の辺のうち対向する2本の辺33,34の方向(第1方向)に沿うように穿設される。第2嵌入孔52を穿設したときの第2位置P2は、位置P21よりも高い位置であって開先3の側面35に当たらない最低位置とされる(位置P22と称する)。又、第3嵌入孔53は、例えば円柱形状を呈する孔であって、第1嵌入孔51の両側に並ぶように複数穿設され、更に、開先3の開口32を形成する4本の辺のうち対向する他の2本の辺36,37の方向(第1方向に直交する第2方向)に沿うように穿設される。第3嵌入孔53を穿設したときの第2位置P2は、位置P21よりも高い位置であって開先3の側面35に当たらない最低位置とされる(位置P23と称する)。
【0025】
このように、第1肉盛4が完全に冷却する前に、第1嵌入孔51及び第2嵌入孔52からなる列と、第1嵌入孔51及び第3嵌入孔53からなる列と、をそれぞれ異なる2方向に穿設するため、第1肉盛4の収縮力が開放され、亀裂2の発生個所における溶接変形が緩和される。
【0026】
<第4工程>
図1F、
図1G、
図2のステップS6を参照して、第4工程を説明する。
【0027】
嵌入ピン6が第1肉盛4の表面42よりも高い第3位置P3まで突出するように、嵌入孔5に嵌入ピン6を打ち込む(ステップS6)。
【0028】
嵌入ピン6は、第1嵌入ピン61、第2嵌入ピン62、第3嵌入ピン63からなる。第1嵌入ピン61は、第1嵌入孔51に嵌入する円柱形状を呈するピンであって、第1嵌入孔51の径よりも僅かに小さい径を有し、第1嵌入孔51の底面の位置まで嵌入したときに蒸気タービン車室1の表面11の位置まで突出する長さを有する。第2嵌入ピン62は、第2嵌入孔52に嵌入する円柱形状を呈するピンであって、第2嵌入孔52の径よりも僅かに小さい径を有し、第2嵌入孔52の底面の位置まで嵌入したときに蒸気タービン車室1の表面11の位置まで突出する長さを有する。第3嵌入ピン63は、第3嵌入孔53に嵌入する円柱形状を呈するピンであって、第3嵌入孔53の径よりも僅かに小さい径を有し、第3嵌入孔53の底面の位置まで嵌入したときに蒸気タービン車室1の表面11の位置まで突出する長さを有する。つまり、嵌入孔5に嵌入ピン6を打ち込んだときの第3位置P3は、蒸気タービン車室1の表面11の位置であることとする。
【0029】
嵌入ピン6は、第1肉盛4を形成するための溶接材と同一の材料で形成される。本実施形態において、嵌入ピン6はニッケル及びクロムを含有するものとする。
【0030】
<第5工程>
図1H及び
図2のステップS7を参照して、第5工程を説明する。
【0031】
第1肉盛4の上において嵌入ピン6の周囲を覆うように、開先3に溶融状態の溶接材を供給し、アーク溶接によって第2肉盛7を形成する(ステップS7)。尚、第2肉盛7は、溶接材が固化することによって形成され、更に、複数の小肉盛71が隣り合うとともに層状に重なり合うことによって形成される。又、第2肉盛7を形成するための溶接材は、第1肉盛4を形成するための溶接材と同様に、ニッケル及びクロムを含有するものとする。
【0032】
===まとめ===
以上説明したように、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法は、蒸気タービン車室1に発生した亀裂2を除去し、亀裂2の深さに応じた形状の開先3を形成する第1工程と、開先3の底面31よりも高く蒸気タービン車室1の表面11よりも低い第1位置P1まで、開先3に溶接材を供給して第1肉盛4を形成する第2工程と、開先3の底面31よりも高く第1肉盛4の表面42よりも低い第2位置P2まで、第1肉盛4に開先3の底面31に向かう方向に嵌入孔5を穿設する第3工程と、第1肉盛4の表面42よりも高い第3位置P3(蒸気タービン車室1の表面1Aの位置)まで、嵌入孔5に溶接材と実質的に同一の材料で形成される嵌入ピン6を嵌入する第4工程と、嵌入ピン6を覆うように、開先3に溶接材を供給して第2肉盛7を形成する第5工程と、を含む。そして、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法を採用することによって、蒸気タービン車室1の施設内において、溶接残留応力を効果的に低減することが可能となる。
【0033】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、開先3は、蒸気タービン車室1の板厚方向(深さ方向)に向かうにつれて径が小さくなる四角錐台の形状を呈する。これによって、開先3の断面積が開口32に向かうにつれて広がるため、嵌入孔5に嵌入ピン6を確実に打ち込むことが可能となる。
【0034】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、嵌入孔5は、第1肉盛4が完全に冷却する前に穿設される。これによって、第1肉盛4の収縮力が開放され、亀裂2の発生個所における溶接変形を抑制が緩和することが可能となる。
【0035】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、嵌入孔5の径は、開先3の底面31の径よりも僅かに小さい値である。これによって、嵌入ピン6の径を比較的大径とできるため、亀裂2の発生個所の溶接強度を増すことが可能となる。
【0036】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、嵌入ピン6は、嵌入孔5に嵌入されたとき、蒸気タービン車室1の表面11の位置まで突出する長さを有する。これによって、嵌入ピン6を比較的長尺とできるため、亀裂2の発生個所の溶接強度を増すことが可能となる。
【0037】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、嵌入孔5は、開先3の底面31の真上に穿設される第1嵌入孔51と、第1嵌入孔51に並んで第1方向に沿って穿設される第2嵌入孔52と、第1嵌入孔51に並んで第1方向とは直交する第2方向に沿って穿設される第3嵌入孔53と、を含み、嵌入ピン6は、第1嵌入孔51に嵌入される第1嵌入ピン61と、第2嵌入孔52に嵌入される第2嵌入ピン62と、第3嵌入孔53に嵌入される第3嵌入ピン63と、を含む。
【0038】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、第1嵌入孔51、第2嵌入孔52、第3嵌入孔53は、それぞれ同一の径を有し、第1嵌入ピン61、第2嵌入ピン62、第3嵌入ピン63は、それぞれ同一の径を有する。
【0039】
又、本実施形態に係る鋳鋼部材の溶接方法において、溶接材及び嵌入ピン6は、ニッケル合金を含む。これによって、溶接個所が急冷に対して硬化しにくくなるため、嵌入孔5に嵌入ピン6を確実に打ち込むことが可能となる。
【0040】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 蒸気タービン車室
11 表面
2 亀裂
3 開先
31 底面
32 開口
33,34,36,37 辺
35 側面
4 第1肉盛
41 小肉盛
42 表面
5 嵌入孔
51 第1嵌入孔
52 第2嵌入孔
53 第3嵌入孔
6 嵌入ピン
61 第1嵌入ピン
62 第2嵌入ピン
63 第3嵌入ピン
7 第2肉盛
71 小肉盛