(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記左側フロアメンバ及び前記右側フロアメンバは、断面が両側鍔付溝を有するハット型で溝方向が車両前後方向に延びており、溝底部に締結用貫通穴を有し、且つ、両側鍔が前記フロアパネルに固定されている鍔付メンバ構造体であり、
前記締結部は、
断面が両側鍔付溝を有する前記ハット型で溝方向が前記鍔付メンバ構造体の溝方向に直交する方向に延びており、且つ前記両側鍔が前記鍔付メンバ構造体の溝底部に固定されている鍔付保持体と、
前記鍔付保持体の溝壁部と前記鍔付メンバ構造体の溝壁部とに囲まれた保持空間内に配置され、軸方向にめねじ部を有するチューブナットと、
を含み、前記チューブナットは、上端部が前記鍔付保持体の溝底部に固定され、下端部が前記鍔付メンバ構造体の前記溝底部に固定されている、請求項1または2に記載の車体構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が前突等の衝撃を受けると、車体の左右両側に前後方向に延びる一対のサイドメンバが変形し、場合によっては、車室空間が大幅に狭くなることが生じ得る。特に、一対のサイドメンバの間隔を車両幅方向に広げると、上面視でサイドメンバが車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜して曲がった形状となり、衝撃を受けると曲りの変極点で折れ曲がることが生じ得る。車両前後方向に延びるサイドメンバのうちで、傾斜部を有する部分はフロアサイドメンバである。フロアサイドメンバをフロアメンバと呼ぶと、一対のフロアメンバにおいて、上面視で車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する傾斜部について耐衝撃性を向上させる車体構造が要望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車体構造は、車室の床部のフロアパネルと、上面視で、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する左傾斜部を有する左側フロアメンバ及び右傾斜部を有する右側フロアメンバと、左側フロアメンバ及び右側フロアメンバよりも車両下方側に設けられるバッテリ支持フレームと、左側フロアメンバ及び右側フロアメンバを介してバッテリ支持フレームをフロアパネルに固定する締結部と、を備え、バッテリ支持フレームは、フロアパネルに対し締結部を介して、左傾斜部及び右傾斜部に締結されている。
【0007】
上記構成によれば、前突等の衝撃を受けると折れ曲がりやすい左傾斜部と右傾斜部がフロアパネルとバッテリ支持フレームとで挟み込んで締結部によって固定される。左傾斜部と右傾斜部とは、バッテリ支持フレームの剛性を介して互いに接続されるので、フロアメンバの傾斜部についての耐衝撃性が向上する。
【0008】
本開示に係る車体構造において、左傾斜部は、車両前方側の傾斜左前方端、及び車両後方側の傾斜左後方端の間で車両外側に傾斜し、右傾斜部は、車両前方側の傾斜右前方端、及び車両後方側の傾斜右後方端の間で車両外側に傾斜しており、バッテリ支持フレームは、左傾斜部に対しては、傾斜左前方端、傾斜左前方端と傾斜左後方端の中間の傾斜左中間点、及び、傾斜左後方端で固定され、右傾斜部に対しては、傾斜右前方端、傾斜右前方端と傾斜右後方端の中間の傾斜右中間点、及び、傾斜右後方端で固定されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、前突等の衝撃を受けると折れ曲がりやすい左傾斜部と右傾斜部のそれぞれにおける前方端、中間点、後方端の3点が、フロアパネルとバッテリ支持フレームとで挟み込んで締結部によって固定される。これによって、フロアメンバの傾斜部のほぼ全領域について耐衝撃性が向上する。
【0010】
本開示に係る車体構造において、バッテリ支持フレームは、左端部が傾斜左前方端に固定され右端部が傾斜右前方端に固定された第一クロスメンバと、左端部が傾斜左中間点に固定され右端部が傾斜右中間点に固定された第二クロスメンバと、左端部が傾斜左後方端に固定され右端部が傾斜右後方端に固定された第三クロスメンバと、第一クロスメンバ、第二クロスメンバ、及び、第三クロスメンバと互いに固定され、且つ、車両前後方向に延びている複数のストレートメンバと、を含むことが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、3つのクロスメンバと複数のストレートメンバとは互いに固定されてトラス構造を形成する。トラス構造は、単なる棒材や板材に比べて曲げ剛性が高い。トラス構造のバッテリ支持フレームを用いることで、前突等の衝撃を受けると折れ曲がりやすい傾斜部の耐衝撃性が向上する。
【0012】
本開示に係る車体構造において、左側フロアメンバ及び右側フロアメンバは、断面が両側鍔付溝を有するハット型で溝方向が車両前後方向に延びており、溝底部に締結用貫通穴を有し、且つ、両側鍔がフロアパネルに固定されている鍔付メンバ構造体であり、締結部は、断面が両側鍔付溝を有するハット型で溝方向が鍔付メンバ構造体の溝方向に直交する方向に延びており、且つ両側鍔が鍔付メンバ構造体の溝底部に固定されている鍔付保持体と、鍔付保持体の溝壁部と鍔付メンバ構造体の溝壁部とに囲まれた保持空間内に配置され、軸方向にめねじ部を有するチューブナットと、を含み、チューブナットは、上端部が鍔付保持体の溝底部に固定され、下端部が鍔付メンバ構造体の溝底部に固定されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、チューブナット保持体の溝壁部と鍔付メンバ構造体の溝壁部に囲まれた保持空間内にチューブナットが配置されるので、外力等によってチューブナットが傾斜することを防止できる。この構造を有する締結部を用いることで、フロアパネルとバッテリ支持フレームの間にフロアメンバがしっかり固定され、耐衝撃性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の車体構造によれば、一対のフロアメンバにおいて、上面視で車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する傾斜部について耐衝撃性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、車両は、フロント側、車室領域、リア側に分けて、フロント側にフロントサイドメンバ、リア側にリアサイドメンバ、その間の車室領域にフロアメンバを有するものを述べるが、これは説明のための例示である。車体の上面視で、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する傾斜部を有する左側フロアメンバ及び右側フロアメンバを備えていれば、フロント側、車室領域、リア側と分けない車両であってもよい。以下では、車両は左ハンドルを備えているものとし、前突については、車両の左前側にオフセットして衝撃を受けるものとするが、これは説明のための例示である。右ハンドルを備える車両であっても同様に適用が可能である。
【0017】
以下に述べる形状等は、説明のための例示であって、車体構造の仕様等により、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1Aは、車両10の側面図である。以下の各図において、車両前後方向、車両上下方向、車両幅方向を適宜示す。車両前後方向については、FRと示す方向が車両前方側の方向で、反対方向が車両後方側の方向である。車両上下方向については、UPと示す方向が路面6に対して上側の車両上方側であり、反対方向が路面6に向かう方向である車両下方側である。車両幅方向については、車両10の車室11内の利用者8が車両10の後方側から前方側を見たときに、車両10の右側が右側の方向で、車両10の左側が左側の方向である。
【0019】
図1Aは、車両10の左側面図に相当し、車両10の左前輪12と左後輪14とが示される。大容量のバッテリ16は、車両10の床下のほぼ全領域に跨って配置される。
【0020】
図1Bは、
図1Aの車両10をIB方向から見た車体構造20の底面図である。IB方向は、車両下方側から車両上方側を見る方向である。ここで車体構造20とは、車両10のボデーに関する構造のうち、アンダーボデーに関する構造である。
【0021】
車体構造20における各要素は、車両前後方向に沿った中心線C−C’に対して左右対称に配置される。C側が車両前方側で、C’側が車両後方側である。車両幅方向について車両左側と車両右側の相違を問わずに示す場合には、中心線C−C’線から車両10の外側に向かう方向を、車両外側と呼び、中心線C−C’に向かう方向を車両内側と呼ぶ。以下では、車両10は左ハンドルを備え、車両左側にオフセット衝突等を受ける場合について述べる。
【0022】
車体構造20は、車両前後方向について、車両前方側の構造であるフロント側構造22、車室11の下部構造である車室側構造24、及び、車両後方側の構造であるリア側構造26に大別される。後述するサイドメンバの傾斜部は、車室側構造24にあるので、以下では、車体構造20のうちで、特に車室側構造24について述べる。
【0023】
フロアパネル28(
図3参照)は、車室11の床面を構成するパネル部材である。車体構造20においては、最も車両上方側に配置される部材である。車体構造20における各要素は、特に断らない限り、フロアパネル28よりも車両下方側に配置される。
図1Bにおいては、バッテリ支持フレーム80、大容量のバッテリ16等に隠されてフロアパネル28はほとんど図示されない。
【0024】
左ロッカ30と右ロッカ32は、車両10のドアの下方側において車両前後方向に沿って延びる。フロアパネル28の左端部は左ロッカ30に固定され、フロアパネル28の右端部は右ロッカ32に固定される。ここで固定とは、固定して接続することを意味する。固定手段としては、溶接が用いられ、固定箇所によっては、ボルトとナット、ボルトとねじ穴を用いたねじ締結が用いられる。以下で述べる「固定」についても同様である。
【0025】
左ロッカ30及び右ロッカ32に対して車両内側にそれぞれ配置されて車両前後方向に延びる部材は、サイドメンバと呼ばれる。サイドメンバのうち、フロント側構造22における部分は、左フロントサイドメンバ34及び右フロントサイドメンバ36である。サイドメンバのうち、リア側構造26における部分は、左リアサイドメンバ38及び右リアサイドメンバ40である。サイドメンバのうち、車室側構造24における部分は、左側フロアサイドメンバ50及び右側フロアサイドメンバ52である。以下では、左側フロアサイドメンバ50を、左側フロアメンバ50と呼び、右側フロアサイドメンバ52を右側フロアメンバ52と呼ぶ。
【0026】
左側フロアメンバ50は、前端部が左フロントサイドメンバ34に固定されており、後端部が左リアサイドメンバ38に固定される。左側フロアメンバ50は、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する左傾斜部54を有する。同様に、右側フロアメンバ52は、前端部が右フロントサイドメンバ36に固定されており、後端部が右リアサイドメンバ40に固定される。右側フロアメンバ52は、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する右傾斜部56を有する。左傾斜部54と右傾斜部56によって、左側フロアメンバ50と右側フロアメンバ52の間隔は、前端部側から車室11側に向かって幅方向に広がる。この広がった領域を利用することで、従来よりも幅方向の寸法が大きい大容量のバッテリ16が配置される。
【0027】
左傾斜部54を有する左側フロアメンバ50と右傾斜部56を有する右側フロアメンバ52との間隔を車両幅方向に広げると、上面視で左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52は、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜して曲がった形状となる。車体構造20における各要素は、車両前後方向に沿った中心線C−C’に対して左右対称に配置されるので、車両上方側から見ても、IB側から見ても、車両外側と車両内側に関する配置関係、車両左側と車両右側に関する配置関係は同じである。したがって、車体構造20において、上面視と底面視とは、同じである。
【0028】
バッテリ支持フレーム80は、左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52よりも車両下方側に設けられ、フロアパネル28の床下に配置される大容量のバッテリ16を支持する部材である。
【0029】
バッテリ支持フレーム80は、左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52を介してフロアパネル28に複数の締結部によって固定される。複数の締結部を、黒丸を囲む白丸印で示す。
図1Bでは、複数の締結部のうちの1つに、締結部120として符号を付した。換言すれば、左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52は、フロアパネル28とバッテリ支持フレーム80によって挟まれて複数の締結部によって固定される。左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52は、バッテリ支持フレーム80の剛性を介して互いに接続される。これにより、前突等の衝撃を受けると折れ曲がりやすい左側フロアメンバ50の左傾斜部54及び右側フロアメンバ52の右傾斜部56についての耐衝撃性が向上する。
【0030】
図2から
図5を用いて、バッテリ支持フレーム80と他の要素との関係について詳細に説明する。
図2は、
図1Bの拡大図である。
図3は、
図2からバッテリ支持フレーム80を取り除き、大容量のバッテリ16を二点鎖線で示して、フロアパネル28、左側フロアメンバ50、右側フロアメンバ52等を示す図である。
図4は、
図2のIV−IV’線に沿った断面図である。
図5は、複数の締結部のうちの1つの締結部124に関する斜視図である。
【0031】
左側フロアメンバ50は、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する左傾斜部54を有する。
図5に示すように、左側フロアメンバ50は、断面が両側鍔付溝72を有するハット型で溝方向が車両前後方向に延びており、且つ、両側鍔74,76がフロアパネル28に固定されている構造体である。この形式の構造体を鍔付メンバ構造体70と呼ぶ。鍔付メンバ構造体70の溝底部73には、締結用の貫通穴78が設けられる。貫通穴78の詳細については
図5における締結部124に関して後述する。左側フロアメンバ50とフロアパネル28との固定には溶接が用いられる。
図2、
図3には、左側フロアメンバ50とフロアパネル28との間の溶接箇所を黒丸で示す。
【0032】
右側フロアメンバ52も同様に、車両前方側から車両後方側に向かって車両外側に傾斜する左傾斜部54を有する。右側フロアメンバ52も、断面が両側鍔付溝を有するハット型で溝方向が車両前後方向に延びており、且つ、両側鍔がフロアパネル28に固定されている鍔付メンバ構造体70である。
【0033】
図2、
図3に示すように、左側フロアメンバ50には、6つの締結部が設けられる。そのうちの3つは、左傾斜部54に設けられる。ここで、左傾斜部54の傾斜部分における最も車両前方側を傾斜左前方端58とし、最も車両後方側を傾斜左後方端62とし、傾斜左前方端58と傾斜左後方端62の中間を傾斜左中間点60と呼ぶ。左傾斜部54には、傾斜左前方端58における締結部120、傾斜左前方端58と傾斜左後方端62の中間の傾斜左中間点60における締結部122、及び、傾斜左後方端62における締結部124が設けられる。締結部には締結用ボルト170(
図5参照)を用いるが、
図2では締結用ボルト170が通された締結部120等を示し、
図3では、締結用ボルト170が通される前の状態を用いて、傾斜左前方端58等を示す。
図2、
図3では、締結用ボルト170を用いる固定を示すために、黒丸を囲む白丸印で、傾斜左前方端58等と締結部120等とを示す。
【0034】
同様に、右側フロアメンバ52には、6つの締結部が設けられる。そのうちの3つは、右傾斜部56に設けられる。右傾斜部56には、傾斜右前方端64における締結部126、傾斜右前方端64と傾斜右後方端68の中間の傾斜右中間点66における締結部128、及び、傾斜右後方端68における締結部130が設けられる。
【0035】
図3の二点鎖線で示すように、大容量のバッテリ16は、左側フロアメンバ50の車両内側におけるフロアパネル28との溶接箇所と、右側フロアメンバ52の車両内側におけるフロアパネル28との溶接箇所との間の領域のほとんどの部分に配置される。そのため、
図2ではフロアパネル28がほとんど図示されない。
図3では、二点鎖線で示す大容量のバッテリ16の一部を切断してフロアパネル28を示す。
【0036】
バッテリ支持フレーム80は、車両幅方向に延びる複数のクロスメンバと、車両前後方向に延びる複数のストレートメンバとが交叉し、交叉箇所で互いに固定されたトラス構造部材である。複数のクロスメンバのうち3つは、左傾斜部54と右傾斜部56とを接続する。
【0037】
最も車両前方側に配置される第一クロスメンバ86は、左端部が傾斜左前方端58に締結部120によって左傾斜部54に固定され、右端部が傾斜右前方端64に締結部126によって右傾斜部56に固定される。
【0038】
第一クロスメンバ86の次に車両後方側に配置される第二クロスメンバ88は、左端部が傾斜左中間点60に締結部122によって左傾斜部54に固定され、右端部が傾斜右中間点66に締結部128によって右傾斜部56に固定される。
【0039】
第二クロスメンバ88の次に車両後方側に配置される第三クロスメンバ90は、左端部が傾斜左後方端62に締結部124によって左傾斜部54に固定され、右端部が傾斜右後方端68に締結部130によって右傾斜部56に固定される。
【0040】
第一クロスメンバ86、第二クロスメンバ88、及び、第三クロスメンバ90は、基本的に同じ構造であるので、
図5を用いて第三クロスメンバ90の構造を述べる。第三クロスメンバ90は、断面が両側鍔付溝を有するハット型部材92と、平板型部材94の複合部材である。ハット型部材92と平板型部材94は、互いに溶接によって固定される。ハット型部材92の端部で、締結部124に対応する部分は、締結部124の締結用ボルト170の頭部を受け止めるために車両上方側に窪ませた窪み部分96が設けられる。窪み部分96の深さは、ハット型部材92の窪み部分96の裏側で車両上方側となる裏上面と平板型部材94とが当接するように設定される。窪み部分96及びこれに当接する平板型部材94の部分には、締結部124の締結用ボルト170のおねじ軸部を通す貫通穴98が設けられる。
【0041】
第三クロスメンバ90よりもさらに車両後方側に6つのクロスメンバが配置されるが、これらは、左傾斜部54または右傾斜部56に固定されるものではないので、詳細な説明を省略する。
【0042】
複数のストレートメンバは、車両左側に配置される第一ストレートメンバ100、中心線C−C’線に沿って車両前後方向に延びて配置される第二ストレートメンバ110、及び車両右側に配置される第三ストレートメンバ112である。
【0043】
第一ストレートメンバ100、第二ストレートメンバ110、及び、第三ストレートメンバ112は、第一クロスメンバ86、第二クロスメンバ88、第三クロスメンバ90を含む複数のクロスメンバと互いに直交して交叉し、溶接により互いに固定される。
【0044】
第一ストレートメンバ100、第二ストレートメンバ110、及び、第三ストレートメンバ112は、基本的に同じ構造であるので、
図5を用いて第一ストレートメンバ100の構造を述べる。第一ストレートメンバ100は、断面が両側鍔付溝を有するハット型で、車両前後方向に延び、複数のクロスメンバと交叉する。
図5では、第三クロスメンバ90との交叉状態として、第一ストレートメンバ100のハット型の頂面102が、第三クロスメンバ90のハット型部材92の頂面93と当接することが示される。このように、第一ストレートメンバ100は、ハット型の頂面102が各クロスメンバのそれぞれのハット型部材92の頂面93と当接しながら車両前後方向に延びる。第一ストレートメンバ100は、隣接するクロスメンバを跨ぐ部位104では、ハット型の頂面102がクロスメンバの平板型部材94と同じ高さ位置となるように車両上方側に曲る。
図5の例では第三クロスメンバ90の平板型部材94の上面95と同じ高さ位置となる。第二ストレートメンバ110、第三ストレートメンバ112も同様である。これにより、バッテリ支持フレーム80を構成する複数のクロスメンバ及び複数のストレートメンバのそれぞれの車両上方側の面は、同じ平面上に揃い、凹凸がないので、大容量のバッテリ16の支持に適したものとなる。
【0045】
上記のように、左傾斜部54と右傾斜部56との間で、第一クロスメンバ86、第二クロスメンバ88、及び、第三クロスメンバ90と、第一ストレートメンバ100、第二ストレートメンバ110、及び、第三ストレートメンバ112とは互いに固定される。これによって、トラス構造が形成される。トラス構造は、単なる棒材や板材に比べて曲げ剛性が高い。トラス構造のバッテリ支持フレーム80を用いることで、前突等の衝撃を受けると折れ曲がりやすい左傾斜部54及び右傾斜部56の耐衝撃性が向上する。
【0046】
図4は、
図2のIV−IV’線に沿った断面図である。
図4に、IB方向を示す。
図4では、バッテリ支持フレーム80の断面図として、第一ストレートメンバ100、第二ストレートメンバ110、及び、第三ストレートメンバ112と、第三クロスメンバ90とが示される。第三クロスメンバ90は、車両左側で、左側フロアメンバ50を介して締結部124によってフロアパネル28に固定され、車両右側で、右側フロアメンバ52を介して締結部130によってフロアパネル28に固定される。左側アッパリインフォースメント51と、右側アッパリインフォースメント53は、フロアパネル28と左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52との固定を補強する部材である。
【0047】
締結部124と締結部130、及び、他の締結部120,122,126,128は、同じ構成であるので、締結部124の構成について
図5を用いて説明する。締結部124は、鍔付保持体140、チューブナット150、カラー部160、ワッシャ164、及び、締結用ボルト170を含む。
図5は、これらの要素を分解して示す分解斜視図である。
【0048】
鍔付保持体140は、左側フロアメンバ50である鍔付メンバ構造体70と同様に、断面が両側鍔付溝142を有するハット型保持体であるが、溝方向が鍔付メンバ構造体70の溝方向に直交する方向に延びていることが相違する。また、両側鍔144,146が鍔付メンバ構造体70の溝底部73に固定されているので、溝底部143が車両下方側を向くことも相違する。鍔付保持体140は、鍔付メンバ構造体70の溝底部73に設けられる締結用の貫通穴78を覆うように、鍔付メンバ構造体70の両側鍔付溝72の中に配置される。鍔付保持体140を鍔付メンバ構造体70の両側鍔付溝72の中に配置すると、鍔付保持体140の溝壁部と鍔付メンバ構造体70の溝壁部とに囲まれた保持空間158が形成され、保持空間158内に締結用の貫通穴78がある。
【0049】
チューブナット150は、チューブ状の長手部材の中心軸に沿ってめねじ部152が刻まれた部材である。チューブナット150は、保持空間158内において、締結用の貫通穴78の真上にめねじ部152が来るように配置される。チューブナット150の上端部は、鍔付保持体140の溝底部143に固定され、下端部は鍔付メンバ構造体70の溝底部73に固定される。これにより、チューブナット150は、上端部が鍔付保持体140の溝底部143によって固定されて鍔付メンバ構造体70の溝底部73から立設する。また、チューブナット150は、保持空間158の四方壁を構成する鍔付保持体140の溝壁部と鍔付メンバ構造体70の溝壁部とによって、軸方向に関する倒れが防止される。
【0050】
図5では、チューブナット150は、下端部にフランジ部154が設けられ、めねじ部152は上端部まで貫通せずに上端部は平坦な頂面156を有する。これは例示であって、上端部は鍔付保持体140の溝底部143によって固定されるので、貫通しためねじ部152であっても構わない。下端部の溶接による固定面が十分広ければ、フランジ部154を省略して構わない。
【0051】
カラー部160は、締結用ボルト170のおねじ軸部を通す中心穴162を有するパイプ状の部材である。カラー部160は、左側フロアメンバ50と第三クロスメンバ90とについて、車両上下方向に沿った所定の離間間隔を設け、大容量のバッテリ16の収容空間を広げるために用いられる。
図4を参照すると、カラー部160が設けられない場合には、フロアパネル28と第三クロスメンバ90との間隔が左側フロアメンバ50の上下方向の高さで決まるため、大容量のバッテリ16の収容空間が狭い。場合によっては、第一クロスメンバ86、第二クロスメンバ88、第三クロスメンバ90が配置される左傾斜部54と右傾斜部56とで挟まれた空間に、大容量のバッテリ16が全く配置できないことが生じ得る。車両10の仕様上で許容できる範囲内の長さのカラー部160を用いることで、大容量のバッテリ16の配置空間を広げることができる。
【0052】
締結用ボルト170は、第三クロスメンバ90の貫通穴98、カラー部160の中心穴162、左側フロアメンバ50における締結用の貫通穴78を通り、チューブナット150のめねじ部152にねじ込まれるおねじ軸部を有する頭付ボルトである。これによって、第三クロスメンバ90、第一ストレートメンバ100を含むバッテリ支持フレーム80と、フロアパネル28とが、左側フロアメンバ50及び右側フロアメンバ52と締結固定される。ワッシャ164は、締結用ボルト170による締結において用いられる。
【0053】
上記作用効果をシミュレーションによって確認した結果を
図6と
図7に示す。これらの図は、車両10が前突としてオフセット衝突の衝撃を受けた場合について、車体構造20の変形の分布をシミュレーションで求めた図である。これらの図において、大きな変形または損傷を受けた部分は、黒塗して示す。
【0054】
図6は、オフセット衝突の衝撃を受けた初期段階の状態を示す図であり、
図7は、
図6に引き続き、オフセット衝突の衝撃を受けた後の状態を示す図である。いずれの図においても、大きな変形または損傷を受けた部分は、バッテリ支持フレーム80よりも車両前方側に集中しており、バッテリ支持フレーム80が設けられた部分には大きな変形または損傷がほとんど生じていない。
【0055】
上記のように、複数のクロスメンバと複数のストレートメンバで構成されるバッテリ支持フレーム80を、左側フロアメンバ50の左傾斜部54、及び右側フロアメンバ52の右傾斜部56の間に配置することで、耐衝撃性を向上させることができる。