(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体吸収部材を前記液体中に浸漬したときに前記液体吸収部材が飽和吸収量の90%の前記液体を吸収するまでの時間は、10〜200日である、請求項1に記載の検出システム。
前記検出部は、前記2つの電極間の静電容量が第1閾値を超えた場合、または、前記2つの電極間の電気抵抗が第2閾値を下回った場合に、前記浸入予兆を通知する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出システム。
前記検出部は、前記2つの電極間の静電容量が第3閾値を超えた場合、または、前記2つの電極間の電気抵抗が第4閾値を下回った場合に、前記機器の故障予兆を警告する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<適用例>
図1を参照して、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る検出システム10が搭載された電子機器100の一例を模式的に示す分解斜視図である。本実施の形態に係る検出システム10は、電子機器100が備える筐体1内への液体(たとえば水、薬品、油など)の浸入予兆を検出する。液体は、電子機器100の筐体1と筐体1に形成された開口部101を覆うカバー2との間の隙間を通って、筐体1内へ浸入する。
【0020】
図1に示されるように、検出システム10は、封止体11と、静電容量計16と、検出部17とを備える。封止体11は、電子機器100の筐体1とカバー2との隙間に配置され、筐体1に形成された開口部101を封止する。封止体11は、液体を吸収可能な液体吸収部材12と、液体吸収部材12に接するように配置された2つの電極パターン14,15と、絶縁フィルム13とを含む。
【0021】
液体吸収部材12を含む封止体11は、筐体1内への液体の浸入の入口となる筐体1の開口部101を封止する。そのため、液体吸収部材12による液体の吸収が飽和した後に、筐体1内へ液体が浸入し始める。
【0022】
静電容量計16は、電極パターン14と電極パターン15との間の静電容量を計測する。電極パターン14と電極パターン15との間の静電容量は、電極パターン14,15に接する液体吸収部材12の誘電率と相関する。液体吸収部材12の誘電率は、液体吸収部材12による液体の吸収量に応じて変化する。すなわち、静電容量計16によって計測される静電容量は、液体吸収部材12による液体の吸収が飽和するまでの間、液体吸収部材12による液体の吸収量に応じて変化する。検出部17は、液体吸収部材12による液体の吸収が飽和するまでの間に、静電容量計16によって計測された静電容量に基づいて、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。これにより、検出システム10は、筐体1内へ液体が浸入し始める前の適切なタイミングで液体の浸入予兆を検出できる。
【0023】
<構成例>
(電子機器の構成)
以下に、検出システム10の各構成と、検出システム10が搭載される電子機器100の詳細について説明する。
図1に示す例では、電子機器100は、筐体1と、カバー2と、回路基板3とを備える。
【0024】
電子機器100は、たとえば油、薬品、水などの液体が降りかかる環境下で使用される。電子機器100は、たとえば生産ライン等で使用されるセンサ、スイッチまたはセーフティ機器である。センサには、たとえばファイバセンサ、変位センサ(測長センサ)、コードリーダ、フォトマイクロセンサ、超音波センサ、振動センサ、光電センサ、画像センサ、近接センサ、ロータリエンコーダ、圧力センサ、セーフティセンサなどが含まれる。スイッチには、リミットスイッチ、サムロータリスイッチ、マイクロスイッチ、押しボタンスイッチ、タクタイルスイッチ、ロッカースイッチ、ディップスイッチ、レベルスイッチなどが含まれる。セーフティ機器には、セーフティセンサ、セーフティリミットスイッチ、セーフティコントローラ、セーフティドアスイッチ、非常停止用押しボタンスイッチ、ライトカーテン等が含まれる。その他、電子機器100には、丸型コネクタ等も含まれる。
【0025】
筐体1は、内部空間を液体から保護する。筐体1には開口部101が形成される。筐体1における開口部101の周囲の外表面102にはカバー2が配置され、開口部101はカバー2によって閉じられる。
【0026】
回路基板3は筐体1内に配置される。回路基板3には、各種の部品が搭載される。たとえば、電子機器100が光電センサである場合、レーザ光を発する光源と、対象物体からの反射光を受光する受光素子と、受光素子の受光量に応じた信号を生成する回路とが回路基板3に搭載される。
【0027】
(検出システムの構成)
図2は、検出システム10の一例を模式的に示す図である。
図2に示す例の検出システム10は、
図1に示す筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。
図2に示す例では、検出システム10は、封止体11と、静電容量計16と、検出部17と、表示装置18とを備えてもよい。封止体11は、液体吸収部材12と絶縁フィルム13と2つの電極パターン14,15とを含む。
図1に示す例では、検出システム10のうち封止体11が電子機器100の筐体1の開口部101を封止するように、筐体1とカバー2との間に配置される。静電容量計16および検出部17は、回路基板3に実装される。
【0028】
液体吸収部材12は、液体を吸収可能な材料で構成された部材である。液体は、たとえば油、薬品、水などである。液体の状態は特に限定されず、霧状であってもよい。
【0029】
液体吸収部材12は、たとえばエラストマ、ゴムおよびエポキシ樹脂単体の少なくとも1つと吸水性樹脂との複合材料からなる。たとえば、液体吸収部材12は、ポリアクリル酸塩系の吸水性樹脂とエチレンプロピレンゴムとの複合材料であり、ポリアクリル酸塩系の吸水性樹脂を5〜50wt%含むことが好ましい。
【0030】
図1および
図2に示す例では、液体吸収部材12は、筐体1における開口部101の周囲の外表面102に載置可能な矩形状の板状である。しかしながら、液体吸収部材12の形状はこれに限定されるものではなく、筐体1の封止箇所に応じた形状に適宜変更されてもよい。
【0031】
電極パターン14,15は、液体吸収部材12の表面に接するように配置される。電極パターン14,15は互いに離れて配置される。
図1および
図2に示す例では、電極パターン14,15は、互いに所定距離だけ離れた状態で渦状に配置される。電極パターン14,15は、たとえば金属系導電性材料(金、銀、銅、アルミニウムなど)、非金属系導電性材料(導電ペースト、導電性樹脂、カーボンなど)から構成される。なお、
図1および
図2に示す例では、液体吸収部材12に一対の電極パターン14,15のみが配置されているが、複数対の電極パターンが配置されていてもよい。
【0032】
絶縁フィルム13は、電極パターン14,15と筐体1とが電導しないように、電極パターン14,15を覆うように配置される。
図1および
図2に示す例では、絶縁フィルムと液体吸収部材12との間に電極パターン14,15が介在する。
【0033】
静電容量計16は、電極パターン14と電極パターン15とに導線によって接続され、電極パターン14と電極パターン15との間の静電容量を計測する。
【0034】
検出部17は、静電容量計16によって計測された静電容量に基づいて、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。たとえば、検出部17は、静電容量計16によって計測された静電容量Cと閾値Thとを比較する。検出部17は、C>Thの場合に、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。検出部17は、無線通信または図示しないケーブルを用いた有線通信により表示装置と通信可能であり、液体の浸入予兆を示す画面を表示装置18に表示させる。
【0035】
検出部17は、コンパレータ等を含む電子回路によって構成される。もしくは、検出部17は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、記憶部等を含み、情報処理に応じて各構成要素(ここでは表示装置18)の制御を行なってもよい。記憶部は、たとえば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、検出部17で実行されるプログラム、当該プログラムの実行に必要な各種データ等を記憶する。
【0036】
表示装置18は、たとえば液晶ディスプレイ等で構成され、電子機器100の外部に設置される。作業者は、表示装置18を確認することにより、電子機器100の筐体1内への液体の浸入予兆を把握することができる。
【0037】
(液体の浸入予兆の検出原理)
図3は、電極パターン14,15と静電容量計16とを示す等価回路図である。電極パターン14と電極パターン15とによりコンデンサが構成され、静電容量計16により当該コンデンサの静電容量が計測される。コンデンサの静電容量Cは、電極パターン14と電極パターン15との間の液体吸収部材12の断面積Sと、電極パターン14と電極パターン15との距離Lと、真空の誘電率ε0と、液体吸収部材12の比誘電率εsとを用いてC=S×L×ε0×εsで表される。ここで、エチレンプロピレンゴムとポリアクリル酸ナトリウムとの複合材料で構成された液体吸収部材12が水を吸収する場合について説明する。当該複合材料の比誘電率は3.1〜3.4である。一方、水の比誘電率は80程度である。そのため、S×L×ε0=Kとすると、液体吸収部材12が水を吸収していない状態での静電容量Cは3.1〜3.4Kとなる。液体吸収部材12が水を飽和状態まで吸収したときの静電容量Cは約80Kとなる。
【0038】
図4は、液体吸収部材12における液体吸収率と、2つの電極パターン14,15間の静電容量との関係を示す図である。
図4において、液体吸収率は、100×(液体を吸収後の液体吸収部材12の重量)/(液体を吸収する前の液体吸収部材12の重量)を示す。
図4に示されるように、液体吸収率が増大するにつれて、電極パターン14と電極パターン15との間の静電容量は増大する。
【0039】
たとえば、検出部17は、静電容量計16によって計測された静電容量Cが閾値Th1を超えたときに、筐体1内への液体の浸入予兆を通知する。さらに、検出部17は、静電容量計16によって計測された静電容量Cが閾値Th2(>Th1)を超えたときに、電子機器100の故障予兆を警告してもよい。このように複数段階で通知および警告を行なうことにより、作業者は、液体の浸入予兆の程度を把握することができる。
【0040】
筐体1内に液体が浸入し始めるタイミングよりも早い段階で液体の浸入予兆を検出するためには、液体吸収部材12による液体の吸収速度は遅い方が好ましい。具体的には、液体吸収部材12を液体中に浸漬したときに液体吸収部材12が飽和吸収量の90%の液体を吸収するまでの時間は、10〜200日であることが好ましい。これにより、液体の吸収量を日単位で変化させることができ、筐体1内へ液体が浸入し始めるタイミングよりも10〜200日前に液体の浸入予兆を検出することが可能となる。
【0041】
(検出方法)
図5は、検出システム10を用いた液体の浸入予兆の検出方法の流れを示すフローチャートである。まずステップS1において、静電容量計16は、電極パターン14と電極パターン15との間の静電容量Cを計測する。次にステップS2において、検出部17は、ステップS1にて計測された静電容量Cと閾値Th1とを比較する。C≦Th1の場合(ステップS2でNO)、処理はステップS1に戻される。C>Th1の場合(ステップS2でYES)、検出部17は、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。ステップS3において、検出部17は、筐体1内への液体の浸入予兆を通知するための通知画面を表示装置18に表示させる。次にステップS4において、検出部17は、計測された静電容量Cと閾値Th2とを比較する。C≦Th2の場合(ステップS4でNO)、処理はステップS1に戻される。C>Th2の場合(ステップS4でYES)、検出部17は、ステップS5において、筐体1内への液体浸入の開始が近づいていると判断し、電子機器100の故障予兆を警告するための警告画面を表示装置18に表示させる。ステップS5の後、処理は終了する。
【0042】
<評価実験>
(試料1)
ウレタンフィルム(絶縁フィルム)上に銀ペーストを用いて線幅0.3mmの2つの電極パターンを形成した。さらにウレタンフィルムと液体吸収部材との間に電極パターンが挟み込まれるように、ウレタンフィルム上に液体吸収部材を接合させることにより、試料1の封止体を作製した。2つの電極パターンの形状は、
図1および
図2に示されるように渦状である。2つの電極パターン間の距離を0.5mmとし、液体吸収部材の厚みを1mmとした。液体吸収部材の材料をポリビニルアルコール(PVA)とした。
【0043】
(試料2)
液体吸収部材の材料をエチレンプロピレンゴム(EPDM)とポリアクリル酸ナトリウムとの複合材料とし、液体吸収部材におけるポリアクリル酸ナトリウムを60wt%とした点を除いて試料1と同条件で試料2の封止体を作製した。
【0044】
(試料3)
液体吸収部材におけるポリアクリル酸ナトリウムを50wt%とした点を除いて試料2と同条件で試料3の封止体を作製した。
【0045】
(試料4)
液体吸収部材におけるポリアクリル酸ナトリウムを30wt%とした点を除いて試料2と同条件で試料4の封止体を作製した。
【0046】
(試料5)
液体吸収部材におけるポリアクリル酸ナトリウムを5wt%とした点を除いて試料2と同条件で試料5の封止体を作製した。
【0047】
(試料6)
液体吸収部材におけるポリアクリル酸ナトリウムを1wt%とした点を除いて試料2と同条件で試料6の封止体を作製した。
【0048】
(試料7)
液体吸収部材の代わりに液体をほとんど吸収しないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる非液体吸収部材をウレタンフィルム上に形成した点を除いて試料1と同条件で試料7の封止体を作製した。
【0049】
(試料8)
液体吸収部材をウレタンフィルム上に形成しない点を除いて試料1と同条件で試料8の封止体を作製した。すなわち、試料8の封止体は、ウレタンフィルムと2つの電極パターンとからなる。
【0050】
(評価方法)
試料1〜8の封止体を蒸留水中に常温で浸漬し、2つの電極パターン間の静電容量の計測値をモニタリングした。なお、試料1〜8の封止体の各々について、静電容量が飽和したときの値を100としている。試料1〜7については、静電容量と液体吸収部材による液体吸収率とが略比例関係にある。そのため、静電容量の値が90である場合、液体吸収部材の液体吸収率は、飽和吸収量の90%である。
【0051】
(評価結果)
図6は、静電容量の計測結果を示すグラフである。
図6に示されるように、液体をほとんど吸収しない非液体吸収部材が形成された試料7の封止体では、静電容量がほとんど変化しない。そのため、試料7の封止体を用いて筐体1の開口部101を封止したとしても、静電容量に基づいて、筐体1内への液体の浸入予兆を検出することが困難である。
【0052】
液体吸収部材が形成されない試料8の封止体では、蒸留水中に浸漬直後に静電容量が急激に変化した。そのため、試料8の封止体を用いて筐体1の開口部101を封止した場合、液体の浸入を検出することは可能であるが、検出直後に筐体1内に液体が浸入し始める可能性が高い。そのため、適切なタイミングで液体の浸入予兆を検出できない。
【0053】
試料1,2の封止体の液体吸収部材は、液体の吸収速度が試料8の封止体よりも遅く、それぞれ2日,5日蒸留水中に浸漬することにより、飽和吸収量の90%の水を吸収した。そのため、試料1,2の封止体では、それぞれ2日程度,5日程度かけて静電容量が上昇する。これにより、試料1,2の封止体を用いて筐体1の開口部101を封止した場合、封止体に水が付着したとしても、それぞれ少なくとも2日程度,5日程度は、封止効果を確保できる。そのため、静電容量の変化を確認することにより、筐体1内への液体の浸入予兆を検出できる。ただし、試料1,2の封止体では静電容量の変化速度が速いため、浸入予兆を検出してから筐体内へ液体が浸入し始めるまでの期間を十分に確保できない。
【0054】
試料3,4,5の封止体の液体吸収部材は、液体の吸収速度が試料2の封止体よりもさらに遅く、それぞれ10日,90日,200日蒸留水中に浸漬することにより、飽和吸収量の90%の水を吸収した。そのため、試料3,4,5の封止体では、それぞれ10日程度,90日程度,200日程度かけて静電容量が上昇する。これにより、試料3,4,5の封止体を用いて筐体1の開口部101を封止した場合、封止体に水が付着したとしても、それぞれ少なくとも10日程度,90日程度,200日程度、封止効果を確保できる。そのため、静電容量の変化を確認することにより、筐体1内への液体の浸入予兆を検出できる。さらに、試料3、4,5の封止体を用いれば、液体の吸収量を日単位で変化させることでき、それぞれ筐体内へ液体が浸入し始める10日前,90日前,200日前に浸入予兆を検出できる。すなわち、筐体内へ液体が浸入し始める時期を予測できる。
【0055】
特に試料4の封止体を用いた場合、液体吸収部材におけるポリアクリル酸ナトリウムの配合量が多少ばらついたとしても、筐体内へ液体が浸入し始めるまでの日数への影響が小さくなる。
【0056】
試料6の封止体の液体吸収部材は、液体の吸収速度が試料5の封止体よりもさらに遅く、静電容量が緩やかに変化する。この静電容量の変化を確認することにより、筐体1内への液体の浸入予兆を検出できる。ただし、静電容量の変化速度が遅いため、筐体内へ液体が浸入し始める時期を正確に予測することが難しい。
【0057】
以上のように、試料1〜6の封止体を用いることにより、静電容量の変化を確認することにより、筐体1内への液体の浸入予兆を検出できる。また、試料2〜5の封止体を用いることにより、液体の吸収量を日単位で変化させることでき、筐体内へ液体が浸入し始める10〜200日前に浸入予兆を検出できる。
【0058】
上記の試料1〜8の封止体を、10倍希釈した水溶性切削油の中に常温で浸漬した場合も、
図6と同様の傾向を示すことが確認された。
【0059】
<作用・効果>
以上のように、本実施の形態の検出システムは、電子機器100の筐体1に形成された開口部101を封止するための封止体11と、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する検出部17とを備える。封止体11は、液体を吸収可能な液体吸収部材12と、液体吸収部材12に接する2つの電極パターン14,15とを含む。検出部17は、2つの電極パターン14,15間の静電容量Cに基づいて、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。
【0060】
本実施の形態の検出方法は、2つの電極パターン14,15間の静電容量Cを計測する工程(ステップS1)と、静電容量Cに基づいて浸入予兆を検出する工程(ステップS2〜S5)とを備える。
【0061】
上記の構成によれば、筐体1の開口部101から浸入しようとした液体は、封止体11の液体吸収部材12に吸収される。このとき、液体吸収部材12の誘電率は、吸収した液体量に応じて変化する。そのため、液体吸収部材12に接する電極パターン14,15の間の静電容量は、液体吸収部材12による液体の吸収量に応じて変化する。液体吸収部材12による液体の吸収が飽和するまでは、筐体1内に液体がほとんど浸入しない。そのため、検出部17は、液体吸収部材12による液体の吸収が飽和するまでの間に、静電容量計16によって計測された静電容量に基づいて、筐体1内への液体の浸入予兆を検出する。これにより、検出システム10は、筐体1内へ液体が浸入し始める前の適切なタイミングで液体の浸入予兆を検出できる。
【0062】
液体吸収部材12が飽和吸収量の90%の液体を吸収するまでの時間は、10〜200日であることが好ましい。これにより、液体吸収部材12の液体吸収量を日単位で変化するようにできるので、検出システム10は、筐体1内へ液体が浸入し始める数日前のタイミングで液体の浸入予兆を検出できる。浸入予兆が検出されると、作業者は、現実的な日程でメンテナンスまたは交換などの処置を行なうことができる。
【0063】
検出部17は、静電容量Cが閾値Th1を超える場合に、筐体1内への液体の浸入予兆を通知する。これにより、作業者は、当該通知を確認することにより、液体の浸入予兆があったことを把握することができる。その結果、たとえば電子機器100の状態を確認する等の行為を実行することができる。
【0064】
検出部17は、静電容量Cが閾値Th2(>Th1)を超える場合に、電子機器100の故障予兆を警告する。これにより、作業者は、当該警告を確認することにより、電子機器100のメンテナンスまたは交換などの適切な処置を実行することができる。
【0065】
<封止体の変形例>
封止体11の形状は、
図1および
図2に示す形状に限定されず、筐体1の形状に合わせて適宜変更されてもよい。さらに、筐体1が樹脂等の非導電性材料で構成される場合、封止体11は絶縁フィルム13を備えていなくてもよい。
【0066】
図7は、封止体11の第1の変形例を示す図である。
図7には、櫛形の電極パターン14,15を有する封止体11が示される。
【0067】
図8は、封止体11の第2の変形例を示す図である。
図8には、フレーム形状の封止体11が示される。電極パターン14,15は、一部が開いたリング状に形成される。
図8に示すようなフレーム形状の封止体11は、たとえば回路基板3に発光素子または受光素子が搭載され、筐体1の開口部101を透光性のカバー2で閉じる場合に適用される。
【0068】
図9は、封止体11の第3の変形例を示す図である。
図9には、円筒状の液体吸収部材12と、液体吸収部材12の外周面上に積層された、円筒状の絶縁フィルム13と、液体吸収部材12と絶縁フィルム13との間に介在する電極パターン14,15とを含む封止体11が示される。
【0069】
図10は、封止体11の第4の変形例を示す図である。
図10には、平らなリング状の液体吸収部材12と、液体吸収部材12に積層された、液体吸収部材12と同形状の絶縁フィルム13と、液体吸収部材12と絶縁フィルム13との間に介在するリング状の電極パターン14,15とを含む封止体11が示される。
【0070】
図9および
図10に示される封止体11は、たとえば筐体1に形成された円形の開口部と当該開口部に挿入されたケーブルの外周面との間に配置され、当該開口部を封止する。
【0071】
図11は、封止体11の第5の変形例を示す図である。
図12は、封止体11の第6の変形例を示す図である。
図11には、板状の液体吸収部材12と、液体吸収部材12の一方の面に積層された板状の電極パターン14と、液体吸収部材12の他方の面に積層された板状の電極パターン15とを含む封止体11が示される。
図12に示す封止体11は、さらに、板状の電極パターン14を覆う絶縁フィルム13aと、板状の電極パターン15を覆う絶縁フィルム13bとを含む。
図11および
図12に示す封止体11によれば、板状の電極パターン14,15によって液体吸収部材12が挟まれることにより、電極パターン14と電極パターン15とを間の静電容量が大きくなる。その結果、検出部17による浸入予兆の検出精度が向上する。
図12に示す封止体11によれば、筐体1が導電性材料(たとえば鉄、アルミニウムなど)で構成されたとしても、筐体1と電極パターン14,15とが電気的に接続されることを防ぐことができる。
【0072】
図13は、封止体11の第7の変形例を示す図である。
図13には、円筒状の液体吸収部材12と、液体吸収部材12の内周面に積層された円筒状の電極パターン14と、液体吸収部材12の外周面に積層された円筒状の電極パターン15とを含む封止体11が示される。
【0073】
<機器の変形例>
図14および
図15を参照して、封止体11が適用される機器の変形例について説明する。
図14は、電子機器の変形例を示す外観斜視図である。
図15は、
図14に示す電子機器100aの分解斜視図である。
図15では、
図14に示す蓋5および電子機器100aの内部に搭載される部材(回路基板等)の図示を省略している。
【0074】
電子機器100aは、たとえば光電センサである。光電センサは、発光素子と、発光素子から出射され、外部の物体によって反射された光を受光する受光素子とを含む。
【0075】
図14および
図15に示されるように、電子機器100aは、筐体1aと、カバー2a〜2cと、ケーブル4と、蓋5とを備える。筐体1aには、開口部101a〜101dが形成される。カバー2a〜2cは、図示しないビス等により筐体1aに固定され、矩形状の開口部101a〜101cをそれぞれ閉じる。カバー2aは、電子機器100aを操作するための操作部が設けられた板状の部材である。カバー2bは、透光性を有する材料で構成された板状の部材である。筐体1aの内部空間に設置された図示しない発光素子から発せられた光は、カバー2bを透過して外部に出射する。筐体1aの内部空間に設置された図示しない受光素子は、カバー2bを透過した反射光を受ける。カバー2cは、電子機器100aの下面に配置される板状の部材である。ケーブル4は、円形の開口部101dに挿入される。
【0076】
封止体11aは、筐体1aとカバー2aとの間に配置され、開口部101aを封止する。封止体11aは、フレーム状であり、たとえば
図8に示されるような構造を有する。封止体11aは、筐体1aにおける開口部101aの周囲の外表面102a上に配置される。
【0077】
封止体11bは、筐体1aとカバー2bとの間に配置され、開口部101bを封止する。封止体11bは、フレーム状であり、たとえば
図8に示されるような構造を有する。封止体11bは、筐体1aにおいて開口部101bの周囲に形成された溝103内に配置される。
【0078】
図16は、筐体1aに形成された溝103を示す断面図である。
図16には、電子機器100aの組み立て直後における断面図が示される。電子機器100aの組み立て直後では、封止体11bに含まれる液体吸収部材12は液体を吸収していない。このとき、封止体11bと溝103の側壁との間に隙間6がある。
【0079】
図17は、液体吸収部材12が液体を吸収した後の溝103を示す断面図である。液体吸収部材12は、液体を吸収することにより膨張し、隙間6(
図16参照)を埋め尽くす。その結果、液体吸収部材12と筐体1aとの界面、および、液体吸収部材12とカバー2bとの界面にかかる応力が増大し、封止体11bによる封止効果が向上する。当該封止効果は、液体吸収部材12による液体の吸収が飽和状態に達するまで継続する。
【0080】
筐体1aの外部の液体は、カバー2bと筐体1aとの隙間7(
図16参照)から浸入しようとする。電極パターン14,15は、隙間7からなるべく遠い位置に配置される。そのため、
図16に示す例では、液体吸収部材12における溝103の底面に近い側の面に接するように電極パターン14,15が配置され、液体吸収部材12と溝103の底面との間に絶縁フィルム13が配置される。
【0081】
図15に戻って、封止体11cは、筐体1aとカバー2cとの間に配置され、開口部101cを封止する。封止体11cは、平板状であり、たとえば
図2、
図7、
図11または
図12に示されるような構造を有する。封止体11cは、開口部101cを覆うように、筐体1aの下面上に配置される。
【0082】
封止体11dは、筐体1aとケーブル4との間に配置され、開口部101dを封止する。封止体11dは、円筒状またはリング状であり、たとえば
図9、
図10または
図13に示されるような構造を有する。
【0083】
なお、上記の説明では、検出システム10が適用される機器として電子機器を例にとり説明した。しかしながら、検出システム10が適用される機器は、電子機器に限定されず、軸受等の機器であってもよい。
【0084】
<検出システムの変形例>
図18は、検出システムの変形例の構成を示す図である。
図18に示されるように、検出システム10aは、上記の検出システム10と比較して、静電容量計16の代わりに電気抵抗計19を備える点で相違する。
【0085】
図19は、液体吸収部材12、電極パターン14,15および電気抵抗計19の等価回路図である。電気抵抗計19は、直列に接続された抵抗R1と抵抗R2との合計抵抗を計測する。
図19において、抵抗R1は、電極パターン14,15の配線抵抗を示し、抵抗R2は、電極パターン14と電極パターン15との間の液体吸収部材12の抵抗を示す。電極パターン14,15を金属系導電性材料(金、銀、銅、アルミニウムなど)で構成される場合、抵抗R1は、液体吸収部材12の導電性液体の吸収量に依存しない。一方、抵抗R2は、液体吸収部材12の導電性液体の吸収量に依存し、吸収量が増えるに従って低下する。抵抗R2は抵抗R1に比べて大きく、電気抵抗計19によって計測される電気抵抗Raは、ほぼ抵抗R2を示す。そのため、電気抵抗計19によって計測される電気抵抗Raを監視することにより、液体吸収部材12による導電性液体の吸収量を把握することができる。したがって、検出部17は、電気抵抗計19によって計測される電気抵抗Raに基づいて、筐体1内への導電性液体の浸入予兆を検出できる。
【0086】
図20は、検出システム10aを用いた液体の浸入予兆の検出方法の流れを示すフローチャートである。まずステップS11において、電気抵抗計19は、電極パターン14と電極パターン15との間の電気抵抗Raを計測する。次にステップS12において、検出部17は、電気抵抗Raと閾値Th3とを比較する。Ra≧Th3の場合(ステップS12でNO)、処理はステップS1に戻される。Ra<Th3の場合(ステップS12でYES)、検出部17は、筐体1内への導電性液体の浸入予兆を検出する。ステップS13において、検出部17は、筐体1内への導電性液体の浸入予兆を通知するための通知画面を表示装置18に表示させる。次にステップS14において、検出部17は、電気抵抗Raと閾値Th4(<Th3)とを比較する。Ra≧Th4の場合(ステップS14でNO)、処理はステップS11に戻される。Ra<Th4の場合(ステップS14でYES)、検出部17は、ステップS15において、筐体1内への導電性液体の浸入の開始が近づいていると判断し、電子機器100の故障予兆を警告するための警告画面を表示装置18に表示させる。ステップS15の後、処理は終了する。
【0087】
このように
図18に示す検出システム10aにおいて、検出部17は、2つの電極パターン14,15間の電気抵抗Raが閾値Th3を下回った場合に、筐体1内への導電性液体の浸入予兆を通知する。さらに、検出部17は、2つの電極パターン14,15間の電気抵抗Raが閾値Th4を下回った場合に、電子機器100の故障予兆を警告する。
【0088】
図21は、検出システム10bの別の変形例の構成を示す図である。
図21に示されるように、検出システム10bは、
図18に示す検出システム10aと比較して、電気抵抗計20をさらに備える点で相違する。
【0089】
図22は、電極パターン15と電気抵抗計20とを示す等価回路図である。
図22に示されるように、電気抵抗計20は、電極パターン15における点p(
図21参照)と点q(
図20参照)との間の電気抵抗Rpqを計測する。
図21に示す検出システム10bは、導電性液体(たとえば水)および非導電性液体(たとえば切削油など)のいずれの浸入予兆も検出可能である。
【0090】
図21に示す電極パターン(配線)14,15は、液体と接触して膨潤する導電性樹脂によって構成される。液体吸収部材12が非導電性液体(たとえば切削油など)を吸収する場合、電極パターン14,15は、非導電性液体と接触することにより、非導電性液体を吸収して膨張する。電極パターン14,15が膨潤すると、電極パターン14,15の体積抵抗が増大する。そのため、電気抵抗計20によって計測された電気抵抗Rbを監視することにより、液体吸収部材12の非導電性液体の吸収量を把握することができる。検出部17は、電気抵抗計20によって計測される電気抵抗Rbに基づいて、筐体1内への非導電性液体の浸入予兆を検出できる。
【0091】
図23は、検出システム10bを用いた非導電性液体の浸入予兆の検出方法の流れを示すフローチャートである。
【0092】
まずステップS21において、電気抵抗計20は、電極パターン15における点pと点qとの間の電気抵抗Rbを計測する。次にステップS22において、検出部17は、電気抵抗Rbと閾値Th5とを比較する。Rb≦Th5の場合(ステップS22でNO)、処理はステップS21に戻される。Rb>Th5の場合(ステップS22でYES)、検出部17は、筐体1内への非導電性液体の浸入予兆を検出する。ステップS23において、検出部17は、筐体1内への非導電性液体の浸入予兆を通知するための通知画面を表示装置18に表示させる。次にステップS24において、検出部17は、電気抵抗Rbと閾値Th6(>Th5)とを比較する。Rb≦Th6の場合(ステップS24でNO)、処理はステップS21に戻される。Rb>Th6の場合(ステップS24でYES)、検出部17は、ステップS25において、筐体1内への非導電性液体浸入の開始が近づいていると判断し、電子機器100の故障予兆を警告するための警告画面を表示装置18に表示させる。ステップS25の後、処理は終了する。
【0093】
一方、液体吸収部材12が導電性液体(たとえば水など)を吸収する場合、電極パターン14と電極パターン15との間の液体吸収部材12の電気抵抗が低下するため、電気抵抗計19によって計測される電気抵抗Raを監視することにより、液体吸収部材12の導電性液体の吸収量を把握することができる。したがって、検出部17は、電気抵抗計19によって計測される電気抵抗Raに基づいて、筐体1の内部空間への導電性液体の浸入予兆を検出できる。電気抵抗Raに基づいた導電性液体の浸入予兆を検出処理の流れは、
図20に示した通りである。
【0094】
ただし、電極パターン14,15を構成する導電性樹脂の体積抵抗率が4.0×10
3Ωcmを超える場合、液体によって膨潤した電極パターン14,15の表面抵抗が高くなりすぎることがある。この場合、液体吸収部材12の電気抵抗が変化したとしても、電気抵抗計19によって計測される電気抵抗Raに変化が見られない可能性がある。そのため、導電性樹脂の体積抵抗率は、4.0×10
3Ωcm以下であることが好ましい。
【0095】
図24は、液体吸収部材12が液体を吸収したときの電気抵抗計19,20による計測値の変化の有無を示す図である。
図24には、電極パターン14,15の材料として、銅、体積抵抗率が4.0×10
4、4.0×10
7、1.0×10
−3、4.0×10
3Ωcmの導電性樹脂を用いたときの結果が示される。
図24において、「変化あり」とは、計測される電気抵抗の変化量が計測誤差よりも十分に大きいことを示す。「変化なし」とは、計測される電気抵抗の変化量が計測誤差と同程度以下であることを示す。
【0096】
銅により構成された電極パターン14,15を用いた場合、液体吸収部材12が水を吸収すると、電極パターン14と電極パターン15との間の電気抵抗が大きく低下する。そのため、検出部17は、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raに基づいて、水の浸入予兆を検出できる。一方、液体吸収部材12が切削油を吸収した場合、電極パターン15の点pと点qとの間の電気抵抗Rpqはほとんど変化しない。そのため、検出部17は、電気抵抗計20によって計測された電気抵抗Rbに基づいて、切削油の浸入予兆を検出できない。
【0097】
体積抵抗率が4.0×10
4Ωcmの導電性樹脂により構成された電極パターン14,15を用いた場合、液体吸収部材12が水を吸収すると、当該水に接触した電極パターン14,15が膨潤し、電極パターン14,15の表面抵抗が高くなる。そのため、液体吸収部材12の電気抵抗は低下するものの、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raに大きな変化が見られない。したがって、検出部17は、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raに基づいて、水の浸入予兆を精度よく検出できない。一方、液体吸収部材12が切削油を吸収した場合、切削油に接触した電極パターン15が膨潤し、電極パターン15の点pと点qとの間の電気抵抗Rpqが増大する。そのため、検出部17は、電気抵抗計20によって計測された電気抵抗Rbに基づいて、切削油の浸入予兆を検出できる。
【0098】
体積抵抗率が4.0×10
7Ωcmの導電性樹脂により構成された電極パターン14,15を用いた場合も同様に、液体吸収部材12が水を吸収しても、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raに大きな変化が見られない。そのため、検出部17は、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raに基づいて、水の浸入予兆を精度よく検出できない。さらに、液体吸収部材12が切削油を吸収した場合、切削油に接触した電極パターン15が膨潤するものの、電極パターン15の体積抵抗率がもともと高いため、電気抵抗計20によって計測された電気抵抗Rbに大きな変化が見られない。そのため、検出部17は、電気抵抗計20によって計測された電気抵抗Rbに基づいて、切削油の浸入予兆を精度よく検出できない。
【0099】
これに対し、体積抵抗率が1.0×10
−3Ωcmまたは4.0×10
3Ωcmの導電性樹脂により構成された電極パターン14,15を用いた場合、液体吸収部材12が水を吸収しても、電極パターン14,15の表面抵抗はそれ程高くならない。そのため、液体吸収部材12が水を吸収することにより、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raが低下する。これにより、検出部17は、電気抵抗計19によって計測された電気抵抗Raに基づいて、水の浸入予兆を検出できる。さらに、液体吸収部材12が切削油を吸収した場合も、切削油に接触した電極パターン15が膨潤し、電極パターン15の点pと点qとの間の電気抵抗Rpqが増大する。そのため、検出部17は、電気抵抗計20によって計測された電気抵抗Rbに基づいて、切削油の浸入予兆を検出できる。このように、体積抵抗率が1.0×10
−3Ωcmまたは4.0×10
3Ωcmの導電性樹脂により構成された電極パターン14,15を用いた場合、導電性液体および非導電性液体のいずれの浸入予兆も検出可能である。
【0100】
なお、
図21に示す検出システム10bにおいて、電極パターン15のみを導電性樹脂で構成し、電極パターン14を金属系導電性材料で構成してもよい。
【0101】
筐体1の内部空間への非導電性液体のみの浸入予兆を行なう場合には、検出システム10bは、電気抵抗計20および電極パターン14を備えていなくてもよい。すなわち、検出システム10bにおいて、封止体11は、非導電性液体を吸収可能な液体吸収部材12と、液体吸収部材12に接する電極パターン(配線)15とを含む。電極パターン15は、非導電性液体と接触したときに膨潤する導電性樹脂によって形成される。検出部17はは、電極パターン15における点pと点qとの間の電気抵抗に基づいて、筐体1への非導電性液体の浸入予兆を検出する。
【0102】
<検出部の変形例>
上記の説明では、検出部17は、2つの閾値を用いて2段階の画面(通知画面および警告画面)を表示装置18に表示させた。しかしながら、検出部17は、一方の閾値を用いて通知画面のみを表示装置18に表示させてもよい。この場合、
図5においてステップS4,S5(または、
図20のステップS14,S15、
図23のステップS24,S25)は省略される。もしくは、検出部17は、他方の閾値を用いて警告画面のみを表示装置18に表示させてもよい。この場合、
図5においてステップS2,S3(または、
図20のステップS12,S13、
図23のステップS22,S23)は省略される。もしくは、検出部17は、3つ以上の閾値を用いて3段階以上の画面を表示装置18に表示させてもよい。検出部17が用いる閾値は、作業者によって適宜変更または新たに設定されてもよい。
【0103】
検出部17は、静電容量Cまたは電気抵抗Ra,Rbに基づいて、電子機器100の故障時期を予測してもよい。検出部17は、予測した故障時期を表示装置18に表示させる。これにより、作業者は、故障時期を確認して、電子機器100のメンテナンスまたは交換などの適切な処置を適切なタイミングで実行することができる。
【0104】
たとえば、検出部17は、液体吸収部材12が液体を吸収し始め、静電容量が変化し始めてからの静電容量の経時変化のモデルデータを予め記憶しておく。検出部17は、現在の静電容量Cとモデルデータとを比較し、電子機器100の故障時期を予測してもよい。たとえば、モデルデータにおいて、静電容量C1から静電容量Cmaxまでの時間がTであることが示される場合、検出部17は、静電容量計16によって静電容量C1が計測されたときに、現時刻からTだけ経過後の時刻を故障時期として決定する。
【0105】
もしくは、検出部17は、静電容量計16によって計測された静電容量がC1に到達した時刻t1とC2に到達した現時刻t2と記憶する。検出部17は、モデルデータから、静電容量がC1からC2まで低下するまでの時間T1と、静電容量がC2から飽和するまでの時間T2とを求める。検出部17は、現時刻t2と時刻t1との時間差T3を用いて、現時刻から故障発生までの予測時間T4をT4=T3×T2/T1に基づいて算出する。検出部17は、現時刻から予測時間T4経過後の時刻を故障時期として決定する。
【0106】
<表示装置の変形例>
表示装置18は、複数色の中から選択された色の光を発する表示灯であってもよい。この場合、検出部17は、液体の浸入があったことを通知する場合と、電子機器100の故障予兆を警告する場合とで表示装置18が発する光の色を異ならせてもよい。
【0107】
<付記>
以下のように、本実施の形態は、以下のような開示を含む。
検出システム(10,10a,10b)は、機器(100,100a)の筐体(1,1a)に形成された開口部(101,101a〜101d)を封止するための封止体(11,11a〜11d)と、筐体(1,1a)内への液体の浸入予兆を検出する検出部(17)とを備える。封止体(11,11a〜11d)は、液体を吸収可能な液体吸収部材(12)と、液体吸収部材(12)に接する2つの電極(14,15)とを含む。検出部(17)は、2つの電極(14,15)間の静電容量または電気抵抗に基づいて浸入予兆を検出する。
【0108】
液体吸収部材(12)を液体中に浸漬したときに液体吸収部材(12)が飽和吸収量の90%の液体を吸収するまでの時間は、10〜200日である。
【0109】
液体吸収部材(12)は、ポリアクリル酸塩系の吸水性樹脂を5〜50wt%含む。
検出部(17)は、2つの電極(14,15)間の静電容量が第1閾値を超えた場合、または、2つの電極(14,15)間の電気抵抗が第2閾値を下回った場合に、浸入予兆を通知する。
【0110】
検出部(17)は、2つの電極(14,15)間の静電容量が第3閾値を超えた場合、または、2つの電極(14,15)間の電気抵抗が第4閾値を下回った場合に、機器(100,100a)の故障予兆を警告する。
【0111】
検出部(17)は、2つの電極(14,15)間の静電容量または電気抵抗に基づいて、機器(100,100a)の故障時期を予測する。
【0112】
2つの電極(14,15)の少なくとも一方の電極(15)は、液体と接触したときに膨潤する導電性樹脂によって形成される。検出部(17)は、2つの電極(14,15)間の電気抵抗に基づいて、導電性液体の浸入予兆を検出し、少なくとも一方の電極(15)における2点(p,q)間の電気抵抗に基づいて、非導電性液体の浸入予兆を検出する。
【0113】
検出システム(10,10a,10b)は、機器(100,100a)の筐体(1,1a)に形成された開口部(101,101a〜101d)を封止するための封止体(11,11a〜11d)と、筐体(1,1a)内への液体の浸入予兆を検出する検出部(17)とを備える。封止体(11,11a〜11d)は、非導電性液体を吸収可能な液体吸収部材(12)と、液体吸収部材(12)に接する配線(15)とを含む。配線(15)は、非導電性液体と接触したときに膨潤する導電性樹脂によって形成される。検出部(17)は、配線(15)における2点(p,q)間の電気抵抗に基づいて、浸入予兆を検出する。
【0114】
検出方法は、(100,100a)の筐体(1,1a)に形成された開口部(101,101a〜101d)を封止するための封止体(11,11a〜11d)を用いて、筐体(1,1a)内への液体の浸入予兆を検出する。封止体(11,11a〜11d)は、液体を吸収可能な液体吸収部材(12)と、液体吸収部材(12)に接する2つの電極(14,15)とを含む。検出方法は、2つの電極(14,15)間の静電容量または電気抵抗を計測する工程(S1)と、2つの電極(14,15)間の静電容量または電気抵抗に基づいて浸入予兆を検出する工程(S2〜S5)とを備える。
【0115】
本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。