【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー・環境新技術先導プログラム/大型超軽量構造材料のAI利用・高解像度計測技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
シランカップリング剤,日本,信越化学工業株式会社,2021年06月01日,https://www.silicone.jp/catalog/pdf/SilaneCouplingAgents_J.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1)で表されるオルガノシランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシランおよび3−トリアルコキシシリルプロピルコハク酸無水物のうち少なくともいずれか一方を含む、請求項1記載のシンチレータパネル。
前記有機保護層中における前記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解・部分縮合物の含有量は、5モル%以上である、請求項1または2記載のシンチレータパネル。
前記バインダー樹脂は、アクリル樹脂、アセタール樹脂およびセルロース誘導体のうち少なくともいずれか1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<シンチレータパネル>
以下、図面を用いて本発明の一実施形態のシンチレータパネルの具体的な構成について説明する。
図1は、本実施形態のシンチレータパネル2を含む放射線検出器用部材1を模式的に表した断面図である。放射線検出器用部材1は、シンチレータパネル2、出力基板3を有する。シンチレータパネル2は、基板4と、隔壁5と、隔壁5によって区画されたセル内の蛍光体層6を有する。出力基板3は、基板10と、基板10上に形成された出力層9と、出力層9上に形成されたフォトダイオードを有する光電変換層8とを有する。光電変換層8上には、隔膜層7が設けられてもよい。シンチレータパネル2の出光面と出力基板3の光電変換層8とは、隔膜層7を介して接着または密着されていることが好ましい。蛍光体層6で発光した光は、光電変換層8に到達して光電変換され、出力される。以下、それぞれについて説明する。
【0030】
(基板4)
基板4は、本実施形態のシンチレータパネル2において好適に設けられる部材であり、必須ではない。基板4を構成する材料は、放射線透過性を有する材料であることが好ましい。一例を挙げると、基板4を構成する材料は、各種のガラス、高分子材料、金属等である。ガラスは、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等である。高分子化合物は、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネート、炭素繊維強化樹脂等である。金属は、アルミニウム、鉄、銅等である。これは併用されてもよい。これらの中でも、基板4を構成する材料は、放射線の透過性が高い高分子材料であることが好ましい。また、基板4を構成する材料は、平坦性および耐熱性の優れる材料であることが好ましい。
【0031】
基板4の厚みは、シンチレータパネル2の軽量化の観点から、ガラス基板の場合は2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。また、基板4の厚みは、高分子材料からなる基板の場合は、3.0mm以下であることが好ましい。
【0032】
(隔壁5)
隔壁5は、少なくとも区画された空間(セル)を形成するために設けられる。隔壁5は、金属反射層11と、ポリシロキサンを主成分として含む有機保護層12とを有する。金属反射層11および有機保護層12は、隔壁5の少なくとも一部に設けられればよい。
【0033】
・金属反射層11
金属反射層11は、薄膜でも高い反射率を有する。そのため、薄膜である金属反射層11が設けられることにより、蛍光体13の充填量が低下しにくく、シンチレータパネル2は、輝度が向上しやすい。金属反射層11を構成する金属は特に限定されない。一例を挙げると、金属反射層11は、銀やアルミニウムなど、反射率の高い金属を主成分として含有することが好ましく、銀を主成分として含有することがより好ましい。金属反射層11は、合金であっても良い。金属反射層11は、特に、パラジウムと銅を含有する銀合金であることが好ましい。このような銀合金からなる金属反射層11は、大気中における変色耐性が優れる。なお、本実施形態において、「主成分として含有する」とは、所定の成分を50〜100質量%となるよう含むことをいう。
【0034】
金属反射層11の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、金属反射層11の厚みは、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。また、金属反射層11の厚みは、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。金属反射層11の厚みが10nm以上であることにより、シンチレータパネル2は、充分な光の遮蔽性が得られ、鮮鋭度がより向上する。金属反射層11の厚みが500nm以下であることにより、金属反射層11の表面の凹凸が大きくなりにくく、反射率が低下しにくい。
【0035】
金属反射層11の表面の算術平均傾斜角は特に限定されない。一例を挙げると、算術平均傾斜角は、20°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましい。算術平均傾斜角が20°以下である場合、金属反射層11の平坦性が高いため、シンチレータパネル2は、反射率が高くなって輝度がより向上しやすい。なお、本実施形態において、算術平均傾斜角は、金属反射層11を形成した隔壁5の側面を基板の割断等によって露出させ、レーザーマイクロスコープ(例えば、キーエンス(株)製)を用いて隔壁5の側面を観察することにより測定できる。
【0036】
ここで、金属反射層を有するセル方式シンチレータは、金属反射層の腐食による初期輝度の低下や、高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥発生などの課題がある。初期輝度の低下とは、本来の金属反射層の反射率から想定されるシンチレータパネルの輝度に比べ、実際の輝度が低下することをいう。これは、金属反射層形成時や、金属反射層形成後の蛍光体層形成時などに、隔壁表面の成分や、蛍光体層中の成分が金属反射層と反応して、金属反射層が腐食し反射率が低下することに起因すると推定される。また、高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥とは、作製後のシンチレータパネルを高温高湿度下に曝露した際に、1セル〜数セル程度の狭い領域においてシンチレータパネルの輝度が極端に低下し、X線照射時に暗点となる課題を言う。この発生原因は、金属反射層の微小な未形成領域を起点として発生する傾向があることから、金属反射層の形成領域と未形成領域の境界において、高温水蒸気との直接接触により電気化学的な腐食反応が局所的に集中発生すること起因すると推定される。X線検出器は使用中に温度が上昇し、また大気中に含まれる水蒸気の影響を受けるため、シンチレータに高温・高湿環境下において発生するピンホール欠陥は、X線検出器の長期的な使用によっても発生する。したがって、高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥発生を抑制することが必要となる。本実施形態のシンチレータパネル2は、後述する有機保護層12が形成されていることにより、これらの課題が解決されている。
【0037】
本実施形態のシンチレータパネル2は、金属反射層11上に無機保護層が形成されることが好ましい。高温・高湿環境下では、前述のピンホール欠陥の発生していない箇所においても、高温水蒸気により金属反射層が腐食し、シンチレータパネルのほぼ全面において輝度低下が発生する場合がある。無機保護層は、水蒸気の透過性が低い。そのため、このような無機保護層を備えるシンチレータパネル2は、高温・高湿環境下における輝度低下が抑制されやすい。
【0038】
無機保護層は、スパッタ法など、公知の手法により形成できる。無機保護層の材料は特に限定されない。一例を挙げると、無機保護層の材料は、酸化ケイ素、酸化インジウムスズ、酸化ガリウム亜鉛などの酸化物、窒化ケイ素などの窒化物、フッ化マグネシウムなどのフッ化物等である。これらの中でも、無機保護層の材料は、水蒸気透過性が低く、また無機保護層形成において銀の反射率が低下しにくいことから、窒化ケイ素を用いることが特に好ましい。なお、酸化ケイ素が用いられる場合には、金属反射層11の変色を抑制するために、金属反射層11上に酸化ケイ素以外の無機保護層を形成した後、その上に酸化ケイ素の無機保護層を形成することが好ましい。
【0039】
無機保護層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、無機保護層の厚みは、2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。また、無機保護層の厚みは、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。厚みが2nm以上であることにより、シンチレータパネル2は、高温・高湿環境下における輝度低下の抑制効果をより大きくすることができる。厚みが200nm以下であることにより、無機保護層の着色を抑制し、輝度をより向上させることができる。無機保護層の厚みは、隔壁基板に対して垂直な断面をクロスセクションポリッシャー等の研磨装置により露出させ、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察することにより測定できる。なお、後述する無機保護層形成工程で形成される無機保護層は、隔壁頂部付近では厚みが厚く、底部付近の側面では薄く形成される傾向がある。そのため、このように厚みに隔たりがある場合、上記無機保護層の厚みは、隔壁の高さ方向中央部側面における厚みを指す。
【0040】
・有機保護層12
有機保護層12は、ポリシロキサンを主成分として含有する。ポリシロキサンを主成分として含有する有機保護層12を形成することにより、シンチレータパネル2は、初期輝度が向上する。また、シンチレータパネル2は、高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥が顕著に抑制され、輝度低下も抑制される。なお、ポリシロキサンを主成分として含んでいない場合、シンチレータパネル2は、耐熱性、耐薬品性、透明性、平坦性等が不足し、初期輝度改善効果や、高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥抑制効果が不充分となる。
【0041】
有機保護層12は、
図1に示されるように、金属反射層11上に形成されてもよく、隔壁5と金属反射層11との間に形成されてもよい。いずれの場合においても、シンチレータパネル2は、初期輝度が向上し、高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥と輝度低下が抑制される。
【0042】
有機保護層12が金属反射層11上に形成される場合、シンチレータパネル2は、蛍光体層6を形成する際に、金属反射層11と蛍光体層6との反応による金属反射層11の反射率低下が抑制され、初期輝度が向上する。また、シンチレータパネル2は、ピンホール欠陥の原因となる金属反射層11の微小な金属反射層未形成領域が有機保護層12により被覆される。これにより、シンチレータパネル2は、高温水蒸気との直接接触が抑制され、ピンホール欠陥が抑制される。さらに、シンチレータパネル2は、蛍光体層6側を透過する高温水蒸気が金属反射層11まで透過することが抑制され、金属反射層11全体の反射率低下が抑制され、高温・高湿環境下における輝度低下が抑制される。
【0043】
有機保護層12が隔壁5と金属反射層11との間に形成される場合、シンチレータパネル2は、隔壁成分と金属反射層11との反応が抑制される。また、シンチレータパネル2は、隔壁5の表面が平坦化され、金属反射層11の反射率が向上し、初期輝度が向上する。また、シンチレータパネル2は、隔壁5の表面の突起や窪みが被覆され、ピンホール欠陥の原因となる金属反射層11の未形成領域が発生し難くなり、ピンホール欠陥が抑制される。さらに、シンチレータパネル2は、平坦化により金属反射層11の表面積が小さくなり、高温水蒸気との反応が抑制され、高温・高湿環境下における輝度低下が抑制される。
【0044】
有機保護層12の厚みは、0.05μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。また、有機保護層12の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。有機保護層12の厚みが0.05μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、初期輝度向上やピンホール欠陥抑制の効果をより大きくすることができる。また、有機保護層12の厚みが10μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、セル内の体積を大きくして蛍光体13の充填量を増大することにより、輝度をより向上させることができる。本実施形態において、有機保護層12の厚みは、走査型電子顕微鏡観察により測定できる。なお、後述する有機保護層形成工程で形成される有機保護層12は、隔壁頂部付近の側面では厚みが薄く、底部付近の側面では厚く形成される傾向がある。そのため、このように厚みに隔たりがある場合、上記有機保護層12の厚みは、隔壁5の高さ方向の中央部側面における厚みを指す。
【0045】
本実施形態において、有機保護層12の主成分であるポリシロキサンは、下記一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含む。
【化3】
(上記一般式(1)中、R
1は、エポキシ基および酸無水物基のうち少なくともいずれか一方を有する1価の有機基を表す。R
2およびR
3は、それぞれ、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基または炭素数6〜16のアリール基を表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+nは1〜3である。mが2以上の場合、複数のR
1は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、nが2の場合、複数のR
2は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、m+nが2以下の場合、複数のR
3は、それぞれ同じでも異なってもよい。)なお、R
1におけるエポキシ基および酸無水物基とは、それぞれ下記化学式(2)および化学式(3)の構造を表す。
【0048】
上記一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含有しない場合、シンチレータパネル2は、蛍光体層6の形成工程において、ポリシロキサンが蛍光体層6をはじくことにより充填ムラが発生し、結果として輝度ムラが生じる。また、この場合、シンチレータパネル2は、有機保護層12を隔壁5と金属反射層11の間に形成した場合においても輝度ムラが発生する。これは、有機保護層12の成分の一部が金属反射層11を透過して金属反射層11表面に移動することにより、蛍光体層6をはじくことに起因すると考えられる。一方、本実施形態のシンチレータパネル2は、上記一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含むため、蛍光体層6のはじきが抑制され、輝度ムラが抑制される。
【0049】
上記一般式(1)で表されるオルガノシランは特に限定されない。一例を挙げると、一般式(1)で表されるオルガノシランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3−トリアルコキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン等である。これらの中でも、一般式(1)で表されるオルガノシランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3−トリアルコキシシリルプロピルコハク酸無水物のうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。これにより、シンチレータパネルの輝度ムラ、および高温・高湿環境下におけるピンホール欠陥発生がより抑制されやすい。
【0050】
一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含有するポリシロキサン中において、上記エポキシ基および酸無水物基は、ポリシロキサンの加水分解・部分縮合反応中にその一部または全てが開環していても良い。
【0051】
有機保護層12中における上記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解・部分縮合物の含有量は特に限定されない。ここで、一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解・部分縮合物の含有量とは、一般式(1)で表されるオルガノシランと他のオルガノシランの加水分解・部分縮合物の場合には、一般式(1)で表されるオルガノシランに由来する構造単位の含有量を意味する。一例を挙げると、上記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解・部分縮合物の含有量は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。上記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解・部分縮合物の含有量が5モル%以上であることにより、シンチレータパネル2は、蛍光体層6のはじきが顕著に抑制され、輝度ムラが大幅に低減される。
【0052】
隔壁5全体の説明に戻り、隔壁5は、強度や耐熱性を高めるため、無機物からなることが好ましい。無機物とは、単純な一部の炭素化合物(グラファイト若しくはダイヤモンド等炭素の同素体等)及び炭素以外の元素で構成される化合物をいう。なお、「無機物からなり」とは、厳密な意味で無機物以外の成分の存在を排除するものではなく、原料となる無機物自体が含有する不純物や、隔壁5の製造の過程において混入する不純物程度の無機物以外の成分の存在は、許容される。
【0053】
隔壁5は、ガラスを主成分とすることが好ましい。ガラスとは、ケイ酸塩を含有する、無機非晶質固体をいう。隔壁5の主成分がガラスであると、隔壁5は、強度や耐熱性が高まり、金属反射層11の形成工程や蛍光体13の充填工程における変形や損壊が発生しにくくなる。なお、「ガラスを主成分とする」とは、隔壁5を構成する材料の50〜100質量%が、ガラスであることをいう。
【0054】
隔壁5は、軟化点650℃以下の低軟化点ガラスを95体積%以上含有することが好ましく、98体積%以上含有することがより好ましい。低軟化点ガラスの含有率が95体積%以上であることにより、隔壁5は、焼成工程において隔壁5の表面が平坦化しやすくなる。これにより、シンチレータパネル2は、隔壁5の表面に金属反射層11を形成した際の金属反射層11表面の算術平均傾斜角が小さくなり、反射率が高くなり、初期輝度がより高くなりやすい。なお、金属反射層11表面の算術平均傾斜角は、隔壁基板を割断して断面を露出させ、隔壁5の側面をレーザーマイクロスコープで撮像し、画像解析することにより測定できる。
【0055】
隔壁5が含有する低軟化点ガラス以外の成分は、高軟化点ガラス粉末やセラミック粉末等である。これらの粉末は、隔壁形成工程において隔壁5の形状を調整しやすくする。低軟化点ガラスの含有率を高めるために、低軟化点ガラス以外の成分の含有量は、5体積%未満であることが好ましい。
【0056】
図2は、本実施形態のシンチレータパネル2の模式的な断面図である。隔壁5の高さL1は、50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましい。また、隔壁5の高さは、3000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。L1が3000μm以下であることにより、蛍光体13自体による発光光の吸収が生じにくく、シンチレータパネル2は、輝度が低下しにくい。一方、L1が50μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、充填可能な蛍光体13の量が適切となり、輝度が低下しにくい。
【0057】
隣接する隔壁5の間隔L2は、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、隔壁5の間隔L2は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。L2が30μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、セル内へ蛍光体13を充填しやすい。一方、L2が1000μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、鮮鋭度がより優れる。
【0058】
隔壁5の底部幅L3は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、底部幅L3は、150μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。L3が5μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、パターンの欠陥が生じにくい。一方、L3が150μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、充填可能な蛍光体13の量が適切となり、輝度が低下しにくい。
【0059】
隔壁5の頂部幅L4は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、頂部幅L4は、80μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。L4が3μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、隔壁5の強度が適切となり、パターンの欠陥が生じにくくなる。一方、L4が80μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、蛍光体13の発光光を取り出せる領域が適切となり、輝度が低下しにくい。
【0060】
隔壁5の底部幅L3に対する隔壁5の高さL1のアスペクト比(L1/L3)は、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。また、アスペクト比(L1/L3)は、100.0以下であることが好ましく、50.0以下であることがより好ましい。アスペクト比(L1/L3)が1.0以上であることにより、シンチレータパネル2は、蛍光体13の充填量が適切となりやすい。また、アスペクト比(L1/L3)が100.0以下であることにより、シンチレータパネル2は、隔壁強度が適切となりやすい。
【0061】
隔壁5の間隔L2に対する隔壁5の高さL1のアスペクト比(L1/L2)は、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。また、アスペクト比(L1/L2)は、20.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。アスペクト比(L1/L2)が0.5以上であることにより、シンチレータパネル2は、X線の吸収効率が低くしにくい。また、アスペクト比(L1/L2)が20.0以下であることにより、シンチレータパネル2は、光の取り出し効率が低下しにくく、輝度が低下しにくい。
【0062】
隔壁5の高さL1及び隣接する隔壁5の間隔L2は、基板に対して垂直な断面を割断するか、またはクロスセクションポリッシャー等の研磨装置により露出させ、走査型電子顕微鏡で断面を観察することにより測定することができる。ここで、隔壁5と基板との接触部における隔壁5の幅をL3とする。また、隔壁5の最頂部の幅をL4とする。
【0063】
本実施形態のシンチレータパネル2は、各セルが隔壁5によって区画されている。そのため、シンチレータパネル2は、格子状に配置された光電変換素子の画素の大きさ及びピッチと、シンチレータパネル2のセルの大きさ及びピッチとを一致させることにより、光電変換素子の各画素と、シンチレータパネル2の各セルとを対応づけることができる。これにより、シンチレータパネル2は、高鮮鋭度が得られやすい。
【0064】
(蛍光体層6)
蛍光体層6は、隔壁5で区画されたセル内に形成される。蛍光体層6は、入射されたX線等の放射線のエネルギーを吸収して、波長300nm〜800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光を中心に紫外光から赤外光にわたる範囲の光を発光する。蛍光体層6で発光した光は、光電変換層8で光電変換が行われ、出力層9を通じて電気信号として出力される。蛍光体層6は、蛍光体13およびバインダー樹脂14を有することが好ましい。
【0065】
・蛍光体13
蛍光体13は特に限定されない。一例を挙げると、蛍光体13は、放射線から可視光への変換率が高い、CsI、Gd
2O
2S、Lu
2O
2S、Y
2O
2S、LaCl
3、LaBr
3、LaI
3、CeBr
3、CeI
3、LuSiO
5、Ba(Br、F)等である。
【0066】
蛍光体13は、発光効率を高めるために、賦活剤が添加されてもよい。賦活剤は特に限定されない。一例を挙げると、賦活剤は、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)、テルビニウム(Tb)、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)、プラセオジム(Pr)等である。これらの中でも、蛍光体13は、化学的安定性が高く、かつ発光効率が高い点から、Gd
2O
2SにTbを添加した蛍光体(以下、「GOS:Tb」)であることが好ましい。
【0067】
・バインダー樹脂14
バインダー樹脂14は特に限定されない。一例を挙げると、バインダー樹脂14は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等である。より具体的には、バインダー樹脂14は、アクリル樹脂、アセタール樹脂、セルロース誘導体、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリフェニルベンゼン等である。これらの中でも、バインダー樹脂14は、アクリル樹脂、アセタール樹脂およびセルロース誘導体のうち少なくともいずれか1種を含有することが好ましく、これら1〜3種を主成分として含有することがより好ましい。これにより、シンチレータパネル2は、有機保護層12によるはじきが発生し難く、輝度ムラの発生が抑制されやすい。なお、アクリル樹脂、アセタール樹脂およびセルロース誘導体のうち少なくともいずれか1種を主成分とするとは、アクリル樹脂、アセタール樹脂、セルロース誘導体の合計量が、樹脂を構成する材料の50〜100質量%であることをいう。
【0068】
バインダー樹脂14は、有機保護層12と接触していることが好ましい。この場合、バインダー樹脂14は、有機保護層12の少なくとも一部に接触していればよい。これにより、シンチレータパネル2は、蛍光体13がセル内から脱落しにくい。なお、バインダー樹脂14は、
図1に示されるように、セル内にほぼ空隙なく充填されていてもよく、空隙を有するよう充填されていてもよい。
【0069】
以上、本実施形態のシンチレータパネル2によれば、高輝度、高鮮鋭度であり、輝度ムラが小さく、高温・高湿環境下における欠陥発生が抑制されやすい。
【0070】
<シンチレータパネルの製造方法>
本発明の一実施形態のシンチレータパネルの製造方法は、基材上に隔壁を形成し、セルを区画する、隔壁形成工程と、隔壁の表面に金属反射層を形成する、反射層形成工程と、反射層の表面に有機保護層を形成する、有機保護層形成工程と、隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する、充填工程とを含む。以下、それぞれの工程について説明する。なお、以下の説明において、上記したシンチレータパネルの実施形態において説明した事項と共通する事項は、説明を適宜省略する。
【0071】
(隔壁形成工程)
隔壁形成工程は、基材上に隔壁を形成する工程である。基材上に隔壁を形成する方法は特に限定されない。隔壁を形成する方法は、各種公知の方法が利用でき、形状の制御が容易である点から、感光性ペースト法であることが好ましい。
【0072】
ガラスを主成分とする隔壁は、例えば、基材の表面に、ガラス粉末を含有する感光性ペーストを塗布して塗布膜を得る、塗布工程と、塗布膜を露光及び現像して、隔壁の焼成前パターンを得る、パターン形成工程と、パターンを焼成して、隔壁パターンを得る、焼成工程と、により形成できる。
【0073】
・塗布工程
塗布工程は、基材の表面に、ガラス粉末含有ペーストを全面または部分的に塗布して塗布膜を得る工程である。基材は、ガラス板またはセラミックス板等の高耐熱性の支持体を用いることができる。ガラス粉末含有ペーストを塗布する方法は、例えば、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーターまたはブレードコーターが挙げられる。得られる塗布膜の厚さは、塗布回数、スクリーンのメッシュサイズまたはペーストの粘度等により調整することができる。
【0074】
ガラスを主成分とする隔壁を製造するためには、塗布工程で用いるガラス粉末含有ペーストが含有する無機成分の50〜100質量%がガラス粉末である必要がある。
【0075】
ガラス粉末含有ペーストが含有するガラス粉末は、焼成温度で軟化するガラスが好ましく、軟化温度が650℃以下である低軟化点ガラスであることがより好ましい。軟化温度は、示差熱分析装置(例えば、差動型示差熱天秤TG8120;(株)リガク製)を用いて、サンプルを測定して得られるDTA曲線から、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求めることができる。より具体的には、まず、示差熱分析装置を用いて、アルミナ粉末を標準試料として、室温から20℃/分で昇温して、測定サンプルとなる無機粉末を測定し、DTA曲線を得る。そして得られたDTA曲線における第3変曲点を接線法により外挿して求めた軟化点Tsを、軟化温度とすることができる。
【0076】
低軟化点ガラスを得るためには、ガラスを低軟化点化するために有効な化合物である、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛及びアルカリ金属の酸化物からなる群から選ばれる金属酸化物を用いることができる。アルカリ金属の酸化物を用いて、ガラスの軟化温度を調整することが好ましい。アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれる金属をいう。
【0077】
低軟化点ガラスに占めるアルカリ金属酸化物の割合は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、低軟化点ガラスに占めるアルカリ金属酸化物の割合は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属酸化物の割合が2質量%以上であることにより、軟化温度が適切となり、焼成工程を高温で行う必要が生じにくく、隔壁に欠陥が生じにくい。一方、アルカリ金属酸化物の割合が20質量%以下であることにより、焼成工程においてガラスの粘度が過度に低下しにくく、得られる格子状の焼成後パターンの形状に歪みが生じにくい。
【0078】
低軟化点ガラスは、高温での粘度を適切に調整するために、酸化亜鉛を3〜10質量%含有することが好ましい。低軟化点ガラスに占める酸化亜鉛の割合が3質量%以上であることにより、低軟化点ガラスは、高温での粘度が適切となりやすい。一方、酸化亜鉛の含有量が10質量%以下であることにより、低軟化点ガラスは、製造コストが適切となりやすい。
【0079】
低軟化点ガラスは、安定性、結晶性、透明性、屈折率または熱膨張特性の調整のため、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有することが好ましい。ここでアルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群から選ばれる金属をいう。好ましい低軟化点ガラスの組成範囲の一例を、以下に示す。
アルカリ金属酸化物:2〜20質量%
酸化亜鉛:3〜10質量%
酸化ケイ素:20〜40質量%
酸化ホウ素:25〜40質量%
酸化アルミニウム:10〜30質量%
アルカリ土類金属酸化物:5〜15質量%
【0080】
ガラス粉末を含む無機粉末の粒子径は、粒度分布測定装置、例えば、MT3300(日機装(株)製)を用いて測定をすることができる。より具体的には、粒子径は、水を満たした粒度分布測定装置の試料室に無機粉末を投入し、300秒間超音波処理を行ってから測定することができる。
【0081】
低軟化点ガラス粉末の50%体積平均粒子径(以下、「D50」)は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。また、D50は、4.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。D50が1.0μm以上であることにより、ガラス粉末は、凝集しにくく、均一な分散性が得られ、得られるペーストの流動安定性が適切となる。一方、D50が4.0μm以下であることにより、焼成工程で得られる焼成後パターンの表面凹凸が大きくなりにくく、事後的に隔壁が破壊される原因となりにくい。
【0082】
ガラス粉末含有ペーストは、焼成工程における格子状パターンの収縮率の制御や、最終的に得られる隔壁の形状保持のため、低軟化点ガラス以外に、軟化温度が700℃を超える高軟化点ガラスまたは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン若しくは酸化ジルコニウム等のセラミックス粒子を、フィラーとして含有しても構わない。無機成分全体に占めるフィラーの割合は、隔壁の平坦性向上のため、2体積%以下であることが好ましい。フィラーのD50は、低軟化点ガラス粉末と同様であることが好ましい。
【0083】
感光性のガラス粉末含有ペーストは、露光時の光散乱を抑制し、高精度のパターンを形成するため、ガラス粉末の屈折率n1と、有機成分の屈折率n2とが、−0.1<n1−n2<0.1の関係を満たすことが好ましく、−0.01≦n1−n2≦0.01の関係を満たすことがより好ましく、−0.005≦n1−n2≦0.005の関係を満たすことがさらに好ましい。なお、ガラス粉末の屈折率は、ガラス粉末が含有する金属酸化物の組成によって、適宜調整することができる。
【0084】
ガラス粉末の屈折率は、ベッケ線検出法により測定することができる。また、有機成分の屈折率は、有機成分からなる塗膜をエリプソメトリーにより測定することで求めることができる。より具体的には、ガラス粉末または有機成分の、25℃での波長436nm(g線)における屈折率(ng)を、それぞれn1またはn2とすることができる。
【0085】
感光性のガラス粉末含有ペーストが含有する感光性有機成分は特に限定されない。一例を挙げると、感光性有機成分は、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーである。感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーは、活性光線の照射により、光架橋または光重合等の反応を起こして化学構造が変化するモノマー、オリゴマー、ポリマーをいう。
【0086】
感光性モノマーは、活性の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物であることが好ましい。そのような化合物としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはアクリルアミド基を有する化合物が挙げられる。感光性モノマーは、光架橋の密度を高め、高精度のパターンを形成するため、多官能アクリレート化合物または多官能メタクリレート化合物であることが好ましい。
【0087】
感光性オリゴマーまたは感光性ポリマーは、活性の炭素−炭素不飽和二重結合を有し、かつカルボキシル基を有するオリゴマーまたはポリマーであることが好ましい。そのようなオリゴマーまたはポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸若しくはこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマー、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルまたは2−ヒドロキシアクリレートを共重合することにより得られるオリゴマーまたはポリマーである。活性の炭素−炭素不飽和二重結合をオリゴマーまたはポリマーに導入する方法は、例えば、オリゴマーまたはポリマーが有するメルカプト基、アミノ基、水酸基またはカルボキシル基に対して、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド若しくはアリルクロライド、グリシジル基若しくはイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物またはマレイン酸等のカルボン酸を反応させる方法が挙げられる。
【0088】
ウレタン結合を有する感光性モノマーまたは感光性オリゴマーを用いることにより、焼成工程の初期における応力を緩和することが可能な、焼成工程においてパターン欠損をしにくいガラス粉末含有ペーストが得られる。感光性のガラス粉末含有ペーストは、必要に応じて、光重合開始剤を含有しても構わない。光重合開始剤とは、活性光線の照射により、ラジカルを発生する化合物をいう。
【0089】
光重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤は、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、過酸化ベンゾイン若しくはエオシンまたはメチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸若しくはトリエタノールアミン等との還元剤の組合せ等である。
【0090】
感光性のガラス粉末含有ペーストが、感光性ポリマーとしてカルボキシル基を有するポリマーを含有することにより、感光性のガラス粉末含有ペーストは、現像時のアルカリ水溶液への溶解性が向上する。カルボキシル基を有するポリマーの酸価は、50〜150mgKOH/gであることが好ましい。酸価が150mgKOH/g以下であることにより、現像マージンが広くなる。一方、酸価が50mgKOH/g以上であることにより、感光性のガラス粉末含有ペーストは、アルカリ水溶液への溶解性が低下せず、高精細のパターンを得ることができる。
【0091】
感光性のガラス粉末含有ペーストは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーまたは混練機で均質に混合分散して得ることができる。
【0092】
感光性のガラス粉末含有ペーストの粘度は、無機粉末、増粘剤、有機溶媒、重合禁止剤、可塑剤または沈降防止剤等の添加割合によって適宜調整することができる。感光性のガラス粉末含有ペーストの粘度は、2000mPa・s以上であることが好ましく、5000mPa・s以上であることがより好ましい。また、粘度は、200000mPa・s以下であることが好ましく、100000mPa・s以下であることがより好ましい。例えば、感光性のガラス粉末含有ペーストをスピンコート法で基材に塗布する場合には、粘度は2〜5Pa・sであることが好ましく、ブレードコーター法またはダイコーター法で基材に塗布する場合には、10〜50Pa・sであることが好ましい。感光性のガラス粉末含有ペーストを1回のスクリーン印刷法で塗布して膜厚10〜20μmの塗布膜を得る場合には、粘度は、50〜200Pa・sであることが好ましい。
【0093】
・パターン形成工程
パターン形成工程は、例えば、塗布工程で得られた塗布膜を、所定の開口部を有するフォトマスクを介して露光する露光工程と、露光後の塗布膜における、現像液に可溶な部分を溶解除去する現像工程と、からなる。
【0094】
露光工程は、露光により塗布膜の必要な部分を光硬化させて、または、塗布膜の不要な部分を光分解させて、塗布膜の任意の部分を、現像液に可溶とする工程である。現像工程は、露光後の塗布膜における、現像液に可溶な部分を現像液で溶解除去して、必要な部分のみが残存した格子状の焼成前パターンを得る工程である。
【0095】
露光工程においては、フォトマスクを用いずに、レーザー光等で任意のパターンを直接描画しても構わない。露光装置は、例えば、プロキシミティ露光機が挙げられる。露光工程で照射する活性光線としては、例えば、近赤外線、可視光線または紫外線が挙げられ、紫外線が好ましい。またその光源は、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプまたは殺菌灯が挙げられ、超高圧水銀灯が好ましい。
【0096】
露光条件は塗布膜の厚さにより異なる。通常、露光は、1〜100mW/cm
2の出力の超高圧水銀灯を用いて、0.01〜30分間露光をする。
【0097】
現像工程における現像の方法は、例えば、浸漬法、スプレー法またはブラシ法が挙げられる。現像液は、露光後の塗布膜における不要な部分を溶解することが可能な溶媒を適宜選択すればよい。現像液は、水を主成分とする水溶液が好ましい。例えば、現像液は、ガラス粉末含有ペーストがカルボキシル基を有するポリマーを含有する場合には、アルカリ水溶液を選択することができる。アルカリ水溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは水酸化カルシウム等の無機アルカリ水溶液またはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン若しくはジエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が挙げられる。これらの中でも、アルカリ水溶液は、焼成工程における除去が容易であることから、有機アルカリ水溶液であることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、アルカリ水溶液の濃度は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。アルカリ水溶液の濃度が0.05質量%以上であることにより、露光後の塗布膜における不要な部分が充分に除去されやすい。一方、アルカリ濃度が5質量%以下であることにより、格子状の焼成前パターンが剥離または腐食しにくい。現像温度は、工程管理を容易にするため、20〜50℃であることが好ましい。
【0098】
露光及び現像によるパターン形成を行うには、塗布工程で塗布するガラス粉末含有ペーストが、感光性であることが必要である。すなわち、ガラス粉末含有ペーストが、感光性有機成分を含有する必要がある。感光性のガラス粉末含有ペーストに占める有機成分の割合は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、感光性のガラス粉末含有ペーストに占める有機成分の割合は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。有機成分の割合が30質量%以上であることにより、ペースト中の無機成分の分散性が低下し、焼成工程で欠陥が生じにくくなる。また、ペーストは、粘度が適切となり、塗布性および安定性が優れる。一方、有機成分の割合が80質量%以下であることにより、焼成工程における格子状パターンの収縮率が大きくなりにくく、欠陥が生じにくい。
【0099】
感光性のガラス粉末含有ペーストが含有するガラス粉末は、焼成工程において有機成分をほぼ完全に除去し、最終的に得られる隔壁の強度を確保するため、軟化温度が480℃以上であることが好ましい。
【0100】
・焼成工程
焼成工程は、パターン形成工程で得られた格子状の焼成前パターンを焼成して、ガラス粉末含有ペーストが含有する有機成分を分解除去し、ガラス粉末を軟化及び焼結させて、格子状の焼成後パターン、すなわち隔壁を得る工程である。
【0101】
焼成条件は、ガラス粉末含有ペーストの組成や基材の種類により異なる。例えば、焼成は、空気、窒素または水素雰囲気の焼成炉で実施することができる。焼成炉は、例えば、バッチ式の焼成炉またはベルト式の連続型焼成炉が挙げられる。焼成の温度は、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましい。また、焼成の温度は、1000℃以下であることが好ましく、700℃以下であることがより好ましく、650℃以下であることがさらに好ましい。焼成の温度が500℃以上であることにより、有機成分は、充分に分解除去され得る。一方、焼成温度が1000℃以下であることにより、使用される基材が高耐熱性セラミック板等に限定されない。焼成の時間は、10〜60分間が好ましい。
【0102】
本実施形態のシンチレータパネルの製造方法では、隔壁形成時の基材がシンチレータパネルの基板として用いられてもよく、基材から隔壁を剥離した後、剥離した隔壁を基板上に載置して用いても良い。基材から隔壁を剥離する方法は、基材と隔壁の間に剥離補助層を設ける手法など、公知の手法を用いることができる。
【0103】
(反射層形成工程)
本実施形態のシンチレータパネルの製造方法は、隔壁の表面に金属反射層を形成する、反射層形成工程を有する。金属反射層は、隔壁表面の少なくとも一部に形成されればよい。
【0104】
金属反射層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、金属反射層は、真空蒸着法、スパッタ法若しくはCVD法等の真空製膜法、メッキ法、ペースト塗布法またはスプレーによる噴射法によって形成され得る。これらの中でも、スパッタ法により形成された金属反射層は、他の手法で形成された金属反射層に比べて反射率の均一性や耐食性が高いことから好ましい。
【0105】
なお、本実施形態のシンチレータパネルの製造方法は、反射層表面に無機保護層を形成する、無機保護層形成工程を有してもよい。無機保護層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、無機保護層は、真空蒸着法、スパッタ法若しくはCVD法等の真空製膜法、ペースト塗布法またはスプレーによる噴射法によって形成され得る。これらの中でも、スパッタ法により形成された無機保護層は、他の手法で形成された無機保護層に比べて均一性や耐食性が高いことから好ましい。
【0106】
(有機保護層形成工程)
本実施形態のシンチレータパネルの製造方法は、反射層表面に有機保護層を形成する、有機保護層形成工程を有する。有機保護層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、有機保護層は、ポリシロキサンを含有する溶液を隔壁基板上に真空下で塗布した後、乾燥して溶媒を除去することによって形成され得る。また、乾燥後の基板は、乾燥温度よりも高温で硬化されることが好ましい。硬化することにより、基板は、ポリシロキサンの縮合が進み耐熱性や耐薬品性が向上し、シンチレータパネルの初期輝度が向上しやすくなる。
【0107】
本実施形態において、有機保護層は、ポリシロキサンを主成分とし、ポリシロキサンは、シンチレータパネルの実施形態において上記した一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含む。
【0108】
【化6】
(上記一般式(1)中、R
1は、エポキシ基および酸無水物基のうち少なくともいずれか一方を有する1価の有機基を表す。R
2およびR
3は、それぞれ、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基または炭素数6〜16のアリール基を表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+nは1〜3である。mが2以上の場合、複数のR
1は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、nが2の場合、複数のR
2は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、m+nが2以下の場合、複数のR
3は、それぞれ同じでも異なってもよい。)
【0109】
(充填工程)
本実施形態のシンチレータパネルの製造方法は、隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する、充填工程を有する。蛍光体の充填方法は特に限定されない。一例を挙げると、プロセスが簡便であり、大面積への均質な蛍光体充填が可能であることから、充填方法は、蛍光体粉末およびバインダー樹脂を溶媒に混合した蛍光体ペーストを隔壁基板上に真空下で塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法が好ましい。
【0110】
以上、本実施形態のシンチレータパネルの製造方法によれば、得られるシンチレータは、高輝度、高鮮鋭度であり、輝度ムラが小さく、高温・高湿環境下における欠陥発生が抑制されやすい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
(ポリシロキサンの合成)
合成例および実施例に用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0113】
合成例におけるポリシロキサン溶液の固形分濃度は、以下の方法により求めた。アルミカップにポリシロキサン溶液を1.5g秤取し、ホットプレートを用いて250℃で30分間加熱して液分を蒸発させた。加熱後のアルミカップに残った固形分の重量を秤量して、加熱前の重量との割合からポリシロキサン溶液の固形分濃度を求めた。また、ポリシロキサン中の各オルガノシラン単位の含有比率は、
29Si−NMRの測定を行い、オルガノシランに由来するSi全体の積分値に対する、特定のオルガノシラン単位に由来するSiの積分値の割合を算出して、それらの含有比率により算出した。測定試料(液体)は、直径10mmのテフロン(登録商標)製NMRサンプル管に注入した。
29Si−NMR測定条件を以下に示す。
装置:核磁気共鳴装置JNM−GX270(日本電子(株)製)
測定法:ゲーテッドデカップリング法
測定核周波数:53.6693MHz(
29Si核)
スペクトル幅:20000Hz
パルス幅:12μs(45°パルス)
パルス繰り返し時間:30.0秒
溶媒:アセトン−d6
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:23℃
試料回転数:0.0Hz
【0114】
ポリシロキサンの合成に用いたオルガノシランは次のとおりである。
オルガノシランS−1:メチルトリメトキシシラン
オルガノシランS−2:フェニルトリメトキシシラン
オルガノシランS−3:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
オルガノシランS−4:3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物
【0115】
(合成例1)ポリシロキサン(A−1)溶液
500mlの三口フラスコに、オルガノシランS−1を16.34g(0.12mol)、オルガノシランS−2を29.75g(0.15mol)、オルガノシランS−3を7.39g(0.03mol)、PGMEAを45.00g仕込み、室温で攪拌しながら水16.21gにリン酸0.16g(仕込みモノマーに対して0.30重量%)を溶かしたリン酸水溶液を30分間かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて90分間攪拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。なお、昇温および加熱攪拌中、窒素を0.05リットル/分流した。得られたポリシロキサン溶液に、固形分濃度が40重量%となるようにPGMEAを追加し、ポリシロキサン(A−1)溶液を得た。
29Si−NMRにより測定したオルガノシランS−1、S−2、S−3に由来する繰り返し単位のモル比は、それぞれ40mol%、50mol%、10mol%であった。
【0116】
(合成例2)ポリシロキサン(A−2)溶液
オルガノシランS−1を18.39g(0.135mol)、オルガノシランS−2を29.75g(0.15mol)、オルガノシランS−4を3.94g(0.015mol)、PGMEAを45.00g仕込み、室温で攪拌しながら水16.21gにリン酸0.16g(仕込みモノマーに対して0.30重量%)を溶かしたリン酸水溶液を30分間かけて添加したこと以外は合成例1と同様の手順により、ポリシロキサン溶液を得た。得られたポリシロキサン溶液に、固形分濃度が40重量%となるようにPGMEAを追加し、ポリシロキサン(A−2)溶液を得た。
29Si−NMRにより測定したオルガノシランS−1、S−2、S−4に由来する繰り返し単位のモル比は、それぞれ45mol%、50mol%、5mol%であった。
【0117】
(合成例3)ポリシロキサン(A−3)溶液
オルガノシランS−1を20.02g(0.147mol)、オルガノシランS−2を29.75g(0.15mol)、オルガノシランS−3を0.74g(0.003mol)、PGMEAを45.00g仕込み、室温で攪拌しながら水16.21gにリン酸0.15g(仕込みモノマーに対して0.30重量%)を溶かしたリン酸水溶液を30分間かけて添加したこと以外は合成例1と同様の手順により、ポリシロキサン溶液を得た。得られたポリシロキサン溶液に、固形分濃度が40重量%となるようにPGMEAを追加し、ポリシロキサン(A−2)溶液を得た。
29Si−NMRにより測定したオルガノシランS−1、S−2、S−3に由来する繰り返し単位のモル比は、それぞれ49mol%、50mol%、1mol%であった。
【0118】
(合成例4)ポリシロキサン(A−4)溶液
オルガノシランS−1を20.43g(0.15mol)、オルガノシランS−2を29.75g(0.15mol)、PGMEAを45.00g仕込み、室温で攪拌しながら水17.0gにリン酸0.15g(仕込みモノマーに対して0.30重量%)を溶かしたリン酸水溶液を30分間かけて添加したこと以外は合成例1と同様の手順により、ポリシロキサン溶液を得た。得られたポリシロキサン溶液に、固形分濃度が40重量%となるようにPGMEAを追加し、ポリシロキサン(A−2)溶液を得た。
29Si−NMRにより測定したオルガノシランS−1、S−2に由来する繰り返し単位のモル比は、それぞれ50mol%、50mol%であった。
【0119】
(ガラス粉末含有ペーストの原料)
感光性のガラス粉末含有ペーストの作製に用いた原料は次のとおりである。
感光性モノマーM−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマーM−2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000;酸価100)
光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(BASF社製)
重合禁止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤溶液:スダンIV(東京応化工業(株)製)のγ−ブチロラクトン0.3質量%溶液
粘度調整剤:フローノンEC121(共栄社化学(株)製)
溶媒:γ−ブチロラクトン
低軟化点ガラス粉末:
SiO
2 27質量%、B
2O
3 31質量%、ZnO 6質量%、Li
2O 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al
2O
3 23質量%、屈折率(ng)1.56、ガラス軟化温度588℃、熱膨張係数70×10
-7(K
-1)、平均粒子径2.3μm
高軟化点ガラス粉末:
SiO
2 30質量%、B
2O
3 31質量%、ZnO 6質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al
2O
3 27質量%、屈折率(ng)1.55、軟化温度790℃、熱膨張係数32×10
-7(K
-1)、平均粒子径2.3μm
【0120】
(ガラス粉末含有ペーストの作製)
ガラス粉末含有ペーストP−1:
4質量部の感光性モノマーM−1、6質量部の感光性モノマーM−2、24質量部の感光性ポリマー、6質量部の光重合開始剤、0.2質量部の重合禁止剤及び12.8質量部の紫外線吸収剤溶液を、38質量部の溶媒に、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、9質量部の粘度調整剤を添加して、有機溶液1を得た。得られた有機溶液1をガラス板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)は、1.555であった。50質量部の有機溶液1に、50質量部の低軟化点ガラス粉末を添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストP−1を得た。
【0121】
ガラス粉末含有ペーストP−2:
50質量部の有機溶液1に、49質量部の低軟化点ガラス粉末及び1質量部の高軟化点ガラス粉末を添加した以外は、上記ガラス粉末含有ペーストP−1と同様にしてガラス粉末含有ペーストP−2を得た。低軟化点ガラスと高軟化点ガラスの合計量に占める低軟化点ガラスの体積比率は98体積%であった。
【0122】
ガラス粉末含有ペーストP−3:
50質量部の有機溶液1に、40質量部の低軟化点ガラス粉末及び10質量部の高軟化点ガラス粉末を添加した以外は、上記ガラス粉末含有ペーストP−1と同様にしてガラス粉末含有ペーストP−3を得た。低軟化点ガラスと高軟化点ガラスの合計量に占める低軟化点ガラスの体積比率は80体積%であった。
【0123】
(隔壁基板の作製)
隔壁基板1:
基材として、125mm×125mm×0.7mmのソーダガラス板を用いた。基材の表面に、ガラス粉末含有ペーストP−1を、乾燥後の厚さが220μmになるようにダイコーターで塗布して乾燥し、ガラス粉末含有ペーストの塗布膜を得た。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ127μm、線幅15μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、ガラス粉末含有ペーストの塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて300mJ/cm
2の露光量で露光した。露光後の塗布膜は、0.5質量%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状の焼成前パターンを得た。得られた格子状の焼成前パターンを、空気中580℃で15分間焼成して、ガラスを主成分とする、格子状の隔壁を形成した。割断により隔壁断面を露出させ、走査型電子顕微鏡S2400((株)日立製作所製)で撮像して測定した、隔壁の高さL1は150μm、隔壁の間隔L2は127μm、隔壁の底部幅L3は30μm、隔壁の頂部幅L4は10μmであった。
【0124】
隔壁基板2:
ガラス粉末含有ペーストP−2を用いた以外は、隔壁基板1と同様に形成した。隔壁の高さL1は150μm、隔壁の間隔L2は127μm、隔壁の底部幅L3は30μm、隔壁の頂部幅L4は10μmであった。
【0125】
隔壁基板3:
ガラス粉末含有ペーストP−3を用い、隔壁の焼成温度を590℃としたこと以外は、隔壁基板1と同様に形成した。隔壁の高さL1は150μm、隔壁の間隔L2は127μm、隔壁の底部幅L3は30μm、隔壁の頂部幅L4は10μmであった。
【0126】
(金属反射層の形成)
市販のスパッタ装置、およびスパッタターゲットを用いた。スパッタ時は、隔壁基板の近傍にガラス平板を配置し、ガラス平板上における金属厚みが300nmとなる条件でスパッタを実施した。スパッタターゲットには、パラジウムおよび銅を含有する銀合金であるAPC((株)フルヤ金属製)、または非合金の銀を用いた。トリプルイオンミリング装置EM TIC 3X(LEICA社製)を用いて隔壁断面を露出させ、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)Merlin(Zeiss社製)で撮像して測定した、各隔壁基板における隔壁の高さ方向中央部側面の金属反射層厚みは、70nmであった。
【0127】
(金属酸化物反射層ペーストの原料)
金属酸化物反射層ペーストの作製に用いた原料は次のとおりである。
金属酸化物フィラー酸化チタン(石原産業(株)製)
バインダー溶液5質量%のエチルセルロース(ダウケミカル社製)及び95質量%のターピネオール(日本テルペン化学(株)製)の混合溶液
モノマー30質量%のジペンタエリスリトールペンタアクリレート及び70質量%のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(いずれも東亞合成(株)製)の混合物
重合開始剤1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40:和光純薬工業(株)製)
【0128】
(金属酸化物反射層の形成)
50質量部の金属酸化物フィラー、45質量部のバインダー溶液、4.5質量部のモノマー及び1.5質量部の重合開始剤を3本ローラー混練機にて混練し、金属酸化物反射層ペーストを得た。金属酸化物反射層ペーストを隔壁上に真空印刷した後、90℃で1h乾燥し、さらに190℃で1hキュアして金属酸化物反射層を形成した。
【0129】
(算術平均傾斜角の測定)
反射層形成後の隔壁基板を割断し、隔壁側面の反射層が露出した断面について、レーザーマイクロスコープVK−X200(キーエンス(株)製)を用い、倍率50倍の対物レンズで隔壁側面を5箇所撮影し、付属の解析ソフトで隔壁側面中央20μmの長さ範囲を線粗さ分析し、5点の平均値を求めて算術平均傾斜角とした。
【0130】
(無機保護層の形成)
市販のスパッタ装置、およびスパッタターゲットを用いた。スパッタ時は、隔壁基板の近傍にガラス平板を配置し、ガラス平板上における無機保護層厚みが100nmとなる条件でスパッタを実施した。金属反射層厚みと同様にして測定した、各隔壁基板における隔壁の高さ方向中央部側面の無機保護層厚みは、20nmであった。
【0131】
(有機保護層の形成)
ポリシロキサンを含有する有機保護層は次のように形成した。隔壁基板にポリシロキサン溶液1質量部に対し、溶媒としてγ−ブチロラクトン10質量部を混合した希釈液を作製した。各実施例、比較例について、表1に記載のポリシロキサン溶液を用いた。この希釈液を隔壁基板に真空印刷した後、90℃で1h乾燥し、さらに190℃で1hキュアして有機保護層を形成した。表1において、形成位置に隔壁−反射層間と記載のサンプルは反射層の形成前に、形成位置が反射層上のサンプルは反射層の形成後に、形成位置が隔壁−反射層間+反射層上のサンプルは反射層形成前と後の2回、上記手法により有機保護層を形成した。なお、無機保護層が形成されており、さらに有機保護層の形成位置が反射層上のサンプルは、反射層、無機保護層、有機保護層をこの順に形成した。金属反射層厚みと同様にして測定した、各隔壁基板における隔壁の高さ方向中央部側面の有機保護層厚みは、隔壁−反射層間、および反射層上のいずれも1μmであった。
【0132】
アクリルの有機保護層は次のように形成した。オリコックス(登録商標)KC7000(共栄社化学(株)製)の1質量部をγ−ブチロラクトン20重量部に溶解して希釈液を作製した。この希釈液を隔壁基板に真空印刷した後、90℃で1h乾燥した。
【0133】
ポリパラキシリレンの有機保護層は、公知の真空蒸着法により形成した。
【0134】
(蛍光体)
市販のGOS:Tb(Tbをドープした酸硫化ガドリニウム)蛍光体粉末をそのまま用いた。粒度分布測定装置MT3300(日機装(株)製)で測定した平均粒子径D50は11μmであった。
(蛍光体層のバインダー樹脂)
以下の樹脂を用いた。
セルロース誘導体:エトセル(登録商標)7cp(ダウケミカル社製)
ブチラール:エスレック(登録商標)B BL-S(積水化学工業(株)製)
アクリル:オリコックス(登録商標)KC7000(共栄社化学(株)製)
ポリオレフィン:ARTON(登録商標)D4540(JSR(株)製)
【0135】
(蛍光体層の形成)
蛍光体粉末10質量部を、濃度10wt%のバインダー樹脂溶液5質量部と混合して、蛍光体ペーストを作製した。セルロース誘導体、ブチラール、アクリル樹脂溶液の溶媒には、ベンジルアルコールを用いた。また、ポリオレフィン樹脂溶液の溶媒にはシクロヘキサノンを用いた。この蛍光体ペーストを、反射層、無機保護層、有機保護層等を形成した隔壁基板に真空印刷し、蛍光体の体積分率が65%になるように充填して150℃で15分乾燥し、蛍光体層を形成した。
【0136】
(初期輝度の評価)
蛍光体層充填後の各シンチレータパネルを、X線検出器PaxScan 2520V(Varian社製)のセンサ表面中央に、シンチレータパネルのセルがセンサのピクセルと1対1対応するようにアライメントして配置し、基板端部を粘着テープで固定した。この検出器に、X線放射装置L9181−02(浜松ホトニクス(株)製)からのX線を、管電圧50kV、X線管と検出器の距離30cmの条件でX線を照射して画像を取得した。得られた画像中の、シンチレータパネルの発光位置中央における256×256ピクセルのデジタル値の平均値を輝度値とし、各サンプルについて実施例1の輝度値に対する相対値を算出し、初期輝度とした。初期輝度80未満は輝度が低く不適である。
【0137】
(耐湿熱試験)
高温・高湿環境下における欠陥発生の加速試験として、作製したシンチレータパネルを、温度65℃、湿度90%の恒温恒湿器内に300h静置した。
・耐湿熱試験後輝度維持率の評価
耐湿熱試験後の各シンチレータパネルについて、初期輝度と同様にして輝度値を測定し、各サンプルの耐湿熱試験前の輝度値に対する割合を求めた。
・耐湿熱試験後ピンホール数の評価
耐湿熱試験後の各シンチレータパネルのX線画像におけるピンホール状の輝度低下箇所の数をカウントした。ピンホール欠陥数が10個以上の場合は、X線画像の補正による欠陥除去が困難となるため、実用には不適である。
【0138】
(経時変色耐性)
シンチレータパネル作製後、1ヶ月間室温の大気中に保管したサンプルについて、シンチレータパネル表面の変色を目視で判断した。変色が見られない場合を◎、変色が見られるものの実用上問題がない場合を△とした。
【0139】
(輝度ムラの評価)
各シンチレータパネルのX線画像を目視し、ムラが見られない場合を◎、ムラがごく軽微な場合を○、ムラが見られるが実用上使用可能な程度の場合を△、ムラが顕著で実用に不適な場合を×、ムラが極めて顕著な場合を××とした。
【0140】
(実施例1〜14、比較例1〜9)
表1に示す隔壁基板に、表1に示す材料を用いて、前述の方法により金属反射層または金属酸化物反射層を形成し、前述の方法により、表1に示す無機保護層および有機保護層を形成した。その後、表1に示すバインダー樹脂を用いて前述の方法により蛍光体層を形成した。各実施例、比較例の構成、および各種評価結果を表1に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
表1に示されるように、一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含有する有機保護層が金属反射層上に形成されている実施例1〜4のシンチレータパネルは、初期輝度が高く、耐湿熱試験後のピンホール欠陥数が少なく、さらに輝度ムラも見られなかった。バインダー樹脂にポリオレフィンを用いた実施例5のシンチレータパネルは、隔壁基板上で若干はじきが発生する傾向があり、輝度ムラが見られたが、問題のない範囲であった。隔壁−反射層間と反射層上の両方に有機保護層を有する実施例6のシンチレータパネルは、初期輝度が極めて高く良好であった。また、耐湿熱試験後の輝度維持率も比較的良好であった。隔壁−反射層間のみに有機保護層を有する実施例7のシンチレータパネルは、初期輝度が若干低下し、また、耐湿熱試験後に少数のピンホール欠陥が発生したが、問題のない範囲であった。一般式(1)で表されるオルガノシランに由来する構造単位の含有量が少ない実施例8のシンチレータパネルは、隔壁基板上で若干はじきが発生する傾向があり、輝度ムラが見られたが、問題のない範囲であった。金属反射層上に無機保護層として窒化ケイ素を有する実施例9〜11のシンチレータパネルは、耐湿熱試験後の輝度維持率が極めて良好であった。金属反射層材料に銀を用いた実施例12のシンチレータパネルは、経時で若干の変色が見られたが、問題のない範囲であった。隔壁がフィラーとして高軟化点ガラスを含有する実施例13〜14のシンチレータパネルは、フィラーの含有率が増加するに伴って初期輝度が若干低下する傾向が見られたが、問題のない範囲であった。
【0143】
一方、シロキサン有機保護層を有しない比較例1〜2のシンチレータパネルは、耐湿熱試験後のピンホール欠陥が多発し、不適であった。比較例1のシンチレータパネルは初期輝度も不適であった。シロキサン有機保護層を有するが、一般式(1)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含有しない比較例3〜5のシンチレータパネルは、輝度ムラが極めて大きく、不適であった。金属反射層に代わり、金属酸化物反射層を有する比較例6〜7のシンチレータパネルは、初期輝度が低く不適であった。シロキサン以外の有機保護層を有する比較例8〜9のシンチレータパネルは、初期輝度が低く不適であった。
【0144】
以上の結果より、本発明のシンチレータパネルは、高輝度、高鮮鋭度であり、輝度ムラが小さく、さらに高温・高湿環境下における欠陥発生が抑制されたシンチレータパネルを提供できることが明らかである。