(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984516
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/30 20180101AFI20211213BHJP
F21S 41/50 20180101ALI20211213BHJP
F21S 43/50 20180101ALI20211213BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20211213BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20211213BHJP
【FI】
F21S45/30
F21S41/50
F21S43/50
F21W102:00
F21W103:00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-57467(P2018-57467)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-169403(P2019-169403A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 陽
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−086607(JP,A)
【文献】
特開2009−009713(JP,A)
【文献】
特開2013−098119(JP,A)
【文献】
特開2004−119198(JP,A)
【文献】
特開2013−157177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/30
F21S 41/50
F21S 43/50
F21W 102/00
F21W 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの周辺に設けられるエクステンションと、
前記エクステンションの外側を覆うアウタレンズと、
前記エクステンションの内側を覆うハウジングと、
前記エクステンションに設けられた通気口と、を備え、
前記通気口は、前記アウタレンズと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間とを連通させ、
前記エクステンションは、隣り合う第1領域および第2領域であって、太陽光による温まり易さが異なる第1領域および第2領域を含み、
前記第2領域は、前記第1領域よりも太陽光によって温まり難い領域であり、
前記通気口は、前記第2領域に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具において、
前記第2領域から前記アウタレンズまでの距離は、前記第1領域から前記アウタレンズまでの距離よりも大きいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用灯具であって、
前記第2領域は、前記第1領域よりも内側に凹んだ領域であることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
ランプの周辺に設けられるエクステンションと、
前記エクステンションの外側を覆うアウタレンズと、
前記エクステンションの内側を覆うハウジングと、
前記エクステンションに設けられた通気口と、を備え、
前記通気口は、前記アウタレンズと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間とを連通させ、
前記エクステンションは、前記アウタレンズ側の面に反射加工が施されている反射領域と、前記反射領域に隣り合い、前記アウタレンズ側の面に反射加工が施されていない非反射領域と、を含み、
前記通気口は、前記反射領域に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用灯具において、
前記エクステンションは、前記ランプから前記ハウジング内に発せられ、前記通気口に向かう光を遮る遮光構造を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
ランプの周辺に設けられるエクステンションと、
前記エクステンションの外側を覆うアウタレンズと、
前記エクステンションの内側を覆うハウジングと、
前記エクステンションに設けられた通気口と、を備え、
前記通気口は、前記アウタレンズと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間とを連通させ、
前記エクステンションは、前記ランプから前記ハウジング内に発せられ、前記通気口に向かう光を遮る遮光構造を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用灯具において、
前記アウタレンズの内面に防曇塗装が施されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用灯具において、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングの外側の空間とを連通させる呼吸穴を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両用灯具において、
前記ハウジングの内面は、入射した光を乱反射する光拡散面を含むことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に、ランプの周辺に設けられたエクステンションの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ヘッドライト、テールライト等の車両用灯具が設けられている。車両用灯具では、ボデーに開けられた穴から内側に凹んだハウジングにランプが収容されている。ボデーから外側を臨むハウジングの開口はアウタレンズに覆われており、ランプが発した光はアウタレンズを透過して自動車から放射される。車両用灯具は、アウタレンズとハウジングに囲まれた空間を有しており、この空間の構造や空気の状態によっては水分が結露し、アウタレンズが曇ってしまうことがある。
【0003】
この問題に対し、従来から様々な技術が提案されている。例えば、以下の特許文献1および2には、車両用灯具のハウジング内の構造を空気の流れを調整する構造とすることで、アウタレンズの曇りを防止することが記載されている。特許文献1には、使用頻度が異なる2つのランプが隣り合う車両用灯具(自動車用ランプ)について、アウタレンズの曇りを防止する構造が示されている。使用頻度が高いロービーム用のランプが設けられている領域よりも、使用頻度が低いハイビーム用のランプが設けられている領域の方が低温となり、ハイビーム用のランプ側の領域に空気が淀んでアウタレンズが曇り易いという問題点が指摘されている。この問題点に対し、ロービーム用のランプとハイビーム用のランプとの間に整流板を設けることで、空気の淀みを解消する構造が提案されている。
【0004】
特許文献2に記載されている車両用灯具(車両用前照灯)では、走行用ランプが設けられている領域と、すれ違い用ランプが設けられている領域とが仕切り板によって隔てられている。これによって、点灯しているランプ側の領域から消灯しているランプ側に湿った空気が流れて結露することが防止され、アウタレンズの曇りが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−119198号公報
【特許文献2】特開2012−003958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、車両用灯具のランプの周辺には、エクステンションと呼ばれる意匠部品が設けられている。エクステンションはランプの周辺でハウジングの開口を塞ぎ、ランプと共にアウタレンズによって覆われている。エクステンションの設計については次のような課題がある。すなわち、エクステンションの形状や塗装の状態等によっては、太陽光に照らされたときに、隣接する空間に比べて温度が低くなる空間がエクステンションとアウタレンズとの間に生じる。このような空間では、隣接する空間から空気が流れ込んで水分が結露し、アウタレンズが曇り易くなる。
【0007】
本発明は、エクステンションを備える車両用灯具について、アウタレンズの曇りを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ランプの周辺に設けられるエクステンションと、前記エクステンションの外側を覆うアウタレンズと、前記エクステンションの内側を覆うハウジングと、前記エクステンションに設けられた通気口と、を備え、前記通気口は、前記アウタレンズと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間とを連通さ
せ、前記エクステンションは、隣り合う第1領域および第2領域であって、太陽光による温まり易さが異なる第1領域および第2領域を含み、前記第2領域は、前記第1領域よりも太陽光によって温まり難い領域であり、前記通気口は、前記第2領域に設けられていることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、
前記第2領域から前記アウタレンズまでの距離は、前記第1領域から前記アウタレンズまでの距離よりも大き
い。
【0010】
望ましくは、前記第2領域は、前記第1領域よりも内側に凹んだ領域である。
【0012】
また、本発明は、ランプの周辺に設けられるエクステンションと、前記エクステンションの外側を覆うアウタレンズと、前記エクステンションの内側を覆うハウジングと、前記エクステンションに設けられた通気口と、を備え、前記通気口は、前記アウタレンズと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間とを連通させ、前記エクステンションは、前記アウタレンズ側の面に反射加工が施されている反射領域と、前記反射領域に隣り合い、前記アウタレンズ側の面に反射加工が施されていない非反射領域と、を含み、前記通気口は、前記反射領域に設けられている
ことを特徴とする。
【0013】
望ましくは、前記エクステンションは、前記ランプから前記ハウジング内に発せられ、前記通気口に向かう光を遮る遮光構造を有する。
また、本発明は、ランプの周辺に設けられるエクステンションと、前記エクステンションの外側を覆うアウタレンズと、前記エクステンションの内側を覆うハウジングと、前記エクステンションに設けられた通気口と、を備え、前記通気口は、前記アウタレンズと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間とを連通させ、前記エクステンションは、前記ランプから前記ハウジング内に発せられ、前記通気口に向かう光を遮る遮光構造を有することを特徴とする。
【0014】
望ましくは、前記アウタレンズの内面に防曇塗装が施されている。
【0015】
望ましくは、前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングと前記エクステンションとの間の空間と、前記ハウジングの外側の空間とを連通させる呼吸穴を有する。
【0016】
望ましくは、前記ハウジングの内面は、入射した光を乱反射する光拡散面を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エクステンションを備える車両用灯具について、アウタレンズの曇りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車両用灯具を搭載先の自動車と共に示す斜視図である。
【
図2】アウタレンズとエクステンションとを取り外した車両用灯具の斜視図である。
【
図4】
図3に示されたAA線における断面を示す図である。
【
図5】
図4に示されたBB線における断面を示す図である。
【
図6】
図4に示されたCC線における断面を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る車両用灯具の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図面を参照して、本発明の実施形態に係る車両用灯具について説明する。以下の説明において、外側方向および内側方向を表す用語は、自動車のボデーの外側に向かう方向および内側に向かう方向を示す。また、上下左右前後の用語は、車両用灯具から光の放射方向を見たときの方向を示す。車両用灯具が自動車のヘッドライトとなる以下の実施形態では、車両用灯具の上下左右前後は、自動車の乗員から見た上下左右前後に一致する。
【0020】
図1には、本発明の実施形態に係る車両用灯具が、搭載先の自動車と共に示されている。車両用灯具は、夜間走行用のランプ14(以下、夜間用ランプ14という)、ハウジング12、エクステンション16およびアウタレンズ18を備えている。夜間用ランプ14は、その放射方向を前方に向けた状態で、ボデー20に開けられた穴から内側に凹んだハウジング12に収容されている。夜間用ランプ14の周囲にはエクステンション16が設けられている。ボデー20から外側を臨むハウジング12の開口はエクステンション16によって覆われており、その外側がアウタレンズ18によって覆われている。夜間用ランプ14から発せられた光は、アウタレンズ18を透過して自動車から放射される。
【0021】
図2には、アウタレンズ18とエクステンション16とを取り外した車両用灯具の斜視図が示されている。ハウジング12は、ボデー前方の曲面に沿って変形した船形形状に形成されている。ハウジング12の内面は、車両用灯具に用いられる各部品の配置に応じた凹凸形状を有している。
【0022】
ハウジング12の前方左側には内側に膨らんだ領域があり、その前面には上下に並んだ第1補助ランプ穴22および第2補助ランプ穴24が設けられている。第1補助ランプ穴22および第2補助ランプ穴24には、クリアランスランプ、ウインカランプ等の補助ランプが固定される。
【0023】
ハウジング12の後方には、主ランプ穴26が設けられている。主ランプ穴26には夜間用ランプが固定される。夜間用ランプには、ロービームおよびハイビーム兼用のランプが用いられてもよい。主ランプ穴26より後方の底壁は、後方に延びる円筒形状の一部をなす形状となっており、主ランプ穴26より後方のハウジング12の外側に、各部品が配置される空間が確保されている。
【0024】
左側前方における膨らんだ領域の前面および後方の壁面には、ハウジング12の内側の空間とハウジング12の外側の空間とを連通させる呼吸穴32が設けられている。高温時に車両用灯具内の空気が膨張し、各部材に機械的なストレスが加わることが呼吸穴32によって回避される。なお、部品を取り付ける穴と部品との間に隙間がある等により、ハウジング12の内側の空間とハウジング12の外側の空間との間に通気性がある場合には、呼吸穴32は必ずしも設けなくてもよい。
【0025】
図3には、エクステンション16の斜視図が示されている。ただし、この図には夜間用ランプ14がエクステンション16に併せて示されている。エクステンション16は、
図2のハウジング12の開口を塞ぐ船形形状に形成され、夜間用ランプ14を挿通させる穴や装飾用の凹凸が設けられた形状を有している。
【0026】
エクステンション16の前面には、夜間用ランプ14を挿通させる前面ランプ穴34が設けられている。前面ランプ穴34の周囲には、前後方向に延びた筒構造36が形成され、筒構造36の左側には、補助ランプの光を通過させる前面補助ランプ穴38が設けられている。前面ランプ穴34、筒構造36および前面補助ランプ穴38が設けられた領域の上側および左側には堤防状に突出したエッジ50が形成されている。エッジ50は、エクステンション16の上側において後方から前方に亘って延び、先端で折り返して前面補助ランプ穴38を挟んで筒構造36の下方に至る。筒構造36の下方から後方の上側にかけては、崖状に張り出した領域が形成されている。
【0027】
図4には、
図3に示されたAA線における断面が示されている。
図5には、
図4に示されたBB線における断面が示されている。
図6には、
図4に示されたCC線における断面が示されている。ただし、これらの断面図には、エクステンション16の前方(外側)を覆うアウタレンズ18と、エクステンション16の後方(内側)を覆うハウジング12とが併せて示されている。
【0028】
図4に示されるAA線断面において、ハウジング12は、取り付けられる部品の位置に応じて屈曲しながら後方から左斜め前方に及んでいる。ハウジング12の後方には呼吸穴32が設けられている。二点鎖線で示されているように、ハウジング12の主ランプ穴26には夜間用ランプ14が固定される。夜間用ランプ14の頭部は、エクステンション16に設けられた前面ランプ穴34から前方に突出する。
【0029】
AA線断面において、エクステンション16は後端から前方に向かうにつれて左側に反れて、筒構造36の側壁の右側を形成する。また、エクステンション16は筒構造36の側壁の内側から左斜め前方に延び、前面ランプ穴34を形成して更に左斜め前方に延びた後、前方に折れ曲がって筒構造36の側壁の左側を形成する。さらに、エクステンション16は、筒構造36の左側前方に前面補助ランプ穴38を形成し、左斜め前方に延びて左側の端に至る。筒構造36の側壁から左側の端に至る領域からは、エッジ50が前方に突出している。
【0030】
AA線断面において、アウタレンズ18は、エクステンション16の形状に沿って、後端から前方に向かうにつれて左方向に反れながら前方に及んでいる。アウタレンズ18の左右の端は、ハウジング12の左右の縁に接触している。アウタレンズ18の内面には、曇りを防ぐ塗料による防曇塗装が施されてもよい。
【0031】
図5のBB線断面に示されているように、ハウジング12の上側の縁と下側の縁には、外側に向けて開いたU字形状のレンズ受け入れ溝44および46が形成されている。上側のレンズ受け入れ溝44にはアウタレンズ18の上側の縁が入り込み、接着剤48によって固定されている。下側のレンズ受け入れ溝46にはアウタレンズ18の下側の縁が入り込み、接着剤48によって固定されている。アウタレンズ18は、上側のレンズ受け入れ溝44と下側のレンズ受け入れ溝46との間で外側に膨らんだ曲面を描いている。
【0032】
BB線断面においてハウジング12は、上側のレンズ受け入れ溝44から下方に延びた後、前方に膨らんだ曲線を描きながら斜め下に向かって延びる。この領域の下側の空間は、夜間用ランプの後方の空間に対応する。ハウジング12は更に外側に向かって延びた後、上方に延びて下側のレンズ受け入れ溝46に至る。
【0033】
BB線断面においてエクステンション16は、上側の端から外方向斜め下に向かって延びた後に外側に延び、外側に凸のV字形状を描いてエッジ50を形成する。エッジ50の頂上より下方では、エクステンション16は内側に凸のV字形状を描いて谷領域52を形成し、下方に曲がって下端に至る。
【0034】
図5に示されているように、谷領域52からアウタレンズ18までの距離は、谷領域52より上方の上側領域54からアウタレンズ18までの距離よりも大きい。また、谷領域52からアウタレンズ18までの距離は、谷領域52より下方の下側領域56からアウタレンズ18までの距離よりも大きい。すなわち、上側領域54とアウタレンズ18との間に挟まれた上側空間60は、谷領域52とアウタレンズ18との間に挟まれた谷空間58よりも狭い。同様に、下側領域56とアウタレンズ18との間に挟まれた下側空間62は谷空間58よりも狭い。なお、エクステンション16上の領域からアウタレンズ18までの距離は、例えば、その領域上の各点からアウタレンズ18の内面に対して垂直に引かれた垂線の長さの平均値として定義される。また、この距離は、エクステンション16上に規定された領域の重心からアウタレンズ18の内面に対して引かれた垂線の長さとして定義してもよい。また、この距離は、エクステンション16上に規定された領域上の各点からアウタレンズ18の内面に対して垂直に引かれた垂線の長さの最大値として定義してもよい。
【0035】
このように、谷空間58に比べて上側空間60および下側空間62の方が狭いため、車両用灯具が太陽光に照らされたときには、上側空間60および下側空間62の方が、谷空間58よりも温度が高くなり易い。一般に、空気は高温の空間から低温の空間に向かって流れるため、車両用灯具が太陽光に照らされたときには、上側空間60および下側空間62から谷空間58に向かって空気が流れる傾向が強い。さらに、谷空間58に流れ込んだ空気が冷やされた場合には、空気中の水分が結露してアウタレンズ18が曇り易くなる。また、アウタレンズ18の内面に防曇塗装が施されている場合には、結露した水分によって防曇塗料に含まれる特定の成分が溶けてアウタレンズ18の内面が汚れてしまうことがある。
【0036】
そこで、
図6のCC線断面図に示されているように、アウタレンズ18とエクステンション16との間のレンズ側空間と、エクステンション16とハウジング12との間のハウジング側空間とを連通させる通気口66がエクステンション16に設けられている。この通気口66は、レンズ側空間とハウジング側空間との間に生じる温度差によって、レンズ側空間からハウジング側空間に湿った空気を導き、アウタレンズ18の曇りを抑制するものである。CC線断面はBB線断面よりも若干左側にずれた位置における断面であり、通気口66の周辺の構造を除き、CC線断面の構造はBB線断面の構造とほぼ同一である。
【0037】
CC線断面においてエクステンション16は、上側の端から外方向斜め下に延びた後に外側に延び、外側に凸のV字形状を描いてエッジ50を形成し、そこからハウジング12内に延びてハウジング12内の下端に至る。エクステンション16は、エッジ50からハウジング12内に延びた領域との間に空間を隔てて再び外側に延び、下方に曲がって下端に至る。エッジ50からハウジング12内に延びた領域と、その下方で外側に延びた領域との間には通気口66が形成されている。通気口66の上側の縁からハウジング12内に延びた領域は、後述の遮光構造68の一部となっている。
【0038】
図7には通気口66の近傍の斜視図が示されている。この斜視図は、
図3の一点鎖線の丸印40で囲まれた部分の拡大図である。エッジ50の下側斜面の最奥部、すなわち、谷領域52の上側斜面の最奥部には、横方向に長い長方形状の通気口66が設けられている。
図8には、
図6に示された部分を内側から眺めた斜視図が示されている。通気口66は、内側から遮光構造68によって覆われている。遮光構造68は、前壁72、後壁74、天井板76、および内側壁78を備えている。前壁72の外側の縁は通気口66の前方の縁に接し、後壁74の外側の縁は通気口66の後方の縁に接している。天井板76の外側の縁は、通気口66の上側の縁に接し、天井板76の前後の縁はそれぞれ、前壁72の上側の縁および後壁74の上側の縁に接している。内側壁78の上側の縁は、天井板76の内側の縁に接しており、内側壁78の前後の縁は、それぞれ、前壁72の内側の縁および後壁74の内側の縁に接している。内側壁78は前壁72および後壁74よりも下方に及んでいる。このように、前壁72、後壁74、天井板76、および内側壁78は、外側方向および下側方向に開いたフード状の遮光構造68を形成し、通気口66の内側を覆う。遮光構造68は、ハウジング内のあらゆる位置から通気口66に向かう光路を遮る。これによって遮光構造68は、夜間用ランプからハウジング内に発せられ、通気口66に向かう光を遮る。
【0039】
図9には、CC線断面における通気口66の近傍の拡大図が示されている。
図9を参照して、車両用灯具において生じる現象について説明する。車両用灯具が太陽光に照らされた場合、上側空間60および下側空間62の方が谷空間58よりも狭いため、上側空間60および下側空間62の方が、谷空間58よりも温度が高くなり易い。上側空間60および下側空間62の方が、谷空間58よりも温度が高くなることで、矢印70で示されているように上側空間60および下側空間62から谷空間58に向かって空気が流れる。また、ハウジング12内には太陽光が届かないため、谷空間58よりもハウジング12内の空間の方が温度が低くなり易い。谷空間58よりもハウジング12内の空間の方が温度が低くなることで、上側空間60および下側空間62から谷空間58に向かって流れた空気は、さらに、通気口66を通ってハウジング12内に流れる。
【0040】
ハウジング12に設けられた呼吸穴32(
図4)は、ハウジング12内の空間とハウジング12外の空間とを連通させる。これによってハウジング12内の空気が流れ易くなり、上側空間60および下側空間62から谷空間58に向かって流れ、さらに、通気口66を通ってハウジング12内に空気が流れる現象が促進される。
【0041】
このような構成によれば、谷空間58に流れ込んだ空気は通気口66を通ってハウジング12内に流れる。これによって、空気中の水分が谷空間58で結露し難くなり、アウタレンズ18の曇りが抑制される。さらに、アウタレンズ18の内面に防曇塗装が施されている場合には、水分の結露によって防曇塗料に含まれる特定の成分が溶けてアウタレンズ18が汚れる可能性が低くなる。
【0042】
また、
図4、
図6、
図8および
図9に示されているように、通気口66の内側は遮光構造68によって覆われているため、夜間用ランプ14からハウジング12内に発せられた光は通気口66に至る前に遮光構造68によって遮られる。これによって、夜間用ランプ14からハウジング12内に発せられた光が車両用灯具の外側に漏れることが回避される。
【0043】
なお、ハウジング12の内面には光拡散面が形成されてもよい。光拡散面は、シボ加工やホーニング加工等によって微細な凹凸形状が形成された面であってもよい。光拡散面に入射した光は乱反射するため、夜間用ランプ14からハウジング12内に発せられた光が通気口66のみに向かって反射することが回避される。本実施形態では、
図5および
図6に示されているように、ハウジング12の底面後方の角の近傍に光拡散面64が設けられている。
【0044】
このように、本実施形態に係る車両用灯具は、隣り合う第1領域および第2領域においてアウタレンズ18までの距離が異なるエクステンションについて、アウタレンズ18までの距離が大きい方の第2領域に通気口66が設けられたものである。上記の上側領域54および下側領域56が第1領域に相当し、谷領域52が第2領域に相当する(
図6)。アウタレンズの内面が平面形状または緩やかな曲面形状である場合、上記の第2領域は、第1領域よりも内側に凹んだ領域であってもよく、この内側に凹んだ領域に通気口が設けられればよい。
【0045】
図3に示されたエクステンション16の他、車両用灯具のエクステンションには、意匠デザインに応じて様々な凹凸形状を有するものがある。アウタレンズの内面が平面形状または緩やかな曲面形状である場合、凹凸形状を有する一般的なエクステンションについては、内側に凹んだ領域に通気口が設けられればよい。また、アウタレンズの内面が外側に凹んだ領域を有する場合には、その凹んだ内面に対向するエクステンション上の領域に通気口が設けられればよい。
【0046】
図10には、第2実施形態に係る車両用灯具の断面が示されている。この断面は、上述の実施形態のCC線断面に対応する。
図1〜
図9に示されている構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。この車両用灯具では、エクステンション90にエッジおよび谷領域が形成されておらず、エクステンション90は外側に膨らんだ曲面を描いている。外側に膨らんだ曲面を描いている領域には通気口66が設けられており、通気口66の内側は遮光構造68によって覆われている。エクステンション90は、通気口66から下方に延びて下端に至る。
【0047】
通気口66の周囲にある反射領域82の外側面(アウタレンズ18側の面)には装飾のための反射加工が施され、反射物質80が付着している。反射加工には、例えば、金属を蒸着させる加工や、光を反射する塗料を塗布する加工がある。反射領域82よりも上方および下方にある非反射領域84の外側面には反射加工が施されておらず、エクステンション90を形成する材料の表面が現れている。
【0048】
エクステンション90とアウタレンズ18との間の隙間が一定である場合、反射領域82とアウタレンズ18との間に挟まれる反射空間86と、非反射領域84とアウタレンズ18との間に挟まれる非反射空間88には、次のような性質がある。すなわち、車両用灯具が太陽光に照らされたときには、非反射空間88の方が反射空間86よりも温度が高くなり易い。これは、反射領域82よりも非反射領域84の方が放射率(輻射率)が大きく、太陽光から熱を吸収し易いためである。したがって、車両用灯具が太陽光に照らされたときには、非反射空間88から反射空間86に向かって空気が流れる傾向が強い。
【0049】
そこで、
図10に示される車両用灯具では、反射領域82に通気口66が設けられている。
図9を参照して説明した現象と同様の現象によって、非反射空間88から反射空間86に流れ込んだ空気は通気口66を通ってハウジング12内に流れる。これによって、空気中の水分が反射空間86で結露し難くなり、アウタレンズ18の曇りが抑制される。さらに、アウタレンズ18の内面に防曇塗装が施されている場合には、水分の結露によって防曇塗料が溶けてアウタレンズ18が汚れてしまう可能性が低くなる。
【0050】
このように、本実施形態に係る車両用灯具は、隣り合う第1領域および第2領域において太陽光による温まり易さが異なるエクステンションについて、温まり難い方の第2領域に通気口66が設けられたものである。太陽光による温まり易さを示す値としては放射率がある。上記の非反射領域84が第1領域に相当し、反射領域82が第2領域に相当する。すなわち、第2領域としての反射領域82は、第1領域としての非反射領域84よりも太陽光によって温まり難く、反射領域82に通気口66が設けられている。
【0051】
なお、温まり易さが異なる2つの領域には、上記の反射領域82および非反射領域84の他、異なる色の塗料で塗装された2つの領域がある。一般に薄い色の塗料で塗装された領域は、濃い色の塗料で塗装された領域よりも温まり難い。したがって、薄い色の塗料で塗装された領域に通気口を設ければよい。その他、温まり易さが異なる2つの領域には、放射率が異なる物質で形成された2つの領域や、異なる表面処理(光沢、艶消し等を施す処理等)が施された2つの領域がある。
【0052】
上記では、車両用灯具が自動車の右側のヘッドライトとして用いられた例が示された。自動車の左側のヘッドライトは、右側のヘッドライトに対して左右対称の構造を有する。また、本発明に係る車両用灯具は、ヘッドライトの他、テールライト、フォグランプ等、その他の灯具として用いられてもよい。
【0053】
上記では、意匠部品として用いられるエクステンションについて説明した。エクステンションには、ランプの光を前方に反射するリフレクタとしての機能を有するものもある。本発明は、リフレクタとしての機能を有するエクステンションに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
12 ハウジング、14 ランプ、16,90 エクステンション、18 アウタレンズ、20 ボデー、22 第1補助ランプ穴、24 第2補助ランプ穴、26 主ランプ穴、32 呼吸穴、34 前面ランプ穴、36 筒構造、38 前面補助ランプ穴、44,46 レンズ受け入れ溝、48 接着剤、50 エッジ、52 谷領域(第2領域)、54 上側領域(第1領域)、56 下側領域(第1領域)、58 谷空間、60 上側空間、62 下側空間、64 光拡散面、66 通気口、68 遮光構造、72 前壁、74 後壁、76 天井板、78 内側壁、80 反射物質、82 反射領域(第2領域)、84 非反射領域(第1領域)、86 反射空間、88 非反射空間。