特許第6984517号(P6984517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984517
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20211213BHJP
   H01H 1/20 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01H50/54 B
   H01H1/20
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-57946(P2018-57946)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-169421(P2019-169421A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 政直
(72)【発明者】
【氏名】西口 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】左右木 高広
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−048541(JP,U)
【文献】 特開平11−224581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/54
H01H 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に磁界を形成する励磁コイル(12)と、
前記励磁コイルにより駆動される可動コア(15)と、
第1可動接点(28)および第2可動接点(29)を有するとともに前記可動コアの移動に伴って共に移動する可動接触子(20)と、
前記励磁コイルへの通電時に前記可動接触子が移動させられると、前記第1可動接点が当接する第1固定接点(26)を有する第1固定端子(24)、および、前記第2可動接点が当接する第2固定接点(27)を有する第2固定端子(25)と、を備え、
前記可動接触子は、一端(201)および他端(202)を有する棒状部分を有し、前記一端に前記第1可動接点が配置されると共に前記他端に前記第2可動接点が配置され、
前記第1可動接点と前記第2可動接点の配列方向および前記可動接触子の移動方向に対する垂直方向に対して、前記第1可動接点の中心軸および前記第2可動接点の中心軸が傾斜させられており、
前記第1可動接点の中心軸が前記第1固定接点の中心軸に対して傾斜させられている方向が、前記第2可動接点の中心軸が前記第2固定接点の中心軸に対して傾斜させられている方向に対して、逆方向となっている電磁継電器。
【請求項2】
記一端における前記第1固定接点側の先端面(201a)に前記第1可動接点が配置されていると共に、前記他端における前記第2固定接点側の先端面(202a)に前記第2可動接点が配置されており、
前記可動接触子の移動方向に対して、前記一端側の先端面の法線方向が傾斜させられ、かつ、前記他端側の先端面の法線方向が前記一端側の先端面の法線方向が傾斜させられている方と逆方向に傾斜させられている請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記第1固定端子は、前記第1固定接点が配置される一端を有し、該一端において前記第1固定接点が配置された先端面(241)の法線方向が前記可動接触子の移動方向とされており、
前記第2固定端子は、前記第2固定接点が配置される一端を有し、該一端において前記第2固定接点が配置された先端面(251)の法線方向が前記可動接触子の移動方向とされている請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第1可動接点および前記第2可動接点は、円形状とされ、断面形状が中心を頂部とした曲面状、半楕円形もしくは半長円形のいずれか1つとされ、
前記第1固定接点および前記第2固定接点は、円形状とされ、断面形状が中心を頂部とした曲面状、半楕円形もしくは半長円形のいずれか1つとされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点と固定接点とを接離させて電気回路を開閉する電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器は、2つの固定接点を有する固定端子と、2つの固定接点に対応する2つの可動接点を有する可動子を備えた構造とされ、可動子を移動させて可動接点と固定接点とを接離させることにより、電気回路を開閉するようになっている。このような電磁継電器では、電流通電時に発生し得る可動子の揺動を防止するために、固定端子に固定接点を3点備えると共に可動子に可動接点を3つ備え、3点接触構造とすることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−222534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3点接触構造とする場合、可動接点および固定接点が増加するため、装置の大型化を招く。エコカーとしてハイブリッドカーが主流であるが、近年では、PHV(プラグインハイブリッドビークル)やEV(エレクトリックビークル)が増加傾向にある。PHVやEVにおいてガソリンエンジン並の出力とするために、PHVやEVのモータ出力が高出力化される傾向にある。このため、そこに使用される駆動バッテリとインバータとを接続するためのリレーに流れる電流も増加し、リレーの高容量化が必要になる。したがって、リレーの高容量化に伴ってリレーも大型化し、上記のような3点接触構造だと、尚更に可動子の大型化や重量増加に加えてコスト増も招くことになるし、大型化や重量増加に伴って接点部分のバランスが悪くなるという問題も発生する。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、3点接触構造としなくても、可動子の揺動を抑制することが可能な電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、通電時に磁界を形成する励磁コイル(12)と、励磁コイルにより駆動される可動コア(15)と、第1可動接点(28)および第2可動接点(29)を有するとともに可動コアの移動に伴って共に移動する可動接触子(20)と、励磁コイルへの通電時に可動接触子が移動させられると、第1可動接点が当接する第1固定接点(26)を有する第1固定端子(24)、および、第2可動接点が当接する第2固定接点(27)を有する第2固定端子(25)と、を備え、可動接触子は、一端(201)および他端(202)を有する棒状部分を有し、一端に第1可動接点が配置されると共に他端に第2可動接点が配置され、第1可動接点と第2可動接点の配列方向および可動接触子の移動方向に対する垂直方向に対して、第1可動接点の中心軸および第2可動接点の中心軸が傾斜させられており、第1可動接点の中心軸が第1固定接点の中心軸に対して傾斜させられている方向が、第2可動接点の中心軸が第2固定接点の中心軸に対して傾斜させられている方向に対して、逆方向となっている。
【0007】
これにより、第1固定接点と第2固定接点の両中心点を通る直線を挟んだ両側に働く反発力の大小が、可動接触子の一端と他端とで逆になる。したがって3点接触構造としなくても、可動接触子などを含む可動子の揺動を抑制することが可能な電磁継電器とすることができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る電磁継電器の構成を示す正面断面図である。
図2図1の電磁継電器における接点部近傍の拡大斜視図である。
図3】(a)は第1固定接点と第1可動接点との接点部の当接前の状態を図1の紙面右側から見たものとして示した拡大図、(b)は第2固定接点と第2可動接点との接点部の当接前の状態を図1の紙面右側から見たものとして示した拡大図である。
図4】(a)は第1固定接点と第1可動接点との接点部の当接時の状態を図1の紙面右側から見たものとして示した拡大図、(b)は第2固定接点と第2可動接点との接点部の当接時の状態を図1の紙面右側から見たものとして示した拡大図である。
図5】比較例を示した図であって、(a)は第1固定接点と第1可動接点との接点部の当接時の状態を図1の紙面右側から見たものとして示した拡大図、(b)は第2固定接点と第2可動接点との接点部の当接時の状態を図1の紙面右側から見たものとして示した拡大図である。
図6】第2固定接点と第2可動接点との接点部に加えられる反発力について説明した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1図6を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、電磁継電器は、ケース11、励磁コイル12、固定コア13、ヨーク14、可動コア15、復帰バネ16、シャフト17、ベース18、絶縁碍子19、可動接触子20、支持枠21および接圧バネ22が備えられた構成とされている。
【0013】
ケース11は、例えば樹脂等の非磁性かつ非導電性の材料で構成されている。ケース11内に構成される空間内に、電磁継電器を構成する各部品が収容されている。
【0014】
励磁コイル12は、通電時に磁界を形成するもので、略円筒状とされ、中空状の円筒部を有するボビン12aに巻回されている。この励磁コイル12への通電は図示しない外部接続端子を通じて行われるようになっている。励磁コイル12の内径部に形成された中心孔に、固定コア13等が配置されている。
【0015】
固定コア13は、磁性体よりなり、励磁コイル12の中心孔と対応する大きさの略円柱状部材で構成されており、磁気回路の一部を構成する。固定コア13は、中心軸に沿って貫通孔13aが形成された構造とされており、この貫通孔13a内にシャフト17の一端が位置している。
【0016】
ヨーク14は、励磁コイル12を囲む磁性体部材である。ヨーク14は、励磁コイル12の外周側および軸方向端部の一方を覆うように配置され、磁気回路の一部を構成すると共に、軸方向の一方側で固定コア13の位置に対応する開口部となるヨーク孔142aが形成されたものとして構成される。
【0017】
本実施形態の場合、ヨーク14は、第1部材141と第2部材142とを有した構成とされている。第1部材141は、ステーショナリと呼ばれる部材であり、磁性体よりなる板材を略U字状に折り曲げた構造とされている。この第1部材141によって励磁コイル12の外周側および励磁コイル12の軸方向一端側が覆われている。また、第2部材142は、トッププレートと呼ばれる部材であり、磁性体よりなり、例えば円形平板もしくは矩形平板状で構成され、励磁コイル12の軸方向他端側を覆っている。また、第2部材142は、後述する可動コア15に対向して配置されており、第1部材141と接合されている。
【0018】
第1部材141には、固定コア13と対応する位置に開口部141aが形成されており、この開口部141a内に固定コア13の一部が嵌め込まれることで固定コア13と第1部材141とが接合されている。第2部材142には、中心部に上記したヨーク孔142aが第2部材142を貫通するように形成されている。ヨーク孔142aの形状、つまり第2部材142の内周形状は、可動コア15と対応する形状とされている。
【0019】
可動コア15は、第2部材142におけるヨーク孔142aと対応する位置に配置された磁性体よりなる円盤状部材である。可動コア15の中心軸線上において後述するシャフト17が挿入される貫通孔15aが形成されている。可動コア15は、励磁コイル12への通電が行われていない非通電時には、ヨーク14から離れた休止位置に位置しており、励磁コイル12への通電を行う通電時には、ヨーク14側に磁気吸引されて、ヨーク14の第2部材142に当接させられる。可動コア15の外周形状は、ヨーク孔142aの内周形状と対応した形状となっており、固定コア13と反対側が固定コア13側よりも径が拡大されたフランジ状とされ、そのフランジ状部分がヨーク孔142aの内壁面に当接させられるようになっている。
【0020】
また、本実施形態では、可動コア15のうちの復帰バネ16側の一面に、復帰バネ16が嵌め込まれるストッパ部15bが備えられている。ストッパ部15bは、可動コア15のうち復帰バネ16側の一面から円環状に突き出した突起部によって構成され、その外周面に復帰バネ16が嵌め込まれている。
【0021】
復帰バネ16は、固定コア13と励磁コイル12の内壁面の段差部との間に配置され、可動コア15を固定コア13と反対側に付勢する。励磁コイル12への通電を行う通電時には、電磁吸引力により可動コア15は復帰バネ16に抗して固定コア13側に吸引されるようになっている。
【0022】
このように、固定コア13、ヨーク14、可動コア15および復帰バネ16が磁性体によって構成されており、励磁コイル12へ通電を行う通電時には、これらによって励磁コイル12により誘起された磁束の磁気回路が構成される。
【0023】
シャフト17は、例えば非磁性材料で構成されており、可動コア15に結合されることで可動コア15と一体的に移動可能とされている。より詳細には、シャフト17は、可動コア15に形成された貫通孔15aに挿入された状態で可動コア15に結合されている。そして、シャフト17のうちの一端が固定コア13側に突き出し、固定コア13に形成された貫通孔13a内に入り込んだ状態となっている。
【0024】
また、シャフト17のうち可動コア15における固定コア13側の一面と対応する位置に、シャフト17の一部の外径を拡大したフランジ部17aが形成されている。励磁コイル12への通電時に、可動コア15がフランジ部17aを押すことで、シャフト17が固定コア13側に移動させられるようになっている。
【0025】
さらに、シャフト17のうち固定コア13と反対側の一端には、絶縁碍子19が装着されている。そして、絶縁碍子19が可動接触子20に当接させられており、シャフト17の軸方向における可動接触子20の位置決めが行われる。
【0026】
なお、本実施形態の場合、励磁コイル12への通電、非通電によって、可動コア15、シャフト17、絶縁碍子19、可動接触子20等が進退させられる可動部分となる。
【0027】
ベース18は、非磁性体の絶縁性材料、例えば樹脂によって構成されており、ケース11に固定されている。ベース18は、中央部に開口部18aが形成されており、この開口部18a内にシャフト17や絶縁碍子19が挿通されている。ベース18は、ヨーク14に接した状態でケース11に固定されている。そして、ベース18には、導電金属製の板状の第1固定端子24および第2固定端子25が備えられている。これら第1固定端子24および第2固定端子25が、電磁継電器によってオンオフ制御を行う対象となる電気回路の配線の一部を構成するものである。さらに、ベース18には、第1固定端子24に接続されるように第1固定接点26が取り付けられ、第2固定端子25に接続されるように第2固定接点27が取り付けられている。
【0028】
なお、図示していないが、第1固定端子24および第2固定端子25は、図1の紙面向こう側に伸びる形状とされている。そして、図1の紙面向こう側において、ケース11よりも外側まで引き出された状態となっている。この部分を通じて、第1固定端子24および第2固定端子25が外部配線などに接続されるようになっている。また、ベース18のうち可動コア15と対向する一面は、ストッパ18bとなっており、可動コア15の固定コア13と反対側への移動が規制されるようになっている。
【0029】
可動接触子20は、可動コア15に追従作動させられるものであり、導電金属製の板状部材で構成され、例えばシャフト17を中心とした対称位置に、導電金属製の2つの可動接点として第1可動接点28および第2可動接点29が固定されている。
【0030】
なお、ここでは、可動接触子20、第1可動接点28、第2可動接点29、第1固定端子24、第2固定端子25、第1固定接点26および第2固定接点27の構造に基づいて、3点接触構造としなくても、可動接触子20の揺動を抑制できるようにしている。これらの詳細構造については後述する。
【0031】
また、可動接触子20は、シャフト17のうち固定コア13に挿入された端部と反対となる他端側に配置されている。可動接触子20のうち固定コア13側の一面は絶縁碍子19に接しており、絶縁碍子19の位置に可動接触子20が位置決め配置されている。
【0032】
支持枠21は、ケース11に固定され、ベース18に当接させられている。支持枠21の中央位置には、環状溝21aが形成されており、接圧バネ22の一端側が嵌め込まれることで、接圧バネ22が支持されている。
【0033】
接圧バネ22は、可動接触子20と支持枠21との間に配置されており、可動接触子20をシャフト17側、すなわち第1固定接点26および第2固定接点27側に付勢している。このため、可動コア15の移動に伴ってシャフト17および絶縁碍子19が移動させられると、接圧バネ22の弾性力に基づいて可動接触子20も追従させられるようになっている。また、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27と当接させられているときに振動等が生じても、第1可動接点28と第1固定接点26および第2可動接点29と第2固定接点27との接続が維持される。
【0034】
このような構成において、可動接触子20の揺動を抑制すべく、可動接触子20、第1可動接点28、第2可動接点29、第1固定端子24、第2固定端子25、第1固定接点26および第2固定接点27を以下のような構造としている。以下、これらの構造の詳細について説明する。
【0035】
図2に示すように、第1固定端子24および第2固定端子25は、例えば板状部材で構成されており、それぞれの一端側に第1固定接点26および第2固定接点27が配置されている。また、第1固定端子24および第2固定端子25は、同方向に延設されており、第1固定接点26および第2固定接点27が配置された一端の反対側となる他端がケース11の外部に引き出されている。
【0036】
本実施形態では、第1固定端子24のうち第1固定接点26が設けられた先端面241および第2固定端子25のうち第2固定接点27が設けられた先端面251は、共に、可動接触子20の移動方向が法線方向となる平面とされている。そして、これら各先端面241、251から突き出すように、第1固定接点26や第2固定接点27が第1固定端子24や第2固定端子25に配置されている。
【0037】
本実施形態の場合、第1固定接点26は、第1固定端子24と別体のもので構成され、接点部261と軸部262とを有した構成とされている。同様に、第2固定接点27は、第2固定端子25と別体のもので構成され、接点部271と軸部272とを有した構成とされている。接点部261、271は、紙面上面から見た形状が丸形とされており、軸部262、272よりも大径とされた鍔状で構成され、励磁コイル12と反対側が丸みを帯びて突き出した形状となっている。そして、これら各接点部261、271が先端面241、251から突き出して配置されている。例えば、接点部261、271は、図1の断面形状が、接点部261、271の中心を頂部とする曲面状や、半楕円形、半長円形などで構成されている。一方、軸部262、272は、接点部261、271の一面側に配置され、第1固定端子24および第2固定端子25に形成された開口部にかしめられる。これにより、第1固定接点26や第2固定接点27が第1固定端子24や第2固定端子25に固定されている。
【0038】
一方、可動接触子20は棒状の板状部材で構成され、その両端に第1可動接点28や第2可動接点29がそれぞれ配置されている。第1可動接点28および第2可動接点29は、共に、可動接触子20と別体のもので構成され、接点部281、291と軸部282、292とを有した構成とされている。接点部281、291は、紙面上面から見た形状が丸形とされており、軸部282、292よりも大径とされた鍔状で構成され、励磁コイル12側が丸みを帯びて突き出した形状となっている。例えば、接点部281、291は、図1の断面形状が、接点部281、291の中心を頂部とする曲面状や、半楕円形、半長円形などで構成されている。軸部282、292は、接点部281、291の一面側に配置され、可動接触子20に形成された開口部にかしめられる。これにより、第1可動接点28および第2可動接点29が可動接触子20に固定されている。
【0039】
また、可動接触子20のうち第1可動接点28が配置される一端201と第2可動接点29が配置される他端202は、逆方向に傾斜しており、それにより第1可動接点28や第2可動接点29が逆方向に傾斜させられている。
【0040】
具体的には、一端201のうち第1固定接点26側の先端面201aの法線方向や他端202のうち第2固定接点27側の先端面202aの法線方向が可動接触子20の移動方向に対して傾斜させられている。そして、第1固定端子24や第2固定端子25の外部への引き出し方向に対して、先端面201aが逆方向に傾斜させられ、先端面202aが同方向に傾斜させられている。このため、先端面241に対して先端面201aが傾斜する方向と、先端面251に対して先端面202aが傾斜する方向が逆となっている。換言すれば、第1固定接点26と第2固定接点27の両中心点を通る直線を挟んで、先端面201aと先端面202aが逆方向に傾斜させられている。また、図3(a)、(b)に示すように、先端面241に対して先端面201aが傾斜する角度αと、先端面251に対して先端面202aが傾斜する角度βは、等しくされている。
【0041】
このような構成とされているため、可動接触子20の一端201および他端202に配置された第1可動接点28と第2可動接点29が逆方向に傾斜させられる。そして、第1可動接点28の中心軸が第1固定接点26の中心軸に対して傾斜させられる方向と、第2可動接点29の中心軸が第2固定接点27の中心軸に対して傾斜させられる方向とが、逆方向となっている。
【0042】
以上のような構造により、本実施形態にかかる電磁継電器が構成されている。続いて、このように構成された電磁継電器の作動について説明する。
【0043】
まず、励磁コイル12への通電が行われていない際には、励磁コイル12への通電に基づく磁気回路が形成されず、可動コア15が固定コア13側に磁気吸引されない。このため、可動コア15や可動接触子20などの可動部分は図1に示す位置に配置された状態となり、第1可動接点28や第2可動接点29が第1固定接点26や第2固定接点27から離れた状態となる。したがって、第1固定端子24と第2固定端子25との間が電気的に分離された状態となり、電磁継電器がオフ状態となる。
【0044】
続いて、電磁継電器をオンさせる際には励磁コイル12への通電が行われる。このため、励磁コイル12への通電に基づいて誘起された磁束の磁気回路が形成され、可動コア15が固定コア13側に磁気吸引される。そして、可動コア15が固定コア13側に磁気吸引されると、可動接触子20が当接している絶縁碍子19も固定コア13側に移動させられることから、可動接触子20や第1可動接点28および第2可動接点29も接圧バネ22の弾性力に基づき、可動コア15に追従して移動する。
【0045】
したがって、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27と当接して、第1固定接点26と第2固定接点27との間が電気的に導通させられ、第1固定端子24と第2固定端子25との間が導通させられ、電磁継電器がオン状態となる。これにより、第1固定端子24や第2固定端子25それぞれに接続された外部配線などが導通させられる。
【0046】
また、電磁継電器をオン状態からオフ状態に切り替える際には、励磁コイル12への通電が遮断される。これにより、励磁コイル12の通電に基づいて発生させられていた磁気吸引力が解除される。このため、復帰バネ16の弾性力に基づいて可動コア15が固定コア13と反対側に移動させられる。したがって、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27から離れ、第1固定接点26と第2固定接点27との間の電気的接続が遮断され、電磁継電器がオフ状態となる。
【0047】
このような動作を行うに際し、上記したように、可動接触子20のうち第1可動接点28が配置される一端201と第2可動接点29が配置される他端202は、逆方向に傾斜しており、それにより第1可動接点28や第2可動接点29が逆方向に傾斜させられている。
【0048】
このため、電磁継電器がオン状態となったときには、図4(a)、(b)に示すように、第1固定接点26と第1可動接点28との接触状態と、第2固定接点27と第2可動接点29との接触状態の関係が逆になる。
【0049】
すなわち、図4(a)に示すように、第1固定接点26の中心軸に対して第1可動接点28の中心軸が時計回転方向に傾斜させられている。このため、第1固定接点26と第1可動接点28とは、それぞれの中心位置よりも紙面右側、つまり第1固定端子24の外部への引き出し方向側にずれた位置で接触させられる。逆に、図4(b)に示すように、第2固定接点27の中心軸に対して第2可動接点29の中心軸が反時計回転方向に傾斜させられている。このため、第2固定接点27と第2可動接点29とは、それぞれの中心位置よりも紙面左側、つまり第2固定端子25の外部への引き出し方向と反対側にずれた位置で接触させられる。
【0050】
ここで、可動接触子20の両先端面201a、202aが逆方向に傾斜させられておらずに同一平面とされていた場合、第1固定接点26と第1可動接点28との接触状態と第2固定接点27と第2可動接点29との接触状態は同じになる。
【0051】
例えば、これらの接触状態は、可動接触子20と第1固定端子24および第2固定端子25の位置ずれによって決まる。位置ずれが無ければ、第1固定接点26と第1可動接点28とは両方の中心位置で接触し、第2固定接点27と第2可動接点29とは両方の中心位置で接触する。
【0052】
これに対して、可動接触子20が第1固定端子24や第2固定端子25の外部への引き出し方向と反対側にずれた場合、上記各部の接触位置がずれる。具体的には、図5(a)に示すように、第1固定接点26の中心位置よりも第1可動接点28の中心位置が第1固定端子24の外部への引き出し方向と反対側にずれるようにして、第1固定接点26と第1可動接点28とが接触する。同様に、図5(b)に示すように、第2固定接点27の中心位置よりも第2可動接点29の中心位置が第2固定端子25の外部への引き出し方向と反対側にずれるようにして、第2固定接点27と第2可動接点29とが接触する。
【0053】
可動接触子20などを含む可動子の揺動は、第1固定接点26および第2固定接点27と第1可動接点28および第2可動接点29の接触状態に基づいて発生する。
【0054】
具体的には、図6に示すように、第2固定接点27と第2可動接点29は、それぞれの中心位置からずれた位置で接触している。また、図示していないが、第1固定接点26と第1可動接点28も、同様に、それぞれの中心位置からずれた位置で接触している。このため、例えば第2固定接点27の中心位置に対して第2可動接点29が対称な接触状態にならない。また、可動接触子20から第2可動接点29を通じて第2固定接点27に電流が流れる向きは、図6中の矢印で示した向きとなり、接触点を中心とした電流の流れも対称にならない。したがって、接触点を中心とした両側において、第2可動接点29と第2固定接点27との間の隙間に差が生じたり、第2可動接点29と第2固定接点27との対向面積に差が生じたりする。これにより、接触点を中心とした両側で第2固定接点27が第2可動接点29に対して加える上側の力、つまり反発力F1、F2が不均等になり、可動接触子20などを含む可動子を揺動させることになる。そして、揺動によって可動接触子20が傾くと、さらに反発力F1、F2が不均等になり、尚更に可動子が揺動されられる。
【0055】
しかしながら、本実施形態の電磁継電器では、第1固定接点26と第1可動接点28との接触状態と、第2固定接点27と第2可動接点29との接触状態の関係が逆になるようにしている。このため、可動接触子20の両端において、第1固定接点26と第1可動接点28との間に働く反発力と第2固定接点27と第2可動接点29との間に働く反発力の関係も逆になる。つまり、第1固定接点26と第2固定接点27の両中心点を通る直線を挟んだ両側に働く反発力の大小が、可動接触子20の一端201と他端202とで逆になる。したがって、可動接触子20などを含む可動子の揺動を抑制することが可能となる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の電磁継電器では、可動接触子20の一端201と他端202の先端面201a、202aが、第1固定接点26と第2固定接点27の両中心点を通る直線を挟んで逆方向に傾斜させられている。これにより、第1固定接点26と第2固定接点27の両中心点を通る直線を挟んだ両側に働く反発力の大小が、可動接触子20の一端201と他端202とで逆になる。したがって3点接触構造としなくても、可動接触子20などを含む可動子の揺動を抑制することが可能な電磁継電器とすることができる。
【0057】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0058】
(1)例えば、上記実施形態では、第1固定端子24に別部材の第1固定接点26をかしめ固定し、第2固定端子25に別部材の第2固定接点27をかしめ固定した。しかしながら、第1固定端子24および第2固定端子25に、可動接触子20側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を固定接点としてもよい。
【0059】
(2)同様に、上記実施形態では、可動接触子20に別部材の第1可動接点28や第2可動接点29をかしめ固定した。しかしながら、可動接触子20に、第1固定端子24および第2固定端子25側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を可動接点としてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、可動接触子20の一端201および他端202の両先端面201a、202aを可動接触子20の移動方向に対して傾斜させている。しかしながら、これも一例を示したものであり、第1可動接点28の接点部281の中心軸が第1固定接点26の中心軸に対して傾斜させられる方向と、第2可動接点29中心軸が第2固定接点27の中心軸に対して傾斜させられる方向とが、逆方向となっていれば良い。
【0061】
例えば、可動接触子20の両先端面201a、202aの法線方向を可動接触子20の移動方向に一致させ、第1固定端子24の先端面241のうち第1固定接点26が配置される部分と、第2固定端子25の先端面251のうち第2固定接点27が配置される部分を、可動接触子20の移動方向に対して逆方向に傾斜させるようにしても良い。また、可動接触子20の移動方向に対して、両先端面201a、202aの法線方向を逆方向に傾斜させるのに加えて、両先端面241、251のうち第1固定接点26や第2固定接点27が配置される部分の法線方向も逆方向に傾斜させるようにしても良い。
【0062】
さらに、第1可動接点28や第2可動接点29の形状、第1固定接点26や第2固定接点27の形状に基づいて、第1可動接点28の接点部281の中心軸が第1固定接点26の中心軸に対して傾斜させられる方向と、第2可動接点29中心軸が第2固定接点27の中心軸に対して傾斜させられる方向とが、逆方向となるようにしても良い。
【0063】
なお、本明細書で記載した第1固定接点26、第2固定接点27、第1可動接点28、第2可動接点29の中心軸とは、これらのうちの接点部261、271、281、291の中心軸のことを意味しており、軸部262、272、282、292の形状には依らない。
【0064】
(3)また、上記実施形態では、第1可動接点28の接点部281の中心軸が第1固定接点26の中心軸に対して傾斜させられる方向と、第2可動接点29中心軸が第2固定接点27の中心軸に対して傾斜させられる方向とが、逆方向とされ、かつ、それぞれの傾斜する角度を等しくしている。しかしながら、傾斜する角度については、必ずしも等しく無くても良い。すなわち、少なくとも第1可動接点28の接点部281の中心軸が第1固定接点26の中心軸に対して傾斜させられる方向と、第2可動接点29中心軸が第2固定接点27の中心軸に対して傾斜させられる方向とが、逆方向になっていれば良い。このような構成とされていれば、第1固定接点26と第2固定接点27の両中心点を通る直線を挟んだ両側に働く反発力の大小が、可動接触子20の一端201と他端202とで逆になる。このため、上記実施形態の効果を得ることができる。
【0065】
(4)また、可動接触子20や第1固定端子24および第2固定端子25の形状についても一例を挙げたに過ぎない。例えば、可動接触子20については、棒状部分を有していてその一端と他端の各先端面に第1可動接点28と第2可動接点29を備えた構造であれば良い。その場合、例えば第1可動接点28と第2可動接点29との間の形状については任意で有り、折り曲げられた部分などがあっても良い。
【符号の説明】
【0066】
12 励磁コイル
13 固定コア
16 可動コア
20 可動接触子
24、25 第1、第2固定端子
26、27 第1、第2固定接点
28、29 第1、第2可動接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6