【実施例1】
【0015】
<リフタ装置10の概略構成について>
図1〜3は、本発明の一実施形態であるリフタ装置10を適用した自動車用シート1(以下、単にシートという)を示す。各図中、矢印によりシート1を自動車に搭載した状態における各部の方向を示す。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0016】
図1のように、シート1は、座部を成すシートクッション2の後部に背凭れを成すシートバック3が設けられ、シートバック3は、シートクッション2に対して前後方向に回転自在とされている。シートクッション2は、下部にリフタ装置10及びシートスライド装置8を備え、ブラケット7を介して車両のフロア4に固定されている。
【0017】
図2のように、シートスライド装置8は、公知のものであり、前後方向に延びる左右一対のロアレール5に対して左右一対のアッパレール6が前後スライド自在に結合されている。左右のロアレール5は、フロア4に固定された前後一対のブラケット7にそれぞれ固定支持されている。左右のアッパレール6の上には、リフタ装置10が設けられている。
【0018】
図2、3のように、リフタ装置10は、各アッパレール6上に固定されたベース部材14と、各アッパレール6の前後端部に回転自在に結合された複数のリンク部材11とを備え、シートクッション2の骨格部材であるサイドフレーム13、ベース部材14、及び各リンク部材11により4節リンクであるリンク機構12が構成されている。複数のリンク部材11のうち、右後側の後方リンク11bは、セクタギヤ16(本発明の入力ギヤに相当)を備えて構成されており、回転制御装置21のピニオンギヤ18により前後方向に回転されるように構成されている。右後側の後方リンク11bのサイドフレーム13に対する回転軸は、トルクロッド17により構成されており、このトルクロッド17を介して左後側の後方リンク(図示略)も後方リンク11bと同期して回転するように構成されている。
【0019】
サイドフレーム13には、ピニオンギヤ18を挿入するための貫通孔13aが穿設されており、この貫通孔13aにピニオンギヤ18が挿入されるように回転制御装置21がサイドフレーム13の右側壁に固定されている。回転制御装置21は、シートクッション2の右側部に前後方向に延びて設けられた操作ハンドル20により正逆方向に回転操作可能とされている。操作ハンドル20を中立位置から上方に回転操作すると、回転制御装置21は、後方リンク11bをベース部材14から立ち上げる方向に回転し、操作ハンドル20を中立位置から下方に回転操作すると、回転制御装置21は、後方リンク11bをベース部材14上で伏せる方向に回転する。上述の4節リンクの構成により、後方リンク11bの回転に応じて前方リンク11aも回転し、シートクッション2のフロア4に対する高さ位置が操作ハンドル20の操作に応じて調整される。
【0020】
<回転制御装置21の構成>
図4〜6は、回転制御装置21をシートクッション2から取り外した状態で示す。以下、回転制御装置21の構成を、
図4〜15に基づいて説明する。以下に説明する回転制御装置21の各構成部材の符号については、上記
図4〜15のいずれかを適宜参照するものとする。
【0021】
回転制御装置21は、ベース部材である支持部材23(本発明のベースに相当)の中心孔23cに回転軸22を貫通させて、支持部材23の左側面からピニオンギヤ18が突出するように組み付けられている。そして、支持部材23は、ピニオンギヤ18がサイドフレーム13の貫通孔13aに貫通する状態でサイドフレーム13に固定される。
【0022】
支持部材23の右側面は、円板状のロックプレート31(本発明の回転部材に相当)を収容するように、左側に打出成形されて案内凹部23bが形成され、全体として円形容器形状とされている。案内凹部23bの内周面には後述するポール32、33(本発明のロックポールに相当)が噛み合う内歯34(本発明のベースギヤに相当)が形成されている。ロックプレート31の中心にはスプライン孔31bが形成されており、回転軸22のスプライン22bと噛み合うようにされている。そのため、ロックプレート31は回転軸22と同期回転される。
【0023】
ロックプレート31の右側面の外周部には、上下に分散して各1個の突起31dが突出形成され、前後に分散して各2個の突起31eが突出形成されている。各突起31eには、各ポール32、33の貫通孔32a、33aが嵌合されて、各ポール32、33が各突起31e(本発明の軸部に相当)を中心として揺動自在とされている。また、各突起31dには、それぞれトーションスプリング35の巻回部35aが嵌合され、トーションスプリング35の各端部35bは各ポール32、33に係合されており、各ポール32、33をロックプレート31の外周側へ付勢している。そのため、各ポール32、33の外歯を成す係合端部32c、33c(本発明の外歯に相当)は、支持部材23の内歯34に常時噛み合うようにされている。
【0024】
以上のように支持部材23に対して各ポール32、33の連結されたロックプレート31が組み付けられた状態が
図11に示されている。
【0025】
<回転制御装置21の構成>
全体として右側に膨らんだ容器状に形成されたカバー24の右側面上には、操作ハンドル20に結合されて回転操作される入力部材Nのアウタピースを構成する板状のアウタプレート41が設けられている。カバー24の中心の貫通孔24eとアウタプレート41の中心孔41bには、略円筒状を成す軸部材25の中心から右側に丸棒状に突出する突出ピン25bが左側から貫通して挿入されている。また、カバー24に形成された一対の円弧状を成す開口部24aとアウタプレート41に形成された一対の円弧状を成す貫通孔41aには、上述した入力部材Nのインナピースを構成する板状のインナプレート53に形成された一対のアーム53aが左側から挿入されている。上記一対のアーム53aは、インナプレート53とアウタプレート41との間に軸部材25のフランジ部25cとカバー24とを左右方向(本発明のスラスト方向に相当)に挟み込む位置までアウタプレート41の対応する貫通孔41a内に挿入され、その位置(挟持位置)で、対応する貫通孔41aに挿入された先の突出部分がアウタプレート41の対応する貫通孔41aの外周側の周囲部分と溶接されて結合されている(溶接部W(本発明の結合部に相当):
図8参照)。
【0026】
上記結合により、カバー24とアウタプレート41とが互いに軸部材25を介して摺動自在に結合されている。アウタプレート41の上部には、係合片42が左側に屈曲して形成されており、係合片42は、カバー24の右側に突出して形成された係合片24bの内周側に並んで配置されている。これらの係合片42、24bの周りを包むようにトーションスプリング43の端部43aが配置されている。そのため、アウタプレート41が操作ハンドル20により回転操作されると、係合片42が係合片24bから周方向に離間するように移動するが、係る回転操作が解除されると、トーションスプリング43の付勢力により、係合片42と係合片24bとが周方向で互いに重なる位置となり、アウタプレート41が回転操作前の位置に戻される。
【0027】
また、カバー24の左側には、容器状のカバー24内に収容されるようにインナプレート53及びカム部材54が設けられている。そして、カバー24は、これらの部品をロックプレート31及び回転伝達プレート36(本発明の解除部材に相当)と共に挟んで支持部材23に固定されている。このとき、カバー24の脚部24dを支持部材23の貫通孔23aにリベット(図示略)により固定している。
【0028】
カム部材54は、概ねリング状に形成されており、右側面上に4つのピン54bを備え、リング状の内周の上側にカム突起54aが突出して形成されている。カム部材54は、各ピン54bがカバー24の突片24cの貫通孔に嵌合されてカバー24の内側に固定されている。
【0029】
インナプレート53は、前後部に右側に延びるアーム53aをそれぞれ備え、各アーム53aは、上述したようにカバー24の対応する各開口部24aを通ってアウタプレート41の対応する各貫通孔41aに貫通している。カバー24の各開口部24aは、各アーム53aよりも長い周方向の長さを有し、アウタプレート41の対応する各貫通孔41aは、各アーム53aと略同一の周方向の長さを有している。そのため、インナプレート53は、アウタプレート41と一体的となって回転操作され、各アーム53aがカバー24の各開口部24aの周方向の端部に当たる位置にてそれぞれの周方向の回転操作が係止されるようになっている。インナプレート53の左側面上には、一対の送り爪52が、各送り爪52のヒンジ部52bをインナプレート53の対応する各貫通孔53bに嵌合して揺動自在に結合されている。
【0030】
<回転制御装置21の構成(回転伝達プレート36)>
インナプレート53の左側には、略円板形状の回転伝達プレート36が設けられており、回転伝達プレート36は、インナプレート53とロックプレート31との間に挟まれている。回転伝達プレート36の円板面部には各ポール32、33に対応して4個の略四角形の係合孔36aが形成されており、これら係合孔36a内に各ポール32、33のピン32b、33b(本発明の押圧部に相当)が周方向に係合可能に挿入されている。また、回転伝達プレート36の円板面部には各突起31dに対応して2個の楕円形の係合孔36bが形成されており、これら係合孔36b内に各突起31dが周方向に係合可能に挿入されている。
【0031】
更に、回転伝達プレート36の右側面上には、中心孔36dの周りにトーションスプリング37、55が設けられている。トーションスプリング37は、その端部37aが左側に屈曲されて回転伝達プレート36の長孔36cとロックプレート31の長孔31cとに跨って挿入されてこれら長孔36c,31cに跨って周方向の双方向に付勢力を及ぼす状態に設けられている。トーションスプリング37は、その付勢力によりロックプレート31に対する回転伝達プレート36の回転角度を中立位置に維持するようにしている。一方、トーションスプリング55の端部55aは、送り爪52の突部52dに径方向の内側から付勢力を掛けて各送り爪52を外周側に押圧している。また、トーションスプリング55の中央部には、右側に向けて突出した突起55bが形成されている。突起55bは、インナプレート53の下端中央部に形成された係合孔53cに挿入して係合されている。そのため、送り爪52の突部52dは、トーションスプリング55の端部55aに常時押圧されて、係合端部52aは、回転伝達プレート36の内歯51に噛み合うようにされている。上述した回転伝達プレート36の内歯51と支持部材23の内歯34とは、互いに同一の大きさ及び歯数を持つ構成とされている。
【0032】
以上のように、カバー24にアウタプレート41、インナプレート53、カム部材54、送り爪52、回転伝達プレート36の内歯51、及びトーションスプリング55が組み付けられた状態が
図11、15に示されている。また、ロックプレート31上に回転伝達プレート36が組み付けられた状態が
図12に示されている。なお、
図11、12は、回転制御装置21の組み付け手順を示すものではないが、最終的に軸部材25のスプライン穴25aに回転軸22のスプライン22cを嵌合し、更にカバー24を支持部材23に固定することにより回転制御装置21としての組み付けが完了する。軸部材25のスプライン穴25aは、インナプレート53の中心孔53d(
図8参照)内に右側から通されて露出する軸部材25の左側の端部に形成されている。
【0033】
ここで、
図9に示すように、上述したアウタプレート41とピニオンギヤ18との間に連結されて、アウタプレート41の回転をピニオンギヤ18に送り回転として伝達する送り爪52、回転伝達プレート36及びロックプレート31から成る動力伝達系統が送り部Aとして構成される。また、上記送り部Aにより送り回転されたピニオンギヤ18の回転を支持部材23に対して止める各ポール32、33から成る機構部がロック部Bとして構成される。
【0034】
<回転制御装置21の構成(ストッパ60)>
回転軸22のピニオンギヤ18とスプライン22bとの間には、ギヤ形状のない同心円状の外周面22aが形成されており、外周面22aの特定の角度位置の外周側には回転軸側突部63が径方向に突出して形成されている。支持部材23の中心孔23cに回転軸22が挿入された状態で、回転軸側突部63は、支持部材23の案内凹部23bの右側面上に露出するように位置している。
【0035】
支持部材23の案内凹部23bの右側面上には、円弧状の支持部材側突部61が打出形成されている。一方、ロックプレート31のスプライン孔31bの周りには、スプライン孔31bに対して同心円を成す摺動面部31aを形成するように、ロックプレート31が打出形成されている。ロックプレート31が支持部材23に対して回転したとき、支持部材側突部61の外周が摺動面部31aの内周上を摺動するようにされている。また、摺動面部31aの内周と回転軸22の外周面22aとの間の隙間を摺動するように係合片62が配置されている。
【0036】
そのため、回転制御装置21の作動により回転軸22が下降方向に回転され、下限位置に達すると、
図28のように、回転軸側突部63が係合片62を挟んで支持部材側突部61の端部に当接し、回転軸22のそれ以上の回転が止められる。回転軸22が上昇方向に回転される状態で、
図29のように、上限位置に達すると、回転軸側突部63が係合片62を挟んで支持部材側突部61の反対側の端部に当接し、回転軸22のそれ以上の回転が止められる。
【0037】
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20が非操作)>
以下、
図16〜27に基づいて回転制御装置21によるシートクッション2の高さ調整作用について説明する。
【0038】
図16、17は、操作ハンドル20が操作されず、アウタプレート41及びインナプレート53が回転されていない、中立位置の状態を示す。このとき、
図16のように、送り爪52は、トーションスプリング55の付勢によりその外歯を成す係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に係合した状態とされている。また、
図17のように、各ポール32、33は、各トーションスプリング35の付勢により各係合端部32c、33cが支持部材23の内歯34に係合した状態とされている。従って、上記各ポール32、33の係合を介してロックプレート31の回転がロックされて、シート1の高さは上昇側にも、下降側にも変更されない。
【0039】
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20を押し下げ操作)>
図18、19は、操作ハンドル20が中立位置から途中位置まで押し下げ操作された状態を示す。このとき、
図18のように、アウタプレート41の回転によりインナプレート53が矢印方向に回転される。その結果、各送り爪52が同方向に移動される。そのため、前側の送り爪52の外歯を成す係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に力を伝達して、回転伝達プレート36を矢印方向に押し回す。このとき、後側の送り爪52の外歯を成す係合端部52aは回転伝達プレート36の内歯51と噛み合わないようにされている。即ち、この状態では、係合端部52aの歯が内歯51の歯の法線方向の荷重を受けて噛合解除方向に移動される。しかも、回転伝達プレート36の回転に伴って、後側の送り爪52のピン52cがカム部材54のカム突起54aに乗り上げて、係合端部52aが内歯51から離された状態とされる。
【0040】
このようにして回転伝達プレート36が回転されると、
図19のように、回転伝達プレート36の対応する各係合孔36aが各ポール33のピン33bに係合して各ポール33の係合端部33cを支持部材23の内歯34から外すように径方向の内側に押し回す。それにより、下降方向のロックプレート31のロック状態が解除される。その後、係合孔36bにロックプレート31の突起31dが係合すると、回転伝達プレート36の回転がロックプレート31に伝達できる状態となる。なお、図中の白抜きの2点鎖線矢印は、図示には表れない回転伝達プレート36の回転を表している。
【0041】
詳しくは、上述した回転伝達プレート36に形成された4個の係合孔36aは、それぞれ、径方向の内側から外側へ向けて周方向の孔幅を狭める略台形状の形に形成されている。上述した4個の係合孔36aは、
図16〜17に示すように回転伝達プレート36がロックプレート31に対してトーションスプリング37の付勢作用によって中立位置の状態にある時には、各ポール32、33のピン32b、33b(丸ピン)に対して次のように位置付けられるようになっている。すなわち、各ポール32のピン32bが挿入された2個の係合孔36aは、各ピン32bに対してそれらの周方向に面を向ける傾斜側面を図示時計回り方向に近付けた、周方向に偏った状態に位置付けられるようになっている。また、各ポール33のピン33bが挿入された2個の係合孔36aは、各ピン33bに対してそれらの周方向に面を向ける傾斜側面を図示反時計回り方向に近付けた、周方向に偏った状態に位置付けられるようになっている。
【0042】
このような構成とされていることにより、回転伝達プレート36は、上述した中立位置から
図18〜19に示す形に回されることで、各ポール33のピン33bが挿入された2個の係合孔36aの傾斜側面をこれら2つのピン33bに当接させて、その回転の進行に伴って各ピン33bを各係合孔36aの傾斜側面に沿って径方向の内側に押し滑らせながら、他の2つのポール32の係合端部32cを支持部材23の内歯34に噛合させた状態に残しつつ、各ポール33の係合端部33cを支持部材23の内歯34から外す形に回転させるようになっている。
【0043】
同様に、回転伝達プレート36は、上述した中立位置から
図26〜27に示す形(反対回り)に回されることで、各ポール32のピン32bが挿入された2個の係合孔36aの傾斜側面をこれら2つのピン32bに当接させて、その回転の進行に伴って各ピン32bを各係合孔36aの傾斜側面に沿って径方向の内側に押し滑らせながら、他の2つのポール33の係合端部33cを支持部材23の内歯34に噛合させた状態に残しつつ、各ポール32の係合端部32cを支持部材23の内歯34から外す形に回転させるようになっている。
【0044】
上述した各ポール32、33は、それぞれ、
図17に示すように、それらの係合端部32c、33cが支持部材23の内歯34に噛合されている時には、それらのピン32b、33bが、各ポール32、33のロックプレート31に対する回転中心である突起31eと内歯34の歯先との間の径方向(ラジアル方向)の中間部に位置するようになっている。そのようなことから、各ポール32、33を回転伝達プレート36の回転移動量に対して効率的に径方向の内側に回転させて、支持部材23の内歯34との噛合から外すことができる(
図19、27参照)。したがって、操作ハンドル20の操作に伴う各ポール32、33のロックの解除操作に要するストロークを短くすることができる。
【0045】
また、
図19、27に示すように、上述した各ポール32、33のピン32b、33bを回転方向に押し回す回転伝達プレート36の各係合孔36aは、それらの各ピン32b、33b(仮想線で示すロック状態時)との接触面となる傾斜側面と、各ポール32、33の外歯を成す係合端部32c、33cの回転中心(突起31e)から最も離れた歯面の内歯34の歯面との接触面と、の成す角αが、これらの歯面間で定められる摩擦角より大きくなるように、各傾斜側面の傾斜形状が設定されている。なお、上記成す角αの設定は、各ポール32、33の外歯を成す係合端部32c、33cのうちの、回転中心(突起31e)から最も離れた歯面以外の歯面についても適用され得る。更に、
図17に示すように、各ポール32、33の外歯を成す係合端部32c、33cは、それらの歯面が接触する支持部材23の内歯34の歯面の接触面の法線と、接触点と各ポール32、33の回転中心(突起31e)を結ぶ線分の成す角βが、これらの歯面間で定められる摩擦角より小さくなるように、それらの歯面形状が設定されている。そのようなことから、回転伝達プレート36が各ポール32、33を回転方向に押圧する力によって、各ポール32、33の係合端部32c、33cを突起31eを中心に支持部材23の内歯34からスムーズに外すことができる(
図19、27参照)。
【0046】
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20をフルストローク操作)>
図20、21は、操作ハンドル20が中立位置からフルストローク位置まで押し下げ操作された状態を示す。なお、フルストローク位置は、インナプレート53のアーム53aがカバー24の開口部24aの周方向の端部に当接することにより決められる。このとき、
図20のように、
図18の状態に比べてインナプレート53及び各送り爪52の回転は進行して、前側の送り爪52により回転伝達プレート36の回転角度が大きくされる。
【0047】
このようにして回転伝達プレート36の回転角度が大きくなると、
図21のように、回転伝達プレート36の回転がロックプレート31に伝達されてロックプレート31は回転され、大きな黒塗矢印で示すように回転軸22を回転する。その結果、ピニオンギヤ18が回転され、シートクッション2は下降される。このとき、各ポール32の係合端部32cは支持部材23の内歯34と噛み合わないようにされている。即ち、この状態では、係合端部32cの歯が内歯34の歯の法線方向の荷重を受けて噛合解除方向に移動される。そのため、ロックプレート31が回転すると、各ポール32の係合端部32cは支持部材23の内歯34の上を滑るように摺動されることとなる。このときの各ポール32の動きを、実線と仮想線で示している。また、波型の矢印によっても示している。
【0048】
<回転制御装置21の作用(シート1の重力による影響)>
図22、23は、操作ハンドル20の押し下げ操作による上述のようなシート下降方向へのピニオンギヤ18の回転に対し、シートクッション2に加わる重力によるピニオンギヤ18のシート下降方向への回転が上回るときの状態を示す。即ち、操作ハンドル20の押し下げ操作量よりもピニオンギヤ18の回転移動量が上回る状態を示す。このとき、送り爪52による回転伝達プレート36の回転は継続しているため、各送り爪52の状態は、
図22のように、
図20の状態と同様とされている。一方、ロックプレート31は、回転伝達プレート36により回転されず、回転軸22により回転される。
【0049】
そのため、
図23のように、係合孔36aによる各ポール33の揺動状態は解除されて、各ポール33が支持部材23の内歯34に噛合して、ロックプレート31の下降方向への回転をロックした状態となる。従って、操作ハンドル20の押し下げ操作の途中で、シートクッション2が、そこに加わる重力により下降してしまうこと(滑ること)は防止される。このように、回転伝達プレート36は、ロックプレート31に対して係合孔36bが係合する位置まで押し回されることで当該方向の回転を止める各ポール33を支持部材23の内歯34との噛合から押し外す各係合孔36aと、回転伝達プレート36を介したロックプレート31の送り回転が止められた際にピニオンギヤ18から送り回転を更に進行させる方向の逆入力があった場合にロックプレート31の回転の進行により各係合孔36aによる当該方向の回転を止める各ポール33の押し外し状態を解くキャンセル構造Cと、を有する構成とされている。なお、この状態で各ポール33がロックプレート31の下降方向への回転をロックする作動が遅れてシートクッション2が重力により下降してしまうことを防止するため、回転軸22の回転にある程度のブレーキを効かせて、回転軸22がシート1の重力により回転されるのを抑制することは望ましい。
【0050】
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20の押し下げ操作中止時)>
図24、25は、操作ハンドル20の押し下げ操作を中止して操作ハンドル20が中立位置へ戻された状態を示す。このとき、アウタプレート41は、トーションスプリング43の付勢力により中立位置へ戻され、インナプレート53も同期して中立位置へ戻される。そのため、インナプレート53は、
図24に矢印で示すように回転される。インナプレート53が中立位置へ戻されるまでの間は、後側の送り爪52は、そのピン52cがカム部材54のカム突起54aに乗り上げた状態とされる。しかし、インナプレート53が中立位置へ戻ることにより、
図24のように、後側の送り爪52は、その係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に噛み合った状態に戻る。一方、前側の送り爪52は、インナプレート53が中立位置へ戻されるまでの間、係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51上を滑るように摺動することになる。
【0051】
操作ハンドル20の押し下げ操作を中止したとき、上述のように、回転伝達プレート36への送り爪52による回転駆動は解除されるため、回転伝達プレート36はトーションスプリング37の付勢力によりロックプレート31に対して中立位置に戻される。そのため、
図25のように、全てのポール32、33の係合端部32c、33cが支持部材23の内歯34に噛み合った状態となり、ロックプレート31がその位置でロックされた状態となる。従って、ピニオンギヤ18も回転を停止し、シートクッション2の高さがその位置に維持される。
【0052】
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20を引き上げ操作)>
図26、27は、操作ハンドル20が中立位置から途中位置まで引き上げ操作された状態を示す。このとき、
図26のように、アウタプレート41の回転によりインナプレート53が矢印方向に回転される。その結果、各送り爪52が同方向に移動される。そのため、後側の送り爪52の係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に力を伝達して、回転伝達プレート36を矢印方向に回転する。このとき、前側の送り爪52の係合端部52aは回転伝達プレート36の内歯51と噛み合わないようにされている。即ち、この状態では、係合端部52aの歯が内歯51の歯の法線方向の荷重を受けて噛合解除方向に移動される。しかも、回転伝達プレート36の回転に伴って、前側の送り爪52のピン52cがカム部材54のカム突起54aに乗り上げて、その係合端部52aが内歯51から離れた状態とされる。
【0053】
このようにして回転伝達プレート36が回転されると、
図27のように、回転伝達プレート36の係合孔36aが各ポール32のピン32bに係合して各ポール32の係合端部32cを支持部材23の内歯34から離れた状態とする。即ち、上昇方向のロックプレート31のロック状態を解除する。その後、係合孔36bにロックプレート31の突起31dが係合すると、回転伝達プレート36の回転がロックプレート31に伝達される。そのため、
図27の矢印で示すようにロックプレート31は回転して、回転軸22を回転する。その結果、ピニオンギヤ18が回転され、シート1は上昇される。このとき、各ポール33の係合端部33cは支持部材23の内歯34と噛み合わないようにされている。即ち、この状態では、係合端部33cの歯が内歯34の歯の法線方向の荷重を受けて噛合解除方向に移動される。そのため、ロックプレート31が回転すると、各ポール33の係合端部33cは支持部材23の内歯34の上で摺動されることとなる。
【0054】
<回転制御装置21の作用(まとめ)>
以上のとおり、操作ハンドル20を押し下げ操作すると、その操作に応じた量だけシート1は下降される。その押し下げ操作の繰り返しによりシート1を望みの高さに調整することができる。反対に、操作ハンドル20を引き上げ操作したときも、同様に、その操作に応じた量だけシート1は上昇される。その引き上げ操作の繰り返しによりシート1を望みの高さに調整することができる。以上の操作によりシート1が下限位置又は上限位置に達すると、
図28又は
図29のように回転軸22のそれ以上の回転が止められる。
【0055】
以上をまとめると、本実施例のリフタ装置10は、次のような構成とされている。すなわち、シート(1)を昇降動作させるリンク機構(12)の入力ギヤ(16)に噛合するピニオンギヤ(18)と、シート(1)を昇降動作させる際に対応する回転方向に操作される操作ハンドル(20)とピニオンギヤ(18)とに連結されてピニオンギヤ(18)の回転を制御する回転制御装置(21)と、ピニオンギヤ(18)を回転可能に支持するベース(23)と、を備えるリフタ装置(10)である。
【0056】
回転制御装置(21)は、操作ハンドル(20)に結合されて操作ハンドル(20)の回転操作によりピニオンギヤ(18)の回転軸線まわりに回される入力部材(N)と、入力部材(N)とピニオンギヤ(18)とに連結されて入力部材(N)の回転をピニオンギヤ(18)に送り回転として伝達する送り部(A)と、送り部(A)により送り回転されたピニオンギヤ(18)の回転をベース(23)に対して止めるロック部(B)と、入力部材(N)から入力される回転によりピニオンギヤ(18)の回転軸線まわりに回されてロック部(B)を解除操作する解除部材(36)と、を有する。
【0057】
ロック部(B)が、ピニオンギヤ(18)と回転方向に一体的に連結された回転部材(31)に設けられてベース(23)に形成された内歯車を成すベースギヤ(34)と付勢により噛合されることでピニオンギヤ(18)の回転を止めるロックポール(32、33)を有する。ロックポール(32、33)が、回転部材(31)に対してピニオンギヤ(18)の回転軸線と平行な軸まわりに回転可能に支持される軸部(31e)と、ベースギヤ(34)に噛合される外歯(32c、33c)と、軸部(31e)の軸中心とベースギヤ(34)の内歯歯先との間のラジアル方向の中間部にて解除部材(36)により回転方向に押圧されて解除操作される押圧部(32b、33b)と、を有する。押圧部(32b、33b)が、ロックポール(32、33)からスラスト方向に突出する突起部から成る。
【0058】
このような構成とされていることにより、ロックポール(32、33)を解除部材(36)の回転移動量に対して効率的にベースギヤ(34)との噛合から外すことができる。したがって、操作ハンドル(20)の操作に伴うロックの解除操作に要するストロークを短くすることができる。また、解除部材(36)がロックポール(32、33)からスラスト方向に突出する押圧部(32b、33b)を回転方向に押圧する構成により、解除部材(36)をロックポール(32、33)と回転方向に重なる配置に設けることができ、各部品の配置設定の自由度を高めることができる。
【0059】
また、解除部材(36)のロックポール(32、33)の押圧部(32b、33b)との接触面と、ロックポール(32、33)の外歯(32c、33c)とベースギヤ(34)の歯面との接触面と、の成す角(α)が、これらの歯面間で定められる摩擦角より大きい。このような構成とされていることにより、解除部材(36)がロックポール(32、33)を回転方向に押圧する力によって、ロックポール(32、33)の外歯(32c、33c)を軸部(31e)を中心にベースギヤ(34)の内歯からスムーズに外すことができる。
【0060】
また、ロックポール(32、33)の外歯(32c、33c)とベースギヤ(34)の歯面との接触面の法線と、これらの接触点とロックポール(32、33)の回転中心とを結ぶ線と、の成す角(β)が、上記の接触面間で定められる摩擦角より小さい。このような構成とされていることにより、解除部材(36)がロックポール(32、33)を回転方向に押圧する力によって、ロックポール(32、33)の外歯(32c、33c)を軸部(31e)を中心にベースギヤ(34)の内歯からスムーズに外すことができる。
【0061】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を自動車のシートに適用したが、飛行機、船、電車等の乗物に搭載のシート、若しくは映画館等に設置のシートに適用しても良い。