特許第6984547号(P6984547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984547車線変更支援システム、車線変更支援装置及び車線変更支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984547
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】車線変更支援システム、車線変更支援装置及び車線変更支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20211213BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20211213BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20211213BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G08G1/09 F
   G06Q50/10
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-110388(P2018-110388)
(22)【出願日】2018年6月8日
(65)【公開番号】特開2019-212219(P2019-212219A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【弁理士】
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】影浦 義之
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−134897(JP,A)
【文献】 特開2007−316772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/09
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両内の第1の端末、第2の車両内の第2の端末、及び第3の車両内の第3の端末と、
前記第1の端末、前記第2の端末、及び前記第3の端末のそれぞれと通信可能であると共に、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両、前記第2の端末のユーザ又は前記第2の車両、及び前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両がそれぞれ保有する経済価値を管理する車線変更支援装置と、
を備える車線変更支援システムであって、
前記車線変更支援装置は、
第1走行レーンを走行している前記第1の車両が、前記第1走行レーンの隣の第2走行レーンを走行している前記第2の車両と前記第3の車両との間に割り込んで、前記第2の車両の後方を走行する前記第3の車両の前方に車線変更したときに、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値を減らし、前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両が保有する経済価値を増やし、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合は、前記第1の車両が属するグループに応じて、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値の減額量を変化させるように構成される
車線変更支援システム。
【請求項2】
前記車線変更支援装置は、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合において、前記第1の車両が属するグループと、前記第2の車両及び前記第3の車両が属するグループと、が異なるときは、前記第2の車両及び前記第3の車両が特定のグループに属する車群を形成していなかった場合と比較して、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値の減額量を多くする、
請求項に記載の車線変更支援システム。
【請求項3】
前記車線変更支援装置は、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合において、前記第1の車両が属するグループと、前記第2の車両及び前記第3の車両が属するグループと、が同一であるときは、前記第2の車両及び前記第3の車両が特定のグループに属する車群を形成していなかった場合と比較して、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値の減額量を少なくする、
請求項又は請求項に記載の車線変更支援システム。
【請求項4】
前記車線変更支援装置は、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合は、前記第1の車両が属するグループに応じて、前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両が保有する経済価値の増額量を変化させる、
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の車線変更支援システム。
【請求項5】
前記車線変更支援装置は、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合において、前記第1の車両が属するグループと、前記第2の車両及び前記第3の車両が属するグループと、が異なるときは、前記第2の車両及び前記第3の車両が特定のグループに属する車群を形成していなかった場合と比較して、前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両が保有する経済価値の増額量を多くする、
請求項に記載の車線変更支援システム。
【請求項6】
前記車線変更支援装置は、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合において、前記第1の車両が属するグループと、前記第2の車両及び前記第3の車両が属するグループと、が同一であるときは、前記第2の車両及び前記第3の車両が特定のグループに属する車群を形成していなかった場合と比較して、前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両が保有する経済価値の増額量を少なくする、
請求項又は請求項に記載の車線変更支援システム。
【請求項7】
前記車線変更支援装置は、
前記第1の車両、前記第2の車両、及び前記第3の車両がいずれのグループに属するかを、前記第1の端末、前記第2の端末、及び前記第3の端末から送信される車群番号に基づいて判断する、
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の車線変更支援システム。
【請求項8】
前記車群番号は、前記第1の車両、前記第2の車両、及び前記第3の車両の乗員によって、前記第1の端末、前記第2の端末、及び前記第3の端末に入力される番号である、
請求項に記載の車線変更支援システム。
【請求項9】
前記車群番号は、前記第1の車両、前記第2の車両、及び前記第3の車両の目的地に基づいて、前記第1の端末、前記第2の端末、及び前記第3の端末によって自動的に入力される番号である、
請求項又は請求項に記載の車線変更支援システム。
【請求項10】
第1の車両内の第1の端末、第2の車両内の第2の端末及び第3の車両内の第3の端末のそれぞれと通信可能な通信部と、
前記第1の車両又は前記第1の端末のユーザ、前記第2の車両又は前記第2の端末のユーザ、及び前記第3の車両又は前記第3の端末のユーザがそれぞれ保有する経済価値を記憶する記憶部と、
制御部と、
を備える車線変更支援装置であって、
前記制御部は、
第1走行レーンを走行している前記第1の車両が、前記第1走行レーンの隣の第2走行レーンを前後に連なって走行している前記第2の車両と前記第3の車両との間に割り込んで、前記第2の車両の後方を走行する前記第3の車両の前方に車線変更したときに、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値を減らし、前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両が保有する経済価値を増やし、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合は、前記第1の車両が属するグループに応じて、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値の減額量を変化させるように構成される
車線変更支援装置。
【請求項11】
第1の車両内の第1の端末、第2の車両内の第2の端末、及び第3の車両内の第3の端末を有する車線変更支援方法であって、
第1走行レーンを走行している前記第1の車両が、前記第1走行レーンの隣の第2走行レーンを前後に連なって走行している前記第2の車両と前記第3の車両との間に割り込んで、前記第2の車両の後方を走行する前記第3の車両の前方に車線変更したときに、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値を減らし、前記第3の端末のユーザ又は前記第3の車両が保有する経済価値を増やし、
前記第2の車両及び前記第3の車両が、特定のグループに属する車群を形成していた場合は、前記第1の車両が属するグループに応じて、前記第1の端末のユーザ又は前記第1の車両が保有する経済価値の減額量を変化させる
車線変更支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線変更支援システム、車線変更支援装置及び車線変更支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路上における車両の流れをスムーズにして道路交通の円滑化を図るべく、走行車線や追越車線などのうち、特定の車線を走行した車両に対して通行料金を割り引くなどの経済価値を与えることで、特定の車線を積極的に走行するように促すことができる道路管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−190233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバの中には、自車両の前方に他車両が車線変更してくることを望まず、自車両の前方への車線変更を妨害する者も存在する。そのため、前述した特許文献1のように、特定の車線を積極的に走行するように促したとしても、車線変更時に車線変更をスムーズに行うことができない場合があり、道路上における車両の流れを乱してしまう場合がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、スムーズな車線変更を行うことが可能な車線変更支援システム、車線変更支援装置及び車線変更支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様による車線変更支援システムは、第1の車両内の第1の端末、第2の車両内の第2の端末、及び第3の車両内の第3の端末と、第1の端末、第2の端末、及び第3の端末のそれぞれと通信可能であると共に、第1の端末のユーザ又は第1の車両、第2の端末のユーザ又は第2の車両、及び第3の端末のユーザ又は第3の車両がそれぞれ保有する経済価値を管理する車線変更支援装置と、を備える。そして車線変更支援装置は、第1走行レーンを走行している第1の車両が、第1走行レーンの隣の第2走行レーンを前後に連なって走行している第2の車両と第3の車両との間に割り込んで、第2の車両の後方を走行する第3の車両の前方に車線変更したときに、第1の端末のユーザ又は第1の車両が保有する経済価値を減らし、第3の端末のユーザ又は第3の車両が保有する経済価値を増やすように構成される。
【0007】
また本発明のある態様による車線変更支援装置は、第1の車両内の第1の端末、第2の車両内の第2の端末及び第3の車両内の第3の端末のそれぞれと通信可能な通信部と、第1の車両又は第1の端末のユーザ、第2の車両又は第2の端末のユーザ、及び第3の車両又は第3の端末のユーザがそれぞれ保有する経済価値を記憶する記憶部と、制御部と、を備える。そして制御部は、第1走行レーンを走行している第1の車両が、第1走行レーンの隣の第2走行レーンを前後に連なって走行している第2の車両と第3の車両との間に割り込んで、第2の車両の後方を走行する第3の車両の前方に車線変更したときに、第1の端末のユーザ又は第1の車両が保有する経済価値を減らし、第3の端末のユーザ又は第3の車両が保有する経済価値を増やすように構成される。
【0008】
また本発明のある態様による車線変更支援方法は、第1の車両内の第1の端末、第2の車両内の第2の端末、及び第3の車両内の第3の端末を有する車線変更支援方法であって、第1走行レーンを走行している第1の車両が、第1走行レーンの隣の第2走行レーンを前後に連なって走行している第2の車両と第3の車両との間に割り込んで、第2の車両の後方を走行する第3の車両の前方に車線変更したときに、第1の端末のユーザ又は第1の車両が保有する経済価値を減らし、第3の端末のユーザ又は第3の車両が保有する経済価値を増やすものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のこれらの態様によれば、車線変更を受け入れる側は、車線変更を受け入れたことに対する対価として経済価値を得ることができる。そのため、車線変更を受け入れる側が車線変更を妨害するような事態を少なくすることができるので、車線変更を行う側は、車線変更をスムーズに行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態による車線変更支援システムの概略構成図である。
図2図2は、車線変更支援システムにおいて、車線変更支援処理が実行される際の状況の一例を示す図である。
図3図3は、車線変更支援処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
図4図4は、車線変更支援処理のうちのサーバに関連する処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による車線変更支援システム1の概略構成図である。
【0013】
車線変更支援システム1は、車線変更支援装置の一例であるサーバ2と、複数の車両3−1〜3−n(nは3以上の整数)にそれぞれ搭載された端末4−1〜4−nと、を備える。
【0014】
サーバ2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、を備える。
【0015】
通信部21は、サーバ2を通信ネットワーク5に接続するためのインターフェース回路を備え、各端末4−1〜4−nのそれぞれと通信ネットワーク5を介して通信可能に構成される。すなわちサーバ2と複数の端末4−1〜4−nとは、通信ネットワーク5を介して互いに通信可能となっている。
【0016】
記憶部22は、各車両3−1〜3−nの識別情報、及び各端末4−1〜4−nの識別情報をそれぞれ対応付けて記憶する。本実施形態では記憶部22は、各車両3−1〜3−nの識別情報として各車両3−1〜3−nの車両ナンバーを記憶し、各端末4−1〜4−nの識別情報として各端末4−1〜4−nのMACアドレスを記憶している。
【0017】
また記憶部22は、各端末4−1〜4−nのユーザが保有する経済価値の残高を記憶する。本実施形態における経済価値とは、例えば仮想通貨や電子マネー、企業が発行するポイント、企業が発行する商品券などの経済価値を有する情報物のことをいう。なお本実施形態では、このように各端末4−1〜4−nのユーザが経済価値を保有している例を示しているが、これに限らず、経済価値は各車両3−1〜3−nが保有していてもよい。
【0018】
また記憶部22は、制御部23において実行される各種の処理中に生成されたデータなどを記憶する。
【0019】
制御部23は、車線変更支援システム1において実行される車線変更支援処理のうち、サーバ2に関連する処理を実施する。車線変更支援処理の詳細については後述する。
【0020】
各端末4−1〜4−nは、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ2と通信可能な機器であり、タッチパネルやマイクロフォンのような入力装置と、タッチパネルやスピーカーのような出力装置と、を備える。また各端末4−1〜4−nは、各車両3−1〜3−nに搭載された車載機器によって取得された車線変更支援処理のために必要な情報(例えば車外撮影用のカメラによって撮影された画像情報)を受け取ることができるようになっている。各端末4−1〜4−nは、各車両3−1〜3−nに予め設けられた例えばナビゲーション装置のような車載端末であってもよいし、各車両3−1〜3−nの乗員によって各車両3−1〜3−n内に持ち込まれたスマートフォンやタブレット端末のような携帯端末であってもよい。
【0021】
ここで、道路上における車両の流れをスムーズにして道路交通の円滑化を図るには、車線変更がスムーズに行われるようにすることが有効である。しかしながら車線変更は、基本的に車線変更を受け入れる側のドライバの譲り合いの精神で成り立っており、車線変更を受け入れたとしても何らの対価も得ることができないので、ドライバの中には、そもそも自車両の前方に他車両が車線変更してくることを望まず、自車両の前方への車線変更を妨害する者も存在する。
【0022】
また、例えば友人同士や家族同士といった特定のグループに属する複数台の車両が車群を形成して前後に連なって走行している場合がある。このような場合、特定のグループに属さない車両がその車群の中に車線変更によって割り込んでくることを望まない者が多く、特定のグループに属さない車両の車線変更による割り込みが妨害されることがある。
【0023】
一方で、他人同士であっても、例えば目的地を同じとする車両間では車線変更を行いやすくして積極的な車群を形成することができれば、道路上における車両の流れをスムーズにして道路交通の円滑化を図ることができる場合もある。
【0024】
そこで本実施形態による車線変更支援システム1では、車線変更が行われたときには、車線変更を受け入れた側が、車線変更を行った側から車線変更を受け入れたことに対する対価として、経済価値を受け取ることができるようにした。
【0025】
これにより、車線変更を受け入れる側にもメリットが生じるので、車線変更を受け入れる側が車線変更を妨害するような事態を少なくすることができる。その結果、車線変更を行う側は、車線変更をスムーズに行うことができるようになる。
【0026】
また本実施形態による車線変更支援システム1では、車線変更を行う側と受け入れる側とが同じグループに属しておらず、車線変更を受け入れた側の車両が特定のグループに属する車群を形成している車両であった場合には、車線変更を行う側が支払う経済価値の額を通常よりも多くして、車線変更を受け入れた側が受け取ることのできる経済価値の額が通常よりも多くなるようにした。
【0027】
これにより、車線変更を行う側は、自車両が属さないグループの車群の中に車線変更する場合には通常よりも割高な経済価値を支払う必要がある。そのため、このような車群の中に向けての車線変更を抑制することができるので、車線変更がスムーズに行われずに道路上における車両の流れを乱してしまうのを抑制することができる。一方で車線変更を受け入れる側は、自車両とは異なるグループの車両の車線変更を受け入れる場合には、通常よりも割高な経済価値を受け取ることができる。そのため、車線変更を受け入れる側が車線変更を妨害するような事態を少なくすることができる。その結果、車線変更を行う側は、車線変更をスムーズに行うことができるようになる。
【0028】
また本実施形態による車線変更支援システム1では、車線変更を行う側と受け入れる側とが同じグループに属していた場合には、車線変更を行う側が支払う経済価値の額を通常よりも少なくして、車線変更を受け入れた側が受け取ることのできる経済価値の額が通常よりも少なくなるようにした。
【0029】
これにより、同じグループに属する車両同士で積極的な車群を形成しやすくして、道路上における車両の流れをスムーズにして道路交通の円滑化を図ることができる。
【0030】
以下、この本実施形態による車線変更支援システム1において実行させる車線変更支援処理の詳細について説明する。図2は、車線変更支援システム1において、車線変更支援処理が実行される際の状況の一例を示す図である。
【0031】
図2に示す例では、片側2車線道路において、走行車線を車両3−2と車両3−3とが前後に連なって走行している。そして、追越車線を走行している車両3−1が、車両3−2と車両3−3との間に割り込んで、車両3−3の前方に車線変更をしようとしている。
【0032】
図3は、車線変更支援処理の動作シーケンスの一例を示す図であり、図2に示した状況において、車両3−1が車両3−3の前方に車線変更する意思を示し、実際に車両3−3の前方に車線変更をしたときの車線変更支援処理の流れを示す図である。
【0033】
ステップS1において、車両3−1内の端末4−1は、例えば車両3−1のウィンカーが操作されたときなど、ドライバによる車線変更の意思を検出すると、サーバ2に対して、車線変更信号を送信する。なお自動運転システムを搭載する車両であれば、自動運転システムの判断によって車線変更を行うときに、車線変更信号を送信するようにすればよい。
【0034】
車線変更信号には、車両3−1に搭載された機器(本実施形態では車外撮影用のカメラ)によって認識された前方に割り込もうとする車両3−3の識別情報(本実施形態では車両3−3の車両ナンバー)が含まれる。
【0035】
また車線変更信号には、車両3−1に車群番号が設定されていた場合には、車両3−1の車群番号が含まれる。車群番号には、明示的な関係性を示す明示的車群番号と、非明示的な関係性を示す非明示的車群番号と、が存在する。明示的車群番号は、例えば友人同士や家族同士などの特定のグループで車群を形成したい場合に、走行開始前などに車両3−1のドライバによって端末4−1に事前に登録される番号である。一方で非明示的車群番号は、車両に搭載されたナビゲーション装置などによって設定された目的地に応じて、端末4−1によって自動的に割り当てられる番号である。
【0036】
ステップS2において、車線変更信号を受信したサーバ2は、車線変更信号に含まれる車両3−3の識別情報に基づいて車両3−3を特定し、車両3−3内の端末4−3に対して、車群番号問い合わせ信号を送信する。
【0037】
ステップS3において、車群番号問い合わせ信号を受信した端末4−3は、車両3−3に車群番号が設定されているかを確認し、車群番号通知信号をサーバ2に返信する。車両3−3に車群番号が設定されている場合には、車群番号通知信号には車両3−3の車群番号が含まれることになる。一方で、車両3−3に車群番号が設定されていなかった場合には、車群番号通知信号には車両3−3には車群番号が設定されていない旨の情報が含まれることになる。
【0038】
ステップS4において、車群番号通知信号を受信したサーバ2は、車両3−3に車群番号が設定されているかを確認すると共に、車群番号が設定されていた場合には、車両3−1の車群番号と、車両3−3の車群番号とが一致するか否かを判断し、車両3−1内の端末4−1に対して支払い額通知信号を送信し、車両3−3内の端末4−3に対して受け取り額通知信号を送信する。
【0039】
支払い額通知信号には、車線変更を行った場合に車両3−1側が支払う必要のある経済価値の支払い額に関する情報が含まれる。受け取り額通知信号には、車両3−1の識別情報と、車両3−1が車線変更の意思を表示している旨の情報と、車線変更を受け入れた場合に車両3−3側が車両3−1側から受け取ることのできる経済価値の受け取り額に関する情報と、が含まれる。
【0040】
このとき本実施形態では、車両3−3に車群番号が設定されていなかった場合には、車両3−1側の経済価値の支払い額を予め定められた通常の支払い額に設定し、車両3−3側の経済価値の受け取り額を予め定められた通常の受け取り額に設定する。このとき、本実施形態では、車線変更を行う側となる車両3−1側の経済価値の支払い額が、車線変更を受け入れる側となる車両3−3側の経済価値の受け取り側より多くなるよういしている。これにより、支払い額と受け取り額の差分額を、サーバ2側の手数料として得ることができる。
【0041】
一方で、車両3−3に車群番号が設定されていた場合において、車両3−1の車群番号と、車両3−3の車群番号と、が一致していないときは、車両3−1側の経済価値の支払い額を通常の支払い額よりも大きい額に設定し、車両3−3側の経済価値の受け取り額を通常の受け取り額よりも大きい額に設定する。また車両3−3に車群番号が設定されていた場合において、車両3−1の車群番号と、車両3−3の車群番号と、が一致しているときは、車両3−1側の経済価値の支払い額を通常の支払い額よりも小さい額に設定し、車両3−3側の経済価値の受け取り額を通常の受け取り額よりも小さい額に設定する。
【0042】
ステップS5において、車両3−1のドライバが、車線変更を行うことに対する対価として、支払い額通知信号に含まれる支払い額の経済価値を支払うことを容認し、車線変更を行うと、端末4−1は、車線変更実施信号をサーバ2に送信する。なお車線変更を行った否かの判断は、例えば車両3−1に搭載された機器(本実施形態では車外撮影用のカメラ)によって車両3−1の走行レーンを確認することで判断することができる。
【0043】
なお車両3−1が車線変更を行った否かの判断は、例えば各端末4−1〜4−nからGPS受信機で受信した各車両3−1〜3−nの位置情報がサーバ2に送信されている場合であれば、車両3−1と車両3−3の位置情報い基づいてサーバ2側で判断するようにしても良い。
【0044】
ステップS6において、車線変更実施信号を受信したサーバ2は、記憶している各端末4−1〜4−nのユーザが保有する経済価値の額を更新する。具体的にはサーバ2は、端末4−1のユーザが保有していた経済価値を、支払い額通知信号に含まれていた支払い額分だけ減らす。またサーバ2は、端末4−3のユーザが保有していた経済価値を、受け取り額通知信号に含まれていた受け取り額分だけ増やす。
【0045】
図4は、車線変更支援処理のうちのサーバ2に関連する処理について説明するフローチャートである。本処理は、サーバ2の通信部21が、車線変更を行う側の車両(以下「車線変更車両」という。)から車線変更信号を受信すると、サーバ2の制御部23によって実行される。
【0046】
ステップS11において、サーバ2は、受信した車線変更信号に含まれる、車線変更の受け入れ側となる車両(以下「受入車両」という。)の識別情報に基づいて受入車両内の端末を特定し、その受入車両内の端末に対して車群番号問い合わせ信号を送信する。
【0047】
ステップS12において、サーバ2は、受入車両内の端末から送信された車群番号通知信号を受信すると、その車群番号通知信号に含まれる情報から、受入車両に車群番号が設定されているかを確認し、車群番号が設定されていなければステップS13の処理に進み、車群番号設定されていればステップS14の処理に進む。
【0048】
ステップS13において、サーバ2は、車線変更車両内の端末に対して、車線変更車両側が支払う経済価値の額を通常の支払い額に設定した支払い額通知信号を送信すると共に、受入車両内の端末に対して、受入車両が受け取ることができる経済価値の額を通常の受け取り額に設定して受け取り額通知信号を送信する。
【0049】
ステップS14において、サーバ2は、車線変更車両の車群番号と、受入車両の車群番号と、が一致するか否かを判断し、一致していなければステップS15の処理に進み、一致していればステップS16の処理に進む。
【0050】
ステップS15において、サーバ2は、車線変更車両内の端末に対して、車線変更車両側が支払う経済価値の額を通常の支払い額よりも大きい額に設定した支払い額通知信号を送信すると共に、受入車両内の端末に対して、受入車両が受け取ることができる経済価値の額を通常の受け取り額よりも大きい額に設定した受け取り額通知信号を送信する。
【0051】
ステップS16において、サーバ2は、車線変更車両内の端末に対して、車線変更車両側が支払う経済価値の額を通常の支払い額よりも小さい額に設定した支払い額通知信号を送信すると共に、受入車両内の端末に対して、受入車両が受け取ることができる経済価値の額を通常の受け取り額よりも小さい額に設定した受け取り額通知信号を送信する。
【0052】
ステップS17において、サーバ2は、車線変更車両内の端末から送信された車線変更実施信号を受信すると、車線変更車両内の端末のユーザが保有する経済価値の残高、及び受入車両内の端末のユーザが保有する経済価値の残高を更新する。具体的にはサーバ2は、記憶部22に記憶されていた車線変更車両内の端末のユーザの経済価値の残高を、支払い額通知信号に含まれていた支払い額分だけ減らす。またサーバ2は、記憶部22に記憶されていた受入車両内の端末のユーザの経済価値の残高を、受け取り額通知信号に含まれていた受け取り額分だけ増やす。
【0053】
以上説明した本実施形態による車線変更支援システム1は、第1の車両3−1内の第1の端末4−1、第2の車両3−2内の第2の端末4−2、及び第3の車両3−3内の第3の端末4−3と、第1の端末4−1、第2の端末4−2、及び第3の端末4−3のそれぞれと通信可能であると共に、第1の端末4−1のユーザ又は第1の車両3−1、第2の端末4−2のユーザ又は第2の車両3−2、及び第3の端末4−3のユーザ又は第3の車両3−3がそれぞれ保有する経済価値を管理するサーバ2(車線変更支援装置)と、を備える。
【0054】
そしてサーバ2は、第1走行レーンを走行している第1の車両3−1が、第1走行レーンの隣の第2走行レーンを走行している第2の車両3−2と第3の車両3−3との間に割り込んで、第2の車両3−2の後方を走行する第3の車両3−3の前方に車線変更したときに、第1の端末4−1のユーザ又は第1の車両3−1が保有する経済価値を減らし、第3の端末4−3のユーザ又は第3の車両3−3が保有する経済価値を増やすように構成される。
【0055】
これにより、本実施形態によれば、車線変更が行われたときには、車線変更を受け入れた側が、車線変更を行った側から車線変更を受け入れたことに対する対価として、経済価値を受け取ることができる。そのため、車線変更を受け入れる側にもメリットが生じるので、車線変更を受け入れる側が車線変更を妨害するような事態を少なくすることができる。その結果、車線変更を行う側は、車線変更をスムーズに行うことができるようになる。
【0056】
また本実施形態によるサーバ2は、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が、特定のグループに属する車群を形成していた場合は、第1の車両3−1が属するグループに応じて、第1の端末4−1のユーザ又は第1の車両3−1が保有する経済価値の減額量、及び第3の端末4−3のユーザ又は第3の車両3−3が保有する経済価値の増額量を変化させるように構成される。
【0057】
より詳細にはサーバ2は、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が、特定のグループに属する車群を形成していた場合において、第1の車両3−1が属するグループと、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が属するグループと、が異なるときは、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が特定のグループに属する車群を形成していなかった場合と比較して、第1の端末4−1のユーザ又は第1の車両3−1が保有する経済価値の減額量を多くし、第3の端末4−3のユーザ又は第3の車両3−3が保有する経済価値の増額量を多くするように構成される。
【0058】
これにより、本実施形態によれば、車線変更を行う側と受け入れる側とが同じグループに属しておらず、車線変更を受け入れた側の車両が特定の車群を形成している車両であった場合には、車線変更を行う側が支払う経済価値の額が通常よりも多くなり、車線変更を受け入れた側が受け取ることのできる経済価値の額が通常よりも多くなる。
【0059】
そのため、車線変更を行う側は、自車両が属さないグループの車群の中に車線変更する場合には通常よりも割高な経済価値を支払う必要がある。したがって、このような車群の中に向けての車線変更を抑制することができるので、車線変更がスムーズに行われずに道路上における車両の流れを乱してしまうのを抑制することができる。
【0060】
また車線変更を受け入れる側は、自車両が属さないグループの車両の車線変更を受け入れた場合には通常よりも割高な経済価値を受け取ることができるので、車線変更を受け入れる側が車線変更を妨害するような事態を少なくすることができる。その結果、車線変更を行う側は、車線変更をスムーズに行うことができるようになる。
【0061】
一方でサーバ2は、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が、特定のグループに属する車群を形成していた場合において、第1の車両3−1が属するグループと、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が属するグループと、が同一であるときは、第2の車両3−2及び第3の車両3−3が特定のグループに属する車群を形成していなかった場合と比較して、第3の端末4−3のユーザ又は第3の車両3−3が保有する経済価値の増額量を少なくし、第3の端末4−3のユーザ又は第3の車両3−3が保有する経済価値の増額量を少なくするように構成される。
【0062】
これにより、同じグループに属する車両間による積極的な車群の形成を促進させることができる。
【0063】
なおサーバ2は、第1の車両3−1、第2の車両3−2、及び第3の車両3−3がいずれのグループに属するかを、第1の端末4−1、第2の端末4−2、及び第3の端末4−3から送信される車群番号に基づいて判断している。車群番号は、例えば、第1の車両3−1、第2の車両3−2、及び第3の車両3−3の乗員によって、第1の端末4−1、第2の端末4−2、及び第3の端末4−3に入力される番号である。また車群番号は、例えば第1の車両3−1、第2の車両3−2、及び第3の車両3−3の目的地に基づいて、第1の端末4−1、第2の端末4−2、及び第3の端末4−3によって自動的に入力される番号である。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0065】
例えば上記の実施形態において、車両3−2と車両3−3とが前後に連なって車群を形成している例を示したが、必ずしも前後に連なった状態で走行している場合のみを車群とするのではなく、車両3−2と車両3−3との間に数台程度の他グループの車両が存在している場合も車群とみなしてもよい。
【0066】
また上記の実施形態において、サーバ2側で車線変更を受け入れる側の車両が車群を形成していることを事前に把握できている場合には、車線変更先の車両が車群を形成していることを、車線変更を行うとしている車両に対して事前に通知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
2 サーバ(車線変更支援装置)
3−1〜3−n 車両
4−1〜4−n 端末
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
図1
図2
図3
図4