(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、断線が往路,復路における何れのIC間で発生したのかは特定できない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信の途絶が発生した箇所を特定できる組電池監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の組電池監視装置によれば、組電池の状態を監視する複数の監視回路と、これらの監視回路に
チェックコードが含まれているコマンドを周期的に送信して指示を行う制御回路とは、デイジーチェーン方式で接続されて通信を行う。監視回路は、
コマンドの受信を開始すると、チェックコードに基づく判定を行う前に当該コマンドを下流側に送信し、制御回路が送信したコマンドが設定されている周期を超えて受信されていないと判断すると、自身の下流側に初期値データを含む通信途絶コマンドを送信する。通信途絶コマンドを受信した監視回路は、
当該コマンドをバッファに保持し、次の周期に通信途絶コマンドを受信すると、バッファに保持したコマンドに含まれているデータに演算処理を行う。制御回路は通信途絶コマンドを受信すると、当該コマンドに含まれているデータの値に基づいて通信の途絶が発生した位置を特定する。
【0006】
すなわち、通信途絶コマンドを受信した監視回路が、そのコマンドに含まれているデータにそれぞれ一定の演算を行うことで、制御回路は、受信した通信途絶コマンドに含まれている演算結果データから、何れの位置にある監視回路において通信の途絶が発生したのかを特定できる。
【0007】
また、このように構成すれば、通信が正常に行われている状態では、チェックコードに基づく判定を行う前にコマンドを下流側に送信することで、通信を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図6に示すように、本実施形態の組電池監視装置は、制御IC1と、例えばM個の監視IC2(1)〜2(M)とを備えている。組電池3は、複数の電池セル4を直列に接続して構成され、各監視2(1)〜2(M)は、それぞれ所定数の電池セル4の状態,例えば電圧,電流温度等を測定して監視する。制御IC1は、マイクロコンピュータ等で構成されており、制御IC1と監視IC2(1)〜2(M)とはデイジーチェーン方式で接続されている。制御IC1は制御回路に相当し、監視IC2は監視回路に相当する。
【0010】
尚、以下では、コマンドが転送される方向の説明において、制御IC1側を「上流側」と称し、監視IC2側を「下流側」と称すことがある。制御IC1が監視IC2(1)にコマンドを送信すると、そのコマンドは、監視IC2(1)→監視IC2(2)→…監視IC2(M)→制御IC1という流れで順次転送される。監視IC2は、受信したコマンドに応じて、それぞれが測定対象とする電池セル4の状態を示すデータ等をコマンドに付して、自身の下流側に転送することで制御IC1に送信する。
【0011】
本実施形態では、
図1に示すように、制御IC1が監視IC2に対して、一定周期でコマンドを送信する。監視IC2は、コマンドを受信する間隔時間を計測しており、その間隔時間が途絶判定時間を超えると、通信途絶コマンドを自身の下流側に転送する。
【0012】
監視IC2は、通信回路5を備えている。
図5に示すように、通信回路5は、通信制御回路6を備えている。通信制御回路6は、上流側より送信されたコマンドが入力されると、そのコマンドに電池セル4の状態データ等を書込んで下流側に出力する。その出力は、2つのセレクタ7及び8を介して行われる。途絶時間カウンタ9は、コマンドの受信間隔を計測するカウンタであり、通信制御回路6は、コマンドを受信する毎に途絶時間カウンタ9に対してリセット信号を出力する。
【0013】
途絶判定時間設定レジスタ10には、通信の途絶発生を判定するための時間データが設定されており、比較器11は、前記レジスタ10の設定値と途絶時間カウンタ9のカウント値を比較する。そして、カウント値がレジスタ10の設定値を超えると、途絶判定信号をアクティブレベル,例えばハイにする。
【0014】
途絶判定信号は、途絶コマンド生成部12及びセレクタ8に入力されている。途絶コマンド生成部12は、途絶判定信号がアクティブになると通信途絶コマンドを出力する。通信途絶コマンドには、各監視IC2が演算を行う対象のカウント値が書き込まれるが、途絶コマンド生成部12は、そのカウント値を初期値,例えば「1」に設定する。セレクタ8は、途絶判定信号がインアクティブであればセレクタ7側を選択し、同信号がアクティブであれば途絶コマンド生成部12側を選択する。
【0015】
通信制御回路6は、制御IC1が送信したコマンドが入力されると、そのコマンドに対する応答をセレクタ7及び8を介して下流側に送信する。一方、通信制御回路6は、通信途絶コマンドが入力されると、当該コマンドを途絶コマンド処理部13に転送すると共に、セレクタ7を途絶コマンド処理部13側に切替える。途絶コマンド処理部13は、転送されたコマンドに書き込まれているカウント値に所定の演算として、例えばN=1を加算する処理を行う。そして、更新したカウント値を書込んだ通信途絶コマンドをセレクタ7に出力する。
【0016】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、制御IC1は、監視IC2に対して一定周期,例えば数10μs〜数ms程度の周期でコマンドを送信している。また、制御IC1は、
図4に示すように、受信側の処理として監視IC2からコマンドを受信すると(S2→S3)、それが通信途絶コマンド以外の有効なコマンドであれば(YES)、そのコマンドの内容を実行して(S11)通常の受信状態に移行する(S1)。
【0017】
一方、監視IC2から通信途絶コマンドを受信すると(S3;NO→S4;YES)、制御IC1は通信途絶受信状態に移行して、判定待ち時間カウンタをクリアする(S5)。それから、次のコマンドの受信待ちをして判定待ち時間カウンタをカウントアップする(S6)。次に、ステップS3,S4と同様の判断を行い(S7,S8)、通信途絶コマンド以外の有効なコマンドであれば(S7;YES)ステップS11に移行する。
【0018】
ここで、制御IC1が通信途絶コマンドを受信すると(S8;YES)、判定待ち時間カウンタの値が設定値を超えたか否かを判断する(S9)。設定値を超えていなければ(NO)ステップS6に戻り、設定値を超えていれば(YES)その時点で受信している通信コマンドのカウント値より、通信途絶が発生した箇所を推定する(S10)。
【0019】
図1に示すように、制御IC1及び各監視IC2の間を接続している通信線が健全であれば、制御IC1が送信したコマンドは、各監視IC2を経由した後に制御IC1によって受信される。ここで、
図2に示すように、監視IC2(1)と監視IC2(2)との間で通信途絶が発生したとする。なお、
図2はM=4のケースを示している。この時、監視IC2(1)が送信したコマンドは、監視IC2(2)には受信されなくなる。
【0020】
すると、監視IC2(2)の通信回路5では、途絶時間カウンタ9がリセットされずカウント値が上昇し続ける。そして、カウント値がレジスタ10の設定値,例えば10ms相当の途絶判定値を超えると、通信回路5は通信途絶コマンドを送信する。当該コマンドに含まれているカウント値は「1」である。そのコマンドを受信した監視IC2(3)の通信回路5は、カウント値をインクリメントして「2」とすると、下流側の監視IC2(4)に送信する。監視IC2(4)の通信回路5は、カウント値をインクリメントして「3」とすると、通信途絶コマンドを制御IC1に送信する。
【0021】
制御IC1は、通信途絶コマンドを最初に受信すると(S4;YES)、判定待ち時間カウンタをクリアして(S5)カウントアップを開始する(S6)。監視IC2(2)は、通信途絶状態が継続しているので、カウント値が「1」の通信途絶コマンドを繰り返し送信する。これにより、制御IC1も、カウント値が「3」の通信途絶コマンドを繰り返し受信することになる。したがって、制御IC1は、最初の受信から判定待ち時間カウンタの値が設定値を超えた時点で、受信している通信途絶コマンドのカウント値「3」を確認することで、通信途絶が監視IC2(1)と監視IC2(2)との間で発生したことを推定する。
【0022】
ここで、例えば
図3に示すように、監視IC2間の誤差により、監視IC2(2)よりも先に監視IC2(3)が通信途絶を判定すると、制御IC1は最初にカウント値「2」の通信途絶コマンドを受信することになる。制御IC1が、この受信のタイミングで通信途絶の発生個所を特定すると、誤判定となってしまう。これに対して、最初の通信途絶コマンドを受信した時点から、十分な判定待ち時間が経過した時点で発生個所を特定することで誤判定を防止する。
【0023】
以上のように本実施形態によれば、組電池3の状態を監視する複数の監視IC2と、これらの監視IC2にコマンドを周期的に送信して指示を行う制御IC1とがデイジーチェーン方式で接続されて通信を行う。監視IC2は、制御IC1が送信したコマンドが設定されている周期を超えて受信されていないと判断すると、自身の下流側に初期値データを含む通信途絶コマンドを送信する。
【0024】
通信途絶コマンドを受信した監視IC2は、そのコマンドに含まれているカウント値に演算処理を行い、その演算結果のカウント値で更新した通信途絶コマンドを下流側に送信する。制御IC1は通信途絶コマンドを受信すると、当該コマンドに含まれているデータの値に基づいて通信の途絶が発生した位置を特定する。これにより、制御IC1は、受信した通信途絶コマンドから、何れの位置にある監視IC2で通信の途絶が発生したのかを特定できる。
【0025】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を設定して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図7に示すように、第2実施形態では、監視IC2の通信回路5において、途絶コマンド処理部13が通信途絶コマンドのカウント値に対して行う演算が異なっている。第2実施形態ではカウント値に「N=2」を乗じる演算を行う。これより、第1実施形態と同様に通信途絶が発生した場合、制御IC1が受信する通信途絶コマンドに含まれているカウント値は「4」となる。以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0026】
(第3実施形態)
第3実施形態では、
図10に示すように、通信に使用されるコマンドには、チェックコードである例えばCRC(Cyclic Redundancy Cord)が含まれている。
図10では、通信に使用するコマンドやカウント値,及びそれらのCRCをそれぞれ16ビットで構成し、全体で64ビットの通信フレームを構成している。なお、カウント値については、監視IC2の数を最大で「16」までを想定していることから、実質的に4ビットのみ使用する。
【0027】
一般に、通信にCRC等を使用する際には、CRCに基づく演算を行い誤りの有無を判定してから次の通信処理を開始する。これに対して、第3実施形態では、
図8に示すように、監視IC2は、コマンドを受信するとCRCをチェックすることなく下流側にコマンドを送信する。
【0028】
また、
図9に示すように、第1実施形態と同様に通信途絶が発生すると、監視IC2(2)は、初期値「1」の通信途絶コマンドを送信する。監視IC2(3)及び監視IC2(4)も、通信途絶コマンドに対応して保持しているカウント値は何れも初期値「1」である。通信途絶コマンドを受信した監視IC2(3)は、その時点で保持しているカウント値「1」の通信途絶コマンドを下流側に送信するが、カウント値をインクリメントしてその値を内部のバッファに保持する。監視IC2(4)も同様の処理を行う。監視IC2(3)及び監視IC2(4)が保持するカウント値は何れも「2」となり、制御IC1はカウント値「1」の通信途絶コマンドを受信する。
【0029】
監視IC2(2)は、再度途絶判定時間が経過すると、またカウント値「1」の通信途絶コマンドを送信する。そのコマンドを受信した監視IC2(3)は、その時点で保持しているカウント値「2」の通信途絶コマンドを下流側に送信するが、前回と同様に受信したコマンドのカウント値「1」をインクリメントした値「2」を内部のバッファに保持する。監視IC2(4)も同様の処理を行う。監視IC2(4)が保持するカウント値は「3」となり、制御IC1はカウント値「2」の通信途絶コマンドを受信する。
【0030】
監視IC2(2)は、次に途絶判定時間が経過すると、またカウント値「1」の通信途絶コマンドを送信するので、監視IC2(3)が行う処理は前回と同様になる。監視IC2(4)は、カウント値「2」の通信途絶コマンドを受信すると、その時点で保持しているカウント値「3」の通信途絶コマンドを制御IC1に送信し、制御IC1が受信する。次回以降に監視IC2(4)が行う処理は前回と同様になるので、制御IC1が受信する通信途絶コマンドのカウント値は「3」のままになる。
【0031】
したがって、制御IC1が最初に通信途絶コマンドを受信した時点から十分な判定待ち時間が経過した時点で、受信している通信途絶コマンドのカウント値「3」を確認すれば、通信途絶が監視IC2(1)と監視IC2(2)との間で発生したことを特定できる。
【0032】
以上のように第3実施形態によれば、制御IC1が送信するコマンドにはCRCが含まれており、監視IC2はコマンドの受信を開始すると、CRCに基づく判定を行う前に当該コマンドを下流側に送信する。監視IC2は、第1実施形態と同様の判断により、自身の下流側に初期値データを含む通信途絶コマンドを送信する。
【0033】
通信途絶コマンドを最初に受信した監視IC2は、自身の下流側に初期値データを含む通信途絶コマンドを送信すると共に、当該コマンドに含まれているデータをバッファに保持し、次の周期に前記通信途絶コマンドを受信すると前記バッファに保持したコマンドに含まれているデータに演算処理を行い、その演算結果のデータで更新した通信途絶コマンドを下流側に送信する。制御IC1は通信途絶コマンドを受信すると、第1実施形態と同様に通信の途絶が発生した位置を特定する。したがって、通信が正常に行われている状態では、CRCに基づく判定を行う前にコマンドを下流側に送信することで、通信を迅速に行うことができる。
【0034】
(第4実施形態)
図11に示すように、第4実施形態は、特許文献1のように往路と復路とが独立しているデイジーチェイン接続に適用した場合を示す。この構成に対して例えば第1実施形態を適用すると、制御IC1が受信する通信途絶コマンドのカウント値は「6」になるが、第2実施形態と同様に通信途絶が監視IC2(1)と監視IC2(2)との間で発生したことを特定できる。
【0035】
(その他の実施形態)
各実施形態を適宜組み合わせて実施しても良い。
監視IC2が行う演算処理は、「1」加算や「2」を乗じるものに限らない。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。