特許第6984553号(P6984553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984553
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】昇圧コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-129370(P2018-129370)
(22)【出願日】2018年7月6日
(65)【公開番号】特開2020-10498(P2020-10498A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2021年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 祐介
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−236082(JP,A)
【文献】 特開2010−279150(JP,A)
【文献】 特許第5462387(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に接続され、前記燃料電池の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータであって、
磁性コアを備え、前記燃料電池の出力電流を検出する電流センサと、
前記電流センサが検出した前記出力電流の一定期間内のピーク値を記憶するピークホールド手段と、
前記ピークホールド手段によって記憶されているピーク値に基づいて決定された補正値を用いて、前記電流センサにより検出される前記出力電流に含まれている前記磁性コアの残留磁束によるヒステリシス誤差を補正する補正手段と、
を備える昇圧コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電流センサのオフセット制御が可能な昇圧コンバータを開示する。
【背景技術】
【0002】
HV(Hybrid Vehicle)システム、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)システム、FC(Fuel Cell)システムでは、二次電池や燃料電池の出力電圧を、走行用モータに適した電圧まで昇圧コンバータで昇圧している。また、電流センサにより、充放電電流を計測することで、電力収支を制御している。関連する技術として、特許文献1の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−217543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流センサの計測値には、電流センサが備える磁性コアの残留磁束によってヒステリシス誤差が含まれてしまう。ヒステリシス誤差により、電力収支にずれが発生してしまう。二次電池に接続されている昇圧コンバータでは、二次電池への回生制御を行うため、二次電池からの出力電流方向が正方向(力行)および負方向(回生)に変化する。よって磁性コアを消磁できるため、ヒステリシス誤差をキャンセルできる。しかし、燃料電池に接続されている昇圧コンバータでは、燃料電池への回生制御を行わないため、燃料電池からの出力電流方向は正方向(力行)のみである。電流センサの磁性コアを消磁できないため、ヒステリシス誤差をキャンセルすることができない。本明細書は、燃料電池に用いられる電流センサにおいて、残留磁束による測定誤差を補正する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する昇圧コンバータは、燃料電池に接続され、燃料電池の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータである。昇圧コンバータは、磁性コアを備え、燃料電池の出力電流を検出する電流センサを備える。昇圧コンバータは、電流センサが検出した出力電流の一定期間内のピーク値を記憶するピークホールド手段を備える。昇圧コンバータは、ピークホールド手段によって記憶されているピーク値に基づいて決定された補正値を用いて、電流センサにより検出される出力電流に含まれている磁性コアの残留磁束によるヒステリシス誤差を補正する補正手段を備える。
【0006】
燃料電池の出力電流は一方向(力行)のみである。従って燃料電池の出力電流を検出する電流センサの磁性コアを消磁できないため、残留磁束によるヒステリシス誤差は、一度発生すると値は変化しない。そして、前回の最大電流値を超える電流が流れると、その電流値に応じてヒステリシス誤差は大きくなる特性を有している。本明細書が開示する昇圧コンバータでは、ピークホールド手段によって、常に最大電流値を更新している。そして、ピークホールド手段によって記憶されているピーク値に基づいて補正値を決定することで、最大電流値が更新されるたびに補正値も更新することができる。よって、電流通電履歴に応じて変化する残留磁束によるヒステリシス誤差を、補正値を用いてタイムリーに、電流センサの検出値からキャンセルすることが可能となる。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例の電源システムを含む燃料電池車の電力系のブロック図である。
図2】リアクトルに流れる電流の波形図である。
図3】燃料電池および二次電池から充放電される電流の波形図である。
図4】磁性コアの残留磁束のヒステリシス特性を示す図である。
図5】ヒステリシス誤差曲線を示す図である。
図6】コントローラが実行する具体動作のフローチャートである。
図7】測定電流値、更新フラグ、電流ピークホールド値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(電源システムの構造)
図面を参照して実施例の電源システム2を説明する。図1に、電源システム2を含む燃料電池車100の電力系のブロック図を示す。図1において、モータ22以外の回路が電源システム2である。図1において、実線は電力線を示しており、矢印破線は信号線を示している。
【0009】
燃料電池車100は、モータ22で走行する。モータ22は、燃料電池7の電力、あるいはメインバッテリ3の電力で駆動される。なお、図1では、燃料電池7を単純な記号で示しているが、ここでの「燃料電池7」は、水素を蓄える水素タンク、複数の燃料電池セルを積層した燃料電池スタック、燃料電池スタックに酸化ガスを供給する酸化ガス供給器、燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給器など、複数のデバイスの集合体である。
【0010】
一般に、自動車には、運転者のアクセルワークに応答して駆動力をゼロから最大駆動力の間で急激に変化させる能力が要求される。一方、燃料電池は、その出力を急激に変えることが難しい。そのため、燃料電池車は燃料電池に加えてバッテリを備える。実施例の燃料電池車100も、メインバッテリ3を備えている。メインバッテリ3は、再充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、あるいは、ニッケル水素電池である。
【0011】
燃料電池7の出力電圧は、例えば、200〜300ボルトである。また、メインバッテリ3の出力電圧は、例えば300ボルトである。一方、走行用のモータ22の最大駆動電圧は600ボルトである。メインバッテリ3と燃料電池7は、電圧コンバータ(双方向DC−DCコンバータ10、FC用電圧コンバータ8)を介してインバータ6に並列に接続されている。インバータ6は、昇圧されたメインバッテリ3の直流電力、及び/又は、昇圧された燃料電池7の直流電力を、モータ22の駆動に適した交流電力に変換し、モータ22に供給する。モータ22は、三相交流モータである。なお、以下、説明を簡単にするために、双方向DC−DCコンバータ10を単純に「DCコンバータ10」と称する場合がある。
【0012】
(FC用電圧コンバータ8)
FC用電圧コンバータ8は、燃料電池7の直流電力の電圧をモータ駆動に適した電圧まで昇圧し、インバータ6に供給する。FC用電圧コンバータ8では、トランジスタ84のオンオフにより昇圧動作が実現する。FC用電圧コンバータ8の動作はよく知られているので、詳しい説明は省略する。
【0013】
FC用電圧コンバータ8は、リアクトル81、電流センサ82、整流ダイオード83、トランジスタ84、還流ダイオード85、コントローラ86を有している。トランジスタ84は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、逆方向には電流が流れない。トランジスタ84には、還流ダイオード85が逆並列接続されている。還流ダイオード85は、トランジスタ84の逆方向の電流をバイパスさせるために備えられている。リアクトル81の一端は、燃料電池7の正極に接続されている。リアクトル81の他端は、電流センサ82を介して、整流ダイオード83とトランジスタ84の直列接続の中点N1に接続されている。整流ダイオード83の中点N1と反対側の端部は、正極12aに接続されている。トランジスタ84の中点N1と反対側の端部は、負極12bおよび燃料電池7の負極に接続されている。
【0014】
電流センサ82は、燃料電池7の出力電流を測定するセンサである。電流センサ82は、不図示の磁性コアとホール素子とを備えている。磁性コアは、通電電流が回路周辺に発生させる磁束を集束して測定感度を高めるための部材である。ホール素子は、磁性コアにより集束させた磁束の磁界を検出する素子である。
【0015】
コントローラ86には、電流センサ82の測定データが入力される。またコントローラ86は、トランジスタ84のゲート駆動信号を出力する。コントローラ86は、EEPROM87とCPU88とRAM89を備える。コントローラ86は、ピークホールド手段および補正手段として機能する。ピークホールド手段は、電流センサ82が測定した測定電流の一定期間内のピーク値をRAM89およびEEPROM87に記憶する手段である。補正手段は、RAM89に記憶されているピーク値に基づいて決定されたヒステリシス補正値を用いて、電流センサにより測定される測定電流値に含まれているヒステリシス誤差を補正する手段である。ヒステリシス誤差については後述する。
【0016】
コントローラ86は、補正手段によって補正された測定値を用いることで、燃料電池7の目標発電電力を正確に算出できる。そして目標発電電力に基づいて生成したゲート駆動信号を、トランジスタ84に供給することができる。
【0017】
(DCコンバータ10)
DCコンバータ10は、低電圧端11に印加された電力を昇圧して高電圧端12に出力する昇圧機能と、高電圧端12に印加された電力を降圧して低電圧端11に出力する降圧機能の両方を備える。降圧機能は、燃料電池7の出力電力のうち、モータ22の駆動に用いられなかった余剰電力をメインバッテリ3に充電するときに利用される。また、降圧機能は、車両の減速エネルギを使ってモータ22が発電したとき、発電によって得られた回生電力をメインバッテリ3に充電するときにも利用される。高電位側のトランジスタ16aのオンオフにより降圧動作が実現し、低電位側のトランジスタ16bのオンオフにより昇圧動作が実現する。DCコンバータ10の動作はよく知られているので、詳しい説明は省略する。
【0018】
DCコンバータ10は、2個のトランジスタ16a、16b、2個のダイオード17a、17b、リアクトル15、フィルタコンデンサ14、平滑コンデンサ5を備えている。DCコンバータ10は、その低電圧端11がメインバッテリ3に接続されており、高電圧端12がインバータ6に接続されている。DCコンバータ10とインバータ6の間に、平滑コンデンサ5が並列に接続されている。2個のトランジスタ16a、16bは、高電圧端12の正極12aと負極12bの間で直列に接続されている。トランジスタ16a、16bは、IGBTである。トランジスタ16aにダイオード17aが逆並列に接続されており、トランジスタ16bにダイオード17bが逆並列に接続されている。リアクトル15の一端は、トランジスタ16a、16bの直列接続の中点に接続されている。リアクトル15の他端は、低電圧端11の正極11aに接続されている。フィルタコンデンサ14は、低電圧端11の正極11aと負極11bの間に接続されている。
【0019】
(燃料電池および二次電池における検出電流の特徴)
図2に、昇圧コンバータに備えられたリアクトルに流れる電流の波形図を示す。図2の縦軸は電流を示しており、中心が0Aである。実線で示すリアクトル電流RI1は、燃料電池に接続された昇圧コンバータのリアクトル電流である。点線で示すリアクトル電流RI2は、二次電池に接続された昇圧コンバータのリアクトル電流である。また図3に、燃料電池および二次電池から充放電される電流の波形図を示す。図2の縦軸において上側が力行(すなわち放電)、下側が回生(すなわち充電)を示している。実線で示す燃料電池電流FIは、燃料電池から放電される電流である。点線で示す二次電池電流SIは、二次電池から充電および放電される電流である。
【0020】
二次電池は再充電が可能であるが、燃料電池は再充電が可能ではない。従って、図2および図3に示すように、二次電池に接続された昇圧コンバータでは、二次電池への回生制御を行うため、リアクトル電流RI2や二次電池電流SIは、正(力行)および負(回生)に変化する。一方、燃料電池に接続された昇圧コンバータでは、燃料電池への回生制御を行わないため、リアクトル電流RI1や燃料電池電流FIは、正方向(力行)のみである。
【0021】
(電流センサの特性)
図4および図5を用いて、電流センサ82の一般的な特性を説明する。図4のグラフの横軸は通電電流(すなわち被測定電流)であり、縦軸は電流センサ82の測定値(すなわち出力電圧)である。図4は、磁性コアの残留磁束のヒステリシス特性を示している。具体的には、被測定電流が負方向から正方向に変化するときの曲線L1と、被測定電流が正方向から負方向に変化するときの曲線L2とが、異なる曲線となる。そして、曲線L1とL2との差が、ヒステリシス誤差となる。
【0022】
図5グラフの横軸は通電電流(すなわち被測定電流)であり、縦軸はヒステリシス誤差である。ヒステリシス誤差曲線HC1〜HC3は、通電電流とヒステリシス誤差との関係を示す曲線である。ヒステリシス誤差曲線HC1は、負のピーク電流P11または正のピーク電流P12によって発生した曲線である。ヒステリシス誤差曲線HC2は、負のピーク電流P21または正のピーク電流P22によって発生した曲線である。ヒステリシス誤差曲線HC3は、負のピーク電流P31または正のピーク電流P32によって発生した曲線である。ヒステリシス誤差曲線がグラフ上に占める面積は、通電電流のピーク値の大きさに比例して大きくなる特性がある。すなわちヒステリシス誤差曲線HC1〜HC3は、この順に、しだいに大きくなる通電電流によって発生している誤差曲線である。図5のヒステリシス誤差曲線H3に示すように、ヒステリシス誤差値は、被測定電流が「0A」のときに最大値E1となる。また負のピーク電流P31や、正のピーク電流P32では、ヒステリシス誤差値が最小(0)となる。
【0023】
そして図2および図3で説明したように、燃料電池に接続された昇圧コンバータでは、被測定電流は正方向(力行)のみに流れる。すると、図5において使用する領域は、斜線部で示した第1象限の領域A1のみとなる。この場合、ヒステリシス誤差曲線は一度発生すると、消磁されないため変化しない。そして、前回の最大電流値を超える電流が流れると、その電流値に応じてヒステリシス誤差曲線の面積が大きくなる特性を有している。すなわちヒステリシス誤差曲線は、ヒステリシス誤差曲線HC1からHC3へ大きくなる方向へのみ変化する。
【0024】
なお、図5のヒステリシス誤差曲線HC1〜HC3は一例である。様々なピーク電流に応じた多数のヒステリシス誤差曲線が存在する。そしてEEPROM87は、多数のヒステリシス誤差曲線を誤差マップとして記憶している。換言すると、誤差マップを用いれば、あるピーク電流値に対応するヒステリシス誤差曲線を一義に特定することができる。
【0025】
(具体動作例)
図6および図7を用いて、実施例の電源システム2の動作例を説明する。図6に、車両のメインスイッチがオンされてからオフされるまでの処理のフローチャートを示す。図6の処理は、車両のメインスイッチ(不図示)がオンされると開始される。S10〜S30までのステップはシステム起動時の処理であり、S40〜S130までのステップは走行中の処理である。
【0026】
S10においてCPU88は、前トリップの最終の電流ピークホールド値をEEPROM87から読み出し、現在の電流ピークホールド値としてRAM89に記憶する。S20においてCPU88は、電流ピークホールド値に対応するヒステリシス誤差曲線を決定し、RAM89に記憶させる。これは、前述したように、EEPROM87に記憶されている誤差マップを用いることで実現可能である。
【0027】
S30においてCPU88は、オフセット学習値αを決定する。オフセット学習値αは、燃料電池7の出力電流が0の時の検出誤差を検出し、その誤差を修正するための値である。オフセット学習値αの決定方法はよく知られているので、詳しい説明は省略する。
【0028】
S40においてCPU88は、電流センサ82から測定電流値I1を受信する。図7(A)に示すように、測定電流値I1はリプル波形を有しており、ピーク値が複数存在する。
【0029】
S50においてCPU88は、測定電流値I1のピーク値がRAM89に記憶されている電流ピークホールド値を超えているか否かを判断する。そして超えている場合には更新フラグを立てる。更新フラグが立った場合(S50:YES)にはS60へ進む。S60においてCPU88は、測定電流値I1のピーク値を、新たな電流ピークホールド値としてRAM89に上書き記憶する。図7の例では、時刻t1において、測定電流値I1のピーク値IP1がRAM89に記憶されている電流ピークホールド値PH1を超えたと判断され、更新フラグF1が立てられる(図7(B))。従って、電流ピークホールド値がPH1からPH2へ更新される(図7(C))。同様に、時刻t2においても測定電流値I1のピーク値IP2が電流ピークホールド値PH2を超えたと判断され、更新フラグF2が立てられ、電流ピークホールド値がPH2からPH3へ更新される。
【0030】
S70においてCPU88は、電流ピークホールド値に対応するヒステリシス誤差曲線を決定する。これは、前述したように、EEPROM87に記憶されている誤差マップを用いることで実現可能である。S80においてCPU88は、決定したヒステリシス誤差曲線をRAM89に上書き記憶させる。これによりヒステリシス誤差曲線が更新される。そしてS100へ進む。
【0031】
一方、S50で更新フラグが立たなかった場合(S50:NO)には、S90へ進み、ヒステリシス誤差曲線を現状維持する。そしてS100へ進む。
【0032】
S100においてCPU88は、S40で測定された測定電流値I1と記憶されているヒステリシス誤差曲線から、ヒステリシス補正値βを決定する。S110においてCPU88は、測定電流値I1を補正する。具体的には、測定電流値I1に、S30で決定したオフセット学習値αと、S100で決定したヒステリシス補正値βを加算する。
【0033】
S120においてCPU88は、車両のメインスイッチがオフされたか否かを判断する。否定判断される場合(S120:NO)にはS40へ戻り、肯定判断される場合(S120:YES)にはS130へ進む。S130においてCPU88は、RAM89に記憶されている電流ピークホールド値をEEPROM87に記憶させる。これにより、電流ピークホールド値を次トリップまで保存できる。
【0034】
(効果)
本明細書が開示するFC用電圧コンバータ8では、ピークホールド手段として機能するコントローラ86によって、常に電流ピークホールド値を更新している(S60)。そして、更新された電流ピークホールド値に基づいて誤差マップを参照することにより、最適なヒステリシス誤差曲線を決定することができるとともに(S70)、決定したヒステリシス誤差曲線からヒステリシス補正値βを決定することができる(S100)。よって、電流通電履歴に応じて変化する残留磁束によるヒステリシス誤差を、タイムリーに、測定電流値I1からキャンセルすることが可能となる。
【0035】
前トリップの電流ピークホールド値をEEPROM87に記憶させるとともに(S130)、前トリップの最終の電流ピークホールド値を読み出すことで(S10)、前トリップで決定していたヒステリシス誤差曲線を次トリップにも引き継ぐことが可能となる(S20)。これにより、電流センサ82の磁性コアには残留磁束が残っているのに誤差補正量が0となってしまうことで、測定電流値I1の誤差が拡大してしまう、といった事態の発生を抑制することができる。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0037】
(変形例)
S10では、前トリップの最終の電流ピークホールド値を読み出すとしたが、この形態に限られない。例えば前トリップの最終のヒステリシス誤差曲線を読み出してもよい。この場合、S20の処理を省略することができる。
【符号の説明】
【0038】
2:電源システム 3:メインバッテリ 6:インバータ 7:燃料電池 8:FC用電圧コンバータ 10:DCコンバータ(双方向DC−DCコンバータ) 22:モータ 81:リアクトル 82:電流センサ 86:コントローラ 87:EEPROM 88:CPU 89:RAM 100:燃料電池車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7