特許第6984554号(P6984554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984554
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ファーサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/233 20060101AFI20211213BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20211213BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B60R21/233
   B60R21/2338
   B60R21/207
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-129983(P2018-129983)
(22)【出願日】2018年7月9日
(65)【公開番号】特開2019-131161(P2019-131161A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-182641(P2017-182641)
(32)【優先日】2017年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-14055(P2018-14055)
(32)【優先日】2018年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】梅山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】袋野 健一
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋幸
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
【審査官】 田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076640(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0158158(US,A1)
【文献】 特開2006−008105(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0232922(US,A1)
【文献】 特開2012−192871(JP,A)
【文献】 特開2011−240807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/2338
B60R 21/233
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備えており、前記乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置において、
展開及び膨張時の前記エアバッグにおける前記乗員側には、前後方向に延びて前端部が前記エアバッグの前部に結合されて同エアバッグにおける前方に向けての展開及び膨張を規制するテザーが設けられており、
前記エアバッグにおける後部と前記テザーの前端部が結合される前記前部との間には、展開及び膨張時における前記エアバッグの折り曲げを促進する折曲促進部が形成されており、
前記テザーの長さは、前記エアバッグが展開及び膨張したとき、前記乗員における側方に倒れようとする頭部が同エアバッグの前側上部で下方から支えられる長さに設定されていることを特徴とするファーサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備えており、前記乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置において、
展開及び膨張時の前記エアバッグにおける前記乗員側には、前後方向に延びて前端部が前記エアバッグの前部に結合されているとともに後端部が前記エアバッグの後部に結合されているテザーが設けられており、
前記テザーの前後方向の長さは、前記エアバッグにおける後方から前方への展開及び膨張を規制する長さに設定されており、
前記エアバッグにおける前記テザーの前端部が結合される前記前部と前記テザーの後端部が結合される前記後部との間には、展開及び膨張時における前記エアバッグの折り曲げを促進する折曲促進部が前記テザーを横切る方向に延びるように形成されており、
前記テザーの長さは、前記エアバッグが展開及び膨張したとき、前記乗員における側方に倒れようとする頭部が同エアバッグの前側上部で下方から支えられる長さに設定されていることを特徴とするファーサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備えており、前記乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置において、
展開及び膨張時の前記エアバッグにおける前記乗員側には、前後方向に延びて前端部が前記エアバッグの前部に結合されているとともに後端部が前記エアバッグの後部に結合されているテザーが設けられており、
前記テザーの前後方向の長さは、前記エアバッグにおける後方から前方への展開及び膨張を規制する長さに設定されており、
前記エアバッグにおける前記テザーの前端部が結合される前記前部と前記テザーの後端部が結合される前記後部との間には、展開及び膨張時における前記エアバッグの折り曲げを促進する折曲促進部が前記テザーを横切る方向に延びるように形成されており、
前記折曲促進部は、前記エアバッグ内を後側膨張室と前側膨張室とに区画するものであり、
前記テザーの前後方向の長さは、展開及び膨張したときの前記エアバッグにおける前記後側膨張室に対応する部分と前記前側膨張室に対応する部分とが、前記折曲促進部を挟む位置で互いに接する長さに設定されており、
前記エアバッグは、乗物の前記シートにおけるシートバックの固定部に固定されるものであり、
前記テザーの後端は、前記固定部に対し前記エアバッグの後端部と共に固定されるものであり、
前記折曲促進部は、前記エアバッグが展開及び膨張したときに鉛直方向に対し後側に倒れるよう傾斜していることを特徴とするファーサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記折曲促進部は、その両端がそれぞれ前記エアバッグの周縁に至るように形成されている請求項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記テザーの長さは、展開及び膨張したときの前記エアバッグにおける前記折曲促進部の前端が、前記固定部の設けられたシートと隣り合うシートのシートクッションに対応する高さ位置に達する長さに設定されている請求項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグ内において、前記折曲促進部よりも前側の部分が前側膨張室とされている一方、前記折曲促進部よりも後側の部分が後側膨張室とされており、前記前側膨張室が前記後側膨張室よりも小さくされている請求項1又は2に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグの前部における前記テザーの前端部が結合されている部分には、前記エアバッグ内における前記テザーの前端部よりも上側に補助膨張室を区画するための分割部が形成されている請求項1又は2に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記分割部は、その前端部及び後端部を外した位置に、前記エアバッグ内における前記補助膨張室の内外を連通する連通路を有している請求項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記テザーの前端部は、前記エアバッグの前部における前記分割部の前記連通路に対応する部分に結合されている請求項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗物としては幅方向に並ぶ複数のシートを備えたものがあり、こうした乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わると、その側壁部から遠い側のシートに着座している乗員が上記側壁部側に倒れ込もうとする。
【0003】
こうした乗員の保護を目的として、乗物にはファーサイドエアバッグ装置が搭載される。同装置は、折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備え、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて上記エアバッグを乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させる。
【0004】
その結果、衝撃が加わった側壁部から遠い側のシートに着座している乗員は、上記側壁部側に倒れ込もうとするとき、上述したように展開及び膨張したエアバッグにより保護される。詳しくは、邀撃が加わった上記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員が、上記側壁部に近い側のシートに着座している他の乗員や乗物の内装品などと干渉しないようにされる。
【0005】
また、特許文献1には、展開及び膨張時の上記エアバッグにおいて、衝撃が加わった側壁部から遠い側のシートに着座している乗員側の部分にストラップを設け、エアバッグの展開及び膨張時には同エアバッグに対し上記ストラップによる上記乗員側に向う付勢力を作用させることが記載されている。
【0006】
この場合、展開及び膨張するエアバッグがストラップによる上記付勢力の作用により、衝撃が加わった側壁部から遠い側のシートに着座している乗員側に寄せられるため、そのようにエアバッグが寄せられる分、乗員が上記側壁部側に倒れ込むことを抑制しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−215868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されるように、展開及び膨張するエアバッグを衝撃が加わった側壁部から遠い側のシートに着座している乗員側に寄せたとしても、それによって乗員が上記側壁部側に倒れ込むことを必要とされるレベルで抑制できるとは限らず、乗員の上記倒れ込みを効果的に抑制する面で更なる改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、その側壁部から遠い方のシートに着座している乗員が同側壁部側に倒れ込むことを効果的に抑制できるファーサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備える。同装置は、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて上記エアバッグを乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員を保護する。展開及び膨張時のエアバッグにおける上記乗員側には、前後方向に延びて前端部がエアバッグの前部に結合されて同エアバッグにおける前方に向けての展開及び膨張を規制するテザーが設けられる。エアバッグにおける後部とテザーの前端部が結合される前記前部との間には、展開及び膨張時におけるエアバッグの折り曲げを促進する折曲促進部が形成されている。
【0011】
上記構成によれば、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、その側壁部から遠い側のシートに着座している乗員が同側壁部側に倒れ込もうとする一方、乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間でエアバッグが膨張ガスの供給を通じて後方から前方に向けて展開及び膨張する。このエアバッグは、前方に向けての展開及び膨張が上記乗員側のデザーによって規制されるとともに折曲促進部で折れ曲がりやすくなっている。従って、エアバッグが前方に向けて展開及び膨張する際、そのエアバッグが上記乗員側に効率よく折れ曲がって同乗員を押し戻そうとするため、上記乗員が同側壁部側に倒れ込むことを効果的に抑制することができる。
【0012】
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備える。同装置は、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて上記エアバッグを乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員を保護する。展開及び膨張時のエアバッグにおける上記乗員側には、前後方向に延びて前端部がエアバッグの前部に結合されているとともに後端部がエアバッグの後部に結合されているテザーが設けられる。このテザーの前後方向の長さは、エアバッグにおける後方から前方への展開及び膨張を規制する長さに設定される。エアバッグにおけるテザーの前端部が結合される前記前部とテザーの後端部が結合される前記後部との間には、展開及び膨張時におけるエアバッグの折り曲げを促進する折曲促進部がテザーを横切る方向に延びるように形成されている。
【0013】
上記構成によれば、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、その側壁部から遠い側のシートに着座している乗員が同側壁部側に倒れ込もうとする一方、乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間でエアバッグが膨張ガスの供給を通じて後方から前方に向けて展開及び膨張する。このエアバッグは、上記乗員側のデザーによって展開及び膨張が規制されるとともに折曲促進部で折れ曲がりやすくなっており、展開及び膨張する際に上記乗員側に効率よく折れ曲がって同乗員を押し戻そうとするため、その乗員が同側壁部側に倒れ込むことを効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、上記折曲促進部は、その両端がそれぞれ前記エアバッグの周縁に至るように形成されていることが好ましい。
この構成によれば、折曲促進部がテザーを横切る方向に延びて同折曲促進部の両端がそれぞれ前記エアバッグの周縁に至るため、エアバッグの展開及び膨張がテザーで規制されることにより、同エアバッグが上記折曲促進部で一層折れ曲がり易くなる。
【0015】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記折曲促進部はエアバッグ内を後側膨張室と前側膨張室とに区画するものとすることが考えられる。そして、上記テザーの前後方向の長さについては、展開及び膨張したときのエアバッグにおける前記後側膨張室に対応する部分と前記前側膨張室に対応する部分とが、折曲促進部を挟む位置で互いに接する長さに設定することが考えられる。
【0016】
上記構成によれば、エアバッグの展開及び膨張がテザーで規制されたとき、エアバッグにおける前記後側膨張室に対応する部分と前記前側膨張室に対応する部分とが折曲促進部を挟む位置で互いに接するよう、同エアバッグが上記折曲促進部で一層大きく折れ曲がるようになる。従って、エアバッグが展開及び膨張する際に大きく折れ曲がって乗員を押し戻そうとするため、その乗員が倒れ込むことをより効果的に抑制することができる。
【0017】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記エアバッグは乗物のシートにおけるシートバックの固定部に固定されるものであり、上記テザーの後端は上記固定部に対しエアバッグの後端部と共に固定されるものであり、上記折曲促進部はエアバッグが展開及び膨張したときに鉛直方向に対し後側に倒れるよう傾斜しているものとすることが考えられる。
【0018】
この構成によれば、テザーにより展開及び膨張が規制されたときのエアバッグは、前記後側膨張室に対応する部分と前記前側膨張室に対応する部分とが折曲促進部を挟む位置で互いに接するよう折れ曲がる。上記折曲促進部はエアバッグが展開及び膨張したときに鉛直方向に対し後側に倒れるよう傾斜している、言い換えればシートバックの鉛直方向に対する傾斜に対応して傾斜した状態となるため、エアバッグが折曲促進部で折れ曲がったとき、同エアバッグの前側膨張室が乗員を側方及び前方から押さえ込むようになる。これにより、乗員の倒れ込みをより一層効果的に抑制することができる。
【0019】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記テザーの前後方向の長さは展開及び膨張したときのエアバッグにおける前記折曲促進部の前端が上記固定部の設けられたシートと隣り合うシートのシートクッションに対応する高さ位置に達する長さに設定されているものとすることが考えられる。
【0020】
この構成によれば、エアバッグが折曲促進部で折れ曲がったとき、その折曲促進部の前端が上記固定部の設けられたシートと隣り合うシートのシートクッションに対応する高さ位置に達するため、エアバッグが上記シートクッションに対し反発して上記固定部が設けられたシートの乗員をより強く押し戻そうとする。これにより、乗員の倒れ込みをより一層効果的に抑制することができる。
【0021】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記テザーの前後方向の長さは、エアバッグが展開及び膨張したとき、上記乗員における側方に倒れようとする頭部が同エアバッグの前側上部によって下方から支えられる長さに設定されているものとすることが考えられる。
【0022】
この構成によれば、乗物の側壁部に対する側方から衝撃によって上記乗員の頭部が側方に倒れようとすると、その頭部が展開及び膨張したエアバッグにおける前側上部によって下方から支えられ、それによって上記乗員の頭部が側方に倒れないようにされる。
【0023】
また、上記エアバッグ内においては、折曲促進部よりも前側の部分が前側膨張室とされている一方、折曲促進部よりも後側の部分が後側膨張室とされており、上記前側膨張室が上記後側膨張室よりも小さくされているものとすることが考えられる。
【0024】
この構成によれば、エアバッグの前側膨張室が後側膨張室よりも小さいため、前方に向けてのエアバッグの展開及び膨張がテザーによって規制されるとき、エアバッグの前側膨張室で生じるフープ応力を小さく抑えることができ、それに伴ってエアバッグにおける前側膨張室を形成する部分が上記乗員側に折れ曲がりやすくなる。
【0025】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記エアバッグの前部におけるテザーの前端部が結合されている部分には、エアバッグ内におけるテザーの前端部よりも上側に補助膨張室を区画するための分割部を形成することが考えられる。
【0026】
この構成によれば、エアバッグが前方に向けて展開及び膨張する際、そのエアバッグが上記乗員側に効率よく折れ曲がって同乗員を押し戻そうとするだけでなく、補助膨張室が乗員におけるテザーの前端部よりも上側の部分(例えば乗員の頭部)の側方に対応して位置するようになる。このため、乗員の上記部分を補助膨張室によって側方に対し遮蔽することができる。
【0027】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記分割部は、その前端部及び後端部を外した位置に、エアバッグ内における上記補助膨張室の内外を連通する連通路を有しているものとすることが考えられる。
【0028】
この構成によれば、エアバッグの展開及び膨張時、補助膨張室内に分割部の連通路を介して膨張用ガスが流入すると、その膨張用ガスが補助膨張室内において前方及び後方に流れることにより、補助膨張室が前側及び後側に向けて均等に展開及び膨張してゆく。一方、このように補助膨張室が展開及び膨張する際、補助膨張室における連通路に対応する部分は膨張用ガスの流入に伴って乗員側に折れにくくなるものの、分割部における連通路よりも前端側及び後端側に対応する部分では膨張用ガスの流れによって乗員側への折れ曲がりが阻害されることはない。従って、補助膨張室全体としては、その展開及び膨張時に分割部を支点として乗員側に折れやすくなり、それに伴い乗員におけるテザーの前端部よりも上側の部分が補助膨張室によって側方に対し遮蔽されるようになる。
【0029】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、上記テザーの前端部は、エアバッグの前部における上記分割部の連通路に対応する部分に結合されるものとすることが考えられる。
この構成によれば、補助膨張室が展開及び膨張する際、補助膨張室における連通路に対応する部分は膨張用ガスの流入に伴って乗員側に折れにくくなるが、エアバッグの展開及び膨張がテザーによって規制される際、分割部における連通路に対応する部分がテザーによって引っ張られるため、それによって補助膨張室を乗員側に折れやすくすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、その側壁部から遠い方のシートに着座している乗員が同側壁部側に倒れ込むことを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ファーサイドエアバッグ装置が適用される車両を示す平面図。
図2】同車両における側壁部及びシートを示す断面図。
図3】シートにおけるエアバッグが収納された部分を示す拡大平断面図。
図4】シート及び乗員を側方から見た状態を示す略図。
図5】エアバッグを形成するための布片を広げた状態を示す側面図。
図6】エアバッグを示す側面図。
図7】エアバッグにおける内側テザー付近を示す断面図。
図8】車両における展開及び膨張した状態のエアバッグと車両のシートとの位置関係を示す断面図。
図9】エアバッグを示す側面図。
図10】シートのフレームに対するエアバッグの取付態様を示す斜視図。
図11】車両における展開及び膨張した状態のエアバッグとシートに着座した乗員との位置関係を示す断面図。
図12】エアバッグを示す側面図。
図13】車両における展開及び膨張した状態のエアバッグとシートに着座した乗員との位置関係を示す断面図。
図14】エアバッグの他の例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
以下、ファーサイドエアバッグ装置の第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。
【0033】
図1及び図2に示すように、車両(乗物)10においては、その幅方向(図1及び図2の左右方向)の両側にドア及びピラー等からなる側壁部11,12が設けられており、それら側壁部11,12間には車両10の幅方向に並ぶ複数のシート13,14が設けられている。これらシート13,14(図2)はそれぞれ、乗員P1,P2の下半身を載せることが可能なシートクッション16と、シートクッション16の後側(図2の紙面奥側)から起立して乗員P1,P2の上半身を支えるシートバック17と、を備えている。
【0034】
こうした車両10の側壁部11または側壁部12に対し側方から衝撃が加わると、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、上記衝撃が加わった側壁部11,12側に倒れ込もうとする。車両10には、上述したように側壁部11,12に対し衝撃が加わったとき、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2を保護するファーサイドエアバッグ装置が設けられている。
【0035】
ファーサイドエアバッグ装置は、折り畳まれた状態で車両10に対し、より詳しくは車両10におけるシート13,14のシートバック17(図2)に対し固定されたエアバッグ40を備えている。シート13のシートバック17に固定されたエアバッグ40はシート14に最も近い部分に位置しており、シート14のシートバック17に固定されたエアバッグ40はシート13に最も近い部分に位置している。なお、シート13とシート14とにおけるエアバッグ40周りの構造は、車両10の幅方向について対称(左右対称)であること以外は同一の構造となっているため、以下ではシート14におけるエアバッグ40周りの構造についてのみ詳しく説明する。
【0036】
図3は、シート14におけるシートバック17のエアバッグ40周りを示す拡大平断面である。同図に示されるように、シート14におけるシートバック17の内部において、シート13に近い部分(図3の左側の部分)には、折り畳まれた状態の上記エアバッグ40が収納されているとともに、そのエアバッグ40に対し膨張用ガスを供給するためのインフレータ31も収納されている。このインフレータ31はリテーナ32によって覆われている。そして、リテーナ32は、上下二段にそれぞれ設けられたボルト33及びナット34(図3には上段のもののみ図示)により、上記折り畳まれた状態のエアバッグ40と共にシートバック17のフレーム18に対し固定されている。
【0037】
なお、フレーム18においてボルト33及びナット34によってエアバッグ40が固定される部分は、車両10のシート13,14(図3にはシート14のみ図示)に対しエアバッグ40を固定するための固定部として機能する。
【0038】
図4に示すように、ファーサイドエアバッグ装置は、インフレータ31によるエアバッグ40への膨張用ガスの供給を制御する制御装置71を備えている。この制御装置71には側壁部11,12(図1図2)等に設けられた加速度センサ等からなる衝撃センサ72が接続されている。この衝撃センサ72は、側壁部11,12に対し側方から加えられた衝撃を検出する。そして、制御装置71は、衝撃センサ72からの検出信号に基づきインフレータ31を作動させてエアバッグ40に対し膨張用ガスを供給する。
【0039】
エアバッグ40に対しインフレータ31から膨張用ガスが供給されると、同エアバッグ40が展開及び膨張して図3及び図4に二点鎖線で示されるようにインフレータ31付近の部分をシートバック17内に残しつつ同シートバック17から前方に飛び出す。このようにシートバック17から飛び出したエアバッグ40は、シート13とシート14(図1図2)との間で後方から前方に向けて、すなわち図1の上方から下方に向けて展開及び膨張する。
【0040】
側壁部11,12に対し側方から衝撃が加えられたとき、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、上記側壁部11,12側に倒れ込もうとすることは、上述したとおりである。しかし、そのときの乗員P1,P2は、シート13とシート14との間で後方から前方に展開及び膨張する上記エアバッグ40によって保護される。詳しくは、側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、エアバッグ40によって上記側壁部11,12に近い側のシート13,14に着座している他の乗員P1,P2や車両10の内装品などと干渉しないようにされる。
【0041】
次に、エアバッグ40の詳細な構造について説明する。
図5に示すように、エアバッグ40は、一枚の布片41の中央部分に設定した折り線L1に沿って同布片41を矢印方向に二つに折って厚さ方向に重ね、その重ねられた部分の周縁同士を一点鎖線L2で示す位置にて互いに結合させることにより袋状に形成されている。このように袋状に形成されたエアバッグ40を厚さ方向一方側から見た状態を図6に示す。なお、図5及び図6に示すエアバッグ40はシート14に設けられるものであり、シート13に設けられるエアバッグ40は図5及び図6に示されるエアバッグ40に対し折り線L1を中心とする対称形状となっているだけであるため、以下ではシート14に設けられるエアバッグ40について詳しく説明する。
【0042】
図6に示すように、袋状のエアバッグ40の周縁のうち、布片41同士が結合されていない部分(一点鎖線L2以外の部分)、すなわち図6の最下端に位置する部分であって折り線L1周りの部分には、同エアバッグ40の内外を連通する開口部40aが形成されている。また、布片41における折り線L1で二つに折られて厚さ方向に重ねられた部分のうちの一方であって、図6における開口部40aの上側に位置する部分には、上下一対の取付孔42が形成されている。これら取付孔42は、エアバッグ40の後端部をシート14のフレーム18(図3)に取り付けるためのものである。
【0043】
図5及び図6に示すように、布片41の裏面(図5に示される面と反対側の面)における折り線L1を含む中央部分には、同中央部分と同じ周縁形状を有する布片43が設けられている。この布片43も、図6に示すように布片41と共に折り線L1で二つに折って厚さ方向に重ねられており、一点鎖線L2の位置で互いに結合されているとともに布片41に対し結合されている。そして、エアバッグ40の内部には、布片41と布片43とによって袋状をなすインナーバッグ44が形成されている。
【0044】
上記布片43における折り線L1から離れる方向の両端部については、一点鎖線L3で示す位置にて布片41に対し結合されている一方、それ以外の部分は布片41に対し結合されていない。この布片41に対し結合されていない部分は、エアバッグ40内におけるインナーバッグ44の内外を連通する連通部45となっている。また、布片43における上記両端部と上記折り線L1との間には、エアバッグ40内におけるインナーバッグ44の内外を連通する連通孔46が形成されている。
【0045】
インナーバッグ44の内部であって布片41と布片43との間の部分には、上記開口部40aを介してリテーナ32(インフレータ31)を挿入することが可能となっている。そして、リテーナ32をフレーム18(図3)に固定するためのボルト33を布片41の取付孔42(図6)に通した状態のもと、ボルト33及びナット34(図3)で上記フレーム18に対しリテーナ32を固定することにより、エアバッグ40も上記フレーム18に対し固定される。なお、こうしたエアバッグ40の上記フレーム18に対する固定は、エアバッグ40におけるリテーナ32から離れた部分が車両10の前方側に位置した状態となるように行われる。
【0046】
図5及び図6に示すように、布片41の裏面(図5に示される面と反対側の面)であって、布片43よりも折り線L1から離れた位置における同布片43の近傍には、帯状の内側テザー47が設けられている。内側テザー47は、布片43における折り線L1から離れる方向の両端部に対応してそれぞれ位置しており、それら両端部と並んだ状態で布片41を横切って同布片41の周縁に達している。そして、内側テザー47は、その長手方向全体に亘って、一点鎖線L4で示す位置にて布片41に対し結合されている。また、内側テザー47同士は、一点鎖線L4と平行に延びて同一点鎖線L4よりも短い一点鎖線L5で示す位置にて互いに結合されている。
【0047】
このように内側テザー47同士を一点鎖線L5で示す位置にて互いに接合することにより、エアバッグ40内が内側テザー47によってインナーバッグ44を含む後側膨張室48と、その後側膨張室48よりも折り線L1から離れて位置する前側膨張室49とに区画されている。また、内側テザー47同士における互いに接合された部分(一点鎖線Lに対応する部分)は布片41の周縁に達しておらず、その部分と布片41の周縁との間にはエアバッグ40内における後側膨張室48と前側膨張室49とを連通する連通部50が形成される。なお、図7は、この連通部50(内側テザー47)周りにおけるエアバッグ40の断面を示している。
【0048】
従って、インフレータ31(図6)から膨張用ガスを噴出させると、その膨張用ガスがエアバッグ40におけるインナーバッグ44内に供給された後、連通部45及び連通孔46を介してエアバッグ40内かつ後側膨張室48内であってインナーバッグ44の外に流出する。更に、上記膨張用ガスは、後側膨張室48から内側テザー47の連通部50を介して、エアバッグ40内における前側膨張室49に流出する。このようにインフレータ31からの膨張用ガスの供給を通じて、折り畳まれた状態にあるエアバッグ40の展開及び膨張が行われる。
【0049】
図5及び図6に示されるように、布片41の表面(図5に示される面)には、略前後方向(図5及び図6の左右方向)に延びる外側テザー51,52が設けられている。なお、これら外側テザー51,52は、前端部がエアバッグ40の前部に結合されるとともに後端部がエアバッグ40の後部に結合されるテザーとしての役割を担う。これら外側テザー51,52は、展開及び膨張時のエアバッグ40において、衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2側(図5及び図6の例ではシート14の乗員P2側)に位置するよう、上記布片41に設けられている。
【0050】
外側テザー51については、その前端部がエアバッグ40における布片41の前側周縁に対し一点鎖線L2で示す位置にて結合されている一方、後端部が布片41における取付孔42(図5及び図6の上側の取付孔42)が形成された部分に結合される。詳しくは、外側テザー51の後端部には、リテーナ32をフレーム18(図3)に固定するためのボルト33が通される連結孔53が形成されている。そして、その連結孔53及び布片41の上記取付孔42に対しボルト33を通した状態のもと、ボルト33及びナット34(図3)で上記フレーム18に対しリテーナ32を固定することにより、外側テザー51の後端部がエアバッグ40の後部に対し結合される。
【0051】
外側テザー52についても、その前端部がエアバッグ40における布片41の前側周縁に対し一点鎖線L2で示す位置にて結合されている一方、後端部が布片41における取付孔42が形成された部分に結合される。詳しくは、外側テザー52の後端部には、リテーナ32をフレーム18(図3)に固定するためのボルト33が通される一対の連結孔54が形成されている。そして、その連結孔54及び布片41の取付孔42に対しボルト33を通した状態のもと、ボルト33及びナット34(図3)で上記フレーム18に対しリテーナ32を固定することにより、外側テザー52の後端部がエアバッグ40の後部に対し結合される。
【0052】
外側テザー51,52の長さは、膨張用ガスの供給を受けたときのエアバッグ40における後方から前方への展開及び膨張を規制する長さに設定されている。また、外側テザー51,52の後端部が上述したようにエアバッグ40の後端部に結合された状態のときには、エアバッグ40内における内側テザー47が外側テザー51,52の前端部と後端部との間を横切るようになる。言い換えれば、エアバッグ40において、外側テザー51,52の前端部が結合される部分である前側周縁と、エアバッグ40における外側テザー51,52の後端部が結合される部分(後部)である取付孔42が形成された部分との間を、上記内側テザー47が横切るようになる。
【0053】
エアバッグ40は、外側テザー51,52の後端部を同エアバッグ40の後端部と共に上記フレーム18に対し固定した状態のもと、折り畳まれてシートバック17の内部に収納される。そして、膨張用ガスの供給を受けてエアバッグ40が展開及び膨張するときには、その展開及び膨張が外側テザー51,52によって規制されるため、エアバッグ40の前部が後部に対し、上記エアバッグ40が設けられたシート14に着座している乗員P2側に折れ曲がろうとする。
【0054】
こうしたエアバッグ40の折れ曲がりについては、同エアバッグ40内において膨張用ガスによる上記折れ曲がりの阻害が生じない箇所、すなわちエアバッグ40における上記内側テザー47に対応する部分で生じやすくなる。このことから分かるように、エアバッグ40内の上記内側テザー47は、展開及び膨張時におけるエアバッグ40の折り曲げを促進する折曲促進部として機能する。
【0055】
ちなみに、上記内側テザー47は、エアバッグ40が展開及び膨張したとき、鉛直方向に対し後側に倒れるよう傾斜している。これは、このように内側テザー47が傾斜するよう、同内側テザー47の布片41に対する接合位置(図5及び図6の一点鎖線L4)が定められているとともに、内側テザー47同士の接合位置(図5及び図6の一点鎖線L5)が定められているためである。
【0056】
また、展開及び膨張時のエアバッグ40においては、後側膨張室48と前側膨張室49とが上記内側テザー47によって区画されている関係から、前側膨張室49に対応する部分が後側膨張室48に対応する部分に対し折れ曲がるようになる。このときのエアバッグ40を図8に二点鎖線で示す。同図から分かるように、外側テザー51,52の長さについては、以下の(A)及び(B)に示す事柄が実現する長さにも設定されている。
【0057】
(A)展開及び膨張したときのエアバッグ40における後側膨張室48に対応する部分と前側膨張室49に対応する部分とは、エアバッグ40の上記折れ曲がる部分である内側テザー47を挟む位置で互いに接する。
【0058】
(B)展開及び膨張したときのエアバッグ40の上記内側テザー47の前端TPfは、同エアバッグ40が固定されたシート(この例ではシート14)と隣り合うシート(この例ではシート13)のシートクッション16に対応する高さ位置に達する。
【0059】
次に、ファーサイドエアバッグ装置の動作について説明する。
図1及び図2に示す車両10の側壁部11,12のうち、例えば側壁部11に対し側方から衝撃が加わったときには、その側壁部11から遠い側のシート14に着座している乗員P2が、同側壁部11側に倒れ込もうとする。このとき、シート14のシートバック17に対し折り畳まれた状態で固定されているエアバッグ40が、膨張ガスの供給を通じて車両10の幅方向に並ぶ複数のシート13,14間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。このエアバッグ40は、乗員P2側にある外側テザー51,52(図5及び図6)によって展開及び膨張が規制されるとともに内側テザー47に対応する部分で折れ曲がりやすくなっている。このため、エアバッグ40は、展開及び膨張する際に図8に二点鎖線で示すように乗員P2側に効率よく折れ曲がって同乗員P2を押し戻そうとするため、その乗員P2が側壁部11側に倒れ込むことは効果的に抑制されるようになる。
【0060】
なお、車両10の側壁部12に対し側方から衝撃が加わったときには、同側壁部11から遠い側のシート13に着座している乗員P1が同側壁部12側に倒れ込もうとするが、その倒れ込みはシート13のエアバッグ40によって効果的に抑制される。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)車両10の側壁部11,12に対し側方から衝撃が加わったとき、その側壁部11,12から遠い方のシート13,14に着座している乗員P1,P2が同側壁部11側,12に倒れ込むことを効果的に抑制できる。
【0062】
(2)図7に示すように、エアバッグ40内の内側テザー47は、その長手方向の両端(図7の上下両端)がそれぞれエアバッグ40の周縁に至るように形成されている。その結果、エアバッグ40内において膨張用ガスによる上記折れ曲がりの阻害が生じない箇所が、内側テザー47に沿ってエアバッグ40における所定の周縁(図7の上側)から別の周縁(図7の下側の周縁)まで延びることになる。このため、エアバッグ40の展開及び膨張が外側テザー51,52で規制されることにより、同エアバッグ40が上記内側テザー47に対応する部分で一層折れ曲がり易くなる。
【0063】
(3)外側テザー51,52の長さは、上記(A)を実現する長さに設定されている。このため、エアバッグ40の展開及び膨張が外側テザー51,52で規制されたとき、図8に二点鎖線で示すように、エアバッグ40における後側膨張室48に対応する部分と前側膨張室49に対応する部分とが内側テザー47を挟む位置で互いに接するよう、同エアバッグ40が上記内側テザー47に対応する部分で一層大きく折れ曲がるようになる。従って、エアバッグ40が展開及び膨張する際に大きく折れ曲がって乗員P1,P2(図8の例では乗員P2)を押し戻そうとするため、その乗員P1,P2が倒れ込むことをより効果的に抑制することができる。
【0064】
(4)エアバッグ40が展開及び膨張したときには、同エアバッグ40の折れ曲がりを促進する内側テザー47が鉛直方向に対し後側に倒れるよう傾斜した状態となる、言い換えればシートバック17の鉛直方向に対する傾斜に対応して傾斜した状態となる。このため、エアバッグ40が内側テザー47に対応する部分で折れ曲がったときには、同エアバッグ40の前側膨張室49が図8に二点鎖線で示すように乗員P1,P2(図8の例では乗員P2)を側方及び前方から押さえ込むようになる。これにより、乗員P1,P2の倒れ込みをより一層効果的に抑制することができる。
【0065】
(5)外側テザー51,52の長さは、上記(B)を実現する長さに設定されている。このため、エアバッグ40が内側テザー47に対応する部分で折れ曲がったとき、その内側テザー47の前端TPfが上記エアバッグ40の固定されたシート(図8ではシート14)と隣り合うシート(図8ではシート13)のシートクッション16に対応する高さ位置に達する。その結果、エアバッグ40が上記シートクッション16に対し反発してエアバッグ40が設けられたシート14の乗員P1,P2をより強く押し戻そうとする。これにより、乗員P1,P2の倒れ込みをより一層効果的に抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、ファーサイドエアバッグ装置の第2実施形態について、図9図11を参照して説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の部分については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
図9に示すように、本実施形態のエアバッグ80は、折り線L1に沿って二つに折られて厚さ方向(図9の紙面と直交する方向)に重ねられた布片41同士の中央部を結合する環状結合部81を備えている。そして、厚さ方向に重ねられた布片41同士の間において、環状結合部81に囲まれた部分は膨張用ガスが供給されず、同膨張用ガスによって膨張することのない非膨張部82となっている。
【0068】
エアバッグ80において、二つに折られて厚さ方向に重ねられた布片41同士の間であって、非膨張部82よりも前側の部分は前側膨張室83とされている一方、非膨張部82よりも後側の部分は後側膨張室84とされている。詳しくは、前側膨張室83は非膨張部82の前側且つ上側に位置している一方、後側膨張室84は非膨張部82の後側且つ下側に位置している。
【0069】
布片41における前側膨張室83に対応する部分の非膨張部82の前側周縁からエアバッグ80の前側周縁までの距離X1は、布片41における後側膨張室84に対応する部分の非膨張部82の後側周縁からエアバッグ80の後側周縁までの距離X2よりも短くされている。これにより、前側膨張室83が後側膨張室84よりも小さくされている。
【0070】
エアバッグ80の布片41には、外側テザー85,86,87,88が設けられている。外側テザー85,86,87は、展開及び膨張時のエアバッグ80において、衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2側(図9の例ではシート14の乗員P2側)に位置するよう、上記布片41に設けられている。また、外側テザー88は、布片41における上縁の後端に設けられている。
【0071】
外側テザー85は、略前後方向に延びるとともに前端部がエアバッグ80の前部に結合されて同エアバッグ80における前方に向けての展開及び膨張を規制するテザーとしての役割を担う。この外側テザー85の前端部は、エアバッグ80における布片41の前側周縁に対し一点鎖線L2で示す位置にて結合されている。また、外側テザー86は略前後方向に延びるものであって、外側テザー86の前端部はエアバッグ80の非膨張部82に対し結合されている。更に、外側テザー87,88は略上下方向に延びるものであって、外側テザー87,88の下端部はそれぞれエアバッグ80における布片41の後部下側周縁及び後部上側周縁に対し結合されている。
【0072】
図10は、エアバッグ80が取り付けられるシート14のフレーム18を示している。フレーム18は、上下方向に伸びる一対のサイド部23,24と、それらサイド部23,24の上端部間を繋ぐように左右方向(車幅方向)に伸びる上部パイプ25と、を備えている。更に、フレーム18は、サイド部23,24の上部であって上部パイプ25の下側の部分を繋ぐように左右方向に伸びる上部背面プレート26と、サイド部23,24の下部を繋ぐように左右方向に伸びる下部背面プレート27と、を備えている。
【0073】
エアバッグ80は、フレーム18(この例ではサイド部24)に対し、リテーナ32と共にボルトによって固定されている。エアバッグ80の外側テザー85,86の後端部は、サイド部24に対するエアバッグ80の固定位置よりも高い位置にある上部背面プレート26に対しボルト等によって固定されている。更に、エアバッグ80の外側テザー87の上端部は、サイド部24に対するエアバッグ80の固定位置よりも低い位置にある下部背面プレート27に対しボルト等によって固定されている。また、エアバッグ80の外側テザー88の上端部は、上部パイプ25に対しボルト等によって固定されている。
【0074】
エアバッグ80は、上述したようにリテーナ32と共にフレーム18(サイド部24)に対し固定されるとともに、外側テザー85,86,87,88を上述したようにフレーム18に対し固定した状態のもと、折り畳まれてシートバック17(図11)に収容されている。そして、インフレータ31からの膨張用ガスの供給を受けてエアバッグ80が後方から前方に向けて展開及び膨張するときには、そうした展開及び膨張が外側テザー85(図10)によって規制される。すなわち、そうした規制が行われるよう外側テザー85の前後方向の長さが定められている。
【0075】
上述したように、エアバッグ80の前方に向けての展開及び膨張が外側テザー85によって規制されると、エアバッグ80の前部が後部に対し、上記エアバッグ80が設けられたシート14に着座している乗員P2側に折れ曲がろうとする。こうしたエアバッグ80の折れ曲がりについては、同エアバッグ80内において膨張用ガスによる上記折れ曲がりの阻害が生じない箇所、すなわちエアバッグ80の非膨張部82で生じやすくなる。このことから分かるように、エアバッグ80内の上記非膨張部82は、展開及び膨張時におけるエアバッグ80の折り曲げを促進する折曲促進部として機能する。
【0076】
車両10の側壁部11,12に対し側方からの衝撃が加わると、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2の頭部が側方に倒れようとする。図11は、乗員P2の頭部が側方(図11の左方)に倒れようとしている状態を示している。上記外側テザー85(図10)の前後方向の長さは、エアバッグ80が展開及び膨張したとき、乗員P2における側方に倒れようとする頭部が同エアバッグ80の前側上部で下方から支えられる長さとなるようにも設定されている。このため、図11に示すように、乗員P2の頭部が展開及び膨張したエアバッグ80における前側上部によって下方から支えられ、それによって上記乗員P2の頭部が側方に倒れないようにされる。
【0077】
図9に示すエアバッグ80の外側テザー86は、非膨張部82でのエアバッグ80の折り曲げが一層生じやすくなるよう、エアバッグ80の展開及び膨張時に非膨張部82の前後方向についての位置を固定するためのものであって、そうしたことを実現できる前後方向長さを有している。また、エアバッグ80の外側テザー87,88は、前方に向けて展開及び膨張するエアバッグ80が上方及び下方にずれて展開及び膨張することがないよう同エアバッグ80を上下両側に引っ張るためのものであって、そうしたことを実現できる長さを有している。
【0078】
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態における(1)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(6)車両10の側壁部11,12に対する側方から衝撃によって乗員P1,P2の頭部が側方に倒れようとすると、その頭部が展開及び膨張したエアバッグ80における前側上部によって下方から支えられるため、乗員P1,P2の頭部が側方に倒れないようにすることができる。
【0079】
(7)エアバッグ80においては、前側膨張室83が後側膨張室84よりも小さくされている。このため、前方に向けてのエアバッグ80の展開及び膨張が外側テザー85によって規制されるとき、エアバッグ80の前側膨張室83で生じるフープ応力を小さく抑えることができ、それに伴ってエアバッグ80における前側膨張室83を形成する部分が乗員P1,P2側に折れ曲がりやすくなる。
【0080】
[第3実施形態]
次に、ファーサイドエアバッグ装置の第3実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。なお、第3実施形態において、第2実施形態と同一の部分については、第2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
図12に示すように、本実施形態のエアバッグ80における外側テザー85,86,87は、厚さ方向に重ねられた二枚の基布を実線L6,L7,L8に沿って結合することにより形成されている。これにより、外側テザー85,86,87の強度を二枚の基布によって確保しつつ、エアバッグ80の展開及び膨張時に上記基布同士が互いにずれてしまうことがないようにされている。
【0082】
また、エアバッグ80の前部における外側テザー85の前端部が結合されている部分には、エアバッグ80内における外側テザー85の前端部よりも上側に補助膨張室91を区画するための分割部92が形成されている。この分割部92は、エアバッグ80において、折り線L1に沿って二つに折られて厚さ方向(図12の紙面と直交する方向)に重ねられた布片41同士を結合することにより、エアバッグ80の前後方向(図12の左右方向)全体に亘って延びるように形成されている。そして、分割部92により、エアバッグ80内において、補助膨張室91と前側膨張室83とが区画されている。
【0083】
分割部92は、その前端部(図12の左端部)及び後端部(図12の右端部)を外した位置に、エアバッグ80内における補助膨張室91の内外、詳しくは補助膨張室91と前側膨張室83とを連通する連通路93を有している。そして、外側テザー85の前端部は、エアバッグ80の前部における少なくとも分割部92の連通路93に対応する部分に結合されている。なお、このときには、連通路93に対応する部分全体に外側テザー85の前端部がさしかかっていてもよいし、連通路93に対応する部分の一部のみに外側テザー85の前端部がさしかかっていてもよい。
【0084】
インフレータ31からの膨張用ガスの供給を受けてエアバッグ80が後方から前方に向けて展開及び膨張するときには、そうした展開及び膨張が外側テザー85によって規制されることにより、エアバッグ80の前部が後部に対し、上記エアバッグ80が設けられたシート14に着座している乗員P2側に折れ曲がろうとする。更に、図13に示すように、乗員P2の頭部が展開及び膨張したエアバッグ80における前側上部によって下方から支えられ、それによって上記乗員P2の頭部が側方に倒れないようにされる。また、このときには、補助膨張室91が乗員P2の頭部(乗員P2における外側テザー85(図12)の前端部よりも上側の部分)の側方に対応して位置するようになるため、乗員P2の頭部が補助膨張室91によって側方に対し遮蔽される。
【0085】
本実施形態によれば、第2実施形態の(6)及び(7)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(8)エアバッグ80が前方に向けて展開及び膨張する際、そのエアバッグ80が上記乗員側に効率よく折れ曲がって同乗員を押し戻そうとするだけでなく、補助膨張室91が乗員における外側テザー85の前端部よりも上側の部分(例えば乗員の頭部)の側方に対応して位置するようになる。このため、乗員の上記部分を補助膨張室91によって側方に対し遮蔽することができる。
【0086】
(9)エアバッグ80の展開及び膨張時、補助膨張室91内に分割部92の連通路93を介して膨張用ガスが流入すると、その膨張用ガスが補助膨張室91内において前方及び後方に流れることにより、補助膨張室91が前側及び後側に向けて均等に展開及び膨張してゆく。一方、このように補助膨張室91が展開及び膨張する際、補助膨張室91における連通路93に対応する部分は膨張用ガスの流入に伴って乗員側に折れにくくなるものの、分割部92における連通路93よりも前端側及び後端側に対応する部分では膨張用ガスの流れによって乗員側への折れ曲がりが阻害されることはない。これは、連通路93が分割部92における前端部及び後端部を外した位置に形成されており、分割部92の前端部及び後端部では前側膨張室83から補助膨張室91への膨張用ガスの流入は生じないためである。従って、補助膨張室91全体としては、その展開及び膨張時に分割部92を支点として乗員側に折れやすくなり、それに伴い乗員における外側テザー85の前端部よりも上側の部分が補助膨張室91によって側方に対し遮蔽されるようになる。
【0087】
(10)補助膨張室91が展開及び膨張する際、補助膨張室91における連通路93に対応する部分は、膨張用ガスの流入に伴って乗員側に折れにくくなる。しかし、エアバッグ80の展開及び膨張が外側テザー85によって規制される際には、外側テザー85の前端部がエアバッグ80の前部における分割部92の連通路93に対応する部分に結合されている関係から、その部分が外側テザー85によって引っ張られ、それによって補助膨張室91を乗員側に折れやすくすることができる。
【0088】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態において、エアバッグ40内の内側テザー47については、同エアバッグ40の展開及び膨張時に、シートバック17(図4)におけるエアバッグ40が設けられた側部の前縁に沿って延びるよう、内側テザー47の布片41に対する接合位置、及び、内側テザー47同士の接合位置を定めるようにしてもよい。この場合、展開及び膨張時におけるエアバッグ40の前側膨張室49に対応する部分が、後側膨張室48に対応する部分に対し、より一層折れ曲がり易くなる。
【0089】
・第1実施形態において、外側テザー51,52の前後方向の長さを適宜変更してもよい。
・第1実施形態において、外側テザー51と外側テザー52との一方のみを設けるようにしてもよい。
【0090】
・第1実施形態においては、折曲促進部として内側テザー47を例示したが、内側テザー47を省略するとともに厚さ方向に重ねられた布片41同士を図5及び図6の一点鎖線L5で示す位置にて直接的に接合し、その接合部分を折曲促進部としてもよい。
【0091】
・第1〜第3実施形態において、エアバッグ40,80は、シート13,14におけるフレーム18以外の強度部材に固定されていたり、車両10におけるシート13とシート14との間の部分(コンソールボックス等)に固定されていたりしてもよい。
【0092】
・第2実施形態において、図14に示すように、前側膨張室83が後側膨張室84よりも大きくされていてもよい。この場合、布片41における前側膨張室83に対応する部分の非膨張部82の前側周縁からエアバッグ80の前側周縁までの距離X1が、布片41における後側膨張室84に対応する部分の非膨張部82の後側周縁からエアバッグ80の後側周縁までの距離X2よりも長くされる。
【0093】
・第2及び第3実施形態において、外側テザー86,87,88については必ずしも設ける必要はない。
・第3実施形態において、分割部92における連通路93の位置を、同分割部92における前端部寄りの位置や後端部寄りの位置に適宜変更してもよい。
【0094】
・ファーサイドエアバッグ装置を幅方向に3つ以上のシートが並ぶ車両に適用してもよい。
・ファーサイドエアバッグ装置を車両以外の乗物、例えば航空機や船舶に適用してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…車両、11…側壁部、12…側壁部、13…シート、14…シート、16…シートクッション、17…シートバック、18…フレーム、31…インフレータ、32…リテーナ、33…ボルト、34…ナット、40…エアバッグ、40a…開口部、41…布片、42…取付孔、43…布片、44…インナーバッグ、45…連通部、46…連通孔、47…内側テザー、48…後側膨張室、49…前側膨張室、50…連通部、51…外側テザー、52…外側テザー、53…連結孔、54…連結孔、71…衝撃センサ、72…制御装置、80…エアバッグ、81…環状結合部、82…非膨張部、83…前側膨張室、84…後側膨張室、85…外側テザー、86…外側テザー、87…外側テザー、88…外側テザー、91…補助膨張室、92…分割部、93…連通路。
図1
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